JP4688317B2 - ベーカリー生地 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定性状の水中油型乳化物を含有させたベーカリー生地に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ベーカリー製品においては、マヨネーズ等のペースト状の水中油型乳化物が、焼成前もしくは焼成後のベーカリー生地に、単体で又はハム、コーン、ツナ等の他の食品原料と混合して、トッピング等の用途で使用される場合が多い。
また、ベーカリー生地自体に特有の風味・食感を付与する目的で、マヨネーズ等のペースト状の水中油型乳化物をベーカリー生地中に直接配合する場合もある。しかし、上記水中油型乳化物の配合量が少ないと特有の風味・食感が得られ難く、配合量が多いとベーカリー生地中のイーストの醗酵を阻害したり、生地の物性に悪影響を及ぼす等の問題があった。
【0003】
従って、本発明の目的は、水中油型乳化物を含有させることにより、マヨネーズ風味等の良好な風味や良好な食感が付与され、しかもイーストの醗酵の阻害や生地物性の低下等の問題のないベーカリー生地を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、0℃以上で固形状であり、B型粘度計にて、25℃において測定した粘度が1万〜100万mPa・sであり、油脂5〜65重量%、水15〜90重量%、ゼラチン、寒天、グルコマンナン、ジェランガム及びペクチンから選ばれた1種又は2種以上のゲル化剤0.2〜12重量%、澱粉0.5〜20重量%、及び卵黄2〜10重量%を含む水中油型乳化物を0℃〜10℃の冷蔵又は−40℃〜0℃の冷凍の状態で、ベーカリー生地に、分散又はトッピング又はサンド又は包あんしてなるベーカリー生地を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のベーカリー生地について詳細に説明する。
本発明で用いられる水中油型乳化物は、0℃以上で固形状であり、この固形状とは、手でもつことができ、また成形した形を保っている状態を示すものである。
【0006】
また、上記水中油型乳化物は、加温により、好ましくは25℃以上の加温により容易にペースト状になるものである。上記の加温によりペースト状になるとは、B型粘度計にて、25℃においての粘度を測定した場合、好ましくは1万〜100万mPa・s、さらに好ましくは5万〜50万mPa・sとなるものである。
【0007】
また、上記水中油型乳化物は、油脂5〜65重量%、水15〜90重量%、ゼラチン、寒天、グルコマンナン、ジェランガム及びペクチンから選ばれた1種又は2種以上のゲル化剤0.2〜12重量%、及び卵黄2〜10重量%を含むものであることが好ましい。
【0008】
上記水中油型乳化物に用いられる上記油脂としては、大豆油、ナタネ油、コーン油、綿実油、落花生油、パーム油、ヤシ油、サル脂、シア脂、パーム核油、魚油、ラード、牛脂、乳脂、からし油等の動植物性油脂、及びそれらの硬化油、分別油又はエステル交換油の中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができ、固体脂と液体油を混合した配合油も使用できる。特に、水中油型乳化物の冷却固化時の冷却速度を速くしたり、固化した水中油型乳化物の硬さを大きくする場合には、硬化油又は固体脂を使用するのが好ましい。
【0009】
また、冷凍・解凍時の油分離を抑え、滑らかな食感を得るために、上記油脂として、炭素数20以上の飽和脂肪酸1残基と不飽和脂肪酸2残基とからなるトリグリセリドを好ましくは1.5重量%以上、更に好ましくは3重量%以上含有する油脂を使用することが好ましい。
【0010】
この炭素数20以上の飽和脂肪酸1残基と不飽和脂肪酸2残基とからなるトリグリセリドを1.5重量%以上含有する油脂について説明する。
上記の炭素数20以上の飽和脂肪酸としては、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等があげられる。また、上記不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等があげられるが、特に制限はない。また、上記の炭素数20以上の飽和脂肪酸残基の結合位置は、トリグリセリドの1位、2位、3位の何れでもよい。
【0011】
上記の炭素数20以上の飽和脂肪酸1残基と不飽和脂肪酸2残基とからなるトリグリセリドを1.5重量%以上含有する油脂を得るには、ナタネ油、落花生油、魚油、サル脂、からし油もしくはマンゴ脂を分別してその低融点部分を使用するか、又はこれらの油脂をエステル交換するか、或いは合成により得ることができる。このような方法により炭素数20以上の飽和脂肪酸1残基と不飽和脂肪酸2残基とからなるトリグリセリドを1.5重量%以上含有する油脂が得られるのであり、ナタネ油、落花生油、魚油、サル脂、からし油及びマンゴー脂等の油脂そのものには、炭素数20以上の飽和脂肪酸1残基と不飽和脂肪酸2残基とからなるトリグリセリドは、1.1重量%程度しか含まれていない。
【0012】
本発明では、上記のような方法で得られた炭素数20以上の飽和脂肪酸1残基と不飽和脂肪酸2残基とからなるトリグリセリドを1.5重量%以上含有する油脂を1種又は2種以上混合して使用してもよいし、更に他の食用油脂(オリーブ油、大豆油、コーン油、綿実油、ヤシ油、パーム核油、パーム油、ラード、牛脂、乳脂等の動植物油脂及びこれらの硬化油、分別油、エステル交換油等)と混合して、混合油が炭素数20以上の飽和脂肪酸1残基と不飽和脂肪酸2残基とからなるトリグリセリドを1.5重量%以上含有するようにして使用してもよい。
【0013】
上記油脂の配合量は、水中油型乳化物中、好ましくは5〜65重量%、更に好ましくは5〜60重量%、最も好ましくは5〜55重量%である。油脂の配合量が5重量%よりも少ないと、保形性が悪くなりやすく、65重量%よりも多いと、水中油型乳化物の乳化状態が不安定となりやすい。
【0014】
また、上記水中油型乳化物における水の配合量は、好ましくは15〜90重量%、更に好ましくは15〜80重量%、最も好ましくは20〜65重量%である。ここでいう水には、水中油型乳化物の水相の調合時に配合する水の他に、乳化する前に使用した原材料に由来し混合される水分、例えば卵、液糖、食酢、トマトケチャップ、たれ、ソース中に含有される水分も含まれる。この水の配合量が15重量%よりも少ないと、水中油型乳化物が十分なゲル組織を形成しにくくなるため、保形性が悪くなりやすく、また水中油型乳化物が硬くなりやすい。また水の配合量が90重量%よりも多いと、ベーカリー生地中に練り込まれ易くなり、生地がベタつき、その作業性が悪くなりやすい。
【0015】
上記水中油型乳化物に用いられる上記ゲル化剤としては、ゼラチン、寒天、グルコマンナン、ジェランガム及びペクチンから選ばれた1種又は2種以上を使用することができ、これらのゲル化剤は、水中油型乳化物を固形状にするために使用される。このゲル化剤の配合量は、水中油型乳化物中、好ましくは0.2〜12重量%、更に好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは2〜10重量%である。ゲル化剤の配合量が0.2重量%よりも少ないと、保形性が悪くなりやすく、12重量%よりも多いと、ゲル化剤由来の風味が強調されやすい。
【0016】
また、本発明では、上記水中油型乳化物を、一旦冷却等してゲル化し、固形状とした後、具を添加する工程に対応するため、上記ゲル化剤としては、ゲル融点が低いものが好ましく、好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、最も好ましくは10〜60℃のものを用いるのがよい。
以上の条件を鑑みて、上記ゲル化剤としては、ゼラチンを主剤として配合するのが好ましい。尚、上記水中油型乳化物の硬さが不足する場合は、補助的な役割としてゼラチンより少ない量で、寒天等の高融点のゲル化剤を併用することが好ましい。
【0017】
また、上記水中油型乳化物に用いられる卵黄は乳化剤の作用をなす。該卵黄としては、卵黄、卵黄に加塩或いは加糖したもの、卵黄を65℃以上70℃未満の温度で5分間以上保持した加熱半変性卵黄、酵素処理卵黄を用いることができる。
上記酵素処理卵黄は、基質としては生卵黄、殺菌卵黄、加塩卵黄、加糖卵黄の何れも使用することができるが、水中油型乳化物の風味や、酵素反応時の微生物の増殖を抑えることを考慮すると、加塩卵黄が適しており、例えば食塩が3〜20重量%添加された加塩卵黄を用いるのが好ましく、更に好ましくは食塩が5〜8重量%添加された加塩卵黄を用いるのが良い。このとき使用する酵素としてはホスフォリパーゼAとプロテアーゼとの併用が好ましい。
【0018】
上記卵黄は単独又は2種以上混合して用いることができ、その配合量は、水中油型乳化物中、好ましくは2〜10重量%、更に好ましくは4〜8重量%である。卵黄の配合量が2重量%より少ないと、乳化が不安定となりやすく、また10重量%より多いと、卵風味が強調されやすい。
【0019】
上記卵黄として特に好ましいものは、酵素処理していない卵黄と酵素処理卵黄及び/又は加熱半変性卵黄とを併用したものである。このときの重量比率は、酵素処理していない卵黄:酵素処理卵黄及び/又は加熱半変性卵黄=1:9〜3:7である。
【0020】
上記のホスフォリパーゼAとプロテアーゼとを併用した場合の酵素処理卵黄について詳しく説明する。
上記ホスフォリパーゼAは、リン脂質加水分解酵素とも呼ばれ、リン脂質をリゾリン脂質に分解する反応を触媒する酵素であり、作用するエステル結合の位置の違いにより、ホスフォリパーゼA1(EC3.1.1.32)及びホスフォリパーゼA2(EC3.1.1.4)の2種類を使用することができ、豚等の哺乳類の膵液や、微生物を起源とした市販のホスフォリパーゼAを使用することができる。
【0021】
また、上記プロテアーゼは、蛋白質を加水分解する反応を触媒する酵素であり、植物、動物、微生物を起源とした酵素、例えばパイナップルを起源としたブロメライン、パパイヤを起源としたパパイン、哺乳類の膵液を起源としたトリプシン、哺乳類の胃液を起源としたペプシン、カビ由来のプロテアーゼ等、市販のプロテアーゼを使用することができ、特にブロメラインが最適である。
【0022】
卵黄の酵素処理の際、ホスフォリパーゼA及びプロテアーゼの添加は任意の順序、または同時に行うことができるが、プロテアーゼによるホスフォリパーゼAの加水分解を避けるためには、卵黄をホスフォリパーゼAによる酵素処理後、プロテアーゼにより酵素処理するのが好ましい。
これらの酵素としては、市販されている食品用の粉末又は液体の酵素を使用することができる。
【0023】
上記ホスフォリパーゼAの添加量は、卵黄1gに対し、好ましくは0.2〜100ホスフォリパーゼユニット、更に好ましくは0.5〜20ホスフォリパーゼユニットの活性量に相当する量を作用させるのが良い。ホスフォリパーゼユニットとは、ホスフォリパーゼの活性量を表す単位であり、1ホスフォリパーゼユニットは、pH8.0、40℃で卵黄にホスフォリパーゼAを作用させた時に、卵黄中のリン脂質から、1分間に1マイクロモルの脂肪酸を遊離する活性量である。
【0024】
また、上記プロテアーゼの添加量は、卵黄1gに対し、好ましくは0.01〜10プロテアーゼユニット、更に好ましくは0.1〜5プロテアーゼユニットの活性量に相当する量を作用させるのが良い。プロテアーゼユニットとは、プロテアーゼの活性量を表す単位であり、1プロテアーゼユニットは、pH7.0、37℃でミルクカゼインにプロテアーゼを作用させた時に、1分間に1マイクロモルのチロシンに相当する呈色度を示す活性量である。
【0025】
尚、ホスフォリパーゼA及びプロテアーゼの併用からなる上記酵素は、次の様な基準で添加しても良い。
即ち、上記酵素の添加量(合計量)は、卵黄100重量部に対し、好ましくは0.001〜0.8重量部であり、更に好ましくは0.01〜0.3重量部である。このとき、ホスフォリパーゼAとプロテアーゼとの重量比は、好ましくは20/80〜90/10であり、更に好ましくは40/60〜85/15である。
【0026】
卵黄の酵素処理は、卵黄の蛋白質やホスフォリパーゼA及びプロテアーゼが熱により変性せず、ホスフォリパーゼA及びプロテアーゼの最適温度で行うのが良く、通常20〜60℃、更に好ましくは40〜55℃の温度範囲で行うのが良い。また、酵素処理中に攪拌機等で攪拌を行うのが有利である。
また、卵黄の酵素処理の際の反応時間に特に制約はないが、1〜30時間の範囲内で行うのが好ましい。
尚、卵黄を酵素処理する方法としては、回分式で上述の条件により加水分解する方法が採用されるが、連続式で加水分解する方法でもよい。
【0027】
卵黄の酵素処理の際に、ホスフォリパーゼA及びプロテアーゼの至適pHに調整するのが良く、この目的のpH調整剤としては、食品用であれば特に限定されず、例えば乳酸、クエン酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、アスコルビン酸、酢酸等の酸味料や、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、食酢、果汁、発酵乳等の酸性物質や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等を用いることができ、例えばpH6〜9の範囲に調整するのが好ましい。また、卵黄の酵素処理の際に、酵素の安定剤として食品用の塩化カルシウム、リン酸二水素カルシウム、乳酸カルシウム等のカルシウム塩を添加しても良い。
【0028】
ホスフォリパーゼAによる卵黄のリン脂質のリゾリン脂質への分解の程度と、プロテアーゼによる卵黄の蛋白質の加水分解の程度は、酵素の添加量、反応温度、反応開始時のpH、酵素の安定剤の有無、反応時間等の影響を受けるが、特に限定されない。例えば、ホスフォリパーゼAによる卵黄のリン脂質のリゾリン脂質への分解の程度は、卵黄に含まれる全リン脂質の30〜100重量%がリゾリン脂質に分解される程度までに分解するのが好ましく、またプロテアーゼによる卵黄の蛋白質の加水分解の程度は、卵黄に含まれる蛋白質の加熱凝固性が完全に失われる程度までに分解するのが良い。
【0029】
また、上記水中油型乳化物には、必要により澱粉を配合することができる。この澱粉としては、特に制限がなく、タピオカ澱粉、コーン澱粉、ポテト澱粉等であり、この他に酸やアルカリ又は酵素で処理したり、燐酸架橋処理した化工澱粉等も使用できる。
【0030】
上記水中油型乳化物に澱粉を配合すると、水中油型乳化物の流動性の調整が容易になり、スライス状、シート状、円柱状、立方体状、直方体状、球状、半球状、釣鐘状等に成形する成形工程が円滑に行える。また、成形した水中油型乳化物の成形物を積んだり重ねたりして保管するとき、成形物同士が付着しやすいが、澱粉を配合することにより、成形物同士の付着が起こりにくくなる。
上記澱粉の配合量は、水中油型乳化物中、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%である。澱粉の配合量が0.5重量%より少ないと、付着防止効果が十分でなく、20重量%より多いと、加温調理時にペースト状になりにくくなる。
【0031】
また、上記水中油型乳化物には、乳化安定剤として、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸等の多糖類を添加しても良い。該乳化安定剤の添加量は、水中油型乳化物中、好ましくは0.01〜1重量%である。また、この乳化安定剤は、油相、水相の何れに添加しても良い。
また、上記水中油型乳化物には、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、燐酸等の有機酸及び無機酸、果汁、果肉、発酵乳等の酸味料を含有させて酸性水中油型乳化物としてもよい。
また、砂糖、ぶどう糖、液糖、還元糖、アステルパーム等のアミノ酸系甘味料等の甘味料、ソース、ケチャップ、香辛料、卵白粉末、調味料、シロップ、味噌類、梅ペースト、わさび、からし等の呈味料を含有させてもよい。
【0032】
更に、上記水中油型乳化物は、具材を含有させて具入り水中油型乳化物としても良く、斯かる具材としては、例えば、野菜、加工野菜、魚肉、畜肉、チーズ等の乳製品、卵、ハム、ソーセージ等の調理食品、生鮮食品を適当な大きさに切って塩漬けにしたもの、又は加熱調理したものが用いられる。
具入り水中油型乳化物とする場合、具材の配合量は、水中油型乳化物中、好ましくは0.1〜90重量%、更に好ましくは0.5〜80重量%とする。
【0033】
本発明のベーカリー生地は、上述のような具入り又は具を含まない水中油型乳化物を、ベーカリー生地100重量部に対して、好ましくは5〜80重量部、更に好ましくは10〜50重量部、最も好ましくは20〜30重量部含有するものである。
ここでいうベーカリー生地としては、食パン、菓子パン、パイ、デニッシュ、クロワッサン、フランスパン、セミハードロール、シュ、ドーナツ、ケーキ、クラッカー、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン等のベーカリーの生地があげられる。
【0034】
本発明のベーカリー生地は、例えば以下のようにして得ることができる。
先ず、水15〜90重量%、ゲル化剤0.2〜12重量%及び卵黄2〜10重量%からなる水相を30〜50℃、好ましくは35〜45℃に調温し、また油脂5〜65重量%からなる油相を30〜50℃、好ましくは35〜45℃に調温し、得られた水相と油相とを攪拌し、予備乳化する。このとき澱粉を用いる場合は、油相に分散させるのが好ましい。
次に、予備乳化物をホモジナイザー又はコロイドミルを用い、均質化し、水中油型乳化物とする。具入り水中油型乳化物とする場合は、上記のように調製した水中油型乳化物に具材を混合する。
【0035】
次いで、得られた水中油型乳化物を−20〜20℃、好ましくは−20〜15℃、さらに好ましくは0〜15℃まで冷却することによって、固形状にし成形する。上記成形方法としては、成形型に水中油型乳化物を入れて上記のような温度に冷却して固形状としても良いし、水中油型乳化物を上記のような温度に冷却したものを型で抜いても良い。上記成形型としては、種々の形状、大きさ、材質の成形型が用いられ得るが、ゴムを素材とする弾性成形型が好ましい。この弾性成形型は、伸縮性及び可撓性があるため、成形品を離型させて取り出すのが容易である。
【0036】
尚、具材の入れ方として、具材を含まない状態の固形状の水中油型乳化物を加温して融かした後、具材を加え、冷却して、固形状の具入り水中油型乳化物とすることはもちろん構わない。このときの固形状の水中油型乳化物を加温する温度は、使用しているゲル化剤の種類と使用量により異なる。例えばゲル化剤としてゲル融点の低いゼラチンを主体に用いた場合は、固形状の水中油型乳化物を25℃以上に加温し、攪拌することにより、具材と水中油型乳化物とを混ぜ合わせることができる。
また、水中油型乳化物と具材とを成形型に供給、充填し、冷却固化し、離型までを自動的に行う製造機で製造することももちろん可能である。
【0037】
このようにして得られた具入り又は具を含まない固形状の水中油型乳化物を、ベーカリー生地に、分散させる工程、トッピングする工程、サンドする工程及び包あんする工程の中から選ばれた1種又は2種以上の工程を行うことにより、本発明のベーカリー生地が得られる。
【0038】
上記のベーカリー生地に分散させる工程は、例えば捏ね上げたベーカリー生地に水中油型乳化物を分散させる工程や、ベーカリー生地を成形するときに水中油型乳化物をベーカリー生地に分散させる工程である。上記のベーカリー生地にトッピングする工程は、ベーカリー生地を成形するとき又はホイロ後に、水中油型乳化物をベーカリー生地にトッピングする工程である。上記のベーカリー生地にサンドする工程又は包あんする工程は、ベーカリー生地を成形するときに水中油型乳化物をベーカリー生地にサンド又は包あんする工程である。
また、これらの工程を行う際の水中油型乳化物は、冷蔵(0〜10℃)又は冷凍(−40℃〜0℃)の状態のものを用いるのが良い。
【0039】
上述のような方法にて得られる0℃以上で固形状であり、加温によりペースト状になる水中油型乳化物を含有する本発明のベーカリー生地を、焼成することによりベーカリー製品を得ることができる。
本発明のベーカリー生地は、ホイロをとらずに冷凍又は冷蔵しても良いし、ホイロをとって冷凍又は冷蔵しても良い。このホイロをとらずに冷凍又は冷蔵したものも、ホイロをとって冷凍又は冷蔵したものも、常法に従い、焼成してベーカリー製品とする。
本発明のベーカリー生地を焼成したベーカリー製品は、冷凍保存することが可能であり、冷凍保存した該ベーカリー製品は、電子レンジで解凍調理することが可能である。
【0040】
【実施例】
以下、本発明で用いられる水中油型乳化物の製造例及び実施例を挙げ、本発明のベーカリー生地を更に詳しく説明する。しかしながら、本発明はこれらの製造例及び実施例により何等制限されるものではない。
【0041】
製造例
下記表1に示す配合にて、水中油型乳化物1〜6を以下のように製造した。
【0042】
(水中油型乳化物1の製造)
下記表1に示す配合にて、ナタネサラダ油及びマスタードオイルを混合し、40℃に加温し、油相を調製する。一方、水に食塩、上白糖、食酢、澱粉、ゼラチン、液卵黄、グルタミン酸ナトリウム及びガーリックパウダーを添加溶解して、40℃の水相を調製する。この水相における水の合計量は、配合水40重量%、食酢中の水分3.6重量%及び液卵黄中の水分3.7重量%の合計量で、47.3重量%であった。
上記水相に上記油相を添加、攪拌して予備乳化後、コロイドミル(3000 r.p.m. 、クリアランス0.6mm )によって仕上げ乳化を行い、水中油型乳化物を得た。得られた乳化物をシート状に成形し、5℃まで冷却し、カットして、1cm角の直方体状の固形状の水中油型乳化物1を得た。
得られた水中油型乳化物1の25℃の粘度は、B型粘度計にて測定したところ、10万mPa・sであった。
【0043】
(水中油型乳化物2の製造)
下記表1に示す配合にて、ナタネサラダ油及びマスタードオイルを混合し、40℃に加温し、油相を調製する。一方、水に食塩、上白糖、食酢、澱粉、ゼラチン、ジェランガム、液卵黄、グルタミン酸ナトリウム及びガーリックパウダーを添加溶解して、40℃の水相を調製する。この水相における水の合計量は、配合水23.5重量%、食酢中の水分3.6重量%及び液卵黄中の水分3.7重量%の合計量で、30.8重量%であった。
上記水相に上記油相を添加、攪拌して予備乳化後、コロイドミル(3000 r.p.m. 、クリアランス0.6mm )によって仕上げ乳化を行い、水中油型乳化物を得た。得られた乳化物をシート状に成形し、5℃まで冷却し、カットして、8mm角の直方体状の固形状の水中油型乳化物2を得た。
得られた水中油型乳化物2の25℃の粘度は、B型粘度計にて測定したところ、30万mPa・sであった。
【0044】
(水中油型乳化物3の製造)
下記表1に示す配合にて、ナタネサラダ油、大豆硬化油及びマスタードオイルを混合し、40℃に加温し、油相を調製する。一方、水に食塩、上白糖、食酢、澱粉、ゼラチン、酵素処理卵黄、グルタミン酸ナトリウム及びガーリックパウダーを添加溶解して、40℃の水相を調製する。この水相における水の合計量は、配合水39重量%、食酢中の水分3.6重量%及び酵素処理卵黄中の水分2重量%の合計量で、44.6重量%であった。尚、上記酵素処理卵黄としては、7.5%加塩卵黄を水酸化ナトリウムにてpH8.2に調整したもの100kgに対して、豚の膵液由来のホスフォリパーゼA2を0.015kg(555000ホスフォリパーゼユニット)加え、40℃にて7時間処理し、次いでブロメライン0.003kg(90000プロテアーゼユニット)を加え、40℃にて4時間処理し、5℃まで冷却したものを用いた。
上記水相に上記油相を添加、攪拌して予備乳化後、コロイドミル(3000 r.p.m. 、クリアランス0.6mm )によって仕上げ乳化を行い、水中油型乳化物を得た。得られた乳化物をシート状に成形し、5℃まで冷却し、カットして、8mm角の直方体状の固形状の水中油型乳化物3を得た。
得られた水中油型乳化物3の25℃の粘度は、B型粘度計にて測定したところ、20万mPa・sであった。
【0045】
(水中油型乳化物4の製造)
水中油型乳化物1と同様の配合及び製法にて、水中油型乳化物を得た。得られた乳化物を5℃まで冷却し、一旦冷蔵保管し、使用する前に取り出し、室温(25℃)によくなじませた。この乳化物150gを攪拌し、鶏のささみ、ゴボウ及び人参の細切りを計380g、酒及びみりんを計50gを各々加え、ニーダーを用いて混合した。この混合物を成形型に20g入れ、5℃まで冷却し、球状の固形状の具入り水中油型乳化物4を得た。
得られた水中油型乳化物4の25℃の粘度は、B型粘度計にて測定したところ、2万mPa・sであった。
【0046】
(水中油型乳化物5の製造)
下記表1に示す配合にて、ナタネサラダ油、大豆硬化油及びマスタードオイルを混合し、40℃に加温し、油相を調製する。一方、水に食塩、上白糖、食酢、澱粉、ゼラチン、液卵黄、グルタミン酸ナトリウム及びガーリックパウダーを添加溶解して、40℃に調製する。これに70℃の水に溶かした寒天を加え、水相とする。この水相における水の合計量は、配合水30重量%、食酢中の水分3.6重量%及び液卵黄中の水分3.7重量%の合計量で、37.3重量%であった。
上記水相に上記油相を添加、攪拌して予備乳化後、コロイドミル(3000 r.p.m. 、クリアランス0.6mm )によって仕上げ乳化を行い、水中油型乳化物を得た。得られた乳化物をシート状に成形し、15℃まで冷却し、型抜きして、20gの円筒状の固形状の水中油型乳化物5を得た。
得られた水中油型乳化物5の25℃の粘度は、B型粘度計にて測定したところ、30万mPa・sであった。
【0047】
(水中油型乳化物6の製造)
下記表1に示す配合にて、サル脂の低融点分別油(融点10℃、沃素価59、炭素数20以上の飽和脂肪酸1残基と不飽和脂肪酸2残基とからなるトリグリセリドを9重量%含有)、ナタネサラダ油及びマスタードオイルを混合し、40℃に加温し、油相を調製する。一方、水に食塩、上白糖、食酢、澱粉、ゼラチン、ジェランガム、液卵黄、グルタミン酸ナトリウム及びガーリックパウダーを添加溶解して、40℃に調製する。この水相における水の合計量は、配合水23.5重量%、食酢中の水分3.6重量%及び液卵黄中の水分3.7重量%の合計量で、30.8重量%であった。
上記水相に上記油相を添加、攪拌して予備乳化後、コロイドミル(3000 r.p.m. 、クリアランス0.6mm )によって仕上げ乳化を行い、水中油型乳化物を得た。得られた乳化物をシート状に成形し、15℃まで冷却し、型抜きして、15gの円筒状の固形状の水中油型乳化物6を得た。
得られた水中油型乳化物6の25℃の粘度は、B型粘度計にて測定したところ、50万mPa・sであった。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1〜3
上記の水中油型乳化物1(実施例1)、水中油型乳化物2(実施例2)又は水中油型乳化物3(実施例3)を−20℃で冷凍保存したものを使用し、以下の配合及び製法により、セミハードロールをそれぞれ製造した。
焼成後のパン(セミハードロール)は、何れも、配合した水中油型乳化物が、パン生地中に分散し、ペースト状の良好な食感を有していた。また、配合した水中油型乳化物がパン生地中に練り込まれることなく、生地の作業性も良好であった。
【0050】
実施例4〜6
上記の水中油型乳化物1(実施例4)、水中油型乳化物2(実施例5)又は水中油型乳化物3(実施例6)を5℃で冷蔵保存したものを使用し、実施例1〜3と同様の配合及び以下の製法により、セミハードロールをそれぞれ製造した。
焼成後のパン(セミハードロール)は、何れも、配合した水中油型乳化物が、パン生地中に分散し、ペースト状の良好な食感を有していた。また、配合した水中油型乳化物がパン生地中に練り込まれることなく、生地の作業性も良好であった。
【0051】
実施例7〜9
上記の水中油型乳化物4(実施例7)、水中油型乳化物5(実施例8)又は水中油型乳化物6(実施例9)を−10℃に冷凍保存したものを使用し、以下の配合及び製法により、菓子パンをそれぞれ製造した。
焼成後の菓子パンは、何れも、包あんした水中油型乳化物が、ペースト状の良好な食感を有していた。また、配合した水中油型乳化物がパン生地中に練り込まれることはなかった。また、成形において水中油型乳化物が固形の物性を有しているので、ペースト状のものに比べ容易に包あんすることができ、作業性が良好であった。
【0052】
【発明の効果】
本発明のベーカリー生地は、水中油型乳化物を含有させることにより、マヨネーズ風味等の良好な風味や良好な食感が付与され、しかもイーストの醗酵の阻害や生地物性の低下等の問題のないものであり、また生地製造時の作業性の良好なものである。
Claims (3)
- 0℃以上で固形状であり、B型粘度計にて、25℃において測定した粘度が1万〜100万mPa・sであり、油脂5〜65重量%、水15〜90重量%、ゼラチン、寒天、グルコマンナン、ジェランガム及びペクチンから選ばれた1種又は2種以上のゲル化剤0.2〜12重量%、澱粉0.5〜20重量%、及び卵黄2〜10重量%を含む水中油型乳化物を0℃〜10℃の冷蔵又は−40℃〜0℃の冷凍の状態で、ベーカリー生地に、分散又はトッピング又はサンド又は包あんしてなるベーカリー生地。
- 0℃以上で固形状であり、B型粘度計にて、25℃において測定した粘度が1万〜100万mPa・sであり、油脂5〜65重量%、水15〜90重量%、ゼラチン、寒天、グルコマンナン、ジェランガム及びペクチンから選ばれた1種又は2種以上のゲル化剤0.2〜12重量%、澱粉0.5〜20重量%、及び卵黄2〜10重量%を含む水中油型乳化物を0℃〜10℃の冷蔵又は−40℃〜0℃の冷凍の状態で、ベーカリー生地に、分散させる工程、トッピングする工程、サンドする工程及び包あんする工程から選ばれた1種又は2種以上の工程を行うことを特徴とするベーカリー生地の製造法。
- 請求項1記載のベーカリー生地を焼成したベーカリー製品。
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