JP5505681B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置に関する。ブラシレスモータは、たとえば、車両用操舵装置の駆動源として使用可能である。車両用操舵装置の一例は、電動パワーステアリング装置である。
ブラシレスモータを駆動制御するためのモータ制御装置は、一般に、ロータの回転角を検出するための回転角センサの出力に応じてモータ電流の供給を制御するように構成されている。回転角センサとしては、一般的には、ロータ回転角(電気角)に対応した正弦波信号および余弦波信号を出力するレゾルバが用いられる。しかし、レゾルバは、高価であり、配線数が多く、また、設置スペースも大きい。そのため、ブラシレスモータを備えた装置のコスト削減および小型化が阻害されるという課題がある。
そこで、回転角センサを用いることなくブラシレスモータを駆動するセンサレス駆動方式が提案されている。センサレス駆動方式は、ロータの回転に伴う誘起電圧を推定することによって、磁極の位相(ロータの電気角)を推定する方式である。ロータ停止時および極低速回転時には、誘起電圧を推定できないので、別の方式で磁極の位相が推定される。具体的には、ステータに対してセンシング信号を注入し、このセンシング信号に対するモータの応答が検出される。このモータ応答に基づいて、ロータ回転位置が推定される。
特開2007-267549号公報
上記のセンサレス駆動方式は、誘起電圧やセンシング信号を用いてロータの回転位置を推定し、その推定によって得られた回転位置に基づいてモータを制御するものである。しかし、この駆動方式は、いずれの用途にも適しているわけではなく、たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置の駆動源として用いられるブラシレスモータの制御に適用するための手法は未だ確立されていない。そのため、別の方式によるセンサレス制御の実現が望まれている。
そこで、この発明の目的は、回転角センサを用いない新たな制御方式でモータを制御することができるモータ制御装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(55)とを備えたモータ(3)を、前記ロータの回転角を検出するための回転角センサの検出値を用いずに制御するためのモータ制御装置であって、前記モータの駆動対象に働くトルクを検出するトルク検出手段(1)と、前記駆動対象に働かせるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段(21)と、制御上の回転角である制御角(θC)に従う回転座標系の軸電流値(Iγ *)で前記モータを駆動する電流駆動手段(31〜36)と、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとの偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段(22,23)と、所定の演算周期毎に、制御角の前回値に前記加算角演算手段によって演算される加算角(α)を加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段(26)と、前記加算角を所定の制限値に基づいて制限するための制限手段(24)と、前記制限値を変更する制限値変更手段(28)とを含む、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、制御角に従う回転座標系(γδ座標系。以下「仮想回転座標系」といい、この仮想回転座標系の座標軸を「仮想軸」という。)の軸電流値(以下「仮想軸電流値」という。)によってモータが駆動される一方で、制御角は、演算周期毎に加算角を加算することによって更新される。これにより、制御角を更新しながら、すなわち、仮想回転座標系の座標軸(仮想軸)を更新しながら、仮想軸電流値でモータを駆動することによって、必要なトルクを発生させることができる。こうして、回転角センサを用いることなく、モータから適切なトルクを発生させることができる。前記加算角は、指示トルクと検出トルクとの偏差に応じて演算され、モータが発生すべきトルクまたは前記仮想軸電流値に対する前記モータの応答に対応する値となる
また、この発明では、前記加算角を所定の制限値に基づいて制限するための制限手段が備えられている。したがって、制限手段によって加算角に適切な制限を加えることにより、実際のロータの回転に比して過大な加算角が制御角に加算されることを抑制できる。より具体的には、ロータの回転速度範囲に対して妥当な範囲内で加算角が設定されるように制限を加えることによって、より適切にモータを制御することができる。
この発明では、さらに、前記制限値が変更されるようになっている。そのため、状況に応じた適切な制限値が可変設定されることになるから、モータをより適切に制御することができる。
前記制限手段は、たとえば、加算角の絶対値を前記制限値以下に制限するものであってもよい。
請求項2記載の発明は、前記モータの回転角速度を取得(検出または推定)する回転角速度取得手段(27)をさらに含み、前記制限値変更手段は、前記回転角速度取得手段によって取得されるモータ回転角速度に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置である。
制限値を大きく定めていると、加算角が制限手段による制限を受ける状態となったときに、制御周期毎の制御角の変化量が大きくなる。そのため、制御角が適値を飛び越えて変動する状態となるおそれがある。この場合には、加算角が制限手段による制限を受ける状態を脱するまでに長い時間を要し、したがって、制御角を適値に収束させるまでに長い時間が必要になるおそれがある。一方、制限値を小さく定めていると、モータが高速に回転しているときに、制御角の変化をモータの回転に追随させることができなくなり、必要なトルクを発生させることができなくなるおそれがある。したがって、一定の制限値を適用するとすれば、いずれかの問題に直面せざるを得ない。
そこで、この発明では、制限値を一定値とせず、モータ回転角速度に応じて制限値が変更される。そのため、モータの駆動状況に応じて適切な制限値を適用することができる。たとえば、モータ回転角速度が大きいほど制限値を大きくすればよい。これにより、モータ回転角速度が小さいときには比較的小さな制限値で加算角が制限される。したがって、制御角を必要なトルクに応じた適値に速やかに収束させることができる。一方、モータ回転角速度が大きいときには比較的大きな制限値となるので、モータの高速回転に追随するように制御角を変化させることができるから、モータから必要なトルクを発生させやすくなる。
請求項3記載の発明は、前記制限値変更手段は、時間(経過)に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置である。制限値が一定値の場合には、加算角の絶対値が一定の制限値に固定されることになるから、制御角の変化量が一定値となる。そのため、有限個の制御角が循環的に設定されることになり、必要なトルクに対応した適切な制御角が設定されにくくなる。とくに、制限値が360度の約数(たとえば45度)に設定される場合には、制御角は極めて制限された有限個の値のみをとり得るに過ぎない。そこで、この発明では、制限値を時間に応じて変更するようにしている。より具体的には、制限値を乱数を用いて定めたり、時間に対する関数を用いて定めたりすることができる。これにより、加算角が時間経過に応じて変動することになるので、制御角を所要のトルクに対応した適値へと導くことができる。
請求項4記載の発明は、前記制限値変更手段は、前記トルク検出手段によって検出されるトルクの変化量に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置である。前述のとおり、制限値を大きく定めていると、加算角が制限手段による制限を受ける状態となったときに、その状態を脱するまでに長い時間を要し、制御角を適値に収束させるまでに長い時間が必要になるおそれがある。一方、制限値を小さく定めていると、モータの駆動対象に外力が働き、その外力を補償するために大きなトルクが必要になったときに、応答性が悪くなる。すなわち、必要トルクの急変に対応することができなくなる。
そこで、この発明では、モータの駆動対象に働くトルクの変化量(時間変化量)に応じて制限値を変動させるようにしている。これにより、トルク変動に応じた適切な制限値が可変設定されることになるから、制御角の収束性を犠牲にすることなく、必要な応答性能を確保できる。より具体的には、駆動対象に働くトルクの変化量が大きいほど制限値を大きくすればよい。これにより、駆動対象に働くトルク変動に追随できるように適切な制限値を設定できる。トルクの変化量としては、トルクの微分値を用いてもよいし、制御周期間の差分値やその移動平均値を用いてもよい。
請求項5記載の発明は、前記モータは、車両用操舵装置の駆動源として用いられるものであり、前記制限値変更手段は、車速に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置である。この構成によれば、モータは車両用操舵装置の駆動源として用いられる。そして、車速に応じて適切な制限値を設定することができる。停止時および極低速走行時には操舵角は比較的ゆっくりと変化し、極低速走行状態を脱した通常走行状態では、操舵角の変化速度は比較的大きくなる。したがって、車速に応じて制限値を変化させることによって、制限手段によって加算角の変化が制限されている状態から速やかに離脱させることができ、かつ、高速操舵時における応答性も確保することができる。より具体的には、車速が大きくなるほど制限値が大きくなるようにしておけばよい。これにより、停止時および極低速走行時のゆっくりとした操舵時には、制御角の変化幅が小さくなる。したがって、制御角は速やかに適値に収束する。その一方で、通常走行状態のときの比較的速い操舵時には制限値が比較的大きく設定されるから、制御角は大きな変化幅で変化することができる。これにより、速い操舵に対して制御角を追随させることができるから、必要なトルクを発生させることができる。
前記モータは、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するものであってもよい。この場合に、前記トルク検出手段が、前記車両の操向のために操作される操作部材に加えられる操舵トルクを検出するものであり前記指示トルク設定手段が、指示操舵トルクを設定する指示操舵トルク設定手段であることが好ましい。
この構成によれば、指示操舵トルクが設定され、この指示操舵トルクと操舵トルク(検出値)との偏差に応じて前記加算角が演算される。これにより、操舵トルクが当該指示操舵トルクとなるように加算角が定められ、それに応じた制御角が定められることになる。したがって、指示操舵トルクを適切に定めておくことによって、モータから適切な駆動力を発生させて、これを舵取り機構に付与することができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が指示操舵トルクに応じた値に導かれる。その結果、適切なトルクがモータから発生され、運転者の操舵意図に応じた駆動力を舵取り機構に付与できる。
操作部材と舵取り機構とが機械的に結合された車両用操舵装置(たとえば、電動パワーステアリング装置)では、仮想軸電流値に対するモータの応答(モータが発生するトルク)は、検出操舵トルクの変化となって現れる。したがって、このような車両用操舵装置においては、検出操舵トルクに応じて加算角を演算することは、仮想軸電流値に対するモータの応答に応じて加算角を演算することになると言うこともできる。
前記モータ制御装置は、前記操作部材の操舵角を検出する操舵角検出手段(4)をさらに含み、前記指示操舵トルク設定手段は、前記操舵角検出手段によって検出される操舵角に応じて指示操舵トルクを設定するものであることが好ましい。この構成によれば、操作部材の操舵角に応じて指示操舵トルクが設定されるので、操舵角に応じた適切なトルクをモータから発生させることができ、運転者が操作部材に加える操舵トルクを操舵角に応じた値へと導くことができる。これにより、良好な操舵感を得ることができる。
前記回転角速度取得手段は、前記操舵角検出手段によって検出される操舵角に基づいてモータ回転角速度を演算するものであってもよい。また、前記回転角速度取得手段は、前記モータの印加電圧およびモータ電流に基づいて前記モータ回転角速度を演算するものであってもよい。
前記指示操舵トルク設定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段(6)によって検出される当該車速に応じて指示操舵トルクを設定するものであってもよい。この構成によれば、車速に応じて指示操舵トルクが設定されるので、いわゆる車速感応制御を行うことができる。その結果、良好な操舵感を実現できる。たとえば、車速が大きいほど、すなわち、高速走行時ほど指示操舵トルクを小さく設定することより、すぐれた操舵感が得られる。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルク、舵角センサ4が検出する操舵角および車速センサ6が検出する車速に応じてモータ3を駆動することによって、操舵状況および車速に応じた適切な操舵補助を実現する。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
各相のステータ巻線51,52,53の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ50の磁極方向にd軸(磁極軸)をとり、ロータ50の回転平面内においてd軸と直角な方向にq軸(トルク軸)をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ50とともに回転する回転座標系である。dq座標系では、q軸電流のみがロータ50のトルク発生に寄与するので、d軸電流を零とし、q軸電流を所望のトルクに応じて制御すればよい。ロータ50の回転角(ロータ角)θMは、U軸に対するd軸の回転角である。dq座標系は、ロータ角θMに従う実回転座標系である。このロータ角θMを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換を行うことができる。
一方、この実施形態では、制御上の回転角を表す制御角θCが導入される。制御角θCは、U軸に対する仮想的な回転角である。この制御角θCに対応する仮想的な軸をγ軸とし、このγ軸に対して90°進んだ軸をδ軸として、仮想二相回転座標系(γδ座標系。仮想回転座標系)を定義する。制御角θCがロータ角θMに等しいとき、仮想回転座標系であるγδ座標系と実回転座標系であるdq座標系とが一致する。すなわち、仮想軸としてのγ軸は実軸としてのd軸と一致し、仮想軸としてのδ軸は実軸としてのq軸と一致する。γδ座標系は、制御角θCに従う仮想回転座標系である。UVW座標系とγδ座標系との座標変換は、制御角θCを用いて行うことができる。
制御角θCとロータ角θMとの差を負荷角θL(=θC−θM)と定義する。
制御角θCに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iqとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iqとの間に、次式(1)の関係が成立する。
q=Iγ・sinθL …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
電流検出部13は、モータ3の各相のステータ巻線51,52,53に流れる相電流IU,IV,IW(以下、総称するときには「三相検出電流IUVW」という。)を検出する。これらは、UVW座標系における各座標軸方向の電流値である。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、リミッタ24と、制御角演算部26と、回転角速度演算部27と、制限値設定部28と、指示電流値生成部31と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/UVW変換部34と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/γδ変換部36とが含まれている。
指示操舵トルク設定部21は、舵角センサ4によって検出される操舵角と、車速センサ6によって検出される車速とに基づいて、指示操舵トルクT*を設定する。たとえば、図4に示すように、たとえば、操舵角が正の値(右方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクT*は正の値(右方向へのトルク)に設定され、操舵角が負の値(左方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクT*は負の値(左方向へのトルク)に設定される。そして、操舵角の絶対値が大きくなるに従って、その絶対値が大きくなるように(図4の例では非線型に大きくなるように)指示操舵トルクT*が設定される。ただし、所定の上限値(正の値。たとえば、+6Nm)および下限値(負の値。たとえば−6Nm)の範囲内で指示操舵トルクT*の設定が行われる。また、指示操舵トルクT*は、車速が大きいほど、その絶対値が小さくなるように設定される。すなわち、車速感応制御が行われる。
トルク偏差演算部22は、指示操舵トルク設定部21によって設定される指示操舵トルクT*とトルクセンサ1によって検出される操舵トルクT(以下、区別するために「検出操舵トルクT」という。)との偏差(トルク偏差)ΔTを求める。PI制御部23は、このトルク偏差ΔTに対するPI演算を行う。すなわち、トルク偏差演算部22およびPI制御部23によって、検出操舵トルクTを指示操舵トルクT*に導くためのトルクフィードバック制御手段が構成されている。PI制御部23は、トルク偏差ΔTに対するPI演算を行うことで、制御角θCに対する加算角αを演算する。
リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αに対して制限を加える制限手段である。より具体的には、リミッタ24は、制限値設定部28によって設定される制限値に対応した上限値UL(正の値)および下限値LL(負の値)の間の値に加算角αを制限する。
この制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θCの前回値θC(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z-1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θCの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
制御角演算部26は、制御角θCの前回値θC(n-1)にリミッタ24から与えられる加算角αを加算する加算器26Aを含む。すなわち、制御角演算部26は、所定の演算周期毎に制御角θCを演算する。そして、前演算周期における制御角θCを前回値θC(n-1)とし、これを用いて今演算周期における制御角θCである今回値θC(n)を求める。
指示電流値生成部31は、制御上の回転角である前記制御角θCに対応する仮想回転座標系であるγδ座標系の座標軸(仮想軸)に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、γ軸指示電流値Iγ *およびδ軸指示電流値Iδ *(以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Iγδ *という。)を生成する。指示電流値生成部31は、γ軸指示電流値Iγ *を有意値とする一方で、δ軸指示電流値Iδ *を零とする。より具体的には、指示電流値生成部31は、トルクセンサ1によって検出される検出操舵トルクTに基づいてγ軸指示電流値Iγ *を設定する。
検出操舵トルクTに対するγ軸指示電流値Iγ *の設定例は、図5に示されている。検出操舵トルクTが零付近の領域には不感帯NRが設定されている。γ軸指示電流値Iγ *は、不感帯NRの外側の領域で急峻に立ち上がり、所定のトルク以上でほぼ一定値となるように設定される。これにより、運転者がステアリングホイール10を操作していないときには、モータ3への通電が停止され、不必要な電力消費が抑制される。
電流偏差演算部32は、指示電流値生成部31によって生成されるγ軸指示電流値Iγ *に対するγ軸検出電流Iγの偏差Iγ *−Iγと、δ軸指示電流値Iδ *(=0)に対するδ軸検出電流Iδの偏差Iδ *−Iδとを演算する。γ軸検出電流Iγおよびδ軸検出電流Iδは、UVW/γδ変換部36から偏差演算部32に与えられるようになっている。
UVW/γδ変換部36は、電流検出部13によって検出されるUVW座標系の三相検出電流IUVW(U相検出電流IU、V相検出電流IVおよびW相検出電流IW)をγδ座標系の二相検出電流IγおよびIδ(以下総称するときには「二相検出電流Iγδ」という。)に変換する。これらが電流偏差演算部32に与えられるようになっている。UVW/γδ変換部36における座標変換には、制御角演算部26で演算される制御角θCが用いられる。
PI制御部33は、電流偏差演算部32によって演算された電流偏差に対するPI演算を行うことにより、モータ3に印加すべき二相指示電圧Vγδ *(γ軸指示電圧Vγ *およびδ軸指示電圧Vδ *)を生成する。この二相指示電圧Vγδ *が、γδ/UVW変換部34に与えられる。
γδ/UVW変換部34は、二相指示電圧Vγδ *に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW *を生成する。三相指示電圧VUVW *は、U相指示電圧VU *、V相指示電圧VV *およびW相指示電圧VW *からなる。この三相指示電圧VUVW *は、PWM制御部35に与えられる。
PWM制御部35は、U相指示電圧VU *、V相指示電圧VV *およびW相指示電圧VW *にそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路12に供給する。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW *に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
電流偏差演算部32およびPI制御部33は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、モータ3に流れるモータ電流が、指示電流値生成部31によって設定される二相指示電流値Iγδ *に近づくように制御される。
回転角速度演算部27は、モータ3の回転角速度(モータ回転角速度)を演算するものである。より具体的には、回転角速度演算部27は、舵角センサ4によって検出される操舵角を制御周期毎に取り込み、前制御周期から今制御周期への操舵角の差分を制御周期で除することによって操舵角速度を求める。さらに、回転角速度演算部27は、減速機構7の減速比およびモータ3の極対数(N極とS極との対の個数)に基づいて、モータ3の回転角速度(電気角における回転角速度)を演算する。この構成の他にも、回転角速度演算部27は、モータ3の電流(検出電流Iγδ)および印加電圧(指示電圧Vγδ *)に基づいて、モータ3の回転角速度を演算する構成とすることもできる。より具体的には、回転角速度演算部27は、モータ3の抵抗値およびインダクタンスを用い、検出電流および印加電圧に基づいてモータ3の誘起電圧を推定し、この誘起電圧に基づいてモータ回転角速度を推定するものであってもよい。
制限値設定部28は、リミッタ24の制限値を可変設定するものである。より具体的には、制限値設定部28は、回転角速度演算部27によって求められたモータ回転角速度に応じて、リミッタ24における制限値を設定する。
図3は、前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。ただし、説明を簡単にするために、リミッタ24の機能は省略してある。
指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)に対するPI制御(KPは比例係数、KIは積分係数、1/sは積分演算子である。)によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θCの前回値θC(n-1)に対して加算されることによって、制御角θCの今回値θC(n)=θC(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θCとロータ50の実際のロータ角θMとの偏差が負荷角θL=θC−θMとなる。
したがって、制御角θCに従うγδ座標系(仮想回転座標系)のγ軸(仮想軸)にγ軸指示電流値Iγ *に従ってγ軸電流Iγが供給されると、q軸電流Iq=IγsinθLとなる。このq軸電流Iqがロータ50の発生トルクに寄与する。すなわち、モータ3のトルク定数KTをq軸電流Iq(=IγsinθL)に乗じた値が、アシストトルクTA(=KT・IγsinθL)として、減速機構7を介して、舵取り機構2に伝達される。このアシストトルクTAを舵取り機構2からの負荷トルクTLから減じた値が、運転者がステアリングホイール10に与えるべき操舵トルクTである。この操舵トルクTがフィードバックされることによって、この操舵トルクTを指示操舵トルクT*に導くように系が動作する。つまり、検出操舵トルクTを指示操舵トルクT*に一致させるべく、加算角αが求められ、それに応じて制御角θCが制御される。
このように制御上の仮想軸であるγ軸に電流を流す一方で、指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの偏差ΔTに応じて求められる加算角αで制御角θCを更新していくことにより、負荷角θLが変化し、この負荷角θLに応じたトルクがモータ3から発生するようになっている。これにより、操舵角および車速に基づいて設定される指示操舵トルクT*に応じたトルクをモータ3から発生させることができるので、操舵角および車速に対応した適切な操舵補助力を舵取り機構2に与えることができる。すなわち、操舵角の絶対値が大きいほど操舵トルクが大きく、かつ、車速が大きいほど操舵トルクが小さくなるように、操舵補助制御が実行される。
このようにして、回転角センサを用いることなくモータ3を適切に制御して、適切な操舵補助を行うことができる電動パワーステアリング装置を実現できる。これにより、構成を簡単にすることができ、コストの削減を図ることができる。
図6は、リミッタ24の働きを説明するためのフローチャートである。リミッタ24は、制限値設定部28によって設定される制限値ωmax(>0)に基づいて、加算角αを上限値UL(=+ωmax)および下限値LL(=−ωmax)の範囲内に制限する。より具体的には、リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αを上限値ULと比較し(ステップS11)、加算角αが上限値ULを超えている場合(ステップS11:YES)には、上限値ULを加算角αに代入する(ステップS12)。したがって、制御角θCに対して上限値UL(=+ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められた加算角αが上限値UL以下であれば(ステップS11:NO)、リミッタ24は、さらに、その加算角αを下限値LLと比較する(ステップS13)。そして、その加算角αが下限値未満であれば(ステップS13:YES)、下限値LLを加算角αに代入する(ステップS14)。したがって、制御角θCに対して下限値LL(=−ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められた加算角αが下限値LL以上上限値UL以下(ステップS13:NO)であれば、その加算角αがそのまま制御角θCへの加算のために用いられる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態へと速やかに遷移させることができる。これにより、操舵感を向上することができる。
図7は、制限値設定部28によって設定される制限値ωmaxの設定例を説明するための特性図である。制限値設定部28は、回転角速度演算部27によって求められるモータ回転角速度に応じて制限値ωmaxを可変設定する。より具体的には、モータ回転角速度が所定値A以下の低角速度領域においては、制限値ωmaxは一定値Cに設定される。一方、所定値Aを超える角速度領域においては、モータ回転角速度の増加に応じて単調に増加(図7の例ではリニアに増加)するように、制限値ωmaxが設定される。
さらに、詳細には、所定値Aを超える角速度領域においては、モータ回転角速度から計算される単位時間のモータ角変化量よりも一定値Dだけ大きな値を制限値ωmaxとして設定するようになっている。これにより、想定される加算角αの絶対値に対して一定値Dだけ余裕を持たせて制限値ωmaxが設定される。
低角速度領域において制限値ωmaxを一定値Cに固定しているのは、舵角センサ4の検出精度を考慮したものである。すなわち、舵角センサ4は、一般に、あまり分解能が高くないので、とくに低角速度領域においては正確なモータ回転角速度を演算することは困難である。したがって、低角速度領域では制限値ωmaxを一定値Cとすることで、舵角センサ4の検出精度に起因する問題を回避している。一定値Cは、所定値Aのモータ回転角速度に対して一定値Dの余裕を持たせて設定した値である。
このようにこの実施形態によれば、制限値ωmaxが、モータ回転角速度に応じて可変設定され、この制限値ωmaxに基づいて加算角αが制限される。これにより、モータ回転角速度に応じた適切な制限を加算角αに対して課することができる。したがって、モータ回転角速度が比較的小さいときには、制限値ωmaxを小さな値に設定することによって、制御角θCの変化幅が小さくなるから、必要なモータトルク(アシストトルク)に対応した適値へと制御角θCを収束させやすくなる。また、モータ回転角速度が大きいときには、大きな制限値ωmaxが設定されるので、制御角θCをモータ3の高速回転に追随させることができる。
図7の特性では、所定値A以下の低角速度領域においては制限値ωmaxを一定値Cとしているが、この一定値Cは所定値Aに対応した小さな値となっているので、制御角θCの変化量はさほど大きくならない。そのため、制御角θCが必要トルクに対応した適値を超えて変化する状況とはなりにくい。よって、リミッタ24によって加算角αが制限を受ける状況においても、制御角θCを充分速やかに適値へと収束させることができる。
なお、図7の特性は一例であり、他の特性に従って制限値ωmaxを変化させるようにしてもよい。たとえば、図7には、所定値Aを超える領域において、モータ回転角速度に対して一次関数的に制限値ωmaxを可変設定するようにしているが、モータ回転角速度に対して二次関数的に制限値ωmaxを変化させるようにしてもよい。また、図7には、モータ回転角速度に対して制限値ωmaxが連続的に変化する例を示したが、モータ回転角速度に対する制限値ωmaxの変化は不連続であってもよい。すなわち、モータ回転角速度の増加に対して、制限値ωmaxが段階的に変化する特性としてもよい。
図8は、この発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。この図8において、前述の図1に示された各部の対応部分には同一参照符号を付して示す。
この実施形態では、制限値設定部28は、乱数発生部28aを有し、時間経過に応じて乱数的な制限値ωmaxを生成する。したがって、リミッタ24は、時間経過に応じて乱数的に変化する制限値ωmaxに応じた上限値ULおよび下限値LLによって、加算角αを制限する。
図9Aおよび図9Bは制限値ωmaxが一定値(たとえば45度)である場合(比較例)の動作例を説明するための図であり、図10Aおよび図10Bは制限値ωmaxが乱数的に変化する本実施形態における動作を説明するための図である。
アシストトルクが不足する場合には、加算角αの絶対値が増加していき、加算角αが上限値ULまたは下限値LLに達する場合がある。このとき、制限値ωmaxが一定値であるときには、図9Aに示すように、加算角αは上限値UL(または下限値LL)に固定される。この状況では、図9Bに示すように、制御角θCは、一定の制限値ωmax(たとえば45度)ずつ変化することになる。したがって、目標とするアシストトルクが得られる制御角θCの適値θtを超えて変化するおそれがある。しかも、一定の制限値ωmaxが360度の約数(たとえば45度)であるときには、制御角θCは有限個の値を循環的にとるため、適値θtに制御角θCを収束させることができない。
一方、この実施形態では、制限値ωmaxが乱数的に変化するため、アシストトルクが不足し、加算角αがリミッタ24による制限を受ける状態に至っても、加算角αは時間経過とともに変動する(図10A参照)。そのため、制御角θCの変化幅が乱数的に変動するから、制御角θCは有限個の値を循環的にとるようなことがない(図10B参照)。これにより、制御角θCは適値θtに接近した値をとることが可能となる。このとき、検出操舵トルクTと指示操舵トルクT*との偏差(トルク偏差)ΔTが充分に小さくなり、加算角αが小さくなって、リミッタ24による制限を受ける状態から脱する。こうして、制御角θCを適値θtへと収束させることができる。
なお、この実施形態では、乱数発生部28aを用いて乱数的に変化する制限値ωmaxを生成しているが、たとえば、時間に応じて変化する値を生成する関数(時間に対する関数)を用いて、時間経過に応じて変化する制限値ωmaxを生成するようにしてもよい。より具体的には、時間に対する関数演算を行って制限値ωmaxを生成してもよいし、時間に応じて変化する関数値を予め格納したマップを用いて制限値ωmaxを生成してもよい。乱数の発生、関数またはマップによる制限値ωmaxの生成は、いずれも少ない計算量で行える利点がある。
図11は、この発明の第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。この図11において、前述の図1に示された各部の対応部分には同一参照符号を付して示す。
この実施形態では、検出操舵トルクTの変化量δTを演算するトルク変化量演算部29が備えられている。検出操舵トルクTの変化量δT(以下「トルク変化量δT」という。)とは、前制御周期n−1から今制御周期nまでの検出操舵トルクTの変化量δT(=T(n)−T(n-1))、すなわち、検出操舵トルクTの時間変化量である。制限値設定部28は、トルク変化量演算部29によって求められるトルク変化量δTに基づいて、制限値ωmaxを可変設定する。
図12は、トルク変化量δTに対する制限値ωmaxの変化の一例を示す特性図である。制限値ωmaxは、トルク変化量δTの絶対値が大きいほど大きな値に設定されるようになっている。より具体的には、トルク変化量δTの絶対値が所定値E以下の領域では、トルク変化量δTによらずに制限値ωmaxは、所定の下限制限値ωLとされる。また、トルク変化量δTの絶対値が所定値F(F>E)を超える領域では、トルク変化量δTによらずに制限値ωmaxは、所定の上限制限値ωUとされる。そして、トルク変化量δTの絶対値が前記所定値E,Fの間の領域においては、制限値ωmaxは、トルク変化量δTの絶対値の増加に応じて下限制限値ωLから上限制限値ωUまで単調に(この実施形態ではリニアに)増加する特性に従って設定される。
このようにトルク変化量δTの絶対値が小さな領域では制限値ωmaxが小さな値とされるから、制御角θCが収束すべき値(適値)を飛び越えて変化する可能性が低くなる。これにより、制御角θCの適値への収束性を向上できるから、加算角αがリミッタ24による制限を受ける状態となっても、制御角θCを速やかに適値へと収束させ、リミッタ24による制限を受ける状態から脱することができる。
一方、トルク変化量δTの絶対値が大きいほど大きな制限値ωmaxが設定されることから、外力などに起因して検出操舵トルクTが急変したときには、大きな加算角αが許容される。そのため、制御角θCを検出操舵トルクTの急変に追随して変化させることができ、良好な応答性で必要なトルクを発生させることができる。
図13は、トルク変化量δTに対する制限値ωmaxの変化の他例を示す特性図である。この例では、トルク変化量δTの絶対値が増加するときと、トルク変化量δTの絶対値が減少するときとで、異なる特性に従って制限値ωmaxが設定される。すなわち、制限値ωmaxはトルク変化量δTの絶対値の変化に対してヒステリシスを有している。具体的には、トルク変化量δTの絶対値の増加時よりも、トルク変化量δTの絶対値の減少時の方が、大きな制限値ωmaxが設定されるようになっている。
より詳細に説明すると、トルク変化量δTの絶対値の増加時に適用される特性線L1は、トルク変化量δTの絶対値が所定値E1以下の領域で下限制限値ωLをとり、トルク変化量δTの絶対値が所定値F1(F1>E1)を超える領域で上限制限値ωUをとり、トルク変化量δTの絶対値がE1〜F1の領域ではトルク変化量δTの絶対値の増加に伴って下限制限値ωLから上限制限値ωUまで単調に(この例ではリニアに)増加する特性に従って定められる。一方、トルク変化量δTの絶対値の減少時に適用される特性線L2は、トルク変化量δTの絶対値が所定値F2(F2<F1)を超える領域で上限制限値ωUをとり、トルク変化量δTの絶対値が所定値E2(E2<F2,E2<E1)以下の領域で下限制限値ωLをとり、トルク変化量δTの絶対値がE2〜F2の領域ではトルク変化量δTの絶対値の減少に伴って単調に(この例ではリニアに)減少する特性に従って定められる。領域E2〜F1においては、曲線L2に従う制限値ωmaxは曲線L1に従う制限値よりも大きい。
この特性を適用して制限値ωmaxを定めても、図12の特性に従う制限値ωmaxの設定の場合と同様の効果が得られる。一方、検出操舵トルクTが大きく変化するのは、外力によって操舵トルクTが急変した場合と、ステアリングホイール10を高速回転した場合とである。ステアリングホイール10を高速回転した場合について考えると、トルク変化量δTの絶対値が大きくなるのは、ステアリングホイール10を低速回転の状態から高速回転の状態に持って行こうとした場合である。また、トルク変化量δTの絶対値が小さくなるときとは、少なくとも、一度ステアリングホイール10の回転が速くなったときである。そこで、トルク変化量δTの絶対値が同じ値であっても、トルク変化量δTの絶対値が大きくなっていくときよりも、トルク変化量δTの絶対値が小さくなっていくときの方がモータ3の回転角速度が速い可能性が高い。したがって、それに応じて制限値ωmaxを大きくしておくことで、制御角θCをモータ3の高速な回転に追随させることができる。
なお、この実施形態では、トルク変化量δTとして、制御周期間の検出操舵トルクTの差分値を用いているが、その代わりに検出操舵トルクTの微分値(制御周期間の差分を制御周期で除した値)を用いてもよい。また、検出操舵トルクTの差分値の移動平均値を用いてもよい。
図14は、この発明の第4の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。この図14において、前述の図1に示された各部の対応部分には同一の参照符号を付して示す。
この実施形態では、制限値設定部28は、車速センサ6によって検出される車速に応じて、制限値ωmaxを可変設定する。
図15は、車速に対する制限値ωmaxの変化の一例を示す特性図である。この例では、車速の増加に応じて単調に増加する特性で制限値ωmaxが設定されている。停止状態から極低速状態までの車速域では、制限値ωmaxは急増し、それを超える車速域では、車速の増加に伴って制限値ωmaxがゆるやかに増加する特性となっている。
車両が停止しているときや極低速走行時には、負荷が大きく電流不足が発生しやすいが、高速な操舵がされることは少なく、したがって、制御角θCを大きく変化させる必要がない。そこで、停止時および極低速走行時には、制限値ωmaxを比較的小さく設定しておくことで、制御角θCがその適値に収束しやすくなる。これにより、加算角αがリミッタ24による制限を受けている状態からの復帰を促すことができる。
一方、車両が発進して極低速状態を脱し、通常の走行状態(たとえば、時速5km/h以上)となると、負荷が小さく電流不足は発生しにくいが、ステアリングホイール10が高速に操舵される可能性がある。そこで、制限値ωmaxが比較的大きな値とされる。これにより、高速な操舵が行われたときに、大きな加算角αの設定が許容されるので、制御角θCを操舵に追随させることができ、良好な応答性でモータ3から必要なトルクを発生させることができる。
以上、この発明の4つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、回転角センサを備えずに、専らセンサレス制御によってモータ3を駆動する構成について説明したが、レゾルバ等の回転角センサを備え、この回転角センサの故障時に前述のようなセンサレス制御を行う構成としてもよい。これにより、回転角センサの故障時にもモータ3の駆動を継続できるから、操舵補助を継続できる。すなわち、たとえ回転角センサを備えていても、その回転角センサの検出値を用いずにモータを制御する構成が備えられている場合には、この発明の範囲に属する。
この場合、回転角センサを用いるときには、指示電流値生成部31において、操舵トルクおよび車速に応じて、所定のアシスト特性に従ってδ軸指示電流値Iδ *を発生させるようにすればよい。
回転角センサの出力信号を用いる場合には、ロータ角θMが求まるので制御角θCを導入する必要がなく、制御角θCに従う仮想回転座標系を用いる必要がない。つまり、d軸電流およびq軸電流を制御すればよい。しかし、γδ軸に従って電流制御を行うγδ電流制御部と、dq軸に従って電流制御を行うdq電流制御部との両方を備えると、マイクロコンピュータ11においてプログラムを記憶するためのメモリ(ROM)の多くの領域を使用することになる。そこで、角度変数を共用化することによって、γδ電流制御部とdq電流制御部との共通化を図ることが好ましい。具体的には、共通化した電流制御部の角度変数を、回転角センサが正常なときにはdq座標用角度として用い、回転角センサの故障時にはγδ座標用角度として用いるように切り換えればよい。これにより、メモリの使用量を抑制できるから、それに応じてメモリ容量を削減でき、コストダウンを図ることができる。
さらに、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置にこの発明が適用された例について説明したが、この発明は、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置のためのモータの制御や、パワーステアリング装置以外にも、ステア・バイ・ワイヤ(SBW)システム、可変ギヤレシオ(VGR)ステアリングシステムその他の車両用操舵装置に備えられたブラシレスモータの制御のために用いることができる。むろん、車両用操舵装置に限らず、他の用途のモータの制御のためにも本発明のモータ制御装置を適用できる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 モータの構成を説明するための図解図である。 前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。 操舵角に対する指示操舵トルクの特性例を示す図である。 γ軸指示電流値の設定例を示す図である。 リミッタの働きを説明するためのフローチャートである。 制限値設定部による制限値の設定例を説明するための特性図である。 この発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。 制限値が一定値である場合(比較例)の動作例を説明するための図である。 制限値が乱数的に変化する前記第2の実施形態における動作を説明するための図である。 この発明の第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。 トルク変化量に対する制限値の変化の一例を示す特性図である。 トルク変化量に対する制限値の変化の他例を示す特性図である。 この発明の第4の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。 車速に対する制限値ωmaxの変化の一例を示す特性図である。
符号の説明
1…トルクセンサ、3…モータ、4…舵角センサ、5…モータ制御装置、11…マイクロコンピュータ、26…制御角演算部、50…ロータ、51,52,52…ステータ巻線、55…ステータ

Claims (5)

  1. ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを、前記ロータの回転角を検出するための回転角センサの検出値を用いずに制御するためのモータ制御装置であって、
    前記モータの駆動対象に働くトルクを検出するトルク検出手段と、
    前記駆動対象に働かせるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、
    制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
    前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとの偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、
    所定の演算周期毎に、制御角の前回値に前記加算角演算手段によって演算される加算角を加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
    前記加算角を所定の制限値に基づいて制限するための制限手段と、
    前記制限値を変更する制限値変更手段とを含む、モータ制御装置。
  2. 前記モータの回転角速度を取得する回転角速度取得手段をさらに含み、
    前記制限値変更手段は、前記回転角速度取得手段によって取得されるモータ回転角速度に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。
  3. 前記制限値変更手段は、時間に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。
  4. 前記制限値変更手段は、前記トルク検出手段によって検出されるトルクの変化量に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。
  5. 前記モータは、車両用操舵装置の駆動源として用いられるものであり、
    前記制限値変更手段は、車速に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。
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