JP5505681B2 - モータ制御装置 - Google Patents
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Description
前記制限手段は、たとえば、加算角の絶対値を前記制限値以下に制限するものであってもよい。
制限値を大きく定めていると、加算角が制限手段による制限を受ける状態となったときに、制御周期毎の制御角の変化量が大きくなる。そのため、制御角が適値を飛び越えて変動する状態となるおそれがある。この場合には、加算角が制限手段による制限を受ける状態を脱するまでに長い時間を要し、したがって、制御角を適値に収束させるまでに長い時間が必要になるおそれがある。一方、制限値を小さく定めていると、モータが高速に回転しているときに、制御角の変化をモータの回転に追随させることができなくなり、必要なトルクを発生させることができなくなるおそれがある。したがって、一定の制限値を適用するとすれば、いずれかの問題に直面せざるを得ない。
前記指示操舵トルク設定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段(6)によって検出される当該車速に応じて指示操舵トルクを設定するものであってもよい。この構成によれば、車速に応じて指示操舵トルクが設定されるので、いわゆる車速感応制御を行うことができる。その結果、良好な操舵感を実現できる。たとえば、車速が大きいほど、すなわち、高速走行時ほど指示操舵トルクを小さく設定することより、すぐれた操舵感が得られる。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
制御角θCに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iqとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iqとの間に、次式(1)の関係が成立する。
Iq=Iγ・sinθL …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、リミッタ24と、制御角演算部26と、回転角速度演算部27と、制限値設定部28と、指示電流値生成部31と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/UVW変換部34と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/γδ変換部36とが含まれている。
この制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θCの前回値θC(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z-1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θCの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
指示電流値生成部31は、制御上の回転角である前記制御角θCに対応する仮想回転座標系であるγδ座標系の座標軸(仮想軸)に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、γ軸指示電流値Iγ *およびδ軸指示電流値Iδ *(以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Iγδ *という。)を生成する。指示電流値生成部31は、γ軸指示電流値Iγ *を有意値とする一方で、δ軸指示電流値Iδ *を零とする。より具体的には、指示電流値生成部31は、トルクセンサ1によって検出される検出操舵トルクTに基づいてγ軸指示電流値Iγ *を設定する。
γδ/UVW変換部34は、二相指示電圧Vγδ *に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW *を生成する。三相指示電圧VUVW *は、U相指示電圧VU *、V相指示電圧VV *およびW相指示電圧VW *からなる。この三相指示電圧VUVW *は、PWM制御部35に与えられる。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW *に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
回転角速度演算部27は、モータ3の回転角速度(モータ回転角速度)を演算するものである。より具体的には、回転角速度演算部27は、舵角センサ4によって検出される操舵角を制御周期毎に取り込み、前制御周期から今制御周期への操舵角の差分を制御周期で除することによって操舵角速度を求める。さらに、回転角速度演算部27は、減速機構7の減速比およびモータ3の極対数(N極とS極との対の個数)に基づいて、モータ3の回転角速度(電気角における回転角速度)を演算する。この構成の他にも、回転角速度演算部27は、モータ3の電流(検出電流Iγδ)および印加電圧(指示電圧Vγδ *)に基づいて、モータ3の回転角速度を演算する構成とすることもできる。より具体的には、回転角速度演算部27は、モータ3の抵抗値およびインダクタンスを用い、検出電流および印加電圧に基づいてモータ3の誘起電圧を推定し、この誘起電圧に基づいてモータ回転角速度を推定するものであってもよい。
図3は、前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。ただし、説明を簡単にするために、リミッタ24の機能は省略してある。
図6は、リミッタ24の働きを説明するためのフローチャートである。リミッタ24は、制限値設定部28によって設定される制限値ωmax(>0)に基づいて、加算角αを上限値UL(=+ωmax)および下限値LL(=−ωmax)の範囲内に制限する。より具体的には、リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αを上限値ULと比較し(ステップS11)、加算角αが上限値ULを超えている場合(ステップS11:YES)には、上限値ULを加算角αに代入する(ステップS12)。したがって、制御角θCに対して上限値UL(=+ωmax)が加算されることになる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態へと速やかに遷移させることができる。これにより、操舵感を向上することができる。
低角速度領域において制限値ωmaxを一定値Cに固定しているのは、舵角センサ4の検出精度を考慮したものである。すなわち、舵角センサ4は、一般に、あまり分解能が高くないので、とくに低角速度領域においては正確なモータ回転角速度を演算することは困難である。したがって、低角速度領域では制限値ωmaxを一定値Cとすることで、舵角センサ4の検出精度に起因する問題を回避している。一定値Cは、所定値Aのモータ回転角速度に対して一定値Dの余裕を持たせて設定した値である。
この実施形態では、制限値設定部28は、乱数発生部28aを有し、時間経過に応じて乱数的な制限値ωmaxを生成する。したがって、リミッタ24は、時間経過に応じて乱数的に変化する制限値ωmaxに応じた上限値ULおよび下限値LLによって、加算角αを制限する。
アシストトルクが不足する場合には、加算角αの絶対値が増加していき、加算角αが上限値ULまたは下限値LLに達する場合がある。このとき、制限値ωmaxが一定値であるときには、図9Aに示すように、加算角αは上限値UL(または下限値LL)に固定される。この状況では、図9Bに示すように、制御角θCは、一定の制限値ωmax(たとえば45度)ずつ変化することになる。したがって、目標とするアシストトルクが得られる制御角θCの適値θtを超えて変化するおそれがある。しかも、一定の制限値ωmaxが360度の約数(たとえば45度)であるときには、制御角θCは有限個の値を循環的にとるため、適値θtに制御角θCを収束させることができない。
この実施形態では、検出操舵トルクTの変化量δTを演算するトルク変化量演算部29が備えられている。検出操舵トルクTの変化量δT(以下「トルク変化量δT」という。)とは、前制御周期n−1から今制御周期nまでの検出操舵トルクTの変化量δT(=T(n)−T(n-1))、すなわち、検出操舵トルクTの時間変化量である。制限値設定部28は、トルク変化量演算部29によって求められるトルク変化量δTに基づいて、制限値ωmaxを可変設定する。
図13は、トルク変化量δTに対する制限値ωmaxの変化の他例を示す特性図である。この例では、トルク変化量δTの絶対値が増加するときと、トルク変化量δTの絶対値が減少するときとで、異なる特性に従って制限値ωmaxが設定される。すなわち、制限値ωmaxはトルク変化量δTの絶対値の変化に対してヒステリシスを有している。具体的には、トルク変化量δTの絶対値の増加時よりも、トルク変化量δTの絶対値の減少時の方が、大きな制限値ωmaxが設定されるようになっている。
図14は、この発明の第4の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。この図14において、前述の図1に示された各部の対応部分には同一の参照符号を付して示す。
図15は、車速に対する制限値ωmaxの変化の一例を示す特性図である。この例では、車速の増加に応じて単調に増加する特性で制限値ωmaxが設定されている。停止状態から極低速状態までの車速域では、制限値ωmaxは急増し、それを超える車速域では、車速の増加に伴って制限値ωmaxがゆるやかに増加する特性となっている。
回転角センサの出力信号を用いる場合には、ロータ角θMが求まるので制御角θCを導入する必要がなく、制御角θCに従う仮想回転座標系を用いる必要がない。つまり、d軸電流およびq軸電流を制御すればよい。しかし、γδ軸に従って電流制御を行うγδ電流制御部と、dq軸に従って電流制御を行うdq電流制御部との両方を備えると、マイクロコンピュータ11においてプログラムを記憶するためのメモリ(ROM)の多くの領域を使用することになる。そこで、角度変数を共用化することによって、γδ電流制御部とdq電流制御部との共通化を図ることが好ましい。具体的には、共通化した電流制御部の角度変数を、回転角センサが正常なときにはdq座標用角度として用い、回転角センサの故障時にはγδ座標用角度として用いるように切り換えればよい。これにより、メモリの使用量を抑制できるから、それに応じてメモリ容量を削減でき、コストダウンを図ることができる。
Claims (5)
- ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを、前記ロータの回転角を検出するための回転角センサの検出値を用いずに制御するためのモータ制御装置であって、
前記モータの駆動対象に働くトルクを検出するトルク検出手段と、
前記駆動対象に働かせるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、
制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとの偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、
所定の演算周期毎に、制御角の前回値に前記加算角演算手段によって演算される加算角を加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
前記加算角を所定の制限値に基づいて制限するための制限手段と、
前記制限値を変更する制限値変更手段とを含む、モータ制御装置。 - 前記モータの回転角速度を取得する回転角速度取得手段をさらに含み、
前記制限値変更手段は、前記回転角速度取得手段によって取得されるモータ回転角速度に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記制限値変更手段は、時間に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。
- 前記制限値変更手段は、前記トルク検出手段によって検出されるトルクの変化量に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。
- 前記モータは、車両用操舵装置の駆動源として用いられるものであり、
前記制限値変更手段は、車速に応じて前記制限値を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。
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