JP5495018B2 - モータ制御装置 - Google Patents
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Description
請求項2記載の発明は、前記演算周期当たりの前記ロータの角変位を演算する角変位演算手段(30)をさらに含み、前記加算角補正手段は、前記角変位演算手段によって演算された角変位に基づいて定められる所定範囲内の値となるように前記加算角を補正する、請求項1記載のモータ制御装置である。
また、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合に、検出操舵トルクが指示操舵トルクよりも大きいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出操舵トルクが指示操舵トルクよりも小さいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、請求項4に記載されているように、前記加算角補正手段は、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。とくに、請求項3および請求項4の特徴を組み合わせることで、加算角の下限および上限の両方が演算周期当たりの角変位に応じて定められることになるから、一層妥当な制御を実現できる。
また、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合に、検出操舵トルクが指示操舵トルクよりも小さいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出操舵トルクが指示操舵トルクよりも大きいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、請求項6に記載されているように、前記加算角補正手段は、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。とくに、請求項5および請求項6の特徴を組み合わせることで、加算角の下限および上限の両方が演算周期当たりの角変位に応じて定められることになるから、一層妥当な制御を実現できる。
前記制限値は、たとえば、次式によって定められた値であってもよい。ただし、次式における「最大ロータ角速度」とは、電気角でのロータ角速度の最大値である。
たとえば、モータの回転を所定の減速比の減速機構を介して車両用操舵装置の操舵軸に伝達している場合には、最大ロータ角速度は、最大操舵角速度(操舵軸の最大回転角速度)×減速比×極対数で与えられる。「極対数」とは、ロータが有する磁極対(N極とS極との対)の数である。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
制御角θCに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iqとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iqとの間に、次式(1)の関係が成立する。
Iq=Iγ・sinθL …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、操舵トルクリミッタ20と、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、加算角リミッタ24と、加算角監視部25と、制御角演算部26と、ゲイン変更部27と、誘起電圧推定部28と、回転角推定部29と、ロータ角変位演算部30と、指示電流値生成部31と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/αβ変換部34Aと、αβ/UVW変換部34Bと、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/αβ変換部36Aと、αβ/γδ変換部36Bと、トルク偏差監視部40と、加算角ガード41とが含まれている。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θCの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θCの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値を制限値ωmaxとすればよい。この制限値ωmaxを用いて、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
LL=−ωmax …(5)
加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θCの前回値θC(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z−1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θCの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
加算角監視部25は、加算角リミッタ24から生成される加算角αを監視している。具体的には、加算角監視部25は、加算角αの絶対値が前記制限値ωmaxよりも小さな加算角しきい値に達したかどうかを監視する。加算角監視部25は、加算角絶対値|α|が当該加算角しきい値以上のときには、このことをゲイン変更部27に通知する。
誘起電圧推定部28は、モータ3の回転によって生じる誘起電圧を推定するものである。そして、回転角推定部29は、誘起電圧推定部28によって推定された誘起電圧に基づいて、ロータ50の回転角の推定値(推定回転角)θEを演算するものである。誘起電圧推定部28および回転角推定部29の具体例については、後述する。
指示電流値生成部31は、制御上の回転角である前記制御角θCに対応する仮想回転座標系であるγδ座標系の座標軸(仮想軸)に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、γ軸指示電流値Iγ *およびδ軸指示電流値Iδ *(以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Iγδ *」という。)を生成する。指示電流値生成部31は、γ軸指示電流値Iγ *を有意値とする一方で、δ軸指示電流値Iδ *を零とする。より具体的には、指示電流値生成部31は、トルクセンサ1によって検出される検出操舵トルクTに基づいてγ軸指示電流値Iγ *を設定する。
γδ/αβ変換部34Aは、二相指示電圧Vγδ *をαβ座標系の二相指示電圧Vαβ *に変換する。この座標変換には、制御角演算部26で演算された制御角θCが用いられる。二相指示電圧Vαβ *は、α軸指示電圧Vα *およびβ軸指示電圧Vβ *からなる。αβ/UVW変換部34Bは、二相指示電圧Vαβ *に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW *を生成する。三相指示電圧VUVW *は、U相指示電圧VU *、V相指示電圧VV *およびW相指示電圧VW *からなる。この三相指示電圧VUVW *は、PWM制御部35に与えられる。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW *に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視することにより、指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの大小関係を判定する。その判定結果は、加算角ガード41に与えられるようになっている。
指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)ΔTに対するPI制御(KPは比例係数、KIは積分係数、1/sは積分演算子である。)によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θCの前回値θC(n-1)に対して加算されることによって、制御角θCの今回値θC(n)=θC(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θCとロータ50の実際のロータ角θMとの偏差が負荷角θL=θC−θMとなる。
この実施形態では、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とが正の相関を有する領域で負荷角θLが調整されるように、加算角αが制御される。具体的には、q軸電流Iq=IγsinθLであるから、−90°≦θL≦90°となるように、加算角αが制御される。むろん、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とが負の相関を有する領域で負荷角θLが調整されるように、加算角αを制御することもできる。この場合、90°≦θL≦270°となるように、加算角αが制御される。PI制御部23のゲインを正にすれば正の相関領域での制御となり、PI制御部23のゲインを負にすれば負の相関領域での制御となる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態への遷移を促すことができる。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視しており、指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの大小関係に関する情報を加算角ガード41に与える。
加算角αは、演算周期間の制御角θCの変化量であり、γδ座標軸の演算周期当たりの角変位(回転速度に相当する。)に等しい。よって、加算角αが演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも大きければ負荷角θLが大きくなり、加算角αがロータ角変位Δθよりも小さければ負荷角θLが小さくなる。そして、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とに正の相関がある場合には、負荷角θLが大きくなればモータトルクが大きくなり、負荷角θLが小さくなればモータトルクが小さくなる。
図8Bに示す処理では、検出操舵トルクTと指示操舵トルクT*との大小関係に応じた処理が、図8Aの処理とは逆になっている。すなわち、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも小さいとき(ステップS11A:YES)、加算角ガード41は、加算角αが、ロータ角変位Δθよりも小さいかどうかを判断する(ステップS12)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入する(ステップS13)。すなわち、加算角αがロータ角変位Δθに補正される。加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば(ステップS12:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位よりも変化制限値Aだけ大きな値(Δθ+A)と比較する(ステップS14)。加算角αが当該値(Δθ+A)よりも大きいときには(ステップS14:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ+A)を代入する(ステップS15)。加算角αが当該値(Δθ+A)以下であれば(ステップS14:NO)、加算角αの補正は行われない。
負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とに負の相関がある場合には、負荷角θLが大きくなればモータトルクが小さくなり、負荷角θLが小さくなればモータトルクが大きくなる。
負荷角θLとアシストトルクとが正の相関を有する領域で負荷角θLが調整されるように、加算角αが調整される場合において、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも大きいときには、アシストトルクが不足している状態である。したがって、モータトルクを増加させるために、負荷角θLを増加させればよい。つまり、加算角αを実際のロータ角変位Δθtrue以上とすれば、検出操舵トルクTを指示操舵トルクT*に近づけることができる。
そこで、前述した加算角ガード処理では、たとえば、加算角αがロータ角変位演算部30によって演算されたロータ角変位Δθより大きいときには、加算角αをΔθに補正している(図8AのステップS17,S13参照)。しかし、ロータ角変位演算部30によって演算されたロータ角変位Δθに誤差がある場合、たとえば、演算されたロータ角変位Δθが実際のロータ角変位Δθtrueより大きい場合(Δθ>Δθtrue)には、加算角αをΔθに補正しても、加算角αは実際のロータ角変位Δθtrue以下とならない。このような場合には、加算角αを、ロータ角変位演算部30によって演算されたロータ角変位Δθからロータ角変位の誤差(角変位誤差)を減算した値に補正すれば、加算角αを実際のロータ角変位Δθtrue以下とすることができる。
図10Aは、加算角ガード処理の変形例を説明するためのフローチャートである。ただし、負荷角θLとモータトルク(アシストトルク)とが正の相関を有する領域で負荷角θLが調整されるように、加算角αが制御される場合の処理例が示されている。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視しており、指示操舵トルクT*と検出操舵トルクTとの大小関係に関する情報を加算角ガード41に与える。
角変位誤差εの決定処理により角変位誤差εが決定されると、加算角ガード41は、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも大きいか否かを判別する(ステップS111)。検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも大きいとき(ステップS111:YES)、加算角ガード41は、PI制御部23によって求められた加算角αが、ロータ角変位演算部30によって求められた演算周期当たりのロータ角変位Δθに角変位誤差εを加算した値(以下、「誤差加算値(Δθ+ε)」という)よりも小さいかどうかを判断する(ステップS112)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αに前記誤差加算値(Δθ+ε)を代入する(ステップS113)。すなわち、加算角αが前記誤差加算値(Δθ+ε)に補正される。加算角αが、前記誤差加算値(Δθ+ε)以上であれば(ステップS112:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、前記加算値(Δθ+ε)よりも所定の変化制限値A(A>0。たとえばA=7deg)だけ大きな値(Δθ+ε+A)と比較する(ステップS114)。加算角αが当該値(Δθ+ε+A)よりも大きいときには(ステップS114:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ+ε+A)を代入する(ステップS115)。加算角αが当該値(Δθ+ε+A)以下であれば(ステップS114:NO)、加算角αの補正は行われない。
このように、図10Aのガード処理では、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも大きいときには、Δθ+ε+A≧α≧Δθ+εの範囲に加算角αが制限され、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも小さいときには、Δθ−ε≧α≧Δθ−ε−Aの範囲に加算角αが制限される。こうして、加算角αは、ロータ角変位Δθに角変位誤差εを加算した値(Δθ+ε)およびロータ角変位Δθから角変位誤差εを減算した値(Δθ−ε)に応じた妥当な値をとることができる。
図10Bに示す処理においても、加算角ガード41は、まず、角変位誤差εの決定処理を行なう(ステップS110)。角変位誤差εの決定処理により角変位誤差εが決定された後においては、図10Bに示す処理では、検出操舵トルクTと指示操舵トルクT*との大小関係に応じた処理が、図10Aの処理とは逆になっている。すなわち、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも小さいとき(ステップS111A:YES)、加算角ガード41は、加算角αが、ロータ角変位Δθに角変位誤差εを加算した値(誤差加算値(Δθ+ε))よりも小さいかどうかを判断する(ステップS112)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αに前記誤差加算値(Δθ+ε)を代入する(ステップS113)。すなわち、加算角αが前記誤差加算値(Δθ+ε)に補正される。加算角αが前記誤差加算値(Δθ+ε)以上であれば(ステップS112:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、前記誤差加算値(Δθ+ε)よりも変化制限値Aだけ大きな値(Δθ+ε+A)と比較する(ステップS114)。加算角αが当該値(Δθ+ε+A)よりも大きいときには(ステップS114:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ+ε+A)を代入する(ステップS115)。加算角αが当該値(Δθ+ε+A)以下であれば(ステップS114:NO)、加算角αの補正は行われない。
このような処理が行われることによって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも小さいときには、Δθ+ε+A≧α≧Δθ+εの範囲に加算角αが制限され、検出操舵トルクTが指示操舵トルクT*よりも大きいときには、Δθ−ε≧α≧Δθ−ε−Aの範囲に加算角αが制限される。こうして、加算角αは、ロータ角変位Δθに角変位誤差εを加算した値(Δθ+ε)およびロータ角変位Δθから角変位誤差εを減算した値(Δθ−ε)に応じた妥当な値をとることができる。
角変位最大誤差εmaxは角変位誤差の最大値であるため、実際の角変位誤差は、通常は、角変位最大誤差εmaxより小さいと考えられる。したがって、角変位誤差εを角変位最大誤差εmaxに設定して、図10Aまたは図10Bに示すような加算角ガード処理を行なった場合には、加算角αを増加補正したときに加算角αが大きくなりすぎたり、加算角αを減少補正したときに加算角αが小さくなりすぎたりするおそれがある。そうすると、加算角αが、適値を挟んでそれより大きい値とそれより小さい値とに交互に変化し、加算角αが適値に収束しにくくなるおそれがある。そこで、角変位誤差εの決定処理では、検出操舵トルクTと指示操舵トルクT*との大小関係が演算周期毎に逆転するような状況においては、角変位誤差εが角変位最大誤差εmaxより小さくされる。これにより、加算角αが適値に収束しやくする。
ステップS134では、加算角ガード41は、変数K、つまり、逆転現象の繰り返し回数に基づいて、角変位誤差εを決定する。具体的には、加算角ガード41は、逆転現象の繰り返し回数Kが大きいほど、角変位誤差εを小さくする。より具体的には、図12に示すように、加算角ガード41は、逆転現象の繰り返し回数Kが0以上所定値K1未満の範囲では、角変位誤差εを角変位最大誤差εmaxに設定する。逆転現象の繰り返し回数Kが所定値K1以上である場合には、加算角ガード41は、逆転現象の繰り返し回数Kが大きいほど、角変位誤差εを小さい値に設定する。
この実施形態では、誘起電圧監視部27と、指示電流値変更部30とが、マイクロコンピュータ11の機能処理部として備えられている。駆動回路12には、電源リレー15を介してバッテリ14が接続されている。駆動回路12は、モータリレー8を介してモータ3に接続されている。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、誘起電圧推定部28等の働きによってロータ角変位Δθを求めているが、図1に二点鎖線で示すように、舵角センサ4によって検出される操舵角の変化を演算周期当たりのロータ角変位Δθに変換するロータ角変位演算部30Aを設けてもよい。
この場合、回転角センサを用いるときには、指示電流値生成部31において、操舵トルクおよび車速に応じて、所定のアシスト特性に従ってδ軸指示電流値Iδ *を発生させるようにすればよい。
この明細書からはさらに以下のような特徴が抽出され得る。なお、括弧内の英数字は前述の実施形態等における対応構成要素等を示す。
1.ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(55)とを備えたモータ(3)を制御するためのモータ制御装置(5)であって、制御上の回転角である制御角(θ C )に従う回転座標系の軸電流値(I γ * )で前記モータを駆動する電流駆動手段(31〜36)と、前記制御角に加算すべき加算角(α)を演算する加算角演算手段(22,23)と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段(26)と、モータによって駆動される駆動対象(2)に加えられる、モータトルク以外のトルク(T)を検出するためのトルク検出手段(1)と、前記駆動対象に作用させるべき指示トルク(T * :モータトルク以外のトルクの指示値)を設定する指示トルク設定手段(21)と、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出される検出トルクとを比較し、その比較結果に応じて前記加算角を増減する加算角補正手段(40,41)とを含む、モータ制御装置。
この構成によれば、制御角に従う回転座標系(γδ座標系。以下「仮想回転座標系」といい、この仮想回転座標系の座標軸を「仮想軸」という。)の軸電流値(以下「仮想軸電流値」という。)によってモータが駆動される一方で、制御角は、演算周期毎に加算角を加算することによって更新される。これにより、制御角を更新しながら、すなわち、仮想回転座標系の座標軸(仮想軸)を更新しながら、仮想軸電流値でモータを駆動することによって、必要なトルクを発生させることができる。こうして、回転角センサを用いることなく、モータから適切なトルクを発生させることができる。
さらに、この構成では、駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクがトルク検出手段によって検出される。また、駆動対象に作用させるべき指示トルクが指示トルク設定手段によって設定される。加算角演算手段は、たとえば、トルク検出手段によって検出される検出トルクを指示トルクに一致させるべく、加算角を演算するように動作する。これにより、指示トルクに応じたトルク(モータトルク以外のトルク)が駆動対象に加えられる状態となるように、モータトルクが制御される。モータトルクは、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量である負荷角に対応する。負荷角は、制御角とロータ角との差で表される。モータトルクの制御は、負荷角を調整することによって達成され、この負荷角の調整が加算角を制御することによって達成される。
一方、指示トルクと検出トルクとが比較され、その比較結果に応じて、加算角が増減される。これにより、たとえば、指示トルクと検出トルクとの大小関係に合致しない加算角が演算された場合に、このような加算角を妥当な値に補正することができる。
2.前記演算周期当たりの前記ロータの角変位を演算する角変位演算手段(30)をさらに含み、前記加算角補正手段は、前記角変位演算手段によって演算された角変位に基づいて定められる所定範囲内の値となるように前記加算角を補正する、前記1.に記載のモータ制御装置である。
3.前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以上の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以下の値に補正する、前記2.に記載のモータ制御装置。
4.前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正する、前記2.または3.に記載のモータ制御装置。
5.前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以上の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以下の値に補正する、前記2.記載のモータ制御装置。
6.前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正する、前記2.または5.に記載のモータ制御装置。
制御角は、演算周期間で加算角だけ変化する。つまり、演算周期当たりの制御角の変化は加算角に等しい。加算角が演算周期当たりのロータの角変位よりも大きいとき、負荷角が増加する。したがって、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合、負荷角の増加に応じてモータトルクが増加する。また、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合には、負荷角の増加に応じてモータトルクが減少する。このように、負荷角とモータトルクとの間には相関関係がある。
駆動対象に対して全体として或るトルクを作用させるべき場合(たとえば、モータトルクによって不足のトルクが補われる場合)、モータトルクが増加することによって、駆動対象に加えられるモータトルク以外のトルクが減少するので、検出トルクが減少することになる。一方、モータトルクが減少すれば、駆動対象に加えられるモータトルク以外のトルクが増加するので、検出トルクが増加することになる。したがって、指示トルクと検出トルクとの大小関係と、演算周期当たりのロータ角変位と加算角との大小関係とが適切であれば、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクとの比較結果に応じて、ロータの角変位に基づいて定められる所定範囲の値となるように加算角を補正する。
より具体的には、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合、前記3.に記載されているように、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以上の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以下の値に補正することが好ましい。
負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合には、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合には、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が大きければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合において、加算角が演算周期当たりのロータ角変位よりも小さいときには、加算角を演算周期当たりのロータ角変位以上の値に補正する。また、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合には、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が小さければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合において、加算角が演算周期当たりのロータ角変位よりも大きいときには、加算角を演算周期当たりのロータ角変位以下の値に補正する。
このようにして、検出トルクと指示トルクとの大小関係に応じて、加算角を妥当な値に補正することができるので、検出トルクを指示トルクに近づけるように、妥当な制御を行うことができる。
また、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合に、検出トルクが指示トルクよりも大きいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出トルクが指示トルクよりも小さいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、前記4.に記載されているように、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。とくに、前記3.および4.の特徴を組み合わせることで、加算角の下限および上限の両方が演算周期当たりの角変位に応じて定められることになるから、一層妥当な制御を実現できる。
一方、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合、前記5.に記載されているように、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以上の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以下の値に補正することが好ましい。
負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合には、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合に、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が大きければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合において、加算角が演算周期当たりのロータ角変位よりも小さいときには、加算角を演算周期当たりのロータ角変位以上の値に補正する。また、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合に、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が小さければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合において、加算角が演算周期当たりのロータ角変位よりも大きいときには、加算角を演算周期当たりのロータ角変位以下の値に補正する。
このようにして、検出トルクと指示トルクとの大小関係に応じて、加算角を妥当な値に補正することができるので、検出トルクを指示トルクに近づけるように、妥当な制御を行うことができる。
また、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合に、検出トルクが指示トルクよりも小さいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出トルクが指示トルクよりも大きいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、前記6.に記載されているように、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。とくに、前記5.および6.の特徴を組み合わせることで、加算角の下限および上限の両方が演算周期当たりの角変位に応じて定められることになるから、一層妥当な制御を実現できる。
7.前記加算角補正手段は、前記角変位演算手段によって演算された角変位(Δθ)に前記角変位の演算誤差に関する値(ε)を加算した値(Δθ+ε)と、前記角変位演算手段によって演算された角変位から前記角変位の演算誤差に関する値を減算した値(Δθ−ε)とに基づいて、前記所定範囲を規定するものである、前記2.に記載のモータ制御装置。
負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合に、検出トルクが指示トルクよりも大きいときには、前述したように、演算周期当たりの実際のロータ角変位よりも加算角が大きければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合において、加算角が、角変位演算手段によって演算された演算周期当たりのロータ角変位(実際のロータ角変位と区別するために「推定ロータ角変位」ということにする)よりも小さいときには、加算角を推定ロータ角変位以上の値に補正することが考えられる。
しかし、推定ロータ角変位に誤差がある場合、たとえば、推定ロータ角変位が実際のロータ角変位より小さい場合には、加算角を推定ロータ角変位以上に補正しても、加算角が実際のロータ角変位以上とならない場合がある。この構成では、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも大きいときには、加算角を、推定ロータ角変位にその誤差を加算した値以上に補正することが可能となる。このため、検出トルクが指示トルクよりも大きいときに、加算角を実際のロータ角変位以上とすることができる。
一方、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合には、前述したように、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が小さければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合において、加算角が推定ロータ角変位よりも大きいときには、加算角を推定ロータ角変位以下の値に補正することが考えられる。
しかし、推定ロータ角変位に誤差がある場合、たとえば、推定ロータ角変位が実際のロータ角変位より大きい場合には、加算角を推定ロータ角変位以下に補正しても、加算角が実際のロータ角変位以下とならない場合がある。この構成では、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも小さいときには、加算角を、推定ロータ角変位からその誤差を減算した値以下に補正することが可能となる。このため、検出トルクが指示トルクよりも小さいときに、加算角を実際のロータ角変位以下とすることができる。
また、この構成では、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合に、検出トルクが指示トルクよりも大きいときには、加算角を、推定ロータ角変位からその誤差を減算した値以下に補正することが可能となる。負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合に、検出トルクが指示トルクよりも小さいときには、加算角を、推定ロータ角変位にその誤差を加算した値以下に補正することが可能となる。つまり、この構成では、角変位演算手段によって演算された角変位に誤差が発生している場合でも、検出トルクを指示トルクに近づけるように、妥当な制御を行うことが可能となる。
角変位の演算誤差に関する値は、たとえば、予め求められた、角変位演算手段の誤差の最大値であってもよい。また、検出トルクと指示トルクとの大小関係が交互に逆転するような場合には、角変位の演算誤差に関する値を、前記誤差の最大値より小さくするようにしてもよい。この場合、検出トルクと指示トルクとの大小関係の逆転現象の繰り返し回数が多いほど、角変位の演算誤差に関する値を小さくするようにしてもよい。
8.前記角変位演算手段が、前記モータの誘起電圧を推定する誘起電圧推定手段(28)と、前記誘起電圧推定手段によって推定された誘起電圧に基づいて前記演算周期当たりの前記ロータの角変位を演算する手段(29,30)と、を含んでおり、前記誘起電圧推定手段によって推定された誘起電圧が所定のしきい値より大きくなったときに、前記モータの制御を停止させる手段(27,30)をさらに含む、前記1.〜前記7.のいずれかに記載のモータ制御装置。この構成では、角変位演算手段は、誘起電圧推定手段によって推定された誘起電圧に基づいて演算周期当たりのロータの角変位を演算する。また、誘起電圧推定手段によって推定された誘起電圧が所定のしきい値より大きくなったときに、モータの制御が停止される。しきい値は、たとえば、予め定められた固定値であってもよいし、モータの駆動回路の電源であるバッテリの出力電圧の検出値であってもよい。
モータの回転速度が、たとえば外力によってモータの無負荷速度より大きくなると、モータから発生する誘起電圧の波形が歪む。モータから発生する誘起電圧が歪むと、誘起電圧推定手段の誘起電圧推定機能が正常に働かなくなり、角変位演算手段によって演算される演算周期当たりのロータ角変位の誤差が大きくなるおそれがある。そうすると、加算角補正手段の加算角補正機能が正常に働かなくなるおそれがある。この構成によれば、モータの回転速度がモータの無負荷速度より大きくなり、加算角補正手段の加算角補正機能が正常に働かなくなるおそれがある状態となったときに、モータの制御を停止させることができる。このため、加算角補正手段の加算角補正機能が正常に働かない状態で、モータ制御が行なわれるのを回避することができる。
前記モータ制御装置は、前記加算角を所定の制限値(ω max )で制限する加算角制限手段をさらに含んでいてもよい。加算角に適切な制限を加えることによって、実際のロータの回転に比して過大な加算角が制御角に加算されることを抑制できる。これにより、適切にモータを制御することができる。
前記制限値は、たとえば、次式によって定められた値であってもよい。ただし、次式における「最大ロータ角速度」とは、電気角でのロータ角速度の最大値である。
制限値=最大ロータ角速度×演算周期
たとえば、モータの回転を所定の減速比の減速機構を介して車両用操舵装置の操舵軸に伝達している場合には、最大ロータ角速度は、最大操舵角速度(操舵軸の最大回転角速度)×減速比×極対数で与えられる。「極対数」とは、ロータが有する磁極対(N極とS極との対)の数である。
前記加算角演算手段は、前記検出トルクを前記指示トルクに近づけるように前記加算角を演算するフィードバック制御手段(22,23)を含むものであってもよい。
前記モータは、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するものであってもよい。この場合に、前記トルク検出手段は、前記車両の操向のために操作される操作部材(10)に加えられる操舵トルクを検出するものであってもよい。また、前記指示トルク設定手段は、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定するものであってもよい。そして、前記加算角演算手段は、前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとの偏差に応じて前記加算角を演算するものであってもよい。
この構成によれば、指示操舵トルクが設定され、この指示操舵トルクと操舵トルク(検出値)との偏差に応じて前記加算角が演算される。これにより、操舵トルクが当該指示操舵トルクとなるように加算角が定められ、それに応じた制御角が定められることになる。したがって、指示操舵トルクを適切に定めておくことによって、モータから適切な駆動力を発生させて、これを舵取り機構に付与することができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が指示操舵トルクに応じた値に導かれる。その結果、適切なトルクがモータから発生され、運転者の操舵意図に応じた駆動力を舵取り機構に付与できる。
前記モータ制御装置は、前記操作部材の操舵角を検出する操舵角検出手段(4)をさらに含み、前記指示トルク設定手段は、前記操舵角検出手段によって検出される操舵角に応じて指示操舵トルクを設定するものであることが好ましい。この構成によれば、操作部材の操舵角に応じて指示操舵トルクが設定されるので、操舵角に応じた適切なトルクをモータから発生させることができ、運転者が操作部材に加える操舵トルクを操舵角に応じた値へと導くことができる。これにより、良好な操舵感を得ることができる。
前記指示トルク設定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段(6)によって検出される当該車速に応じて指示操舵トルクを設定するものであってもよい。この構成によれば、車速に応じて指示操舵トルクが設定されるので、いわゆる車速感応制御を行うことができる。その結果、良好な操舵感を実現できる。たとえば、車速が大きいほど、すなわち、高速走行時ほど指示操舵トルクを小さく設定することより、すぐれた操舵感が得られる。
Claims (8)
- ロータと、このロータに対向するステータとを備え、車両の舵取り機構に駆動力を付与するためのモータを制御するためのモータ制御装置であって、
制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
前記車両の操向のために操作される操作部材に加えられる操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定する指示トルク設定手段と、
前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとの偏差に応じて加算角を演算する加算角演算手段と、
所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される検出操舵トルクとを比較し、その比較結果に応じて前記加算角を増減する加算角補正手段と
を含む、モータ制御装置。 - 前記演算周期当たりの前記ロータの角変位を演算する角変位演算手段をさらに含み、
前記加算角補正手段は、前記角変位演算手段によって演算された角変位に基づいて定められる所定範囲内の値となるように前記加算角を補正する、請求項1記載のモータ制御装置。 - 前記加算角補正手段は、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以上の値に補正し、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以下の値に補正する、請求項2記載のモータ制御装置。
- 前記加算角補正手段は、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正する、請求項2または3記載のモータ制御装置。
- 前記加算角補正手段は、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以上の値に補正し、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以下の値に補正する、請求項2記載のモータ制御装置。
- 前記加算角補正手段は、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出操舵トルクが前記指示操舵トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正する、請求項2または5記載のモータ制御装置。
- 前記加算角補正手段は、前記角変位演算手段によって演算された角変位に前記角変位の演算誤差に関する値を加算した値と、前記角変位演算手段によって演算された角変位から前記角変位の演算誤差に関する値を減算した値とに基づいて、前記所定範囲を規定するものである、請求項2記載のモータ制御装置。
- 前記角変位演算手段が、前記モータの誘起電圧を推定する誘起電圧推定手段と、前記誘起電圧推定手段によって推定された誘起電圧に基づいて前記演算周期当たりの前記ロータの角変位を演算する手段と、を含んでおり、
前記誘起電圧推定手段によって推定された誘起電圧が所定のしきい値より大きくなったときに、前記モータの制御を停止させる手段をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
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