JP5495019B2 - モータ制御装置および車両用操舵装置 - Google Patents
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この発明においても、請求項1記載の発明と同様な効果が得られる。また、この発明によれば、ロータの角速度またはそれに対応する値が変化することによって、第1の指示電流値と第2の指示電流値との間において指示電流値が切り換るときに、モータトルクを滑らかに変化させることができる。
また、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合に、検出操舵トルクが指示操舵トルクよりも大きいときに、ロータ角速度よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出操舵トルクが指示操舵トルクよりも小さいときに、ロータ角速度よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、前記加算角補正手段は、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。
また、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合に、検出操舵トルクが指示操舵トルクよりも小さいときに、ロータ角速度よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出操舵トルクが指示操舵トルクよりも大きいときに、ロータ角速度よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、前記加算角補正手段は、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。
前記制限値は、たとえば、次式によって定められた値であってもよい。ただし、次式における「最大ロータ角速度」とは、電気角でのロータ角速度の最大値である。
たとえば、モータの回転を所定の減速比の減速機構を介して車両用操舵装置の操舵軸に伝達している場合には、最大ロータ角速度は、最大操舵角速度(操舵軸の最大回転角速度)×減速比×極対数で与えられる。「極対数」とは、ロータが有する磁極対(N極とS極との対)の数である。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
制御角θCに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iqとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iqとの間に、次式(1)の関係が成立する。
Iq=Iγ・sinθL …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、操舵トルクリミッタ20と、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、加算角リミッタ24と、制御角演算部26と、誘起電圧推定部28と、回転角推定部29と、ロータ角変位演算部30と、指示電流値生成部31と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/αβ変換部34Aと、αβ/UVW変換部34Bと、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/αβ変換部36Aと、αβ/γδ変換部36Bと、誘起電圧二乗和演算部37と、トルク偏差監視部40と、加算角ガード41とが含まれている。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θCの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θCの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値を制限値ωmaxとすればよい。この制限値ωmaxを用いて、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
LL=−ωmax …(5)
加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θCの前回値θC(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z−1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θCの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
誘起電圧推定部28は、モータ3の回転によって生じる誘起電圧を推定するものである。そして、回転角推定部29は、誘起電圧推定部28によって推定された誘起電圧に基づいて、ロータ50の回転角の推定値(推定回転角)θEを演算するものである。誘起電圧推定部28および回転角推定部29の具体例については、後述する。
誘起電圧二乗和演算部37は、誘起電圧推定部28によって求められる推定誘起電圧の二乗和を求める。誘起電圧推定部28は、たとえば、α軸推定誘起電圧E^αおよびβ軸推定誘起電圧E^βを求める。この場合に、誘起電圧二乗和演算部37は、誘起電圧二乗和Σ=E^α 2+E^β 2(≧0)を演算する。
指示電流値生成部31は、図6Aに示すような設定例に基づき、検出操舵トルクTに対応するγ軸指示電流値Iγ *を求めるとともに、図6Bに示すような設定例に基づき、誘起電圧二乗和Σに対応するγ軸指示電流値Iγ *を求める。そして、指示電流値生成部31は、求めた2つのγ軸指示電流値Iγ *のうちの小さい方を、最終的なγ軸指示電流値Iγ *として設定する。したがって、図6Aの特性による利点と、図6Bの特性による利点の両方を活かした制御を行なうことが可能となる。
γδ/αβ変換部34Aは、二相指示電圧Vγδ *をαβ座標系の二相指示電圧Vαβ *に変換する。この座標変換には、制御角演算部26で演算された制御角θCが用いられる。二相指示電圧Vαβ *は、α軸指示電圧Vα *およびβ軸指示電圧Vβ *からなる。αβ/UVW変換部34Bは、二相指示電圧Vαβ *に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW *を生成する。三相指示電圧VUVW *は、U相指示電圧VU *、V相指示電圧VV *およびW相指示電圧VW *からなる。この三相指示電圧VUVW *は、PWM制御部35に与えられる。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW *に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視することにより、指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの大小関係を判定する。その判定結果は、加算角ガード41に与えられるようになっている。
指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)ΔTに対するPI制御(KPは比例係数、KIは積分係数、1/sは積分演算子である。)によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θCの前回値θC(n-1)に対して加算されることによって、制御角θCの今回値θC(n)=θC(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θCとロータ50の実際のロータ角θMとの偏差が負荷角θL=θC−θMとなる。
この実施形態では、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とが正の相関を有する領域で負荷角θLが調整されるように、加算角αが制御される。具体的には、q軸電流Iq=IγsinθLであるから、−90°≦θL≦90°となるように、加算角αが制御される。むろん、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とが負の相関を有する領域で負荷角θLが調整されるように、加算角αを制御することもできる。この場合、90°≦θL≦270°となるように、加算角αが制御される。PI制御部23のゲインを正にすれば正の相関領域での制御となり、PI制御部23のゲインを負にすれば負の相関領域での制御となる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態への遷移を促すことができる。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視しており、指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの大小関係に関する情報を加算角ガード41に与える。
加算角αは、演算周期間の制御角θCの変化量であり、γδ座標軸の演算周期当たりの角変位(ロータ角速度に相当する。)に等しい。よって、加算角αが演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも大きければ負荷角θLが大きくなり、加算角αがロータ角変位Δθよりも小さければ負荷角θLが小さくなる。そして、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とに正の相関がある場合には、負荷角θLが大きくなればモータトルクが大きくなり、負荷角θLが小さくなればモータトルクが小さくなる。
図8Bに示す処理では、検出操舵トルクTと指示操舵トルクT*との大小関係に応じた処理が、図8Aの処理とは逆になっている。すなわち、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも小さいとき(ステップS11A:YES)、加算角ガード41は、加算角αが、ロータ角変位Δθよりも小さいかどうかを判断する(ステップS12)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入する(ステップS13)。すなわち、加算角αがロータ角変位Δθに補正される。加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば(ステップS12:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位よりも変化制限値Aだけ大きな値(Δθ+A)と比較する(ステップS14)。加算角αが当該値(Δθ+A)よりも大きいときには(ステップS14:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ+A)を代入する(ステップS15)。加算角αが当該値(Δθ+A)以下であれば(ステップS14:NO)、加算角αの補正は行われない。
負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とに負の相関がある場合には、負荷角θLが大きくなればモータトルクが小さくなり、負荷角θLが小さくなればモータトルクが大きくなる。
Σ=E^ α 2+E^ β 2 ……(8)
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、誘起電圧二乗和Σに対するγ軸指示電流値Iγ *の特性は、図6Bに示されているように、誘起電圧二乗和Σが所定値D1から所定値D2までの範囲では、γ軸指示電流値Iγ *が所定値ILから所定値IUまで滑らかに増加する特性を有している。しかし、誘起電圧二乗和Σに対するγ軸指示電流値Iγ *の特性は、図6Bに点線で示されるような特性であってもよい。すなわち、誘起電圧二乗和Σが所定値D3以下の範囲では、γ軸指示電流値Iγ *は小さな値ILに設定される。一方、誘起電圧二乗和Σが所定値D3より大きな範囲では、γ軸指示電流値Iγ *は大きな値IUに設定される。図6Bの点線に示されるような特性に基づいて、誘起電圧二乗和Σに対するγ軸指示電流値Iγ *が設定される場合には、指示電流値生成部31によって設定されるγ軸指示電流値Iγ *が急激に大きく変化するおそれがある。そこで、γ軸指示電流値Iγ *が所定値ILと所定値IUとの間で切換えられるときには、γ軸指示電流値Iγ *が切替前の指示電流値から切替後の指示電流値に滑らかに変化するように、γ軸指示電流値Iγ *に対して時間的なローパスフィルタ(LPF)処理を行なうことが好ましい。
この場合、回転角センサを用いるときには、指示電流値生成部31において、操舵トルクおよび車速に応じて、所定のアシスト特性に従ってδ軸指示電流値Iδ *を発生させるようにすればよい。
この明細書からはさらに以下のような特徴が抽出され得る。なお、括弧内の英数字は前述の実施形態等における対応構成要素等を示す。
1.ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(55)とを備えたモータ(3)を制御するためのモータ制御装置(5)であって、制御上の回転角である制御角(θ C )に従う回転座標系の軸電流値(I γ )で前記モータを駆動する電流駆動手段(31〜33,34A,34B,35,36A,36B)と、前記制御角に加算すべき加算角(α)を演算する加算角演算手段(22,23)と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段(26)と、前記ロータの角速度またはそれに対応する値を求める手段(28,29,30,37)と、前記ロータの角速度またはそれに対応する値に応じて前記加算角を補正する加算角補正手段(41)と、前記ロータの角速度またはそれに対応する値に基づいて、前記軸電流値の目標値である指示電流値(I γ * )を設定する指示電流設定手段(31)とを含み、前記指示電流設定手段は、前記ロータの角速度またはそれに対応する値が小さいときに、指示電流値を第1の指示電流値(IL)に設定し、前記ロータの角速度またはそれに対応する値が大きいときに、指示電流値を前記第1の指示電流値より大きな第2の指示電流値(IU)に設定するものである、モータ制御装置。
この構成によれば、制御角に従う回転座標系(γδ座標系。以下「仮想回転座標系」といい、この仮想回転座標系の座標軸を「仮想軸」という。)の軸電流値(以下「仮想軸電流値」という。)によってモータが駆動される一方で、制御角は、演算周期毎に加算角を加算することによって更新される。これにより、制御角を更新しながら、すなわち、仮想回転座標系の座標軸(仮想軸)を更新しながら、仮想軸電流値でモータを駆動することによって、必要なトルクを発生させることができる。こうして、回転角センサを用いることなく、モータから適切なトルクを発生させることができる。
さらに、この構成では、ロータの角速度またはそれに対応する値が求められる。そして、加算角補正手段により、ロータの角速度またはそれに対応する値に応じて加算角が補正される。また、指示電流設定手段により、ロータの角速度またはそれに対応する値に基づいて、軸電流値の目標値である指示電流値が設定される。指示電流設定手段は、ロータの角速度またはそれに対応する値が小さいときに、指示電流値を第1の指示電流値に設定し、ロータの角速度またはそれに対応する値が大きいときに、指示電流値を第1の指示電流値より大きな第2の指示電流値に設定する。
ロータの角速度またはそれに対応する値を検出する場合、ロータの角速度またはそれに対応する値が小さいときには、ロータの角速度またはそれに対応する値が大きいときに比べて、検出誤差が発生する可能性が高い。したがって、ロータの角速度またはそれに対応する値が大きいときには、加算角補正手段による加算角補正が適切に行われるが、ロータの角速度またはそれに対応する値が小さいときには、加算角補正手段による加算角補正が適切に行われないおそれがある。
この構成では、ロータの角速度またはそれに対応する値が小さいとき、つまり、加算角補正手段による加算角補正が適切に行われないおそれがあるときには、指示電流値を比較的小さな第1の指示電流値に設定できるから、加算角補正が適切に行われないことによる悪影響を低減させることができる。一方、ロータの角速度またはそれに対応する値が大きいとき、つまり、加算角補正手段による加算角補正が適切に行われるときには、指示電流値を比較的大きな第2の指示電流値に設定できるから、適切なモータ制御を効率よく行わせることができる。
2.前記指示電流設定手段は、前記第1の指示電流値と前記第2の指示電流値との間で指示電流値が滑らかに変化するように、指示電流値を設定するものである、前記1.に記載のモータ制御装置。この構成によれば、ロータの角速度またはそれに対応する値が変化することによって、第1の指示電流値と第2の指示電流値との間において指示電流値が切り換るときに、モータトルクを滑らかに変化させることができる。
3.前記ロータの角速度に対応する値が、前記モータの誘起電圧の大きさに関連する値である前記1.または2.に記載のモータ制御装置。この構成では、指示電流設定手段により、モータの誘起電圧の大きさに関連する値に基づいて、軸電流値の目標値である指示電流値が設定される。この場合、前記ロータの角速度に対応する値を求める手段は、たとえば、前記モータの誘起電圧を推定し、推定された誘起電圧の二乗和(Σ)を演算する手段(37)を含むものであってもよい。前記ロータの角速度に対応する値は、モータの誘起電圧の大きさ、その比例値、またはその大きさを用いた各種演算値でもよい。
4.車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するモータ(3)と、前記モータを制御するための、前記1.〜前記3.のいずれかに記載のモータ制御装置とを含む、車両用操舵装置。この構成によれば、加算角補正手段による加算角補正が適切に行われないおそれがあるときには、加算角補正が適切に行われないことによる悪影響を低減させることができる。一方、加算角補正手段による加算角補正が適切に行われるときには、適切なモータ制御を効率よく行わせることができる。これにより、操舵フィーリングのよい車両用操舵装置を提供できる。
前記モータ制御装置は、モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルク(T)を検出するためのトルク検出手段(1)と、前記駆動対象に加えられるべき指示トルク(T * :モータトルク以外のトルクの指示値)を設定する指示トルク設定手段(21)とをさらに含んでいてもよい。この場合、前記加算角演算手段は、たとえば、トルク検出手段によって検出されるトルクを指示トルクに一致させるべく、加算角を演算するように動作する。これにより、指示トルクに応じたトルク(モータトルク以外のトルク)が駆動対象に加えられる状態となるように、モータトルクが制御される。モータトルクは、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量である負荷角に対応する。負荷角は、制御角とロータ角との差で表される。モータトルクの制御は、負荷角を調整することによって達成され、この負荷角の調整が加算角を制御することによって達成される。
前記モータ制御装置は、前記モータの駆動値に基づいて、所定時間間隔毎に前記ロータの角速度を演算する角速度演算手段(28,29,30)を含み、前記加算角補正手段は、前記角速度演算手段によって演算されるロータ角速度に基づいて加算角を補正するものであってもよい。また、前記加算角補正手段は、たとえば、ロータ角速度に基づいて定められる所定範囲内の値となるように加算角を補正するものであってもよい。さらに、前記加算角補正手段は、指示トルクと検出トルクとを比較し、その比較結果に応じて加算角を増減する手段を含んでいてもよい。
制御角は、演算周期間で加算角だけ変化する。つまり、演算周期当たりの制御角の変化は加算角に等しい。前記角速度演算手段が演算周期当たりのロータの角変位をロータ角速度として演算するものであるとすると、加算角がロータ角速度よりも大きいとき、負荷角が増加する。したがって、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合、負荷角の増加に応じてモータトルクが増加する。また、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合には、負荷角の増加に応じてモータトルクが減少する。このように、負荷角とモータトルクとの間には相関関係がある。
駆動対象に対して全体として或るトルクを作用させるべき場合(たとえば、モータトルクによって不足のトルクが補われる場合)、モータトルクが増加することによって、駆動対象に加えられるモータトルク以外のトルクが減少するので、検出トルクが減少することになる。一方、モータトルクが減少すれば、駆動対象に加えられるモータトルク以外のトルクが増加するので、検出トルクが増加することになる。したがって、指示トルクと検出トルクとの大小関係と、ロータ角速度と加算角との大小関係とが適切であれば、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクとの比較結果に応じて、ロータ角速度に基づいて定められる所定範囲の値となるように加算角を補正する。
より具体的には、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度以上の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度以下の値に補正することが好ましい。
負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合には、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合には、演算周期当たりのロータ角変位(ロータ角速度)よりも加算角が大きければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合において、加算角がロータ角速度よりも小さいときには、加算角をロータ角速度以上の値に補正する。また、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合には、ロータ角速度よりも加算角が小さければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合において、加算角がロータ角速度よりも大きいときには、加算角をロータ角速度以下の値に補正する。
このようにして、検出トルクと指示トルクとの大小関係に応じて、加算角を妥当な値に補正することができるので、検出トルクを指示トルクに近づけるように、妥当な制御を行うことができる。
また、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合に、検出トルクが指示トルクよりも大きいときに、ロータ角速度よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出トルクが指示トルクよりも小さいときに、ロータ角速度よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。
一方、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度以上の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度以下の値に補正することが好ましい。
負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合には、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合に、演算周期当たりのロータ角変位(ロータ角速度)よりも加算角が大きければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合において、加算角がロータ角速度よりも小さいときには、加算角をロータ角速度以上の値に補正する。また、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合に、ロータ角速度よりも加算角が小さければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合において、加算角がロータ角速度よりも大きいときには、加算角をロータ角速度以下の値に補正する。
このようにして、検出トルクと指示トルクとの大小関係に応じて、加算角を妥当な値に補正することができるので、検出トルクを指示トルクに近づけるように、妥当な制御を行うことができる。
また、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合に、検出トルクが指示トルクよりも小さいときに、ロータ角速度よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出トルクが指示トルクよりも大きいときに、ロータ角速度よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角速度演算手段によって演算されたロータ角速度よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。
前記モータ制御装置は、前記加算角を所定の制限値(ω max )で制限する加算角制限手段をさらに含んでいてもよい。加算角に適切な制限を加えることによって、実際のロータの回転に比して過大な加算角が制御角に加算されることを抑制できる。これにより、適切にモータを制御することができる。
前記制限値は、たとえば、次式によって定められた値であってもよい。ただし、次式における「最大ロータ角速度」とは、電気角でのロータ角速度の最大値である。
制限値=最大ロータ角速度×演算周期
たとえば、モータの回転を所定の減速比の減速機構を介して車両用操舵装置の操舵軸に伝達している場合には、最大ロータ角速度は、最大操舵角速度(操舵軸の最大回転角速度)×減速比×極対数で与えられる。「極対数」とは、ロータが有する磁極対(N極とS極との対)の数である。
前記加算角演算手段は、前記検出トルクを前記指示トルクに近づけるように前記加算角を演算するフィードバック制御手段(22,23)を含むものであってもよい。
前記モータは、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するものであってもよい。この場合に、前記トルク検出手段は、前記車両の操向のために操作される操作部材(10)に加えられる操舵トルクを検出するものであってもよい。また、前記指示トルク設定手段は、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定するものであってもよい。そして、前記加算角演算手段は、前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとの偏差に応じて前記加算角を演算するものであってもよい。
この構成によれば、指示操舵トルクが設定され、この指示操舵トルクと操舵トルク(検出値)との偏差に応じて前記加算角が演算される。これにより、操舵トルクが当該指示操舵トルクとなるように加算角が定められ、それに応じた制御角が定められることになる。したがって、指示操舵トルクを適切に定めておくことによって、モータから適切な駆動力を発生させて、これを舵取り機構に付与することができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が指示操舵トルクに応じた値に導かれる。その結果、適切なトルクがモータから発生され、運転者の操舵意図に応じた駆動力を舵取り機構に付与できる。
前記モータ制御装置または前記車両用操舵装置は、前記操作部材の操舵角を検出する操舵角検出手段(4)をさらに含み、前記指示トルク設定手段は、前記操舵角検出手段によって検出される操舵角に応じて指示操舵トルクを設定するものであることが好ましい。この構成によれば、操作部材の操舵角に応じて指示操舵トルクが設定されるので、操舵角に応じた適切なトルクをモータから発生させることができ、運転者が操作部材に加える操舵トルクを操舵角に応じた値へと導くことができる。これにより、良好な操舵感を得ることができる。
前記指示トルク設定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段(6)によって検出される当該車速に応じて指示操舵トルクを設定するものであってもよい。この構成によれば、車速に応じて指示操舵トルクが設定されるので、いわゆる車速感応制御を行うことができる。その結果、良好な操舵感を実現できる。たとえば、車速が大きいほど、すなわち、高速走行時ほど指示操舵トルクを小さく設定することより、すぐれた操舵感が得られる。
Claims (3)
- ロータと、このロータに対向するステータとを備え、車両の舵取り機構に駆動力を付与するためのモータを制御するためのモータ制御装置であって、
制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
前記車両の操向のために操作される操作部材に加えられる操舵トルクを検出するためのトルク検出手段と、
操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定する指示トルク設定手段と、
前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとのトルク偏差に応じて加算角を演算する加算角演算手段と、
所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
前記ロータの角速度、前記モータの誘起電圧二乗和および前記誘起電圧二乗和を1/2乗した値のうちから任意に選択される値であるロータ角速度対応値に応じて前記加算角を補正する加算角補正手段と、
前記ロータの角速度、前記モータの誘起電圧二乗和および前記誘起電圧二乗和を1/2乗した値のうちから任意に選択される値であるロータ角速度対応値に基づいて、前記軸電流値の目標値である指示電流値を設定する指示電流設定手段とを含み、
前記指示電流設定手段は、前記ロータ角速度対応値が所定値以下のときに、指示電流値を第1の指示電流値に設定し、前記ロータ角速度対応値が前記所定値より大きいときに、指示電流値を前記第1の指示電流値より大きな第2の指示電流値に設定するものである、モータ制御装置。 - ロータと、このロータに対向するステータとを備え、車両の舵取り機構に駆動力を付与するためのモータを制御するためのモータ制御装置であって、
制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
前記車両の操向のために操作される操作部材に加えられる操舵トルクを検出するためのトルク検出手段と、
操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定する指示トルク設定手段と、
前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとのトルク偏差に応じて加算角を演算する加算角演算手段と、
所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
前記ロータの角速度、前記モータの誘起電圧二乗和および前記誘起電圧二乗和を1/2乗した値のうちから任意に選択されるロータ角速度対応値に応じて前記加算角を補正する加算角補正手段と、
前記ロータの角速度、前記モータの誘起電圧二乗和および前記誘起電圧二乗和を1/2乗した値のうちから任意に選択されるロータ角速度対応値に基づいて、前記軸電流値の目標値である指示電流値を設定する指示電流設定手段とを含み、
前記指示電流設定手段は、前記ロータ角速度対応値が第1所定値以下のときに、指示電流値を第1の指示電流値に設定し、前記ロータ角速度対応値が前記第1所定値より大きな第2所定値よりも大きいときに、指示電流値を前記第1の指示電流値より大きな第2の指示電流値に設定し、前記ロータ角速度対応値が前記前記第1所定値から前記第2所定値までの範囲内であるときには、前記第1の指示電流値と前記第2の指示電流値との間で指示電流値が滑らかに変化するように、指示電流値を設定するものである、モータ制御装置。 - 車両の舵取り機構に駆動力を付与するモータと、
前記モータを制御するための、請求項1または2に記載のモータ制御装置とを含む、車両用操舵装置。
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