JP2010254798A - セルロースエステルの製造方法 - Google Patents

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彰克 木村
Takahisa Okutsu
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Abstract

【課題】工業的に簡便で生産性の高い、セルロースエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】下記計算式(1)で定義される結晶化指数が−0.3〜0.05である低結晶性粉末セルロースと、下記一般式(2)で表されるエステル化合物とを、塩基触媒存在下に反応させる、セルロースエステルの製造方法である。結晶化指数=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕(1)〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕R1COOR2(2)(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数2〜23の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。)
【選択図】なし

Description

本発明はセルロースエステルの製造方法に関する。
セルロースエステルは、フィルム、繊維、コーティング、薬物包埋剤、分離膜等の材料やパーソナルケア等に利用される有益な素材として知られている。
これらセルロースエステルの製造に際し、一般に原料であるセルロースは固体であり、種々の溶媒に対する溶解性も低いため、エステル化剤に対する反応性が極めて乏しいことが知られている。例えば、三酢酸セルロースの製造においては、無水酢酸、氷酢酸、硫酸からなる酢化混液といった特殊な媒体中で、反応の進行とともに媒体へのセルロースの溶解性が向上することを利用して、徐々に媒体へ溶解していきながらセルロースをアセチル化する方法が取られてきた。
また近年、ジメチルスルホキシド/塩化リチウム系といった特殊な溶媒にセルロースが溶解することが見出され、これらの溶媒中での均一反応性を利用したセルロースの研究が行なわれている。例えば、特許文献1には、結晶化度(X線解析によリ算出)が0.6以下であるセルロースを、ジメチルスルホキシド/塩化リチウム溶媒に均一溶解し、塩基共存下、脂肪酸の酸無水物あるいは酸塩化物やヒドロキシカルボン酸の脱水縮合物と反応させる方法が提案され、実施例において、結晶化度が0.11まで低下させたセルロースを用いることが開示されている(特許文献1 実施例5及び9参照)。
特開2003−64184号公報
上記酢化混液を用いる反応は、アセチル化以外には適用できず、硫酸を多量に使用するため、酸によるセルロースの重合度の低下が生じる。また、アセチル基の導入量を制御しようとする場合には、三酢酸セルロースを製造した後、エステルを部分加水分解させる必要があるなど、汎用性が高い製造法とは言えない。
一方、特許文献1に開示された方法では、アセチル化以外の反応も行うことができ、仕込み量によるエステル基導入量の制御も可能であるものの、特許文献1には、塩化リチウムを含まない溶媒には完全には溶解せず、反応は進行しないと記載されている(特許文献1 比較例4参照)。
このように該反応の進行にはセルロースを溶媒に完全に溶解させることが必要であり、セルロースに対し800〜1000質量倍という多量の溶媒が必要になるため、生産性が満足できるものではない。また溶媒中に塩化リチウムが溶解しているため、反応後の溶媒の処理に問題が残る。
本発明は、工業的に簡便で生産性の高い、セルロースエステルの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、結晶性を特定の範囲まで低下させた粉末セルロースを原料として用いれば、塩基触媒存在下における脂肪酸エステル等の特定のエステル化合物とのエステル交換反応が、溶媒に均一溶解させなくても効率的に進行することを見出した。
すなわち、本発明は、下記式(1)で定義される結晶化指数が−0.3〜0.05である低結晶性粉末セルロースと、下記一般式(2)で表されるエステル化合物とを、塩基触媒存在下に反応させる、セルロースエステルの製造方法を提供する。
結晶化指数=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
1COOR2 (2)
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数2〜23の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。)
本発明によれば、工業的に簡便、かつ高い生産性でセルロースエステルを製造することができる。
本発明のセルロースエステルの製造方法においては、下記計算式(1)
結晶化指数=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕 (1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
で定義される結晶化指数が−0.3〜0.05の範囲にある低結晶性の粉末セルロースを、塩基触媒存在下、下記一般式(2)
1COOR2 (2)
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数2〜23の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。)
で表されるエステル化合物と反応させてセルロースエステルを得る。
(低結晶性粉末セルロース)
一般にセルロースには幾つかの結晶構造が知られており、アモルファス部と結晶部とが共存することが知られている。本発明における低結晶性粉末セルロースの低結晶性とは、本発明で定義する結晶化指数が−0.3〜0.05の範囲のものを指す。
本発明における「結晶化指数」とは、セルロース中のアモルファス部と結晶部の割合の指数であり、粉末X線結晶回折スペクトルから求められる数値を、上記計算式(1)に挿入することにより求められる。
本指数は、結晶からアモルファスへの変化に伴うセルロースのI型結晶の002面におけるX線回折強度の変化を、その指標としている。従って、セルロース中に含まれる結晶形がI型のみであれば、理論上、結晶化指数は0〜1の値となるが、実際にはセルロース中には複数の結晶形が存在するため、I型以外の結晶も十分に破壊されアモルファス化されている場合は、負の値も採り得る。
一般に知られている粉末セルロースの結晶化指数は、本発明で用いる上記計算式(1)によれば、概ね0.6〜0.8の範囲に含まれる。これらはいわゆる結晶性のセルロースであり、分子内及び分子間で強固な水素結合を形成していることから、通常のセルロース誘導体合成における反応性は極めて低い。
本発明で用いる原料粉末セルロースの上記計算式(1)から得られる結晶化指数が、−0.3〜0.05の範囲であれば、本発明のセルロースエステル製造反応は、原料セルロースを溶媒に均一に溶解させなくとも進行するが、反応性の観点から、好ましくは上記計算式(1)から得られる結晶化指数が−0.3〜0の範囲であることが好ましく、−0.3〜−0.1の範囲であることが特に好ましい。
本発明で用いられる低結晶性粉末セルロースは、汎用原料として得られるシート状やロール状のセルロース純度の高いパルプ等のセルロース含有原料から簡便に調製することができる。低結晶性粉末セルロースを調製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特許第4160109号公報に記載されているように、セルロースパルプシートを粗粉砕して得られるチップ状パルプを、押出機で処理して、更にボールミル等の粉砕機で処理することにより簡便に調製することができる。この方法では、分子量すなわち重合度が高く、かつ低結晶性である粉末セルロースを調製することが可能である。
この方法に用いられる押出機としては、単軸又は二軸の押出機が挙げられ、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリューのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えるものであってもよい。押出機を用いる処理方法としては、特に制限はないが、チップ状パルプを押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。
ボールミル等の粉砕機としては、公知の振動ボールミル、媒体攪拌ミル、転動ボールミル、遊星ボールミル等の他に、ロッドミルを用いることができる。媒体として用いるボール又はロッド等の材質に特に制限は無く、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。ボール又はロッド等の媒体の直径は、効率的にセルロースを非晶化させる観点から、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mm、更に好ましくは1〜30mmである。媒体としては、チューブ状のものも用いることができる。ボール又はロッド等の媒体の充填率は、機種にもよるが、粉砕効率の観点から、通常10〜97%、好ましくは20〜90%である。ここで充填率とは、粉砕機の撹拌部の容積に対する媒体の見かけの体積をいう。
セルロースの結晶化指数を効率的に低下させることができることから、ボールミル等の粉砕処理時間としては、5分〜72時間が好ましく、5分〜50時間がより好ましい。またこの処理の際には、発生する熱によるセルロースの変性や劣化を最小限に抑えるためにも、5〜250℃の範囲で行なうことが好ましく、5〜200℃で行なうことがより好ましい。更に必要に応じて、窒素等の不活性ガス雰囲気下で処理を行なうことが好ましい。
本発明における低結晶性粉末セルロースの重合度としては、原料パルプや工業的に実施にする際の操作性の観点から100〜2000が好ましく、100〜1000がより好ましい。
この低結晶性の粉末セルロースの平均粒径は、粉体としての流動性の良い状態が保てるならば特に限定はされないが、300μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。但し、工業的に実施する際の操作性の観点からは、20μm以上が好ましく、25μmがより好ましい。
(一般式(2)で示されるエステル化合物)
本発明において、エステル化剤として、下記一般式(2)で示されるエステル化合物を用いる。
1COOR2 (2)
一般式(2)におけるR1は、置換基を有していてもよい炭素数2〜23の炭化水素基である。
1の炭化水素基としては、直鎖、分岐または環状であって、飽和または不飽和の炭化水素基が挙げられる。R1の炭化水素基の炭素数は、得られるセルロースエステルの性能の観点から3以上が好ましく、反応性の観点から17以下が好ましい。これらの観点から、炭素数5〜17がより好ましく、炭素数5〜11が特に好ましい。
また上記炭化水素基が置換基を有している場合、該置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、または炭素数1〜3のアルコキシ基等が挙げられる。中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子または臭素原子がより好ましい。R1で示される炭化水素基は、これら置換基を単独で有していても、または2種以上の置換基を有していてもよい。
1の具体例としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘプチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、4−シクロヘキシルブチル基、ウンデシル基、ヘプタデシル基、トリコシル基等の飽和炭化水素、ビニル基、1−メチルビニル基、1,3−ペンタジエニル基、9−ヘプタデセニル基などの不飽和炭化水素基、または10−ヒドロキシデシル基、パーフルオロノニル基、2−クロロビニル基、9−ブロモノニル基、2−エトキシエチル基、3−クロロ−2−メトキシプロペニル基、5−ニトロペンチル基等の置換基を有する炭化水素基等が挙げられる。
これらの内、得られるセルロースエステルの性能、及び反応性の観点から、炭素数5〜11の飽和炭化水素基が好ましく、n−ヘプチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基がより好ましい。
一般式(2)におけるR2は、炭素数1〜3の炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。これらの内、エステル交換反応時及び反応後に発生する低級アルコールの除去性、並びに反応性の観点から、メチル基、エチル基、ビニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
一般式(2)で示されるエステル化合物の使用量は、セルロースへの所望のエステル基導入量に応じて適宜調整すればよいが、原料である低結晶性粉末セルロースを構成するグルコース単位あたり、通常0.001〜100モル倍であり、0.005〜50モル倍がより好ましく、0.01〜30モル倍が特に好ましい。
(塩基触媒)
本発明の製造方法において、触媒として用いる塩基は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド等が挙げられる。
これらの内、一般式(2)で示されるエステル化合物の分解抑制という観点から、アルカリ金属のアルコキシドが好ましい。
また、一般式(2)で示される化合物とのエステル交換による反応への影響を抑制する観点から、下記一般式(3)
3−OH (3)
(式中、R3は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。)
で表されるアルコールのアルカリ金属アルコキシド、または第3級アルコールのアルカリ金属アルコキシドが特に好ましい。
上記一般式(3)におけるR3は、上記一般式(2)におけるR2と同義であり、その具体例及び好適例も同じである。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。
上記塩基触媒は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩基触媒の使用量としては、原料である低結晶性粉末セルロースを構成するグルコース単位に対して0.01〜0.5モル倍用いるのが好ましく、0.02〜0.3モル倍用いるのがより好ましい。
この塩基触媒の添加方法としては特に限定されないが、塩基触媒として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物等を水溶液で添加する場合には、一般式(2)で示されるエステル化合物がセルロースと反応する前に加水分解してしまうことを避ける観点から、一般式(2)で示されるエステル化合物を添加する前に原料である低結晶性粉末セルロースを含む反応混合物中に加え、あらかじめ減圧下で加温し、反応系内の水分量を低下させるための脱水操作を行うことが好ましい。
(溶媒)
本発明では、反応時に有機溶媒を用いることも可能である。この有機溶媒としては、非プロトン性溶媒が好ましく、例えば、ジオキサンやエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、またはN,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性の極性溶媒の他、トルエンやベンゼン、ヘキサンや他の炭化水素油といった非プロトン性の低極性または非極性溶媒が挙げられる。また上記一般式(2)で示されるエステル化合物を、非プロトン性の極性溶媒として用いることも可能である。
これらのうち、低結晶性の粉末セルロースおよび塩基触媒を良好に分散させる観点から、非プロトン性の極性溶媒が好ましく、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドおよびN,N−ジメチルホルムアミドから選ばれる1種以上が特に好ましい。上記溶媒は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また本発明の製造法においては、これら溶媒中に原料である低結晶性の粉末セルロースを均一溶解させることを必要としない。よって、これら溶媒の使用量としては、低結晶性粉末セルロースに対して0.1〜100質量倍用いれば十分であり、生産性の観点から0.1〜50質量倍が好ましく、0.1〜20質量倍が特に好ましい。
(反応条件)
本発明においては、塩基触媒としてアルカリ金属水酸化物などの水溶液を用いない場合であっても、一般式(2)で示されるエステル化合物の加水分解を防ぐため、あらかじめ減圧下で加温し、原料の低結晶性粉末セルロースや溶媒に含まれる水分を、減量ないしは除去するための脱水操作を行うことが好ましい。
本発明における反応温度は、一般式(2)で示されるエステル化合物の沸点によっても異なるが、反応速度、及び生成物への着色を抑える観点から、0〜200℃が好ましく、50〜150℃が更に好ましく、100〜150℃の範囲で反応させることが特に好ましい。
また本発明においては、エステル交換反応により発生する低級アルコールを、減圧またはキャリアガス気流下に除去しながら行ってもよい。減圧時の圧力は、一般式(2)で示されるエステル化合物の反応温度における蒸気圧を超える範囲であれば、低いほど上記低級アルコールの除去効率がよく、かつ一般式(2)で示されるエステル化合物の系外への留出も抑制されるため好ましい。これら観点から、減圧時の圧力としては、1.3〜66.7kPaの範囲が好ましく、3.3〜26.7kPaの範囲がより好ましい。
キャリアガス気流下に反応を行う場合、酸素による生成物の着色、及びセルロース骨格の分解による低分子量化を避ける観点から、窒素やアルゴンなどの不活性ガスをキャリアガスとして用いることが好ましい。
(セルロースエステル)
本発明において得られる生成物中のエステル基は、セルロース分子中のグルコース単位におけるいかなる位置の水酸基と置換したものであってもよい。
本発明において得られるセルロースエステルの好適例としては、セルロースヘキサノエート、セルロースオクタノエート、セルロースデカノエート、セルロースラウレート等が挙げられる。
本発明で得られるセルロースエステルにおけるセルロースを構成するグルコース単位当たりの置換度(エステル基の平均置換モル数)は、反応時間や反応温度、一般式(2)で示される化合物の種類、塩基触媒及び有機溶媒の使用量等の反応条件を調整することにより、任意に調整することができる。本発明の製造法を用いれば、該置換度が通常0.001〜2.5のセルロースエステルを効率的に製造することができるが、置換度が0.1〜2.0の範囲のセルロースエステルをより効率的に、置換度が0.3〜2.0の範囲のセルロースエステルを特に効率的に製造することができる。
本発明で得られたセルロースエステルは、従来知られるフィルム、繊維、コーティング、薬物包埋剤、分離膜等の材料以外にも、水系製品の増粘剤や汎用樹脂とのコンポジット剤として、また、化粧品油剤への配合による皮膚への疎水性フィルムの形成等に好適に用いることができる。
以下の実施例及び比較例において、セルロースの結晶化指数、重合度及び平均粒径、セルロースエステルにおけるエステル基による置換度は以下の方法で算出した。
実施例中の“%”は特に断らない限り、質量百分率を示す。
(1)結晶化指数
セルロースの結晶化度の算出は、株式会社リガク製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定した粉末X線回折スペクトルのピーク強度から前記計算式(1)に従って行った。
測定条件;X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kv,管電流:120mA,測定範囲:2θ=5〜45°,測定用サンプル:面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製,X線のスキャンスピード:10°/min
(2)重合度
セルロースの重合度はISO−4312法に記載の銅アンモニア法により測定した。
(3)平均粒径
セルロースの平均粒径は、株式会社堀場製作所製 レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」を用いて測定した。なお、用いた屈折率は1.2である。
(4)置換度の算出
下記の方法で、置換度を算出した。ここで置換度とは、セルロースを構成するグルコース単位あたりに導入されたエステル基のモル数を言う。
生成したセルロースエステル100mgに、ピリジン2mL、無水酢酸3mL、ジメチルアミノピリジン(DMAP)100mgを添加し、100℃で1時間反応を行って、未反応の水酸基をアセチル化し、重クロロホルムに溶解後、1H−NMR測定(バリアン社製MERCURY 400)を行い、導入されたエステル基の量を算出した。
製造例1(非晶化粉末セルロースの製造)
〔シュレッダー処理〕
セルロース含有原料として、シート状木材パルプ〔ボレガード(Borregard)社製「Blue Bear Ultra Ether」、800mm×600mm×1.5mm、結晶化指数;0.81、セルロース含有原料から水を除いた残余の成分中のセルロース含有量96質量%、水分含量7質量%、重合度1532〕をシュレッダー(株式会社明光商会、「MSX2000−IVP440F」)にかけ、約10mm×5mm×1.5mmのチップ状パルプにした。
〔押出機処理〕
得られたチップ状パルプを二軸押出機(株式会社スエヒロEPM製、「EA−20」)に2kg/hrで投入し、せん断速度660sec-1、スクリュー回転数300rpm、外部から冷却水を流しながら、1パス処理した。なお、前記二軸押出機は、完全噛み合い型同方向回転二軸押出機であり、2列に配置されたスクリューは、スクリュー径40mmのスクリュー部と、互い違い(90°)に12ブロックを組み合わせたニーディングディスク部とを有し、2本のスクリューは、同じ構成を有するものである。また、二軸押出機の温度は、処理にともなう発熱により、30〜70℃であった。
〔粉砕処理〕
得られたパルプを、粉砕機としてボールミル(日本コークス工業株式会社製:容器容積800mL、6mmφSUS304製ボールを1440g充填、充填率23vol%)に105g投入した。容器ジャケットに水道水を通しながら、攪拌回転数555rpm(周速1.8m/s)で、8時間粉砕処理(4時間粉砕後、30分冷却、その後4時間粉砕)を行い、低結晶性の粉末セルロース(結晶化指数:−0.18,平均粒径45μm、重合度507)を得た。
実施例1
300mLの4つ口丸底フラスコ中に、前記製造例1で得られた低結晶性の粉末セルロース 5.0g(構成グルコース単位で計算して0.0309モル)、ジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製 特級試薬)70.0gを加えて室温で分散させた。100℃、6.4kPa(絶対圧)の条件下、15分間攪拌した後、28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(和光純薬工業株式会社製 試薬)1.2g(0.0062モル)を加え、再度100℃、6.4kPaの条件下で15分間攪拌して、系中からの脱水及び脱メタノールを行なった。次いでオクタン酸メチル(和光純薬工業株式会社製 特級試薬)43.9g(0.277モル)を加えた後、125℃に昇温し、窒素気流下7時間、生成するメタノールを除去しながら反応した。反応中、セルロースは均一溶解することはなく、スラリー状態を維持していた。反応終了後のスラリーを、1Lのビーカーに移し、イソプロパノール500mLを加え攪拌後ろ過して、ろ液除去する洗浄操作を行なった後、同様に85%イソプロパノール水溶液400mLで3回洗浄、水400mL、エタノール400mLでそれぞれ1回洗浄操作を行なった。その後、80℃で10時間減圧乾燥を行い、セルロースエステル4.5gを得た。1H−NMR測定の結果、置換度は0.83であった。
比較例1
セルロースとして、結晶性の市販セルロース(日本製紙ケミカル株式会社製 KC-フロック200、結晶化指数0.77、平均粒径32μm、重合度314)5.0gを用いる以外は実施例1と同様にして反応を行った。結果、セルロースエステル3.4gを得た。1H−NMR測定の結果、置換度は0.14であった。

Claims (4)

  1. 下記計算式(1)で定義される結晶化指数が−0.3〜0.05である低結晶性粉末セルロースと、下記一般式(2)で表されるエステル化合物とを、塩基触媒存在下に反応させる、セルロースエステルの製造方法。
    結晶化指数=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕 (1)
    〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
    1COOR2 (2)
    (式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数2〜23の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。)
  2. 塩基触媒がアルカリ金属のアルコキシドである、請求項1に記載のセルロースエステルの製造方法。
  3. 非プロトン性溶媒を、低結晶性粉末セルロースに対し0.1〜100質量倍用いて反応させる、請求項1又は2に記載のセルロースエステルの製造方法。
  4. 非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドおよびN,N−ジメチルホルムアミドから選ばれる1種以上である、請求項3に記載のセルロースエステルの製造方法。
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