JP2010098808A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】仮想回転座標系であるγδ座標系のγ軸電流Iγでモータが駆動される。γδ座標系は、制御上の回転角である制御角θCに従う座標系である。制御角θCとロータ角θMとの差は負荷角θLである。このとき、ロータ角θMに従う回転座標系であるdq座標のq軸電流はIγ・sinθLとなる。したがって、負荷角θLに応じたアシストトルクTAが発生する。一方、操舵トルクTがフィードバックされ、指示操舵トルクT*に操舵トルクTを近づけるように、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θCの前回値θC(n-1)に加算されることにより、制御角θCの今回値θC(n)が求められる。操舵角速度に応じて、指示操舵トルクが変動し、さらに加算角αの制御ゲインが変動する。
【選択図】図1
Description
請求項2記載の発明は、前記特性変更手段は、モータの回転角速度に応じて前記特性を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置である。この構成によれば、モータの回転角速度に応じて制御角の演算特性が変化するので、回転角速度に応じた適切なトルクをモータから発生させることができる。具体的には、回転角速度が大きいほど、モータ発生トルクが小さくなるように制御角演算特性を変化させるようにしてもよい。これにより、たとえば、モータを車両の舵取り機構に転舵力を付与するための駆動源として用いる場合に、操舵速度に応じた力が舵取り機構に与えられるので、操舵時に良好な手応え感が得られ、いわゆるダンピング制御を実現することができる。また、回転角速度が大きいほど応答が鈍くなるように制御角演算特性を変化させてもよい。これにより、素速く操舵したときに良好な手応え感が得られるとともに、操舵角中点付近での収斂性を向上できる。
制限値=最大ロータ角速度×演算周期
たとえば、モータの回転を所定の減速比の減速機構を介して車両用操舵装置の操舵軸に伝達している場合には、最大ロータ角速度は、最大操舵角速度(操舵軸の最大回転角速度)×減速比×極対数で与えられる。「極対数」とは、ロータが有する磁極対(N極とS極との対)の数である。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
制御角θCに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iqとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iqとの間に、次式(1)の関係が成立する。
Iq=Iγ・sinθL …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、リミッタ24と、制御角演算部26と、操舵角速度演算部27と、制御ゲイン設定部30と、指示電流値生成部31と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/UVW変換部34と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/γδ変換部36とが含まれている。
トルク偏差演算部22は、指示操舵トルク設定部21によって設定される指示操舵トルクT*とトルクセンサ1によって検出される操舵トルクT(以下、区別するために「検出操舵トルクT」という。)との偏差(トルク偏差)ΔTを求める。PI制御部23は、このトルク偏差ΔTに対するPI演算を行う。すなわち、トルク偏差演算部22およびPI制御部23によって、検出操舵トルクTを指示操舵トルクT*に導くためのトルクフィードバック制御手段が構成されている。PI制御部23は、トルク偏差ΔTに対するPI演算を行うことで、制御角θCに対する加算角αを演算する。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θCの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θCの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値をωmax(>0)と表すと、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
LL=−ωmax …(5)
リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αを上限値ULと比較し、加算角αが上限値ULを超えている場合には、上限値ULを加算角αに代入する。したがって、制御角θCに対して上限値UL(=+ωmax)が加算されることになる。一方、PI制御部23によって求められた加算角αが下限値LL未満であれば、下限値LLを加算角αに代入する。したがって、制御角θCに対して下限値LL(=−ωmax)が加算されることになる。PI制御部23によって求められた加算角αが下限値LL以上上限値UL以下であれば、その加算角αがそのまま制御角θCへの加算のために用いられる。
この制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θCの前回値θC(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z-1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θCの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
操舵角速度演算部27は、舵角センサ4によって検出される操舵角に基づいて、ステアリングホイール10の操舵角速度を演算する。具体的には、舵角センサ4が検出する操舵角が所定のサンプリング周期毎に繰り返しサンプリングされる。そして、操舵角がサンプリングされたときに、1サンプリング時間前の操舵角との差分が求められる。この差分に対しては、必要に応じて、移動平均フィルタやローパスフィルタ等の信号処理が施される。そして、信号処理後の差分をサンプリング時間で除することによって、操舵角速度が求まる。前記信号処理は、必要に応じて行えばよく、場合によっては省かれてもよい。
PI制御部33は、比例要素33aと、積分要素33bと、加算器33cとを備えている。ただし、KPiは比例ゲイン、KIiは積分ゲイン、1/sは積分演算子である。比例要素33aおよび積分要素33bの演算結果が加算器33cで加算されることによって、二相指示電圧Vγδが求められる。比例要素33aのゲイン(比例ゲイン)KPiと、積分要素33bのゲイン(積分ゲイン)KIiとは、制御ゲイン設定部30によって可変設定される。すなわち、制御ゲイン設定部30は、操舵角速度演算部27によって求められる操舵角速度に応じて、比例ゲインKPiおよび積分ゲインKIiを可変設定し、これにより、PI制御部33の周波数特性を変更する。より具体的には、制御ゲイン設定部30は、図7に示すように、操舵角速度が大きいほど遮断周波数の小さな周波数特性が得られるように、比例ゲインKPiおよび積分ゲインKIiを可変設定する。一般には、比例ゲインKPiおよび積分ゲインKIiを小さくすることにより、遮断周波数が低くなる。
PWM制御部35は、U相指示電圧VU *、V相指示電圧VV *およびW相指示電圧VW *にそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路12に供給する。
電流偏差演算部32およびPI制御部33は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、モータ3に流れるモータ電流が、指示電流値生成部31によって設定される二相指示電流値Iγδ *に近づくように制御される。
指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)に対するPI制御によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θCの前回値θC(n-1)に対して加算されることによって、制御角θCの今回値θC(n)=θC(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θCとロータ50の実際のロータ角θMとの偏差が負荷角θL=θC−θMとなる。
さらにこの実施形態では、操舵角速度の絶対値が大きいほど、指示操舵トルクの絶対値が大きく定められる(図4B参照)。したがって、ステアリングホイール10の回転が速いときには、指示操舵トルクの絶対値が大きくなる。これにより、いわゆるダンピング制御を実現することができ、ステアリングホイール10を切り込むときに良好な手応え感が得られるとともに、ステアリングホイール10が中立位置に戻るときに、ステアリングホイール10の回転を減速して、収斂性を向上することができる。こうして、優れた操舵感を実現できる。
図8は、この発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この図8において、前述の図1に示された各部に対応する部分には、図1の場合と同一の参照符号を付して示す。
図8には、制御ゲイン設定部30Aがγ軸指示電流値Iγ *に基づいて比例ゲインKPaおよび積分ゲインKIaを可変設定し、操舵角速度に基づくゲインの変更は行わない例を示してある。しかし、制御ゲイン設定部30Aによって、γ軸指示電流値Iγ *および操舵角速度の両方に基づいて比例ゲインKPaおよび積分ゲインKIaを可変設定する構成としてもよい。
電流検出部71はモータ61のステータ巻線51,52,53(図2参照)を流れる電流を検出する。より具体的には、電流検出部71は、3相(U相、V相およびW相)のステータ巻線51,52,53における相電流をそれぞれ検出する電流検出器を有する。
dq軸目標電流値演算部76Aは、基本目標電流値I*に基づいて、モータ61のロータ磁極方向に沿うd軸電流成分の目標値(d軸目標電流値Id *)と、d軸に直交するq軸電流成分の目標値(q軸目標電流値Iq *)とを生成する。以下、これらをまとめていうときには、「目標電流値Idq *」という。
電流検出部71は、モータ61のU相電流IU、V相電流IVおよびW相電流IWを検出する(以下、これらをまとめていうときには「三相検出電流IUVW」という)。その検出値は、UVW/αβ座標変換部81に与えられる。
αβ/γδ座標変換部82は、二相検出電流Iαβを、制御上のロータ回転角θ^(以下、「制御回転角θ^」という。)に従う二相回転座標系(γ−δ)上での電流IγおよびIδ(以下、これらをまとめていうときには「二相検出電流Iγδ」という。)に座標変換する。二相回転座標系(γ−δ)は、制御回転角θ^にロータ50がある場合に、ロータ磁極方向に沿うγ軸と、このγ軸に直交するδ軸とによって規定される回転座標系である。制御回転角θ^に誤差がなく、実際のロータ回転角と一致しているとき、二相回転座標系(d−q)と二相回転座標系(γ−δ)とは一致する。制御回転角θ^は、回転角算出部84によって演算されたロータ回転角である。
偏差演算部83は、第1スイッチ91から与えられる目標電流値Idq *,Iαβ *と、第2スイッチ92から与えられる検出電流Iγδ,Iαβとの偏差を演算する。より具体的には、第1スイッチ91が目標電流値Idq *を選択し、第2スイッチ92が二相検出電流Iγδを選択するとき、偏差演算部83は、d軸目標電流値Id *に対するγ軸検出電流Iγの偏差、およびq軸目標電流値Iq *に対するδ軸検出電流Iδの偏差を演算する。また、第1スイッチ91が目標電流値Iαβ *を選択し、第2スイッチ92が二相検出電流Iαβを選択するとき、偏差演算部83は、α軸目標電流値Iα *に対するα軸検出電流Iαの偏差、およびβ軸目標電流値Iβ *に対するβ軸検出電流Iβの偏差を演算する。これらの偏差がPI制御部77に与えられてそれぞれPI演算処理を受ける。そして、これらの演算結果に応じて、γ軸電圧指令値Vγ *およびδ軸電圧指令値Vδ *(以下、これらをまとめていうときには「二相電圧指令値Vγδ *」という。)、またはα軸電圧指令値Vα *およびβ軸電圧指令値Vβ *(以下、これらをまとめていうときには「二相電圧指令値Vαβ *」という。)が生成される。
γδ/αβ座標変換部78は、γ軸電圧指令値Vγ *およびδ軸電圧指令値Vδ *を、二相固定座標系(α−β)の電圧指令値であるα軸電圧指令値Vα *およびβ軸電圧指令値Vβ *(二相電圧指令値Vαβ *)に座標変換する。この二相電圧指令値Vαβ *は、αβ/UVW座標変換部79に与えられる。
PWM制御部80は、三相の電圧指令値VU *,VV *,VW *に応じて制御されたデューティ比の駆動信号を生成して駆動回路73に与える。これにより、モータ61の各相には、該当する相の電圧指令値VU *,VV *,VW *に応じたデューティ比で電圧が印加されることになる。
センサ故障判定部85は、レゾルバ62の故障の有無を判定する。たとえば、センサ故障判定部85は、レゾルバ62の信号線62aに導出される信号を監視することによって、レゾルバ62の故障、信号線62aの断線故障、信号線62aの接地故障を検出することができる。
センサ故障判定部85がレゾルバ62の故障が生じていないと判定している通常時には、第1スイッチ91はdq軸目標電流値演算部76Aが出力するdq軸目標電流値Idq *を選択して偏差演算部83に入力し、第2スイッチ92はαβ/γδ座標変換部82が出力する二相検出電流Iγδを選択して偏差演算部83に入力し、第3スイッチ93はPI制御部77が出力する二相電圧指令値Vγδ *をγδ/αβ座標変換部78に入力する。したがって、偏差演算部83は、dq軸目標電流値Idq *に対する二相検出電流Iγδの偏差Δdq(=Idq *−Iγδ)を求めてPI制御部77に入力する。よって、PI制御部77は、電流偏差Δdqを零に導くように二相電圧指令値Vγδ *を演算する。この二相電圧指令値Vγδ *がγδ/αβ座標変換部78に入力されて二相電圧指令値Vαβ *に座標変換される。
x1(n+1)=A1・x1(n)+B1・ε(n) ……(6)
u1(n)=C1・x1(n)+D1・ε(n) ……(7)
ただし、x1は、演算特性の切換え(この参考形態では二相電圧指令値Vγδ *を演算する状態と二相電圧指令値Vαβ *を演算する状態との間の切換え)前の電流制御器の内部状態を表す変数(内部変数)である。また、u1は切換え前の電流制御器の出力である。A1,B1,C1,D1は、切換え前の電流制御器の特性を決める行列である。εは、電流制御器への入力(この参考形態ではΔγδまたはΔαβ)である。
x2(n+1)=A2・x2(n)+B2・ε(n) ……(8)
u1(n)=C2・x2(n)+D2・ε(n) ……(9)
ただし、x2は、切換え後の電流制御器の内部状態を表す変数(内部変数)である。また、u2は切換え後の電流制御器の出力である。A2,B2,C2,D2は、切換え後の電流制御器の特性を決める行列である。
Θ1_inv×u1(n0)=Θ2_inv×u2(n0) ……(10)
これより、次式(11)のように切換え後の内部変数x2(n0)を決定すればよいことが分かる。
……(11)
ただし、上付添え字「−1」は、逆行列を表す。モータの2軸を独立に制御したいので、C2、Θ2_inv、Θ1は、いずれも正則である。
ただし、eは電流誤差(Δαβ=Iαβ *−Iαβ)である。
このようにして、電流制御器としてのPI制御部77の出力の連続性を保ちながら、PI制御部77での演算特性を切り換えることができ、レゾルバ62の故障時においても、スムーズに制御内容を変更することができる。すなわち、レゾルバ62が正常なときには、検出される回転角を用いてモータ61の制御を行うことができ、レゾルバ62の故障時には、回転角を用いずに、二相固定座標系での目標電流値Iαβ *に従ってモータ61を制御できる。そして、切換えの前後で制御の連続性が保持されるので、切換えに伴って電流制御系やシステム全体に与える悪影響を抑制することができる。
回転角センサの出力信号を用いる場合には、ロータ角θMが求まるので制御角θCを導入する必要がなく、制御角θCに従う仮想回転座標系を用いる必要がない。つまり、d軸電流およびq軸電流を制御すればよい。しかし、γδ軸に従って電流制御を行うγδ電流制御部と、dq軸に従って電流制御を行うdq電流制御部との両方を備えると、マイクロコンピュータ11においてプログラムを記憶するためのメモリ(ROM)の多くの領域を使用することになる。そこで、角度変数を共用化することによって、γδ電流制御部とdq電流制御部との共通化を図ることが好ましい。具体的には、共通化した電流制御部の角度変数を、回転角センサが正常なときにはdq座標用角度として用い、回転角センサの故障時にはγδ座標用角度として用いるように切り換えればよい。これにより、メモリの使用量を抑制できるから、それに応じてメモリ容量を削減でき、コストダウンを図ることができる。
Claims (3)
- ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、
制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
所定の演算周期毎に、制御角の前回値に加算角を加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
前記制御角演算手段の特性を変更するための特性変更手段と
を含む、モータ制御装置。 - 前記特性変更手段は、モータの回転角速度に応じて前記特性を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。
- 前記特性変更手段は、モータ電流に応じて前記特性を変更するものである、請求項1記載のモータ制御装置。
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