JP5435252B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Description
そこで、ロータ停止時および極低速回転時には、高周波探査電圧を用いてロータ位置を推定する低速域用位置推定処理を行う一方で、高速域では、誘起電圧を用いてロータ位置を推定する高速域用位置推定処理を行うことが考えられる。この目的のために、推定されたロータ位置を時間微分してロータ回転速度を演算し、この演算されたロータ回転速度の大小に応じて低速域用位置推定処理と高速域用位置推定処理とを切り換えることが考えられる。
そこで、この発明の目的は、ロータ回転速度に応じて低速域位置推定と高速域位置推定とを適切に用いることができ、これにより、精度良くロータ位置を演算でき、モータの制御精度を向上することができるモータ制御装置を備えた車両用操舵装置を提供することである。
また、請求項3記載の発明は、ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータが発生するトルクを舵取り機構に伝達する車両用操舵装置であって、操舵角を検出する舵角センサと、車両の速度を検出する車速センサと、前記モータを制御するモータ制御装置とを含み、前記モータ制御装置は、ロータまたはロータとともに回転する部材の回転速度を検出するための回転速度検出手段と、所定の低速域に適合するように設計され、前記ロータの回転位置を推定する低速域位置推定手段と、所定の高速域に適合するように設計され、前記ロータの回転位置を推定する高速域位置推定手段と、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置、および前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置に基づいて、前記ロータの回転位置を求める回転位置演算手段とを含み、前記回転位置演算手段は、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度に応じて、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置または前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置のいずれかを選択する選択手段を含み、前記モータ制御装置は、さらに、前記回転位置演算手段によって演算されるロータの回転位置、または前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置に基づいて、ロータの回転速度を推定する回転速度推定手段と、前記回転速度推定手段によって推定される推定回転速度と前記回転速度検出手段によって検出される検出回転速度との回転速度差と所定の速度差閾値とを比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果、前記回転速度差が前記速度差閾値よりも大きい場合に、前記検出回転速度に基づいて、前記回転位置演算手段によって求められる回転位置を修正する位置修正手段とを含み、前記回転速度検出手段は、前記舵角センサによって検出される操舵角を用いて回転速度を求めるものであり、前記回転位置演算手段は、前記車速センサによって検出される車両の速度と、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度と、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置と、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置とに基づいて、前記ロータの回転位置を求めるものであり、前記回転位置演算手段は、前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が第1閾値以下の低速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用い、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いずに、ロータの回転位置を求める手段と、前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記第1閾値を超えており、この第1閾値よりも大きな第2閾値以下の中速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置と、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置との両方を用いてロータの回転位置を求める手段と、前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記第2閾値を超えている高速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いず、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いて、ロータの回転位置を求める手段と、前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記中速域または高速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いず、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いて、ロータの回転位置を求める手段とを含み、前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記低速域のときに、前記モータの駆動を停止する手段をさらに含む、車両用操舵装置である。
ロータ等の回転速度が中速域のときには、高速域位置推定手段が推定するロータ回転位置の推定精度は、ロータ回転速度が小さいほど悪くなる。そこで、車両が走行していて、ロータ等の回転速度が中速域のときには、当該回転速度が小さいほど、モータの駆動指令値を小さくする。これにより、モータが発生する不安定なトルクに起因する操舵違和感を低減できる。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に操舵補助力を与えるモータ3(電動モータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
UVW/αβ座標変換部17は、三相検出電流IUVWを、二相固定座標系上での電流IαおよびIβ(以下、これらをまとめていうときには「二相検出電流Iαβ」という。)に座標変換する。二相固定座標系とは、ロータ50の回転中心を原点としてα軸およびこれに直交するβ軸を定めた固定座標系である(図2参照)。座標変換された二相検出電流Iαβは、αβ/γδ座標変換部18に与えられる。
αβ/UVW座標変換部15は、α軸指示電圧Vα*およびβ軸指示電圧Vβ *を三相固定座標系の指示電圧、すなわち、U相、V相およびW相の指示電圧VU *,VV *,VW *(以下、これらをまとめていうときには「三相指示電圧VUVW」という。)に変換する。
このような構成によって、舵取り機構2に結合されたステアリングホイール10に操舵トルクが加えられると、これがトルクセンサ1によって検出される。そして、その検出された操舵トルクおよび車速センサ6によって検出される車速に応じた電流指令値Idqが電流指令値生成部11によって生成される。この電流指令値Idqと検出電流Iγδとの偏差が偏差演算部19によって求められ、この偏差を零に導くようにPI制御部12によるPI演算が行われる。この演算結果に対応した指示電圧Vγδが指示電圧生成部13によって生成され、これが、座標変換部14,15を経て三相指示電圧VUVWに変換される。そして、PWM制御部16の働きによって、その三相指示電圧VUVWに応じたデューティ比で駆動回路8が動作することによって、モータ3が駆動され、電流指令値Idqに対応したアシストトルクが舵取り機構2に与えられることになる。こうして、操舵トルクに応じて操舵補助を行うことができる。電流センサ9によって検出される三相検出電流IUVWは、座標変換部17,18を経て、電流指令値Idqに対応するように回転座標系(γ−δ)で表された検出電流Iγδに変換された後に、偏差演算部19に与えられる。
高周波電圧発生部23は、ロータ50の停止時および極低速回転時(250rpm以下)においてロータ50の位相角θを推定するために、モータ3に探査電圧を印加する探査電圧印加手段として機能する。この高周波電圧発生部23は、モータ3の定格周波数に比較して十分に高い周波数(たとえば、200Hz)の高周波正弦電圧(図3(b)参照)を、探査電圧として、モータ3のU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53に印加するための電圧指令値を生成し、PWM制御部16に与える。より具体的には、ロータ50の回転を引き起こすことのない程度のデューティ比の高周波電圧の印加によって、V−W相通電、W−U相通電およびU−V相通電を順次繰り返させることにより、ロータ50の回転中心まわりで空間的に回転する高周波電圧ベクトルを印加する。この高周波電圧ベクトルは、ロータ50の回転中心を原点とする固定座標であるαβ座標の原点まわりに定速回転する一定の大きさの電圧ベクトルである(図2(a)参照)。
回転速度推定部22は、位置推定部21から所定の制御周期T毎に与えられる推定回転位置θ^の差分Δθ^を求めることにより、ロータ50の推定回転速度ω^(=Δθ^)を生成する。
図4は、位置推定部21の構成を説明するためのブロック図である。位置推定部21は、モータ3に流れるモータ電流(この実施形態では二相検出電流Iαβ)と、モータ3に印加されるモータ電圧(この実施形態では二相指示電圧Vαβ)とに基づいて、ロータ50の回転位置を推定するものである。この位置推定部21は、低速域位置推定部41と、高速域位置推定部42と、内分処理部43と、切り換え部44と、内分係数演算部47とを備えている。さらに、位置推定部21は、回転速度差演算部71と、比較部72と、位置変化量演算部73と、位置修正部74とを含む。
高速域位置推定部42は、モータ3の高速回転時(たとえば、200rpm以上)におけるロータ50の位置推定に適合するように設計されており、UVW/αβ座標変換部17が出力する二相検出電流Iαβと、γδ/αβ座標変換部14が生成する二相指示電圧Vαβとに基づいて、ロータ50の回転位置を推定する。
切り換え部44は、低速推定回転位置θ^L、高速推定回転位置θ^Hおよび内分推定回転位置θ^Mのうちのいずれか一つを選択し、推定回転位置θ^として出力する。
位置変化量演算部73は、回転速度演算部24によって求められる回転速度ωに制御周期Tを乗じることによって、位置変化量Δθを求める。マイクロコンピュータ7は、電流センサ9の出力信号を制御周期T毎に取り込み、この制御周期T毎に、位置推定部21によってロータ回転位置の推定を行う。この制御周期Tを回転速度ωに乗じることによって位置変化量Δθ(=ω×T)が求められる。この位置変化量Δθは、制御周期Tの期間におけるロータ回転位置θの変化量に対応する。
むろん、前述のようにθ^L=Tan-1(Iβ/Iα)によって低速推定回転位置θ^Lを求める構成とすることもできる。
図6は、高速域位置推定部42の構成例を示すブロック図である。高速域位置推定部42は、信号処理部48と、ロータ位置推定部49とを備えている。信号処理部48は、二相指示電圧Vαβの高周波成分を除去する低域通過フィルタで構成された電圧フィルタ31と、二相検出電流Iαβの高周波成分を除去する低域通過フィルタで構成された電流フィルタ32とを有している。ロータ位置推定部49には、信号処理部48によって信号処理(フィルタリング)された後の二相指示電圧Vαβおよび二相検出電流Iαβが与えられるようになっている。ロータ位置推定部49は、モータ3の数学モデルであるモータモデルに基づき、モータ3の誘起電圧を外乱として推定する外乱オブザーバ25と、この外乱オブザーバ25が出力する推定誘起電圧から高周波成分を除去する低域通過フィルタで構成された推定値フィルタ26と、この推定値フィルタ26が出力する推定誘起電圧(フィルタリング後の値)に基づいて、ロータ50の高速推定回転位置θ^Hを生成する推定位置生成部27とを有している。そして、信号処理部48の電圧フィルタ31によってフィルタリングされた二相指示電圧Vαβと、電流フィルタ32によってフィルタリングされた二相検出電流Iαβとが、ロータ位置推定部49の外乱オブザーバ25にそれぞれ入力されるようになっている。
誘起電圧Eαβは、次の(4)式で表すことができる。ただし、KEは誘起電圧定数、θはロータ回転位置、ωはロータ回転速度である。
モータ3の回転速度ω(回転速度演算部24によって演算される回転速度ω)の速度域は、停止状態から第1閾値ωTLまでの低速域(ω≦ωTL)、第1閾値ωTL〜第2閾値ωTH(ただし、ωTH>ωTL)の中速域(ωTL<ω≦ωTH)、第2閾値ωTHを超える高速域(ωTH<ω)に分けられている。
θ^M=(1−α)・θ^L+α・θ^H …(6)
内分係数αは、内分係数演算部47によって演算され、高速推定回転位置θ^Hの使用率を表す。そして、(1−α)は低速推定回転位置θ^Lの使用率を表すことになる。内分係数αは、回転速度演算部24によって演算される回転速度ωに応じて可変設定される。より具体的には、内分係数αは、回転速度ωが大きいほど大きくなるように、内分係数演算部47によって演算され、内分処理部43に与えられるようになっている。さらに具体的には、内分係数αは、たとえば、第1閾値ωTL〜第2閾値ωTHの間で回転速度ωに応じて、0〜1の範囲でリニアに変化するように設定される。
UVW/αβ座標変換部17で演算された二相検出電流Iαβおよびγδ/αβ座標変換部14で演算された二相指示電圧Vαβは、低速域位置推定部41および高速域位置推定部42に入力される(ステップS1)。また、回転速度演算部24は、今制御周期nにおいて舵角センサ4により検出された操舵角と、前制御周期n−1において舵角センサ4により検出された操舵角との差分に基づいて操舵角速度を求め、これをさらにロータの回転速度ωに換算する(ステップS2)。
車両の速度Vが零のとき(ステップS3:YES)、すなわち、車両が停止中の場合には、回転速度ωが、前述の低速域、中速域、および高速域のいずれであるかが判定される(ステップS4,S5)。
回転速度ωが高速域の値(ω>ωTH)であるときは(ステップS5:YES)、高速域位置推定部42によって高速推定回転位置θ^Hが求められ(ステップS8)、この高速推定回転位置θ^Hが推定回転位置θ^として切り換え部44から出力される(ステップS9)。
次いで、回転速度差演算部71は、推定回転速度ω^と回転速度演算部24によって求められたロータ回転速度ωとの回転速度差Δωを求める(ステップS15)。そして、比較部72は、回転速度差Δωと速度差閾値(たとえば、1制御周期間の回転角度差ΔωTに換算して10度に相当する値。)とを比較する(ステップS16)。回転速度差Δωが速度差閾値以下であれば(ステップS16:NO)、切り換え部44から出力された今制御周期nの推定回転位置θ^(n)をそのまま用いる。回転速度差Δωが速度差閾値を超えていれば(ステップS16:YES)、今制御周期nで切り換え部44が出力した推定回転位置θ^(n)を破棄し、位置修正部74によって求めた推定回転位置θ^(n)(=θ^(n-1)+Δθ)に修正する(ステップS17)。
また、探査用高周波電圧は、前述の実施形態では、三相指示電圧VUVWに重畳しているが、指示電圧生成部13が生成する指示電圧Vγδに重畳する構成としてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この明細書および添付図面の記載から、以下のような特徴が抽出され得る。
A1.ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(51〜53)とを備えたモータ(3)を制御するためのモータ制御装置(5)であって、ロータまたはロータとともに回転する部材(10A)の回転速度を検出するための回転速度検出手段(4,24)と、所定の低速域に適合するように設計され、前記ロータの回転位置を推定する低速域位置推定手段(41)と、所定の高速域に適合するように設計され、前記ロータの回転位置を推定する高速域位置推定手段(42)と、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置、および前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置に基づいて、前記ロータの回転位置を求める回転位置演算手段(43,44)とを含む、モータ制御装置。なお、括弧内の英数字は前述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下同じ。
この構成によれば、回転速度検出手段によってロータまたはロータとともに回転する回転部材の回転速度(以下「ロータ等の回転速度」という。)が検出される。つまり、推定演算によって求められたロータ回転位置を用いた演算によってロータ回転速度を求めるのではなく、ロータ等の回転速度が検出される。この検出されたロータ等の回転速度と、低速域位置推定手段および高速域位置推定手段がそれぞれ推定するロータ回転位置とを用いて、ロータの回転位置が求められる。したがって、低速域位置推定手段または高速域位置推定手段によって推定されるロータ回転位置に推定誤差が生じているときでも、ロータ等の回転速度がその影響を受けることがない。そのため、低速域位置推定手段による推定結果と高速域位置推定手段による推定結果とを、ロータ等の回転速度に応じて適切に用いることができるから、回転位置演算手段によって求められるロータ回転位置の精度を高めることができる。
なお、前記低速域位置推定手段は、モータ電流検出手段(9)によって検出されるモータ電流に基づいてモータの回転位置を推定するものであってもよい。また、前記高速域位置推定手段は、モータ電流検出手段によって検出されるモータ電流およびモータ電圧指示手段(13)によって指示されるモータ電圧に基づいてモータの回転位置を推定するものであってもよい。たとえば、モータ電流とモータ指示電圧とに基づいてモータの誘起電圧を推定し、この推定された誘起電圧に基づいてモータの回転位置を推定することができる。
A2.前記回転位置演算手段は、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度に応じて、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置または前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置のいずれかを選択する選択手段(44)を含む、A1記載のモータ制御装置。この構成によれば、回転速度検出手段によって検出されたロータ等の回転速度に応じて、低速域位置推定手段と高速域位置推定手段との演算結果を適切に選択でき、この選択に位置推定誤差の影響が影響することがない。これにより、ロータ回転位置の演算精度を高めることができる。
なお、低速域位置推定手段と高速域位置推定手段との演算結果を単純に切り換えるのではなく、両者を混合して妥当な回転位置を推定する構成とすることもできる。このようにすれば、求められる回転位置に不連続が生じることを抑制または防止できる。これにより、低速域用位置推定と高速域用位置推定との切り換え時における制御の安定性を向上できる。
より具体的には、前記回転位置演算手段は、前記低速域と高速領域との間の中速領域において、前記低速域位置推定手段が求める低速回転位置と、前記高速域位置推定手段が求める高速回転位置とを、回転速度検出手段が求める回転速度に応じて内分して内分回転位置を求める内分手段(43)を含むものであってもよい。
A3.前記回転位置演算手段によって演算されるロータの回転位置、または前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置に基づいて、ロータの回転速度を推定する回転速度推定手段(22)と、前記回転速度推定手段によって推定される推定回転速度と前記回転速度検出手段によって検出される検出回転速度との回転速度差と所定の速度差閾値とを比較する比較手段(72)と、前記比較手段による比較の結果、前記回転速度差が前記速度差閾値よりも大きい場合に、前記検出回転速度に基づいて、前記回転位置演算手段によって求められる回転位置を修正する位置修正手段(74)とをさらに含む、A2記載のモータ制御装置。
この構成によれば、前記回転位置演算手段によって演算されるロータの回転位置、または前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置に基づいて、推定ロータ回転速度が求められる。そして、この推定ロータ回転速度と、回転速度検出手段によって検出された検出回転速度との回転速度差が調べられる。この回転速度差が大きければ、推定されたロータ回転位置の誤差が大きいと考えられる。そこで、当該回転速度差と速度差閾値とが比較され、この回転速度差が速度差閾値を超えていれば、回転位置演算手段によって求められる回転位置が前記検出回転速度に基づいて修正される。これにより、位置推定誤差をさらに低減することができる。とくに、急激な速度変化時や高速回転時には、推定回転位置と実際の回転位置とにずれが生じやすく、トルク脈動が生じるおそれがある。そこで、この発明では、回転速度差が大きいときに、推定回転位置を修正するようにしている。これにより、トルク脈動を抑制できる。
たとえば、前記回転速度検出手段は、所定のサンプリング周期毎に回転速度を検出するものであり、前記回転位置演算手段は前記サンプリング周期毎にロータの回転位置を演算するものであってもよい。この場合に、前記位置修正手段は、前記回転位置演算手段の前回の演算値に対して、前記回転速度検出手段によって検出された回転速度に前記サンプリング周期を乗じた値を加算し、その加算結果を今回の演算値とするものであってもよい。
A4.モータが発生するトルクを舵取り機構(2)に伝達する車両用操舵装置であって、操舵角を検出する舵角センサ(4)と、車両の速度を検出する車速センサ(6)と、前記モータを制御するA1〜A3のいずれか一項に記載のモータ制御装置(5)とを含み、前記回転速度検出手段は、前記舵角センサによって検出される操舵角を用いて回転速度を求めるものであり、前記回転位置演算手段は、前記車速センサによって検出される車両の速度と、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度と、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置と、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置とに基づいて、前記ロータの回転位置を求めるものである、車両用操舵装置。
この構成によれば、回転速度検出手段は、車両用操舵装置に備えられた舵角センサを用いてロータ等の回転速度を求める。したがって、専用の回転速度検出手段を設ける必要がない。たとえば、この場合、回転速度検出手段は、舵角センサによって検出される操舵角を時間微分することによって、ステアリングシャフトの回転速度を求めるものであってもよい。こうして求められた回転速度は、推定された回転位置を用いておらず、舵角センサで検出された操舵角を用いているため、推定回転位置に含まれる誤差の影響を受けない。
この発明では、さらに、車速センサによって求められる車速を加味してロータの回転位置が求められるようになっている。たとえば、ロータ回転速度が中低速域にあるときには、高速域でロータが回転している場合に比較して、推定されるロータ位置の精度が低いことがある。そのため、中低速域ではモータの制御性能があまり高くなく、舵取り機構に与えられるトルクが不安定になるおそれがある。そこで、車速センサによって検出される車両の速度を加味して、ロータの回転位置が求められる。
A5.前記回転位置演算手段は、前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が第1閾値以下の低速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用い、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いずに、ロータの回転位置を求める手段(S6,S7)と、前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記第1閾値を超えており、この第1閾値よりも大きな第2閾値以下の中速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置と、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置との両方を用いてロータの回転位置を求める手段(S10〜S13)と、前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記第2閾値を超えている高速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いず、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いて、ロータの回転位置を求める手段(S8,S9)と、前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記中速域または高速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いず、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いて、ロータの回転位置を求める手段(S18,S19)とを含み、前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記低速域のときに、前記モータの駆動を停止する手段(S34)をさらに含む、A4記載の車両用操舵装置。
車両の速度が零のときは、モータが発生するトルクが多少不安定であっても差し支えなく、操舵負担が大きいからモータの発生トルクを積極的に舵取り機構に伝達することが好ましい。そこで、ロータ等の回転速度が低速域のときには、低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用い、高速域位置推定手段によって推定されるロータ回転位置を用いずに、ロータ回転位置が求められる。また、ロータ等の回転速度が中速域のときには、低速域位置推定手段および高速域位置推定手段によってそれぞれ推定されるロータ回転位置の両方を用いて、ロータ回転位置が求められる。さらに、ロータ等の回転速度が高速域のときには、低速域位置推定手段によって推定される回転位置は用いず、高速域位置推定手段によって推定されるロータ回転位置を用いてロータ回転位置が求められる。こうして求められたロータ回転位置に基づいてモータが駆動されることによって、その発生トルクが舵取り機構に伝達され、操舵または操舵補助が行われる。
一方、車両の速度が零でないときは、ロータ等の回転速度が中速域または高速域のときに、低速域位置推定手段によって推定されるロータ回転位置を用いず、高速域位置推定手段によって推定されるロータ回転位置を用いて、ロータ回転位置が求められる。さらに、ロータ等の回転速度が低速域のときには、モータの駆動が停止される。これにより、車両が走行しているときには、精度が得にくい低速域位置推定手段によって推定されるロータ回転速度を用いることなく、モータが制御される。これにより、不安定なトルクが舵取り機構に伝達されることによる違和感を低減または解消できる。その結果、操舵フィーリングを向上できる。
A6.前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記中速域のときに、回転速度が小さいほど前記モータを駆動するための駆動指令値を小さくする駆動指令値生成手段(11,S36)をさらに含む、A5記載の車両用操舵装置。
ロータ等の回転速度が中速域のときには、高速域位置推定手段が推定するロータ回転位置の推定精度は、ロータ回転速度が小さいほど悪くなる。そこで、車両が走行していて、ロータ等の回転速度が中速域のときには、当該回転速度が小さいほど、モータの駆動指令値を小さくする。これにより、モータが発生する不安定なトルクに起因する操舵違和感を低減できる。
Claims (4)
- ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータが発生するトルクを舵取り機構に伝達する車両用操舵装置であって、
操舵角を検出する舵角センサと、
車両の速度を検出する車速センサと、
前記モータを制御するモータ制御装置とを含み、
前記モータ制御装置は、
ロータまたはロータとともに回転する部材の回転速度を検出するための回転速度検出手段と、
所定の低速域に適合するように設計され、前記ロータの回転位置を推定する低速域位置推定手段と、
所定の高速域に適合するように設計され、前記ロータの回転位置を推定する高速域位置推定手段と、
前記回転速度検出手段によって検出される回転速度、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置、および前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置に基づいて、前記ロータの回転位置を求める回転位置演算手段とを含み、
前記回転位置演算手段は、
前記低速域と高速領域との間の中速領域において、前記低速域位置推定手段が求める低速回転位置と、前記高速域位置推定手段が求める高速回転位置とを、前記回転速度検出手段が求める回転速度に応じて内分して内分回転位置を求める内分手段と、
前記回転速度検出手段によって検出される回転速度に応じて、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置、前記内分手段によって求められる内分回転位置、または前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置のいずれかを選択する選択手段とを含み、
前記モータ制御装置は、さらに
前記回転位置演算手段によって演算されるロータの回転位置、または前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置に基づいて、ロータの回転速度を推定する回転速度推定手段と、
前記回転速度推定手段によって推定される推定回転速度と前記回転速度検出手段によって検出される検出回転速度との回転速度差と所定の速度差閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、前記回転速度差が前記速度差閾値よりも大きい場合に、前記検出回転速度に基づいて、前記回転位置演算手段によって求められる回転位置を修正する位置修正手段とを含み、
前記回転速度検出手段は、前記舵角センサによって検出される操舵角を用いて回転速度を求めるものであり、
前記回転位置演算手段は、前記車速センサによって検出される車両の速度と、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度と、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置と、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置とに基づいて、前記ロータの回転位置を求めるものであり、
前記回転位置演算手段は、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が第1閾値以下の低速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用い、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いずに、ロータの回転位置を求める手段と、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記第1閾値を超えており、この第1閾値よりも大きな第2閾値以下の中速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置と、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置とを前記内分手段で内分してロータの回転位置を求める手段と、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記第2閾値を超えている高速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いず、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いて、ロータの回転位置を求める手段と、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記中速域または高速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いず、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いて、ロータの回転位置を求める手段とを含み、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記低速域のときに、前記モータの駆動を停止する手段をさらに含む、
車両用操舵装置。 - 前記回転位置演算手段は、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度に応じて変化する内分係数を演算する内分係数演算手段をさらに含み、
前記内分手段は、前記内分係数演算手段によって演算される内分係数を用いて、前記低速回転位置と前記高速回転位置とを内分して前記内分回転位置を求める、請求項1に記載の車両用操舵装置。 - ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータが発生するトルクを舵取り機構に伝達する車両用操舵装置であって、
操舵角を検出する舵角センサと、
車両の速度を検出する車速センサと、
前記モータを制御するモータ制御装置とを含み、
前記モータ制御装置は、
ロータまたはロータとともに回転する部材の回転速度を検出するための回転速度検出手段と、
所定の低速域に適合するように設計され、前記ロータの回転位置を推定する低速域位置推定手段と、
所定の高速域に適合するように設計され、前記ロータの回転位置を推定する高速域位置推定手段と、
前記回転速度検出手段によって検出される回転速度、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置、および前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置に基づいて、前記ロータの回転位置を求める回転位置演算手段とを含み、
前記回転位置演算手段は、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度に応じて、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置または前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置のいずれかを選択する選択手段を含み、
前記モータ制御装置は、さらに
前記回転位置演算手段によって演算されるロータの回転位置、または前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置に基づいて、ロータの回転速度を推定する回転速度推定手段と、
前記回転速度推定手段によって推定される推定回転速度と前記回転速度検出手段によって検出される検出回転速度との回転速度差と所定の速度差閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、前記回転速度差が前記速度差閾値よりも大きい場合に、前記検出回転速度に基づいて、前記回転位置演算手段によって求められる回転位置を修正する位置修正手段とを含み、
前記回転速度検出手段は、前記舵角センサによって検出される操舵角を用いて回転速度を求めるものであり、
前記回転位置演算手段は、前記車速センサによって検出される車両の速度と、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度と、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置と、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置とに基づいて、前記ロータの回転位置を求めるものであり、
前記回転位置演算手段は、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が第1閾値以下の低速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用い、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いずに、ロータの回転位置を求める手段と、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記第1閾値を超えており、この第1閾値よりも大きな第2閾値以下の中速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置と、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置との両方を用いてロータの回転位置を求める手段と、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零の場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記第2閾値を超えている高速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いず、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いて、ロータの回転位置を求める手段と、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記中速域または高速域のときに、前記低速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いず、前記高速域位置推定手段によって推定されるロータの回転位置を用いて、ロータの回転位置を求める手段とを含み、
前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記低速域のときに、前記モータの駆動を停止する手段をさらに含む、車両用操舵装置。 - 前記車速センサによって検出される車両の速度が零でない場合に、前記回転速度検出手段によって検出される回転速度が前記中速域のときに、回転速度が小さいほど前記モータを駆動するための駆動指令値を小さくする駆動指令値生成手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用操舵装置。
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