JP5595436B2 - モータ制御装置 - Google Patents
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このような電動パワーステアリング装置のモータとして、ブラシレスモータ等の多相モータが使用される。
ブラシレスモータの出力要求の増大に伴い、ブラシレスモータへの過大な電流供給があった場合、給電経路上での発熱や、スイッチング素子の破壊などの問題を引き起こす可能性がある。
さらに、車両においては、電力が外部より過大に与えられず、一定の電力のみを供給される。そのため、過大な電力を消費するモータ駆動システムにおいては、その電力の大部分を消費することになり、定電圧を供給するバッテリでは、その電力消費はつまり過大な電流を消費することになり、電源系のラインに過電流が生じるため、過大な負荷がかかることとなる。
また、過大な電力消費は、電圧の低下を引き起こし、同一電源から供給される他のシステムにおいて、電力が供給できないことになりかねない。 これを防ぐため、消費電流を制限する必要がある。
また、電源電圧及びモータ回転角速度に基づき、電源電流最大値に対応するモータ電流値を演算し、モータ電流指令値を演算された電源電流最大値以下に制限することで、電源電流が過電流にならないようにしたモータ制御装置が知られている(特許文献2参照)。
特許文献2も電源電流最大値に対応するモータ電流制限値を演算し、モータ電流指令値に制限をかけていることから、特許文献1と同様に、モータ電流が制限されるまでの遅れが存在し、モータ電流制御の応答性や、モータ電流制御時にモータ電流指令値を参照する周期によっては、モータ電流制限が必要な時に、モータ電流の制限が遅れてしまう可能性がある。
また、モータ電流指令値ではなく、モータ電圧指令値によって制限しているため、急に制限が必要となった場合にも、電流指令値での制限時よりモータ電流制御の応答性が良く、モータへの過大な電源電流の給電を抑えることができる。さらには、モータ電圧飽和状態になることを防げるため、システムの安定性も向上する。
電動パワーステアリング装置においては、モータ給電電流制限により、モータの出力要求の増大による発熱問題に効果がある。また、制御装置を構成するマイクロコンピュータの処理負荷の軽減、モータ電圧を制限することによるシステム安定性確保によって、振動問題に対しても低減・抑制効果がある。
特に、電動パワーステアリング装置においては、その消費電流が過大になることにより、急激にアシスト力が低下することになり、ステアリングフィーリング上、違和感を感じ、急に操舵することができない感覚となる。本願により、これを防ぐことができる。
以下、この発明の実施の形態1におけるモータ制御装置を図1〜図4に基づいて説明する。図1は発明の実施の形態1におけるモータ制御装置の構成図、図2はこの発明の実施の形態1における電圧制限マップを説明する図、図3はモータの消費電力とトルク特性の関係を説明する図、図4は発明の実施の形態1におけるモータ電圧指令値を制限する方法を説明する図である。
制御装置4には、モータ1のロータの磁極位置を検出するための位置センサ5と、モータ1に通電される各相電流Iu、Iv、Iwを検出するための電流検出回路6と、電源2とPWMインバータ3間の電圧を検出する電源電圧検出回路7とが接続されている。
これら減算器11a、11bにおいて演算されたd軸電流偏差△Id及びq軸電流偏差△Iqは、それぞれ対応するPI制御部12a、12bに入力される。そしてPI制御部12a、12bにおいて、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に実電流であるd軸電流値Id及びq軸電流値Iqを追従させるためのフィードバック制御が行われる。
一方、モータ1に給電される電源電流を制限するためのモータ電圧指令制限値を算出するモータ電圧指令制限値算出器13は、電源電圧検出回路7で検出した電源電圧と、回転速度演算器10で演算されたモータ回転速度と、3相/2相座標変換器9からの出力であるモータ電流のd軸電流値Id及びq軸電流値Iqを入力して、モータ電圧指令値の制限値Vlimitを算出する。このモータ電圧指令制限値Vlimitは後述するようにマップ処理によって決定するが、演算で求めても良い。
モータ電圧指令値制限器14によって制限されたd軸電圧指令値Vd**及びq軸電圧指令値Vq**のモータ電圧指令値は、位置センサ5からの回転角と共に2相/3相座標変換器15に入力され、この2相/3相座標変換器15において三相の電圧指令値に変換される。
制御装置4の構成のうち、A/D変換器8以外の構成は、マイクロコントローラにソフトウェアとして実現されるものである。
モータ1の各相電流であるU相電流IuとV相電流IvとW相電流Iwは、電流検出回路6で検出されて所定の電流に変換され、マイクロコントローラの制御装置4に入力される。制御装置4に入力された各相電流は、A/D変換器8で離散化されて、ソフトウェアの処理に引き渡される。
まず、位置センサ5よりモータ位置を検出されたモータ角度を所定時間毎に、モータ回転速度演算器10にて、前回に検出されたモータ角度との差分演算を実施することにより、モータ回転速度を算出する。
検出されたd軸電流Idとq軸電流Iqはそれぞれ減算器11a及び11bに入力され、減算器11a及び11bにおいて、d軸電流Idとd軸電流指令値Id*との偏差、およびq軸電流Iqとq軸電流指令値Iq*との偏差をそれぞれ求め、その偏差からd軸、q軸それぞれのPI制御器12a、12bによりd軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*が算出される。
モータ電圧指令制限値算出部13は、上記のようにマップを用いて、モータ電圧指令制限値の算出を行っているが、これは、マップによって演算負荷が減り処理が早くなるメリットがあるためである。しかし、マップ処理ではなく、演算によってモータ電圧指令制限値を求める場合も可能で、その場合、演算負荷に注意が必要ではあるが、従来法の電流制限を行う方法に比べ、モータ電圧での制限となるため、応答性は従来法より改善される。
下記の電力の釣り合いの式からモータ電圧指令制限値を求める。
Pin = Pout + Ploss
Vin×Iin=Kt×Iq×ω + R×Im2
Vin =(K×Iq×ω + R×Im2)/Iin
IinにImaxを代入することでVmaxが求まる。このVmaxをモータ電圧指令制限値
Vlimitとする。
ここで、Pin :電源(バッテリ)からの入力電力
Pout :モータへの出力電力
Ploss :モータの損失
Vin :電源電圧(バッテリ電圧)
Iin :電源(バッテリ)からの入力電流
Kt :トルク定数
Iq :q軸検出電流
Im モータ電流 sqrt(Iq2+Id2)
ω :モータ回転角速度
R :モータ抵抗
高トルク出力時程、消費電力が大きくなるため、最大トルク出力時の消費電力がピークとなる点を基にモータ電圧指令値に対する制限を設定しておけば、トルク出力が、どの状態においても電源からの過大な給電電力状態になることがなくなる。
このようにモータ電圧指令値を制限することによって、急にブラシレスモータへの過大な電流供給が必要な状況になったとしても、モータ回転速度に応じて、モータの出力を制限するため、ブラシレスモータへの過大な電流供給が起こらない。
軸電圧指令値を制限するq軸電圧指令制限値、およびd軸電圧指令値を制限するd軸電圧指令制限値を算出し、モータ電圧指令値制限器14において、q軸電圧指令値Vq*をq軸電圧指令制限値に制限、およびd軸電圧指令値Vd*をd軸電圧指令制限値に制限することと同じである。
一方、回転数重視とは逆にトルク重視としたい場合には、q軸電圧指令制限値を0とし、d軸電圧指令値Vd*のみを制限する方法が有効となってくる。この場合、モータ電圧指令制限値算出器13はモータ電圧指令値のd軸電圧指令値を制限するd軸電圧指令制限値を算出する。
次に、この発明の実施の形態2におけるモータ制御装置を図5〜図6に基づいて説明する。図5は発明の実施の形態2におけるモータ制御装置の構成図、図6はこの発明の実施の形態2における電圧制限マップを説明する図である。
図5において、モータ電圧指令制限値算出器13への入力として、モータ制御装置の設置周辺の環境温度を検出する環境温度検出器17からの環境温度を追加したもので、その他の構成は実施の形態1の図1に示す構成と同じに付き、同じ符号を付して説明を省略する。
モータ電圧指令制限値算出部13は、上記のように図6に示すマップを用いて、モータ電圧指令制限値の算出を行っているため、演算負荷が減り処理が早くなるメリットがある。
またモータ電圧指令値制限器14において所定値以下に制限されたモータ電圧指令値は、2相/3相座標変換器15によってd−q軸座標から3相電圧へと座標変換され、PWM制御器16によりPWMインバータ3を制御して、モータ1を回転駆動する。
次に、この発明の実施の形態3におけるモータ制御装置を図7〜図8に基づいて説明する。図7は発明の実施の形態3におけるモータ制御装置の構成図、図8はこの発明の実施の形態3におけるモータ電圧指令値を制限する方法を説明する図である。
図7において、PI制御器12a、12bにより算出された目標d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*を2相/3相座標変換器15でd−q軸座標から3相電圧へと座標変換し、変換後の各相電圧をモータ電圧指令値制限器14で制限をかけるようにしたもので、その他の構成は実施の形態1の図1に示す構成と同じに付き、同じ符号を付して説明を省略する。
モータ電圧指令値制限器14において所定値以下に制限された各相のモータ電圧指令値は、PWM制御器16によりPWMインバータ3を制御して、モータ1を回転駆動する。
次に、この発明の実施の形態4におけるモータ制御装置を図9に基づいて説明する。図9は発明の実施の形態4におけるモータ制御装置の構成図である。
図9に示す構成は、実施の形態3の図7に示す構成において、モータ電圧指令制限値算出器13への入力として、モータ制御装置の設置周辺の環境温度を検出する環境温度検出器17からの環境温度を追加したもので、その他の構成は図7と同じに付き、同じ符号を付して説明を省略する。
次に、この発明の実施の形態5におけるモータ制御装置を図10に基づいて説明する。実施の形態5におけるモータ制御装置の構成図は、図1、図5、図7、図9に示したものと同じである。図10は発明の実施の形態5におけるモータ回転速度による電圧制限マップを説明する図で、モータ電圧指令制限値算出器13から出力されるモータ電圧指令制限値を示すものである。
モータ電圧指令制限値算出器13において、モータ電圧指令値の最大許容値である電圧指令制限値を決めるマップは、上記した実施の形態1〜4の発明では、モータ回転速度と電源電圧および環境温度によって、図2や図6に示すように数種類用意することにより、使用環境の変化(電源電圧の変化、消費電力の考慮、環境温度の変化)に対しても、任意に制限値を設定できるようにした。
そしてモータ電圧指令値制限器14において、これら制限曲線パターン1、2、3によるモータ電圧指令制限値Vlimitによって、モータ電圧指令値を制限する。
実施の形態3、4のモータ制御装置においては、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、W相電圧指令値Vw*のように各相電圧自体に制限をかけていたが、3相電圧に変換後にモータ電圧指令値制限器14において各相のDuty値を制限するようにしてもよい。
即ち、電圧指令制限値算出手段13は、モータ回転速度と電源電圧によって、U相、V相、W相の各相モータ電圧へのPWMの指令Duty値を制限するDuty指令制限値を算出する。そして、モータ電圧指令値制限器14において、PWMの指令Duty値をDuty指令制限値によって制限する。
この場合、制限方法の一例として、U相、V相、W相の各相モータ電圧を制限する場合は、図8に示すようにモータ電圧指令制限値Vlimitは六角形で表わされていたが、各相モータ電圧へのPWMの指令Duty値を制限するモータ電圧指令制限値Vlimitは図11に示すように円形で表わされる。
要するに、モータ1の回転位置を検出する位置センサ5も回転角θを検出する回転角センサも広義としては回転位置を検出するものであり、また回転速度を演算する回転速度演算器10も回転角速度を演算する回転角速度演算器も広義としては回転速度を演算しているもので、これらは実質的に同じである。
3:PWMインバータ 4:制御装置(マイクロコントローラ)
5:位置センサ 6:電流検出回路
7:電源電圧検出回路 8:A/D変換器
9:3相/2相座標変換器 10:回転速度演算器
11a、11b:減算器 12a、12b:PI制御部
13:モータ電圧指令制限値算出器 14:モータ電圧指令値制限器
15:2相/3相座標変換器 16:PWM制御器
17:環境温度検出器。
Claims (2)
- モータの回転位置を検出して、そのモータ回転位置よりモータ回転速度を演算する回転速度演算手段と、前記モータに通電される電流を検出するモータ電流検出手段と、前記モータに与える電流指令値と前記モータ電流検出手段で検出したモータ電流とに基づいて前記モータを駆動するためのモータ電圧指令値を算出するモータ電圧指令値演算手段とを備え、バッテリなど一定電力を供給する車両の電動パワーステアリング装置におけるモータ制御装置において、
前記モータに供給する電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、前記電源電圧検出手段で検出した電源電圧と、前記回転速度演算手段で演算されたモータ回転速度から、U相、V相、W相の各相モータ電圧指令値を制限する相電圧指令制限値を算出するモータ電圧指
令制限値算出手段と、前記相電圧指令制限値によって、前記モータ電圧指令値を制限するモータ電圧指令値制限手段とを備え、
前記モータ電圧指令制限値算出手段は、前記モータ回転速度と前記電源電圧によりモータの消費電力を加味し、この消費電力のピーク付近を抑制するように前記モータ電圧指令値として許容できる最大値が定まるマップをあらかじめ備え、このマップから電圧指令制限値を算出することを特徴とするモータ制御装置。 - 前記モータ電圧指令制限値算出手段は、装置周辺の環境温度を検出する環境温度検出器からの温度情報を入力し、この温度に応じて前記電圧指令制限値を可変することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
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