JP3901400B2 - 1,2−ジオキシエタン誘導体の製造方法 - Google Patents

1,2−ジオキシエタン誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類とを反応させて1,2−ジオキシエタン誘導体を製造する効果的な方法に関する。これらの1,2−ジオキシエタン誘導体は、農医薬品の合成中間体や高分子材料等として極めて重要な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類とを反応させて1,2−ジオキシエタン誘導体を製造するには、3級アミン、4級アンモニウム塩および4級ホスフォニウム塩等が、その反応を促進するということが公知である(ケイ.フナバシ;ブリティン ケミカル ソサイアティ オブ ジャパン、52巻、頁1488、1979年および西久保忠臣、有機合成化学協会誌、49巻、3号、頁219、1991年)。しかしながら、3級アミン、4級アンモニウム塩および4級ホスフォニウム塩等の触媒はその活性が充分でない。これらの触媒の量や濃度を高めたり、あるいは過酷な条件下で反応を実施し反応を充分に進行させようとしても、そのことによって副反応が起きたり、反応基質あるいは生成物等の分解が生じる等の問題を抱えており、収率や選択率は未だ充分なものとはいえない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類との反応に、活性の高い触媒を見出だし、その触媒を用いて高い収率で1,2−ジオキシエタン誘導体を製造する効果的な方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を続けてきたところ、式(1)で表されるホスファゼニウム化合物が、エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類との反応に極めて高い触媒活性を示し、極めて高い収率で目的の1,2−ジオキシエタン誘導体が得られることを見い出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、式(1)
【0005】
【化3】
Figure 0003901400
(式中、Rは同種または異種の、炭素数1ないし10個の炭化水素基である。 Z-はハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、アリールオキシアニオンまたはカルボキシアニオンである。)で表されるホスファゼニウム化合物の存在下に、エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類とを反応させることを特徴とする、それぞれに対応した式(2)、式(3)または式(4)
【0006】
【化4】
Figure 0003901400
(式中のカルボニル基または酸素原子に結合した炭素原子 C− または −Cは、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素の炭素原子である。)で表される部分構造を有する1,2−ジオキシエタン誘導体の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法における式(1)で表されるホスファゼニウム化合物中のカチオンはその電荷が中心のりん原子上に局在する極限構造式で代表しているが、これ以外に無数の極限構造式が描かれ実際にはその正電荷は全体に非局在化している。
【0008】
式(1)で表されるホスファゼニウム化合物中のRは、同種または異種の、炭素数1ないし10個の炭化水素基であり、具体的には、このRは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、アリル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−ブテニル、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−1−ブチル、イソペンチル、tert−ペンチル、3−メチル−2−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、4−メチル−2−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ヘプチル、3−ヘプチル、1−オクチル、2−オクチル、2−エチル−1−ヘキシル、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル(通称、tert−オクチル)、ノニル、デシル、フェニル、4−トルイル、ベンジル、1−フェニルエチルまたは2−フェニルエチル等の脂肪族または芳香族の炭化水素基が挙げられる。これらのうち、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、tert−ペンチルまたは1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル等の炭素数1ないし8個の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0009】
式(1)で表されるホスファゼニウム化合物中のZ-は、ハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、アリールオキシアニオンまたはカルボキシアニオン等である。さらには、本発明の方法を阻害しなければ、何故なるアニオンを用いても構わない。
【0010】
これらのZ-を具体的に例示すれば、例えばフッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオンまたはヨウ素アニオン等のハロゲンアニオンが挙げられ、ヒドロキシアニオンが挙げられ、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、1−デカノールまたはオクタヒドロナフトール等のアルコール類から導かれるアルコキシアニオンが挙げられ、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、2−メチル−1−ナフトールまたは9−フェナンスロール等の芳香族ヒドロキシ化合物から導かれるアリールオキシアニオンが挙げられ、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、デカンカルボン酸、オレイン酸、安息香酸またはナフトエ酸等のカルボン酸類から導かれるカルボキシアニオンなどが挙げられる。
【0011】
これらのうち好ましくは、ヒドロキシアニオンであり、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、1−デカノールまたはオクタヒドロナフトール等のアルコール類から導かれるアルコキシアニオンであり、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、2−メチル−1−ナフトールまたは9−フェナンスロール等の芳香族ヒドロキシ化合物から導かれるアリールオキシアニオンである。
【0012】
これらのうちより好ましくは、ヒドロキシアニオン、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノールまたはtert−ブタノールなどの炭素数1ないし4個のアルコール類から導かれるアルコキシアニオン、例えばフェノールまたはクレゾールなどの炭素数6ないし8の芳香族ヒドロキシ化合物から導かれるアリールオキシアニオンである。更に好ましくは、ヒドロキシアニオン、メトキシアニオンまたはフェノキシアニオンである。
【0013】
これらのホスファゼニウム化合物は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
またこれらのホスファゼニウム化合物は、EP0791600の12頁から13頁に記載の方法または類似の方法で合成することができる。
【0014】
本発明の方法におけるエポキシ化合物とは3員環のエポキシ基を有する有機化合物である。それらは例えば炭素原子、水素原子およびエポキシ基の酸素原子のみから成るエポキシ化合物、ハロゲン原子を有するエポキシ化合物、ケト基を有するエポキシ化合物、エーテル結合を有するエポキシ化合物、エステル結合を有するエポキシ化合物、三置換アミノ基を有するエポキシ化合物またはシアノ基を有するエポキシ化合物等である。
【0015】
これらを具体的に例示すれば、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、7,8−エポキシ−2−メチルオクタデカン、2−ビニルオキシラン、2−メチル−2−ビニルオキシラン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1−フェニル−2,3−エポキシプロパン、1−(1−ナフチル)−2,3−エポキシプロパン、1−シクロヘキシル−3,4−エポキシブタン、1,3−ブタジエンジオキシドまたは1,2,7,8−ジエポキシオクタン等の炭素原子、水素原子およびエポキシ基の酸素原子のみから成る脂肪族エポキシ化合物が挙げられ、例えばシクロペンテンオキシド、3−メチル−1,2−シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、α−ピネンオキシド、2,3−エポキシノルボルナン、リモネンオキシド、シクロドデカンエポキシドまたは2,3,5,6−ジエポキシノルボルナン等の炭素原子、水素原子およびエポキシ基の酸素原子のみから成る脂環式エポキシ化合物が挙げられ、
【0016】
例えばスチレンオキシド、3−メチルスチレンオキシド、1,2−エポキシブチルベンゼン、1,2−エポキシオクチルベンゼン、スチルベンオキシド、3−ビニルスチレンオキシド、1−(1−メチル−1,2−エポキシエチル)−3−(1−メチルビニル)ベンゼン、1,4−ジ(1,2−エポキシプロピル)ベンゼン、1,3−ジ(1,2−エポキシ−1メチルエチル)ベンゼンまたは1,4−ジ(1,2−エポキシ−1メチルエチル)ベンゼン等の炭素原子、水素原子およびエポキシ基の酸素原子のみから成る芳香族エポキシ化合物が挙げられ、例えばエピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、1,2−エポキシ−4−フルオロブタン、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−フルオロベンゼン、1−(3,4−エポキシブチル)−2−フルオロベンゼン、1−(2,3−エポキシプロピル)−4−クロロベンゼンまたは1−(3,4−エポキシブチル)−3−クロロベンゼン等のハロゲン原子を有する脂肪族エポキシ化合物が挙げられ、例えば4−フルオロ−1,2−シクロヘキセンオキシドまたは6−クロロ−2,3−エポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン等のハロゲン原子を有する脂環式エポキシ化合物が挙げられ、例えば4−フルオロスチレンオキシドまたは1−(1,2−エポキシプロピル)−3−トリフルオロベンゼン等のハロゲン原子を有する芳香族エポキシ化合物が挙げられ、例えば3−アセチル−1,2−エポキシプロパン、4−ベンゾイル−1,2ーエポキシブタン、4−(4−ベンゾイル)フェニル−1,2−エポキシブタンまたは4,4’−ジ(3,4−エポキシブチル)ベンゾフェノン等のケト基を有する脂肪族エポキシ化合物が挙げられ、例えば3,4−エポキシ−1−シクロヘキサノンまたは2,3−エポキシ−5−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン等のケト基を有する脂環式エポキシ化合物が挙げられ、例えば3−アセチルスチレンオキシドまたは4−(1,2−エポキシプロピル)ベンゾフェノン等のケト基を有する芳香族エポキシ化合物が挙げられ、
【0017】
例えばグリシジルメチルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチル3,4−エポキシブチルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジル4−tert−ブチルフェニルエーテル、グリシジル4−クロロフェニルエーテル、グリシジル4−メトキシフェニルエーテル、グリシジル2−フェニルフェニルエーテル、グリシジル1−ナフチルエーテル、グリシジル4−インドリルエーテル、グリシジルN−メチル−α−キノロン−4−イルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−ジグリシジルオキシベンゼン、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(4−グリシジルオキシフェニル)メタン、ポリ(オキシプロピレン)トリオールトリグリシジルエーテルまたはフェノールノボラックのグリシジルエーテル等のエーテル結合を有する脂肪族エポキシ化合物が挙げられ、例えば1,2−エポキシ−4−メトキシシクロヘキサンまたは2,3−エポキシ−5,6−ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン等のエーテル結合を有する脂環式エポキシ化合物が挙げられ、例えば4−メトキシスチレンオキシドまたは1−(1,2−エポキシブチル)2−フェノキシベンゼン等のエーテル結合を有する芳香族エポキシ化合物が挙げられ、例えば蟻酸グリシジル、酢酸グリシジル、酢酸2,3−エポキシブチル、酪酸グリシジル、安息香酸グリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、ポリ(アクリル酸グリシジル)、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、アクリル酸グリシジルと他のモノマー類の共重合体またはメタクリル酸グリシジルと他のモノマー類の共重合体等のエステル結合を有する脂肪族エポキシ化合物が挙げられ、
【0018】
例えば1,2−エポキシ−4−メトキシカルボニルシクロヘキサンまたは2,3−エポキシ−5−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン等のエステル結合を有する脂環式エポキシ化合物が挙げられ、例えば4−(1,2−エポキシエチル)安息香酸エチル、3−(1,2−エポキシブチル)安息香酸メチルまたは3−(1,2−エポキシブチル)−5−フェニル安息香酸メチル等のエステル結合を有する芳香族エポキシ化合物が挙げられ、例えばN,N−グリシジルメチルアセトアミド、N,N−エチルグリシジルプロピオンアミド、N,N−グリシジルメチルベンズアミド、N−(4,5−エポキシペンチル)−N−メチルベンズアミド、N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−ジグリシジルアミノフェニル)メタンまたはポリ(N,N−グリシジルメチルアクリルアミド)等の三置換アミノ基を有する脂肪族エポキシ化合物が挙げられ、例えば1,2−エポキシ−3−(ジフェニルカルバモイル)シクロヘキサンまたは2,3−エポキシ−6−(ジメチルカルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の三置換アミノ基を有する脂環式エポキシ化合物が挙げられ、例えば2−(ジメチルカルバモイル)スチレンオキシドまたは4−(1,2−エポキシブチル)−4’−(ジメチルカルバモイル)ビフェニル等の三置換アミノ基を有する芳香族エポキシ化合物が挙げられ、例えば4−シアノ−1,2−エポキシブタンまたは1−(3−シアノフェニル)−2,3−エポキシブタン等のシアノ基を有する脂肪族エポキシ化合物が挙げられ、例えば2−シアノスチレンオキシドまたは6−シアノ−1−(1,2−エポキシ−2−フェニルエチル)ナフタレン等のシアノ基を有する芳香族エポキシ化合物等が挙げらる。更には、本発明の方法を阻害しない限りこれらが上記以外の如何なる結合や置換基またはヘテロ原子を有していてもよい。
【0019】
これらのうち好ましくは、▲1▼上述の炭素原子、水素原子およびエポキシ基の酸素原子のみから成る脂肪族もしくは芳香族エポキシ化合物であり、▲2▼上述のエーテル結合を有する脂肪族もしくは芳香族エポキシ化合物であり、▲3▼上述のエステル結合を有する脂肪族もしくは芳香族エポキシ化合物である。
【0020】
より好ましくは、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、7,8−エポキシ−2−メチルオクタデカン、2−ビニルオキシラン、2−メチル−2−ビニルオキシラン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1−フェニル−2,3−エポキシプロパン、1−(1−ナフチル)−2,3−エポキシプロパン、1−シクロヘキシル−3,4−エポキシブタン、1,3−ブタジエンジオキシドまたは1,2,7,8−ジエポキシオクタン等の炭素原子、水素原子およびエポキシ基の酸素原子のみから成る脂肪族エポキシ化合物であり、例えばグリシジルメチルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチル3,4−エポキシブチルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジル4−tert−ブチルフェニルエーテル、グリシジル4−クロロフェニルエーテル、グリシジル4−メトキシフェニルエーテル、グリシジル2−フェニルフェニルエーテル、グリシジル1−ナフチルエーテル、グリシジル4−インドリルエーテル、グリシジルN−メチル−α−キノロン−4−イルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−ジグリシジルオキシベンゼン、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(4−グリシジルオキシフェニル)メタン、ポリ(オキシプロピレン)トリオールトリグリシジルエーテルまたはフェノールノボラックのグリシジルエーテル等のエーテル結合を有する脂肪族エポキシ化合物であり、例えば蟻酸グリシジル、酢酸グリシジル、酢酸2,3−エポキシブチル、酪酸グリシジル、安息香酸グリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、ポリ(アクリル酸グリシジル)、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、アクリル酸グリシジルと他のモノマー類の共重合体またはメタクリル酸グリシジルと他のモノマー類の共重合体等のエステル結合を有する脂肪族エポキシ化合物である。
【0021】
本発明の方法において、式(1)で表されるホスファゼニウム化合物の存在下に上述のエポキシ化合物とカルボン酸エステル類とを反応させて得られる1,2−ジオキシエタン誘導体は、カルボン酸エステル類のエステル結合のアシル基とアルコキシまたはアリールオキシ基との間に、エポキシ化合物のエポキシ基が開環して挿入した形であり、式(2)
【0022】
【化5】
Figure 0003901400
(式中のカルボニル基または酸素原子に結合した炭素原子 C− または −Cは、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素の炭素原子である。)で表される部分構造を有する化合物である。
【0023】
カルボン酸エステル類としては、例えば炭素原子、水素原子およびエステル結合の酸素原子のみから成る脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類であり、ハロゲン原子を有する脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類であり、エーテル結合を有する脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類であり、シアノ基を有する脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類またはケト基を有する脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類等が挙げられる。
【0024】
これらのカルボン酸エステル類を具体的に例示すると、例えば蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸ジメチル、酪酸n−オクチル、イソ酪酸n−デシル、酢酸ビニル、ラウリン酸メチル、ステアリン酸アリル、オレイン酸シクロヘキシル、フェニル酢酸フェニル、1,2−ジアセトキシエタン、トリアセチン、1,2−ジアセトキシベンゼン、2,6−ジアセトキシナフタレン、4,4’−ジアセトキシビフェニル、2,2−ビス(4−アセトキシフェニル)プロパン、フェノールノボラックの酢酸エステル、ポリ(ブタジエン)ジオールの酢酸エステル、ポリ(イソブテン)ジオールの酢酸エステル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ乳酸、ポリ(カプロラクトン)、蓚酸ジメチル、蓚酸ジエチル、マロン酸ジメチル、こはく酸ジメチル、こはく酸ジフェニル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジ−n−オクチル、1,10−デカンジカルボン酸ジ(4−メチルフェニル)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラフェニル、ポリ(ブタジエン)ジカルボン酸ジメチル、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、アクリル酸グリシジルと他のモノマー類の共重合体、メタクリル酸グリシジルと他のモノマー類の共重合体、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジ−t−ブチルまたはイタコン酸ジメチル等の炭素原子、水素原子およびエステル結合の酸素原子のみから成る脂肪族カルボン酸エステル類が挙げられ、例えばシクロヘキサンカルボン酸1−ナフチル、2−ノルボルナンカルボン酸エチル、2−ノルボルネンカルボン酸フェニル、1,2−シクロブタンジカルボン酸ジエチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジフェニル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリ−n−オクチル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラ−n−オクチル、2,5−ノルボルナンジカルボン酸ジメチル、5−ノルボルナン−2,5,6−トリカルボン酸トリメチルまたは1,3−アダマンタンジカルボン酸エチル等の炭素原子、水素原子およびエステル結合の酸素原子のみから成る脂環式カルボン酸エステル類が挙げられ、
【0025】
例えば安息香酸メチル、安息香酸オクタデシル、p−メチル安息香酸2−メチルブチル、1−ナフタレンカルボン酸メチル、2−ナフタレンカルボン酸n−ヘキシル、4,4’−ジベンゾイルオキシビフェニル、2,2−ビス(4−ベンゾイルオキシフェニル)プロパン、フェノールノボラックの安息香酸エステル、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、トリメリト酸トリブチル、ピロメリト酸テトラオクチルまたはポリ(エチレンテレフタレート)等の炭素原子、水素原子およびエステル結合の酸素原子のみから成る芳香族カルボン酸エステル類が挙げられ、例えば酢酸4−フルオロフェニル、4−クロロ酪酸メチル、5−フルオロ−2−ヘキサン酸フェニル、ペンタフルオロフェニル酢酸エチル、4−クロロフェニル酢酸4−フルオロフェニル、1,2−ジアセトキシ−3−クロロベンゼン、2,6−ジアセトキシ−3−ブロモナフタレン、4,4’−ジアセトキシ−3,3’,5,5’−テトラブロモビフェニル、2,2−ビス(4−アセトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパンまたは2,2−ビス(4−アセトキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のハロゲン原子を有する脂肪族カルボン酸エステル類が挙げられ、例えば3−ブロモシクロヘキサンカルボン酸イソプロピル、3−フルオロシクロヘキサンカルボン酸ペンタフルオロフェニル、5−クロロ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンカルボン酸n−オクチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(4−ヨードフェニル)または1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリ(3−フルオロ−n−オクチル)等のハロゲン原子を有する脂環式カルボン酸エステル類が挙げられ、例えば安息香酸ペンタフルオロフェニル、4−ブロモ安息香酸4−クロロフェニル、4−クロロ安息香酸シクロヘキシル、ペンタフルオロ安息香酸メチル、6−ヨード−1−ナフタレンカルボン酸t−ブチル、1,2−ジベンゾイルオキシ−3−クロロベンゼン、2,6−ジベンゾイルオキシ−3−ブロモナフタレン、4,4’−ジベンゾイルオキシ−3,3’,5,5’−テトラブロモビフェニル、2,2−ビス(4−ベンゾイルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパンまたは2,2−ビス(4−ベンゾイルオキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のハロゲン原子を有する芳香族カルボン酸エステル類が挙げられ、
【0026】
例えばメトキシ酢酸メチル、酢酸4−メトキシフェニル、2−メトキシプロピオン酸n−オクチル、2−メトキシプロピオン酸2−メトキシエチル、4−(4−メチルフェノキシ)酪酸エチル、3−フェノキシフェニル酢酸n−ブチル、ジ(2−アセトキシ)エチルエーテル、ジプロピレングリコールの酢酸エステル、ペンタアセチルグルコース、ポリ(オキシエチレン)ジオールの酢酸エステル、ポリ(オキシプロピレン)トリオールの酢酸エステルまたは2,2’−エチレンジオキシジ酢酸ナフチル等のエーテル結合を有する脂肪族カルボン酸エステル類が挙げられ、例えば4−メトキシシクロヘキサンカルボン酸2−フェノキシエチル、3−ベンジルオキシシクロヘキサンカルボン酸n−オクチルまたは5,6−ジメトキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンカルボン酸t−ブチル等のエーテル結合を有する脂環式カルボン酸エステル類が挙げられ、例えば3−フェノキシ安息香酸シクロヘキシル、安息香酸2−メトキシエチル、4−フェノキシ安息香酸3−ブトキシプロピル、ジ(2−ベンゾイルオキシ)エチルエーテル、ジプロピレングリコールの安息香酸エステル、5−メトキシイソフタル酸n−ヘキサデシルまたは4,4’−エチレンジオキシ安息香酸フェニル等のエーテル結合を有する芳香族カルボン酸エステル類が挙げられ、
【0027】
例えばシアノ酢酸メチル、酢酸2−シアノエチル、2−(3−シアノフェニル)プロピオン酸4−シアノフェニル、酢酸4−シアノフェニルまたはプロピオン酸2−シアノシクロヘキシル等のシアノ基を有する脂肪族カルボン酸エステル類が挙げられ、例えばシクロヘキサンカルボン酸4−シアノブチル、3−シアノシクロヘキサンカルボン酸2−シアノシクロヘキシルまたは5−シアノ−2−ノルボルナンカルボン酸ジメチル等のシアノ基を有する脂環式カルボン酸エステル類が挙げられ、例えば安息香酸3−シアノプロピル、2−シアノ安息香酸4−シアノフェニル、4−シアノ安息香酸フェニルまたは6−シアノ−2−ナフタレンカルボン酸エチル等のシアノ基を有する芳香族カルボン酸エステル類が挙げられ、例えばグリコール酸メチル、酢酸3−オキソブチル、アセト酢酸4−オキソシクロヘキシル、ピルビン酸フェニルまたはアセト酢酸エチル等のケト基を有する脂肪族カルボン酸エステル類等が挙げられ、例えば3−オキソ−1−シクロペンタンカルボン酸メチル、4−オキソ−1−シクロヘキサンカルボン酸3−オキソブチル、シクロヘキサンカルボン酸4−オキソシクロヘキシルまたは3−アセチル−1−シクロヘキサンカルボン酸n−ブチル等のケト基を有する脂環式カルボン酸エステル類等が挙げられ、例えば4−アセチル安息香酸1−ナフチル、安息香酸2−ベンゾイルエチル、4−ベンゾイル安息香酸2−オキソブチルまたは5−アセチルナフタレン−1−カルボン酸ナフチル等のケト基を有する芳香族カルボン酸エステル類等が挙げられる。
【0028】
これらのカルボン酸エステル類は、化合物全体として、炭素原子、水素原子およびエステル結合の酸素原子のみから成る脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類であり、ハロゲン原子を有する脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類であり、エーテル結合を有する脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類であり、シアノ基を有する脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類またはケト基を有する脂肪族、脂環式もしくは芳香族のカルボン酸エステル類等である。それらの置換基や官能基はエステルを構成するカルボン酸の部分でもヒドロキシ化合物の部分のいずれに含まれていても、またその両方の部分に含まれていてもよい。またエステルを構成するヒドロキシ化合物は脂肪族、脂環式もしくは芳香族の何れでもよい。
【0029】
さらには本発明の方法におけるカルボン酸エステル類は、本発明の方法を阻害しない限り、上記以外の如何なる置換基、官能基またはヘテロ原子を有していてもよい。
これらのうち好ましくは、▲1▼上述の炭素原子、水素原子およびエステル結合の酸素原子のみから成る脂肪族もしくは芳香族カルボン酸エステル類であり、▲2▼上述のエーテル結合を有する脂肪族もしくは芳香族カルボン酸エステル類である。
【0030】
より好ましくは、例えば蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸ジメチル、酪酸n−オクチル、イソ酪酸n−デシル、酢酸ビニル、ラウリン酸メチル、ステアリン酸アリル、オレイン酸シクロヘキシル、フェニル酢酸フェニル、1,2−ジアセトキシエタン、トリアセチン、1,2−ジアセトキシベンゼン、2,6−ジアセトキシナフタレン、4,4’−ジアセトキシビフェニル、2,2−ビス(4−アセトキシフェニル)プロパン、フェノールノボラックの酢酸エステル、ポリ(ブタジエン)ジオールの酢酸エステル、ポリ(イソブテン)ジオールの酢酸エステル、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ乳酸、ポリ(カプロラクトン)、蓚酸ジメチル、蓚酸ジエチル、マロン酸ジメチル、こはく酸ジメチル、こはく酸ジフェニル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジ−n−オクチル、1,10−デカンジカルボン酸ジ(4−メチルフェニル)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラフェニル、ポリ(ブタジエン)ジカルボン酸ジメチル、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、アクリル酸グリシジルと他のモノマー類の共重合体、メタクリル酸グリシジルと他のモノマー類の共重合体、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジ−t−ブチルまたはイタコン酸ジメチル等の炭素原子、水素原子およびエステル結合の酸素原子のみから成る脂肪族カルボン酸エステル類であり、例えばメトキシ酢酸メチル、酢酸4−メトキシフェニル、2−メトキシプロピオン酸n−オクチル、2−メトキシプロピオン酸2−メトキシエチル、4−(4−メチルフェノキシ)酪酸エチル、3−フェノキシフェニル酢酸n−ブチル、ジ(2−アセトキシ)エチルエーテル、ジプロピレングリコールの酢酸エステル、ペンタアセチルグルコース、ポリ(オキシエチレン)ジオールの酢酸エステル、ポリ(オキシプロピレン)トリオールの酢酸エステルまたは2,2’−エチレンジオキシジ酢酸ナフチル等のエーテル結合を有する脂肪族カルボン酸エステル類である。
【0031】
また本発明の方法において、式(1)で表されるホスファゼニウム化合物の存在下にエポキシ化合物とカルボン酸無水物類とを反応させて得られる1,2−ジオキシエタン誘導体は、カルボン酸無水物類のカルボン酸無水物基のアシル基とアシルオキシ基との間に、エポキシ化合物のエポキシ基が開環して挿入した形であり、式(3)
【0032】
【化6】
Figure 0003901400
(式中のカルボニル基に結合した炭素原子 C− または −Cは、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素の炭素原子である。)で表される部分構造を有する化合物である。
【0033】
カルボン酸無水物類としては、炭素原子、水素原子およびカルボン酸無水物基の酸素原子のみから成るカルボン酸無水物類、エーテル結合を有するカルボン酸無水物類またはケト基を有するカルボン酸無水物類等が挙げられる。
これらのカルボン酸無水物類を具体的に例示すると、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸、無水テトラメチル酢酸、無水ヘキサン酸、無水ヘプタン酸、無水デカン酸、無水ラウリン酸、無水パルミチン酸、無水ステアリン酸、無水ドコサン酸、無水オレイン酸、無水リノール酸、無水フェニル酢酸、スベリン酸と蟻酸の混合酸無水物、スベリン酸と酢酸の混合酸無水物、1,6−ジ(ホルミルオキシカルボニル)ヘキサン、1,6−ジ(アセトキシカルボニル)ヘキサン、1,8−ジ(アセトキシカルボニル)オクタンまたはポリ(ブタジエン)ジカルボン酸と酢酸の混合酸無水物等の炭素原子、水素原子およびカルボン酸無水物基の酸素原子のみから成る脂肪族カルボン酸無水物類が挙げられ、例えば無水シクロブタンカルボン酸、無水シクロペンタンカルボン酸、無水シクロヘキサンカルボン酸、無水シクロヘプタンカルボン酸、無水1−アダマンタンカルボン酸、無水ノルボルナン−2−カルボン酸、無水ノルボルネン−2−カルボン酸、1,4−ジ(ホルミルオキシカルボニル)シクロヘキサン、1,3−ジ(アセトキシカルボニル)アダマンタンまたは1,3,5−トリ(アセトキシカルボニル)シクロヘキサン等の炭素原子、水素原子およびカルボン酸無水物基の酸素原子のみから成る脂環式カルボン酸無水物類が挙げられ、
【0034】
例えば無水安息香酸、アセトキシカルボニルベンゼン、無水4−ブチル安息香酸、無水1−ナフタレンカルボン酸、無水2−ナフタレンカルボン酸、無水1−メチルナフタレン−2−カルボン酸、無水ビフェニレンカルボン酸、無水4−フルオレンカルボン酸、無水9−アントラセンカルボン酸、無水トリメリト酸、1,3−ジ(ホルミルオキシカルボニル)ベンゼン、1,4−ジ(アセトキシカルボニル)ベンゼン、1,3,4−トリ(アセトキシカルボニル)ベンゼン、1,3,5−トリ(アセトキシカルボニル)ベンゼン、2,6−ジ(アセトキシカルボニル)ナフタレン、1,3,6−トリ(アセトキシカルボニル)ナフタレン等の炭素原子、水素原子およびカルボン酸無水物基の酸素原子のみから成る芳香族カルボン酸無水物類が挙げられ、例えば無水2−メトキシ酢酸、無水3−フェノキシプロピオン酸、無水グルタル酸、無水8−ブトキシオクタン酸、ジ(2−アセトキシカルボニル)エチルエーテル、ジ(2−アセトキシカルボニルエトキシ)エタンまたはポリ(オキシプロピレン)ジカルボンと酢酸の混合酸無水物等のエーテル結合を有する脂肪族カルボン酸無水物類が挙げられ、例えば無水4−メトキシシクロヘキサンカルボン酸、無水3−フェノキシシクロヘプタンカルボン酸、無水5,6−ジメトキシノルボルナン−2−カルボン酸、無水7−ブトキシノルボルネン−2−カルボン酸または無水7−オキソビシクロ[2.2.1]ヘキサン−2−カルボン酸等のエーテル結合を有する脂環式カルボン酸無水物類が挙げられ、
【0035】
例えば無水3−メトキシ安息香酸、無水3,4−ジメトキシ安息香酸、無水2−フェノキシ安息香酸、無水3−フェノキシ安息香酸、1,4−ジ(アセトキシカルボニル)2−ブトキシベンゼン、1,3,4−トリ(アセトキシカルボニル)5−フェノキシベンゼン、1,3,5−トリ(アセトキシカルボニル)4−メトキシベンゼンまたは2,6−ジ(アセトキシカルボニル)1−イソプロポキシナフタレン等のエーテル結合を有する芳香族カルボン酸無水物類が挙げられ、例えば無水ピルビン酸、2−ケト酪酸、無水7−オキソオクタン酸または4−ケトピメリン酸と酢酸の混合酸無水物等のケト基を有する脂肪族カルボン酸無水物類等が挙げられ、例えば無水4−アセチル安息香酸、無水4−ベンゾイル安息香酸、無水9−フルオレノン−1−カルボン酸、無水9−フルオレノン−2−カルボン酸、無水9−フルオレノン−4−カルボン酸または無水アントラキノン−2−カルボン酸等のケト基を有する芳香族カルボン酸無水物類等が挙げられる。この他、本発明の方法を阻害しない限り、本発明の方法におけるカルボン酸無水物類が上述以外の如何なる置換基またはヘテロ原子を有していてもよい。
【0036】
これらのうち好ましくは、上述の炭素原子、水素原子およびカルボン酸無水物基の酸素原子のみから成る脂肪族または芳香族カルボン酸無水物類である。
これらのうちより好ましくは、例えば無水安息香酸、アセトキシカルボニルベンゼン、無水4−ブチル安息香酸、無水1−ナフタレンカルボン酸、無水2−ナフタレンカルボン酸、無水1−メチルナフタレン−2−カルボン酸、無水ビフェニレンカルボン酸、無水4−フルオレンカルボン酸、無水9−アントラセンカルボン酸、無水トリメリト酸、1,3−ジ(ホルミルオキシカルボニル)ベンゼン、1,4−ジ(アセトキシカルボニル)ベンゼン、1,3,4−トリ(アセトキシカルボニル)ベンゼン、1,3,5−トリ(アセトキシカルボニル)ベンゼン、2,6−ジ(アセトキシカルボニル)ナフタレン、1,3,6−トリ(アセトキシカルボニル)ナフタレン等の炭素原子、水素原子およびカルボン酸無水物基の酸素原子のみから成る芳香族カルボン酸無水物類である。
【0037】
さらに本発明の方法において、式(1)で表されるホスファゼニウム化合物の存在下にエポキシ化合物と炭酸エステル類とを反応させて得られる1,2−ジオキシエタン誘導体は、炭酸エステル類の炭酸エステル基のアルコキシまたはアリールオキシカルボニル基とアルコキシまたはアリールオキシ基との間に、エポキシ化合物のエポキシ基が開環して挿入した形であり、式(4)
【0038】
【化7】
Figure 0003901400
(式中の酸素原子に結合した炭素原子 C− または −Cは、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素の炭素原子である。)で表される部分構造を有する化合物である。
【0039】
炭酸エステル類としては、炭素原子、水素原子および炭酸エステル基の酸素原子のみから成る炭酸エステル類、ハロゲン原子を有する炭酸エステル類またはエーテル結合を有する炭酸エステル類等が挙げられる。
これらの炭酸エステル類を具体的に例示すると、例えば炭酸ジメチル、炭酸n−オクチルメチル、炭酸ジ−n−ブチル、1,4−ジ(メトキシカルボニルオキシ)ブタン、1,8−ジ(エトキシカルボニルオキシ)オクタン、ポリ(エチレンカーボネート)またはポリ(プロピレンカーボネート)等の炭素原子、水素原子および炭酸エステル基の酸素原子のみから成る脂肪族炭酸エステル類が挙げられ、例えば炭酸シクロヘキシルイソプロピル、炭酸ジシクロヘキシル、1,4−ジ(メトキシカルボニルオキシ)シクロヘキサンまたは1,3,5−トリ(メトキシカルボニルオキシ)シクロヘキサン等の炭素原子、水素原子および炭酸エステル基の酸素原子のみから成る脂環式炭酸エステル類が挙げられ、例えば炭酸メチルフェニル、炭酸ジフェニル、1,4−ジ(メトキシカルボニルオキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ベンゾイルオキシカルボニルオキシフェニル)プロパンまたはフェノールノボラックの炭酸メチルエステル等の炭素原子、水素原子および炭酸エステル基の酸素原子のみから成る芳香族炭酸エステル類が挙げられ、例えば炭酸8−フルオロオクチルメチル、炭酸ジ(3−ブロモブチル)、1,4−ジ(メトキシカルボニルオキシ)−2−クロロブタンまたは1,8−ジ(エトキシカルボニルオキシ)−4,5,6−トリフルオロオクタン等のハロゲン原子を有する脂肪族炭酸エステル類が挙げられ、例えば炭酸メチル4−ヨードフェニル、炭酸ジ(2−クロロフェニル)、1,4−ジ(メトキシカルボニルオキシ)−2,3,5,6−テトラブロモベンゼン、2,2−ビス(4−メトキシカルボニルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパンまたは2,2−ビス(4−ベンゾイルオキシカルボニルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のハロゲン原子を有する芳香族炭酸エステル類が挙げられ、例えばジ−2−(メトキシカルボニルオキシ)エチルエーテル、ポリ(オキシエチレン)ジオールの炭酸メチルエステルまたはポリ(オキシプロピレン)トリオールの炭酸メチルエステル等のエーテル結合を有する脂肪族炭酸エステル類が挙げられ、例えばジ−4−(メトキシカルボニルオキシ)フェニルエーテルまたはジ−2−(メトキシカルボニルオキシ)−1−ナフチルエーテル等のエーテル結合を有する芳香族炭酸エステル類が挙げられる。この他、本発明の方法を阻害しない限り、本発明の方法における炭酸エステル類が上述以外の如何なる置換基またはヘテロ原子を有していてもよい。
【0040】
これらのうち好ましくは、▲1▼上述の炭素原子、水素原子および炭酸エステル基の酸素原子のみから成る脂肪族もしくは芳香族炭酸エステル類または▲2▼上述のエーテル結合を有する脂肪族もしくは芳香族炭酸エステル類である。
これらのうちより好ましくは、例えば炭酸ジメチル、炭酸n−オクチルメチル、炭酸ジ−n−ブチル、1,4−ジ(メトキシカルボニルオキシ)ブタン、1,8−ジ(エトキシカルボニルオキシ)オクタン、ポリ(エチレンカーボネート)またはポリ(プロピレンカーボネート)等の炭素原子、水素原子および炭酸エステル基の酸素原子のみから成る脂肪族炭酸エステル類であり、例えば炭酸メチルフェニル、炭酸ジフェニル、1,4−ジ(メトキシカルボニルオキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−メトキシカルボニルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ベンゾイルオキシカルボニルオキシフェニル)プロパンまたはフェノールノボラックの炭酸メチルエステル等の炭素原子、水素原子および炭酸エステル基の酸素原子のみから成る芳香族炭酸エステル類であり、例えばジ−2−(メトキシカルボニルオキシ)エチルエーテル、ポリ(オキシエチレン)ジオールの炭酸メチルエステルまたはポリ(オキシプロピレン)トリオールの炭酸メチルエステル等のエーテル結合を有する脂肪族炭酸エステル類である。
【0041】
本発明の方法では、式(1)で表されるホスファゼニウム化合物の存在下に、エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類とを反応させる。これらのカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類は、各々を単独で用いても、2種以上を併用しても構わない。その場合、エポキシ化合物がいずれの化合物類と優先的に反応するかは、用いる化合物類の反応性によって異なる。
【0042】
本発明の方法において、エポキシ化合物がその分子内にエポキシ基とカルボン酸エステル基、カルボン酸無水物類基または炭酸エステル基を併せ持つ場合もあり得る。そのような場合には、分子内で本発明の反応が起こることもあり得る。また、そのようなエポキシ化合物を別途のカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類と反応させる場合には、そのエポキシ基が分子内で反応するか、カルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類と分子間で反応するかは、使用する化合物の反応性の差によって一様ではない。
【0043】
反応に際しては、式(1)で表されるホスファゼニウム化合物、エポキシ化合物、カルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類等とを有効に接触させる方法であれば如何なる方法でも構わない。反応は連続式、回分式または半回分式のいずれの方法でも実施できる。通常、式(1)で表されるホスファゼニウム化合物、エポキシ化合物、およびカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類とを一括して接触させる方法、式(1)で表されるホスファゼニウム化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類を含む混合物にエポキシ化合物を加える方法、エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類を含む混合物に式(1)で表されるホスファゼニウム化合物を加える方法または式(1)で表されるホスファゼニウム化合物とエポキシ化合物を含む混合物にカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類を加える方法である。加える方法は一括でも、間欠的または連続的であっても構わない。
【0044】
カルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類のエポキシ化合物に対する使用量は、エポキシ化合物中のエポキシ基1モルに対して、これらの化合物中のカルボン酸エステル基、無水カルボン酸基または炭酸エステル基が通常0.5ないし1.5モルとなる範囲であり、好ましくは0.7ないし1.3モルとなる範囲である。
【0045】
式(1)で表されるホスファゼニウム化合物の使用量は、いずれの場合においても、特に制限はないが、エポキシ化合物中のエポキシ基1モルに対して、通常0.5モル以下であり、好ましくは1×10-5ないし0.1モルであり、より好ましくは1×10-4ないし5×10-2モルである。
【0046】
反応温度は、いずれの場合も使用する原料または式(1)で表されるホスファゼニウム化合物の種類などにより一様ではないが、通常、250℃以下であり、好ましくは30ないし200℃である。反応時の圧力は、いずれの場合も用いる原料の種類により一様ではないが、通常3.0MPa(絶対圧、以下同様)以下であり、好ましくは0.01ないし1.5MPa、より好ましくは0.1ないし1.0MPaの範囲である。反応時間は、通常、48時間以内であり、好ましくは0.1分ないし24時間であり、より好ましくは0.6分ないし10時間である。反応は、必要であれば窒素またはアルゴン等の不活性ガスの存在下に実施することもできる。
【0047】
本発明の方法においては必要であれば溶媒を用いることもできる。その際用いる溶媒としては、例えばノルマル−ペンタン、ノルマル−ヘキサンまたはシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類であり、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、o−ジメトキシベンゼン、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテルまたはo−ジエトキシベンゼン等のエーテル類であり、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、ジエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジペンチルベンゼンまたはドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類であり、例えばクロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、ブロモクロロベンゼン、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、p−クロロエチルベンゼンまたは1−クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族炭化水素類であり、例えばジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミドまたはN,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。その他、本発明の方法の目的を阻害しなければ如何なる溶媒でも構わない。これらの溶媒は単独で用いても、複数個を併用しても構わない。
【0048】
この反応液から目的の1,2−ジオキシエタン誘導体を単離する方法は、いずれの場合も使用した原料の種類、目的の1,2−ジオキシエタン誘導体の種類または用いた場合の溶媒の種類や量などにより一様でない。しかしながら通常、反応液から、または溶媒を使用した場合にはその溶媒を留去した液から、蒸留、再結晶またはカラムクロマトグラフィー等の分離法により目的の1,2−ジオキシエタン誘導体を得ることができる。
ホスファゼニウム化合物の存在下に、エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類とを反応させて、目的の1,2−ジオキシエタン誘導体を製造することができる。
【0049】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらは限定的でなく単に説明のためと解されるべきである。
実施例1
式(1)で表されるホスファゼニウム化合物である水酸化テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウム:[(Me2 N)3P=N]4+,OH-(Meはメチル基を表す。以下同様)0.757g (1.00mmol)と酢酸フェニル14.3g(105mmol)を100mlのナスフラスコに精秤した。これを90℃まで昇温した後、これに15.0g(100mmol)のフェニルグリシジルエーテルを10分間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で5時間撹拌した後、約10分かけて室温に戻した。この反応液の一部を採取して1,3,5−トリクロロベンゼンを内部標準とし、ガスクロマトグラフィーで定量分析を行ったところ、原料のフェニルグリシジルエーテルはほぼ完全に消費されており、目的とする酢酸1,3−ジフェノキシ−2−プロピルのフェニルグリシジルエーテルを基準とした生成収率は98%であった。反応はほとんど定量的に進行していた。この反応液を直接カラムクロマトグラフィーに供し、無色の液体として酢酸1,3−ジフェノキシ−2−プロピルを27.2g得た。このものの各種の分析データは標品のものと同一であった。水酸化テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムの触媒活性(単位時間あたりの触媒の作用回数、TON/hで表す。以下同様)は、20TON/hであり、驚くべきことに比較2、3または4に例示したN−メチルイミダゾール、塩化テトラブチルアンモニウムまたはカリウムtert−ブトキシド等の触媒活性に対して、それぞれ約15倍、6倍または5倍であった。このようにフェニルグリシジルエーテルと酢酸フェニルとを反応させて、極めて高い触媒活性と高い収率で1,2−ジオキシエタン誘導体である酢酸1,3−ジフェノキシ−2−プロピルを製造することができる。
【0050】
比較例1
実施例1に用いた水酸化テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムを使用しなかった以外は実施例1と全く同様に行った。酢酸1,3−ジフェノキシ−2−プロピルの生成収率は2%であった。
【0051】
比較例2
実施例1に用いた水酸化テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムの代わりに10倍量に当たる10.0mmolのN−メチルイミダゾール(表1中、NMIと略す。)を用いた以外は実施例1と全く同様に行った。酢酸1,3−ジフェノキシ−2−プロピルの生成収率は66%であった。触媒活性は僅かに1.3TON/hであった。
【0052】
比較例3
実施例1に用いた水酸化テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムの代わりに2.5倍量に当たる2.50mmolの塩化テトラブチルアンモニウム(表1中、n−Bu4NClと略す。)を用いた以外は実施例1と全く同様に行った。酢酸1,3−ジフェノキシ−2−プロピルの生成収率は42%であった。触媒活性は僅か3.4TON/hであった。
【0053】
比較例4
実施例1に用いた水酸化テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムの代わりに2.5倍量に当たる2.50mmolのカリウムtert−ブトキシド(表1中、t−BuOKと略す。)を用いた以外は実施例1と全く同様に行った。酢酸1,3−ジフェノキシ−2−プロピルの生成収率は48%であった。触媒活性は僅か3.9TON/hであった。結果を実施例1、比較例1、2、3または4と共に表1に示す。
【0054】
【表1】
Figure 0003901400
【0055】
実施例2
実施例1の水酸化テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムの代わりに等モルのホスファゼニウム化合物であるトリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ][トリス(n−オクチルメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムメトキシド:[(Me2N)3P=N]2[(n−Oct(Me)N)3P=N]P+-OMe(n−Octはn−オクチル基を表す。)を用いた以外は実施例1と全く同様に行った。実施例1と同様、原料のフェニルグリシジルエーテルはほぼ完全に消費されていた。酢酸1,3−ジフェノキシ−2−プロピルの生成収率は97%であった。触媒活性は20TON/hであった。
【0056】
実施例3
無水酢酸42.9g(420mmol)と0.771g(1.00mmol)のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムメトキシド:[(Me2N)3P=N]4+-OMeを精秤し、200mlのオートクレーブに仕込んだ。内容物の温度を80℃に昇温した後、プロピレンオキシド23.2g(400mmol)を反応時圧力が0.3MPa(絶対圧)を保つように間欠的に供給しながら、同温度で13時間反応させた。約30分かけて、内容物を室温まで冷却した。この一部を採取して、ガスクロマトグラフィーで定量分析を行ったところ、目的の1,2−ジアセトキシプロパンの生成収率は97%であった。この反応液から目的物を蒸留して、1,2−ジアセトキシプロパンを58.9g得た。
【0057】
実施例4
実施例3に用いた無水酢酸の代わりに等モルの炭酸メチルフェニルを用い、プロピレンオキシドの代わりに等モルのエチレンオキシドを使用した以外は実施例3と全く同様に行った。1−メトキシカルボニルオキシ−2−フェノキシエタンの生成収率は93%であった。
【0058】
実施例5
実施例3に用いた無水酢酸の代わりに等モルの酢酸エチルを用い、反応温度を100℃に変えた以外は実施例3と全く同様に行った。目的の酢酸1−メトキシ−2−プロピルの生成収率は79%であった。
【0059】
実施例6
実施例3に用いた無水酢酸の代わりに等モルのアジピン酸ジメチルを用い、プロピレンオキシドの量を800mmolに変え、反応温度を110℃に変えた以外は実施例3と全く同様に行った。目的のアジピン酸ジ(1−メトキシ−2−プロピル)の生成収率は83%であった。
【0060】
実施例7
300mlのナスフラスコに安息香酸フェニル20.8g(105mmol)と0.333g(0.4mmol)のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムフェノキシド:[(Me2N)3P=N]4+-OC65を精秤した。これにジグライム25.0gを加えて均一溶液とした。この均一溶液を110℃まで昇温した後、これに、酢酸グリシジル11.6g(100mmol)を25.0gのジグライムに溶解させた溶液を10分間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で5時間撹拌した後、約10分かけて室温に戻した。この反応液の一部を採取して、ビフェニルを内部標準とし、液体クロマトグラフィーで定量分析を行ったところ、目的とする1−アセトキシ−2−ベンゾイルオキシ−3−フェノキシプロパンの生成収率は94%であった。この反応もほとんど定量的に進行していた。この反応液を直接カラムクロマトグラフィーに供し、1−アセトキシ−2−ベンゾイルオキシ−3−フェノキシプロパンを28.0g得た。
【0061】
実施例8
実施例7に用いた安息香酸フェニルの代わりに210mmolの5−メトキシペンタン酸フェニルを用い、酢酸グリシジルの代わりに100mmolの2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパンを用いた以外は実施例7と全く同様に行った。目的の2,2−ビス{4−[2−(5−メトキシペンタノイルオキシ)−3−フェノキシプロピルオキシ]フェニル}プロパンの生成収率は93%であった。
【0062】
実施例9
実施例7に用いた安息香酸フェニルの代わりに等モルの無水安息香酸を用い、酢酸グリシジルの代わりに等モルのスチレンオキシドを用い、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムフェノキシドの代わりに酢酸テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウム:[(Me2N)3P=N]4+-OCOCH3を使用した以外は実施例7と全く同様に行った。目的の1,2−ジベンゾイルエチルベンゼンの生成収率は99%であった。
【0063】
実施例10
実施例7に用いた安息香酸フェニルの代わりに等モルのテレフタル酸ジメチルを用い、酢酸グリシジルの代わりに200mmolのシクロヘキセンオキシドを用いた以外は実施例7と全く同様に行った。目的のテレフタル酸ジ(2−メトキシシクロヘキシル)の生成収率は90%であった。
【0064】
実施例11
実施例7に用いた安息香酸フェニルの代わりに等モルのジ(2−フェノキシカルボニルオキシエチル)エーテルを用い、酢酸グリシジルの代わりに2倍相当モルのフェニルグリシジルエーテルを用いた以外は実施例7と全く同様に行った。目的のジ[2−(1,3−ジフェノキシ−2−プロピルオキシカルボニルオキシ)エチル]エーテルの生成収率は92%であった。
【0065】
実施例12
実施例7に用いた安息香酸フェニルの代わりに等モルの4−フェノキシ安息香酸メチルを用い、酢酸グリシジルの代わりに等モルの4−メトキシスチレンオキシドを用いた以外は実施例7と全く同様に行った。生成物は4−フェノキシ安息香酸2−メトキシ−1−(4−メトキシフェニル)エチルと4−フェノキシ安息香酸1−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)エチルの2種類であった。これらの生成モル比は約6対4であり、合計の生成収率は86%であった。
【0066】
実施例13
実施例7に用いた安息香酸フェニルの代わりに等モルの無水酢酸を用い、酢酸グリシジルの代わりに等モルの4−メトキシカルボニルスチレンオキシドを用いた以外は実施例7と全く同様に行った。目的の1−(1,2−ジアセトキシエチル)−4−メトキシカルボニルベンゼンの生成収率は91%であった。
【0067】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類との反応を、従来の方法に比べて温和な条件下で実施でき、しかも高い収率でそれぞれに対応した目的の1,2−ジオキシエタン誘導体を製造することができる。

Claims (8)

  1. 式(1)
    Figure 0003901400
    (式中、Rは同種または異種の、炭素数1ないし10個の炭化水素基である。 Z-はハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、アリールオキシアニオンまたはカルボキシアニオンである。)で表されるホスファゼニウム化合物の存在下に、エポキシ化合物とカルボン酸エステル類、カルボン酸無水物類または炭酸エステル類とを反応させることを特徴とする、それぞれに対応した式(2)、式(3)または式(4)
    Figure 0003901400
    (式中のカルボニル基または酸素原子に結合した炭素原子 C− または −Cは、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素の炭素原子である。)で表される部分構造を有する1,2−ジオキシエタン誘導体の製造方法。
  2. 式(1)で表されるホスファゼニウム化合物中のRが同種または異種の、炭素数1ないし8個の脂肪族炭化水素基である請求項1記載の方法。
  3. 式(1)で表されるホスファゼニウム化合物中のRが同種または異種の、メチル基またはエチル基である請求項1記載の方法。
  4. 式(1)で表されるホスファゼニウム化合物中のZ-が、ヒドロキシアニオン、炭素数1ないし4個のアルコール類から導かれるアルコキシアニオンまたは炭素数6ないし8個の芳香族ヒドロキシ化合物から導かれるアリールオキシアニオンである請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. エポキシ化合物が炭素原子、水素原子およびエポキシ基の酸素原子のみから成る脂肪族もしくは芳香族エポキシ化合物、エーテル結合を有する脂肪族もしくは芳香族エポキシ化合物またはエステル結合を有する脂肪族もしくは芳香族エポキシ化合物である請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  6. カルボン酸エステル類が炭素原子、水素原子およびエステル結合の酸素原子のみから成る脂肪族もしくは芳香族カルボン酸エステル類またはエーテル結合を有する脂肪族もしくは芳香族カルボン酸エステル類である請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
  7. カルボン酸無水物類が炭素原子、水素原子およびカルボン酸無水物基の酸素原子のみから成る脂肪族または芳香族カルボン酸無水物類である請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
  8. 炭酸エステル類が炭素原子、水素原子および炭酸エステル基の酸素原子のみから成る脂肪族もしくは芳香族炭酸エステル類またはエーテル結合を有する脂肪族もしくは芳香族炭酸エステル類である請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
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