JP4685011B2 - 新規ホスファゼン担持触媒、そのための新規化合物および用途 - Google Patents

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Description

本発明は、新規ホスファゼン担持触媒、そのための新規化合物および用途に関する。詳しくは、一般式(1)で表される基が担体に結合しているホスファゼン担持触媒、該担持触媒を製造するに有用な新規ホスファゼン化合物、新規ホスファゼニウム塩および該担持触媒を用いる環状モノマーの重合方法、置換基の置換方法、炭素炭素結合生成反応方法に関する。
下記一般式(9)
Figure 0004685011
(式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn−は最大8個の活性水素原子を酸素原子または窒素原子上に有する活性水素化合物からn個のプロトンが離脱して導かれる形のn価の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数または0であるが、全てが同時に0ではない。Rは同種または異種の、炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。)で表されるホスファゼン化合物は安定なカチオンを形成し対アニオンを選択することで種々の触媒反応をする化合物として知られている(特許文献1参照)。これらの化合物は、種々の触媒反応を進行させるには有効であるが比較的製造方法が困難であり高価なものであるので触媒の再利用をすることが望まれる。これに対して、結合部位を有するホスファゼン化合物(いわゆるホスファゼンベース)を担体の官能基に結合させて担持することについては、知られており、そのような担持触媒を用いてアルキレンオキシドを重合することも知られている(特許文献2参照)。
特開平10−77289号公報 国際公開第01/90220号パンフレット
上記担持した触媒は有用であるが、中心の燐原子に結合した窒素に直接あるいは間接的に架橋有機高分子担体を結合させている。そのため、化学構造上、カチオンの安定性が高くなく、分解しやすいという問題点を有している。上記一般式(9)の骨格を有するホスファゼニウム塩はその化学構造上カチオンの安定性は高い。しかしながら、上記一般式(9)の骨格を有する担持触媒を得ようとしても従来公知の方法では担持することができずそのような担持触媒は得られなかった。また、一般式(9)で表されるホスファゼン化合物に結合部位を導入したものは全く知られていないし、まして結合部位を有するホスファゼン化合物を製造しこれを用いて、一般式(9)で表されるホスファゼニウム塩の性能を維持したまま、有効に担体に担持して利用することも知られていない。
従って、上記一般式(9)で表されるホスファゼニウム塩の機能をそのまま有する担持触媒が得られると極めて有用であり、そのような担持触媒の開発が望まれている。
本発明者らは上記課題を解決した触媒について鋭意検討した結果、上記一般式(9)で表されるホスファゼニウム塩の特定の部分構造変換体を用いることで一般式(9)の骨格を有する担持触媒が得られ上記課題が解決できることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は、一般式(1)で表される基が担体に結合しているホスファゼン担持触媒である。
Figure 0004685011
Figure 0004685011
(式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn−は最大8個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a,b,cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Rは水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。Dは直接結合またはNと担体を結合することができる2価の基である。)
本発明はまた、上記担持触媒を製造するに有用な一般式(2)
Figure 0004685011
(式中、a,b,cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である.Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。)で表される新規ホスファゼン化合物であり、
一般式(3)
Figure 0004685011
Figure 0004685011
(式中、a,b,cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Gは酸素原子もしくは硫黄原子である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。)で表される新規ホスファゼン化合物であり、
一般式(4)
Figure 0004685011
(式中、a,b,cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Xはハロゲン原子であり、XはXと同種または異種のハロゲン原子のアニオンである。)で表される新規ホスファゼニウム塩であり、
一般式(5)
Figure 0004685011
(式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn−は最大8個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a,b,cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Rは水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。D’は、Nと結合する1価の基である。ただし、水素、飽和炭化水素基は除く。)で表される新規ホスファゼニウム塩である。
本発明はまた、一般式(5)で表されるホスファゼニウム塩の好ましい態様である一般式(6)
Figure 0004685011
(式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn−は最大8個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Aは炭素数1〜20個の炭化水素基である。また、Rは水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。R、R、R、Rは水素または炭素数1〜8個の炭化水素基である。eは0〜200である。)で表される新規ホスファゼニウム塩であり、
一般式(5)で表されるホスファゼニウム塩の好ましい態様である一般式(7)
Figure 0004685011
Figure 0004685011
(式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn−は最大8個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Rは水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。Mは炭素−炭素不飽和結合を有する基である)で表される新規ホスファゼニウム塩であり、
一般式(5)で表されるホスファゼニウム塩の好ましい態様である一般式(8)
Figure 0004685011
(式中、mは1〜3の整数であって珪素に結合したホスファゼニウムカチオンの数を表し、n’は1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの結合した珪素化合物の数を表す。またnはmとn’の乗数であり、Zn−は最大824個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Bは炭素数1〜20個の炭化水素基である。また、Rは水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。Tは加水分解によりSi−T結合が切断できる基である。)で表される新規ホスファゼニウム塩である。
本発明はまた、上記担持触媒を用いることを特徴とする環状モノマーの重合方法であり、上記担持触媒を用いることを特徴とする置換基の置換方法であり、上記担持触媒を炭素−炭素結合生成反応に用いることを特徴とする反応方法である。
本発明のホスファゼン担持触媒は、種々の有機反応を進行させるのに極めて有効である上に、回収再使用しても活性の低下がないため有効に再利用することができ、経済的にも有利である。また、本発明のホスファゼン化合物およびホスファゼニウム塩は、上記のような本発明の担持触媒を容易に提供することができる中間体であるとともに、それ自体種々の有機反応を進行させるのに有用な触媒でもある。また、本発明の方法によれば、極めて効率よく環状モノマーの重合、置換基の置換、炭素−炭素結合生成反応等を行うことができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
一般式(1)〜(8)において、Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基である。Rで表される炭化水素基は特に限定されるものではなく、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル等の炭素数1〜10個のアルキル基;ビニル、アリル等の炭素数2〜10個のアルケニル基;エチニル、プロピニル等の炭素数2〜10個のアルキニル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル等の炭素数6〜10個のアリール基;ベンジル、フェネチル等の炭素数7〜10個のアラルキル基等が挙げられる。Rとしては、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、エチル基である。
一般式(1)〜(8)において、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。同一窒素原子上の2個のRが互いに結合することにより形成される基としては、例えば、エチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン等の炭素数2〜10個のアルキレン基;シクロヘキシレン等の炭素数3〜10個のシクロアルキレン基;ビニレン等の炭素数2〜10個のアルケニレン基;シクロヘキセニレン等の炭素数3〜10個のシクロアルケニレン基;フェニレン、ナフチレン等の炭素数6〜20個のアリーレン基;フェニルエチレン等の炭素数8〜20個のアラルキレン基等が挙げられる。これらのうち、テトラメチレン、ペンタメチレンが好ましい。このような環構造は、2個のRが結合している全ての窒素原子について形成されていてもよいし、一部の窒素原子について形成されていてもよい。
一般式(1)〜(8)において、a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。a、b、cおよびdは、好ましくは2以下の正の整数であり、a、b、cおよびdの好ましい組み合わせとしては、a、b、cおよびdの順序に関係なく、(2,1,1,1)、(1,1,1,1)、が挙げられ、特に好ましい組み合わせは、(1,1,1,1)である。一般式(1)、(5)、(6)、(7)、(8)において、Rは水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。Rで表される炭化水素基は特に限定されるものではなく、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基としては、前述の一般式(1)〜(8)のRと同様の具体例が挙げられる。Rとしては、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、エチル基である。
一般式(1)において、Dは直接結合またはNと担体とを結合することができる2価の基である。Dで表される2価の基は、ホスファゼニウムカチオンが有する窒素原子と担体とを結合することができ、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されるものではない。
Dは、上述のように本発明の目的を阻害しない限りどのようなものであっても良く、炭素原子を介してホスファゼニウムカチオンの窒素原子と結合していてもよいし、ヘテロ原子を介してホスファゼニウムカチオンの窒素原子と結合していてもよいが、炭素原子を介してホスファゼニウムカチオンの窒素原子と結合していることが結合強度を考慮すると好ましい。
ホスファゼニウムカチオンが有する窒素原子と担体との距離は、発明の趣旨から理解されるように特に限定されるものではないが、Dが有する主鎖を構成する原子数は、担体の大きさにもよるが、通常1〜600個程度であり、担持触媒の触媒濃度を高くする点では、1〜300個であることが好ましく、1〜100個であることが更に好ましい。なお、製造上の観点からは、本発明の担持触媒を製造するに有用なホスファゼン化合物(2)、(3)、ホスファゼニウム塩(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、或いはこれらに更に反応性の基を延長した化合物と、温和な条件で反応することができる官能基を予め導入した担体とを反応させることによりDを形成するのが好ましい。このような製造法で製造する場合には、両者の結合部は、ヘテロ原子、通常、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を含有する結合、例えばエーテル、エステル、チオエーテル、チオエステル、アミン、アミド等である。
また、例えば、本発明の担持触媒を製造するに有用なホスファゼニウム塩(7)と、重合性官能基含有化合物とを重合せしめること、あるいはホスファゼニウム塩(8)と、アルコキシシランなどの加水分解基を有する珪素化合物とを反応させることにより担体の合成と同時にDを形成することも好ましい例として挙げられる。
Dで表される2価の基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、けい素原子等のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基、具体的には、メチレン、エチレン、1,2−ジメチルエチレン、ペンタメチレン等の炭素数1〜50個のアルキレン基;シクロヘキシレン等の炭素数3〜50個のシクロアルキレン基;ビニレン、プロペニレン等の炭素数2〜50個のアルケニレン基;シクロヘキセニレン等の炭素数3〜50個のシクロアルケニレン基;フェニレン、ナフチレン等の炭素数6〜100個のアリーレン基;フェニルメチレン等の炭素数7〜100個のアラルキレン基;フェニレンメチレン等、これらの炭化水素基の組み合わせからなる炭化水素基;これらの炭化水素基の水素の一部が酸素原子、窒素原子、硫黄原子、けい素原子等のヘテロ原子または該ヘテロ原子を含む炭化水素水素基で置換されたもの;これらの炭化水素基の炭素の一部が酸素原子、窒素原子、硫黄原子、けい素原子等のヘテロ原子で置換されたもの、例えば、テトラメチレンジオキシ等の炭素数1〜50個のアルキレンジオキシ基;シクロヘキシレンジオキシ等の炭素数3〜50個のシクロアルキレンジオキシ基;テトラメチレンジチオ等の炭素数1〜50個のアルキレンジチオ基;N,N−ジメチルテトラメチレンジアミノ等の炭素数1〜50個のアルキレンジアミノ基;フェニレンジオキシ等の炭素数6〜100個のアリーレンジオキシ基、下記一般式(10)
Figure 0004685011
(式中、Aは炭素数1〜20個の炭化水素基である。R、R、R、Rは水素原子または炭素数1〜8個の炭化水素基である。Jは、同種または異種の酸素原子、硫黄原子またはNRであり、Rは水素原子または炭素数1〜8個の炭化水素基である。A’は直接結合または炭素数1〜20個の炭化水素基である。eは0〜200である。)で表される2価の基等が挙げられる。なお、A、R、R、R、Rおよびeの具体的説明については、後述の一般式(6)に関する説明と同じである。RはR〜Rと同じである。A’で表される炭化水素基は特に限定されるものではなく、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基としては、後述の一般式(6)のAと同様の具体例が挙げられる。
また、上述のDで表される2価の基としての酸素原子、硫黄原子、窒素原子、けい素原子等のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基は、下記一般式(11)
Figure 0004685011
(式中、n、Zn−、a、b、c、d、R、Rは一般式(1)に関する説明と同じである。)で表されるホスファゼニウム塩構造を有していてもよい。Dとしては、上記一般式(10)で表される2価の基が好ましく、Jが酸素であるもの、中でもeが0〜30であるものがより好ましい。
一般式(1)、(5)、(6)、(7)、(8)において、Zn−は、最大8個(一般式(1)、(5)、(6)、(7))または最大24個(一般式(8))の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。Zn−で表される活性水素化合物のアニオンは特に限定されるものではなく、ホスファゼニウムカチオンとイオン対を形成することができるアニオンであればどのようなものでも良い。Zn−を与える活性水素化合物としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子上に活性水素原子を有する化合物、無機酸等が挙げられる。
n−を導く化合物のうち、酸素原子上に活性水素原子を有する化合物としては、例えば、水;炭素数1〜20個のモノカルボン酸類、2〜6個のカルボキシル基を有する炭素数2〜20個の多価カルボン酸類、等のカルボン酸類;炭素数1〜20個のカルバミン酸類;炭素数1〜20個のスルホン酸類;炭素数1〜20個の1価アルコール類、2〜8個の水酸基を有する炭素数2〜20個の多価アルコール類、等のアルコール類;1〜3個の水酸基を有する炭素数6〜20個のフェノール類等のフェノール類;糖類またはその誘導体;末端に活性水素を有するポリアルキレンオキサイド類等が挙げられる。
炭素数1〜20個のモノカルボン酸類としては、例えば、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪族モノカルボン酸類、フェニル酢酸等の芳香環を含む脂肪族モノカルボン酸類、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸類、安息香酸、2−カルボキシナフタレン等の芳香族モノカルボン酸類等が挙げられる。
2〜6個のカルボキシル基を有する炭素数2〜20個の多価カルボン酸類としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、等脂肪族多価カルボン酸類、フタル酸、トリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸類等が挙げられる。
炭素数1〜20個のカルバミン酸類としては、例えば、N,N−ジエチルカルバミン酸、N−カルボキシアニリン、N,N’−ジカルボキシ−2,4−トルエンジアミン等が挙げられる。炭素数1〜20個のスルホン酸類としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸類、2−モルホリノエタンスルホン酸、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸等の複素環を含む脂肪族スルホン酸類、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、4−ニトロベンゼンスルホン酸、4,4′−ビフェニルジスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ピクリルスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、3−ピリジンスルホン酸等の複素環式スルホン酸類等が挙げられる。
炭素数1〜20個の1価アルコール類としては、例えば、メタノール、アリルアルコール、クロチルアルコール等の脂肪族1価アルコール類、シクロペンタノール等の脂環式1価アルコール類、ベンジルアルコール等の芳香環を含む脂肪族1価アルコール類等が挙げられる。2〜8個の水酸基を有する炭素数2〜20個の多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール類、1,4−シクロヘキサンジオール等の脂環式多価アルコール類等が挙げられる。
1〜3個の水酸基を有する炭素数6〜20個のフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、ニトロフェノール、クロロフェノール、ナフトール、アンスラロビン、9−フェナンスロール、1−ヒドロキシピレン等の1価フェノール類、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールA等の2価フェノール類等が挙げられる。糖類またはその誘導体としては、例えば、グルコース、ソルビトール、デキストロース、フラクトース、シュクロース等の糖類、その誘導体等が挙げられる。末端に活性水素を有するポリアルキレンオキサイド類としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、それらのコポリマー等であって2〜8個の末端を有しその末端に1〜8個の水酸基を有する数平均分子量100〜50000のポリアルキレンオキサイド類等が挙げられる。
n−を導く化合物のうち、窒素原子上に活性水素原子を有する活性水素化合物としては、例えば、アンモニア;炭素数1〜20個の一級アミン類、炭素数2〜20個の二級アミン類、2〜3個の一級もしくは二級アミノ基を有する炭素数2〜20個の多価アミン類、炭素数4〜20個の飽和環状二級アミン類、炭素数4〜20個の不飽和環状二級アミン類、2〜3個の二級アミノ基を含む炭素数4〜20個の環状の多価アミン類、等のアミン類;炭素数2〜20個の無置換またはN−一置換の酸アミド類、5〜7員環の環状アミド類、炭素数4〜10個のジカルボン酸のイミド類、等のアミド類等が挙げられる。
炭素数1〜20個の一級アミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等の脂肪族一級アミン類、シクロヘキシルアミン等の脂環式一級アミン類、ベンジルアミン、β−フェニルエチルアミン等の芳香環を含む脂肪族一級アミン類、アニリン、トルイジン等の芳香族一級アミン類等が挙げられる。
炭素数2〜20個の二級アミン類としては、例えば、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジプロピルアミン等の脂肪族二級アミン類、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式二級アミン類、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン等の芳香族二級アミン類等が挙げられる。2〜3個の一級もしくは二級アミノ基を有する炭素数2〜20個の多価アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ジ(2−アミノエチル)アミン、ヘキサメチレンジアミン、トリ(2−アミノエチル)アミン、N,N′−ジメチルエチレンジアミン等が挙げられる。炭素数4〜20個の飽和環状二級アミン類としては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリンなどが挙げられる。炭素数4〜20個の不飽和環状二級アミン類としては、例えば、3−ピロリン、ピロール、インドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、プリン等が挙げられる。
2〜3個の二級アミノ基を含む炭素数4〜20個の環状の多価アミン類としては、例えば、ピペラジン、ピラジン、1,4,7−トリアザシクロノナン等が挙げられる。炭素数2〜20個の無置換またはN−一置換の酸アミド類としては、例えば、アセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチル安息香酸アミド、N−エチルステアリン酸アミドなどが挙げられる。5〜7員環の環状アミド類としては、例えば、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
炭素数4〜10個のジカルボン酸のイミド類としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミド等が挙げられる。
n−を導く化合物のうち、硫黄原子上の活性水素を有する活性水素化合物としては、例えば、硫化水素;炭素数1〜20個の1価チオアルコール類、炭素数2〜20個の多価チオアルコール類、等のチオアルコール類;炭素数6〜20個のチオフェノール類等のチオフェノール類等が挙げられる。炭素数1〜20個の1価チオアルコール類としては、例えば、メタンチオール、エタンチオール、アリルメルカプタン等の脂肪族1価チオアルコール類、ベンジルメルカプタン等の芳香環を含む脂肪族1価チオアルコール類、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン等の脂環式1価チオアルコール類等が挙げられる。炭素数2〜20個の多価チオアルコール類としては、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、2,3−ジ(メルカプトメチル)−1,4−ブタンジチオール等が挙げられる。
炭素数6〜20個のチオフェノール類としては、例えば、チオフェノール、チオクレゾール、チオナフトール等の1価チオフェノール類、1,2−ベンゼンジチオール等の2価チオフェノール類が挙げられる。
n−を導く化合物のうち無機酸としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素などのハロゲン化水素、ほう酸、テトラフルオロほう酸、りん酸、亜りん酸、ヘキサフルオロりん酸、シアン化水素、チオシアン酸、硝酸、硫酸、炭酸、過塩素酸等が挙げられる。これらの活性水素化合物のうち、好ましくは、上述の無機酸、上述の酸素原子上に活性水素原子を有する活性水素化合物であり、より好ましくは、上述したハロゲン化水素、脂肪族1価アルコール類、脂環式1価アルコール類、芳香環を含む脂肪族1価アルコール類、脂肪族多価アルコール類、脂環式多価アルコール類、糖類またはその誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはそれらのコポリマー等であって2〜8個の末端を有しその末端に1〜8個の水酸基を有する数平均分子量100〜50000のポリアルキレンオキシド類である。
n−は、本発明の触媒を用いる反応の種類によって、好ましいアニオンが異なるため、反応に応じて、適したアニオンを適宜選択すれば良い。例えば、アルキレンオキシド等環状モノマーの重合においては、上述の酸素原子上に活性水素を有する化合物から活性水素が脱離したアニオンが好ましく、フェノール性水酸基のアルキル化においてはハロゲン原子アニオンが好ましい。一般式(1)、(5)、(6)、(7)において、nは、ホスファゼニウムカチオンの数を表すとともに、最大8個の活性水素原子を有する活性水素化合物から脱離するプロトンの個数を表す。nは1〜8の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。なお、一般式(1)で表されるホスファゼン骨格の具体例については、特開平10−77289号、特開2000−355606号、特開2004−107266号等に種々のものが開示されており、これらの公知のホスファゼン骨格に本発明を適用することができる。
一般式(8)において、mは、珪素に結合したホスファゼニウムカチオンの数を表す。mは1〜3の整数である。また、n’は、ホスファゼニウムカチオン骨格を有する基が結合した珪素化合物の数を表す。n’は1〜8の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。また、nはmとn’の乗数であり、ホスファゼニウムカチオンの合計数を表すとともに、最大24個の活性水素原子を有する活性水素化合物から脱離するプロトンの個数を表す。nは1〜24の整数であり、好ましくは1〜9の整数である。
一般式(4)において、Xはハロゲン原子であり、Xはハロゲン原子のアニオンである。Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらのうち塩素原子、臭素原子が好ましい。Xで表されるハロゲン原子のアニオンとしては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のアニオンが挙げられるが、これらのうち塩素原子、臭素原子が好ましい。XはXと同種のハロゲン原子のアニオンであってもよいし、Xと異種のハロゲン原子のアニオンであってもよい。
一般式(5)において、D’は、Nと結合することができる1価の基(但し、水素原子、飽和炭化水素基は除く。)である。D’で表される1価の基は、ホスファゼニウムカチオンが有する窒素原子と結合することができる、水素原子及び飽和炭化水素基以外の基である限り特に限定されるものではない。D’としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、けい素原子等のヘテロ原子を有する炭化水素基が挙げられ、炭素−炭素不飽和結合等の反応性官能基を有する基が挙げられ、前述のDの説明で挙げたものの内、ヘテロ原子を有する炭化水素基の一方の結合部位が、水素、ハロゲン原子、珪素等でブロックされたものが挙げられる。
一般式(5)における好ましい態様としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
《1》D’が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、けい素原子等のヘテロ原子を有する炭化水素基の中で、下記一般式(12)
Figure 0004685011
(式中、A、R、R、R、R、Jおよびeは前記一般式(10)と同じである。)で表される1価の基であるもの。なお、A、R、R、R、Rおよびeの具体的説明については、後述の一般式(6)に関する説明と同じである。JがNRである場合のRはR〜Rと同じである。
《2》一般式(6)で表されるホスファゼニウム塩。
一般式(6)において、Aは、炭素数1〜20個の炭化水素基である。Aで表される炭素数1〜20個の炭化水素基は2価の炭化水素基である限り、脂肪族炭化水素基であってもよいし芳香族炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、メチルエチレン等の炭素数1〜20個のアルキレン基;シクロヘキシレン等の炭素数3〜20個のシクロアルキレン基;ビニレン、プロペニレン等の炭素数2〜20個のアルケニレン基;シクロヘキセニレン等の炭素数3〜20個のシクロアルケニレン基;フェニレン、ナフチレン等の炭素数6〜20個のアリーレン基;フェニルメチレン等の炭素数7〜20個のアラルキレン基;フェニレンメチレン、キシリレン等、これらの基の組み合わせからなる基等が挙げられ、これらのうち、上述のアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、およびこれらの基の組み合わせからなる基が好ましく、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、キシリレン基がさらに好ましい。
一般式(6)において、R、R、RおよびRは、水素原子または炭素数1〜8個の炭化水素基である。R、R、RおよびRで表される炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基としては、前述の一般式(1)〜(6)のR、Rの具体例として挙げたものの内、炭素数1〜8個のものが挙げられる。R、R、R、Rとしては、好ましくは、水素、脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは、水素、メチル基である。一般式(6)において、eは0〜200である。eは好ましくは0〜100であり、さらに好ましくは0〜30である。
《3》一般式(7)で表されるホスファゼニウム塩。
一般式(7)において、Mは炭素−炭素不飽和結合を有する基である。これらの基は炭素−炭素不飽和結合を有するものなら特に限定されるものではないが、例えば、ビニル、クロチル、アリル等のアルケニル基;エチニル、プロピニル等のアルキニル基等の炭素−炭素不飽和結合を有する脂肪族炭化水素基が挙げられ、スチリル、ビニルベンジル、スチリルエチル等の炭素−炭素不飽和結合を有する芳香族炭化水素基が挙げられ、アクリル、メタクリル、シンナミル、アセチレンカルボニル基等の炭素−炭素不飽和結合およびカルボニル基を有する基が挙げられる。さらに、上述の基にさらに炭化水素基等が結合している基も例として挙げられる。これらのうち、ビニル、クロチル、アリル、スチリル、ビニルベンジル、スチリルエチル、アクリル、メタクリルまたは上述の基にさらに炭化水素基等が結合している基等の炭素−炭素二重結合を有する基が好ましく、ビニル、アリル、スチリル、ビニルベンジル、スチリルエチル、アクリル、メタクリルまたは上述の基にさらに炭化水素基等が結合している基等の炭素−炭素二重結合を末端に有する基がさらに好ましい。
《4》一般式(8)で表されるホスファゼニウム塩。
一般式(8)において、Bは、炭素数1〜20個の炭化水素基である。Bで表される炭素数1〜20個の炭化水素基は2価の炭化水素基である限り、脂肪族炭化水素基であってもよいし芳香族炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、メチルエチレン等の炭素数1〜20個のアルキレン基;シクロヘキシレン等の炭素数3〜20個のシクロアルキレン基;ビニレン、プロペニレン等の炭素数2〜20個のアルケニレン基;シクロヘキセニレン等の炭素数3〜20個のシクロアルケニレン基;フェニレン、ナフチレン等の炭素数6〜20個のアリーレン基;フェニルメチレン等の炭素数7〜20個のアラルキレン基;フェニレンメチレン、キシリレン等、これらの基の組み合わせからなる基等が挙げられ、これらのうち、上述のアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、およびこれらの基の組み合わせからなる基が好ましく、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、キシリレン基がさらに好ましい。また、YTは加水分解によりSi−T結合が切断できる官能基であり、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、またはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。
以下に、本発明の一般式(1)で表される基が担体に結合しているホスファゼン担持触媒について、その製造方法を説明することで更に詳しく説明する。
本発明のホスファゼン担持触媒において、一般式(1)で表される基が結合する担体は、本発明のホスファゼン担持触媒が、使用される反応溶媒に対して不溶性である限り特に限定されるものではなく、一般式(1)で表される基を結合することができる基を有するものであればどのようなものでも使用できる。そのような担体としては種々のものが公知であり、例えば、「触媒講座第10巻(工業触媒反応編4)触媒各論」,触媒学会編,第1刷,講談社,1986年,133頁〜163頁に種々のものが示されている。具体的には、SiO、Al、MgO、TiO、SnO、ZnO、ZrO等の金属酸化物;SiO−Al、SiO−MgO、SiO−ZrO、ゼオライト等の複合金属酸化物;ヘテロポリ酸金属塩や固体リン酸金属塩等の固体酸金属塩;モンモリロナイト、雲母等の層状化合物;珪藻土等の粘土鉱物に代表される無機担体;ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等の主鎖が炭素−炭素結合である有機高分子;ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の主鎖に酸素を含む有機高分子;ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド等の主鎖に窒素を含む有機高分子;ポリシロキサン、ポリシラン等の主鎖に珪素を含む有機高分子;ポリスルフィド、ポリスルホンなどの主鎖に硫黄を含む有機高分子に代表される有機高分子担体;上述の各種の有機高分子担体が適宜架橋構造を有している高分子に代表される架橋有機高分子担体等が挙げられる。これらの担体のうち、金属酸化物、主鎖が炭素−炭素結合である有機高分子、主鎖が炭素−炭素結合である架橋有機高分子等の担体が好ましく、SiO、架橋および非架橋のポリスチレン、架橋および非架橋のポリエチレンが特に好ましい。
これらの担体に、本発明における一般式(1)で表される基を結合することができる基を導入したものが用いられる。これらの基を担体に導入する方法としては、上記文献の136頁〜137頁、149頁〜150頁に種々の例が示されており、例えば、SiOの表面の水酸基をSOClと反応させ塩素に置換して導入する方法、表面の水酸基を塩素化したSiOをフェニルリチウムと反応させてフェニル基に置換し、当該フェニル基をクロロメチル化して導入する方法、ポリスチレンをクロロメチル化して導入する方法等が挙げられる。さらにクロロメチル基を含有するアルコキシシランを用い、他のアルコキシシラン等と加水分解−重縮合するか、またはシリカゲル中のシラノール基にシリル化する等により導入する方法もある。また他の担持方法として、クロロメチル基を含有するアルコキシシランを用い、アルコキシシリル基を結合させたホスファゼニウム塩を合成し、これを他のアルコキシシラン等と共に加水分解−重縮合するか、またはシリカゲル中のシラノール基にシリル化する等により担持する方法も挙げられる。
担持触媒の具体的な製造方法としては、まず、本発明のホスファゼン担持触媒製造のための有用な中間体である一般式(2)で表されるホスファゼン化合物(以下「ホスファゼン化合物(2)」という。)、一般式(3)で表されるホスファゼン化合物(以下「ホスファゼン化合物(3)」という。)、一般式(4)で表されるホスファゼニウム塩(以下「ホスファゼニウム塩(4)」という。)、一般式(5)で表されるホスファゼニウム塩(以下「ホスファゼニウム塩(5)」という。)、一般式(6)で表されるホスファゼニウム塩(以下「ホスファゼニウム塩(6)」という。)、一般式(7)で表されるホスファゼニウム塩(以下「ホスファゼニウム塩(7)」という。)、一般式(8)で表されるホスファゼニウム塩(以下「ホスファゼニウム塩(8)」という。)を製造することである。従って、以下にまず、これらホスファゼン化合物(2)、(3)及びホスファゼニウム塩(4)、(5)、(6)、(7)、(8)の製造方法について示す。
ホスファゼン化合物(2)は、下記一般式(13)で表されるホスファゼニウム塩を、例えば、活性水素化合物の水素をアルカリ金属またはアルカリ土類金属で置換したもの等と比較的高温で反応することで製造することができる。
Figure 0004685011
(式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Qn−はホスファゼニウムカチオンとイオン対を形成することができるアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の、炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。)
上記アニオンQn−としては特に制限はなく、一般式(2)で表わされるホスファゼン化合物を生成するものであればどのようなものでも良い。このようなホスファゼニウム塩としては、例えば、特開平10−77289号、特開2000−355606号に開示されているホスファゼニウム塩、「フルカ総合カタログ1995/96」フルカ ファインケミカルに開示されている、アニオンが塩素等ハロゲン原子のアニオンであるもの等が公知である。Qn−は、後述の反応を阻害しなければどのようなものでも良く、無機アニオンであっても良い。
前述の活性水素化合物の水素をアルカリ金属またはアルカリ土類金属で置換したもののアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、金属セシウム、金属マグネシウム、金属カルシウム、金属ストロンチウム、金属バリウム等が挙げられる。活性水素化合物としては、前述のZn−を導く活性水素化合物と同様のものが挙げられ、特に、アルコール類、フェノール類、チオアルコール類、チオフェノール類、アミン類等が好ましい。
一般式(13)で表されるホスファゼニウム塩と活性水素化合物の水素をアルカリ金属またはアルカリ土類金属で置換したものとの反応は、反応温度を前述のように比較的高温とする以外は、特開平10−77289号に開示されている前記一般式(9)で表されるホスファゼニウム塩の製造方法と同様の方法で行うことができる。具体的には、例えば以下の条件に従って行うことができる。
活性水素化合物の水素をアルカリ金属またはアルカリ土類金属で置換したものの使用量は、一般式(13)で表されるホスファゼニウム塩1当量に対して通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量の範囲である。
反応溶媒は反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、公知の反応溶媒が使用でき、具体例としては、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、テトラリン等の脂肪族または芳香族の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、オルトジクロロベンゼン等の脂肪族または芳香族のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル,プロピオニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,スルホラン,ヘキサメチルリン酸トリアミド,1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の極性非プロトン性溶媒類等が挙げられ、これらのうち1種類を単独でまたは2種類以上を混合して使用することができる。
反応温度は、反応基質の種類、濃度等に応じて適宜調節することができるが、比較的高温、すなわち、通常80〜300℃、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは120〜200℃の範囲である。反応時の圧力は減圧、常圧および加圧のいずれでもよいが、好ましくは10〜500kPa(絶対圧、以下同様)、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。反応時間は、反応温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間、さらに好ましくは2〜20時間の範囲である。
反応後の反応液からのホスファゼン化合物(2)の分離は、常法に従って行うことができる。例えば、反応液中に含有される固形分を濾過、遠心分離等により分離することにより、ホスファゼン化合物(2)を含有する溶液を得ることができる。当該溶液を濃縮乾固することにより、ホスファゼン化合物(2)を固体として得ることができる。さらに必要であれば再結晶等により精製することもできる。上述のようにして得られたホスファゼン化合物(2)をさらに、次式:X−D’(Xはハロゲン原子であり、D’は一般式(5)におけるD’と同様である。)で表される化合物と反応せしめることによりホスファゼニウム塩(5)とすることができる。
例えば、ホスファゼン化合物(2)をさらに、上記式:X−D’で表される化合物が、次式:X−E−Y(Xはハロゲン原子であり、Eは酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含有しても良い炭化水素基、Yは保護基で保護した水酸基、メルカプト基もしくはアミノ基)で表される化合物(a)、例えばYの保護基がアルキルシリル基である化合物等と反応させ、ホスファゼニウム塩(5)を生成させた後、Yを脱保護することで水酸基、メルカプト基もしくはアミノ基を有する構造、即ち、ホスファゼニウム塩(5)およびその好ましい態様であるホスファゼニウム塩(6)とすることができる。または更に、上記脱保護したYを、周知の方法でアルキレンオキサイドもしくはその酸素の硫黄、窒素等の置換体と反応せしめる、あるいは重合せしめることで末端を水酸基、メルカプト基もしくはアミノ基等としてホスファゼニウム塩(5)およびその好ましい態様であるホスファゼニウム塩(6)を製造することができる。
ホスファゼン化合物(2)と化合物(a)との反応は、例えば、以下の条件に従って行うことができる。反応溶媒は、前述のホスファゼン化合物(2)の製造の場合と同様である。反応温度は反応基質の種類、濃度等に応じて適宜調節することができるが、通常−78〜100℃、好ましくは−50〜80℃、さらに好ましくは0〜50℃の範囲である。反応時の圧力は減圧、常圧および加圧の何れでもよいが、好ましくは10〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。反応時間は反応温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜80時間、さらに好ましくは2〜50時間の範囲である。反応液からのホスファゼニウム塩(5)および(6)の分離は、常法に従って行うことができる。例えば、反応液に含有される固形分を濾過、遠心分離等により分離し,濾液を濃縮乾固することにより、ホスファゼニウム塩(5)および(6)を固体または粘調液体として得ることができる。さらに必要であれば再結晶、カラムクロマトグラフィー等により精製することもできる。
また、例えば、ホスファゼン化合物(2)をさらに、上記式:X−D’で表される化合物が、次式:X−L(Xはハロゲン原子であり、Lは炭素−炭素不飽和結合を有する基)で表される化合物(a’)と反応させることによりホスファゼニウム塩(7)とすることができる。
ホスファゼン化合物(2)と化合物(a’)との反応は、例えば、以下の条件に従って行うことができる。反応溶媒は、前述のホスファゼン化合物(2)の製造と同様である。加熱温度は反応基質の種類、濃度等に応じて適宜調節することができるが、通常−78〜100℃、好ましくは−50〜80℃、さらに好ましくは0〜50℃の範囲である。加熱時の圧力は減圧、常圧および加圧のいずれでも良いが、好ましくは好ましくは10〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。反応時間は反応温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常0.1〜100時間、好ましくは0.5〜80時間、さらに好ましくは2〜50時間の範囲である。反応液からのホスファゼニウム塩(7)の分離は、常法に従って行うことができる。例えば、反応液に含有される固形分を濾過、遠心分離等により分離し,濾液を濃縮乾固することにより、ホスファゼニウム塩(7)を固体として得ることができる。さらに必要であれば再結晶、カラムクロマトグラフィー等により精製することもできる。
さらに、例えば、ホスファゼン化合物(2)をさらに、上記式:X−D’で表される化合物が、次式:X−E’−Y’(Xはハロゲン原子であり、E’は炭化水素基、Y’は少なくとも1以上のハロゲン原子またはアルコキシ基等の加水分解基を有するシリル基である。)で表される有機珪素化合物(a’’)と反応させることにより、加水分解基を有するシリル基が結合したホスファゼニウム塩(8)とすることができる。
ホスファゼン化合物(2)と化合物(a’’)との反応は、例えば、以下の条件に従って行うことができる。反応溶媒は、前述のホスファゼン化合物(2)の製造の場合と同様である。反応温度は反応基質の種類、濃度等に応じて適宜調節することができるが、通常−78〜100℃、好ましくは−50〜80℃、さらに好ましくは0〜50℃の範囲である。反応時の圧力は減圧、常圧および加圧の何れでもよいが、好ましくは10〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。反応時間は反応温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜80時間、さらに好ましくは2〜50時間の範囲である。また反応溶媒として非極性溶剤を用い、極性の高い反応生成物(8)を生成後、速やかに系外に除く反応形態も、精製工程の簡略化、選択性の向上等、好ましい反応形態である。
一方、ホスファゼン化合物(3)は、前述の一般式(13)で表されるホスファゼニウム塩の内、アニオンがヒドロキシアニオンやメルカプトアニオンであるものを溶媒の存在下または非存在下に常温より高い温度に加熱することで製造することができる。この加熱は、例えば、以下の条件に従って行うことができる。
反応溶媒は、前述のホスファゼン化合物(2)の製造の場合と同様である。
加熱温度は反応基質の種類、濃度等に応じて適宜調節することができるが、常温より高い温度、すなわち、通常50〜300℃、好ましくは80〜250℃、さらに好ましくは100〜200℃の範囲である。加熱時の圧力は減圧、常圧および加圧のいずれでもよいが、好ましくは10〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。加熱時間は加熱温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常1〜240時間、好ましくは2〜200時間、さらに好ましくは5〜150時間の範囲である。
加熱後の反応液からのホスファゼン化合物(3)の分離は、常法に従って行うことができる。例えば、反応物中にn−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン等の脂肪族または芳香族の炭化水素類等を加え、不溶物を濾過、遠心分離等により分離することにより、ホスファゼン化合物(3)を含有する溶液を得ることができる。当該溶液を濃縮乾固することにより、ホスファゼン化合物(3)を固体として得ることができる。さらに必要であれば再結晶等により精製することもできる。
ホスファゼニウム塩(4)は、上述のようにして得られたホスファゼン化合物(3)を、例えばホスゲン、塩化チオニル、臭化チオニル、五塩化リン、三塩化リン、2,2−ジクロロ−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2,2−ジフルオロ−1,3−ジメチルイミダゾリジン等のハロゲン化剤と反応せしめることで製造することができる。この反応は、例えば、以下の条件に従って行うことができる。
ハロゲン化剤の使用量は、ホスファゼン化合物(3)1当量に対して通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量の範囲である。反応溶媒は、前述のホスファゼン化合物(2)の製造の場合と同様である。反応温度は反応基質の種類、量及び濃度等に応じて適宜調節することができるが、通常−78〜200℃、好ましくは−50〜150℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲である。反応時の圧力は減圧、常圧および加圧の何れでもよいが、好ましくは10〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。
反応時間は反応温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常0.1〜300時間、好ましくは0.5〜200時間、さらに好ましくは2〜150時間の範囲である。反応後の反応液からのホスファゼニウム塩(4)の分離は、常法に従って行うことができる。例えば、反応液を濃縮乾固することにより、ホスファゼニウム塩(4)を固体として得ることができる。さらに必要であれば再結晶等により精製することもできる。
更に、このホスファゼニウム塩(4)を、次式:R−NH−E−Y(Rは一般式(1)、(5)、(6)、(7)、(8)と同じであり、EおよびYは前記化合物(a)と同じである。)で表される化合物(b)、例えば保護基がアルキルシリル基である化合物等と反応させ、ホスファゼニウム塩(5)を生成させた後、Yを脱保護することで水酸基、メルカプト基もしくはアミノ基を有する構造、即ち、ホスファゼニウム塩(5)およびその好ましい態様であるホスファゼニウム塩(6)とすることができる。または更に、上記脱保護したYを周知の方法でアルキレンオキサイドもしくはその酸素の硫黄、窒素等の置換体と反応せしめる、あるいは重合せしめることで末端を水酸基、メルカプト基もしくはアミノ基等としてホスファゼニウム塩(5)およびその好ましい態様であるホスファゼニウム塩(6)を製造することができる。
ホスファゼニウム塩(4)と化合物(b)との反応は、例えば、以下の条件に従って行うことができる。反応溶媒は、前述のホスファゼン化合物(2)の製造の場合と同様である。反応温度は反応基質の種類、濃度等に応じて適宜調節することができるが、通常−78〜200℃、好ましくは−50〜150℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲である。反応時の圧力は減圧、常圧および加圧の何れでもよいが、好ましくは10〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。反応時間は反応温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常0.1〜200時間、好ましくは0.5〜150時間、さらに好ましくは2〜100時間の範囲である。反応液からのホスファゼニウム塩(5)および(6)の分離は、常法に従って行うことができる。例えば、反応液に含有される固形分を濾過、遠心分離等により分離し,濾液を濃縮乾固することにより、ホスファゼニウム塩(5)および(6)を固体または粘調液体として得ることができる。さらに必要であれば再結晶、カラムクロマトグラフィー等により精製することもできる。
上述のようにして製造されたホスファゼニウム塩(5)、(6)、(7)、(8)におけるZn−は、必要に応じて、周知の方法により、所望のアニオンに変換することができる。例えば、所望のアニオンを有する化合物と接触する方法、具体的には、所望のアニオンを有するイオン交換樹脂を利用する等のイオン交換法、所望のアニオンを有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属で処理する方法等で変換することができる。
本発明のホスファゼン担持触媒は、ホスファゼン化合物(2)、(3)或いはホスファゼニウム塩(4)、(5)、(6)、(7)、(8)を、ホスファゼン化合物(2)、(3)、ホスファゼニウム塩(4)、(5)、(6)、(7)、(8)と反応するように修飾した担体と反応せしめることにより製造できる。具体的には例えば、ホスファゼン化合物(2)或いはホスファゼニウム塩(5)、(6)を、担体のハロゲン化炭化水素残基等と反応せしめることで担体に担持することができ、製造することができる。また、担体としてアミノメチル化したものを用いれば、ホスファゼニウム塩(4)を該担体のアミノ化炭化水素残基と反応せしめることで担持触媒とすることもできる。さらに、担体としてシリカゲルを用い、シリカゲル表面に存在するシラノール基にホスファゼニウム塩(8)を周知の方法でシリル化することで担持触媒とすることもできる。
ホスファゼン化合物(2)或いはホスファゼニウム塩(4)、(5)、(6)と担体との反応は、例えば、以下の条件に従って行うことができる。
反応溶媒は、前述のホスファゼン化合物(2)の製造の場合と同様である。反応温度は反応基質の種類、濃度等に応じて適宜調節することができるが、通常−78〜200℃、好ましくは−50〜150℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲である。反応時の圧力は減圧、常圧および加圧の何れでもよいが、好ましくは10〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。反応時間は反応温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常0.1〜500時間、好ましくは0.5〜300時間、さらに好ましくは2〜200時間の範囲である。反応後の反応液からのホスファゼン担持触媒の分離は、常法に従って行うことができる。例えば、反応後の反応液に固体として含有されるホスファゼン担持触媒(1)を濾過、遠心分離等により分離することができる。さらに必要であれば水や適当な溶媒による洗浄等により精製することもできる。
また、ホスファゼニウム塩(8)と担体との反応は、例えば、以下の条件に従って行うことができる。
ホスファゼニウム塩(8)を市販のシリカゲルに接触させ加熱することで担持する。この際、反応溶媒を用いても差し支えない。反応溶媒としてはシリカゲル、ホスファゼニウム塩(8)に不活性であれば特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、ヘキサン等の非極性溶媒が好ましい。反応温度は通常0〜200℃、好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは40〜120℃の範囲である。反応時の圧力は減圧、常圧および加圧のいずれでもよいが、好ましくは10〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。反応時間は、反応温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間、さらに好ましくは2〜20時間の範囲である。反応後、シリカゲルをろ別し、必要であれば溶剤等による洗浄を行い、乾燥させることでホスファゼン担持触媒を得ることができる。
ホスファゼン化合物(2)或いはホスファゼニウム塩(4)、(5)、(6)、(8)とハロゲン化炭化水素残基やアミノ化炭化水素残基等で修飾された担体との反応後に未反応ハロゲン化炭化水素残基やアミノ化炭化水素残基等は必要に応じて公知の方法で不活性化することができる。例えば、ハロゲン化炭化水素残基はアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコラート等で処理することによりハロゲンをアルコキシ基で置換しエーテルとすることで不活性化でき、またアミノ化炭化水素残基はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩等に変換した後にハロゲン化アルキル等でアミノ基をアルキル化して3級化することにより不活性化することができる。
一方、ホスファゼニウム塩(7)と重合性官能基含有化合物、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステルなどのいわゆるビニルモノマーを周知の方法(例えば、「第4版実験化学講座第28巻(高分子合成)」、日本化学会編、丸善、1992年、31頁〜38頁、120頁〜152頁)に従って重合することにより担体の合成と同時にホスファゼン担持触媒とすることもできる。
さらに、ホスファゼニウム塩(8)と、他のアルコキシシランとを周知の方法で加水分解−重縮合させることにより、担体の合成と同時にホスファゼン担持触媒とすることもできる。本法は、例えば、以下の条件に従って行うことができる。
加水分解−重縮合反応による担持方法では、シリカマトリックスを形成しうるアルコキシシランとホスファゼニウム塩(8)をアルコキシシランと水に対し不活性であり、かつ水溶性であるメタノール、エタノール等の極性溶媒を用い、均一な溶液とする。これに塩酸等を加えて酸性条件とした後、加水分解基に対し約1当量の水を加え、加熱攪拌する。反応温度は、反応基質の種類、濃度等に応じて適宜調節することができるが、通常0〜200℃、好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは40〜100℃の範囲である。反応時の圧力は減圧、常圧および加圧のいずれでもよいが、好ましくは10〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPaの範囲である。反応時間は、反応温度、反応系の種類等に応じて適宜調節することができるが、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間、さらに好ましくは2〜20時間の範囲である。
次に反応液に過剰の水を加え、アンモニア等で塩基条件下とすることで反応液は速やかにゲル化する。この際、塩基性条件下で加熱を継続し、長時間熟成することも触媒構造の強度向上という観点から有効である。反応後のホスファゼン担持触媒の分離は、常法に従って行うことができる。例えば、反応液中に含有される固形分を濾過、遠心分離等により分離し、さらに水洗、乾燥させることで、ホスファゼン担持触媒を得ることができる。
こうして製造されるホスファゼン担持触媒におけるZn−は、周知の方法によって、該触媒を用いる反応の種類に適した所望のアニオンに変換することができる。例えば、所望のアニオンを有する化合物と接触する方法、具体的には、所望のアニオンを有するイオン交換樹脂を利用する等のイオン交換法、所望のアニオンを有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属で処理する方法等で変換することができる。
こうして製造された本発明のホスファゼン担持触媒は、種々の有機反応の触媒として有用であり、特に環状モノマーを重合するための触媒として、また置換基の置換のための触媒として有用である。なお、本発明のホスファゼン担持触媒を製造するのに有用な本発明のホスファゼン化合物(2)、(3)、ホスファゼニウム塩(4)、(5)、(6)、(7)、(8)は、それ自体種々の有機反応を進行させる触媒としても有用なものである。なお、一般式(1)で表されるホスファゼン担持触媒および一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)、一般式(8)、一般式(9)、一般式(11)、一般式(13)で表されるホスファゼニウム塩において、ホスファゼニウムカチオンの正電荷が中心のリン原子上に局在する極限構造式で代表して表しているが、これ以外に多数の極限構造式が描かれ、実際にはその正電荷は全体に非局在化している。
本発明の環状モノマーの重合方法における環状モノマーとしては、アルキレンオキシド類、ラクトン類、ラクタム類、ラクチド類、環状カーボネート類、α−アミノ酸−N−カルボン酸無水物類、環状りん酸エステル類、環状ホスホン酸エステル類、環状シロキサン類等が挙げられる。本発明のホスファゼン担持触媒を使用した環状モノマーの重合方法について、アルキレンオキシドの重合を一例として、以下に説明する。
アルキレンオキシドは特に限定されるものではないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物が挙げられ、これらのうち1種類を単独でまたは2種類以上を混合して使用することができる。アルキレンオキシドの重合反応に供するホスファゼン担持触媒の使用量は特に限定されるものではないが、アルキレンオキシド1モル当たり通常1×10−15〜5×10−1モル、好ましくは1×10−7〜1×10−2モルの範囲である。
アルキレンオキシドの重合反応の形式は特に制限されるものではなく、例えば、特開平10−77289号、特開2000−327769号等に示されている公知の方法を採用すれば良い。通常、ホスファゼン担持触媒を必要に応じて活性水素化合物、溶媒等とともに反応器に仕込んだ後、必要に応じて副生成物を除去した上で、必要量のアルキレンオキシドを一括して供給する方法または間欠的もしくは連続的に供給する方法が採用される。
本発明のホスファゼン担持触媒を使用した置換基の置換反応としては、例えば、フェノール性水酸基のアルキル化、チオアルキル化、脂肪族または芳香族ハロゲン化物のハロゲンとアルコキシ基、チオアルキル基、アミノ基、フッ化物基、シアノ基、カルボキシル基、アリーロキシ基等の置換反応、脂肪族または芳香族スルホン酸エステル化合物とアルコキシ基、チオアルキル基、アミノ基、フッ化物基、シアノ基、カルボキシル基、アリーロキシ基等の置換反応、脂肪族または芳香族カルボン酸エステル化合物とアルコキシ基等のエステル交換反応等が挙げられる。本発明のホスファゼン担持触媒を使用した置換基の置換方法について、フェノール性水酸基のアルキル化を一例として、以下に説明する。
芳香族性の環に少なくとも1つの水酸基が結合した芳香族化合物と炭酸ジエステルを本発明のホスファゼン担持触媒の存在下に反応させることにより、該芳香族化合物に存在する水酸基がエーテル化された芳香族エーテル類が得られる。例えば、フェノール等、芳香族性の環に1個の水酸基を有する化合物と炭酸ジメチル等、炭酸ジアルキルエステルを反応させることにより、その水酸基がアルキシ基で置換された芳香族エーテルが得られる。芳香族性の環に少なくとも1つの水酸基が結合した芳香族化合物が複数個の水酸基を有する化合物である場合には、用いる反応条件に応じて該化合物中の1個または複数個の水酸基がエーテル化された化合物を得ることができる。原料として使用できる上記の芳香族化合物、炭酸ジエステルについては、特開2004−107266号に種々のものが開示されている。フェノール性水酸基のアルキル化反応に供するホスファゼン担持触媒の使用量は特に限定されるものではないが、通常、フェノール性水酸基1モルに対して1×10−7〜10モルの範囲である。反応の形式は特に制限されるものではなく、例えば、特開2004−107266号等に示されている公知の方法を採用すれば良い。通常、芳香族性の環に少なくとも1つの水酸基が結合した芳香族化合物と炭酸ジエステルとを、炭酸ジエステルを溶媒として、反応させることで行われる。必要に応じて他の溶媒を使用することもできる。
溶媒の使用量に制限はなく、芳香族性の環に少なくとも1つの水酸基が結合した芳香族化合物の種類および量、炭酸ジエステルの種類および量、反応温度、反応圧力などの反応条件に応じて適宜その使用量を決めることができる。反応の温度および圧力等の条件は、芳香族エーテルが生成する条件であれば特に制限はない。反応の温度および圧力は、通常、0℃〜250℃、1気圧〜100気圧である。反応時間は、反応に使用する芳香族性の環に少なくとも1つの水酸基が直接結合した化合物および炭酸ジエステルの種類および量、触媒の種類および量、反応温度、反応圧力、溶媒の種類および量などにより一様ではないが、通常は15分〜100時間である。上述のような反応において、触媒として本発明のホスファゼン担持触媒を使用することにより、極めて効率良く目的の生成物を得ることができる。本発明のホスファゼン担持触媒を使用した炭素−炭素結合生成反応としては、例えば、アルドール反応(Aldol Reaction)、マイケル反応(Michael Reaction)、クノーベナーゲル反応(Knoevenagel Reaction)、ピーターソン反応(Peterson Reaction)、パーキン反応(Perkin Reaction)、ダルツェン反応(Darzen’s Reaction)、トレンス反応(Tollens Reaction)、ソープ反応(Thorpe Reaction)などが挙げられるが、本発明のホスファゼン担持触媒を使用した炭素−炭素結合生成反応について、アルドール反応を一例として、以下に説明する。
アルデヒドやケトンなどのカルボニル化合物を塩基性条件下で作用させるといわゆるアルドール反応(縮合)が起こり、β−ヒドロキシカルボニル化合物やα、β−不飽和カルボニル化合物を得ることができる。
反応に供するホスファゼン担持触媒の使用量は特に限定されるものではないが、通常、カルボニル化合物1モルに対して1×10−7〜10モルの範囲である。好ましくは1×10−3〜1モルの範囲である。反応の形式は特に制限されるものではなく、公知の方法を採用すれば良い。通常、反応基質であるカルボニル化合物を触媒存在下に、不活性な溶媒を用いるかカルボニル化合物そのものを溶媒として、反応させることで行われる。
溶媒の使用量に制限はなく、カルボニル化合物の種類および量、反応温度、反応圧力などの反応条件に応じて適宜その使用量を決めることができる。反応の温度および圧力等の条件は、アルドール反応が進行する条件であれば特に制限はない。反応の温度および圧力は、通常、−78℃〜250℃、1気圧〜100気圧である。反応時間は、カルボニル化合物の種類および量、触媒の種類および量、反応温度、反応圧力、溶媒の種類および量などにより一様ではないが、通常は15分〜100時間である。上述のような反応において、触媒として本発明のホスファゼン担持触媒を使用することにより、効率良く目的の生成物を得ることができる。
以下に実施例を示し本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1,1,1−トリス{[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデン]アミノ}−3,3−ビス(ジメチルアミノ)−3−メチルアミノ−1λ,3λ−ジホスファゼン(以下、PZNBと略記する。)の合成
テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムクロリド54gとカリウム−1−オクチルチオラート13gを攪拌機つきの窒素雰囲気に保った1Lガラスフラスコに入れ、そこにテトラリン450mlを加えて懸濁液とした。この懸濁液を攪拌しながら185℃で5時間加熱した後に室温まで冷却した。得られた懸濁液を窒素雰囲気下で濾過し、さらに100mlのテトラリンで濾物を洗浄し、黄色溶液531gを得た。この溶液の一部をベンゼン−d6に加え、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドを内部標準として31P−NMR測定を行ったところ、−30.3ppmにリン1原子に相当する5重線、6.79ppmにリン3原子に相当する2重線、16.04ppmにリン1原子に相当する2重線が観測され、該溶液中のPZNBの濃度は0.163mmol/gであった。また、FD−MS分析によりPZNBに相当する725の親ピークが観測された。上記黄色溶液を減圧下で溶媒留去することにより微黄色固体62.0gを得た。この固体の31P−NMR分析およびFD−MS分析の結果は上記黄色溶液の結果と同様であった。
[実施例2]
高分子担持ホスファゼニウムクロリドの合成
攪拌機つきの窒素雰囲気に保った1Lガラスフラスコにクロロメチル化ポリスチレン系樹脂(アルゴノート社製アルゴポア−Cl,1.05mmol−Cl/g)51g(塩素原子として54mmol)とテトラリン430gを入れ室温で1時間攪拌した。その後、実施例1で得られたPZNBのテトラリン溶液343g(PZNBとして56mmol)を加えさらに4日間攪拌を続けた。このようにして得られた懸濁液を窒素雰囲気下で濾過し、テトラリン500mlおよび1,4−ジオキサンとメタノールの1:1重量比の混合溶媒2Lで洗浄し、濾物である固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し、高分子担持ホスファゼニウムクロリド72gを得た。この固体の一部をテトラキス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムテトラフルオロボレートを内部標準として31P−NMR測定したところ、−35.4ppmにリン1原子に相当するピークと5.8ppmにリン4原子に相当するピークが観測され、該固体中のホスファゼニウムカチオンの濃度は0.427mmol/gであった。
[実施例3]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの合成
攪拌機および冷却器を備え窒素雰囲気を保った1Lガラスフラスコに実施例2で得られた高分子担持ホスファゼニウムクロリド49g(ホスファゼニウムカチオンとして21mmol)とメタノール400mlを入れ室温で1時間攪拌した。その後、ナトリウムメトキシド9.7gを100mlのメタノールに溶解した溶液を加え、8時間加熱還流した後室温まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、水洗し、4%水酸化ナトリウム水溶液880gと接触処理をしてさらに水洗した後に残った固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド49gを得た。該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.431mmol/gであり、元素分析による塩素原子は観測されず、アニオンは定量的にヒドロキシドになっていた。
[実施例4]
高分子担持ホスファゼニウムヨージドの合成
実施例3で得られた高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド8g(ホスファゼニウムカチオンとして3.4mmol)をカラム充填塔に詰め、4%塩化ナトリウム水溶液210gと接触処理をしてさらに水洗した。その後、4%ヨウ化ナトリウム水溶液61gと接触処理をして再度水洗し、処理後の固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヨージドを得た。該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.352mmol/gであり、元素分析によるヨウ素原子濃度は0.358mmol/gであった。
[実施例5]
水酸基含有ホスファゼニウムヨージドの合成
攪拌機つきの窒素雰囲気を保った300mLガラスフラスコにt−ブチルジメチルシリル(4−クロロメチルベンジル)エーテル4.3g(16mmol)と実施例1で得られたPZNBのテトラリン溶液79g(PZNBとして13mmol)を入れ、室温で一晩攪拌した。反応後、テトラリンを減圧留去し、ヘキサン100mlを加えしばらく攪拌してからデカンテーションによりヘキサンを除去した。このヘキサン洗浄を合計5回行った後に1mmHgの減圧下70℃で加熱乾燥した。次にフラスコを氷冷しながらテトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン(以下THF)溶液(1.0M,14mmol)を加え、40℃で3時間攪拌した後に1規定塩酸水溶液14ml(14mmol)を加えてしばらく攪拌を続けてからTHFおよび水を減圧留去した。残渣に塩化メチレン250mlを加えて溶液とした後に分液漏斗により水洗を行い塩化メチレン層を濃縮し、粘調液体10.8gを得た。次に得られた粘調液体に70%エチルアミン水溶液を溶解するまで加え、得られた溶液を攪拌機つきの300mLガラスフラスコに入れた。そこにヨウ化ナトリウム4.6gの70%エチルアミン溶液と水80mlを加えしばらく攪拌した後5日間静置した。析出してきた結晶を濾過、水洗し1mmHgの減圧下70℃で加熱乾燥することにより白色結晶である水酸基含有ホスファゼニウムヨージド7.0gを得た。この溶液の一部をベンゼン−d6に加え、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドを内部標準として31P−NMR測定を行ったところ、−33.2ppmにリン1原子に相当する5重線、7.45ppmにリン3原子に相当する2重線、8.68ppmにリン1原子に相当する2重線が観測され、その純度は96.5%であった。また、FD−MS分析によりホスファゼニウムカチオン部に相当する846の親ピークが観測された。
[実施例6]
ポリプロピレンオキシドを側鎖に有するホスファゼニウムヨージドの合成
70mlの窒素雰囲気を保ったオートクレーブに実施例5で得られたホスファゼニウムヨージド5.1g(5.2mmol)、水素化カリウム0.01g(0.26mmol)およびTHF30mlを入れて80℃で3時間加熱攪拌した後に室温まで冷却した。次にプロピレンオキシド3.0g(52mmol)を加えて80℃で20時間加熱攪拌を行い、反応後室温まで冷却した後に1規定塩酸水溶液0.3ml(0.3mmol)を加えた。反応液を水洗し、1mmHgの減圧下70℃で加熱乾燥することにより粘調液体8.0gを得た。この溶液の一部をジメチルスルホキシド−d6(以下DMSO−d6)に加え、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドを内部標準として31P−NMR測定を行ったところ、−33.1ppmにリン1原子に相当する5重線、7.56ppmにリン3原子に相当する2重線、8.79ppmにリン1原子に相当する2重線が観測され、その純度は100.6%であった。また、FD−MS分析により数平均分子量(Mn)が1412、分子量分布(Mw/Mn)が1.02であるピークが観測され、プロピレンオキシドの10量体がリビング的に付加して側鎖として導入されたホスファゼニウムヨージドであることが分かった。
[実施例7〜11]
ポリアルキレンオキシドを側鎖に有するホスファゼニウムヨージドの合成
加えるポリアルキレンオキシドの量と種類を変更した以外は実施例6と同様に合成を行い、種々のポリアルキレンオキシドを側鎖に持つホスファゼニウムヨージドを合成した。結果を表1に示す。
[表1]
Figure 0004685011
[実施例12]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの合成
50mlの窒素雰囲気を保ったガラスフラスコに水素化カリウム0.2g(5.2mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF)9mlを入れ、さらに実施例6で得られたホスファゼニウムヨージド7.3g(5.2mmol)のDMF溶液を加え室温で3時間攪拌した。別の攪拌機つきの窒素雰囲気を保った100mlガラスフラスコにクロロメチル化ポリスチレン系樹脂(アルゴノート社製アルゴポア−Cl,1.05mmol−Cl/g)5.0g(塩素原子として5.2mmol)とDMF50mlを入れ室温で1時間攪拌した後に先に調製したホスファゼニウムヨージドのカリウム塩のDMF溶液を全量加えさらに20時間攪拌を続けた。反応終了後濾過し、濾物として得られた樹脂を1,4−ジオキサンを溶媒としてソックスレー洗浄した後に1mmHgの減圧下で70℃で加熱乾燥した。乾燥後の樹脂とメタノール35mlを攪拌機および冷却器つきの窒素雰囲気を保った100mlガラスフラスコに入れ室温で1時間攪拌したところに、ナトリウムメトキシド2.5gのメタノール溶液(20ml)を加えて8時間加熱還流した後に室温まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、水洗し、4%水酸化ナトリウム水溶液34gと接触処理をしてさらに水洗した後に残った固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド5.3gを得た。この固体の一部をテトラキス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムテトラフルオロボレートを内部標準として31P−NMR測定したところ、−35.7ppmにリン1原子に相当するピークと5.7ppmにリン4原子に相当するピークが観測され、該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.122mmol/gであった。
[実施例13〜17]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの合成
実施例12において使用した実施例6で得られたホスファゼニウムヨージドの代わりに実施例7〜11で得られたホスファゼニウムヨージドを用いた以外は実施例12と同様にして反応を行い、種々の高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドを合成した。結果を表2に示す。
[表2]
Figure 0004685011
[実施例18]
ビス(ジメチルアミノ){[トリス({[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデン]アミノ})ホスホラニリデン]アミノ}ホスフィンオキシド(以下、PZNDと略記する。)の合成
特開平11−240893に記載の方法により、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシドを含む水溶液7607gを得た。この水溶液を50ないし100mmHgの減圧下に60℃で水を留去させ固体のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヒドロキシド180gを得た。この固体を5リットルのガラスフラスコに移し、窒素吹き込み管から10ml/minの速度で窒素を流通させた状態で、130℃で、5日間加熱した。室温付近まで冷却後、3リットルのヘキサンを加え、攪拌機を用いて30分間攪拌した。攪拌後、内容物を静置し不溶物を沈降させた。この不溶物をデカンテーションにより分離し、無色透明のヘキサン溶液を得た。この溶液からn−ヘキサンを常圧下留去した。約2.8リットルのn−ヘキサンを回収した時点で留去をやめ、1ないし20mmHgの減圧下さらにn−ヘキサンを除去したところ、白色固体を110g得た。この固体の一部をDMSO−d6に加え、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドを内部標準として31P−NMR測定を行ったところ、−25.46ppmにリン1原子に相当する5重線、7.08ppmにリン1原子に相当する2重線、8.64ppmにリン3原子に相当する2重線が観測され、その純度は97.5%であった。
また、FD−MS分析によりPZNDに相当する711の親ピークが観測された。
[実施例19]
1,1,1−トリス{[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデン]アミノ}−3,3−ビス(ジメチルアミノ)−3−クロロ−3λ−ジホスファゼ−1−ニウムクロリド(以下、PZND−Clと略記する。)の合成
攪拌機つきの窒素雰囲気を保った500mlガラスフラスコに実施例18で得られたPZND30g(42mmol)を50mlのTHFに溶解した。室温で7.3g(43mmol)の2,2−ジクロロ−1,3−ジメチルイミダゾリジンを固体のまま加えた後、約3時間還流した。室温まで冷却後、THFを減圧留去した後、50mlのTHF、200mlのジエチルエーテルを順次加えた。30分間還流した後、強く攪拌しながら室温まで冷却したところ、白色の固体が沈殿した。この固体を窒素雰囲気下で濾過し、1mmHgの減圧下乾燥して白色固体26gを得た。この固体の一部をDMSO−d6に加え、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドを内部標準として31P−NMR測定を行ったところ、−29.81ppmにリン1原子に相当する8重線、6.22ppmにリン1原子に相当する2重線、12.04ppmにリン3原子に相当する2重線が観測され、その純度は99.5%であった。また、FD−MS分析によりPZND−Clに相当する730の親ピークが観測された。
[実施例20]
シロキシ基含有ホスファゼニウムクロリドの合成
攪拌機つきの窒素雰囲気を保った300mlガラスフラスコに実施例19で得られたPZND−Cl21g(27mmol)、o−ジクロロベンゼン150ml、t−ブチルジメチルシリル(2−アミノエチル)エーテル9.1g(52mmol)およびトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン4.7g(27mmol)を入れ、120℃で24時間反応させた後に室温まで冷却した。反応液を水洗し、o−ジクロロベンゼン層を減圧留去した後にジエチルエーテル200mlで洗浄した。洗浄後の固体を常圧で乾燥させることにより白色固体を82g得た。この固体の一部をTHF−d8に加え、りん酸トリ−n−ブチルを内部標準として31P−NMR測定を行ったところ、−27.52ppmにリン1原子に相当する8重線、9.77ppmにリン1原子に相当する2重線、10.45ppmにリン3原子に相当する2重線が観測された。
[実施例21]
水酸基含有ホスファゼニウムヨージドの合成
攪拌機つきの窒素雰囲気を保った500mlガラスフラスコにTHF200ml、水素化ナトリウム10.9g(455mmol)およびヨウ化メチル67g(470mmol)を入れ室温で2時間攪拌した。その後,実施例20で得られたホスファゼニウムクロリド41g(45mmol)のTHF溶液を加えさらに室温で16時間攪拌した。反応後の懸濁液を濾過およびTHF洗浄し、濾液からTHFを減圧留去した。得られた固体を塩化メチレン300mlに再度溶解させ、不溶物を濾過後、濾液から塩化メチレンを減圧留去することにより白色固体41gを得た。この白色固体とTHF200mlを攪拌機つきの窒素雰囲気を保った500mlガラスフラスコに入れて攪拌しながら氷冷した。そこにテトラブチルアンモニウムフルオリドのTHF溶液41ml(1.0M,41mmol)を加え、室温で30分攪拌した。反応液に水300mlおよび塩化メチレン300mlを加えて分液し、有機溶媒層から溶媒を減圧留去して得られる固体を70%エチルアミン水溶液から再結晶することにより白色結晶29gを得た。この固体の一部をDMSO−d6に加え、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドを内部標準として31P−NMR測定を行ったところ、−33.34ppmにリン1原子に相当する5重線、7.60ppmにリン3原子に相当する2重線、7.79ppmにリン1原子に相当する2重線が観測され、その純度は100%であった。
[実施例22]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの合成
窒素雰囲気を保った100mlのガラスフラスコに水素化ナトリウム0.7g(29mmol)とDMF50mlを入れ、さらに実施例21で得られたホスファゼニウムヨージド25.2g(28mmol)のDMF溶液を加え室温で3時間攪拌した。別の攪拌機つきの窒素雰囲気を保った500mlガラスフラスコにクロロメチル化ポリスチレン系樹脂(アルゴノート社製アルゴポア−Cl,1.05mmol−Cl/g)26.6g(塩素原子として28mmol)とDMF300mlを入れ室温で2時間攪拌した後に先に調製したホスファゼニウムヨージドのナトリウム塩のDMF溶液を全量加えさらに20時間攪拌を続けた。反応終了後濾過し、濾物として得られた樹脂をメタノール50mlで5回洗浄した後に1mmHgの減圧下で70℃で加熱乾燥した。乾燥後の樹脂とメタノール200mlを攪拌機および冷却器つきの窒素雰囲気を保った500mlガラスフラスコに入れ室温で1時間攪拌したところに、ナトリウムメトキシド7.9gのメタノール溶液(100ml)を加えて8時間加熱還流した後に室温まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、水洗し、4%水酸化ナトリウム水溶液527gと接触処理をしてさらに水洗した後に残った固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド35gを得た。この固体の一部をテトラキス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムテトラフルオロボレートを内部標準として31P−NMR測定したところ、−35.5ppmにリン1原子に相当するピークと5.9ppmにリン4原子に相当するピークが観測され、該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.371mmol/gであった。
[実施例23]
高分子担持ホスファゼニウムクロリドの合成
実施例22で得られた高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド17.4g(ホスファゼニウムカチオンとして6.6mmol)をカラム充填塔に詰め、4%塩化ナトリウム水溶液398gと接触処理をしてさらに水洗し、処理後の固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムクロリドを得た。該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.368mmol/gであった。
[実施例24]
シロキシ基含有ホスファゼニウムクロリドの合成
実施例20で用いたt−ブチルジメチルシリル(2−アミノエチル)エーテルの代わりにジエチレングリコール(t−ブチルジメチルシリル)(2−アミノエチル)エーテルを用いた以外は実施例20と同様に反応を行った。FD−MS分析によりシロキシ基含有ホスファゼニウムクロリドに相当する958の親ピークが観測された。
[実施例25]
水酸基含有ホスファゼニウムヘキサフルオロホスフェイトの合成
実施例21で用いたホスファゼニウムクロリドの代わりに実施例24で得られたホスファゼニウムクロリドを用いて実施例21と同様に反応を行い白色固体を得た。50mlガラスフラスコにこの固体3.0gと70%エチルアミン溶液20mlおよびナトリウムヘキサフルオロホスフェイト0.5gを入れてしばらく攪拌して得られる懸濁液を濾過し、濾液を静置して再結晶を行うことにより白色結晶1.3gを得た。この固体の一部をDMSO−d6に加え、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドを内部標準として31P−NMR測定を行ったところ、−33.31ppmにリン1原子に相当する5重線、7.58ppmにリン3原子に相当する2重線、7.72ppmにリン1原子に相当する2重線、57.0ppmにリン1原子に相当する7重線が観測され、その純度は91.4%であった。またFD−MS分析によりホスファゼニウムカチオン部に相当する858の親ピークが観測された。
[実施例26]
高分子担持ホスファゼニウムヘキサフルオロホスフェイトの合成
窒素雰囲気を保った50mlのガラスフラスコに水素化カリウム0.07g(1.7mmol)とDMF10mlを入れ、さらに実施例25で得られたホスファゼニウムヘキサフルオロホスフェイト1.3g(1.3mmol)を加え室温で3時間攪拌した。別の攪拌機つきの窒素雰囲気を保った100mlガラスフラスコにクロロメチル化ポリスチレン系樹脂(アルゴノート社製アルゴポア−Cl,1.20mmol−Cl/g)1.1g(塩素原子として1.3mmol)とDMF15mlを入れ室温で1時間攪拌した後に先に調製したホスファゼニウムヘキサフルオロホスフェイトのカリウム塩のDMF溶液を全量加えさらに24時間攪拌を続けた。反応終了後濾過し、濾物として得られた樹脂を1,4−ジオキサンを溶媒としてソックスレー洗浄した後に1mmHgの減圧下で70℃で加熱乾燥し、高分子担持ホスファゼニウムヘキサフルオロホスフェイト1.1gを得た。この固体の一部をテトラキス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムテトラフルオロボレートを内部標準として31P−NMR測定したところ、−35.7ppmにリン1原子に相当するピークと5.9ppmにリン4原子に相当するピークが観測され、該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.266mmol/gであった。
[実施例27]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの合成
実施例26で得られた高分子担持ホスファゼニウムヘキサフルオロホスフェイト全量とメタノール10mlを攪拌機および冷却器つきの窒素雰囲気を保った50mlガラスフラスコに入れ室温で1時間攪拌したところに、ナトリウムメトキシド1.0gのメタノール溶液(10ml)を加えて8時間加熱還流した後に室温まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、水洗し、4%水酸化ナトリウム水溶液34gと接触処理をしてさらに水洗した後に残った固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド1.1gを得た。この固体の一部をテトラキス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムテトラフルオロボレートを内部標準として31P−NMR測定したところ、−35.7ppmにリン1原子に相当するピークと5.9ppmにリン4原子に相当するピークが観測され、該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.297mmol/gであった。
[実施例28]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの合成
攪拌機つきの窒素雰囲気を保った100mlガラスフラスコにクロロメチル化ポリスチレン系樹脂(アルゴノート社製アルゴゲル−ワン−Cl,0.43mmol−Cl/g)4.7g(塩素原子として2.0mmol)とテトラリン20gを入れ室温で1時間攪拌した。その後、実施例1で得られたPZNBのテトラリン溶液17.8g(PZNBとして2.7mmol)を加えさらに4日間攪拌を続けた。このようにして得られた懸濁液を窒素雰囲気下で濾過し、テトラリン50mlおよび1,4−ジオキサンとメタノールの1:1重量比の混合溶媒200mlで洗浄し、濾物である固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し、高分子担持ホスファゼニウムクロリド5.0gを得た。この固体の一部をテトラキス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムテトラフルオロボレートを内部標準として31P−NMR測定したところ、−35.4ppmにリン1原子に相当するピークと5.8ppmにリン4原子に相当するピークが観測され、該固体中のホスファゼニウムカチオンの濃度は0.316mmol/gであった。次に、攪拌機および冷却器を備え窒素雰囲気を保った50mlガラスフラスコに先に得られた高分子担持ホスファゼニウムクロリド2.3g(ホスファゼニウムカチオンとして6.1mmol)とメタノール10mlを入れ室温で1時間攪拌した。その後、ナトリウムメトキシド0.37gを10mlのメタノールに溶解した溶液を加え、8時間加熱還流した後室温まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、水洗し、4%水酸化ナトリウム水溶液80gと接触処理をしてさらに水洗した後に残った固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド2.3gを得た。該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.312mmol/gであり、元素分析による塩素原子は観測されず、アニオンは定量的にヒドロキシドになっていた。
[実施例29〜30]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの合成
実施例28で用いたクロロメチル化ポリスチレン系樹脂の種類を変更した以外は実施例28と同様にして反応を行い、種々の高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドを合成した。結果を表3に示す。
[表3]
Figure 0004685011
[実施例31]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの合成
窒素雰囲気を保った50mlのガラスフラスコに水素化カリウム0.18g(4.6mmol)とDMF20mlを入れ、さらに実施例9で得られたホスファゼニウムヨージド5.0g(3.7mmol)のDMF溶液を加え室温で5時間攪拌した。別の攪拌機つきの窒素雰囲気を保った200mlガラスフラスコにクロロメチル化ポリスチレン系樹脂(アドバンストケムテック社製2−ピリジン−コ−メリフィールドレジン,1.0mmol−Cl/g)3.6g(塩素原子として3.6mmol)とDMF50mlを入れ室温で1時間攪拌した後に先に調製したホスファゼニウムヨージドのカリウム塩のDMF溶液を全量加えさらに62時間攪拌を続けた。反応終了後濾過し、濾物として得られた樹脂を1,4−ジオキサンを溶媒としてソックスレー洗浄した後に1mmHgの減圧下で70℃で加熱乾燥した。乾燥後の樹脂とメタノール50mlを攪拌機および冷却器つきの窒素雰囲気を保った200mlガラスフラスコに入れ室温で1時間攪拌したところに、ナトリウムメトキシド2.6gのメタノール溶液(10ml)を加えて8時間加熱還流した後に室温まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、水洗し、4%水酸化ナトリウム水溶液161gと接触処理をしてさらに水洗した後に残った固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド3.6gを得た。この固体の一部をテトラキス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムテトラフルオロボレートを内部標準として31P−NMR測定したところ、−34.7ppmにリン1原子に相当するピークと6.0ppmにリン4原子に相当するピークが観測され、該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.138mmol/gであった。
[実施例32]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの合成
窒素雰囲気を保った50mlのガラスフラスコに水素化カリウム0.1g(2.4mmol)とDMF10mlを入れ、さらに実施例9で得られたホスファゼニウムヨージド3.3g(2.6mmol)のDMF溶液を加え室温で5時間攪拌した。別の攪拌機つきの窒素雰囲気を保った100mlガラスフラスコにクロロメチル化ポリスチレン系樹脂(アルドリッチ社製ジャンダジェル−Cl,0.70mmol−Cl/g)3.1g(塩素原子として2.2mmol)とDMF30mlを入れ室温で1時間攪拌した後に先に調製したホスファゼニウムヨージドのカリウム塩のDMF溶液を全量加えさらに45時間攪拌を続けた。反応終了後濾過し、濾物として得られた樹脂を1,4−ジオキサンを溶媒としてソックスレー洗浄した後に1mmHgの減圧下で70℃で加熱乾燥した。乾燥後の樹脂とメタノール40mlを攪拌機および冷却器つきの窒素雰囲気を保った100mlガラスフラスコに入れ室温で1時間攪拌したところに、ナトリウムメトキシド2.4gのメタノール溶液(10ml)を加えて8時間加熱還流した後に室温まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、水洗し、4%水酸化ナトリウム水溶液89gと接触処理をしてさらに水洗した後に残った固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド2.2gを得た。この固体の一部をテトラキス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムテトラフルオロボレートを内部標準として31P−NMR測定したところ、−34.8ppmにリン1原子に相当するピークと6.2ppmにリン4原子に相当するピークが観測され、該固体中の31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.078mmol/gであった。
[実施例33]
スチリル基含有ホスファゼニウムヨージドの合成
攪拌機つきの窒素雰囲気を保った300mLガラスフラスコにPZNBのテトラリン溶液96g(PZNBとして15mmol)とオルトジクロロベンゼン73mlを入れて攪拌しながら氷冷した。そこに4−ビニルベンジルクロライド2.7g(18mmol)を滴下し、室温で一晩攪拌した。反応後、テトラリンおよびオルトジクロロベンゼンを減圧留去して得られた橙色粘調液体にヘキサン60mLを加えしばらく攪拌した後デカンテーションによりヘキサンを除去した。このヘキサン洗浄を3回行い、析出した固体に70%エチルアミン水溶液230mLを加えて溶解した。そこにヨウ化ナトリウム2.4g(16mmol)と水15mLを加え室温で1時間攪拌した後、4日間静置した。析出した結晶を濾過、水およびヘキサンで洗浄し淡黄色結晶を得た。これを酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒で再結晶し析出した結晶を濾過、ヘキサン洗浄し1mmHgの減圧下70℃で加熱乾燥することにより白色結晶であるスチリル基含有ホスファゼニウムヨージド8.7gを得た。この固体の一部をベンゼン−d6に加え、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドを内部標準として31P−NMR測定したところ、−33.7ppmにリン1原子に相当する5重線、7.50ppmにリン3原子に相当する2重線、8.77ppmにリン1原子に相当する2重線が観測され、その純度は96.1%であった。またFD−MS分析によりホスファゼニウムカチオン部に相当する841の親ピークが観測された。
[実施例34]
アリル基含有ホスファゼニウムヨージドの合成
実施例33で用いた4−ビニルベンジルクロライドの代わりに等モルのアリルクロライドを用いた以外は実施例33と同様に反応を行った。得られた化合物の一部をベンゼン−d6に加え、ヘキサメチルホスフォリックトリアミドを内部標準として31P−NMR測定したところ、−33.6ppmにリン1原子に相当する5重線、7.58ppmにリン3原子に相当する2重線、8.83ppmにリン1原子に相当する2重線が観測され、その純度は97.1%であった。
[実施例35]
高分子担持ホスファゼニウムヨージドおよびヒドロキシドの合成
攪拌機つきの窒素雰囲気を保った50mLガラスフラスコに2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.082g(0.50mmol)と実施例33で得られたホスファゼニウムヨージド0.97g(0.96mmol)を入れ、さらにトルエン20mlを加え攪拌した。そこにスチレンモノマー10.52g(101.0mmol)を入れて100℃で7時間攪拌した後、−77℃に冷却して反応を停止した。反応液をメタノール1.5Lに注ぎ、白色沈殿を得た。この沈殿を濾過し、1mmHgの減圧下70℃で加熱乾燥して白色固体の高分子担持ホスファゼニウムヨージド4.4gを得た。
得られた高分子担持ホスファゼニウムヨージド3.6gをカラム充填塔に詰め、4%水酸化ナトリウム/メタノール溶液と接触処理してさらにメタノール洗浄および水洗を行い、処理後の固体を1mmHgの減圧下70℃で乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドを得た。この固体の一部をテトラキス(ジメチルアミノ)ホスフォニウムテトラフルオロボレートを内部標準として31P−NMR測定を行ったところ、−35.1ppmにリン1原子に相当するピークと5.6ppmにリン4原子に相当するピークが観測され、該固体中のP31−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.1039mmol/gであり、スチリル基含有ホスファゼニウム塩とスチレンモノマーがモル比1:84で共重合した共重合体であった。また、GPC分析(ポリスチレン標準換算)により数平均分子量(Mn)が8536、分子量分布(Mw/Mn)が1.76の高分子量体であった。
[実施例36]
トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリドの合成−1
窒素雰囲気に保った100mLガラスフラスコ中で4−(クロロメチル)フェネチルトリメトキシシラン3.0mL(12.2mmol)を乾燥ヘキサン100mLに溶解した。この溶液に、PZNBのテトラリン溶液50g(PZNB濃度0.220mmol/gより11.0mmol)を室温で滴下した。滴下と同時に淡褐色の油状物が分離した。滴下終了後、さらに30分間攪拌した。淡褐色の油状物を無色の上澄み液から分離した後、これに乾燥メタノール5mLを加え、15mLの乾燥ヘキサンで4回洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、オレンジ色の油状物10.5gを得た。H,13C,および31
NMRの結果から、この油状物の主成分は目的のトリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリドであった。H,13C,および31
NMRによる同定結果を以下に示す。
Figure 0004685011
31P NMRの結果から、上記トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリドを主成分とする該油状物中には副生成物として、一般式(5)においてa=b=c=d=1,R=R=Me,D’=H,n=1,Z=Clで表される化合物が含まれており、また、H NMRにおいてNMe基のピークの積分比から、該油状物中のトリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリドの純度は約80%となった。
[実施例37]
トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリドの合成−2
窒素雰囲気に保った100mLガラスフラスコ中で4−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン0.87mL(4.0mmol)を乾燥ヘキサン30mLに溶解した。この溶液に、PZNBのテトラリン溶液15g(PZNB濃度0.220mmol/gより3.3mmol)を室温で滴下した。滴下と同時に淡褐色の油状物が分離した。滴下終了後、さらに30分間攪拌した。淡褐色の油状物を無色の上澄み液から分離した後、これに乾燥メタノール2mLを加え、5mLの乾燥ヘキサンで4回洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、オレンジ色の油状物2.90gを得た。H,13C,および31
NMRの結果から、この油状物の主成分は目的のトリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリドであった。H,13C,および31
NMRによる同定結果を以下に示す。
Figure 0004685011
31P NMRの結果から、上記トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリドを主成分とする該油状物中には副生成物として、一般式(5)においてa=b=c=d=1,R=R=Me,D’=H,n=1,Z=Clで表される化合物が含まれており、また、H NMRにおいてNMe基のピークの積分比から、該油状物中のトリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリドの純度は約50%となった。
[実施例38]
トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムブロミドの合成
窒素雰囲気に保った100mLガラスフラスコ中で3−ブロモプロピルトリメトキシシラン0.75mL(4.0mmol)を乾燥ヘキサン30mLに溶解した。この溶液に、PZNBのテトラリン溶液15g(PZNB濃度0.220mmol/gより3.3mmol)を室温で滴下した。滴下と同時に淡褐色の油状物が分離した。滴下終了後、さらに30分間攪拌した。淡褐色の油状物を無色の上澄み液から分離した後、これに乾燥メタノール2mLを加え、5mLの乾燥ヘキサンで4回洗浄した。減圧下で溶媒を留去し、オレンジ色の油状物3.10gを得た。H,13C,および31
NMRの結果から、この油状物の主成分は目的のトリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムブロミドであった。H,13C,および31
NMRによる同定結果を以下に示す。
Figure 0004685011
31P NMRの結果から、上記トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムブロミドを主成分とする該油状物中には副生成物として、一般式(5)においてa=b=c=d=1,R=R=Me,D’=H,n=1,Z=Brで表される化合物が含まれており、また、H NMRにおいてNMe基のピークの積分比から、該油状物中のトリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムブロミドの純度は約70%となった。
[実施例39]
加水分解−重縮合法によるホスファゼニウムクロリド担持シリカゲルの調製−1
攪拌子、温度計、冷却器等を備えた2口の100mLガラス製丸底フラスコに、実施例36で得られた粗トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリド7.40g(6.2mmol)、テトラエトキシシラン50.0g(0.24mol)、エタノール50mL、36%塩酸0.80mL(9.2mmol)を仕込んだ。これに水10.0gを10分かけて滴下した後、60℃で3時間攪拌した。放冷後、水50.0gを加え、さらに28%アンモニア水2.0mlを滴下すると反応液は急速に固形化した。これを室温で3日間熟成させた後、イオン交換水100mlで2回洗浄した。得られた個体を1mmHgの減圧下100℃で4時間乾燥させ、ホスファゼニウムクロリド担持シリカゲル20.9g(ホスファゼニウムクロリド担持量0.30mmol/g)を得た。窒素ガス吸着法により測定した比表面積は432m/g、細孔径9〜500Åの細孔容積は0.30cm/gであった。固体31
NMRでは35.2(1P)ppm、13.4−5.8(3P)ppm、および−36.4(1P)ppmにピークが観測された。
[実施例40]
加水分解−重縮合法によるホスファゼニウムクロリド担持シリカゲルの調製−2
攪拌子、温度計、冷却器等を備えた2口の100mLガラス製丸底フラスコに、実施例36で得られた粗トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリド5.95g(5.0mmol)、テトラエトキシシラン20.8g(0.10mol)、エタノール20mL、36%塩酸0.60mL(6.9mmol)を仕込んだ。これに水5.0gを10分かけて滴下した後、60℃で3時間攪拌した。放冷後、水20.0gを加え、さらに28%アンモニア水1.0mlを滴下すると反応液は急速に固形化した。これを室温で3日間熟成させた後、イオン交換水50mlで2回洗浄した。得られた個体を1mmHgの減圧下80℃で4時間乾燥させ、ホスファゼニウムクロリド担持シリカゲル11.1g(ホスファゼニウムクロリド担持量0.45mmol/g)を得た。窒素ガス吸着法により測定した比表面積は277m/g、細孔径9〜500Åの細孔容積は0.59cm/gであった。
[実施例41]
シリル化法によるホスファゼニウムクロリド担持シリカゲルの調製
攪拌子、温度計、冷却器等を備えた2口の50mLガラス製丸底フラスコに、実施例36で得られた粗トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリド2.26g(1.9mmol)、シリカゲル(関東化学;60N)5.00g、乾燥トルエン20mlを窒素雰囲気下で仕込み、加熱還流下で12時間攪拌した。内容物を濾過した後、20mLのメタノールで2回洗浄した後、得られた固体を1mmHgの減圧下80℃で4時間乾燥させ、ホスファゼニウムクロリド担持シリカゲル6.50g(ホスファゼニウムクロリド担持量0.24mmol/g)を得た。窒素ガス吸着法により測定した比表面積は447m/g、細孔径9〜500Åの細孔容積は0.47cm/gであった。固体31
NMRでは5.71(4P)ppm、および−36.1(1P)ppmにピークが観測された。
[実施例42]
ホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲルの調製−2
実施例39で得られたホスファゼニウムクロリド担持シリカゲル11.1g(ホスファゼニウムカチオンとして3.33mmol)をカラム充填塔に詰め、1mol/Lアンモニア水溶液30.0mL(30.0mmol)を流通(SV=3)させた後、イオン交換水、ついでメタノールで洗浄した。処理後の固体を1mmHgの減圧下80℃で6時間乾燥させ、ホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲル11.0g(ホスファゼニウムヒドロキシド担持量0.30mmol/g)を得た。元素分析では塩素原子は観測されなかった。また、窒素ガス吸着法により測定した比表面積は454m/g、細孔径9〜500Åの細孔容積は0.36cm/gであった。固体31
NMRでは5.75(4P)ppm、および−36.1(1P)ppmにピークが観測された。
[実施例43]
ホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲルの調製−3
実施例40で得られたホスファゼニウムクロリド担持シリカゲル3.24g(ホスファゼニウムカチオンとして1.46mmol)をカラム充填塔に詰め、1mol/Lアンモニア水溶液29.2mL(29.2mmol)を流通(SV=4)させた後、イオン交換水、ついでメタノールで洗浄した。処理後の固体を1mmHgの減圧下80℃で6時間乾燥させ、ホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲル3.15g(ホスファゼニウムヒドロキシド担持量0.45mmol/g)を得た。
[実施例44]
ホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲルの調製−1
実施例41で得られたホスファゼニウムクロリド担持シリカゲル2.72g(ホスファゼニウムカチオンとして0.65mmol)をカラム充填塔に詰め、1mol/Lアンモニア水溶液6.3mL(6.3mmol)を流通(SV=4)させた後、イオン交換水、ついでメタノールで洗浄した。処理後の固体を1mmHgの減圧下80℃で6時間乾燥させ、ホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲル2.65g(ホスファゼニウムヒドロキシド担持量0.24mmol/g)を得た。元素分析では塩素原子は観測されなかった。また、窒素ガス吸着法により測定した比表面積は428m/g、細孔径9〜500Åの細孔容積は0.50cm/gであった。固体31
NMRでは5.95(4P)ppm、および−36.1(1P)ppmにピークが観測された。
[実施例45]
高分子担持ホスファゼニウムヨージドを触媒として用いるフェノール系水酸基のアルキル化反応
攪拌機および冷却器つきの窒素雰囲気を保った100mlガラスフラスコに実施例4で得られた高分子担持ホスファゼニウムヨージド2.7g(ホスファゼニウムカチオンとして1.0mmol)、フェノール0.49g(5.2mmol)および炭酸ジメチル30mlを入れ、攪拌しながら18時間加熱還流した後に室温まで冷却した。反応後の懸濁液の上澄み液を一部取り、ガスクロマトグラフィー測定を行ったところ、フェノールの転化率は99.4%であり、目的物であるアニソールの収率は91.0%であった。また、反応後の懸濁液を濾過し、炭酸ジメチルを溶媒としてソックスレー洗浄した後に1mmHgの減圧下で70℃で加熱乾燥し高分子担持ホスファゼニウムヨージドを2.7g回収した。
(比較例1)
実施例45で用いた高分子担持ホスファゼニウムヨージド2.7g(ホスファゼニウムカチオンとして1.0mmol)を用いなかった以外は実施例45と同様に反応を行った。
ガスクロマトグラフィー測定を行ったところ、フェノールは全く転化しておらず、目的物であるアニソールは全く得られなかった。
(比較例2)
実施例45で用いた高分子担持ホスファゼニウムヨージド2.7g(ホスファゼニウムカチオンとして1.0mmol)の代わりにテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムヨージド1.0mmolを用いた以外は実施例45と同様に反応を行った。ガスクロマトグラフィー測定を行ったところ、フェノールは完全に転化しており、目的物であるアニソールの収率は93.4%であった。高分子担持ホスファゼニウムヨージドは非担持のホスファゼニウムヨージドと同等の触媒活性を有することが分かった。
[実施例46〜54]
回収した触媒の再使用
実施例45で用いた高分子担持ホスファゼニウムヨージドの代わりに実施例45で得られた回収した高分子担持ホスファゼニウムヨージドを用いて実施例45と同様に反応を行い、反応後に高分子担持ホスファゼニウムヨージドを回収した。さらにこの回収した高分子担持ホスファゼニウムヨージドを繰り返し反応に使用した。結果を表4に示す。
Figure 0004685011
また、実施例54で回収した高分子担持ホスファゼニウムヨージドの31P−NMR測定によるホスファゼニウムカチオンの濃度は0.345mmol/gであり、繰り返し使用によるホスファゼニウムヨージドの脱離はなかった。
[実施例55]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドを触媒として用いるポリアルキレンオキシドの重合反応
温度測定管、圧力計、攪拌機およびアルキレンオキシド導入管を装備した70mlの窒素雰囲気を保ったオートクレーブにグリセリン1.0g(11mmol)、実施例3で得られた高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド0.3g(ホスファゼニウムカチオンとして0.13mmol)およびプロピレンオキシド34gを入れて密閉し、攪拌しながら80℃に加熱した。この際オートクレーブ内の圧力は0.3MPa(ゲージ圧)まで上昇した。その後、プロピレンオキシドの消費により圧力は低下してくるが、圧力降下が止まるまで反応を続けた。反応終了後、室温まで冷却してから残留するプロピレンオキシドを減圧下で留去した。オートクレーブ内の懸濁液を取り出しTHFで希釈後濾過を行い、さらにTHFで十分に濾物を洗浄した後に濾液からTHFを減圧留去し、無色無臭のポリプロピレンオキシド32gを得た。重合活性(単位時間,触媒モル数あたりのポリプロピレンオキシドの生成量)は10.9g/mmol・hであった。
(比較例3)
実施例55で用いた高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの代わりに水酸化カリウム0.06g(1.6mmol)を用いた以外は実施例55と同様に反応を行った。ポリプロピレンオキシド30gが得られたが、重合活性はわずか0.29g/mmol・hであった。
[実施例56〜58]
300mlのオートクレーブを用い、実施例55で用いたグリセリンの代わりに表5に示すようにアルコールの種類、使用量およびプロピレンオキシドの使用量を用いた以外は実施例55と同様に反応を行った。結果を表5に示す。
[表5]
Figure 0004685011
[実施例59〜69]
70mlまたは300mlのオートクレーブを用い、実施例55で用いた高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの代わりに表6に示す高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドを用い、グリセリン量、プロピレンオキシド量を表6に示すように行った以外は実施例55と同様にして反応を行った。結果を表6に示す。
[表6]
Figure 0004685011
[実施例70〜72]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの回収再使用
温度測定管、圧力計、攪拌機およびアルキレンオキシド導入管を装備した300mlの窒素雰囲気を保ったオートクレーブにグリセリン3.2g、実施例17で得られた高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド2.5gおよびプロピレンオキシド104gを入れて密閉し、攪拌しながら80℃に加熱した。この際オートクレーブ内の圧力は0.32MPa(ゲージ圧)まで上昇した。その後、プロピレンオキシドの消費により圧力は低下してくるが、圧力降下が止まるまで反応を続けた。反応終了後、室温まで冷却してから残留するプロピレンオキシドを減圧下で留去した。オートクレーブ内の懸濁液を取り出しTHFで希釈後濾過を行い、さらにTHFで十分に濾物を洗浄した後に濾液からTHFを減圧留去し、無色無臭のポリオキシプロピレンオキシド103gを得た。重合活性(単位時間,触媒モル数あたりのポリオキシプロピレントリオールの生成量)は2.0g/mmol・hであった。また、濾過後の濾物を1mmHgの減圧下で70℃で加熱乾燥し、触媒を回収した。次に、この回収した触媒を全量とグリセリン2.7g、プロピレンオキシド85gを300mlオートクレーブに入れて上記と同様に80℃で重合および反応後の後処理を行い、ポリプロピレンオキシド87gと回収触媒を得た。さらにこの回収触媒をグリセリン2.7g、プロピレンオキシド86gと共に重合に供し、処理によりポリプロピレンオキシド85gを得た。2回目、3回目の触媒活性はそれぞれ1.9g/mmol・h、2.0g/mmol・hであり本発明における高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドは触媒として回収再使用後もその活性低下がないことが分かった。
[実施例73〜81]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの回収再使用
実施例69で用いた重合後の担持触媒を回収してその全量を用いた以外は実施例69と同様に反応を行った。さらに重合後に触媒を回収して以下同様に触媒を繰り返し使用した。結果を表7に示す。
[表7]
Figure 0004685011
10回繰り返し重合においても十分な触媒活性を有していることが判明した。
[実施例82]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドを触媒として用いるポリアルキレンオキシドの重合反応
温度測定管、圧力計、攪拌機およびアルキレンオキシド導入管を装備した70mlの窒素雰囲気を保ったオートクレーブにグリセリン0.6g(7.0mmol)、実施例35で得られた高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド0.9g(ホスファゼニウムカチオンとして0.09mmol)およびプロピレンオキシド33gを入れて密閉し、攪拌しながら80℃に加熱した。この際オートクレーブ内の圧力は0.3MPa(ゲージ圧)まで上昇した。その後、プロピレンオキシドの消費により圧力は低下してくるが、圧力降下が止まるまで反応を続けた。反応終了後、室温まで冷却してから残留するプロピレンオキシドを減圧下で留去した。オートクレーブ内の懸濁液を取り出しノルマルヘキサンで希釈後濾過を行い、さらにノルマルヘキサンで十分に濾物を洗浄した後に濾液からノルマルヘキサンを減圧留去し、無色無臭のポリプロピレンオキシド33gを得た。重合活性(単位時間,触媒モル数あたりのポリプロピレンオキシドの生成量)は12.4g/mmol・hであった。
[実施例83〜84]
高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドの回収再使用
実施例82で得た、濾過後の濾物を1mmHgの減圧下で70℃で加熱乾燥し、触媒を回収した。次に、この回収した触媒を全量とグリセリン0.6g、プロピレンオキシド30gを70mlオートクレーブに入れて実施例82と同様に80℃で重合および反応後の後処理を行い、ポリプロピレンオキシド30gと回収触媒を得た。さらにこの回収触媒をグリセリン0.5g、プロピレンオキシド29gと共に重合に供し、処理によりポリプロピレンオキシド29gを得た。2回目、3回目の触媒活性はそれぞれ10.6g/mmol・h、14.7g/mmol・hであり本発明における高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシドは触媒として回収再使用後もその活性低下がないことが分かった。
[実施例85]
ホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲルを触媒に用いるアセトンのアルドール縮合
50mLガラス製丸底フラスコに、実施例43で得られたホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲル1.0g(ホスファゼニウムカチオンとして0.45mmol)、アセトン26.5g(0.45mol)を仕込み、窒素雰囲気下、室温で攪拌した。8時間後、懸濁液の上澄み液を一部取り、ガスクロマトグラフィー測定を行ったところ、アセトンの転化率は3.5%となり、ジアセトンアルコールの選択率は97.2%、メシチルオキシドの選択率は2.8%であった。
[実施例86]
ホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲルを触媒に用いるアセトンのアルドール縮合
50mLガラス製丸底フラスコに、実施例44で得られたホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲル1.0g(ホスファゼニウムカチオンとして0.24mmol)、アセトン14.0g(0.24mol)を仕込み、窒素雰囲気下、室温で攪拌した。8時間後、懸濁液の上澄み液を一部取り、ガスクロマトグラフィー測定を行ったところ、アセトンの転化率は1.3%となり、ジアセトンアルコールの選択率はほぼ100%であった。
(比較例4)
実施例85で用いたホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲルの替わりにホスファゼニウムヒドロキシド0.34g(0.45mmol)を用いた以外は実施例68と同様に反応を行った。8時間後、懸濁液の上澄み液を一部取り、ガスクロマトグラフィー測定を行ったところ、アセトンの転化率は8.0%となり、ジアセトンアルコールの選択率は78.2%、メシチルオキシドの選択率は21.3%であった。
(各実施例の化学反応式)
実施例1 PZNB
Figure 0004685011
実施例2 高分子担持ホスファゼニウムクロリド
Figure 0004685011
実施例3 高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド
Figure 0004685011
実施例4 高分子担持ホスファゼニウムヨージド
Figure 0004685011
実施例5 水酸基含有ホスファゼニウムヨージド
Figure 0004685011
実施例6〜11 ポリアルキレンオキシドを側鎖に有するホスファゼニウムヨージド
Figure 0004685011
実施例12〜17 高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド
Figure 0004685011
実施例18 PZND
Figure 0004685011
実施例19 PZND−Cl
Figure 0004685011
実施例20 シロキシ基含有ホスファゼニウムクロリド
Figure 0004685011
実施例21 水酸基含有ホスファゼニウムヨージド
Figure 0004685011
実施例22 高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド
Figure 0004685011
実施例23 高分子担持ホスファゼニウムクロリド
Figure 0004685011
実施例24 シロキシ基含有ホスファゼニウムクロリド
Figure 0004685011
実施例25 水酸基含有ホスファゼニウムヘキサフルオロホスフェイト
Figure 0004685011
実施例26 高分子担持ホスファゼニウムヘキサフルオロホスフェイト
Figure 0004685011
実施例27 高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド
Figure 0004685011
実施例28〜30 高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド
Figure 0004685011
実施例31〜32 高分子担持ホスファゼニウムヒドロキシド
Figure 0004685011
実施例33 スチリル基含有ホスファゼニウムヨージド
Figure 0004685011
実施例34 アリル基含有ホスファゼニウムヨージド
Figure 0004685011
実施例35 高分子担持ホスファゼニウムヨージドおよびヒドロキシド
Figure 0004685011
実施例36 トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリド−1
Figure 0004685011
実施例37 トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムクロリド−2
Figure 0004685011
実施例38 トリメトキシシリル基含有ホスファゼニウムブロミド
Figure 0004685011
実施例39〜40 ホスファゼニウムクロリド担持シリカゲル(加水分解−重縮合法)
Figure 0004685011
実施例41 ホスファゼニウムクロリド担持シリカゲル(シリル化法)
Figure 0004685011
実施例42〜44 ホスファゼニウムヒドロキシド担持シリカゲル
Figure 0004685011
本発明のホスファゼン担持触媒は、種々の有機反応の触媒として、特に環状モノマーを重合するための触媒として、また置換基の置換のための触媒として有用である。また、本発明のホスファゼン化合物およびホスファゼニウム塩は、本発明のホスファゼン担持触媒を製造するのに有用な中間体であるとともに、それ自体種々の有機反応を進行させる触媒として有用である。

Claims (11)

  1. 一般式(1)で表される基が担体に結合しているホスファゼン担持触媒。
    Figure 0004685011
    (式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn-は最大8個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。R1は水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。Dは直接結合またはNと担体を結合することができる2価の基である。前記活性水素化合物が、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子上に活性水素原子を有する化合物、あるいは無機酸である。前記Nと担体を結合することができる2価の基が、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基である。
  2. 一般式(2)
    Figure 0004685011
    (式中、a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である.Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。)で表される新規ホスファゼン化合物。
  3. 一般式(3)
    Figure 0004685011
    (式中、a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Gは酸素原子もしくは硫黄原子である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。)で表される新規ホスファゼン化合物。
  4. 一般式(4)
    Figure 0004685011
    (式中、a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Xはハロゲン原子であり、X-はXと同種または異種のハロゲン原子のアニオンである。)で表される新規ホスファゼニウム塩。
  5. 一般式(5)
    Figure 0004685011
    (式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn-は最大8個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。R1は水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。D'は、Nと結合する1価の基ただし、水素、飽和炭化水素基は除く。)である。前記活性水素化合物が、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子上に活性水素原子を有する化合物、あるいは無機酸である。前記Nと結合する1価の基がヘテロ原子を有する炭化水素基または炭素‐炭素不飽和結合を有する基である。)で表される新規ホスファゼニウム塩。
  6. 一般式(6)
    Figure 0004685011
    (式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn-は最大8個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Aは炭素数1〜20個の炭化水素基である。また、R1は水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。R2、R3、R4、R5は水素または炭素数1〜8個の炭化水素基である。eは0〜200である。前記活性水素化合物が、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子上に活性水素原子を有する化合物、あるいは無機酸である。)で表される新規ホスファゼニウム塩。
  7. 一般式(7)
    Figure 0004685011
    (式中、nは1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの数を表し、Zn-は最大8個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。R1は水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。Mは炭素−炭素不飽和結合を有する基である。前記活性水素化合物が、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子上に活性水素原子を有する化合物、あるいは無機酸である。)で表される新規ホスファゼニウム塩。
  8. 一般式(8)
    Figure 0004685011
    (式中、mは1〜3の整数であって珪素に結合したホスファゼニウムカチオンの数を表し、n'は1〜8の整数であってホスファゼニウムカチオンの結合した珪素化合物の数を表す。またnはmとn'の乗数であり、Zn-は最大24個の活性水素原子を有する活性水素化合物からn個のプロトンが脱離して導かれる形の活性水素化合物のアニオンである。a、b、cおよびdはそれぞれ3以下の正の整数である。Rは同種または異種の炭素数1〜10個の炭化水素基であり、同一窒素原子上の2個のRが互いに結合して環構造を形成する場合もある。Bは炭素数1〜20個の炭化水素基である。また、R1は水素または炭素数1〜10個の炭化水素基である。Tは加水分解によりSi−T結合が切断できる基である。前記活性水素化合物が、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子上に活性水素原子を有する化合物、あるいは無機酸である。)で表される新規ホスファゼニウム塩。
  9. 請求項1に記載の担持触媒を用いて、アルキレンオキシドを重合させることを特徴とするポリアルキレンオキシドの製造方法。
  10. 請求項1に記載の担持触媒を用いて、芳香族性の環に少なくとも1つの水酸基が結合した芳香族化合物と、炭酸ジエステルとを反応させることを特徴とする芳香族化合物に存在する水酸基がエーテル化された芳香族エーテルの製造方法
  11. 請求項1に記載の担持触媒を用いて、カルボニル化合物をアルドール反応させることを特徴とするβ‐ヒドロキシカルボニル化合物および/またはα,β‐不飽和カルボニル化合物の製造方法
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