JP4682308B2 - セルロースエステル又はそのフイルム及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、フイルム(偏光板の保護フイルム、カラーフィルタ、写真感光材料のフイルムなど)を形成するのに有用なセルロースエステル、このセルロースエステルで構成されたフイルムとその溶液製膜方法、並びにセルロースエステルフイルムの用途に関する。
液晶表示装置は薄手化が可能であり、かつ低電圧、低消費電力で駆動するという多大な利点から、携帯電話、ノートパソコンなどを中心に表示装置として広く採用され、急激な速度で普及している。従来のCRTディスプレイなどと比較して、前記液晶表示装置の利点は多大であり、近年は家庭用テレビへの展開も加速度を増している。
前記液晶表示装置の最も基本的な構成は、液晶分子を有する液晶セルと、この液晶セルの両側に互いにその偏光軸が直交するように配置される二枚の偏光板とを有する。そして、近年、液晶表示装置の分野においては、更なる軽量化及び薄手化が進行する傾向にあり、このような傾向に伴って、液晶表示装置を構成する偏光板などについても薄手化が要求されている。
一方、セルロースアセテートなどのセルロースエステルフイルムは、光学的等方性、耐湿性、透湿性、寸法安定性などに優れており、液晶表示装置を構成する偏光板の保護フイルムとして一般的に使用されている。偏光板はポリビニルアルコールとヨウ素との錯体から成る偏光膜の両側にセルロースエステルフイルムを貼り付けた構成を有する(非特許文献1参照)。
発明協会公開技報2001−1745。
そして、液晶表示装置の急激な普及に伴い、前記セルロースエステルフイルムのニーズも増加の一途をたどり、品質を維持しつつ、生産性を飛躍的に向上させることができるセルロースエステルフイルムの製造方法が求められている。
このようなセルロースエステルの製造においては、硫酸の存在下、パルプをアシル化剤でアシル化し、アルカリ土類金属塩を用いて部分中和し、加水分解又は熟成してアシル化度を調整した後、アルカリ土類金属を添加して総硫酸を中和している。また、このようにして得られたセルロースエステルは一般的に溶液製膜方法によりフイルム化されている。すなわち、セルロースエステルを有機溶媒に溶解して溶液(ドープ)を調製し、このドープを支持体に流延し、支持体上である程度乾燥させ、フイルム中の残留溶媒量を一定レベルまで低減させた後、膜を支持体から剥離して乾燥させ、巻き取ることによりフイルムを製造している。
特に、前記溶液製膜方法において、セルロースエステルフイルムの生産性を向上させるには、金属支持体上に流延したベースを、高速かつ安定に剥離することが最も有効かつ直接的な手段となる。しかし、従来のセルロースエステルは金属支持体表面との密着力が高く、高速製膜過程で安定して剥離させることが困難である。
特開平10−130301号公報(特許文献1)には、低純度パルプを用いても流延法における支持体からの剥離性を向上するとともに、光学的特性を高めるため、中性構成糖成分中に含まれるマンノースとキシロースとの割合が前者/後者=0.35〜3.0(モル比)、マンノースおよびキシロースの総含有量が1〜5モル%であるセルローストリアセテートが開示されている。この文献には、針葉樹パルプは、リンターパルプや広葉樹パルプに比べて、α−セルロース含有量が少なく低純度であるため、光学的特性を向上させるためには不利であること、このような針葉樹パルプであっても剥離性及び光学的特性を改善できることが記載されている。この文献に記載の方法では、イエローインデックスおよびヘーズ値が比較的小さな透明性の高いフイルムが得られるものの、より一層の改善が求められている。より具体的には、この文献に記載の発明では、特定の構成糖成分を含む針葉樹パルプを用いてヘイズ5.2〜6.0のフイルムを得ているが、さらにヘイズ値を低下させるためには、酸化工程が必要であり、パルプを酸化剤にて処理することによりヘイズ2.7のフイルムを得ている。
特開平10−316701号公報(特許文献2)には、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合したカルボキシル基のうち少なくとも一部が酸性で存在するセルロースアセテートが開示されている。この文献には、水溶液中の酸解離指数pKaが1.93〜4.5である酸を含むセルロースアセテートなども開示されている。この文献には、針葉樹パルプをアセチル化してトリアセテートを製造した例も記載されている。この文献に記載のセルロースアセテートは遊離の形態でカルボキシル基を含むため、支持体に対する剥離性を大きく改善できる。しかし、セルロースアセテートのイエローインデックス及びヘーズ値をさらに改善することが求められている。
特開2000−314811号公報(特許文献3)には、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの値が3.0〜5.0であり、カルシウム成分の量が60ppm以下、マグネシウム成分の量が70ppm以下のセルロースエステルを含む光学フイルムが開示されている。この文献には、セルロースエステルが綿花リンターを主原料とすることも記載されている。しかし、この文献には、硫酸の量とカルシウム成分の量との関係については記載されていない。特開2002−40244号公報(特許文献4)には、数平均分子量Mnが5×104〜13×104、重量平均分子量Mwが13×104〜29×104、アルカリ土類金属の含有量が30ppm以下であるセルロースエステル(セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど)を含む光学フイルムが開示されている。
特開2002−131536号公報(特許文献5)には、偏光板の保護フイルムの製造方法に関し、アセチル基の置換度が1.75〜2.15、プロピオニル基の置換度が0.60〜0.80、アルカリ土類金属の含有量が1〜50ppm、残留硫酸量(硫黄元素の含有量として)が1〜50ppm、遊離酸量が1〜100ppmであるセルロースエステルを有機溶媒に溶解させ、支持体に流延し溶媒を蒸発させてフイルムを形成する方法が開示されている。
特開2002−179838号公報(特許文献6)には、セルロースエステルを実質的に非塩素系の溶剤に溶解したセルロースエステル溶液であって、実質的に非塩素系の溶剤が、溶解度パラメーターが19〜21であるケトンと溶解度パラメーターが19〜21のエステルとの混合溶媒であり、水溶液中での酸解離指数が1.93〜4.50である酸又はそのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を含むセルロースエステル溶液が開示されている。この文献には、塩素系溶剤を用いることなく、支持体からの剥離性を改善できることが記載されている。
しかし、これらの方法では、高い剥離性を維持しつつ、フイルムのイエローインデックス及びヘーズ値を低減することが困難である。そのため、フイルム(特に光学フイルム)に要求される高い性能を満足できない。
なお、セルロースエステルの原料は木材パルプと綿花リンターとが一般的である。しかし、前者は後者に比べて安価であるが、流延法(溶液成膜法)において支持体からの剥離性が顕著に劣り、高速製膜には適さない。一方、後者は剥離性を改善できるものの、高価であるため、セルロースエステルフイルムを製造するには工業的に不利である。しかも、近年、綿花リンターの入手が困難になっている。
特開平10−130301号公報(特許請求の範囲、段落番号[0018]) 特開平10−316701号公報(特許請求の範囲、段落番号[0057][0058]) 特開2000−314811号公報(特許請求の範囲) 特開2002−40244号公報(特許請求の範囲) 特開2002−131536号公報(特許請求の範囲) 特開2002−179838号公報(特許請求の範囲、段落番号[0066])
従って、本発明の目的は、金属支持体に対する高い剥離性を維持しつつ、光学的特性を改善できるセルロースエステル、セルロースエステルフイルムとその製造方法、及びセルロースエステルフイルムの用途を提供することにある。
本発明の他の目的は、イエローネスインデックス及びヘーズ値が大きく低減されたセルロースエステル、セルロースエステルフイルムとその製造方法、及びセルロースエステルフイルムの用途を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、アルカリ土類金属の含有量が少なくても高い耐湿熱安定性を有するセルロースエステル、セルロースエステルフイルムとその製造方法、及びセルロースエステルフイルムの用途を提供することにある。
本発明の別の目的は、前記セルロースエステルフイルムを備え、かつ光学特性に優れる光学素子を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、構成糖成分全体に対するマンノース成分の含有量の高いセルロースエステル及び/又はマンノース含量に対するキシロース含量の割合が小さなセルロースエステルにおいて、総硫酸濃度を低減するとともに、総硫酸に対するカルシウム成分の割合を少なくすると、高い剥離性を維持しつつ、光学的特性(特に、イエローネスインデックス及びヘーズ値)を大きく改善できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のセルロースエステルは、構成糖成分全体に対するマンノース含量が0.4モル%以上、カルシウム含量が10〜70ppm(重量基準、以下同じ)であり、総硫酸に対するカルシウムの化学当量比が0.3〜1.0である。本発明の他の態様において、セルロースエステルは、前記マンノース含量に対するキシロース含量の割合(モル比)が3未満であり、カルシウム含量が10〜70ppmであり、総硫酸に対するカルシウムの化学当量比が0.3〜1.0である。これらのセルロースエステルにおいて、総硫酸の量は、例えば、1〜200ppm程度であってもよく、総硫酸に対するカルシウムの化学当量比は、例えば、0.4〜0.9程度であってもよい。さらに、セルロースエステルは、セルロースC2-4アルキルカルボニルエステル(例えば、セルロースアセテート)であってもよく、セルロースアセテートの平均酢化度は、43.7〜62.5%程度であってもよい。
具体的なセルロースエステルとしては、例えば、構成糖成分全体に対するマンノース含量0.4〜2.5モル%、マンノース含量に対するキシロース含量の割合(モル比)0.3〜2.8であり、カルシウム含量10〜60ppm、総硫酸の量10〜150ppm、総硫酸に対するカルシウムの化学当量比0.5〜0.8、および平均酢化度58〜62.5%のセルローストリアセテートが例示できる。
本発明は、前記セルロースエステルで構成されたセルロースエステルフイルムも包含する。このフイルムは、光学フイルムであってもよい。さらに、本発明は、前記セルロースエステルフイルムを偏光膜の少なくとも片面に備えている偏光板や、前記セルロースエステルフイルムで構成されている液晶表示装置用光学補償フイルムも開示する。
前記セルロースエステルフイルムは、例えば、セルロースエステルと有機溶媒とを含むドープを剥離性支持体に流延し、生成した膜(部分的に乾燥した湿潤状態の膜)を剥離性支持体から剥離して乾燥させることにより製造できる。
なお、本明細書において「総硫酸」とは、セルロースに結合した硫酸(硫酸エステル、スルホン酸基として結合した硫酸成分)、遊離の硫酸などを総称し、「残存硫酸」という場合がある。
本発明では、マンノース含有量が比較的多いか、又はマンノース含量に対するキシロース含量の割合が小さなセルロースエステル(セルロースアセテートなど)において、カルシウム含量及び総硫酸に対するカルシウムの割合が小さいため、金属支持体に対する高い剥離性を維持しつつ、光学的特性を大きく改善できる。例えば、イエローネスインデックスやヘーズ値を大きく低減できる。さらに、アルカリ土類金属の含有量が少なくても高い耐湿熱安定性を備えている。そのため、光学フイルム(偏光板の保護フイルム、光学補償フイルムなど)などの材料として有用である。
[セルロースエステル]
本発明のセルロースエステルは、脂肪族アシル基などのを有する種々のセルロースエステルであってもよい。代表的なセルロースエステルとしては、C1-10アルキルカルボニル基を有するセルロースエステル、例えば、セルロースアルキルカルボニルエステル(セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどのセルロースC2-6アルキルカルボニルエステル類、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセチルC3-6アルキルカルボニルエステル類(脂肪族混酸エステル類))が例示できる。好ましいセルロースエステルは、セルロースC2-4アルキルカルボニルエステル類(特に、セルロースアセテート)やセルロースアセチルC3-4アルキルカルボニルエステル類(特に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)である。光学フイルム分野においては、諸特性に優れるセルロースアセテート(セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)を用いる場合が多い。これらのセルロースエステルは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
セルロースエステルにおいてアシル基の平均置換度は、例えば、1.5〜3、好ましくは2〜3、さらに好ましくは2.5〜3程度である。なお、混酸エステルにおいて、アセチル基の平均置換度は、例えば、1〜2.9(好ましくは1.5〜2.8、さらに好ましくは1.7〜2.7)程度、C3-6アシル基の平均置換度は、例えば、0.8〜1(好ましくは0.2〜0.8、さらに好ましくは0.3〜0.8)程度であってもよい。セルロースエステルのうちセルロースアセテートの平均酢化度は、用途や特性に応じて、30〜62.5%程度の範囲から選択でき、工業的に有用なセルロースアセテートは、通常、セルロースジアセテート乃至セルローストリアセテートである。セルロースアセテートの平均酢化度は、例えば、43.7〜62.5%(アセチル基の平均置換度1.7〜3)、好ましくは57.5〜62.5%、さらに好ましくは58〜62.5%(例えば、58.8〜61.3%)程度である。寸法安定性や耐湿性、耐熱性などが高く、写真材料や光学材料として用いるためには、平均酢化度58〜62.5%、好ましくは58.5〜62%、さらに好ましくは59〜62%(例えば、60〜61%)程度のセルローストリアセテートを用いるのが有利である。
なお、アシル化度は慣用の方法で測定でき、例えば、酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従って測定できる。
また、セルロースエステルの粘度平均重合度は、200〜400、好ましくは250〜400、さらに好ましくは270〜400(例えば、270〜350)程度である。粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。なお、溶媒はセルロースエステルのアシル化度などに応じて選択できる。例えば、セルローストリアセテートの場合には、メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液にセルローストリアセテートを溶解し、所定の濃度c(2.00g/L)の溶液を調製し、この溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間(秒)tを測定する。一方、前記混合溶媒単独についても上記と同様にして通過時間(秒)t0を測定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出できる。ηr e l=t/t0[η]=(lnηr e l)/cDP=[η]/(6×10- 4)(式中、tは溶液の通過時間(秒)、t0は溶媒の通過時間(秒)、cは溶液のセルローストリアセテート濃度(g/L)、ηr e lは相対粘度、[η]は極限粘度、DPは平均重合度を示す)。
なお、メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒を用いたとき、セルローストリアセテートの6重量%溶液粘度は、例えば、200〜700cps、好ましくは250〜600cps、特に250〜500cps程度である。
セルロースエステル(セルロースアセテートなど)は、通常、パルプの漂白やヘミセルロース(マンノース単位及びキシロース単位を含むセルロース)に起因して、カルボキシル基を有していてもよい。セルロースエステル100g当たりのカルボキシル基濃度(meq/100g、セルロース換算)は、例えば、0〜2.0、好ましくは0.1〜1.5(例えば、0.5〜1.5)、さらに好ましくは0.3〜1.2(例えば、0.7〜1.2)程度であり、0.4〜1.5(例えば、0.4〜0.9)程度であってもよい。
セルロースエステル中のカルボキシル基含量(セルロース換算)は、例えば、次のようにして測定できる。
塩化メチレン及びメタノールの混合溶液(塩化メチレン/メタノール=9/1(重量比))に、乾燥したセルロースエステルをセルロースエステル濃度が5重量%になるように溶解する。前記溶液の約10g(セルロースエステル含量約0.5g)をメタノールに投入してセルロースエステルを沈殿再生させる。得られたセルロースエステル沈殿中の溶媒をメタノールで洗浄置換し、次いで水で洗浄置換した後、ガラスフィルターで軽く濾別し、回収した沈殿と付着した水との合計重量A(g)を測定する。この水湿潤状態のセルロースエステルに、420重量ppm濃度のメチレンブルークロライド水溶液14.5gとpH=8.5に調整したホウ酸緩衝液20gとを加えて、20〜25℃で2時間攪拌し、セルロースエステルのカルボキシル基にメチレンブルーを吸着させる。セルロースエステルをガラスフィルターを用いて濾別し、濾液を採取する。この濾液3gに、0.1N−塩酸3g及び水36gを加える。この溶液の664nm付近のピーク吸光度を測定する。一方、セルロースエステルを加えないで種々のメチレンブルークロライド濃度に調整した溶液の吸光度を測定し、吸光度とメチレンブルークロライド濃度との関係を調べ、得られた関係式から前記希釈濾液のメチレンブルークロライド濃度B(重量ppm)を求める。さらに、メチレンブルークロライドが吸着したセルロースエステルを水で3回洗浄した後、真空乾燥して絶乾重量C(g)を測定し、下記式よりセルロースエステル中のカルボキシル基含量を算出する。
カルボキシル基含量(meq/100gセルロースエステル)
=[6090−14×B×(34.5+A−C)]/(3739×C)
なお、置換基種及び置換度の異なるセルロースエステル間での比較を容易にするため、本明細書中では、セルロースエステル中のカルボキシル基含量はセルロース換算とした。すなわち、セルロースエステル中のカルボキシル基含量は、完全に加水分解分解すると100gのセルロースを生じるセルロースエステル量を基準とした。例えば、セルローストリアセテート(置換度3)の場合、100gを加水分解すると、56.25gのセルロースを生じるため、前記式に従って求めたカルボキシル基含量(セルロースエステル換算:meq/100g)に、100/56.25=1.778倍を乗じた値が、セルロースアセテート(置換度3)のカルボキシル基含量(セルロース換算:meq/100g)となる。
本発明のセルロースエステルは、構成糖成分全体に対するマンノース(又はマンノース単位)の含量が高く、カルシウム含量、および総硫酸に対するカルシウムの化学当量比が低いという特色がある。すなわち、セルロースエステルを構成する糖鎖成分(又は構成糖成分)において、マンノース(マンノース骨格又はマンノース単位)の含量(モル%)は、0.4以上(例えば、0.4〜2.5)、好ましくは0.5〜2(例えば、0.5〜1.5)、さらに好ましくは0.6〜1.5程度である。
本発明の他のセルロースエステルは、マンノース含量に対するキシロース含量の割合が小さく、カルシウム含量、および総硫酸に対するカルシウムの化学当量比が低いという特色がある。すなわち、マンノース含量に対するキシロース含量の割合(モル比)は、通常、3未満、例えば、0.3〜2.8、好ましくは0.3〜2程度であり、0.5〜1.5程度であってもよい。なお、セルロースエステルは、キシロース(キシロース骨格又はキシロース単位)をも含んでいてもよく、キシロース含有量(モル%)は、例えば、0.5〜3、好ましくは0.7〜2、さらに好ましくは0.8〜1.5程度である。
なお、セルロースエステルは、上記2つの特色を備えていてもよい。すなわち、セルロースエステルは、構成糖成分全体に対するマンノース(又はマンノース単位)の含量が高いとともに、マンノース含量に対するキシロース含量の割合が小さく、カルシウム含量、および総硫酸に対するカルシウムの化学当量比が低くてもよい。
なお、α−セルロース含有量(重量%)は、通常、94〜99(例えば、95〜99)、好ましくは96〜98.5(例えば、97.3〜98)程度であってもよい。
さらに、本発明のセルロースエステルにおいてカルシウム成分の含有量(重量基準)は、小さく、例えば、10〜70ppm(例えば、20〜70ppm)、好ましくは10〜60ppm(例えば、20〜60ppm)、さらに好ましくは15〜50ppm(例えば、20〜50ppm、特に20〜40ppm)程度である。
なお、耐熱安定性を高めるため、セルロースエステルは、通常、アルカリ金属(カリウム、ナトリウムなど)やアルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなど)などの金属成分を含んでいる。これらの金属成分は、金属支持体に対する親和性が高く、金属支持体からの流延乾燥膜の剥離性を大きく損なうとともに、フイルムの光学的特性をも損なう。この詳細な機構は明確ではないが、セルロースのアシル化において触媒硫酸により硫酸エステル基やスルホン酸基が生成するとともに、セルロースエステルはセルロースに由来してカルボキシル基を有している。硫酸エステル基やスルホン酸基(以下に、残存硫酸成分又は総硫酸と総称する場合がある)は酸性基であるため、中和されずに残留するとセルロールエステル自体の加水分解を促進する。そこで、安定性(特に耐熱安定性)を付与するため、中和工程やその後の工程において、アルカリ金属類やアルカリ土類金属類の耐熱安定剤、特にカルシウム成分(カルシウム塩など)を添加すると、上記スルホン酸基とともにカルボキシル基はカルシウム塩を形成する。しかし、これらのカルシウム塩が金属支持体に対する密着性を高め、剥離性を低減させる。そのため、安定性を損なわない範囲で、カルシウム成分の含有量を低減することが有用である。
一方、残存硫酸成分の量が多くなると、中和に要するカルシウム量も増大する。また、カルシウム含有量が多くなると、セルロースエステル溶液及びフイルムのヘイズが高くなったり、イエローネスインデックスが高くなる。そのため、カルシウム成分の含有量を低減しつつ、残存硫酸成分を中和して安定性(特に耐熱安定性)を高めるためには、残存硫酸成分(総硫酸)の含有量も低減する必要がある。
そこで、本発明では、総硫酸の量(硫黄に基づく硫酸換算の量)を、重量基準で、0〜200ppm(例えば、1〜200ppm)、好ましくは10〜200ppm(例えば、10〜150ppm)、好ましくは20〜150ppm(例えば、20〜130ppm)、さらに好ましくは50〜150ppm(例えば、50〜100ppm)程度に低減する。
さらに、セルロースエステルの安定性を高めるため、総硫酸の化学当量(硫酸換算での化学当量)に対するカルシウムの化学当量比(Ca/SO4比)は、通常、1以下(例えば、0.3〜1.0、好ましくは0.4〜1.0、さらに好ましくは0.5〜1.0)、好ましくは0.4〜0.9(例えば、0.5〜1.0)、さらに好ましくは0.5〜0.8(例えば、0.5〜0.7)程度であってもよい。
なお、セルロースエステルは、必要であれば、カルシウム以外の金属成分、例えば、アルカリ金属(カリウム、ナトリウムなど)やアルカリ土類金属(マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなど)を含んでいてもよい。金属成分(特にアルカリ土類金属成分)の総含有量は、剥離性や光学的特性を損なわない範囲で選択できる。
なお、マンノース含量及びキシロース含量は、特開平10−130301号公報の段落番号[0008][0009]に記載の方法で定量できる。すなわち、乾燥した試料200mgを精秤量し、72%硫酸3mlを加え、氷水で冷却しながら超音波を用い、2時間以上かけて試料を完全に溶解させる。得られた溶液に蒸留水39mlを加えて十分に振とうし、窒素気流下、110℃で3時間環流した後、30分間放置する。次いで、炭酸バリウム14gを加え、氷水で冷却しつつ超音波を作用させ中和する。30分後、さらに炭酸バリウム10gを加え、pH5.5〜6.5程度になるまで中和し、濾過する。濾液を超純水で100重量倍に稀釈し、試料を調製する。試料を、以下の条件でイオンクロマトグラフィにより分析する。
高速液体クロマトグラフィ(HPLC,ダイオネクス社製DX−AQ型)
検出器:パルスドアンペロメトリー検出器(金電極)
カラム:ダイオネクス社製,Carbo Pac PA−1(250×4mm)
溶離液:2mM NaOH
流量:1.0ml/分
ポストカラム:ダイオネクス社製、AMMS−II型
なお、マンノース、キシロース、グルコースのモル比は、予め、マンノース、キシロース、グルコース標品を用いて作成した検量線から求めることができる。これらの3成分の合計を「100」として各構成糖成分の含量をモル%で表す。
カルシウムなどの金属含量は、乾燥したセルロースエステルを完全に燃焼させた後、灰分を塩酸に溶解させる前処理を施し、得られた試料について原子吸光法により測定できる。測定値は絶乾状態のセルロースエステル1g中の金属含有量としてppm単位で表される。なお、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理した後、ICP−AES(誘電結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析することによっても測定できる。
総硫酸量は、乾燥したセルロースエステルを1300℃の電気炉で焼き、昇華した亜硫酸ガスを10%過酸化水素水にトラップし、規定水酸化ナトリウム水溶液にて滴定し、SO4 2-換算の量として測定する。測定値は絶乾状態のセルロースエステル1g中の硫酸含有量としてppm単位で表される。
なお、総硫酸に対するカルシウムの化学当量比[Ca/SO4比]は、カルシウムの含有量と硫酸量からCa/SO4比率をモル比として算出する。すなわち、上記硫酸量を96で除することにより、セルロースエステル1g中の硫酸含有量をmol単位で表すことができ、カルシウム含有量を40.1で除することにより、セルロースエステル1g中のカルシウム含有量をmol単位で表すことができる。
本発明のセルロースエステル(セルロースアセテートなど)は、イエローネスインデックス(Yellowness Index)及びヘーズ値が小さいという特色がある。すなわち、セルロースエステルの黄色度の指標となるイエローネスインデックス(Yellowness Index,YI)は、例えば、1〜7(例えば、1〜6)、好ましくは1〜5(例えば、2〜4)程度である。
セルロースエステル(セルロースアセテートなど)のヘーズ値は、例えば、1〜5(例えば、1〜4)、好ましくは1〜3.5(例えば、2〜3.5)程度である。
なお、イエローネスインデックス(YI)、ヘーズおよび透明度は次のような方法で測定できる。
[イエローネスインデックス(YI)]
乾燥したセルロースエステル12.0gを正確に秤量し、溶媒(メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒やアセトンなど)88.0gを加えて完全に溶解させる(12重量%試料溶液)。色差計(日本電色工業製,色差計Σ90)と、ガラスセル(横幅45mm,高さ45mm,光路長10mm)を用い、下記式によりYIを算出する。
YI=YI2 −YI1
(式中、YI1 は溶媒のYI値,YI2 は12重量%試料溶液のYI値を示す)。
[ヘーズ]
濁度計(日本電色工業製)を用い、ガラスセル(横幅45mm,高さ45mm,光路長10mm)を使用し、次のようにして測定する。上記と同様の溶媒をガラスセルに入れて濁度計にセットし、0点合わせと標準合わせを行う。次いで、ガラスセルに上記と同様にして調製した12重量%試料溶液を入れて濁度計にセットし、数値を読み取る。
本発明のセルロースエステルは、残存硫酸量が少なく、しかもカルシウム含量が少ないため、高い剥離性を有すると共に光学的特性に優れる。しかも、残存硫酸成分の量が少なく、カルシウム成分を含むため、安定性、特に湿熱安定性(例えば40℃×90RH%で長時間(例えば1000時間)晒されたときの加水分解に対する安定性)や耐熱安定性も高い。
[セルロースエステルの製造方法]
前記セルロースエステルは、硫酸の存在下、パルプをアシル化剤でアシル化した後、部分中和し、加水分解又は熟成することにより製造できる。より詳細には、セルロースエステル(セルロースアセテートなど)は、通常、パルプ(セルロース)をアシル基に対応する有機カルボン酸(酢酸など)により活性化処理(活性化工程)した後、硫酸触媒を用いてアシル化剤(無水酢酸など)によりトリアシルエステル(トリアセテートなど)を調製し(アシル化工程)、必要により部分中和した後、ケン化(加水分解)又は熟成によりアシル化度を調整する(ケン化・熟成工程)ことにより製造できる。
この方法において、活性化工程は、例えば、有機カルボン酸や含水有機カルボン酸(酢酸や含水酢酸)の噴霧や、有機カルボン酸や含水有機カルボン酸への浸漬などによリ、パルプ(セルロース)を処理することにより行うことができる。有機カルボン酸(酢酸など)の使用量は、パルプ(セルロース)100重量部に対して10〜100重量部、好ましくは20〜80重量部、さらに好ましくは30〜60重量部程度である。アシル化工程(アセチル化工程などのエステル化工程)でのアシル化剤(無水酢酸など)の使用量は、前記アシル化度に応じて選択でき、例えば、パルプ(セルロース)100重量部に対して230〜300重量部、好ましくは240〜290重量部、さらに好ましくは250〜280重量部程度である。アシル化工程において、通常、溶媒として有機カルボン酸(酢酸など)が使用される。有機カルボン酸(酢酸など)の使用量は、例えば、パルプ(セルロース)100重量部に対して200〜700重量部、好ましくは300〜600重量部、さらに好ましくは350〜500重量部程度である。エステル化触媒としては、通常、硫酸が使用される。硫酸の使用量は、通常、セルロース100重量部に対して、1〜15重量部、好ましくは5〜15重量部、特に5〜10重量部程度である。
また、アシル化工程の後、中和剤で残存する硫酸成分(総硫酸も含む)を部分中和してもよい。ケン化又は熟成工程では、残存する硫酸成分(総硫酸を含む)を熟成触媒として利用でき、ケン化又は熟成は、例えば、温度50〜70℃程度で行うことができる。ケン化又は熟成の後、必要により金属成分で構成された中和剤を添加し、水洗などにより遊離の金属成分や硫酸成分などを除去してもよい。
このような方法で得られたセルロースエステルは、通常、金属支持体に対する密着性が高く、光学的特性(特にイエローネスインデックス及びヘーズ値)は必ずしも高くない。そこで、本発明では、セルロース(パルプ)として、構成糖成分全体に対するマンノース含量が0.4モル以上及び/又はマンノース含量に対するキシロース含量の割合(モル比)が3未満のパルプを用いるとともに、総硫酸濃度を低減し、少量のカルシウム含量で総硫酸に対するカルシウム含量の割合を低減する。
前記セルロース(パルプ)としては、前記セルロースエステルの項で説明したのと同様の構成糖成分(マンノース含量、キシロースに対するマンノースの割合)を有するセルロース、例えば、針葉樹パルプが使用できる。針葉樹パルプであっても、カルボキシル基濃度が3.0meq/100g以上では剥離性が低下しやすい。パルプ100g当たりのカルボキシル基濃度(meq/100g)は、例えば、0〜3.0、好ましくは0.2〜2.5(例えば、0.5〜2.5)、さらに好ましくは0.4〜2.0程度であり、1.5〜3.0程度であってもよい。なお、セルロース中のカルボキシル基含量は、TAPPI Standard T237 om-83により測定できる。
なお、構成糖成分の割合を調整するため、必要であれば、針葉樹パルプは、綿花リンターや広葉樹パルプと併用してもよい。
本発明のセルロースエステルにおいて、総硫酸量を減少させるためには、例えば、以下の方法が採用できる。
(i)アシル化(例えば、酢化)工程終了後、熟成工程(加水分解工程)の硫酸量を削減するか、又は硫酸の添加をなくす。なお、熟成工程では水を添加して加水分解反応を促進してもよい。この場合、熟成時間または熟成温度を調整することにより、所定のエステル基置換度(例えば、酢化度)、重合度のセルロースエステルを得ることができる。
(ii)エステル化(酢化)段階から触媒として使用する硫酸量を削減する。この場合、エステル化工程での反応時間を長くしたり、エステル化工程での除熱を少なくして反応温度を高く設定する。
これらの3種類の方法は適宜組み合わせて用いることができる。なお、目的とする重合度、エステル化度、硫酸量と許容される反応時間を考慮して、製造設備に適合した反応条件を適宜設定することにより所望する硫酸量のセルロースエステルを得ることができる。
また、カルシウム含量は、アシル化後の部分中和工程及び/又はケン化又は熟成後の中和工程でのカルシウム成分(水酸化カルシウム、酢酸カルシウムなどのカルシウムと有機カルボン酸との塩など)の添加量により調整できる。より詳細には、中和剤としては、前記アルカリ金属成分(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)などのアルカリ金属の有機カルボン酸塩など)やアルカリ土類金属成分(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酢酸塩(酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなど)などのアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩など)が例示できる。これらの中和剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。中和剤としては、少なくともカルシウム成分(例えば、酢酸カルシウム)が使用される。
アシル化後の部分中和工程において、中和剤の使用量は、使用された硫酸の当量に対して0〜1.5当量、好ましくは0.2〜0.9当量、さらに好ましくは0.3〜0.6当量程度であってもよい。なお、部分中和工程でカルシウム成分を用いる場合、カルシウム成分の使用量は、前記カルシウム含量又はそれ以下になるようにコントロールする。部分中和工程では、中和剤として、マグネシウム成分を用いる場合が多い。
[セルロースエステルフイルム]
本発明のセルロースエステルは、光学的特性に優れるため、種々の用途に利用できる。また、成膜性や成形性も高い。そのため、種々の成形体を調製でき、例えば、溶液製膜方法(又はソルベントキャスト法)などによりフイルムを製造できる。特に、金属支持体に対する剥離性が高く、光学的特性に優れている。なお、前記の通り、セルロースエステルフイルム(特に薄膜化されたセルロースエステルフイルム)を高い生産性で製造するには、剥離性に優れたセルロースエステルを使用することが望ましい。
セルロースエステルフイルムの製造方法は、特に限定はなく、溶融製膜方法および溶液製膜方法等、いずれの製造方法であってもよいが、特に、平面性に優れたフイルムを製造できる点において、溶液製膜方法による製造方法が好ましい。
なお、フィルム成形や紡糸においては、通常、セルロースジアセテート乃至セルローストリアセテート(特にセルローストリアセテート)が使用される。また、セルロースエステルフイルムにおいて、少なくとも前記特性を有するセルロースエステルを用いればよく、必要により、綿花リンター由来のセルロースエステルや広葉樹パルプ由来のセルロースエステルを併用してもよい。
(金属支持体)
溶液製膜方法でセルロースエステルフイルムを製造する場合、ドープを流延する金属支持体は、エンドレスバンドであってもよく、ドラムであってもよい。金属支持体の表面温度は、エンドレスバンド方式では5〜40℃とすることが好ましく、ドラム方式では−50℃〜40℃であることが好ましい。金属支持体の素材は、エンドレスバンドおよびドラムともに、ステンレス金属材料が好ましく、特にSUS304系またはSUS316系金属が好ましい。また、金属支持体表面にはハードクロム鍍金を施してもよい。
金属支持体の表面エネルギーは、20〜80dyn/cm、好ましくは30〜70dyn/cmとすることが良い。金属支持体の表面粗さはRa=0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下である。
なお、金属支持体は、上記の記載内容に限定されない。
(ドープ溶媒)
セルロースエステルフイルムを溶液製膜方法により製造する場合、セルロースエステルを溶解する溶媒は、塩素系有機溶媒および非塩素系有機溶媒のいずれをも用いることができる。塩素系有機溶媒とは、一般的にハロゲン化炭化水素化合物を意味しており、セルロースエステルの溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルムが代表的であるが、これらに限られるものではない。これら塩素系有機溶媒は、単独で用いてもよく、アルコール類等のセルロースエステルに対する溶解性の低い溶媒(いわゆる貧溶媒)を混合して使用してもよい。貧溶媒の例としては、メタノール、エタノール、n−ブタノールなどが代表的である。
非塩素系有機溶媒とは、実質的にハロゲンを含まない有機溶媒を意味する。前記塩素系有機溶媒はセルロースエステルに対する溶解性が非常に優れており、セルロースエステル用溶媒の代表例として工業的に用いられてきたが、近年、人体への影響や環境への影響が懸念されている。したがって、塩素系有機溶媒を用いずに、非塩素系有機溶媒のみを用いてドープを調製してもよい。
非塩素系有機溶媒としては、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類などを使用するのが望ましいが、これに限られるものではない。エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ブチルなどが使用できる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが例示できる。エーテル類としては、例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが使用できる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノールなどを用いることができる。
非塩素系有機溶媒のうち、エステル類の酢酸メチルやケトン類のアセトンはセルロースエステルに対して優れた溶解性を示すため、ドープ用溶媒として単独で用いてもよく、他の非塩素系有機溶媒と混合して用いてもよい。
(ドープ添加物)
セルロースエステルフイルムの光学的特性および機械的特性をより高めるため、ドープには添加剤を混入してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、光学特性発現剤、難燃剤および後述する剥離促進剤などが例示できる。
(ドープ調製方法)
ドープ溶媒へのセルロースエステルの溶解には、公知の方法、例えば、高温溶解法、冷却溶解法、フロージェットミキサーなどを採用できるが、これらに限定されるものではない。前記ドープへの添加剤は、セルロースエステルを溶解する際に同時に添加してもよく、後述するインライン添加方式により、スタチックミキサーを用いて事後的に添加してもよい。
ドープ中の固形分(セルロースエステルと添加物)濃度は、セルロースエステルの溶解後、一定でもよく、段階的に濃縮してもよい。濃縮方法としてはフラッシュ濃縮方法が一般的であるがこれに限られるものではない。ドープの固形分濃度は、15〜25重量%程度である。フラッシュ濃縮方式は、その原理を同じくするものであれば、その方式について特に限定はなく、より高品質かつ高効率で濃縮を実施できる方式を採用してもよい。
(ドープ濾過方法)
液晶表示装置用途などの高品質フイルムを実現するため、セルロースエステルフイルム中の異物の除去において、ドープには濾過処理を施すのが好ましい。ドープ濾過は、公知のいずれの濾過方法をも採用することができる。例えば、フィルター濾過方式やケーク濾過方法が代表的である。
フィルター濾過方式では、濾材として、セルロース、合成繊維、ステンレス金属材料のいずれを主材料としてもよい濾材が使用できる。フィルター濾過方式におけるドープ濾過では、濾材の孔径よりも小さな異物は孔壁に付着することによる濾材閉塞(以下標準閉塞)が濾材の寿命を低減させる一つの原因となっている。したがって、フィルター濾過方式を用いる際には、標準閉塞を抑制することが高生産性でセルロースエステルを製造するために重要である。
フィルター濾過方式では、複数の濾過工程を設けることが好ましい。単一の濾過工程にて実施すると、濾材の寿命が著しく短くなり、生産性が低下し、たとえ剥離性に優れるセルロースエステルを用いたとしても、高生産性で、セルロースエステルフイルムを製造することができない。濾過工程を複数設ける場合、単一の濾過工程を個々に最適化するのではなく、複数の濾過工程を全体として最適化する必要がある。最適化項目は、例えば、濾材の平均孔径、濾材厚み、濾過流量などである。より高効率で、高品質なドープを調製するため、多段濾過方式を採用するのが好ましい。
ケーク濾過方式はフィルター濾過方式に比べて、設備が大規模化するという欠点はあるものの、得られるドープはフィルター濾過方式よりもドープ中の異物が少なく、高品質であり、かつ濾過寿命も長いという優れた長所を有する。さらには、濾材の洗浄を自動で且つ密閉して実施することができ、有機溶剤が作業者に暴露することがないという作業面での利点も多い。ケーク濾過方式としては、珪藻土を助剤として用いることが一般的であるが、高品質なドープを高効率で得ることができる限り、これに限られるものではない。
(流延方式)
ドープを金属支持体上に流延するには、流延ダイを用いて実施するのが一般的であるが、その流延方式は公知の方法、例えば、単層流延方式や共流延方式を採用することができる。共流延方式では、フィードブロック方式でもマルチマニホールド方式でもよい。
共流延方式にてドープを流延する場合は、複数層を同時に流延することが可能であるが、この場合において、各層を異なるドープ処方にすることも可能である。変更可能なドープ処方の項目としては、例えば、溶剤組成、各種ドープ添加物、ドープ固形分濃度などが挙げられ、所望の品質のセルロースエステルフイルムを得るために任意に変更することが可能である。
多層流延(共流延)の好ましい態様として、例えば、セルロースエステルフイルム(例えば、トータル厚み80μm)を3層同時流延することにより製膜し、3層のうち表裏の外層の固形分濃度を、中間層のそれよりも低くすることにより、フイルムの平面性を向上させる方法、表裏の両外層だけに滑り性付与のための微粒子を添加する方法、剥離性を向上させるために、流延時に支持体に接する側の外層のみに剥離促進剤を添加する方法などが挙げられ、これらの方法を組み合わせてもよい。
さらに、剥離性や光学特性を改善した本発明のセルロースエステルフイルムは単独で使用できるので、必ずしも必要ではないが、他のセルロースエステルと併用して製膜することにより、全体として従来のセルロースエステルの剥離性や光学特性を改善してもよい。なお、前記の他のセルロースエステルとしては、前記の要件を具備するものであれば、特に限定するものではなく、酢化度、重合度、原料などいずれの項目が異なるものであってもよい。又、他のセルロースアセテートは一種類に限らず複数種を併用することも可能である。例えば、綿花リンターを原料とするセルロースエステルと併用してもよい。綿花リンターを原料とするセルロースエステルは木材パルプを原料とするセルロースエステルよりも、剥離性に優れることが一般的に知られており、高品質なセルロースエステルフイルムを高生産性で製造するため、広く使用されてきた。特に、エンドレスバンドを支持体とする溶液製膜方法においては、主原料として、この綿花リンター由来のセルロースエステルが使用されている。しかし、綿花リンターを原料とするセルロースエステルは、木材パルプを原料とするものよりも高価である。一方、本発明のセルロースエステルは剥離性を改善できる。そのため、本発明のセルロースエステルの一部を綿花リンター由来のセルロースエステルで代替しても、全体として、剥離性を低下させることなく、低コストで高品質なセルロースエステルフイルムを製造できる。
製膜については、例えば、特開2002−75638号公報の段落番号[0072]から[0097]、及び特開2003−75638号公報の段落番号[0053]〜[0067]に記載の方法を用いることができる。
偏光板保護フイルム、偏光板、及び液晶表示装置用光学補償フイルムの製造方法については、例えば、特開2002−317074号公報の段落番号[0098]から[0104]、および特開2003−75638号公報段落番号[0084]に記載の方法を用いることができる。
本発明のセルロースエステルとそのフイルムは、光学的特性に優れるため、種々の光学フイルム、例えば、カラーフィルタ、写真感光材料の基材フイルム、液晶表示装置用フイルムなどとして利用できる。特に、本発明のセルロースエステルフイルムは、偏光板の保護フイルム(例えば、ポリビニルアルコールとヨウ素との錯体で構成された偏光膜の少なくとも一方の面、特に両面の保護フイルム)、液晶表示装置用光学補償フイルムとして有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、セルロースエステルの構成糖成分、硫酸成分(総硫酸)、金属成分の分析は、前記の方法に従って行った。また、イエローネスインデックス(YI)及びヘーズ値も前記の方法に従って測定した。金属支持体に対する剥離性は、次のようにして評価した。
[剥離性]
溶液流延製膜法によるフイルムの剥離性は次のようにして評価した。セルロースエステル100重量部を、メチレンクロライド320重量部、メタノール40重量部、ブタノール25重量部およびトリフェニルホスフェート(TPP)15重量部を混合してドープを調製する。このドープを、室温(20〜25℃)で、平滑なステンレススチール板(支持体)上に厚み1mm程度に流延し、室温で3〜4分間放置し、支持体からの剥離性を以下の基準で評価した。
○:剥離抵抗が小さく、円滑に剥離でき、フイルム表面が平滑である
×:剥離抵抗が大きく、円滑に剥離できないか又は支持体にフイルムからの剥離物が付着する。
[湿熱安定性]
湿熱安定性は次のようにして測定した。
乾燥したセルロースエステルを粉砕し約2.0gをパイレックス(登録商標)試験管に秤取し、2mlの蒸留水を加えたのち、密栓して沸騰水浴中に7時間浸漬する。冷却後、内容物を沸騰水で濾紙上に洗い出し、濾液を合わせて150mlとする。この液についてフェノールフタレインを指示薬として0.01N−NaOH溶液で滴定する。同時に使用水のみを用いたブランクテストを行い、次式により湿熱安定性を算出する。
湿熱安定性(%)=(A−B)×F×0.06÷試料重量(g)
(但し、A:0.01N−NaOH溶液の滴定量(ml)、B:ブランクテストにおける0.01N−NaOH溶液の滴定量(ml)、F:0.01N−NaOH溶液のファクター)。
実施例1
針葉樹サルファイト法パルプ(マンノース含量0.9モル%、キシロース含量1.2モル%、グルコース含量97.9モル%、カルボキシル基濃度1.9meq/100g)100重量部に氷酢酸50重量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸445重量部、無水酢酸265重量部、硫酸8.3重量部からなる混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。加水分解を行った後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加し、残存触媒硫酸量1.8重量部を含む反応系で熟成を温度60〜70℃にて行い、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量0.8モル%、キシロース含量0.9モル%、グルコース含量98.3モル%、カルボキシル基濃度0.9meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度10ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
実施例2
実施例1と同様に、針葉樹サルファイト法パルプ(マンノース含量1.2モル%、キシロース含量1.3モル%、グルコース含量97.5モル%、カルボキシル基濃度2.4meq/100g)100重量部に氷酢酸50重量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸445重量部、無水酢酸265重量部、硫酸8.3重量部からなる混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。加水分解を行った後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加して、残存触媒硫酸量1.8重量部を含む反応系で実施例1よりも約10℃高い温度(70〜80℃)で熟成し、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%、粘度平均重合度295のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量0.9モル%、キシロース含量1.1モル%、グルコース含量98.0モル%、カルボキシル基濃度0.9meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度10ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
実施例3
実施例2と同様にして得られたセルローストリアセテートのフレークを濃度5ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に記載の金属成分を含むセルローストリアセテートを得た。
実施例4
針葉樹サルファイト法パルプ(マンノース含量1.3モル%、キシロース含量1.6モル%、グルコース含量97.1モル%、カルボキシル基濃度2.5meq/100g)100重量部に氷酢酸50重量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸445重量部、無水酢酸265重量部、硫酸8.3重量部からなる混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。加水分解を行った後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加し、残存触媒硫酸量4.0重量部を含む反応系で熟成を温度75〜85℃にて行い、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%、粘度平均重合度301のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量1.2モル%、キシロース含量1.3モル%、グルコース含量97.5モル%、カルボキシル基濃度1.0meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度20ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
比較例1
実施例1と同様に、広葉樹クラフト法パルプ(マンノース含量0.2モル%、キシロース含量1.2モル%、グルコース含量98.6モル%、カルボキシル基濃度1.3meq/100g)100重量部に氷酢酸50重量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸445重量部、無水酢酸265重量部、硫酸8.3重量部からなる混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。加水分解を行った後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加し、残存触媒硫酸量4.0重量部を含む反応系で実施例1と同様にして熟成し、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%、粘度平均重合度298のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量0.2モル%、キシロース含量1.0モル%、グルコース含量98.8モル%、カルボキシル基濃度0.8meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度30ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
比較例2
実施例1で用いた針葉樹パルプを用い実施例1と同様にしてエステル化した。エステル化生成物を加水分解した後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加し、残存触媒硫酸量4.0重量部を含む反応系で実施例1と同様にして熟成し、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量0.8モル%、キシロース含量0.9モル%、グルコース含量98.3モル%、カルボキシル基濃度0.9meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度30ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
比較例3
実施例1で用いた針葉樹パルプを用い実施例1と同様にしてエステル化した。エステル化生成物を加水分解した後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加し、残存触媒硫酸量1.8重量部を含む反応系で実施例1と同様にして熟成し、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量0.8モル%、キシロース含量0.9モル%、グルコース含量98.3モル%、カルボキシル基濃度0.9meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度30ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
比較例4
実施例2で用いた針葉樹パルプを用い実施例1と同様にしてエステル化した。エステル化生成物を加水分解した後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加し、残存触媒硫酸量4.0重量部を含む反応系で実施例1と同様にして熟成し、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量0.9モル%、キシロース含量1.1モル%、グルコース含量98.0モル%、カルボキシル基濃度0.9meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度30ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
比較例5
比較例4で得られたセルローストリアセテートのフレークを濃度40ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
比較例6
実施例4で用いた針葉樹パルプを用い実施例1と同様にしてエステル化した。エステル化生成物を加水分解した後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加し、残存触媒硫酸量1.8重量部を含む反応系で実施例1と同様にして熟成し、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量1.2モル%、キシロース含量1.3モル%、グルコース含量97.5モル%、カルボキシル基濃度1.0meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度30ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
比較例7
実施例4で用いた針葉樹パルプを用い実施例1と同様にしてエステル化した。エステル化生成物を加水分解した後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加し、残存触媒硫酸量3.0重量部を含む反応系で熟成し、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量1.2モル%、キシロース含量1.3モル%、グルコース含量97.5モル%、カルボキシル基濃度1.0meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度30ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
比較例8
実施例4で用いた針葉樹パルプを用い実施例1と同様にしてエステル化した。エステル化生成物を加水分解した後、耐熱安定剤として酢酸マグネシウムを添加し、残存触媒硫酸量4.0重量部を含む反応系で実施例1と同様にして熟成し、希酢酸中に吐出して、セルローストリアセテートを沈殿させ、得られた沈殿物を脱水し、純水で洗浄して固液分離し、酢化度60.8%のセルローストリアセテート(CTA、マンノース含量1.2モル%、キシロース含量1.3モル%、グルコース含量97.5モル%、カルボキシル基濃度1.0meq/100g(セルロース換算))を得た。
上記のセルローストリアセテートのフレークを濃度2ppmの水酸化カルシウム水溶液に20℃で0.5時間浸漬処理した後、濾別し乾燥することにより、表1に示すセルローストリアセテートを得た。
そして、実施例1〜4及び比較例1〜8で得られたセルローストリアセテートについて、金属支持体に対する剥離性を評価するとともに、イエローネスインデックス(YI)、ヘーズ値及び湿熱安定性を測定したところ、表1に示す結果が得られた。
Figure 0004682308
表1から、実施例1〜4で得られたセルロースエステルは、高い剥離性を維持しながら、光学的特性に優れる。

Claims (9)

  1. 構成糖成分全体に対するマンノース含量が0.4〜2.5モル%、カルシウム含量が10〜70ppmであり、総硫酸に対するカルシウムの化学当量比が0.3〜1.0であり、かつ平均酢化度58〜62.5%のセルローストリアセテートであるセルロースエステル。
  2. 構成糖成分におけるマンノース含量に対するキシロース含量の割合(モル比)が0.3〜2.8であり、カルシウム含量が10〜70ppmであり、総硫酸に対するカルシウムの化学当量比が0.3〜1.0であるセルロースエステル。
  3. 硫酸に対するカルシウムの化学当量比が0.4〜0.9である請求項1又は2記載のセルロースエステル。
  4. 構成糖成分全体に対するマンノース含量0.4〜2.5モル%、マンノース含量に対するキシロース含量の割合(モル比)0.3〜2.8であり、カルシウム含量10〜60ppm、及び総硫酸に対するカルシウムの化学当量比0.5〜0.8である請求項1又は2記載のセルロースエステル。
  5. 請求項1〜のいずれかのセルロースエステルで構成されているセルロースエステルフイルム。
  6. 光学フイルムである請求項記載のセルロースエステルフイルム。
  7. 請求項記載のセルロースエステルフイルムを偏光膜の少なくとも片面に備えている偏光板。
  8. 請求項記載のセルロースエステルフイルムで構成されている液晶表示装置用光学補償フイルム。
  9. 請求項1〜のいずれかのセルロースエステルと有機溶媒とを含むドープを剥離性支持体に流延し、生成した膜を剥離性支持体から剥離して乾燥し、セルロースエステルフイルムを製造する方法。
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