JP4136054B2 - セルロースアセテートおよびそれを含むドープ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム(偏光板の保護フィルム、カラーフィルター、写真感光材料のフィルムなど)や繊維を形成するのに有用なセルロースアセテートおよびそれを含むドープに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルローストリアセテートフィルムは、強靭で寸法安定性,耐熱性,光学的等方性などが高く、光学フィルムの支持体(例えば、写真感光材料の支持フィルムなど)、液晶表示装置における偏光板保護フィルム(液晶保護フィルム)、カラーフィルターなどの用途に使用されている。そのため、セルローストリアセテートフィルムには、光学的特性、例えば、イエローネスインデックス(Yellowness Index),ヘーズや複屈折率が小さく、透明性が高いことが要求される。また、セルロースジアセテートなどのセルロースアセテートと溶媒とを含む溶液(ドープ)を用いて繊維を製造する場合には、高い紡糸性が要求される。
【0003】
前記セルロースアセテートフィルムは、光学的特性を高めるため、通常、コットンリンターパルプ,針葉樹パルプや広葉樹パルプをアセチル化し、生成したセルロースアセテートと溶媒とを含む溶液(ドープ)を支持体上に流延し、支持体からフィルムを剥離する流延法により製造されている。
しかし、リンターパルプを用いると、セルロースアセテートのコストが上昇する。また、針葉樹パルプのうち高純度のパルプは原料の安定供給に難点があり、低純度のパルプではセルロースアセテートの透明性が低下しやすい。一方、広葉樹パルプを用いると、コスト的には有利であるものの、支持体からの剥離性が低下し、フィルムの表面平滑性や生産性を向上させるのが困難である。さらに、低純度の木材パルプを用いたセルロースアセテートでは、ドープの安定性や濾過性が損なわれ、紡糸性を低下させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、流延法において支持体からの剥離性の高いセルロースアセテートおよびそれを含むドープを提供することにある。
本発明の他の目的は、流延法において支持体からの剥離性が高いだけでなく、光学的特性の高いセルロースアセテートおよびそれを含むドープを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、セルロースアセテートのドープを用いて繊維を製造する際の紡糸性の高いセルロースアセテートおよびそれを含むドープを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、剥離性、光学的特性、紡糸性を備えているとともに、耐熱性にも優れたセルロースアセテートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、▲1▼セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合したカルボキシル基の形態や、▲2▼セルロースアセテート中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の含有量が、フィルムの剥離性、透明性やドープの紡糸性に大きく影響することを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明のセルロースアセテートには、(1)セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合したカルボキシル基のうち少なくとも一部が酸型で存在するセルロースアセテート、(2)水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を含むセルロースアセテート、および(3)セルロースアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が、有効量以上であって5.5×10-6当量(イオン当量換算)以下であるセルロースアセテートが含まれる。さらに、本発明のセルロースアセテートには、上記態様(1)〜(3)を組み合わせたセルロースアセテートも含まれる。さらに本発明には、前記酸およびその塩を用いて、フレークスラリーpHを4.5〜6.0に調整することにより、耐熱性も付与したセルロースアセテートも含まれる。
より具体的には、本発明のセルローストリアセテートは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートであって、(iii)セルローストリアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が、有効量以上(0.01×10−6〜5.5×10−6当量(イオン当量換算))であり、フレークスラリーpHが4.5〜6.0である。さらに、セルローストリアセテートは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートであって、(ii)水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を含み、フレークスラリーpHが4.5〜6.0である。セルローストリアセテートの平均酢化度は58〜62.5%であってもよく、原料セルロースは、少なくとも木材パルプで構成してもよい。また、セルローストリアセテートはカルボキシル基及びスルホン酸基を有し、カルボキシル基のうち少なくとも一部が酸型で存在してもよい。セルローストリアセテートは、硫酸触媒を用いてセルロースをアセチル化し熟成することにより得ることができる。
本発明は、カルボキシル基及びスルホン酸基を有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含み、フレークスラリーpHが4.5〜6.0であるセルローストリアセテートであって、以下の特徴(ii),(iiia)又は(iiib)を有するセルローストリアセテートも含む。
(ii)水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を、セルローストリアセテート1g当たり1×10−9〜3×10−5モルの割合で含む
(iiia)セルローストリアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が0.01×10−6〜5.5×10−6当量(イオン当量換算)である
(iiib)セルローストリアセテート1g中にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を総含有量として、5.5×10−6当量(イオン当量換算)を超える割合で含み、かつ水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を、セルローストリアセテート1g当たり1×10−9〜3×10−5モルの割合で含む
上記セルローストリアセテートは、フレークスラリーpHが4.8〜6.0であってもよい。また、原料セルロースは、少なくとも木材パルプで構成してもよく、原料セルロースは、広葉樹パルプおよび針葉樹パルプのうち少なくとも一種であってもよい。
【0007】
本発明のドープ(流延液)は、前記セルロースアセテートのうち少なくとも一種のセルロースアセテートを含んでいる。また、本発明のドープ(流延液)には、(a)セルロースアセテートと、(b)水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種とを含むドープも含まれる。さらに、本発明には、前記ドープを用い、支持体からのフィルムの剥離性を改善する方法も含まれる。
より具体的には、本発明の流延液は、前記セルローストリアセテートと有機溶媒とを含む。また、本発明は、カルボキシル基及びスルホン酸基を有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートと、有機溶媒とを含む流延液を流延して成形したフィルムであって、前記セルローストリアセテートは硫酸触媒を用いてセルロースをアセチル化し熟成することにより得られたセルローストリアセテートであり、(iiib)セルローストリアセテート1g中にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を総含有量として、5.5×10−6当量(イオン当量換算)を超える割合で含み、かつ水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を、セルローストリアセテート1g当たり1×10−9〜3×10−5モルの割合で含むフィルムも包含する。
本発明は、これらドープ(流延液)を支持体に流延し、支持体からのフィルムの剥離性を改善する方法も包含する。すなわち、本発明は、流延液を支持体に流延し、支持体からフィルムを剥離する方法であって、流延液として前記流延液を用い、支持体からのフィルムの剥離性を改善する方法も含む。
さらに、本発明は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートで構成されたフィルムであって、セルローストリアセテートが、以下の特徴(iii)を有するフィルムも包含する。
(iii)セルローストリアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が、有効量以上(0.01×10−6〜5.5×10−6当量(イオン当量換算))であり、フレークスラリーpHが4.5〜6.0である
本発明は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートで構成されたフィルムであって、セルローストリアセテートが、以下の特徴(ii)を有するフィルムも包含する。
(ii)水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を含み、フレークスラリーpHが4.5〜6.0である
また、セルローストリアセテートの平均酢化度は58〜62.5%であってもよい。さらに、前記フィルムは、光学フィルム、例えば、偏光板の保護フィルム、カラーフィルター用フィルム又は写真感光材料のフィルムであってもよい。
【0008】
なお、多段解離する酸では解離段数により酸解離指数pKaの値が異なる場合がある。本明細書において、「酸解離指数pKa1.93〜4.50」とは、少なくとも第1段階(解離段1)での酸解離指数がpKa1.93〜4.50の範囲であることを意味する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のセルロースアセテートは、パルプをアセチル化することにより得ることができる。前記パルプの種類は特に制限されず種々のパルプが使用可能であるが、代表的には、木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)およびリンターパルプから選択された少なくとも一種が使用でき、木材パルプとリンターパルプとを併用してもよい。パルプの純度の指標となるα−セルロース含有量は、例えば、90〜100重量%程度の範囲から選択でき、木材パルプでは、通常、92〜98%程度である。本発明では低純度パルプ、例えば、α−セルロース含有量90〜97%(特に92〜96%)程度のパルプも使用できる。これらのパルプのうち、通常、木材パルプが使用される。前記のように、広葉樹パルプを原料とするセルロースアセテートは、一般的に、流延法によるフィルムの剥離性が劣り、針葉樹パルプを原料とするセルロースアセテートは、一般的に、透明性などの光学的特性や紡糸性が劣る。本発明は、このような木材パルプであっても、セルロースアセテートフィルムの剥離性、セルロースアセテートの透明性などの光学的特性や紡糸性を向上できる。
【0010】
セルロースアセテートは、慣用の方法、例えば、硫酸触媒法、酢酸法、メチレンクロライド法などの方法で製造できる。セルロースアセテートは、通常、パルプ(セルロース)を酢酸などにより活性化処理(活性化工程)した後、硫酸触媒を用いて無水酢酸によりトリアセテートを調製し(酢化工程)、ケン化(加水分解)・熟成により酢化度を調整する(ケン化・熟成工程)ことにより製造できる。
この方法において、活性化工程は、例えば、酢酸や含水酢酸の噴霧、酢酸や含水酢酸への浸漬などによリ、パルプ(セルロース)を処理することにより行うことができ、酢酸の使用量は、パルプ(セルロース)100重量部に対して10〜100重量部、好ましくは20〜80重量部、さらに好ましくは30〜60重量部程度である。
酢化工程(アセチル化工程)における無水酢酸の使用量は、前記酢化度となる範囲で選択でき、例えば、パルプ(セルロース)100重量部に対して230〜300重量部、好ましくは240〜290重量部、さらに好ましくは250〜280重量部程度である。
酢化工程において、通常、溶媒として酢酸が使用される。酢酸の使用量は、例えば、パルプ(セルロース)100重量部に対して200〜700重量部、好ましくは300〜600重量部、さらに好ましくは350〜500重量部程度である。
アセチル化又は熟成触媒としては、通常、硫酸が使用される。硫酸の使用量は、通常、セルロース100重量部に対して、1〜15重量部、好ましくは5〜15重量部、特に5〜10重量部程度である。また、ケン化・熟成は、例えば、温度50〜70℃程度で行うことができる。
【0011】
セルロースアセテートの光学的特性を改善するため、セルロースアセテートの製造工程のうち適当な段階、例えば、酢化やケン化・熟成終了後、生成したセルロースアセテートを酸化剤で処理してもよい。酸化剤としては、例えば、過酸化水素;過ギ酸,過酢酸,過安息香酸などの過酸;過酸化ジアセチルなどの有機過酸化物などが例示できる。酸化剤は単独で又は二種以上使用できる。好ましい酸化剤には、セルロースアセテートからの除去が容易であり、かつ残留性が小さな酸化剤、例えば、過酸化水素、過ギ酸、過酢酸が含まれ、過酸化水素や過酢酸が特に好ましい。酸化剤の使用量は、所望する光学的特性のレベルに応じて選択でき、例えば、セルロースアセテート100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜2.5重量部、特に0.1〜1重量部程度である。
酸化剤による処理は、酸化剤の種類に応じて、例えば、20〜100℃、好ましくは30〜70℃程度で行うことができる。
【0012】
セルロースアセテートにおいて平均酢化度は、用途や特性に応じて30〜62.5%程度の範囲から選択できるが、工業的に有用なセルロースアセテートは、通常、セルロースジアセテート乃至セルローストリアセテートである。セルロースアセテートの平均酢化度は、例えば、平均酢化度43.7〜62.5%(アセチル基の平均置換度1.7〜3.0)、好ましくは45〜62.5%(平均置換度1.8〜3.0)、さらに好ましくは48〜62.5%(平均置換度2.0〜3.0)程度である。セルローストリアセテートにおいては、寸法安定性や耐湿性、耐熱性などを高めるため、通常、平均酢化度58〜62.5%、好ましくは58.5〜62%、さらに好ましくは59〜62%(例えば、60〜61%)程度である。
【0013】
酢化度は、結合酢酸量を意味し、セルロース単位重量当たりの結合酢酸の重量百分率をいい、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)のアセチル化度の測定法に準じて測定できる。具体的には、乾燥したセルロースアセテート1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定する。また、上記と同様の方法でブランク試験を行い、下記式に従って酢化度を算出する。
酢化度(%)=[6.5×(B−A)×F]/W
(式中、Aは試料での1N−硫酸の滴定量(ml)、Bはブランク試験での1N−硫酸の滴定量(ml)、Fは1N−硫酸の濃度ファクター、Wは試料の重量を示す)。
【0014】
さらに、セルロースアセテートの重合度は、粘度平均重合度200〜400、好ましくは250〜400、さらに好ましくは270〜400(例えば、290〜400)程度であり、通常、粘度平均重合度270〜350程度である。
平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。その際、溶媒はセルロースアセテートの酢化度などに応じて選択できる。例えば、セルローストリアセテートの場合には、メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液にセルローストリアセテートを溶解し、所定の濃度c(2.00g/L)の溶液を調製する。この溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間(秒)tを測定する。一方、前記混合溶媒単独についても上記と同様にして通過時間(秒)t0を測定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出できる。
ηrel=t/t0
[η]=(lnηrel)/c
DP=[η]/(6×10-4)
(式中、tは溶液の通過時間(秒)、t0は溶媒の通過時間(秒)、cは溶液のセルローストリアセテート濃度(g/L)、ηrelは相対粘度、[η]は極限粘度、DPは平均重合度を示す)
また、メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒を用いたとき、セルローストリアセテートの6重量%溶液粘度は、例えば、200〜700cps、好ましくは250〜600cps、特に250〜500cps程度である。
【0015】
このようなセルロースアセテートは、通常、安定性を向上させるため、耐熱安定剤、例えば、アルカリ金属(リチウム,カリウム,ナトリウムなど)又はその塩やその化合物、アルカリ土類金属(カルシウム,マグネシウム,ストロンチウム,バリウムなど)又はその塩やその化合物を含有している。
【0016】
本発明のセルロースアセテートは、主に、以下の3つの態様(1)〜(3)に大別できる。
(1)セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合したカルボキシル基のうち少なくとも一部が酸型であるセルロースアセテート。
(2)水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を含むセルロースアセテート。
(3)セルロースアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が、有効量以上であって5.5×10-6当量(イオン当量換算)以下であるセルロースアセテート。
【0017】
さらに、本発明のセルロースアセテートには、上記態様(1)〜(3)を組み合わせた下記のセルロースアセテート(4)〜(7)も含まれる。
(4)前記(1)と(2)との組み合わせ、すなわち、水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を含み、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合したカルボキシル基のうち少なくとも一部が酸型で存在するセルロースアセテート。
(5)前記(1)と(3)との組み合わせ、すなわち、セルロースアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が、有効量以上であって5.5×10-6当量(イオン当量換算)以下であり、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに統合したカルボキシル基のうち少なくとも一部が酸型で存在するセルロースアセテート。
【0018】
(6)前記(2)と(3)との組み合わせ、すなわち、水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を含み、かつセルロースアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総合有量が、有効量以上であって5.5×10-6当量(イオン当量換算)以下であるセルロースアセテート
(7)前記(1)と(2)と(3)との組み合わせ、すなわち、水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を含み、かつセルロースアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が、有効量以上であって5.5×10-6当量(イオン当量換算)以下であり、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに統合したカルボキシル基のうち少なくとも一部が酸型で存在するセルロースアセテート。
【0019】
[態様(1)(4)(5)(7)のセルロースアセテート]
前記態様(1)(4)(5)(7)のセルロースアセテートにおいて、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合するカルボキシル基は、少なくとも一部が遊離の酸型カルボキシル基であり、カルボキシル基の全てが金属塩型のカルボキシル基(例えば、前記アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩型カルボキシル基)ではない。好ましいセルロースアセテートでは、前記カルボキシル基のうち少なくとも30モル%、好ましくは50〜100モル%、特に70〜100モル%程度が遊離のカルボキシル基で構成されている。
【0020】
[態様(2)(4)(6)(7)のセルロースアセテート]
前記態様(2)(4)(6)(7)のセルロースアセテートにおいて、酸解離指数pKa1.93〜4.50[好ましくは2.0〜4.4、さらに好ましくは2.2〜4.3(例えば、2.5〜4.0)、特に2.6〜4.3(例えば、2.6〜4.0)程度]の酸には、無機酸および有機酸が含まれる。酸のpKaについては「改訂3版 化学便覧,基礎編II」((財)日本化学会編,丸善(株)発行)を参照できる。以下に、酸の具体例とともに、括弧内に酸解離指数pKaを示す。
【0021】
前記無機酸としては、例えば、HClO2 (2.31),HOCN(3.48),モリブデン酸(H2 MoO4 ,3.62),HNO2 (3.15),リン酸(H3 PO4 ,2.15),トリポリリン酸(H5 P3 O10,2.0),バナジン酸(H3 VO4 ,3.78)などが例示できる。
【0022】
有機酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸[ギ酸(3.55),オキサロ酢酸(2.27),シアノ酢酸(2.47),フェニル酢酸(4.10),フェノキシ酢酸(2.99),フルオロ酢酸(2.59),クロロ酢酸(2.68),ブロモ酢酸(2.72),ヨード酢酸(2.98),メルカプト酢酸(3.43),ビニル酢酸(4.12)などの置換基を有する酢酸,クロロプロピオン酸(2.71-3.92)などのハロプロピオン酸,4−アミノ酪酸(4.03),アクリル酸(4.26)など],脂肪族多価カルボン酸[マロン酸(2.65),コハク酸(4.00),グルタル酸(4.13),アジピン酸(4.26),ピメリン酸(4.31),アゼライン酸(4.39),フマル酸(2.85)など],オキシカルボン酸[グリコール酸(3.63),乳酸(3.66),リンゴ酸(3.24),酒石酸(2.82-2.99),クエン酸(2.87)など]、アルデヒド酸又はケトン酸[グリオキシル酸(3.18),ピルビン酸(2.26),レブリン酸(4.44)など]、芳香族モノカルボン酸[アニリンスルホン酸(3.74-3.23),安息香酸(4.20),アミノ安息香酸(2.02-3.12),クロロ安息香酸(2.92-3.99),シアノ安息香酸(3.60-3.55),ニトロ安息香酸(2.17-3.45),ヒドロキシ安息香酸(4.08-4.58),アニス酸(4.09-4.48),フルオロ安息香酸(3.27-4.14),クロロ安息香酸,ブロモ安息香酸(2.85-4.00),ヨード安息香酸(2.86-4.00)などの置換基を有する安息香酸,サリチル酸(2.81),ナフトエ酸(3.70-4.16),ケイ皮酸(3.88),マンデル酸(3.19)など]、芳香族多価カルボン酸[フタル酸(2.75),イソフタル酸(3.50),テレフタル酸(3.54)など]、複素環式モノカルボン酸[ニコチン酸(2.05),2−フランカルボン酸(2.97)など],複素環式多価カルボン酸[2,6−ピリジンジカルボン酸(2.09)など]などが例示できる。
【0023】
有機酸には、アミノ酸類[すなわち、アミノ酸やアミノ酸誘導体(置換基を有するアミノ酸,2〜5個程度のアミノ酸で構成されたペプチドなど)]も含まれる。
アミノ酸類には、例えば、アミノ酸[アスパラギン(2.14),アスパラギン酸(1.93),アデニン(4.07),アラニン(2.30),β−アラニン(3.53),アルギニン(2.05),イソロイシン(2.32),グリシン(2.36),グルタミン(2.17),グルタミン酸(2.18),セリン(2.13),チロシン(2.17),トリプトファン(2.35),トレオニン(2.21),ノルロイシン(2.30),バリン(2.26),フェニルアラニン(2.26),メチオニン(2.15),リシン(2.04),ロイシン(2.35)など],アミノ酸誘導体[アデノシン(3.50),アデノシン三リン酸(4.06),アデノシンリン酸(3.65-3.80),L−アラニル−L−アラニン(3.20),L−アラニルグリシン(3.10),β−アラニルグリシン(3.18),L−アラニルグリシルグリシン(3.24),β−アラニルグリシルグリシン(3.19),L−アラニルグリシルグリシルグリシン(3.18),グリシル−L−アラニン(3.07),グリシル−β−アラニン(3.91),グリシルグリシル−L−アラニン(3.18),グリシルグリシルグリシン(3.20),グリシルグリシルグリシルグリシン(3.18),グリシルグリシル−L−ヒスチジン(2.72),グリシルグリシルグリシル−L−ヒスチジン(2.90),グリシル−DL−ヒスチジルグリシン(3.26),グリシル−L−ヒスチジン(2.54),グリシル−L−ロイシン(3.09),γ−L−グルタミル−L−システイニルグリシン(2.03),N−メチルグリシン(サルコシン,2.20),N,N−ジメチルグリシン(2.08),シトルリン(2.43),3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(2.31),L−ヒスチジルグリシン(2.84),L−フェニルアラニルグリシン(3.02),L−プロリルグリシン(3.07),L−ロイシル−L−チロシン(3.15)など」などが例示できる。
【0024】
酸としては、通常、有機酸、例えば、脂肪族モノカルボン酸[ギ酸,クロロ酢酸などのハロ酢酸、ハロプロピオン酸,アクリル酸などの飽和又は不飽和C1-3 モノカルボン酸など],脂肪族多価カルボン酸[マロン酸,コハク酸,グルタル酸,フマル酸などの飽和又は不飽和C2-4 ジカルボン酸など],オキシカルボン酸[グリコール酸,乳酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸などのC1-6 オキシカルボン酸]、アミノ酸又はその誘導体を用いる場合が多い。
これらの酸は非水溶性や水溶性のいずれであってもよい。
【0025】
酸は遊離酸として用いてもよく、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として用いてもよい。アルカリ金属としては、リチウム,カリウム,ナトリウムなどが例示でき、アルカリ土類金属としては、カルシウム,マグネシウム,バリウム,ストロンチウムなどが例示できる。好ましいアルカリ金属には、ナトリウムが含まれ、好ましいアルカリ土類金属には、カルシウム,マグネシウムが含まれる。これらのアルカリ金属,アルカリ土類金属はそれぞれ単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、アルカリ金属とアルカリ土類金属とを併用してもよい。
【0026】
前記酸およびその金属塩の総含有量は、剥離性,透明性,紡糸性などを損なわない範囲、例えば、セルロースアセテート1g当たり、1×10-9〜3×10-5モル、好ましくは1×10-8〜2×10-5モル(例えば、5×10-7〜1.5×10-5モル)、さらに好ましくは1×10-7〜1×10-5モル(例えば、5×10-6〜8×10-6モル)程度の範囲から選択でき、通常、5×10-7〜5×10-6モル(例えば、6×10-7〜3×10-6モル)程度である。
【0027】
なお、セルロースアセテート中の前記酸およびその金属塩の含有量は、次のような方法により定量できる。
〔イオンクロマトグラフィー分析〕
微粉末状の乾燥したセルロースアセテート2.0gを正確に秤量し、熱水を80ml加えて撹拌し、密閉して1晩放置した後、さらに撹拌し試料を沈降させる。約10mlの上澄みを試料液とし、イオンクロマトグラフィー法により、前記酸の含有量を測定する。
【0028】
[態様(3)(5)(6)(7)のセルロースアセテート]
態様(3)(5)(6)(7)のセルロースアセテートにおいては、セルロースアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量を低減させることにより、流延法によるフィルムの剥離性,透明性や紡糸性を改善する。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては前記と同様の金属が例示できる。セルロースアセテートは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のいずれか一方の金属を単独で含有してもよく、アルカリ金属とアルカリ土類金属の双方を含有していてもよい。
【0029】
これらのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、含有量が少ない場合、セルロースアセテートの酸性基(カルボキシル基やスルホン酸基など)と結合していてもよい。セルロースアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量は、セルロースアセテートの耐熱安定性を損なわない有効量以上であって、イオン当量換算で5.5×10-6当量以下(例えば、0.01×10-6〜5×10-6当量)、好ましくは3.5×10-6当量以下(例えば、0.01×10-6〜3×10-6当量)、さらに好ましくは2.5×10-6当量以下(例えば、0.01×10-6〜2×10-6当量)程度である。特に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が1×10-6当量以下(例えば、0.1×10-6〜0.5×10-6当量)、特に0.3×10-6当量以下(例えば、0.1×10-6〜0.3×10-6当量)程度のセルロースアセテートを用いると、流延法によりドープを支持体に流延し、半乾燥状態のフィルムを支持体から剥離するとき、剥離抵抗を大きく低減できる。
なお、セルロースアセテート中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量は、原子吸光分析により定量できる。
【0030】
前記態様(1)(2)のセルロースアセテートは、例えば、セルロースアセテートと前記酸解離指数pKaの酸又はその金属塩とを混合したり、セルロースアセテートを前記酸又はその金属塩で処理することにより調製できる。上記酸又はその金属塩の混合や処理は、加水分解・熟成工程終了後の耐熱安定剤の添加工程やセルロースアセテートの製造後に行うことができる。また、酸又はその金属塩による処理は、粉粒状、フレーク状セルロースアセテートの洗浄や浸漬処理,含浸処理などにより行ってもよい。さらに、前記混合や処理は、セルロースアセテートを含むドープに、酸又はその金属塩を添加することにより行ってもよい。なお、前記酸解離指数pKaの酸又はその金属塩の混合や処理は、作業性などを損なわない適当な温度、例えば、10〜70℃(好ましくは15〜50℃)程度の温度で行うことができ、混合又は処理時間は、適当な範囲、例えは、1分〜12時間程度の範囲から選択できる。このような特定pKaの酸又はその金属塩を用いると、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合するカルボキシル基のうち少なくとも一部を酸型のカルボキシル基として存在させることができる。
【0031】
前記態様(3)のセルロースアセテートは、例えば、セルロースアセテートの製造工程で、セルロースアセテートに対する耐熱安定剤(アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩)の添加量を低減したり、前記と同様にして、セルロースアセテートを前記酸解離指数pKaの酸の金属塩で処理することにより調製できる。
【0032】
前記態様(4)、すなわち酸型のカルボキシル基を有し(態様(1))、かつ特定のpKaを有する酸又はその金属塩を含む(態様(2))セルロースアセテートは、前記のように、混合(添加)や処理などにより特定の酸又はその金属塩をセルロースアセテートに含有させ、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合するカルボキシル基のうち少なくとも一部を酸型のカルボキシル基とすることにより調製できる。
【0033】
前記(5)の態様、すなわち酸型のカルボキシル基を有し(態様(1))、かつアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量を低減した(態様(3))セルロースアセテートは、セルロースアセテートに対する耐熱安定剤(アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩)の添加量を調整したり、セルロースアセテートに前記pKaの酸の金属塩(アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩)を混合したり、セルロースアセテートを前記酸の金属塩で処理することにより調製できる。
【0034】
前記(6)の態様、すなわち特定のpKaを有する酸又はその金属塩を含み(態様(2))、かつアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量を低減した(態様(3))セルロースアセテートは、▲1▼特定のpKaを有する酸又はその金属塩の添加量を調整したり、▲2▼特定のpKaを有する酸又はその金属塩の添加量とともに、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の添加量を調整することにより調製できる。
【0035】
前記(7)の態様、すなわち、酸型のカルボキシル基を有し(態様(1))、特定のpKaを有する酸又はその金属塩を含み(態様(2))、かつアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量を低減した(態様(3))セルロースアセテートは、▲1▼前記のように、混合(添加)や処理などにより特定のpKaを有する酸又はその金属塩の添加量を調整したり、▲2▼特定のpKaを有する酸又はその金属塩の添加量とともに、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の添加量を調整することにより調製できる。
【0036】
このようなセルロースアセテートは、流延法によるフィルムの製造において、支持体からの剥離性が高く、成膜速度、ひいてはセルロースアセテートフィルムの生産性を向上できる。また、セルロースアセテートは、透明性などの光学的特性に優れている。セルロースアセテートの透明度は、例えば、60〜100%(好ましくは70〜100%,さらに好ましくは75〜100%)程度であり、通常、70〜90%程度であり、ヘーズは1〜8(好ましくは1〜5)程度である。さらに、セルロースアセテートの黄色度の指標となるイエローネスインデックス(Yellowness Index,YI)は、例えば、1〜10(好ましくは1〜7,通常、2〜5)程度である。
なお、透明度,ヘーズおよびイエローネスインデックス(YI)は次のような方法で測定した値である。
【0037】
[透明度]
乾燥したセルロースアセテート8.0gを正確に秤量し、溶媒(メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒やアセトンなど)125.3gを加えて、完全に溶解させる(6重量%試料溶液)。
セシウム光電管、フィルターNo.12を備えたAKA光電比色計を用い、前記溶媒を光路長100mmのガラスセルに入れて透過率を測定しブランクとする。次いで、6重量%試料溶液を光路長100mmのガラスセルに入れて透過率を測定し、ブランクを100%としたときの試料溶液の透過率を試料の透明度とする。
【0038】
[ヘーズ]
乾燥したセルロースアセテート12.0gを正確に秤量し、溶媒(メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒やアセトンなど)88.0gを加えて完全に溶解させる(12重量%試料溶液)。
濁度計(日本電色工業製)を用い、ガラスセル(横幅45mm,高さ45mm,光路長10mm)を使用し、次のようにして測定する。
前記溶媒をガラスセルに入れて濁度計にセットし、0点合わせと標準合わせを行う。次いで、ガラスセルに12重量%試料溶液を入れて濁度計にセットし、数値を読み取る。
【0039】
[イエローネスインデックス(YI)]
乾燥したセルロースアセテート12.0gを正確に秤量し、溶媒(メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶媒やアセトンなど)88.0gを加えて完全に溶解させる(12重量%試料溶液)。
色差計(日本電色工業製,色差計Σ90)と、ガラスセル(横幅45mm,高さ45mm,光路長10mm)を用い、以下の計算式によりYIを算出する。
YI=YI2 −YI1
(式中、YI1 は溶媒のYI値,YI2 は12重量%試料溶液のYI値を示す)
さらに、前記態様のセルロースアセテートは、溶液の安定性、濾過性、紡糸特性も優れており、長期間に亘り連続的に紡糸しても糸切れの頻度を大きく低減できる。
【0040】
さらには、本発明の酸とその塩を用い、フレークスラリーpHを4.5〜6.0に調整することにより、高い前記剥離性、光学的特性や紡糸性を備えるとともに、熱安定性も高いセルロースアセテートを得ることができる。
なお、スラリーpHは以下の方法により測定できる。
【0041】
〔スラリーpH〕
微粉末状の乾燥したセルロースアセテート2.0gを正確に秤量し、煮沸した蒸留水80mlを加え撹拌し、密閉して1晩放置した後、さらに撹拌し試料を沈降させる。約10mlの上澄みを試料液とし、補正したpHメーターでpHを測定する。ブランクとして、煮沸蒸留水のpHも測定し、計算式[H+ ]=10-(pH)(pHは測定pH値を示す)によって、試料液およびブランク液の水素イオン濃度である[H+ ]s および[H+ ]b (sは試料,bはブランクを示す)をそれぞれ計算する。[H+ ]s ≧[H+ ]b である場合、スラリーpHは下記式により計算できる。
スラリーpH=−log([H+ ]s −[H+ ]b )
[H+ ]s <[H+ ]b の場合は、計算式[OH- ]=10-14÷[H+ ]により、試料液およびブランク液の水酸基イオン濃度[OH- ]s 、[OH- ]b をそれぞれ計算し、次の式によってスラリーpHを計算できる。
スラリーpH=14+log([OH- ]s −[OH- ]b +10-7)
このセルローストリアセテートは、セルロースアセテート(例えば、粉粒状、フレーク状セルロースアセテート)を処理(洗浄や浸漬処理)する際に、前記酸及び/又はその塩の濃度を調整し、水溶液のpHを調整することにより製造できる。なお、ここで言う処理は、セルロースアセテートの製造工程中任意の工程で行うこともできるし、セルロースアセテートの製造後に行うこともできる。
【0042】
このような特性を有する本発明のセルロースアセテートは、セルロースアセテート溶液(ドープ)を調製し、フィルムや繊維を製造するのに有用である。▲1▼本発明のドープは、前記態様(1)〜(7)のうち少なくとも一種のセルロースアセテートを含んでいる。▲2▼本発明の他のドープは、(a)セルロースアセテートと、(b)前記水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種とを含んでいる。後者のドープ▲2▼において、(a)セルロースアセテートとしては、前記態様(1)〜(7)のセルロースアセテートであってもよく、前記態様(1)〜(7)以外の通常のセルロースアセテート、すなわち、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロースアセテートに結合したカルボキシル基が酸型ではなく塩型(アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩)であるセルロースアセテート、1g当たりアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量がイオン当量換算で5.5×10-6当量を越える量のセルロースアセテートなども使用でき、セルロースアセテートの平均酢化度,重合度などは、本発明のセルロースアセテートと同様の範囲から選択できる。
【0043】
ドープは、通常、セルロースアセテートと溶媒(有機溶媒)とで構成されている。前記溶媒としては、セルロースアセテートの平均酢化度などに応じて、例えば、ハロゲン化炭化水素類(メチレンクロライド,エチレンクロライドなど)、ケトン類(アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノンなど)、エステル類(ギ酸エチルなどのギ酸エステル,酢酸メチル,酢酸エチルなどの酢酸エステル、乳酸エチルなど)、エーテル類(ジオキサン,ジメトキシエタンなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ,エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類(メチルセロソルブアセテート,エチルセロソルブアセテートなど)、およびこれらの混合物から選択できる。溶媒は、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタン,ニトロプロパンなど)、低級アルコール類(メタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール,ジアセトンアルコールなど)などを含んでいてもよい。
溶媒の使用量は、フィルム成形における流延性、紡糸性、取扱い性などを損わない範囲で選択でき、例えば、セルロースアセテート100重量部に対して150〜1000重量部(セルロースアセテートの濃度=約10〜40重量%)程度、好ましくは200〜900重量部(セルロースアセテートの濃度=約10〜30重量%)程度であり、セルロースアセテートの含有量は、通常、10〜25重量%(例えば、10〜20重量%)程度である。
【0044】
このようにして得られたドープは、流延法によるフィルム成形に有用である。フィルム成形においては、通常、セルロースジアセテート乃至セルローストリアセテート(特にセルローストリアセテート)が使用される。流延法によるフィルムは、通常、ドープを支持体に流延して一部乾燥し、支持体から剥離した後、乾燥することにより得られる。
支持体としては、慣用の支持体、例えば、鏡面仕上げの金属製支持体(例えば、ステンレススチール製支持体)などが使用できる。
前記のように本発明のセルロースアセテートは、支持体からの剥離性(離型性)が高いので、支持体から半乾燥状態のフィルムを円滑に剥離でき、表面平滑性の高いセルロースアセテートフィルムを得ることができる。そのため、本発明のドープを用いる方法は、支持体からのフィルムの剥離性を改善する方法として有用である。また、本発明のセルロースアセテートフィルムは、前記セルロースアセテートで構成されているため、光学的特性(黄色度,ヘーズや透明性)に優れている。
このようにして得られたセルロースアセテートフィルムの厚みは、用途に応じて、例えば、5〜500μm、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは20〜150μm(特に50〜150μm)程度の範囲から選択できる。
なお、本発明のセルロースアセテートは、前記流延法により、写真フィルム,偏光板の保護フィルム、カラーフィルター用フィルムなどをフィルム成形するのに有用なだけでなく、支持体に対する剥離性に優れているので、スピンコーティング法などによる薄膜の光学フィルムの製造などにも利用できる。
【0045】
本発明のセルロースアセテートは、前記のように、ドープの安定性,濾過性,紡糸性にも優れている。紡糸法により繊維を製造する場合、セルロースアセテートとしては、通常、セルロースジアセテート乃至セルローストリアセテートが使用される。紡糸は慣用の方法、例えば、多数の細孔を有する紡糸口金からドープを紡糸し、乾燥することにより得ることができ、必要に応じて延伸してもよい。本発明のドープを紡糸すると、口金細孔の目詰まりや糸切れを長期間に亘り防止できる。そのため、本発明のドープを用いる方法は、紡糸性を改善する方法として有用である。
【0046】
本発明のセルロースアセテートやドープは、可塑剤、例えば、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)などのリン酸エステル、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)などのフタル酸エステル、オイレン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチルなどの脂肪酸エステル、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)、クエン酸アセチルトリブチル(OACTB)などのクエン酸エステル、トリメット酸エステルなどを含んでいてもよい。これらの可塑剤は一種又は二種以上使用できる。
セルロースアセテートは、劣化防止剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤などを含んでいてもよい。さらに、必要に応じて、前記セルロースアセテートは、他の添加剤、例えば、結晶核形成剤、無機粉末(例えば、ケイソウ土、炭酸カルシウム、酸化チタンなど)、熱安定剤、難燃剤、着色剤などを含んでいてもよい。
【0047】
【発明の効果】
本発明のセルロースアセテート(カルボキシル基が酸型であるセルロースアセテート、特定の酸又はその金属塩を含有するセルロースアセテート、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の含有量が小さなセルロースアセテート)は、流延法において支持体からの剥離性が高く、表面平滑性,光学的特性の高いフィルムを得ることができる。また、本発明のセルロースアセテートは、ドープの安定性,濾過性や紡糸性並びに耐熱性にも優れている。
【0048】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、流延法によるフィルムの剥離性は次のようにして評価した。
セルロースアセテート100重量部を、メチレンクロライド320重量部,メタノール40重量部、ブタノール25重量部およびトリフェニルホスフェート(TPP)15重量部を混合してドープを調製する。このドープを、室温(20〜25℃)で、平滑なステンレススチール板(支持体)上に厚み1mm程度に流延し、室温で3〜4分間放置し、支持体からの剥離性を以下の基準で評価する。
○:引剥がし抵抗が小さく、円滑に剥離でき、フィルム表面が平滑である
×:引剥がし抵抗力が大きく、円滑に剥離できないか又はステンレススチール板にフィルムからの剥離物が付着する。
【0049】
比較例1
広葉樹クラフト法パルプ(α−セルロース含量94.5%)100重量部に氷酢酸50重量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸470重量部、無水酢酸265重量部および硫酸8.3重量部の混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。その後、加水分解を行い、耐熱安定剤(酢酸カルシウムおよび酢酸マグネシウム)を添加することにより、酢化度61.3%、粘度平均重合度301のセルローストリアセテート(CTA,カルシウム含有量98ppm(4.9×10-6イオン当量),マグネシウム含有量16ppm(1.3×10-6イオン当量))を得た。得られたCTAのYIは7.1、ヘーズは2.6、透明度は78%であった。
得られたCTAを用いてドープを調製し、流延法によるフィルムの剥離性を評価したところ、剥離性は「×」であった。
【0050】
実施例1〜2および比較例2
比較例1で得られたCTAのフレーク50gを濃度の異なるクエン酸水溶液に添加し、それぞれ室温(20〜25℃)で1時間撹拌して浸漬処理した後、CTAのフレークを濾別し、水洗し、真空乾燥することにより、1gあたり下記のクエン酸を含有するCTAフレークを得た。
【0051】
実施例1:クエン酸含有量7.7×10-7モル,YI 7.0,ヘーズ 2.2,透明度 85%
実施例2:クエン酸含有量6.8×10-8モル,YI 7.0、ヘーズ 2.4,透明度 81%
比較例2:クエン酸含有量5.5×10-9モル,YI 7.1、ヘーズ 2.6、透明度 75%
前記比較例1と同様にして、得られたクエン酸処理CTAフレークを含むドープを調製するとともに、流延法による支持体からの剥離性を評価したところ、実施例1および2では剥離性は「○」であり、比較例2では「×」であった。
【0052】
実施例3
比較例1で調製したドープ97g(CTA含有量19.4g)にクエン酸11.8mgを添加して混合し、クエン酸含有ドープを調製した。このドープを用いて、前記比較例1と同様にして、流延法による支持体からの剥離性を評価したところ、剥離性は「○」であった。
【0053】
実施例4
比較例1で得られたCTAのフレークを用いて、比較例1と同様にしてドープを調製し、このドープ97g(CTA含有量19.4g)にクエン酸カルシウム・4H2 O 35.3mgを添加して混合し、クエン酸塩を含有するドープを調製した。このドープを用いて、前記比較例1と同様にして、流延法による支持体からの剥離性を評価したところ、剥離性は「○」であった。
【0054】
比較例3
広葉樹クラフト法パルプ(α−セルロース含量94.5%)100重量部に氷酢酸50重量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸445重量部、無水酢酸265重量部、硫酸8.3重量部からなる混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。加水分解を行った後、耐熱安定剤(酢酸カルシウムおよび酢酸マグネシウム)を添加することなく、酢化度60.8%、粘度平均重合度313のセルローストリアセテート(CTA)を得た。このCTA1g当たりのカルシウム含有量は0ppm,マグネシウム含有量は7.3ppm(0.61×10-6イオン当量),ナトリウム含有量は0ppmであり、得られたCTAのYIは3.5、ヘーズは2.7、透明度は78.2%であった。
【0055】
実施例5〜7および比較例4,5
比較例3のフレークを、濃度の異なる水酸化カルシウム水溶液,水酸化マグネシウム水溶液,および酢酸ナトリウム水溶液にそれぞれ浸漬して処理した後、濾別し乾燥することにより、1g当たり下記の金属成分を含むCTAフレークを得た。なお、カルシウムをCa、マグネシウムをMg、ナトリウムをNaで示し、括弧内にはCTA1g当りのイオン当量換算量(単位×10-6当量)を示す。
【0056】
実施例5:Ca含量 10ppm(0.5), Mg含量 5.6ppm(0.47), Na含量 0ppm
実施例6:Ca含量 6.5ppm(0.33),Mg含量 22ppm(1.8), Na含量 0ppm
実施例7:Ca含量 2ppm(0.1), Mg含量 4.3ppm(0.36), Na含量 53ppm(2.3)
比較例4:Ca含量 98ppm(4.9), Mg含量 16ppm(1.3), Na含量 0ppm
比較例5:Ca含量 129ppm(6.5), Mg含量 93ppm(7.8), Na含量 0ppm
そして、上記浸漬処理CTAを用いて、比較例1と同様にしてドープを調製し、剥離性を調べたところ、実施例5〜実施例7のドープはいずれも「○」であり、比較例4および比較例5のドープはいずれも「×」であった。
比較例3、実施例5〜7および比較例5のスラリーpHを測定したところ、下記の通りであった。
比較例3:4.26
実施例5:4.51
実施例6:4.83
実施例7:5.03
比較例5:6.45
比較例3、実施例5〜7、および比較例5のセルロースアセテートの剥離性を評価したところ、比較例3および実施例5〜7は剥離性が「○」、比較例5は剥離性が「×」であった。
そして比較例3、実施例5〜7、および比較例5のセルロースアセテートの耐熱性を下記の基準で評価したところ、比較例3は耐熱性が「×」であり、実施例5〜7および比較例5は、耐熱性が「○」であった。
○:60℃での加温乾燥時に、劣化、変色を生じない。
×:60℃での加温乾燥時に、劣化、変色を生じる。
【0057】
実施例8
針葉樹サルファイト法パルプ(α−セルロース含量94.5%)100重量部に氷酢酸50重量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸445重量部、無水酢酸265重量部、硫酸8.3重量部からなる混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。その後、加水分解を行い、酢酸カルシウムおよび酢酸マグネシウムを添加することにより、平均酢化度61.3%、粘度平均重合度310のセルローストリアセテート(CTA)を得た。得られたCTA1g当たりのCa含量は10ppm(0.5×10-6イオン当量),Mg含量は5.3ppm(0.44×10-6イオン当量)であり、YIは6.6、ヘーズは2.0、透明度は83%であった。
そして、比較例1と同様にして剥離性を調べたところ、剥離性は「○」であった。
【0058】
実施例9および比較例6
実施例8で用いたパルプに代えて、針葉樹サルファイト法パルプ(α−セルロース含量96.1%)を用いる以外、実施例8と同様にしてエステル化を行った。その後、加水分解を行い、酢酸カルシウムおよび酢酸マグネシウムを添加することにより、平均酢化度55.2%、粘度平均重合度299、1g当たり下記の金属成分を含むセルロースジアセテート(CDA)を得た。括弧内にはCDA1g当りのイオン当量換算量(単位×10-6当量)を示す。
実施例9:Ca含量 10ppm(0.44),Mg含量 6.2ppm(0.52),ヘーズ1.9, 透明度82.5%
比較例6:Ca含量 125ppm(6.3), Mg含量 18 ppm(1.5),ヘーズ6.3, 透明度73%
そして、実施例9および比較例6で得られたCDAを用いて30重量%アセトン溶液を調製し、下記のドープの経時安定性の基準で可紡性を評価したところ、実施例9のCDAでは可紡性が「○」であり、比較例6のCDAでは可紡性が「×」であった。
○:ドープが経時的に変化せず、濾過時に目詰りも生じない
×:ドープが経時的に白濁などが生じて安定性が劣り、濾過時に目詰りが生じる
Claims (18)
- アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートであって、
(iii)セルローストリアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が、0.01×10−6〜5.5×10−6当量(イオン当量換算)であり、フレークスラリーpHが4.5〜6.0であるセルローストリアセテート。 - アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートであって、
(ii)水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を含み、フレークスラリーpHが4.5〜6.0であるセルローストリアセテート。 - セルローストリアセテートの平均酢化度が58〜62.5%である請求項1又は2記載のセルローストリアセテート。
- 原料セルロースが、少なくとも木材パルプで構成されている請求項1〜3のいずれかに記載のセルローストリアセテート。
- セルローストリアセテートが硫酸触媒を用いてセルロースをアセチル化し熟成することにより得られたセルローストリアセテートであり、かつカルボキシル基及びスルホン酸基を有し、カルボキシル基のうち少なくとも一部が酸型で存在する請求項1〜4のいずれかに記載のセルローストリアセテート。
- カルボキシル基及びスルホン酸基を有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含み、フレークスラリーpHが4.5〜6.0であるセルローストリアセテートであって、前記セルローストリアセテートは硫酸触媒を用いてセルロースをアセチル化し熟成することにより得られたセルローストリアセテートであり、かつ以下の特徴(ii),(iiia)又は(iiib)を有するセルローストリアセテート。
(ii)水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を、セルローストリアセテート1g当たり1×10−9〜3×10−5モルの割合で含む
(iiia)セルローストリアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が0.01×10−6〜5.5×10−6当量(イオン当量換算)である
(iiib)セルローストリアセテート1g中にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を総含有量として、5.5×10−6当量(イオン当量換算)を超える割合で含み、かつ水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を、セルローストリアセテート1g当たり1×10−9〜3×10−5モルの割合で含む - フレークスラリーpHが4.8〜6.0である請求項6記載のセルローストリアセテート。
- 原料セルロースが、少なくとも木材パルプで構成されている請求項6又は7記載のセルローストリアセテート。
- 原料セルロースが、広葉樹パルプおよび針葉樹パルプのうち少なくとも一種である請求項6〜8のいずれかに記載のセルローストリアセテート。
- 請求項1又は請求項6に記載のセルローストリアセテートと有機溶媒とを含む流延液。
- カルボキシル基及びスルホン酸基を有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートと、有機溶媒とを含む流延液を流延して成形したフィルムであって、前記セルローストリアセテートは硫酸触媒を用いてセルロースをアセチル化し熟成することにより得られたセルローストリアセテートであり、(iiib)セルローストリアセテート1g中にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を総含有量として、5.5×10−6当量(イオン当量換算)を超える割合で含み、かつ水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を、セルローストリアセテート1g当たり1×10−9〜3×10−5モルの割合で含むフィルム。
- 流延液を支持体に流延し、支持体からフィルムを剥離する方法であって、流延液として請求項10記載の流延液を用い、支持体からのフィルムの剥離性を改善する方法。
- カルボキシル基及びスルホン酸基を有し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートと、有機溶媒とを含む流延液を支持体に流延し、支持体からフィルムを剥離する方法であって、前記流延液として、前記セルローストリアセテートが、硫酸触媒を用いてセルロースをアセチル化し熟成することにより得られたセルローストリアセテートであり、( iiib )セルローストリアセテート1g中にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を総含有量として、5.5×10 −6 当量(イオン当量換算)を超える割合で含み、かつ水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を、セルローストリアセテート1g当たり1×10 −9 〜3×10 −5 モルの割合で含む流延液を用い、支持体からのフィルムの剥離性を改善する方法。
- アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートで構成されたフィルムであって、セルローストリアセテートが、以下の特徴(iii)を有するフィルム。
(iii)セルローストリアセテート1g中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の総含有量が、0.01×10−6〜5.5×10−6当量(イオン当量換算)であり、フレークスラリーpHが4.5〜6.0である - アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方を含むセルローストリアセテートで構成されたフィルムであって、セルローストリアセテートが、以下の特徴(ii)を有するフィルム。
(ii)水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択された少なくとも一種を含み、フレークスラリーpHが4.5〜6.0である - セルローストリアセテートの平均酢化度が58〜62.5%である請求項14又は15記載のフィルム。
- 光学フィルムである請求項14〜16のいずれかに記載のフィルム。
- 光学フィルムが、偏光板の保護フィルム、カラーフィルター用フィルム又は写真感光材料のフィルムである請求項17記載のフィルム。
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