JP2004023843A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】正弦波PWM駆動、歪み正弦波駆動、矩形波駆動のいずれの駆動も可能で、且つ、電流制御の応答性が良好なモータ制御装置を提供する。
【解決手段】dq軸座標系での電流制御演算により、第1のd軸電圧指令値とq電圧指令値とを求める電流制御手段2と、交流モータ11の回転角と、d軸電圧指令値、及びq軸電圧指令値と、直流電源電圧と、に基づいて、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値を演算する電圧制限値演算手段7と、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値に基づいて、d軸電圧指令値、及びq軸電圧指令値を、それぞれの上下限値の範囲内に制限し、第2のd軸電圧指令値、及び第2のq軸電圧指令値を求める電圧制限手段3と、を備え、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値は、電力変換装置9が出力可能な8通りの基本電圧ベクトルのうち、零ベクトルを除く6個の電圧ベクトルで囲まれる範囲の、外周上の値とすることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】dq軸座標系での電流制御演算により、第1のd軸電圧指令値とq電圧指令値とを求める電流制御手段2と、交流モータ11の回転角と、d軸電圧指令値、及びq軸電圧指令値と、直流電源電圧と、に基づいて、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値を演算する電圧制限値演算手段7と、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値に基づいて、d軸電圧指令値、及びq軸電圧指令値を、それぞれの上下限値の範囲内に制限し、第2のd軸電圧指令値、及び第2のq軸電圧指令値を求める電圧制限手段3と、を備え、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値は、電力変換装置9が出力可能な8通りの基本電圧ベクトルのうち、零ベクトルを除く6個の電圧ベクトルで囲まれる範囲の、外周上の値とすることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流モータを制御するモータ制御装置に係り、特に、出力電圧を制限する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
モータ制御装置に関する従来技術として、特開平8−191600号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
この従来例では、図5に示すように、d軸電圧指令とq軸電圧指令の2乗和が一定(dq座標上で円)となるようにそれぞれの軸の電圧を制限し、これに連動して電流制御演算の積分を中止することにより、電流の制御性・応答性を改善する方法について開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図2、従来におけるモータ制御装置にて用いられるインバータの、出力電圧範囲を示す説明図である。3相インバータの出力電圧範囲は、モータの駆動方法により異なる。インバータのハードウエア的な制限で決まる出力電圧範囲は、同図に示す6角形の内側となる。更に、正弦波PWMで駆動する場合においては、その出力電圧範囲は図2に示す6角形に内接する円の内側となる。
【0005】
ところで、正弦波PWM駆動を行なうという制約を外した場合には、より大きな電圧を出力することが可能である。即ち、図2の6角形とその内接円に囲まれた領域をも使用すれば、より基本波成分が大きい電圧を出力することができる。
【0006】
この領域を使用する駆動方法として、過変調領域をも使用するPWM駆動(以下、歪み正弦波PWM駆動という)や矩形波駆動が知られている。このような駆動方法は、近年のモータの高回転化・高出力化に対応して必要な駆動方法となりつつある。
【0007】
しかしながら、従来例の方法ではdq座標系で上記電圧6角形の内接円の内側の範囲内に電圧を制限していたので、このような駆動方法を実現することはできないという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、正弦波PWM駆動、歪み正弦波駆動、矩形波駆動のいずれの駆動も可能で、且つ、電流制御の応答性が良好なモータ制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、dq軸座標系で電圧指令を生成し、その電圧指令に基づいた電圧を電力変換装置に生成させることでモータを駆動するモータ制御装置において、前記dq軸座標系での電流制御演算により、第1のd軸電圧指令値と第1のq電圧指令値とを求める電流制御手段と、前記モータの回転角と、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値と、直流電源電圧と、に基づいて、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値を演算するdq軸電圧制限値演算手段と、前記d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値に基づいて、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値を、それぞれの上下限値の範囲内に制限し、第2のd軸電圧指令値、及び第2のq軸電圧指令値を求める電圧制限手段と、を備え、前記d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値は、前記電力変換装置が出力可能な8通りの基本電圧ベクトルのうち、零ベクトルを除く6個の電圧ベクトルで囲まれる範囲の、外周上の値とすることを特徴とする。
【0010】
【発明の効果】
本発明によれば、電圧変換装置が出力可能な、8通りの基本電圧ベクトルのうち、零ベクトルを除く6個のベクトルで囲まれる範囲の、外周上の値を、d軸上下限電圧、及びq軸上下限電圧としているので、正弦波駆動の場合、歪み正弦波駆動の場合、或いは矩形波駆動の場合の、いずれの駆動方法を用いた場合であっても、最適な電圧の制御を可能とすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態(請求項1,6に対応)に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
同図に示すように、このモータ制御装置100は、トルク制御手段1と、電流制御手段2と、電圧制限手段3と、dq/3相変換手段4と、PWM生成手段5と、3相/dq変換手段6と、電圧制限値演算手段7と、位相・速度演算手段8と、電力変換手段9と、交流モータ11と、交流モータ11の相電流を検出する電流センサ10と、交流モータ11の回転角を検出する回転位置センサ12と、を有している。
【0013】
トルク制御手段1は、トルク指令Te*と交流モータ11の回転速度Weとから、トルク指令値Te*に一致するトルクを出力するためのd軸(磁束成分)電流とq軸(トルク成分)電流を計算する。また、回転速度Weに応じて、効率を最大にするd軸電流、q軸電流の指令値id*、iq*を演算する。
【0014】
3相/dq変換手段6は、交流モータ11の相電流iu、ivを、ロータの電気的回転角θeに同期して回転する座標系であるdq座標系の物理量id、iqに変換する。
【0015】
電流制御手段2は、トルク制御手段1より出力されるd軸電流指令id*、q軸電流指令iq*と、3相/dq変換手段6で演算されたd軸電流id、q軸電流iqとの偏差に基づいて、それぞれの軸の電圧指令vd*(第1のd軸電圧指令値)、vq*(第1のq軸電圧指令値)を演算する。
【0016】
電圧制限値演算手段7は、これらの電圧指令値vd*、vq*と、位相・速度演算手段8で計算されたモータ回転位相θeとに基づいて、d軸電圧上下限値、q軸電圧上下限値を計算する。
【0017】
電圧制限手段3は、電流制御手段2より出力されるd軸電圧指令Vd*、q軸電圧指令Vq*を、電圧制限値演算手段7より出力されるd軸電圧上下限値、q軸電圧上下限値の範囲内に制限し、最終的な電圧指令vdo*(第2のd軸電圧指令値)、vqo*(第2のq軸電圧指令値)を生成する。
【0018】
dq/3相変換手段4は、dq座標系の電圧指令vdo*、vqo*を3相座標系の電圧指令値vu*、vv*、vw*に変換する。
【0019】
位相・速度演算手段8は、交流モータ11の回転角θmに基づいて、該交流モータ11の回転速度ωe、電気的回転位相θeを演算する。電気的回転位相θeは、dq/3相変換手段4と3相/dq変換手段6で使用される。
【0020】
PWM生成手段5は、dq/3相変換手段4より出力される3相の電圧指令vu*、vv*、vw*に基づいて、PWM信号を生成する。
【0021】
電力変換手段9は、PWM生成手段5より出力されるPWM信号に基づいて、バッテリ13より出力される直流電圧を交流電圧に変換し、交流モータ11に印加する。
【0022】
本実施形態において、電流制御手段2、電圧制限手段3、及び電圧制限値演算手段7が特徴となる構成要素である。以下、図3を参照しながら、これらの構成要素を詳細に説明する。
【0023】
電流制御手段2は、d軸電流成分とq軸電流成分をそれぞれ比例積分制御する機能を有している。これらの積分機能は、電圧制限手段3より出力される積分停止信号により、積分の停止・実行を行なう。
【0024】
電圧制限値演算手段7は、電圧位相演算手段7−1と、電圧6角形電圧値演算手段7−2と、電圧上下限値演算手段(dq軸電圧制限値演算手段)7−3と、を有している。
【0025】
次に、上述のように構成された本実施形態の動作について説明する。まず、電圧位相演算手段7−1では、d軸電圧指令vd*、及びq軸電圧指令vq*より、電圧指令ベクトルV*とd軸とのなす角度γを求める。次いで、角度γと回転子の回転角θeとの和(γ+θe)を求める。
【0026】
この和(γ+θe)が、電圧指令ベクトルとU相軸とのなす角度となる。この角度をπ/3周期ごとにリセットされるように処理して得られる角度を、角度θvとする。
【0027】
電圧6角形電圧値演算手段7−2では、角度θvに基づき、以下に示す演算を行なう。
【0028】
図12は、電圧指令ベクトルV*が、電圧基本ベクトルV1とV2との間にある場合(0<θe<π/3)の位相と電圧との関係を示す説明図である。なお、これ以外の位相にある場合も考え方は全く同じである。
【0029】
同図において、電圧指令ベクトルV*或いはその延長線が電圧6角形と交わる点と、原点とを結んだ電圧制限ベクトルVlimを求め、この電圧制限ベクトルVlimをd軸に投影した成分をd軸電圧制限値vd_limとし、q軸に投影した成分をq軸電圧制限値vq_limとする。この値は、幾何学的な関係より、次の、(1)、(2)式に示す関係となる(図3の電圧6角形電圧値演算手段7−2参照)。
【0030】
Vd_lim=K・Vdc{cosγ/sin(2π/3−θv)} ・・・(1)
Vq_lim=K・Vdc{sinγ/sin(2π/3−θv)} ・・・(2)
但し、
K= sqrt(2/3)・sin(π/3) [Vd≧0]
K=−sqrt(2/3)・sin(π/3) [Vd<0]
ここで、Vdcは、図1に示したバッテリ13の電圧である。
【0031】
電圧上下限値演算手段7−3では、電圧6角形電圧値演算手段7−2で演算したdq軸制限値、及びその正負に基づいて、以下に示す(3)〜(6)式により、d軸上下限値vd_max、vd_min、q軸上下限値vq_max、vq_minを演算する。
【0032】
vd_max=vd_lim [vd_lim≧0]
=0 [vd_lim<0] ・・・(3)
vd_min=0 [vd_lim≧0]
=vd_lim [vd_lim<0] ・・・(4)
vq_max=vq_lim [vq_lim≧0]
=0 [vq_lim<0] ・・・(5)
vq_min=0 [vq_lim≧0]
=vq_lim [vq_lim<0] ・・・(6)
電圧制限手段3では、電圧上下限値演算手段7−3で求められた各上下限値vd_max、vd_min、vq_max、vq_minを、d軸、q軸の電圧リミッタの制限値として、d軸電圧指令vd*、q軸電圧指令vq*の大きさを制限する。そして、最終的な電圧指令vdo*、vqo*を生成する。
【0033】
また、ここでは、電流制御手段2における積分の実行/停止を決定する。例えば、d軸では、d軸電圧指令値vd*がd軸電圧上下限値の範囲外の場合、つまり、vd*<vd_min、或いはvd*>vd_maxの場合に、d軸積分停止信号を「1」にする。それ以外の場合には、「0」にする。この信号が「1」の場合、電流制御手段2のd軸の積分が停止される。q軸でも、全く同様な動作が行なわれる。
【0034】
このように、d軸電圧指令値Vd*がd軸電圧上下限値vd_max、vd_minの範囲外の場合には、d軸電流制御の積分が停止され、q軸電圧指令値Vq*がq軸電圧上下限値vq_max、vq_minの範囲外の場合には、q軸電流制御の積分が停止される。
【0035】
以上のように、d軸電圧指令、q軸電圧指令が電力変換装置で出力可能な電圧範囲である電圧6角形の範囲内に制限されるようにしたので、電圧6角形の内接円で制限する場合では不可能である過変調時の電圧(歪み正弦波)も出力することができる。更に、電圧飽和時にはdq軸電圧の積分を停止するため、電圧飽和解消後の電流の応答性も良好となる。
【0036】
また、一般に、3相座標系(UVW座標系)の電圧指令値を演算した後で、3相電圧成分を制限する方法が知られているが、この場合には、3相の電圧指令とd軸q軸電圧指令との関係が複雑であるため、電圧が飽和した場合のdq軸電流制御演算の積分の実行/停止の処理が困難である。従って、この方法と比べても、本発明は、簡易な演算で良好な電流の応答を得ることができるという顕著な効果を得ることができる。
【0037】
図6〜図8に、それぞれ正弦波駆動PWMで出力可能な最大の相電圧波形、歪み正弦波(変調率>1)電圧波形、矩形波駆動波形を示す。これらは、U相の波形を示したものである。これらの電圧を3相座標軸上で示すと、それぞれ図9〜図11になる。
【0038】
図9に示すように、正弦波駆動を前提とすれば、電圧6角形に内接する円の外に飛び出すことはないので、この円内で電圧を制限すれば良いことがわかる。しかし、図10に示す歪み正弦波駆動(過変調駆動)や図11に示す矩形波駆動では、この円の外の領域についても使用する必要があることがわかる。これらのすべての駆動方法を実現するには、電圧6角形で囲まれる範囲内に電圧を制限すれば良い。
【0039】
本実施形態では、この6角形の領域外の電圧指令値をこの領域内に制限することで、上記のいずれの駆動方法でも最適な電圧の制限を可能にすることができる(請求項1の効果)。
【0040】
また、第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値がそれぞれd軸電圧制限値、及びq軸電圧制限値の範囲外となった場合には、電流制御手段2における積分演算を中止する。従って、電圧が飽和した後の電流の応答が良好になる(請求項6の効果)。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態(請求項1〜請求項6に対応)について説明する。全体構成は、第1の実施形態で示した図1のブロック図と同一であり、電圧制限値演算手段7′の構成のみが図3に示した電圧制限値演算手段7と相違するので、この部分の構成について説明する。
【0042】
図14は、第2の実施形態に係るモータ制御装置の構成の主要部分を示すブロック図である。この実施形態と前述した第1の実施形態との異なる点は、第1の実施形態では、電力変換手段9の出力電圧が最大となる矩形波駆動が実現できないのに対し、本実施形態では、矩形波駆動も含め第1の実施形態では実現できなかった基本波成分が大きな電圧の出力を実現できる点にある。
【0043】
図14に示すように、電圧制限値計算手段7′は、電圧位相演算手段7−11と、電圧6角形電圧値演算手段7−12と、電圧上下限値演算手段7−13と、暫定変調率演算手段7−14と、位相補償手段7−15と、位相停止移動境界位相演算手段7−16と、γn演算手段7−17と、を有している。そして、該電圧制限値演算手段7′は、暫定変調率が2/√3を超える場合に、制限値の演算方法を変更することにより、第1の実施形態では実現できなかった大きな基本波成分を含む電圧の出力を実現する。
【0044】
電圧位相演算手段7−11は、第1の実施形態(図3)にて示した電圧位相演算手段7−1と同一の構成を有している。これにより、電圧位相角θvを求める。
【0045】
暫定変調率演算手段7−14は、d軸電圧指令値vd*、q軸電圧指令値vq*と、バッテリ電圧Vdcとから、暫定変調率mを求める。
【0046】
位相停止移動境界位相演算手段7−16は、暫定変調率mと、電圧の位相停止/移動の境界の位相との関係から、その位相θs1、θs2を求める。
【0047】
位相補償手段7−15は、位相停止/移動境界位相θs1、θs2に基づいて、d軸電圧指令とq軸電圧指令とで構成される電圧指令ベクトルのU相軸とのなす角度である位相θv(電圧位相演算手段7−11より出力される)を補償し、補償電圧指令ベクトル位相θvnを生成する。
【0048】
γn演算手段7−17は、位相補償手段7−15の出力である補償電圧制限ベクトル位相θvnと、電圧位相演算手段7−11の出力である角度γと、から角度γの補償後の値γnを求める。
【0049】
電圧6角形電圧値演算手段7−12は、第1の実施形態の図3に示した符号7−1と同一の演算を行なう。相違する点は、第1の実施形態では、補償を行なわない位相θv、及び角度γを用いるのに対し、本実施形態では、補償を行なった位相θvn、及びγnを用いる点である。
【0050】
また、電圧上下限値演算手段7−13は、第1の実施形態に示したものと同一である。
【0051】
次に、第2の実施形態に係るモータ制御装置の動作について説明する。
【0052】
図15〜図17は、電圧リミッタが存在しないインバータの相電圧波形を示す特性図であり、図15は、暫定変調率mが2/√3よりも小さい場合、図16は、暫定変調率mが2/√3と等しい場合、図17は、暫定変調率mが2/√3よりも大きい場合をそれぞれ示している。
【0053】
上述したように、暫定変調率mが、m≦2/√3の場合には、位相が停止することはないが、m>2/√3の場合には電圧指令の位相は、0deg近傍と60deg近傍で位相が停止し、それ以外の位相範囲では、素速く位相が変化する。従って、暫定変調率mが2/√3を超える場合には、電圧制限ベクトルの位相は、電圧指令ベクトルの位相を操作する処理が必要となる。これを実現するのが図14に示した電圧制限値演算手段7′である。
【0054】
図18は、暫定変調率mと、位相が停止する領域、及び位相が移動する領域との関係を示す特性図である。同図に示すデータから、暫定変調率mにより、位相の停止、移動する境界位相θs1、θs2を求めることができることが理解される。暫定変調率mが2/√3以下の場合にはθs1=0(rad)、θs2=π/3である。つまり位相は停止せず、常に、電圧指令ベクトルの位相と電圧制限ベクトルの位相が同一となる(θvn=θv)。
【0055】
また、暫定変調率mが2/√3を超える場合には、その値が大きくなるに従ってθs1は0から増加し,θs2はπ/3から減少し、暫定変調率mが∞となった場合には、θs1=θs2=π/6となる。図14に示す暫定変調率演算手段7−14と位相停止移動境界位相演算手段7−16により、暫定変調率mに応じて位相の停止移動する境界位相θs1、θs2が求められる。
【0056】
次に、位相補償手段7−15とγn演算手段7−17とにより、d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*とで構成される電圧指令ベクトルの位相θvを補償し、更に、補償電圧指令ベクトル位相θvnとγの値を補償したγnを求める。
【0057】
図13にこれらの位相の関係を示した。電圧指令ベクトルの大きさが電圧6角形の外接円より大きい場合、即ち、暫定変調率mが2/√3を超える場合を示している。
【0058】
電圧指令ベクトルV*の位相θvは、以下の(7)式で示すことができる。
【0059】
θv=θe+γ ・・・(7)
電圧制限ベクトルVlimの位相がθvnであるから、γnは、以下の(8)式で示すことができる。
【0060】
γn=θvn−θv=θvn−θe−γ ・・・(8)
つまり、暫定変調率mが2/√3を超える場合には、上記の関係に基づいて電圧制限値の演算に必要なγnを、γn演算手段7−17で求める。
【0061】
また、図19は、暫定変調率mが2/√3より大きい場合の、電圧指令ベクトルV*と電圧制限ベクトルVlimの関係を示す説明図であり、図20は、暫定変調率mが2/√3以下の場合の、電圧指令ベクトルV*と電圧制限ベクトルVlimとの関係を示す説明図である。
【0062】
以上のような動作により、暫定変調率mを大きくするほど、PWM信号を矩形波出力電圧に近付くように設定することが可能となる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、暫定変調率が2/√3を超える場合に上記のように位相を補償することで、大きな基本波成分の電圧を出力することが可能になる。また、出力電圧がインバータで出力可能な最大値である矩形波駆動も可能である。
【0064】
そして、図15〜図17に、それぞれ暫定変調率mが2/√3と比較して、小さい場合、等しい場合、大きい場合の相電圧波形を示す。3相交流の場合、60deg周期の対称性があるので、0〜60degの範囲について考えれば十分である。従って、この範囲について説明する。
【0065】
m<2/√3の場合には、3相の電圧のうちいずれか飽和していない相電圧があるので(図15ではW相)、位相が停止することはない。従って、第1の電圧指令と電力変換装置の出力電圧の位相は同一となる。
【0066】
m=2/√3の場合には、0、60degでは3相の電圧全てが上下限値もしくはその範囲外となる。この暫定変調率mが、第1の電圧指令と出力電圧の位相が一致する上限の変調率である。
【0067】
m>2/√3の場合には、電圧指令の位相は、0deg近傍と60deg近傍で位相が停止し、それ以外の位相範囲で素速く位相変化する。
【0068】
このように、暫定変調率mが2/√3以下であるか否かにより、電圧指令の位相と出力電圧の位相が一致するか、或いは異なるかの差が生じるのである。
【0069】
そこで、本実施形態では、暫定変調率mが2/√3以下である場合と、それを超える場合とで、d軸上下限電圧値、q軸上下限電圧値の演算方法を変更する。これにより、矩形波駆動(m=∞)を含むm>1を超える過変調領域全域で適切な電圧制限を可能にする(請求項2の効果)。
【0070】
また、前述したように、可変調領域で暫定変調率mが2/√3以下である場合には、電圧指令と出力電圧の位相が同一となるので、dq軸座標系で同じように電圧制限を行なえば応答性の良好な電流制御ができる(請求項3の効果)。
【0071】
更に、可変調領域で暫定変調率mが2/√3を超える場合には、電圧指令と出力電圧の位相を異ならせる必要がある。そこで、dq軸座標系で同じように電圧制限を行なえば応答性の良好な電流制御ができる(請求項4の効果)。
【0072】
また、可変調領域で暫定変調率mが2/√3を超える場合には、電圧指令と出力電圧の位相を異ならせる必要がある。その変化のさせ方は、暫定変調率mが2/√3以上の場合、暫定変調率mが大きくなるに従って、電圧の位相が2nπ/6に停止する範囲が図17に示すように増加させる。
【0073】
以上により、矩形波駆動を含む2/√3を超える過変調領域においても応答性の良好な電流制御ができる(請求項5の効果)。
【0074】
次に、本発明の第3の実施形態(請求項7に対応)について説明する。第3の実施形態に係るモータ制御装置は、第1,第2の実施形態と比較して、電圧制限値演算手段7の構成のみが相違するので、この部分の構成についてのみ説明する。図21は、第3の実施形態に係るモータ制御装置に含まれる、電流制御手段2、電圧制限手段3、及び電圧制限値演算手段7″の構成を示すブロック図である。
【0075】
同図に示すように電圧制限値演算手段7は、電圧位相演算手段7−21と、電圧6角形電圧値演算手段7−22と、電圧上下限値演算手段7−23と、暫定変調率演算手段7−24と、位相補償手段7−25と、位相停止移動境界位相演算手段7−26と、γn演算手段7−27と、制限値演算手段7−28と、制限値選択手段7−29と、を具備している。そして、本実施形態では、交流モータ11の回転数に応じて、電圧の制限値を変化させるものである。
【0076】
制限値演算手段7−28は、電圧6角形に内接する円の範囲内に電圧を制限するための制限値演算を行なう。
【0077】
即ち、以下に示す(9)、(10)式により、第1のd軸電圧制限値vd_lim1、及び第1のq軸電圧制限値vq_lim1を求める。
【0078】
vd_lim1=K′・Vdc・cosγ ・・・(9)
vq_lim1=K′・Vdc・sinγ ・・・(10)
但し、K′=sqrt(2)/2である。
【0079】
この制限値に基づいて電圧を制限すれば、出力電圧は電力変換手段で出力可能な最大の正弦波電圧以下に制限されることになる。
【0080】
一方、電圧6角形電圧値演算手段7−22では、電圧6角形の範囲内に電圧を制限制限するための演算を行なう。即ち、上述した(1)、(2)式により、vd_lim、vq_limを演算し、これらをそれぞれ、第2のd軸電圧制限値vd_lim2、及び第2のd軸電圧制限値vq_lim2とする。
【0081】
制限値選択手段7−29は、交流モータ11の回転速度ωeが所定値以下の場合には、制限値演算手段7−28の出力、即ち、(9)、(10)式により求められる第1のd軸、q軸電圧制限値を選択し、所定値を超える場合には、電圧6角形電圧値演算手段7−22の出力、即ち、(1)、(2)式により求められる第2のd軸、q軸電圧制限値を選択する。
【0082】
以上の動作により、低い回転域では正弦波電圧となるので、モータ電流のリップルが小さくなり、トルクリップも小さくなる。一方、高回転域では、矩形波出力までが可能となるので高回転域の出力トルクアップを大きくすることができる。
【0083】
本実施形態では、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値を、交流モータ11の回転速度が所定値を超える場合には電圧6角形外周上の値とし、所定値以下の場合には、電圧6角形に内接する円周上の値とする。
【0084】
従って、交流モータ11の回転速度が高くなるにつれて、モータ電流の基本周波数が高くなるので、高回転速度域では、高調波可変調駆動や矩形波駆動を行なっても電流リップルは小さい。
【0085】
一方、低中回転速度域では、電流リップルが大きくなってしまう。従って、高回転速度域では電圧6角形の範囲内に電圧を制限し、低中回転速度域では電圧6角形の内接円の範囲内に電圧を制限することで、低中回転速度域での出力トルクの滑らかさと高回転域の出力トルクアップを両立することができる(請求項7の効果)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】インバータの出力電圧範囲を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施例に係るモータ制御装置の、特徴部分を示すブロック図である。
【図4】位相の関係を説明する説明図である。
【図5】従来におけるモータ制御装置の、出力電圧範囲を示す説明図である。
【図6】正弦波駆動時の相電圧波形を示す特性図である。
【図7】歪み正弦波駆動時の相電圧波形を示す特性図である。
【図8】
矩形波駆動時の相電圧波形を示す特性図である。
【図9】正弦波駆動時の電圧軌跡(3相座標上)を示す説明図である。
【図10】歪み正弦波駆動時の電圧軌跡(3相座標上)を示す説明図である。
【図11】矩形波駆動時の電圧軌跡(3相座標上)を示す説明図である。
【図12】第1の実施形態に係り、電圧制限値を求める演算方法の説明図である。
【図13】第2の実施形態に係り、電圧制限値を求める演算方法の説明図である。
【図14】本発明の第2実施例に係るモータ制御装置の、特徴部分を示すブロック図である。
【図15】m<2/√3の場合の、相電圧波形を示す特性図である。
【図16】m=2/√3の場合の、相電圧波形を示す特性図である。
【図17】m<2/√3の場合の、相電圧波形を示す特性図である。
【図18】暫定変調率mと、位相が停止する領域、及び位相が移動する領域との関係を示す特性図である。
【図19】暫定変調率mが2/√3より大きい場合の、電圧指令ベクトルと電圧制限ベクトルの関係を示す説明図である。
【図20】暫定変調率mが2/√3以下の場合の、電圧指令ベクトルと電圧制限ベクトルの関係を示す説明図である。
【図21】本発明の第3実施例に係るモータ制御装置の、特徴部分を示すブロック図である。
【符号の説明】
100 モータ制御装置
1 トルク制御手段
2 電流制御手段
3 電圧制限手段
4 dq/3相変換手段
5 PWM生成手段
6 3相/dq変換手段
7 電圧制限値演算手段
8 位相・速度計算手段
9 電力変換装置
10 電流センサ
11 交流モータ
12 回転位置センサ
7−1,7−11,7−21 電圧位相演算手段
7−2,7−12,7−22 電圧6角形電圧値演算手段
7−3,7−13,7−23 電圧上下限値演算手段
7−14,7−24 暫定変調率演算手段
7−15,7−25 位相補償手段
7−16,7−26 位相停止移動境界位相演算手段
7−17,7−27 γn演算手段
7−28 制限値演算手段
7−29 制限値選択手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流モータを制御するモータ制御装置に係り、特に、出力電圧を制限する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
モータ制御装置に関する従来技術として、特開平8−191600号公報に記載されたものが知られている。
【0003】
この従来例では、図5に示すように、d軸電圧指令とq軸電圧指令の2乗和が一定(dq座標上で円)となるようにそれぞれの軸の電圧を制限し、これに連動して電流制御演算の積分を中止することにより、電流の制御性・応答性を改善する方法について開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図2、従来におけるモータ制御装置にて用いられるインバータの、出力電圧範囲を示す説明図である。3相インバータの出力電圧範囲は、モータの駆動方法により異なる。インバータのハードウエア的な制限で決まる出力電圧範囲は、同図に示す6角形の内側となる。更に、正弦波PWMで駆動する場合においては、その出力電圧範囲は図2に示す6角形に内接する円の内側となる。
【0005】
ところで、正弦波PWM駆動を行なうという制約を外した場合には、より大きな電圧を出力することが可能である。即ち、図2の6角形とその内接円に囲まれた領域をも使用すれば、より基本波成分が大きい電圧を出力することができる。
【0006】
この領域を使用する駆動方法として、過変調領域をも使用するPWM駆動(以下、歪み正弦波PWM駆動という)や矩形波駆動が知られている。このような駆動方法は、近年のモータの高回転化・高出力化に対応して必要な駆動方法となりつつある。
【0007】
しかしながら、従来例の方法ではdq座標系で上記電圧6角形の内接円の内側の範囲内に電圧を制限していたので、このような駆動方法を実現することはできないという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、正弦波PWM駆動、歪み正弦波駆動、矩形波駆動のいずれの駆動も可能で、且つ、電流制御の応答性が良好なモータ制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、dq軸座標系で電圧指令を生成し、その電圧指令に基づいた電圧を電力変換装置に生成させることでモータを駆動するモータ制御装置において、前記dq軸座標系での電流制御演算により、第1のd軸電圧指令値と第1のq電圧指令値とを求める電流制御手段と、前記モータの回転角と、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値と、直流電源電圧と、に基づいて、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値を演算するdq軸電圧制限値演算手段と、前記d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値に基づいて、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値を、それぞれの上下限値の範囲内に制限し、第2のd軸電圧指令値、及び第2のq軸電圧指令値を求める電圧制限手段と、を備え、前記d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値は、前記電力変換装置が出力可能な8通りの基本電圧ベクトルのうち、零ベクトルを除く6個の電圧ベクトルで囲まれる範囲の、外周上の値とすることを特徴とする。
【0010】
【発明の効果】
本発明によれば、電圧変換装置が出力可能な、8通りの基本電圧ベクトルのうち、零ベクトルを除く6個のベクトルで囲まれる範囲の、外周上の値を、d軸上下限電圧、及びq軸上下限電圧としているので、正弦波駆動の場合、歪み正弦波駆動の場合、或いは矩形波駆動の場合の、いずれの駆動方法を用いた場合であっても、最適な電圧の制御を可能とすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態(請求項1,6に対応)に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
同図に示すように、このモータ制御装置100は、トルク制御手段1と、電流制御手段2と、電圧制限手段3と、dq/3相変換手段4と、PWM生成手段5と、3相/dq変換手段6と、電圧制限値演算手段7と、位相・速度演算手段8と、電力変換手段9と、交流モータ11と、交流モータ11の相電流を検出する電流センサ10と、交流モータ11の回転角を検出する回転位置センサ12と、を有している。
【0013】
トルク制御手段1は、トルク指令Te*と交流モータ11の回転速度Weとから、トルク指令値Te*に一致するトルクを出力するためのd軸(磁束成分)電流とq軸(トルク成分)電流を計算する。また、回転速度Weに応じて、効率を最大にするd軸電流、q軸電流の指令値id*、iq*を演算する。
【0014】
3相/dq変換手段6は、交流モータ11の相電流iu、ivを、ロータの電気的回転角θeに同期して回転する座標系であるdq座標系の物理量id、iqに変換する。
【0015】
電流制御手段2は、トルク制御手段1より出力されるd軸電流指令id*、q軸電流指令iq*と、3相/dq変換手段6で演算されたd軸電流id、q軸電流iqとの偏差に基づいて、それぞれの軸の電圧指令vd*(第1のd軸電圧指令値)、vq*(第1のq軸電圧指令値)を演算する。
【0016】
電圧制限値演算手段7は、これらの電圧指令値vd*、vq*と、位相・速度演算手段8で計算されたモータ回転位相θeとに基づいて、d軸電圧上下限値、q軸電圧上下限値を計算する。
【0017】
電圧制限手段3は、電流制御手段2より出力されるd軸電圧指令Vd*、q軸電圧指令Vq*を、電圧制限値演算手段7より出力されるd軸電圧上下限値、q軸電圧上下限値の範囲内に制限し、最終的な電圧指令vdo*(第2のd軸電圧指令値)、vqo*(第2のq軸電圧指令値)を生成する。
【0018】
dq/3相変換手段4は、dq座標系の電圧指令vdo*、vqo*を3相座標系の電圧指令値vu*、vv*、vw*に変換する。
【0019】
位相・速度演算手段8は、交流モータ11の回転角θmに基づいて、該交流モータ11の回転速度ωe、電気的回転位相θeを演算する。電気的回転位相θeは、dq/3相変換手段4と3相/dq変換手段6で使用される。
【0020】
PWM生成手段5は、dq/3相変換手段4より出力される3相の電圧指令vu*、vv*、vw*に基づいて、PWM信号を生成する。
【0021】
電力変換手段9は、PWM生成手段5より出力されるPWM信号に基づいて、バッテリ13より出力される直流電圧を交流電圧に変換し、交流モータ11に印加する。
【0022】
本実施形態において、電流制御手段2、電圧制限手段3、及び電圧制限値演算手段7が特徴となる構成要素である。以下、図3を参照しながら、これらの構成要素を詳細に説明する。
【0023】
電流制御手段2は、d軸電流成分とq軸電流成分をそれぞれ比例積分制御する機能を有している。これらの積分機能は、電圧制限手段3より出力される積分停止信号により、積分の停止・実行を行なう。
【0024】
電圧制限値演算手段7は、電圧位相演算手段7−1と、電圧6角形電圧値演算手段7−2と、電圧上下限値演算手段(dq軸電圧制限値演算手段)7−3と、を有している。
【0025】
次に、上述のように構成された本実施形態の動作について説明する。まず、電圧位相演算手段7−1では、d軸電圧指令vd*、及びq軸電圧指令vq*より、電圧指令ベクトルV*とd軸とのなす角度γを求める。次いで、角度γと回転子の回転角θeとの和(γ+θe)を求める。
【0026】
この和(γ+θe)が、電圧指令ベクトルとU相軸とのなす角度となる。この角度をπ/3周期ごとにリセットされるように処理して得られる角度を、角度θvとする。
【0027】
電圧6角形電圧値演算手段7−2では、角度θvに基づき、以下に示す演算を行なう。
【0028】
図12は、電圧指令ベクトルV*が、電圧基本ベクトルV1とV2との間にある場合(0<θe<π/3)の位相と電圧との関係を示す説明図である。なお、これ以外の位相にある場合も考え方は全く同じである。
【0029】
同図において、電圧指令ベクトルV*或いはその延長線が電圧6角形と交わる点と、原点とを結んだ電圧制限ベクトルVlimを求め、この電圧制限ベクトルVlimをd軸に投影した成分をd軸電圧制限値vd_limとし、q軸に投影した成分をq軸電圧制限値vq_limとする。この値は、幾何学的な関係より、次の、(1)、(2)式に示す関係となる(図3の電圧6角形電圧値演算手段7−2参照)。
【0030】
Vd_lim=K・Vdc{cosγ/sin(2π/3−θv)} ・・・(1)
Vq_lim=K・Vdc{sinγ/sin(2π/3−θv)} ・・・(2)
但し、
K= sqrt(2/3)・sin(π/3) [Vd≧0]
K=−sqrt(2/3)・sin(π/3) [Vd<0]
ここで、Vdcは、図1に示したバッテリ13の電圧である。
【0031】
電圧上下限値演算手段7−3では、電圧6角形電圧値演算手段7−2で演算したdq軸制限値、及びその正負に基づいて、以下に示す(3)〜(6)式により、d軸上下限値vd_max、vd_min、q軸上下限値vq_max、vq_minを演算する。
【0032】
vd_max=vd_lim [vd_lim≧0]
=0 [vd_lim<0] ・・・(3)
vd_min=0 [vd_lim≧0]
=vd_lim [vd_lim<0] ・・・(4)
vq_max=vq_lim [vq_lim≧0]
=0 [vq_lim<0] ・・・(5)
vq_min=0 [vq_lim≧0]
=vq_lim [vq_lim<0] ・・・(6)
電圧制限手段3では、電圧上下限値演算手段7−3で求められた各上下限値vd_max、vd_min、vq_max、vq_minを、d軸、q軸の電圧リミッタの制限値として、d軸電圧指令vd*、q軸電圧指令vq*の大きさを制限する。そして、最終的な電圧指令vdo*、vqo*を生成する。
【0033】
また、ここでは、電流制御手段2における積分の実行/停止を決定する。例えば、d軸では、d軸電圧指令値vd*がd軸電圧上下限値の範囲外の場合、つまり、vd*<vd_min、或いはvd*>vd_maxの場合に、d軸積分停止信号を「1」にする。それ以外の場合には、「0」にする。この信号が「1」の場合、電流制御手段2のd軸の積分が停止される。q軸でも、全く同様な動作が行なわれる。
【0034】
このように、d軸電圧指令値Vd*がd軸電圧上下限値vd_max、vd_minの範囲外の場合には、d軸電流制御の積分が停止され、q軸電圧指令値Vq*がq軸電圧上下限値vq_max、vq_minの範囲外の場合には、q軸電流制御の積分が停止される。
【0035】
以上のように、d軸電圧指令、q軸電圧指令が電力変換装置で出力可能な電圧範囲である電圧6角形の範囲内に制限されるようにしたので、電圧6角形の内接円で制限する場合では不可能である過変調時の電圧(歪み正弦波)も出力することができる。更に、電圧飽和時にはdq軸電圧の積分を停止するため、電圧飽和解消後の電流の応答性も良好となる。
【0036】
また、一般に、3相座標系(UVW座標系)の電圧指令値を演算した後で、3相電圧成分を制限する方法が知られているが、この場合には、3相の電圧指令とd軸q軸電圧指令との関係が複雑であるため、電圧が飽和した場合のdq軸電流制御演算の積分の実行/停止の処理が困難である。従って、この方法と比べても、本発明は、簡易な演算で良好な電流の応答を得ることができるという顕著な効果を得ることができる。
【0037】
図6〜図8に、それぞれ正弦波駆動PWMで出力可能な最大の相電圧波形、歪み正弦波(変調率>1)電圧波形、矩形波駆動波形を示す。これらは、U相の波形を示したものである。これらの電圧を3相座標軸上で示すと、それぞれ図9〜図11になる。
【0038】
図9に示すように、正弦波駆動を前提とすれば、電圧6角形に内接する円の外に飛び出すことはないので、この円内で電圧を制限すれば良いことがわかる。しかし、図10に示す歪み正弦波駆動(過変調駆動)や図11に示す矩形波駆動では、この円の外の領域についても使用する必要があることがわかる。これらのすべての駆動方法を実現するには、電圧6角形で囲まれる範囲内に電圧を制限すれば良い。
【0039】
本実施形態では、この6角形の領域外の電圧指令値をこの領域内に制限することで、上記のいずれの駆動方法でも最適な電圧の制限を可能にすることができる(請求項1の効果)。
【0040】
また、第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値がそれぞれd軸電圧制限値、及びq軸電圧制限値の範囲外となった場合には、電流制御手段2における積分演算を中止する。従って、電圧が飽和した後の電流の応答が良好になる(請求項6の効果)。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態(請求項1〜請求項6に対応)について説明する。全体構成は、第1の実施形態で示した図1のブロック図と同一であり、電圧制限値演算手段7′の構成のみが図3に示した電圧制限値演算手段7と相違するので、この部分の構成について説明する。
【0042】
図14は、第2の実施形態に係るモータ制御装置の構成の主要部分を示すブロック図である。この実施形態と前述した第1の実施形態との異なる点は、第1の実施形態では、電力変換手段9の出力電圧が最大となる矩形波駆動が実現できないのに対し、本実施形態では、矩形波駆動も含め第1の実施形態では実現できなかった基本波成分が大きな電圧の出力を実現できる点にある。
【0043】
図14に示すように、電圧制限値計算手段7′は、電圧位相演算手段7−11と、電圧6角形電圧値演算手段7−12と、電圧上下限値演算手段7−13と、暫定変調率演算手段7−14と、位相補償手段7−15と、位相停止移動境界位相演算手段7−16と、γn演算手段7−17と、を有している。そして、該電圧制限値演算手段7′は、暫定変調率が2/√3を超える場合に、制限値の演算方法を変更することにより、第1の実施形態では実現できなかった大きな基本波成分を含む電圧の出力を実現する。
【0044】
電圧位相演算手段7−11は、第1の実施形態(図3)にて示した電圧位相演算手段7−1と同一の構成を有している。これにより、電圧位相角θvを求める。
【0045】
暫定変調率演算手段7−14は、d軸電圧指令値vd*、q軸電圧指令値vq*と、バッテリ電圧Vdcとから、暫定変調率mを求める。
【0046】
位相停止移動境界位相演算手段7−16は、暫定変調率mと、電圧の位相停止/移動の境界の位相との関係から、その位相θs1、θs2を求める。
【0047】
位相補償手段7−15は、位相停止/移動境界位相θs1、θs2に基づいて、d軸電圧指令とq軸電圧指令とで構成される電圧指令ベクトルのU相軸とのなす角度である位相θv(電圧位相演算手段7−11より出力される)を補償し、補償電圧指令ベクトル位相θvnを生成する。
【0048】
γn演算手段7−17は、位相補償手段7−15の出力である補償電圧制限ベクトル位相θvnと、電圧位相演算手段7−11の出力である角度γと、から角度γの補償後の値γnを求める。
【0049】
電圧6角形電圧値演算手段7−12は、第1の実施形態の図3に示した符号7−1と同一の演算を行なう。相違する点は、第1の実施形態では、補償を行なわない位相θv、及び角度γを用いるのに対し、本実施形態では、補償を行なった位相θvn、及びγnを用いる点である。
【0050】
また、電圧上下限値演算手段7−13は、第1の実施形態に示したものと同一である。
【0051】
次に、第2の実施形態に係るモータ制御装置の動作について説明する。
【0052】
図15〜図17は、電圧リミッタが存在しないインバータの相電圧波形を示す特性図であり、図15は、暫定変調率mが2/√3よりも小さい場合、図16は、暫定変調率mが2/√3と等しい場合、図17は、暫定変調率mが2/√3よりも大きい場合をそれぞれ示している。
【0053】
上述したように、暫定変調率mが、m≦2/√3の場合には、位相が停止することはないが、m>2/√3の場合には電圧指令の位相は、0deg近傍と60deg近傍で位相が停止し、それ以外の位相範囲では、素速く位相が変化する。従って、暫定変調率mが2/√3を超える場合には、電圧制限ベクトルの位相は、電圧指令ベクトルの位相を操作する処理が必要となる。これを実現するのが図14に示した電圧制限値演算手段7′である。
【0054】
図18は、暫定変調率mと、位相が停止する領域、及び位相が移動する領域との関係を示す特性図である。同図に示すデータから、暫定変調率mにより、位相の停止、移動する境界位相θs1、θs2を求めることができることが理解される。暫定変調率mが2/√3以下の場合にはθs1=0(rad)、θs2=π/3である。つまり位相は停止せず、常に、電圧指令ベクトルの位相と電圧制限ベクトルの位相が同一となる(θvn=θv)。
【0055】
また、暫定変調率mが2/√3を超える場合には、その値が大きくなるに従ってθs1は0から増加し,θs2はπ/3から減少し、暫定変調率mが∞となった場合には、θs1=θs2=π/6となる。図14に示す暫定変調率演算手段7−14と位相停止移動境界位相演算手段7−16により、暫定変調率mに応じて位相の停止移動する境界位相θs1、θs2が求められる。
【0056】
次に、位相補償手段7−15とγn演算手段7−17とにより、d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*とで構成される電圧指令ベクトルの位相θvを補償し、更に、補償電圧指令ベクトル位相θvnとγの値を補償したγnを求める。
【0057】
図13にこれらの位相の関係を示した。電圧指令ベクトルの大きさが電圧6角形の外接円より大きい場合、即ち、暫定変調率mが2/√3を超える場合を示している。
【0058】
電圧指令ベクトルV*の位相θvは、以下の(7)式で示すことができる。
【0059】
θv=θe+γ ・・・(7)
電圧制限ベクトルVlimの位相がθvnであるから、γnは、以下の(8)式で示すことができる。
【0060】
γn=θvn−θv=θvn−θe−γ ・・・(8)
つまり、暫定変調率mが2/√3を超える場合には、上記の関係に基づいて電圧制限値の演算に必要なγnを、γn演算手段7−17で求める。
【0061】
また、図19は、暫定変調率mが2/√3より大きい場合の、電圧指令ベクトルV*と電圧制限ベクトルVlimの関係を示す説明図であり、図20は、暫定変調率mが2/√3以下の場合の、電圧指令ベクトルV*と電圧制限ベクトルVlimとの関係を示す説明図である。
【0062】
以上のような動作により、暫定変調率mを大きくするほど、PWM信号を矩形波出力電圧に近付くように設定することが可能となる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、暫定変調率が2/√3を超える場合に上記のように位相を補償することで、大きな基本波成分の電圧を出力することが可能になる。また、出力電圧がインバータで出力可能な最大値である矩形波駆動も可能である。
【0064】
そして、図15〜図17に、それぞれ暫定変調率mが2/√3と比較して、小さい場合、等しい場合、大きい場合の相電圧波形を示す。3相交流の場合、60deg周期の対称性があるので、0〜60degの範囲について考えれば十分である。従って、この範囲について説明する。
【0065】
m<2/√3の場合には、3相の電圧のうちいずれか飽和していない相電圧があるので(図15ではW相)、位相が停止することはない。従って、第1の電圧指令と電力変換装置の出力電圧の位相は同一となる。
【0066】
m=2/√3の場合には、0、60degでは3相の電圧全てが上下限値もしくはその範囲外となる。この暫定変調率mが、第1の電圧指令と出力電圧の位相が一致する上限の変調率である。
【0067】
m>2/√3の場合には、電圧指令の位相は、0deg近傍と60deg近傍で位相が停止し、それ以外の位相範囲で素速く位相変化する。
【0068】
このように、暫定変調率mが2/√3以下であるか否かにより、電圧指令の位相と出力電圧の位相が一致するか、或いは異なるかの差が生じるのである。
【0069】
そこで、本実施形態では、暫定変調率mが2/√3以下である場合と、それを超える場合とで、d軸上下限電圧値、q軸上下限電圧値の演算方法を変更する。これにより、矩形波駆動(m=∞)を含むm>1を超える過変調領域全域で適切な電圧制限を可能にする(請求項2の効果)。
【0070】
また、前述したように、可変調領域で暫定変調率mが2/√3以下である場合には、電圧指令と出力電圧の位相が同一となるので、dq軸座標系で同じように電圧制限を行なえば応答性の良好な電流制御ができる(請求項3の効果)。
【0071】
更に、可変調領域で暫定変調率mが2/√3を超える場合には、電圧指令と出力電圧の位相を異ならせる必要がある。そこで、dq軸座標系で同じように電圧制限を行なえば応答性の良好な電流制御ができる(請求項4の効果)。
【0072】
また、可変調領域で暫定変調率mが2/√3を超える場合には、電圧指令と出力電圧の位相を異ならせる必要がある。その変化のさせ方は、暫定変調率mが2/√3以上の場合、暫定変調率mが大きくなるに従って、電圧の位相が2nπ/6に停止する範囲が図17に示すように増加させる。
【0073】
以上により、矩形波駆動を含む2/√3を超える過変調領域においても応答性の良好な電流制御ができる(請求項5の効果)。
【0074】
次に、本発明の第3の実施形態(請求項7に対応)について説明する。第3の実施形態に係るモータ制御装置は、第1,第2の実施形態と比較して、電圧制限値演算手段7の構成のみが相違するので、この部分の構成についてのみ説明する。図21は、第3の実施形態に係るモータ制御装置に含まれる、電流制御手段2、電圧制限手段3、及び電圧制限値演算手段7″の構成を示すブロック図である。
【0075】
同図に示すように電圧制限値演算手段7は、電圧位相演算手段7−21と、電圧6角形電圧値演算手段7−22と、電圧上下限値演算手段7−23と、暫定変調率演算手段7−24と、位相補償手段7−25と、位相停止移動境界位相演算手段7−26と、γn演算手段7−27と、制限値演算手段7−28と、制限値選択手段7−29と、を具備している。そして、本実施形態では、交流モータ11の回転数に応じて、電圧の制限値を変化させるものである。
【0076】
制限値演算手段7−28は、電圧6角形に内接する円の範囲内に電圧を制限するための制限値演算を行なう。
【0077】
即ち、以下に示す(9)、(10)式により、第1のd軸電圧制限値vd_lim1、及び第1のq軸電圧制限値vq_lim1を求める。
【0078】
vd_lim1=K′・Vdc・cosγ ・・・(9)
vq_lim1=K′・Vdc・sinγ ・・・(10)
但し、K′=sqrt(2)/2である。
【0079】
この制限値に基づいて電圧を制限すれば、出力電圧は電力変換手段で出力可能な最大の正弦波電圧以下に制限されることになる。
【0080】
一方、電圧6角形電圧値演算手段7−22では、電圧6角形の範囲内に電圧を制限制限するための演算を行なう。即ち、上述した(1)、(2)式により、vd_lim、vq_limを演算し、これらをそれぞれ、第2のd軸電圧制限値vd_lim2、及び第2のd軸電圧制限値vq_lim2とする。
【0081】
制限値選択手段7−29は、交流モータ11の回転速度ωeが所定値以下の場合には、制限値演算手段7−28の出力、即ち、(9)、(10)式により求められる第1のd軸、q軸電圧制限値を選択し、所定値を超える場合には、電圧6角形電圧値演算手段7−22の出力、即ち、(1)、(2)式により求められる第2のd軸、q軸電圧制限値を選択する。
【0082】
以上の動作により、低い回転域では正弦波電圧となるので、モータ電流のリップルが小さくなり、トルクリップも小さくなる。一方、高回転域では、矩形波出力までが可能となるので高回転域の出力トルクアップを大きくすることができる。
【0083】
本実施形態では、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値を、交流モータ11の回転速度が所定値を超える場合には電圧6角形外周上の値とし、所定値以下の場合には、電圧6角形に内接する円周上の値とする。
【0084】
従って、交流モータ11の回転速度が高くなるにつれて、モータ電流の基本周波数が高くなるので、高回転速度域では、高調波可変調駆動や矩形波駆動を行なっても電流リップルは小さい。
【0085】
一方、低中回転速度域では、電流リップルが大きくなってしまう。従って、高回転速度域では電圧6角形の範囲内に電圧を制限し、低中回転速度域では電圧6角形の内接円の範囲内に電圧を制限することで、低中回転速度域での出力トルクの滑らかさと高回転域の出力トルクアップを両立することができる(請求項7の効果)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】インバータの出力電圧範囲を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施例に係るモータ制御装置の、特徴部分を示すブロック図である。
【図4】位相の関係を説明する説明図である。
【図5】従来におけるモータ制御装置の、出力電圧範囲を示す説明図である。
【図6】正弦波駆動時の相電圧波形を示す特性図である。
【図7】歪み正弦波駆動時の相電圧波形を示す特性図である。
【図8】
矩形波駆動時の相電圧波形を示す特性図である。
【図9】正弦波駆動時の電圧軌跡(3相座標上)を示す説明図である。
【図10】歪み正弦波駆動時の電圧軌跡(3相座標上)を示す説明図である。
【図11】矩形波駆動時の電圧軌跡(3相座標上)を示す説明図である。
【図12】第1の実施形態に係り、電圧制限値を求める演算方法の説明図である。
【図13】第2の実施形態に係り、電圧制限値を求める演算方法の説明図である。
【図14】本発明の第2実施例に係るモータ制御装置の、特徴部分を示すブロック図である。
【図15】m<2/√3の場合の、相電圧波形を示す特性図である。
【図16】m=2/√3の場合の、相電圧波形を示す特性図である。
【図17】m<2/√3の場合の、相電圧波形を示す特性図である。
【図18】暫定変調率mと、位相が停止する領域、及び位相が移動する領域との関係を示す特性図である。
【図19】暫定変調率mが2/√3より大きい場合の、電圧指令ベクトルと電圧制限ベクトルの関係を示す説明図である。
【図20】暫定変調率mが2/√3以下の場合の、電圧指令ベクトルと電圧制限ベクトルの関係を示す説明図である。
【図21】本発明の第3実施例に係るモータ制御装置の、特徴部分を示すブロック図である。
【符号の説明】
100 モータ制御装置
1 トルク制御手段
2 電流制御手段
3 電圧制限手段
4 dq/3相変換手段
5 PWM生成手段
6 3相/dq変換手段
7 電圧制限値演算手段
8 位相・速度計算手段
9 電力変換装置
10 電流センサ
11 交流モータ
12 回転位置センサ
7−1,7−11,7−21 電圧位相演算手段
7−2,7−12,7−22 電圧6角形電圧値演算手段
7−3,7−13,7−23 電圧上下限値演算手段
7−14,7−24 暫定変調率演算手段
7−15,7−25 位相補償手段
7−16,7−26 位相停止移動境界位相演算手段
7−17,7−27 γn演算手段
7−28 制限値演算手段
7−29 制限値選択手段
Claims (7)
- dq軸座標系で電圧指令を生成し、その電圧指令に基づいた電圧を電力変換装置に生成させることでモータを駆動するモータ制御装置において、
前記dq軸座標系での電流制御演算により、第1のd軸電圧指令値と第1のq電圧指令値とを求める電流制御手段と、
前記モータの回転角と、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値と、直流電源電圧と、に基づいて、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値を演算するdq軸電圧制限値演算手段と、
前記d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値に基づいて、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値を、それぞれの上下限値の範囲内に制限し、第2のd軸電圧指令値、及び第2のq軸電圧指令値を求める電圧制限手段と、を備え、
前記d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値は、前記電力変換装置が出力可能な8通りの基本電圧ベクトルのうち、零ベクトルを除く6個の電圧ベクトルで囲まれる範囲の、外周上の値とすることを特徴とするモータ制御装置。 - 前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値が、前記6個のベクトルで囲まれる範囲の、外側となる値となった場合には、
前記電力変換装置で出力可能な最大の正弦波電圧に対する第1の電圧指令の大きさの比率を示す暫定変調率が2/√3以下である場合と、2/√3を超える場合とで、前記d軸上下限電圧値、及び前記q軸上下限電圧値の演算方法を変更することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記暫定変調率が2/√3以下である場合には、
前記d軸上下限電圧値とq軸上下限電圧値とで構成される電圧制限値ベクトルの位相が、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値で構成される第1の電圧指令ベクトルの位相と一致するように、前記電圧制限値ベクトルが決定されることを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。 - 前記暫定変調率が2/√3を超える場合には、
前記暫定変調率の大きさに応じて、前記d軸上下限電圧値とq軸上下限電圧値とで構成される電圧制限値ベクトルの位相と、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値で構成される第1の電圧指令ベクトルの位相との関係を変化させることを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。 - 前記暫定変調率が2/√3を超える場合には、
前記電圧制限値ベクトルの位相は、前記第1の電圧指令ベクトルの位相が2nπ/6(n:整数)の場合には、この位相に一致し、
前記第1の電圧指令ベクトルの位相が2nπ/6以外の場合には、前記暫定変調率が大きくなるに従って、この位相に停留する前記第1の電圧指令ベクトルの位相範囲を広くすることを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。 - 前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値がそれぞれ前記d軸上下限値電圧、及びq軸上下限値電圧の範囲外となった場合には、前記電流制御手段における積分演算を中止することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- dq軸座標系で電圧指令を生成し、その電圧指令に基づいた電圧を電力変換装置に生成させることでモータを駆動するモータ制御装置において、
前記dq軸座標系での電流制御演算により、第1のd軸電圧指令値と第1のq軸電圧指令値とを求める電流制御手段と、
前記モータの回転角と、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値と、直流電源電圧と、に基づいて、d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値を演算するdq軸電圧制限値演算手段と、
前記d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値に基づいて、前記第1のd軸電圧指令値、及び第1のq軸電圧指令値を、それぞの上下限値の範囲内に制限し、第2のd軸電圧指令値、及び第2のq軸電圧指令値を求める電圧制限手段と、を備え、
前記d軸上下限電圧値、及びq軸上下限電圧値は、前記モータの回転速度が所定値を超える場合には、前記電力変換装置が出力可能な8通りの基本電圧ベクトルのうち、零ベクトルを除く6個の電圧ベクトルで囲まれる範囲の、外周上の値とし、
前記モータの回転速度が前記所定値未満の場合には、前記6個の電圧ベクトルで囲まれる範囲に内接する円周上の値とすること
を特徴とするモータ制御装置。
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