JP6820858B2 - セルロースアセテート、セルロースアセテートの製造方法および製造装置 - Google Patents

セルロースアセテート、セルロースアセテートの製造方法および製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、セルロースアセテート、セルロースアセテートの製造方法および製造装置に関する。
セルロースアセテートは、セルロースの有機酸エステルの一つであって、その用途は衣料用繊維、タバコ・フィルター・チップ、プラスチックス、フィルム、塗料等多岐にわたり、セルロース誘導体の中で最も生産量が多く、工業的に重要なものである。
代表的なセルロースアセテートの工業的製法としては無水酢酸を酢化剤、酢酸を希釈剤、硫酸を触媒とするいわゆる酢酸法が挙げられる。酢酸法の基本的工程は、(1)α−セルロース含有率の比較的高いパルプ原料(溶解パルプ)を、離解・解砕後、酢酸を散布混合する前処理工程と、(2)無水酢酸、酢酸および酢化触媒(例えば硫酸)よりなる混酸で、(1)の前処理パルプを反応させる酢化工程と、(3)セルロースアセテートを加水分解して所望の酢化度のセルロースアセテートとする熟成工程と、(4)加水分解反応の終了したセルロースアセテートとを反応溶液から沈澱分離、精製、安定化、乾燥する後処理工程より成る。
また、以上の基本的工程の他、複数のセルロースアセテートの製造方法が特許文献1−7に開示されている。
米国特許第3767642号明細書 特開昭56−059801号公報 特開昭62−000501号公報 特開平04−065401号公報 特開平05−239101号公報 特開平02−103201号公報 特開平06−157601号公報
従来からセルロースアセテートの製造に用いる原料としては、α−セルロース含有率の高い、高品位パルプ(溶解パルプ)が使用されている。しかし、世界的な資源の制約とパルプ製造工場の公害問題からコストにみあう高品位のものは得られ難くなることが予想される。一方、原料として、α−セルロース含有率の低い低品位パルプを使用した場合、α−セルロース含有率の低い低品位パルプは、ヘミセルロース含有率が高品位パルプよりも高いため、従来の製造方法により得られたセルロースアセテートは、その中に着色成分が存在し、充分な色相を有するものではなかった。
本発明は、低品位のパルプを用いた場合であっても、色相に優れたセルロースアセテートを提供することを目的とする。
本発明の第一は、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%より高く、1.0mol%以下であり、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1未満であるセルロースアセテートに関する。
本発明の第二は、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く、5.0mol%以下であり、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1未満であるセルロースアセテートに関する。
本発明の第三は、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が5.0mol%より高く、7.0mol%以下であり、波長430nmにおける吸光度法色相が0.80cm−1以上1.8cm−1未満であるセルロースアセテートに関する。
前記第一、第二および第三のセルロースアセテートは、マグネシウム含量が5ppm以下であることが好ましい。
本発明の第四は、木材パルプを解砕する工程(1)、前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)、前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)、前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(4)、および前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)を有し、前記加水分解工程(4)において、前記加水分解反応系内の酸素濃度を3%以下とする、セルロースアセテートの製造方法に関する。
前記加水分解工程(4)において、前記加水分解反応系内に不活性ガスを導入することにより、前記加水分解反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましい。
前記アセチル化工程(3)において、前記アセチル化反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましい。
前記アセチル化工程(3)において、前記アセチル化反応系内に不活性ガスを導入することにより、前記アセチル化反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましい。
前記加水分解工程(4)において、前記加水分解反応系内の温度を100℃以上200℃以下とすることが好ましい。
本発明の第五は、木材パルプを解砕する解砕機、前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する前処理機、前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する酢化反応器、前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する熟成槽、前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する沈澱槽、前記熟成槽内に不活性ガスを導入する手段、前記熟成槽内の酸素を前記熟成槽外に出すが、前記熟成槽内には酸素を逆流させない密封手段、および前記熟成槽内の圧力を調整する圧力調整器を備える、セルロースアセテートの製造装置に関する。
前記酢化反応器内に不活性ガスを導入する手段、前記酢化反応器の酸素を前記酢化反応器外に出すが、前記酢化反応器には酸素を逆流させない密封手段、および前記酢化反応器内の圧力を調整する圧力調整器を備えることが好ましい。
本発明によれば、低品位のパルプを用いた場合であっても、色相に優れたセルロースアセテートを提供することができる。
セルロースアセテートの製造装置の一実施態様を示す概略図である。 セルロースアセテートの製造装置の一実施態様を示す概略図である。
α−セルロース含有率の低い低品位パルプは、ヘミセルロース成分であるキシロースを含有し、その一部は高温下で酸化されて、キシラン由来のフルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、5−ホルミル−2−フランカルボン酸(FFA)などになる。本発明者らは、それらキシラン由来の成分が、高温下で酸素によりさらに酸化されることにより、セルロースアセテート自身の色相を悪化させており、特に高温下にさらされる熟成工程において、酸素濃度を低減することにより、色相に優れたセルロースアセテートを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本開示に係るセルロースアセテートは、当該セルロースアセテートを構成するキシロース、マンノース、グルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合によって、吸光度法色相が異なるため、以下場合を分けて述べる。
本開示に係るセルロースアセテートは、当該セルロースアセテートを構成するキシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が0.5mol%より高く、1.0mol%以下であり、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1未満である。この場合吸光度法色相の下限値は特に限定されるものではないが、0.20cm−1以上である。
また、キシロースのモル含量の割合が0.7mol%より高く、0.9mol%以下である場合、波長430nmにおける吸光度法色相は、0.50cm−1以上0.55cm−1未満であってもよく、キシロースのモル含量の割合が0.9mol%より高く、1.0mol%以下である場合、波長430nmにおける吸光度法色相は0.55cm−1以上0.60cm−1未満であってもよい。
本開示に係るセルロースアセテートは、当該セルロースアセテートを構成するキシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く、5.0mol%以下であり、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1未満である。
また、キシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く、1.5mol%以下である場合、波長430nmにおける吸光度法色相は、0.60cm−1以上0.70cm−1未満であってもよく、キシロースのモル含量の割合が1.5mol%より高く、2.5mol%以下である場合、波長430nmにおける吸光度法色相は0.70cm−1以上0.75cm−1未満であってもよい。
本開示に係るセルロースアセテートは、当該セルロースアセテートを構成するキシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が5.0mol%より高く、7.0mol%以下であり、波長430nmにおける吸光度法色相が0.80cm−1以上1.8cm−1未満である。
また、キシロースのモル含量の割合が5.5mol%より高く、7.0mol%以下である場合、波長430nmにおける吸光度法色相は、1.5cm−1以上1.8cm−1未満であってもよい。
上記のとおり、本開示のセルロースアセテートは、ヘミセルロース成分であるキシロースのモル含量の割合が比較的高いにもかかわらず、ヘミセルロース成分を分解することにより生じる着色成分が少なく、優れた色相を有するものである。
(キシロース)
本開示に係るセルロースアセテートを構成する糖として、キシロース、マンノースおよびグルコースが存在するところ、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合は、以下の方法により求めることができる。
セルロースサンプルの加水分解過程、水酸化ナトリウムによる中和過程、フィルターによるろ過過程を経た後、HPLC(LC−20Aシステム)を用いて、得られたデータからキシロースのみならずその他の構成糖の割合を算出することができ、キシロースのモル含量の割合を求めることができる。
(吸光度法色相)
本開示に係るセルロースアセテートの波長430nmにおける吸光度法色相は、以下の方法により求めることができる。セルロースアセテート濃度既知のDMSO溶液をサンプルとして調製し、波長λ=430nmの吸光度および波長740nmの吸光度をそれぞれ測定して吸光度の差を求め、さらにセルロースアセテート濃度を100%換算して得られた値を吸光度法色相とする。下記式のとおりである。
吸光度法色相(cm−1)=吸光度(A−B)/セル厚(cm)/セルロースアセテート濃度(重量%)×100
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV−1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
セルロースアセテート濃度(重量%):絶乾セルロースアセテート重量(g)/セルロースアセテート溶液全体重量(g)×100
絶乾セルロースアセテート重量(g):セルロースアセテートの重量(g)×(1−含水率(%)/100)
含水率(%):赤外線水分計 METTLER TOLEDO HB43
(カルシウム含量およびマグネシウム含量)
本開示のセルロースアセテートに含まれるカルシウムおよびマグネシウムは、セルロースアセテート製造時に使用される中和剤、安定剤、または洗浄水に由来する部分が多く、例えば、セルロースアセテートフレーク表面への付着、セルロース繊維に含まれるカルボキシル基や製造時に形成された硫酸エステル部位との静電相互作用により存在している。
本開示に係るセルロースアセテートは、カルシウム含量が40ppm以上80ppm以下であることが好ましく、45ppm以上75ppm以下であることがより好ましく、45ppm以上70ppm以下であることがさらに好ましく、60ppm以上70ppm以下であることが最も好ましい。カルシウム含量が少なすぎるとセルロースアセテートの耐熱性が悪化する傾向があり、多すぎると色相が悪化する傾向があるためである。
本開示に係るセルロースアセテートは、マグネシウム含量の上限値としては、5ppm以下であることが好ましく、4ppm以下であることがより好ましく、3ppm以下であることがさらに好ましい。またマグネシウム含量の下限値としては、1ppm以上であることが好ましく、2ppm以上であることがより好ましい。マグネシウム含量が少なすぎるとセルロースアセテートの耐熱性が悪化する傾向があり、多すぎると色相が悪化する傾向があるためである。
セルロースアセテートのカルシウム含量およびマグネシウム含量は、それぞれ以下の方法により測定することができる。
未乾燥試料3.0gをルツボに計量し、電熱器上で炭化させた後、750〜850℃の電気炉で2時間程度灰化させる。約30分放冷した後、0.07%の塩酸溶液25mLを加え、220〜230℃で加熱溶解させる。放冷後、溶解液を200mLまで蒸留水でメスアップし、これを検液として標準液と共に原子吸光光度計を用いて吸光度を測定して、検液のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求め、以下の式で換算して、試料のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求めることができる。なお、試料中の水分は、例えばケット水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて測定することができる。ケット水分計のアルミ受け皿に含水状態の試料約2.0gを乗せ、重量が変化しなくなるまで120℃で加熱することで加熱前後の重量変化から試料中の水分(重量%)が算出できる。
Figure 0006820858
(6%粘度)
本開示に係るセルロースアセテートは、6%粘度が60mPa・s以上であることが好ましく、80mPa・s以上であることがより好ましく、90mPa・s以上であることがさらに好ましい。また上限値としては、160mPa・s以下、130mPa・s以下、100mPa・s以下であってよい。
6%粘度が60mPa・s未満であると、セルロースアセテートの分子量も小さくなりすぎ、成形体にした場合にその機械的強度(特に脆性)に劣る。また、また、6%粘度が160mPa・sを超えると、当該セルロースアセテートの製造工程においてセルロースアセテートを含む混合液を沈殿槽へラインを通じて送ると、そのライン中でセルロースアセテートが閉塞しやすく、セルロースアセテートの生産効率が低下してしまう。さらに、得られるセルロースアセテートを繊維、フィルム等の成形体とする成形工程において、メチレンクロライドやアセトン等の溶剤に溶解した溶液(言い換えれば、ドープ)とするところ、この溶液(ドープ)が、濾材を閉塞したりし易いため、これら成形体の生産効率が低下する場合がある。
6%粘度は、乾燥試料3.00gを、95%アセトン水溶液39.90gで溶解させた6wt/vol%の溶液をオストワルド粘度計を使用して測定した粘度である。
(ろ過度)
後述するセルロースアセテートの製造方法または製造装置によれば、原料となるパルプに含まれるヘミセルロース成分が分解されにくいため、ろ過性にも優れたセルロースアセテートを得ることができる。本開示に係るセルロースアセテートのろ過度KWとしては、400ml−1を有することができ、200ml−1であることがより好ましく、100ml−1であることがさらに好ましい。ろ過度KWが上記範囲であることにより、例えば本開示のセルロースアセテートを紡糸するような場合に、紡糸工程において糸切れが低減されるため好ましい。
ろ過度は、以下の方法により測定することができる。95%アセトン水溶液に、20重量%濃度となるように溶解したセルロースアセテート溶液を30℃、一定圧力(2kgf/cm)下で、所定のろ布金巾(直径15mm、ろ過面積1.77cm)に通し、ろ過する。この時、ろ過開始後20分までのろ過量をP(ml)、20分より60分までのろ過量をP(ml)として測定し、下記式によりろ過度KW(ml−1)を算出する。
KW=〔(2−P/P)/(P+P)〕×10
ここで、ろ過度KWは、上記セルロースアセテート溶液中の不溶解成分量の多少を示していることから、ろ過性の指標となる。上記式に従えば、KW値が小さい程、溶液の不溶解成分量が少なく、セルロースアセテートのろ過性が良好であることを示す。
(酢化度)
本開示に係るセルロースアセテートは、酢化度が51%以上62%以下の範囲であることが好ましく、51%以上58%以下の範囲であることがより好ましく、54%以上58%以下の範囲であることがさらに好ましい。酢化度は、保持時間により調整することができる。ここで、保持時間は、熟成工程の昇温終了から加水分解反応完了までの時間をいう。保持時間が長いと色相は悪化傾向になる。
酢化度を上記範囲にする場合、後述する本開示のセルロースアセテートの製造方法のセルロースアセテートを加水分解する工程において、加水分解温度、及び加水分解時間を既知の手法、例えばたセルロースアシレートなどのセルロースエステルの場合、「繊維素系樹脂」(宇多田和夫、丸澤廣著、日刊工業新聞社発行)に記載の方法などに従い調整することにより、任意の酢化度に調製することができる。
ここで、酢化度とは、セルロース単位重量当たりの結合酢酸の重量百分率を意味する。酢化度は、ASTM-D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)における酢化度の測定および計算に従う。具体的には、以下のようにして求めることができる。乾燥したセルロースアセテート1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定する。また、上記と同様の方法でブランク試験を行い、下記式に従って酢化度を算出する。
酢化度(%)=[6.5×(B−A)×F]/W
(式中、Aは試料での1N−硫酸の滴定量(ml)、Bはブランク試験での1N−硫酸の滴定量(ml)、Fは1N−硫酸の濃度ファクター、Wは試料の重量を示す)。
[セルロースアセテートの製造]
本開示のセルロースアセテートの製造方法について詳述する。木材パルプを解砕する工程(1)、前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)、前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)、前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(4)、および前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)を有し、前記加水分解工程(4)において、前記加水分解反応系内の酸素濃度を3%以下とするものである。本開示のセルロースアセテートは、上記の製造方法により製造することができる。なお、一般的なセルロースアセテートの製造方法については、「木材化学」(上)(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。
(木材パルプ)
本開示のセルロースアセテートの原料となるセルロース源として、低品位の木材パルプなどヘミセルロース成分であるキシロースが含まれるものを使用する。本明細書において、パルプまたはセルロースは、ヘミセルロースなどのセルロース以外の異成分を含有するものを意味する。
木材パルプとしては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプが挙げられる。例えば、針葉樹パルプとしては、例えば、トウヒ、マツ、ツゲ等から得られる針葉樹パルプが挙げられる。広葉樹パルプとしては、例えば、ユーカリ、アカシア等が挙げられる。これらのパルプは単独で又は二種以上組み合わせてもよく、例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用してもよい。
木材パルプのα−セルロース含有率が低い場合でも本開示のセルロースアセテートの製造方法により吸光度法色相を向上させることができるが、85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが最も好ましい。α−セルロース含有率が、上記範囲であれば、吸光度法色相が1.8cm−1未満のセルロースアセテートが得られ易い。
α−セルロース含有率は、以下のようにして求めることができる。重量既知のパルプを25℃で17.5%と9.45%の水酸化ナトリウム水溶液で連続的に抽出し、その抽出液の可溶部分に対して重クロム酸カリウムで酸化し、酸化に要した重クロム酸カリウムの容量からβ,γ−セルロースの重量を決定する。初期のパルプの重量からβ,γ−セルロース重量を引いた値を、パルプの不溶部分の重量、α−セルロースの重量とする(TAPPI T203)。初期のパルプの重量に対する、パルプの不要部分の重量の割合が、α−セルロース含有率(重量%)である。
木材パルプは、シート状のものを用いることができる。この場合、シートの坪量が300g/m以上850g/m以下で密度が0.40g/m以上0.60g/cm以下、破裂強度が50KPa以上1000KPa以下のものであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
(解砕)
本開示のセルロースアセテートの製造方法は、木材パルプを解砕する工程を有する。これにより、以降の工程で反応が効率的に均一に進み、取扱いも容易になる。解砕工程は、特に、木材パルプがシート状の形態で供給されるような場合に有効である。
木材パルプを解砕する工程(1)において、木材パルプを解砕する方法としては、湿式解砕法と乾式解砕法とがある。湿式解砕法は、パルプシートなどの木材パルプに水または水蒸気などを添加して解砕する方法である。湿式解砕法としては、例えば、蒸気による活性化と反応装置中での強い剪断攪拌を行う方法や、希酢酸水溶液中で離解してスラリーとした後、脱液と酢酸置換を繰り返す、いわゆるスラリー前処理を行う方法等が挙げられる。また、乾式解砕法は、パルプシートなどの木材パルプを乾燥状態のまま解砕する方法である。乾式解砕法としては、例えば、ピラミッド歯を有するディスクリファイナーで粗解砕したパルプを、線状歯を有するディスクリファイナーで微解砕する方法や、内壁にライナーを取付けた円筒形の外箱と、外箱の中心線を中心として高速回転する複数の円板と、各円板の間に前記中心線に対して放射方向に取り付けられた多数の翼とを備えたターボミルを用い、翼による打撃と、ライナーへの衝突と、高速回転する円板、翼及びライナーの三者の作用で生じる高周波数の圧力振動とからなる三種類の衝撃作用により、外箱の内部に供給される被解砕物を解砕する方法等が挙げられる。
本開示のセルロースアセテートの製造方法においては、これらの解砕方法をいずれも適宜使用することができるが、特に、ディスクリファイナーおよびターボミルを順に用いて二段解砕する方法が、得られるセルロースアセテートのろ過度が向上するため好ましい。一般的技術では、解砕されたかさ高いパルプシートの解砕物は空気搬送される。本開示の製造方法においては、このパルプシートの解砕物の搬送について空気ではなく不活性ガスを用いることでも良い。パルプの解砕物は嵩高いものであり、空気搬送された場合には、その解砕物中に多量の空気を含むことになるが、不活性ガスで搬送することにより無酸素状態となる。これによりその後の工程において、酸素濃度を低下させ、3%以下とし易くなる。
(前処理)
前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)において、酢酸は、例えば、木材パルプ100重量部に対して、好ましくは10重量部以上500重量部以下を添加することにより接触させることができる。この時、酢酸は、99重量%のものを用いることができる。
木材パルプと酢酸とを接触させる方法としては、例えば、酢酸もしくは1〜10重量%の硫酸を含む酢酸(含硫酢酸)を一段階で添加する方法、または、酢酸を添加して一定時間経過後、含硫酢酸を添加する方法、含硫酢酸を添加して一定時間経過後、酢酸を添加する方法等の酢酸または含硫酢酸を2段階以上に分割して添加する方法等が挙げられる。添加の具体的手段としては、噴霧してかき混ぜる方法が挙げられる。
そして、前処理活性化は、パルプに酢酸及び/または含硫酢酸を添加した後、17℃以上40℃以下の条件下で0.2時間以上48時間以下静置する、または17℃以上40℃以下の条件下で0.1時間以上24時間以下密閉及び攪拌すること等により行うことができる。
前処理工程(2)において、前処理反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましい。より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
この場合、前処理反応系内に不活性ガスを導入することにより、酸素濃度を調整することが好ましい。不活性ガスを導入する方法の一例を示す。木材パルプと酢酸を接触させる前に、水封した前処理系内に一定流量の不活性ガスを前処理反応系内に通気させることにより、前処理反応系内の酸素濃度が3%以下、好ましくは1%以下とすることができる。
本開示において、不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス等を用いることができる。これらの中でも特に、安価で入手が容易であるため窒素ガスが好ましい。
前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する際には、予め解砕した木材パルプを酸素濃度3%以下の環境下に置いておき、酢酸と接触させることが好ましい。
ここで、本開示のセルロースアセテートの製造方法において、酸素濃度は、酸素濃度計を用いて測定することができる。
無水酢酸、酢酸および触媒等の予冷に用いる予冷機内においても酸素濃度を3%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましい。後に続くアセチル化工程(3)において、アセチル化反応系内への酸素の混入が低減でき、より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。上記前処理工程(2)で用いたのと同様の方法で予冷機内に不活性ガスを導入することにより、酸素濃度を下げることができる。
(アセチル化)
前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)において、アセチル化は、具体的には、例えば、酢酸、無水酢酸および硫酸からなる混合物に、前処理活性化したパルプを添加すること、または前処理活性化したパルプに、酢酸と無水酢酸の混合物および硫酸を添加すること等により開始することができる。ここで、酢酸は、99重量%以上のものを用いることができる。硫酸は、98重量%以上の濃度のものを用いることが好ましい。
酢酸と無水酢酸との混合物を調整する場合、酢酸と無水酢酸とが含まれていれば、特に限定されないが、酢酸と無水酢酸との割合としては、酢酸300重量部以上600重量部以下に対し、無水酢酸200重量部以上400重量部以下であることが好ましく、酢酸350重量部以上530重量部以下に対し、無水酢酸240重量部以上280重量部以下であることがより好ましい。
パルプ、酢酸と無水酢酸との混合物、および硫酸の割合としては、パルプ100重量部に対して、酢酸と無水酢酸の混合物は500重量部以上1000重量部以下であることが好ましく、硫酸は5重量部以上15重量部以下であることが好ましく、7重量部以上13重量部以下であることがより好ましく、8重量部以上11重量部以下であることがさらに好ましい。
アセチル化工程(3)は、以下のように減圧条件下または常圧条件下にて行う場合があるため、それぞれの場合に分けて述べる。
<減圧条件>
減圧酢化と称するセルロースアセテートの製造方法について述べる。アセチル化工程(3)においては、少なくともアセチル化反応開始時にアセチル化反応系内の真空度を70Torr(9.3kPa)以下とすることが好ましい。下限値は特に限定されないが、例えば60Torr(8.0kPa)以上である。これにより、アセチル化反応のため無水酢酸の溶媒として酢酸用いた場合に、酢酸の蒸発を促してアセチル化反応で消費された無水酢酸の濃度を高め、アセチル化反応を促すことができ、無水酢酸および酢酸などの溶媒の使用率を低減することができ、セルロースアセテートの生産性を向上することができる。この方法では、アセチル化反応に伴う温度上昇を抑えるための酢酸、無水酢酸の混合溶液の冷却が不要になる利点がある。また、アセチル化反応系内の真空度を高め、減圧することにより、酢化反応系内の酸素濃度を低下させ易い。
少なくともアセチル化反応開始時から、セルロースアセテートが不均一から均一状態に変換するまで、アセチル化反応系内の真空度を70Torr(9.3kPa)以下とすることがより好ましい。アセチル化反応に伴う温度上昇を抑えるためである。
アセチル化反応系内の真空度を70Torr(9.3kPa)以下とする場合のアセチル化工程(3)の手順の一例を示す。前処理工程(2)により前処理活性化したパルプと、酢酸および無水酢酸からなる混合物とを接触させた後、アセチル化反応系内を真空ポンプなどを用いて減圧にして、真空度を70Torr(9.3kPa)以下に調節する。続いて、硫酸と酢酸とを含有する混合物を添加してアセチル化反応を開始し、蒸発する酢酸、無水酢酸の混合物の蒸気をコンデンサで凝縮して、反応系外に留出させる。これにより、反応生成物は徐々に濃縮され、所定量(目的の反応率に相当する留出量)留出したとき、もしくは留出する液がほとんど無くなったとき反応系内を常圧にし、常圧時もしくは反応系内の温度上昇が止まったときから1分以上30分以下の間保持する。
アセチル化反応系内の真空度を70Torr(9.3kPa)以下とする場合、アセチル化反応系内の最高到達温度としては、55℃以上75℃以下とすることが好ましく、60℃以上70℃以下とすることがより好ましい。得られるセルロースアセテートのろ過度も向上することができる。
アセチル化反応系内の最高到達温度を55℃以上75℃以下とする場合、あらかじめ冷却しない酢化混液に木材パルプを投じて撹拌することにより、無水酢酸の反応熱により昇温させることにより実現することができる。具体的には、例えば、木材パルプ100重量部に対して、200重量部以上400重量部以下の無水酢酸と5重量部以下の酸性触媒(例えば硫酸)を含む混合物を添加し、20分以上40分以下の時間を要して最終55℃以上75℃以下の温度に到達させることができる。
アセチル化反応にかかる時間は、40分以上60分以下であることが望ましい。本開示において、アセチル化にかかる時間とは、パルプが、溶媒、無水酢酸および触媒と接触して反応を開始した時点から中和剤投入までの時間をいう。
真空度70Torr(9.3kPa)以下でアセチル化反応を進行した後、アセチル化反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましい。アセチル化反応系内のセルロースアセテート(酢酸ドープ)中に、酸素が巻き込まれることを防止することができ、より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。反応系内を常圧に戻す際、でアセチル化反応系内に不活性ガスを導入することにより、酸素濃度を下げることができる。
<常圧条件>
酢化法と称するセルロースアセテートの製造方法について述べる。常圧条件で酢化する場合には、反応温度を制御するために、添加する無水酢酸、酢酸を低温する必要がある。アセチル化工程(3)において、常圧条件下にてアセチル化をする場合、アセチル化反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましい。より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
アセチル化反応系内のセルロースアセテート(酢酸ドープ)中に、酸素が巻き込まれることを防止することができ、より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。この場合、前処理工程(2)で用いたのと同様の方法で、アセチル化反応系内に不活性ガスを導入することにより酸素濃度を下げることができる。
アセチル化反応系内の最高到達温度としては、中温度領域であることが好ましい。具体的には、38℃以上52℃以下とすることが好ましく、42℃以上50℃以下とすることがより好ましい。より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
アセチル化反応系内の最高到達温度が中温度領域となるように、アセチル化を行う場合は、無水酢酸を予冷する工程を有することが好ましい。また、無水酢酸以外に酢酸および触媒等を木材パルプと接触させる場合は、それらを全て予冷しておくことがより好ましい。無水酢酸および無水酢酸以外の酢酸および触媒等の混合溶液を調製してから、予冷してもよい。予冷温度は、−25℃以上−10℃以下であることが好ましく、−22℃以上−20℃以下であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、アセチル化工程(3)において反応系内の最高到達温度を、中温度領域(38℃以上52℃以下程度)とすることができ、より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
例えば、溶媒として酢酸、アセチル化剤として無水酢酸、触媒として硫酸を含む酢化混液を、予め−25℃以上−10℃以下に冷却しておき、当該酢化混液に木材パルプを投じて撹拌する。無水酢酸の量はこれと反応するセルロース及び系内に存在する水分量よりかなり過剰に使用する。これにより、冷却された酢化混液は無水酢酸の反応熱により昇温するが最高到達温度を38℃以上52℃以下とすることができる。撹拌条件下、外部から反応系の内外には一切の熱は加えず行うこと、または併せて、撹拌条件下、反応系を冷媒により冷却して中温に調整することもできる。
アセチル化工程(3)において用いる反応器としてはセルロースアセテートを製造するときに通常使用される公知の反応器(酢化反応器)が使用出来るが、好ましくは混和型反応器である。
また、アセチル化反応にかかる時間は、60分以上90分以下であることが望ましい。ここで、アセチル化にかかる時間とは、パルプが、溶媒、無水酢酸および触媒と接触して反応を開始した時点から中和剤投入までの時間をいう。
アセチル化反応初期は固液不均一系での反応となり解重合アセチル化反応を抑えつつアセチル化反応を進ませ未反応物を減らすため可能な限り時間を掛けて昇温するのが良いが、生産性の観点からは、45分以下、さらに好ましくは30分以下で昇温を行うことが好ましい。
(加水分解)
前記アセチル化により得られたセルロースアセテートは、ほぼ全ての水酸基がアセチル基に置換されている状態であり、これを所望の置換度に調整するために加水分解を行う必要がある。加水分解する工程(4)においては、前記アセチル化反応により、触媒として硫酸を用いた場合、当該硫酸は、硫酸エステルとしてセルロースに結合しているため、前記アセチル化反応終了後、熱安定性向上のためこの硫酸エステルを加水分解して除去する目的もある。
アセチル置換度の調整は、アセチル化反応停止のために水(水蒸気を含む)、希酢酸、または、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム若しくは亜鉛等の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物若しくは酸化物などからなる中和剤を添加することにより行うことができる。そして、水は、セルロースアセテートを含む反応混合物中に存在する無水酢酸と反応してカルボン酸を生成させ、アセチル置換度を調整した後のセルロースアセテートを含む反応混合物の水分量がカルボン酸に対し5mol%以上70mol%以下になるように添加することができる。5mol%未満であると、加水分解反応が進まず解重合が進み、低粘度のセルロースアセテートとなり、70mol%を超えると、アセチル化反応終了後のセルロースアセテート(加水分解前のセルロースアセテート)が析出し加水分解反応系から出るため、析出したセルロースアセテートの加水分解反応が進まなくなる。
なお、希酢酸とは、1重量%以上50重量%以下の酢酸水溶液をいう。また、酢酸マグネシウム水溶液を用いる場合は、当該水溶液は5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
また、セルロースアセテートを含む反応混合物における硫酸イオン濃度が高いと効率よく硫酸エステルを除去することができないため、酢酸マグネシウム等の酢酸のアルカリ土類金属塩の水溶液又は酢酸−水混合溶液を添加して不溶性の硫酸塩を形成させることにより、硫酸イオン濃度を低下させることが好ましい。セルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対し、セルロースアセテートを含む反応混合物の硫酸イオンを1重量部以上6重量部以下に調整することが好ましい。なお、例えば、セルロースアセテートを含む反応混合物に酢酸マグネシウムの酢酸−水混合溶液を添加することにより、アセチル化反応の停止とセルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対する硫酸イオンの重量比の低下とを同時に行うこともできる。
加水分解工程(4)においては、加水分解反応系内の酸素濃度を3%以下とする。より好ましくは1%以下である。これにより、低品位のパルプを用いた場合でも、色相に優れるセルロースアセテートを得ることができる。特に、ヘミセルロース成分が分解されにくく、ろ過性に優れたセルロースアセテートを得ることができるため、着色物質が少なく、色相に優れたセルロースアセテートを得ることができる。また、余分な有機溶媒を使用する必要がなく、生産性を阻害しない点においても優れる。
加水分解工程(4)においては、水蒸気を用いた高温で加水分解を行う方法がある(高温熟成)。この場合においては、少なくとも水蒸気を吹き込む前までに、加水分解反応系内の酸素濃度を3%とすることが好ましい。高温下でヘミセルロースが分解する場合に酸素が存在すると色相を悪化させるので、これを防止するためである。
したがって本開示のセルロースアセテートの製造方法では加水分解反応系内においても、不活性ガスを導入することにより、加水分解反応系内の酸素濃度を3%以下とすることが好ましく、1%以下とすることがより好ましい。この場合の加水分解工程(4)の手順の一例を示す。
アセチル化工程(3)が終了した完全置換セルロースアセテートと酢酸を含む反応混合物に中和剤の添加を始めた後、加水分解反応系内が10kg/cm以下に昇圧されるまで(下限値は、例えば4kg/cm)、不活性ガスを封入し、解圧して大気圧と同じ、または微加圧とし、この昇圧および解圧する作業を反応系内の酸素濃度が3%以下、好ましくは1%以下になるまで繰り返し行う。あるいは前処理工程(2)で用いたのと同様の方法で加水分解反応系内に不活性ガスを導入することにより酸素濃度を下げてもよい。
加水分解工程(4)は、反応系内の温度が常温(中温)または高温のいずれにおいても行うことができる。常温において行う加水分解は、常温熟成と称し、反応系内の最高到達温度が55℃以上100℃未満である場合をいい、好ましくは55℃以上90℃未満である。高温において行う加水分解は、高温熟成と称し、反応系内の最高到達温度が100℃以上200℃以下の範囲をいう。高温熟成においては、水蒸気を用いて系内の温度を上昇させる。
また、セルロースアセテートの加水分解は、常温(中温)下で行うことが色相の点で好ましい。すなわち加水分解反応が充分に進行すること、および高温に比べて低品位のパルプに起因するヘミセルロース成分の解重合が生じにくく、より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
尚、加水分解工程を高温下で行うと、常温(中温)に比べ色相は悪化するが、ヘミセルロースを化学的に微細化できるため、ろ過度は良化する。しかし、本開示のセルロースアセテートの製造方法および製造装置を用いれば、加水分解工程を高温で行った場合でも色相の悪化を最小限度に抑制できる。
(沈殿)
前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)においては、セルロースアセテートを含む混合物と水又は希酢酸等の沈澱剤とを混合し、生成したセルロースアセテート(沈澱物)を分離して沈殿物を得、水洗により遊離の金属成分や硫酸成分などを除去することができる。ここで、セルロースアセテートの沈殿物を得る際に用いる沈澱剤としては、希酢酸が好ましい。
特に、前記加水分解化工程(4)の後(完全中和の後)、セルロースアセテートの熱安定性を高めるため、水洗の際に、その水に安定剤として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加することが好ましい。
セルロースアセテートを沈殿工程(5)の後、セルロースアセテートを乾燥させてもよい。乾燥の方法としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、送風や減圧などの条件下乾燥を行うことができる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥が挙げられる。
[セルロースアセテートの製造装置]
セルロースアセテートの製造装置について詳述する。本開示のセルロースアセテートの製造装置は、木材パルプを解砕する解砕機、前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する前処理機、前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する酢化反応器、前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する熟成槽、前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する沈澱槽、前記熟成槽内に不活性ガスを導入する手段、前記熟成槽内の酸素を前記熟成槽外に出すが、前記熟成槽内には酸素を逆流させない密封(気密)手段、および前記熟成槽内の圧力を調整する圧力調整器を備える。
前記熟成槽内に不活性ガスを導入する手段、前記熟成槽内の酸素を前記熟成槽外に出すが、前記熟成槽内には酸素を逆流させない密封手段、および前記熟成槽内の圧力を調整する圧力調整器を用いて、前記熟成槽内の酸素濃度を3%以下、好ましくは1%以下に調整する。熟成槽内の酸素濃度の測定は、熟成槽と密封手段とを結ぶエアリングラインに酸素濃度計を設置することにより行うことができる。常温で加水分解する場合には、密封手段として水封器を用いることは有効な方法である。
本開示のセルロースアセテートの製造装置は、解砕機、前処理機、酢化反応器、熟成槽、および沈澱槽の他、酢化反応器内で、木材パルプと接触させる無水酢酸の他、酢酸および触媒等を予冷しておく予冷機を備えていてもよい。前記予冷機は、酢化反応器に接続され、予冷した無水酢酸等を酢化反応器に導入することができる。また、解砕機の気体搬送装置に不活性ガスを導入できる装置を設けていても良い。
また、本開示のセルロースアセテートの製造装置は、前記酢化反応器の真空度を高める真空装置を備えることが好ましい。これにより、減圧酢化が可能となる。
本開示のセルロースアセテート製造装置において、解砕機、前処理機、酢化反応器、熟成槽および沈殿槽のいずれの内部にも不活性ガスを導入する手段、密封手段および/または圧力調整器を備えることが望ましい。なお、密閉手段としては、例えば水封器が挙げられる。これにより、反応系全体の酸素濃度を下げることができ、非常に色相に優れたセルロースアセテートを製造することができる。この場合、解砕機、前処理機、酢化反応器、熟成槽および沈殿槽を反応混合物が、できる限り系外の酸素に触れないように連続移動可能に接続されることが望ましい。
また、解砕機、前処理機、酢化反応器、および沈殿槽の各内部の酸素濃度の測定も、熟成槽と同様に、解砕機、前処理機、酢化反応器、および沈殿槽のそれぞれと密封手段とを結ぶエアリングラインに酸素濃度計を設置することにより行うことができる。
以下、本開示に係るセルロースアセテートの製造方法および製造装置の実施形態について、図面を参照して詳述する。
[実施態様1]減圧酢化−高温熟成
図1に示すような製造装置を用いて、セルロースアセテートを製造することができる。前処理機1、酢化反応器2、および熟成槽3には、それぞれ圧力調整器10が接続されており、前処理機1には、圧力調整器10および/または水封器7が接続され、圧力調整器10により各内部を微加圧にし不活性ガスを封入することにより、製造装置外からの酸素の逆拡散を防止している。前処理機1に入れるパルプは、解砕機(図示しない)で木材パルプを解砕して得られたフラッフ状のパルプである。フラッフ状のパルプを前処理機1に入れ、撹拌させながらパルプと酢酸を接触させてパルプを前処理活性化する。なお、図1中のMは、モーターを示し、各装置の反応混合物の撹拌に用いる。この酢酸を含浸させたパルプ(セルロース)を酢化反応器2に撹拌させながら入れ、無水酢酸−酢酸溶液を酢化反応器2に仕込む。続いて、酢化反応器2を真空ポンプ5により減圧して真空度を70Torr(9.3kPa)以下にした後、硫酸−酢酸溶液を酢化反応器2に仕込み、アセチル化反応を開始させる。反応系は、沸騰状態となり、酢酸と無水酢酸との混合蒸気がコンデンサ4により凝縮され、反応系外に留出する。一定の留出液が留出した時点で、真空ポンプ5を停止する。酢化反応器2の真空度を高め、減圧することで、アセチル化反応中の酢酸の蒸発潜熱により反応熱が除熱されるが、後述する中温下でのアセチル化に比べ反応系の温度が高くなる。このため、アセチル化時間を短くすることができ、生産性を向上することができる。酢酸マグネシウム水溶液を酢化反応器2に添加混合し、系内の硫酸を完全に中和した後、酢化反応器2内に窒素を入れて大気圧に戻す。酢化反応器2中の反応混合物を熟成槽3に移し、密閉下、熟成槽3に窒素を封入して昇圧し、解圧する作業を酸素濃度が3%以下になるまで実施する。ここで、酸素濃度は、酸素濃度計を用いて測定することができ、酸素濃度計は、熟成槽と密封器を結ぶエアリングラインに設けることができる。水を熟成槽3内に入れ、高圧(例えばゲージ圧5kg/cm)の水蒸気を撹拌下に熟成槽3内に吹き込み、一定時間(40分以上60分以下)かけて昇温し、高温(140℃以上200℃以下)を30分以上50分以下の間保った後、熟成槽3内の反応物を常圧に徐々に戻しセルロースアセテートの加水分解反応を行う。反応混合物を激しい撹拌の下に、希酢酸水溶液を加えて、粒状セルロースアセテートとする。生成したセルロースアセテート(沈澱物)を分離して沈殿物を得、十分水洗しする。水洗の際は、遊離の金属成分や硫酸成分などを除去してセルロースアセテートの熱安定性を高めるため、安定剤として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物を水に添加する。水洗の後、脱水、乾燥しセルロースアセテートを得ることができる。
[実施態様2]常圧酢化−常温熟成
図2に示すような製造装置を用いて、セルロースアセテートを製造することができる。前処理機1、酢化反応器2、熟成槽3および予冷機6には、それぞれ圧力調整器10および水封器7が接続され、圧力調整器10により各内部を微加圧にし不活性ガスを封入することにより、製造装置外からの酸素の逆拡散を防止している。前処理機1に入れるパルプは、解砕機(図示しない)で木材パルプを解砕して得られたフラッフ状のパルプである。フラッフ状のパルプを前処理機1に入れ、撹拌させながらパルプと酢酸を接触させてパルプを前処理活性化する。なお、図2中のMは、モーターを示し、各装置の反応混合物の撹拌に用いる。また、予冷機6に無水酢酸−酢酸溶液、硫酸、酢酸を投入し、予め−25℃以上−10℃以下に冷やしておく。予冷機6の溶液を酢化反応器2に仕込んだ後、酢酸を含浸させたパルプ(セルロース)を、酸素濃度3%以下、好ましくは1%以下となっている酢化反応器2に撹拌しながら仕込む。ここで、酸素濃度は、酸素濃度計を用いて測定することができ、図示しないが、酸素濃度計は、水封器7と解砕機(図示しない)、前処理機1、酢化反応器2、熟成槽3および予冷機6とを結ぶ経路中にそれぞれ設けることができる。酢化反応熱により、反応系の最高到達温度を38℃以上52℃以下に、およびその最高到達温度に到達するまでの時間を調整する。最高到達温度に到達した後、一定時間(30分以上50分以下)アセチル化反応を継続する。酢酸マグネシウム水溶液を酢化反応器2に添加混合し、系内の硫酸を一部中和する。酢化反応器2中の反応混合物を酸素濃度が3%以下、好ましくは1%以下になっている熟成槽3に移す。高圧(例えばゲージ圧5kg/cm)の水蒸気を撹拌下に熟成槽3内に吹き込み、一定時間(50分以上60分以下)をかけて常温(中温)(55℃以上110℃未満)に到達させる。また、昇温中に酢酸マグネシウム水溶液を添加混合し、系内の硫酸一部を中和する。一定時間(60分以上70分以下)常温(中温)を保った後、酢酸マグネシウム水溶液を添加混合し、系内の硫酸を完全に中和する。これによりセルロースアセテートの加水分解反応を行う。そして、熟成槽3内の反応混合物を激しい撹拌の下に、希酢酸水溶液を加えて、フレークス状セルロースアセテートとする。分離機(図示しない)で分離した後、十分水洗して取り出し乾燥する。これによりセルロースアセテートを得ることができる。
本開示のセルロースアセテート、セルロースアセテートの製造方法により製造されたセルロースアセテート、およびセルロースアセテートの製造装置を用いて製造されたセルロースアセテートは、例えば、衣料用繊維、タバコ・フィルター・チップ、プラスチックス、フィルム、塗料等広範囲に使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。なお、以下「部」とは特に断りのない限り、「重量部」を意味する。
後述する実施例および比較例に記載の各物性は以下の方法で評価した。
<α−セルロース含有率>
重量既知のパルプを25℃で17.5%と9.45%の水酸化ナトリウム水溶液で連続的に抽出し、その抽出液の可溶部分に対して重クロム酸カリウムで酸化し、酸化に要した重クロム酸カリウムの容量からβ,γ−セルロースの重量を決定した。初期のパルプの重量からβ,γ−セルロース重量を引いた値を、パルプの不溶部分の重量、つまりα−セルロースの重量とした(TAPPI T203)。初期のパルプの重量に対する、パルプの不溶部分の重量の割合が、α−セルロース含有率(重量%)である。
<吸光度法色相>
(1)セルロースアセテートの含水率測定
赤外線水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて、セルロースアセテートの含水率を測定し、記録用紙に記録した。
(2)吸光度の測定
まずサンプル調製を行った。1)三角フラスコにDMSO95.00gを計量した。2)三角フラスコにスターラー回転子を入れ、セロファン、シリコン栓をして攪拌した。3)セルロースアセテートサンプル5.00gを薬包紙等に計量し攪拌している三角フラスコ内に添加した。4)セロファン、シリコン栓をしてスターラーで1hr攪拌した。5)回転振盪機(高速)で2hr振盪した。6)回転振盪機から取り外した後30分間静置し脱泡し、サンプルを調製した。
次に、吸光度の測定を行った。サンプル調製後直ちに、つまり回転振盪機から取り外した後30分間静置し脱泡した後直ちに、島津製作所社製UV−1700にて波長λ=430nmおよび740nmの吸光度を測定した。具体的には、1)測定する30分以上前に装置の電源を入れ、装置が安定化したことを確認した。2)10cmガラスセルにレファレンス、ブランク液としてDMSOを入れベースライン補正を行った。3)三角フラスコ内のサンプルを気泡が発生しないように10cmガラスセルに移した。4)手前の測定側セルをサンプルが注入されたガラスセルに入れ替えた。5)スタートボタンを押して測定を開始した。6)表示された測定結果を記録用紙に記録した。
(3)吸光度法色相
以下の計算式で得られた数値をセルロースアセテートのその溶媒における「吸光度法色相」値とした。
吸光度法色相(cm−1)=吸光度(A−B)/セル厚(cm)/セルロースアセテート濃度(重量%)×100
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV−1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
セルロースアセテート濃度(重量%):絶乾セルロースアセテート重量(g)/セルロースアセテート溶液全体重量(g)×100
絶乾セルロースアセテート重量(g):セルロースアセテートの重量(g)×(1−含水率(%)/100)
含水率(%):上記赤外線水分計で測定した値
<キシロースのモル含量>
セルロースサンプルの加水分解過程、水酸化ナトリウムによる中和過程、フィルターによるろ過過程を経た後、HPLC(LC−20Aシステム)を用いて、得られたデータからキシロースのみならずその他の構成糖の割合を算出し、5炭糖と6炭糖の合計を基準として、キシロースのモル含量の割合(mol%)を求めた。これをキシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合(mol%)とした。
HPLC測定条件は、以下のとおりである。
カラム:TSK−gel Sugar AXG 4.6mmI.D.×15cm(東ソー株式会社)
カラム温度:70℃
移動相:0.5mol/L ホウ酸カリウム緩衝液、PH8.7
移動相流速:0.4mL/min
ポストカラム標識:反応試薬:1w/v%アルギニン・3w/v%ホウ酸
反応試薬流速:0.5mL/min
反応温度:150℃
検出波長:Ex.320nm Em.430nm
<カルシウム含量およびマグネシウム含量>
未乾燥試料3.0gをルツボに計量し、電熱器上で炭化させた後、750℃以上850℃の電気炉で2時間程度灰化させた。約30分放冷した後、0.07%の塩酸溶液25mLを加え、220℃以上230℃以下で加熱溶解させた。放冷後、溶解液を200mLまで蒸留水でメスアップし、これを検液として標準液と共に原子吸光光度計を用いて吸光度を測定して、検液のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求め、以下の式で換算して、試料のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求めた。なお、試料中の水分は、例えばケット水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて測定することができる。ケット水分計のアルミ受け皿に含水状態の試料約2.0gを乗せ、重量が変化しなくなるまで120℃で加熱することで加熱前後の重量変化から試料中の水分(重量%)が算出できる。
Figure 0006820858
<6%粘度>
三角フラスコに乾燥試料3.00g、95%アセトン水溶液39.90gを採取し、密栓して約1時間攪拌した。その後、回転振盪機で約1.5時間振盪して完溶させた。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約30分間整温した。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度(mPa・s)を算出した。
6%粘度(mPa・s)=流下時間(s)×粘度計係数
ここで、粘度計係数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求める。
粘度計係数={標準液絶対粘度(mPa・s)×溶液の密度(0.827g/cm3)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数(s)}
<実施例1〜5>
図1に示す反応装置を用いて、表1に記載の各原料を用いてセルロースアセテートを製造した。セルロース原料としてサルファイト法パルプ(含水率約7%)を解砕機(図示しない)でフラッフ状に解砕した。フラッフ状のパルプ100部を前処理機1に入れ、37部の酢酸を用いて前処理活性化(35℃、60分)した。この酢酸を含浸させたパルプを、酢化反応器2に撹拌しながら入れ、45%無水酢酸−酢酸溶液588部を酢化反応器2に仕込み、酢化反応器2を真空ポンプ5により減圧にし、真空度を65Torrに制御した。溶液温度が30℃になったところで、3.0%硫酸−酢酸溶液44部を触媒−酢化剤混合液供給ライン(図示しない)を通じて酢化反応器2に仕込み、アセチル化反応を開始させた。アセチル化反応系は沸騰状態となり、酢酸と無水酢酸との混合蒸気がコンデンサ4により凝縮され、留出し始めた。アセチル化反応温度は沸点に相当する約55℃を維持した。アセチル化反応を開始した後167部の留出液が留出した時点で、真空ポンプ5を停止し、さらに約16分反応を行った。アセチル化反応終了後、11部の24%酢酸マグネシウム水溶液を酢化反応器2に添加混合し、系内の硫酸を完全に中和した。その後、系内濃度を調整するため、150部の75%酢酸水溶液を酢化反応器2に加え3分攪拌した後、酢化反応器2内に窒素を入れて大気圧に戻した。酢化反応器2中の反応混合物を熟成槽3に移した。密閉下、熟成槽3内が4kg/cmに昇圧されるまで窒素を封入し、エアリングラインから解圧する作業を熟成槽3内の酸素濃度が1%以下になるまで実施した。その後、ゲージ圧5kg/cmの水蒸気を撹拌下に吹き込み約60分かけて150℃に到達させた。150℃で約30分間保持した後、熟成槽3内の反応物を大気下に徐々にフラッシュさせて、反応混合物を100℃とした。反応混合物は激しい撹拌の下に、希酢酸水溶液を加えて、フレークス状セルロースアセテートとした。生成したセルロースアセテート(沈澱物)を分離して沈殿物を得、水洗した後、20部の0.1水酸化カルシウム水溶液を添加した。水洗の後、脱水、乾燥しセルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテートおよび各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
<実施例6>
3.0%硫酸−酢酸溶液44部を88部に変更した以外は、実施例1〜5と同様にして、図1に示す反応装置を用いて、表1に記載の各原料を用いてセルロースアセテートを調製した。得られたセルロースアセテートおよび各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
<比較例1〜5>
図1に示す反応装置を用いて、表1に記載の各原料を用いてセルロースアセテートを製造した。酢化反応器2中の反応混合物を熟成槽3に移した後において、密閉下、熟成槽3内が4kg/cmに昇圧されるまで窒素を封入し、エアリングラインから解圧する作業を熟成槽3内の酸素濃度が1%以下になるまで実施する工程を行わなかった以外は、実施例1〜5と同様にしてセルロースアセテートを調製した。得られたセルロースアセテートおよび各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
Figure 0006820858

Claims (7)

  1. 木材パルプを解砕する工程(1)、
    前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)、
    前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)、
    前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(4)、
    および前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)からなり
    前記加水分解工程(4)において、前記加水分解反応系内の酸素濃度を1%以下とする、セルロースアセテートの製造方法。
  2. 前記加水分解工程(4)において、前記加水分解反応系内に不活性ガスを導入することにより、前記加水分解反応系内の酸素濃度を1%以下とする、請求項1に記載のセルロースアセテートの製造方法。
  3. 前記アセチル化工程(3)において、前記アセチル化反応系内の酸素濃度を3%以下とする、請求項1または2に記載のセルロースアセテートの製造方法。
  4. 前記アセチル化工程(3)において、前記アセチル化反応系内に不活性ガスを導入することにより、前記アセチル化反応系内の酸素濃度を3%以下とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアセテートの製造方法。
  5. 前記加水分解工程(4)において、前記加水分解反応系内の温度を100℃以上200℃以下とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースアセテートの製造方法。
  6. 木材パルプを解砕する解砕機、
    前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する前処理機、
    前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する酢化反応器、
    前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する熟成槽、
    前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する沈澱槽、
    前記熟成槽内の圧力が10kg/cm以下になるまで前記熟成槽内に不活性ガスを導入する手段、
    前記不活性ガスを導入した後、解圧する手段、
    前記熟成槽内の酸素を前記熟成槽外に出すが、前記熟成槽内には酸素を逆流させない密封手段、
    および前記熟成槽内の圧力を調整する圧力調整器を備える、セルロースアセテートの製造装置。
  7. 前記酢化反応器内に不活性ガスを導入する手段、
    前記酢化反応器の酸素を前記酢化反応器外に出すが、前記酢化反応器には酸素を逆流させない密封手段、および前記酢化反応器内の圧力を調整する圧力調整器を備える、請求項6に記載のセルロースアセテートの製造装置。
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