JP2018076449A - セルロース誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献2には、高い反応選択率を維持しつつ、水溶性に優れるヒドロキシアルキルセルロースを得ることを目的として、セルロースに所定量の塩基化合物及びアルキレンオキシドを分割添加して反応させるヒドロキシアルキルセルロースの製造方法、及び、該ヒドロキシアルキルセルロースとカチオン化剤とを反応させる、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースの製造方法が開示されている。
特許文献3には、塩基性触媒の存在下で粉末状の多糖類と反応性官能基を有する化合物とを反応させた後に、所定の分級機で篩い分けする工程を有する、ヒドロキシプロピルセルロース等の粉末状の多糖誘導体の製造方法が開示されている。
また、特許文献4には、セルロース及びセルロース誘導体から選ばれる1種以上の粉末状の原料セルロースと、カチオン基を有する所定量の反応剤とを、塩基性触媒の存在下、所定の攪拌条件で該反応剤を噴霧供給して反応させることにより、反応速度が速くカチオン基を均一に反応させることが可能な、粉末状のカチオン化セルロース誘導体の製造方法が開示されている。
工程(I):セルロース含有原料を粉砕処理し、水分量が2.5質量%未満であり、下記計算式(1)により求められる結晶化指数が−3.5%以下の粉末状セルロースを得る工程
結晶化指数(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
工程(II):工程(I)で得られた粉末状セルロースと反応剤とを、該粉末状セルロースの主鎖を構成するセルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対し0.5モル当量以上3.0モル当量以下の塩基性化合物の存在下で反応させてセルロース誘導体を得る工程
本発明のセルロース誘導体の製造方法(以下「本発明の製造方法」ともいう)は、下記の工程(I)及び工程(II)を有する。
工程(I):セルロース含有原料を粉砕処理し、水分量が2.5質量%未満であり、下記計算式(1)により求められる結晶化指数が−3.5%以下の粉末状セルロースを得る工程
結晶化指数(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
工程(II):工程(I)で得られた粉末状セルロースと反応剤とを、該粉末状セルロースの主鎖を構成するセルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対し0.5モル当量以上3.0モル当量以下の塩基性化合物の存在下で反応させてセルロース誘導体を得る工程
本発明においては、セルロース誘導体としてはヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、及びカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、水溶性、及び毛髪化粧料組成物に配合した際の性能の観点からは、セルロース誘導体がカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースであることがより好ましい。
また本発明において、反応剤とは、セルロースの第1級又は第2級の水酸基と反応して置換基を導入しうる化合物をいい、詳しくは後述する。
ここでいう水分量は、セルロース含有原料中の水分量を意味する。工程(I)で得られる粉末状セルロースが所定の水分量及び結晶化指数の値をともに満たさないと、最終的に得られるセルロース誘導体の水溶液の透明性が低下する。
さらに本発明の製造方法は、工程(II)において、前記粉末状セルロースと反応剤とを、該粉末状セルロースの主鎖を構成するセルロースのアンヒドログルコース単位(以下「AGU」ともいう)1モルに対し0.5モル当量以上3.0モル当量以下の塩基性化合物の存在下で反応させることを特徴とする。工程(II)で使用する塩基性化合物の量が粉末状セルロースのAGU1モルに対し0.5モル当量未満であると、最終的に得られるセルロース誘導体の水溶液の透明性が低下するためである。また、3.0モル当量以下であれば、後述するヒドロキシアルキル化剤などの反応剤の水和反応等、副反応が進行しにくく、経済性の観点からも有利であるためである。
本明細書において塩基性化合物のモル当量とは、塩基性化合物のモル量に塩基の価数を乗じた値をいい、例えば、水酸化カルシウム等の2価の塩基性化合物1モルは、2モル当量に相当する。
セルロースの結晶化指数が低いほど、結晶構造が緩和された状態を示し、反応剤の付加が均一に進みやすい。また、セルロース含有原料の粉砕時の水分量はセルロースの結晶化指数の低下速度に影響するため、該水分量を一定以下に制御することで、結晶化指数を効率的かつ安定的に所定のレベルにまで低減することができる。その結果、工程(I)で得られた、水分量及び結晶化指数がともに低減された粉末状セルロースを用いると、工程(II)において反応剤の付加が均一に進み、得られるセルロース誘導体の水溶性及び水溶液の透明性が向上すると考えられる。
以下、本発明について詳細に説明する。
工程(I)では、セルロース含有原料を粉砕処理し、水分量が2.5質量%未満であり、前記計算式(1)により求められる結晶化指数が−3.5%以下の粉末状セルロースを得る。
セルロースを低結晶性の粉末にすることで、工程(II)で使用する反応剤との反応性を高めることができる。また、工程(I)で得られる粉末状セルロースが当該水分量及び結晶化指数の値をともに満たすことにより、最終的に得られるセルロース誘導体の水溶液は高い透明性を有するものとなる。
本発明において用いられるセルロース含有原料としては、化学的に純粋なセルロースの他、各種木材チップ、各種樹木の剪定枝材、間伐材、枝木材、建築廃材、工場廃材等の木材類;木材から製造される木材パルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、段ボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等、種々のセルロース含有原料を用いることができる。これらの中でも、パルプ類が好ましい。
セルロース含有原料の種類や形状によっては、前処理として裁断処理を行うことが好ましい。セルロース含有原料を裁断する方法は、セルロース含有原料の種類や形状により適宜選択することができるが、例えば、シュレッダー、スリッターカッター及びロータリーカッターから選ばれる1種以上の裁断機を使用する方法が挙げられる。
シート状のセルロース含有原料を用いる場合、裁断機としてシュレッダー又はスリッターカッターを使用することが好ましく、生産性を向上させる観点から、スリッターカッターを使用することがより好ましい。
スリッターカッターは、シートの長手方向に沿った縦方向にロールカッターで縦切りして、細長い短冊状とし、次に、固定刃と回転刃でシートの幅方向に短く横切りする裁断機であって、スリッターカッターを用いることにより、原料セルロースの形状をさいの目形状にすることができる。スリッターカッターとしては、株式会社荻野精機製作所製の裁断機(スーパーカッター)、株式会社ホーライ製のシートペレタイザー等を好ましく使用できる。
ロータリーカッターを使用する場合、得られる裁断処理物の大きさは、スクリーンの目開きを変えることにより、制御することができる。
一般に、市販のパルプ類、バイオマス資源として利用される紙類、木材類、植物茎・葉類、植物殻類等のセルロース含有原料は、通常5〜30質量%程度の水分を含有している。したがって、通常、セルロース含有原料、好ましくは裁断処理後に得られるセルロース含有原料の乾燥処理を行うことによって、セルロース含有原料の水分量を2.5質量%未満に調整する。
乾燥処理は必要に応じて減圧下で行ってもよく、効率よく乾燥を行う観点から、絶対圧力は、好ましくは1kPa以上、より好ましくは50kPa以上、さらに好ましくは100kPa以上であり、また、好ましくは120kPa以下、より好ましくは105kPa以下である。
乾燥方法としては、公知の乾燥手段を適宜選択すればよく、例えば、「粉体工学概論」(社団法人日本粉体工業技術会編集 粉体工学情報センター1995年発行) 176頁に記載の方法が挙げられる。該乾燥手段としては、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。
これらの乾燥方法は1種でも又は2種以上を組み合わせて使用してもよく、効率よく乾燥を行う観点から、伝導受熱乾燥法が好ましい。乾燥処理はバッチ処理、連続処理のいずれでも可能であるが、生産性を向上させる観点から連続処理が望ましい。
当該水分量は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
水分量が2.5質量%未満の粉末状セルロースを得る観点から、粉砕処理は、好ましくはセルロース含有原料中の水分量が2.5質量%未満の条件下で行われる。工程(I)で得られる粉末状セルロースの水分量が2.5質量%以上であると、最終的に得られるセルロース誘導体の水溶液の透明性が低下する。また、粉砕処理における粉砕効率及び低結晶化効率も低下する。当該水分量の好ましい範囲は上記のとおりである。
粉砕処理で用いられる粉砕機に特に制限はなく、セルロース含有原料を粉末化し、結晶化指数を所定の値以下に低減できる装置であればよいが、後述する振動ロッドミルを用いることが好ましく、振動ロッドミル及び高速回転式微粉砕機を用いることがより好ましい。より詳細には、粗粉砕処理において振動ロッドミルを用い、小粒径化処理において高速回転式微粉砕機を用いることがより好ましい。
粗粉砕処理では、必要に応じ裁断処理及び乾燥処理を行ったセルロース含有原料を粗粉砕し、粉末化及び低結晶化する。粗粉砕処理においては短時間で大量の処理を行うことが可能であるため、低結晶化された粉末状セルロースを効率よく得ることができる。以下、粗粉砕処理後に得られるセルロースを「粗粉砕セルロース」ともいう。
粗粉砕処理に用いられる粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動式媒体ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、カッターミル等が挙げられる。これらの粉砕機は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、セルロース含有原料の粉砕効率及び低結晶化効率を向上させる観点から、容器駆動式媒体ミルが好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミル等の振動ミルがより好ましく、振動ロッドミルがさらに好ましい。粉砕方法としては、バッチ式、連続式のいずれでもよい。
粉砕処理に用いる粉砕機の材質、媒体の材質に特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、セルロース含有原料の粉砕効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、さらに工業的な利用の観点から、鉄又はステンレスがより好ましい。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、セルロース含有原料の粉砕効率、及び生産性を向上させる観点から、粉砕容器の体積に対して、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上、よりさらに好ましくは60体積%以上であり、また好ましくは97体積%以下、より好ましくは90体積%以下である。
充填率がこの範囲内であれば、セルロース含有原料とロッドとの接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、振動ミルの攪拌部の容積に対するロッドの体積をいう。
連続処理を行う場合も、粗粉砕処理における処理速度は振動ミルの種類及び大きさ、ロッドの充填率等により異なるが、セルロース含有原料の供給速度として、生産性の観点から、好ましくは5kg/h以上、より好ましくは10kg/h以上であり、小粒径化及び低結晶化を進行させる観点から、好ましくは100kg/h以下、より好ましくは80kg/h以下である。
また、セルロースの低結晶化は主に粗粉砕処理において行われるため、粗粉砕処理で得られる粗粉砕セルロースの結晶化指数は、−3.5%以下であることが好ましい。
小粒径化処理では、粗粉砕処理で得られた粗粉砕セルロースをさらに粉砕し、小粒径化する。粗粉砕処理に続いて小粒径化処理を行うことで、体積中位粒径(D50)がより低減された粉末状セルロースを効率よく得ることができる。
小粒径化処理に用いられる粉砕機としては、高速回転式微粉砕機が好ましい。高速回転式微粉砕機とは、ハンマー、ブレード、ピン等を高速回転させ、衝撃、せん断により粉砕筒内に装填された粗粉砕セルロースの粉砕を行う装置である。
ハンマーミルとしては株式会社ダルトン製のアトマイザーやサンプルミル、ディスインテグレーターとしては株式会社奈良機械製作所製の自由粉砕機、ターボ型ミルとしてはターボ工業株式会社製のターボミル、アニュラー型ミルとしては株式会社アーステクニカ製のクリプトロンシリーズを、それぞれ好ましく使用することができる。
上記の高速回転式微粉砕機は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
粉砕時の温度は特に制限はないが、熱によるセルロースの着色や分子量低下を防ぐ観点、及びコストの観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。
最終的に得られるセルロース誘導体の水溶性を向上させる観点、及び、工程(II)で使用する反応剤との反応性を向上させる観点から、粉砕処理後に得られる粉末状セルロースは、その結晶化指数が−3.5%以下であり、好ましくは−4.0%以下、より好ましくは−5.0%以下、さらに好ましくは−7.0%以下であり、生産性の観点からは、好ましくは−30.0%以上である。粉末状セルロースの結晶化指数が−3.5%を超える場合、最終的に得られるセルロース誘導体の水溶液の透明性が低下する。また粉末状セルロースの結晶化指数が高いと、結晶部と非晶部の反応速度に差が生じやすく、反応剤との反応均一性が低下する。
工程(II)では、工程(I)で得られた粉末状セルロースと反応剤とを、該粉末状セルロースの主鎖を構成するセルロースのアンヒドログルコース単位(AGU)1モルに対し0.5モル当量以上3.0モル当量以下の塩基性化合物の存在下で反応させてセルロース誘導体を得る。
粉末状セルロースと塩基性化合物とから生成されるアルカリセルロースは反応剤との反応活性が高い。また塩基性化合物はセルロースと反応剤との反応における反応触媒としても作用する。そのため、所定量の塩基性化合物の存在下で粉末状セルロースと反応剤とを反応させることにより、セルロース誘導体を効率よく得ることができる。また、最終的に得られるセルロース誘導体の水溶液は高い透明性を有するものとなる。
塩基性化合物及び反応剤の添加順序には特に制限はないが、粉末状セルロースと塩基性化合物とを混合した後に、反応剤を添加して反応させることが好ましい。粉末状セルロースと塩基性化合物とを混合することで反応活性の高いアルカリセルロースが生成するので、その後の反応剤との反応が効率よく進行するためである。
工程(II)の反応を固相状態で行うことにより、粉末状セルロースと反応剤との反応が効率よく進行する。また、例えば工程(II)の反応系内に大過剰の水が存在すると、反応剤として後述するエポキシアルカン等のヒドロキシアルキル化剤を用いた場合、エポキシアルカンの水和反応(副反応)等が起こり、副生成物の生成及び収率低下が起こりやすくなる。そのため工程(II)の反応を固相状態で行い、かつ反応時の水分量を少なくすることで、上記副反応を抑制し、収率を向上させることができる。
なお、粉末状セルロース中のセルロースの量とは、粉末状セルロースの質量から該粉末状セルロース中の水分量を差し引いた値を意味する。また工程(II)における反応時の水分量は、工程(II)に供される粉末状セルロース中の水分量と、工程(II)で添加する水の量の合計を意味する。
水を添加する場合、塩基性化合物と水の添加順序に特に限定はなく、(i)塩基性化合物の添加後に水を添加する方法、(ii)塩基性化合物と水を同時に添加する方法、(iii)塩基性化合物を添加する水の一部又は全部に溶解して水溶液の形態で添加する方法、のいずれであってもよい。製造上の操作性の観点からは、(iii)の方法が好ましい。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類等が挙げられる。これらの中ではアルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、水酸化ナトリウムがよりさらに好ましいい。
上記の塩基性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩基性化合物の使用量は、粉末状セルロースと反応剤との反応を効率よく進行させる観点、及び得られるセルロース誘導体の水溶液の透明性の観点から、粉末状セルロースのAGU1モルに対し0.5モル当量以上であり、好ましくは0.7モル当量以上、より好ましくは0.8モル当量以上である。塩基性化合物の使用量が粉末状セルロースのAGU1モルに対し0.5モル当量未満であると、最終的に得られるセルロース誘導体の水溶液の透明性が低下する。また、反応剤との反応速度も低下する。
一方、塩基性化合物を粉末状セルロースのAGUに対して大過剰に用いると、反応剤との反応において副生成物が増大し収率(反応剤基準)が低下し、また過剰の塩基性化合物の除去処理も煩雑である。よって、工程(II)における塩基性化合物の使用量は、粉末状セルロースのAGU1モルに対して3.0モル当量以下であり、好ましくは2.5モル当量以下、より好ましくは2.0モル当量以下、さらに好ましくは1.5モル当量以下、よりさらに好ましくは1.2モル当量以下である。
攪拌時間は、アルカリセルロースの生成効率の観点から、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.2時間以上である。また生産性の観点からは、好ましくは24時間以下であり、より好ましくは12時間以下である。
セルロースの着色を避ける観点、反応中のセルロース鎖の開裂による分子量の低下を避ける観点から、上記攪拌、及び以後の反応は窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
次いで、上記方法で得られた、粉末状セルロース、塩基性化合物、及び水の混合物に反応剤を添加して、粉末状セルロースと反応剤とを反応させる。
工程(II)で用いられる反応剤は、セルロースの第1級又は第2級の水酸基と反応して置換基を導入しうる化合物であれば特に限定されないが、セルロース誘導体としてセルロースエーテルを得る場合は、エーテル化剤が用いられる。本発明の製造方法により製造するセルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、又はカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースである場合は、工程(II)で用いられる反応剤は、ヒドロキシアルキル化剤及びカチオン化剤からなる群から選ばれる1種以上である。
反応剤としてヒドロキシアルキル化剤及びカチオン化剤を用いる場合、反応剤の添加順序は特に制限されないが、最初に粉末状セルロースとヒドロキシアルキル化剤とを反応させ、次いでカチオン化剤と反応させることが好ましい。この反応順序とすることで、得られるセルロース誘導体(カチオン化ヒドロキシアルキルセルロース)の水溶液の透明性がより良好になる。その理由は、より分子体積の小さい反応剤であるヒドロキシアルキル化剤から先に付加させることで、次いで反応させる反応剤(カチオン化剤)の付加が均一に進みやすくなるためと考えられる。
本発明の製造方法により、セルロース誘導体としてヒドロキシアルキルセルロース又はカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースを得る場合には、反応剤としてヒドロキシアルキル化剤を用いる。
ヒドロキシアルキル化剤の具体例としては、エポキシアルカン、アルキルグリシジルエーテル、アルキルハロヒドリンエーテル等が挙げられる。これらの中でも、反応時に塩の生成がない観点から、エポキシアルカン及びアルキルグリシジルエーテルからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、エポキシアルカンがより好ましい。
エポキシアルカンとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシオクタデカン等の炭素数2以上20以下のエポキシアルカンが挙げられる。エポキシアルカンの炭素数は、好ましくは3以上であり、また、好ましくは18以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下、よりさらに好ましくは6以下、よりさらに好ましくは4以下である。
本発明の製造方法により、セルロース誘導体としてカチオン化セルロース又はカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースを得る場合には、反応剤としてカチオン化剤を用いる。
本発明に用いられるカチオン化剤は、下記一般式(1)又は(2)で示される化合物が好ましい。
得られるセルロース誘導体の水溶性の観点から、R1〜R3は炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。Xとしては塩素、臭素及びヨウ素などが挙げられるが、得られるセルロース誘導体の水溶性の観点からは塩素又は臭素が好ましく、塩素がより好ましい。
一般式(2)において、Zは、得られるセルロース誘導体の水溶性の観点から塩素又は臭素が好ましく、塩素がより好ましい。
これらの中では、入手性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウム又はグリシジルトリエチルアンモニウムの塩化物又は臭化物、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム等の塩化物、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム等の臭化物が好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物がより好ましく、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物がさらに好ましい。
これらのカチオン化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
得られるセルロース誘導体の水溶性を向上させる観点から、カチオン化剤の使用量は、工程(II)で用いられる粉末状セルロースのAGU1モルあたり、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.01モル以上、さらに好ましくは0.10モル以上、よりさらに好ましくは0.30モル以上である。また、コストの観点から、カチオン化剤の使用量は、工程(II)で用いられる粉末状セルロースのAGU1モルあたり、好ましくは5.0モル以下、より好ましくは3.0モル以下、さらに好ましくは2.0モル以下、よりさらに好ましくは1.5モル以下、よりさらに好ましくは1.0モル以下、よりさらに好ましくは0.80モル以下である。
例えば反応剤がヒドロキシアルキル化剤である場合には、反応速度を向上させる観点から、反応温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは25℃以上である。また、粉末状セルロース又はセルロース誘導体の安定性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。
まず、前述の方法で粉末状セルロース、塩基性化合物、必要に応じて水を加えて混合し、攪拌した後に、ヒドロキシアルキル化剤を添加して反応させ、ヒドロキシアルキルセルロースを得る。次いで、カチオン化剤を添加してヒドロキシアルキルセルロースと反応させ、カチオン化ヒドロキシアルキルセルロースを得る。この反応順序とすることで、得られるセルロース誘導体であるカチオン化ヒドロキシアルキルセルロースの水溶液の透明性がより良好になる。
使用する各成分の種類及び量、反応条件、並びにそれらの好ましい態様は前記と同じである。
機械撹拌式混合機としては、特に限定されないが、粉末状セルロースと反応剤との反応速度を上げるため、該反応剤の沸点以上での反応を可能にする観点から、密閉性が高く、加圧操作の可能なものが好ましく、脱水操作や気相置換操作の観点から、減圧操作の可能なものが好ましい。具体的には、高速撹拌型混合機、双腕型混合機が挙げられ、反応をより均一にする観点から、高速撹拌型混合機が好ましい。
高速撹拌型混合機は、水平軸回転型混合機と垂直軸回転型混合機が挙げられる。
水平軸回転型混合機のなかでは、ショベル羽根と多段式チョッパー翼を備えた水平軸回転型混合機が好ましく、このような市販品としては、レーディゲミキサー(中央機工株式会社製、レーディゲ社製)、プロシェアミキサー(大平洋機工株式会社製)が挙げられる。
垂直軸回転型混合機のなかでは、多段式チョッパー翼を備えた垂直軸回転型混合機が好ましく、このような市販品としては、ハイスピードミキサー(株式会社アーステクニカ製)、バーチカルグラニュレーター(株式会社パウレック)が挙げられ、なかでもハイスピードミキサーが好ましい。
噴霧ノズルによるスプレーパターンは、特に限定されないが、例えば、充円錐、空円錐、充角錐、扇形が挙げられる。
アルキレンオキシ基の平均付加モル数は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
カチオン置換度は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の製造方法で得られたセルロース誘導体の水溶液の調製方法は特に限定されないが、例えばセルロース誘導体がカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースの場合、水と混合し、好ましくは40〜90℃で0.5〜12時間攪拌することにより調製できる。水溶液の固形分濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、水溶液の調製のしやすさからは、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
防腐剤としては、ベンジルアルコール、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸,ソルビン酸,デヒドロ酢酸等が挙げられる。
セルロース誘導体水溶液中の添加剤の配合量は、通常、0.001質量%以上、5.0質量%以下である。
本発明の製造方法で得られるセルロース誘導体は、2質量%水溶液の波長600nmの光透過率が好ましくは40%以上、より好ましくは42%以上、さらに好ましくは45%以上、よりさらに好ましくは48%以上、よりさらに好ましくは50%以上である。上記透過率が40%以上であると透明性が良好であり、シャンプーに配合すると乾燥後の指通り性や泡立ちも良好になる。セルロース誘導体の水溶液の光透過率は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
パルプ、粉末状セルロースの水分量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製「FD−610」)を用いて測定した。測定1回あたり試料5gを用い、試料を平らにならして温度120℃にて測定を行い、30秒間の質量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。測定された水分量の値をセルロースに対する質量%に換算して、各水分量の値とした。
粉末状セルロースのX線回折強度を、X線回折装置(株式会社リガク製「MiniFlexII」)を用いて以下の条件で測定し、前記計算式(1)に基づいてセルロースのI型の結晶化指数を算出した。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:30kV,管電流:15mA,測定範囲:回折角2θ=5〜35°、X線のスキャンスピードは40°/minで測定した。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。
粉末状セルロースのD50は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「LS13 320」)を用い、乾式法(トルネード方式)にて測定した。具体的には粉末状セルロース20mLをセルに仕込み、吸引して測定を行った。
各例で得られたセルロース誘導体(カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース)の水溶液をイオン交換水で希釈し、濃度2質量%の測定用試料を調製した。この測定用試料を光路長10mmのセルに入れ、分光光度計(株式会社日立製作所製、型式U−2000A)を用いて波長600nmにおける透過率(T%)を測定した。
各例で得られたセルロース誘導体(カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース:C−HPC)中のプロピレンオキシ基の平均付加モル数及びカチオン置換度は、元素分析による塩素元素量の測定値、及び分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなくC−HPCであることを除き、第十五改正日本薬局方に記載のヒドロキシプロピルセルロースの分析法に従って得られた値から求めた。
具体的には、各例で得られたC−HPCの水溶液を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液を凍結乾燥して精製C−HPCを得た。得られたC−HPCの塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、精製C−HPC中に含まれるカチオン基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記計算式(2)から、C−HPC単位質量中に含まれるカチオン基の量(a(モル/g))を求めた。
a(モル/g)=元素分析から求められる塩素含有量(%)/(35.5×100) (2)
次に、分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく精製C−HPCであることを除き、第十五改正日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って、精製C−HPC中のヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記計算式(3)から、ヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(−OC3H6OH)=75.09〕(b(モル/g))を求めた。
b(モル/g)=ガスクロマトグラフ分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100) (3)
得られたa及びbと下記計算式(4)、(5)からC−HPCのカチオン置換度(k)及びプロピレンオキシ基の平均付加モル数(m)を算出した。
a=k/(162+k×151.5+m×58) (4)
b=m/(162+k×151.5+m×58) (5)
〔式中、kは、C−HPCのカチオン置換度を示す。mはプロピレンオキシ基の平均付加モル数を示す。〕
<工程(I)>
(1)裁断処理
セルロース含有原料として、シート状木材パルプ(Tembec社製「BioflocHV+」、結晶化指数:82%、水分量:8.5質量%)を、裁断機を用いて約3mm×1.5mm×1mmのチップ状に裁断した。
(2)乾燥処理
前記(1)の裁断処理により得られたパルプを、2軸横型攪拌乾燥機(株式会社奈良機械製作所製「2軸パドルドライヤー、NPD−3W(1/2)」)を用いて、連続処理にてパルプを乾燥した。乾燥機の加熱媒体は150℃のスチームを用い、パルプの供給速度は45kg/h、大気圧下での処理とした。
(3)セルロース粗粉砕処理
前記(2)の乾燥処理により得られた乾燥パルプを、連続式振動ミル(ユーラステクノ株式会社製「バイブロミル、YAMT−200」、第1及び第2粉砕室の容量:112L、ステンレス製)を用いて粗粉砕した。第1及び第2粉砕室には、直径30mm、長さ1300mmのステンレス製の丸棒状の粉砕媒体(ロッド)を80本ずつ収容した。連続式振動ミルを振動数16.7Hz、振幅13.4mmの条件下、乾燥パルプを17.5kg/hで供給した。表1では、この乾燥パルプの供給速度を工程(I)における「粉砕処理速度」として表記した。
(4)セルロース小粒径化処理
前記(3)の粗粉砕処理により得られた粗粉砕セルロースを、高速回転式微粉砕機(株式会社ダルトン製、製品名「アトマイザーAIIW−5型」)を用いて小粒径化した。目開き1.0mmのスクリーンを装着し、温度55℃でローター周速度を4400r/min(50m/s)で駆動すると共に、原料供給部から粗粉砕セルロースを粗粉砕処理と同じ供給速度で供給し、排出口から粉末状セルロースを回収した。得られた粉末状セルロースの水分量は1.7質量%、結晶化指数は−10.7%、体積中位粒径(D50)は69.5μmであった。
(1)から(4)の処理は連続的に実施した。
工程(I)で得られた粉末状セルロースを、主翼とチョッパー翼を攪拌機として付属したジャケット付き反応槽に、水分を除いた質量部として100質量部を投入した。槽内気相部を窒素で置換した後、主翼周速3m/s、チョッパー翼16m/sの撹拌下にて、塩基性化合物である水酸化ナトリウム24.5質量部(粉末状セルロースのAGU1モルに対し1.0モル当量)と水とを混合して得られた水酸化ナトリウム水溶液を噴霧投入した。水酸化ナトリウム水溶液の調製に用いた水の量は、当該水の量と、粉末状セルロースが含有する水分との合計量が、反応系内の水分量として49.8質量部となるよう調整した。さらにジャケット温水にて内温を50℃±5℃に調節し、2時間混合を継続した。次に内温を37℃から47℃に保つよう調節しつつ、プロピレンオキシド(PO)142.9質量部(粉末状セルロースのAGU1モルに対し4.0モル)を、内圧0.07〜0.10MPa(ゲージ圧)に保つように、約8時間かけて投入した。全てのプロピレンオキシドを投入した後、十分に内圧が安定するまで撹拌及び温度調節を約3時間継続した。この時の反応時の水分量は、セルロースに対し49.8質量%であった。続けて、カチオン化剤である3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(HAC)の70質量%水溶液(含水量30%、純度90%以上、四日市合成株式会社製、製品名「CTA−65」)112.0質量部(粉末状セルロースのAGU1モルに対しHACとして0.68モル)を噴霧投入し、内温を50℃±5℃に調節しつつ、2時間攪拌を継続した。この時の反応時の水分量は、セルロースに対し83.4質量%であった。その後、内温40℃まで冷却し、セルロース誘導体であるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを得た。反応槽単位体積あたりの全仕込み量は174kg/m3とした。
カチオン化ヒドロキシプロピルセルロースのPO平均付加モル数は2.34、カチオン置換度は0.17であった。
アンカー翼を備えた撹拌槽にて、イオン交換水1165質量部と、工程(II)で得られたカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース100質量部とを混合し、60〜65℃で4時間撹拌して溶解させた。さらに、50%リンゴ酸7質量部、ベンジルアルコール13質量部を混合した後、3時間混合を継続することで、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を得た。撹拌槽単位体積あたりの全仕込み量は900kg/m3とした。
得られたカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を用いて、前記方法で水溶液の透明性を評価した。結果を表1に示す。
表1に示す粉砕処理速度で工程(I)を行い、表1に示す水分量、結晶化指数、及びD50の粉末状セルロースを得た。この粉末状セルロースを工程(II)で用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、及びその水溶液を製造し、前記方法で評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示す粉砕処理速度で工程(I)を行い、水分量1.8質量%、結晶化指数−8.1%、体積中位粒径(D50)72.2μmの粉末状セルロースを得た。この粉末状セルロースを大気中に7日間さらして吸湿させ、水分量7.4質量%、結晶化指数8.5%の粉末状セルロースとした。
この粉末状セルロースを用いて、実施例1と同様の方法でカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、及びその水溶液を製造し、前記方法で評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示す粉砕処理速度で工程(I)を行い、表1に示す水分量、結晶化指数、及びD50の粉末状セルロースを得た。この粉末状セルロースを工程(II)で用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、及びその水溶液を製造し、前記方法で評価を行った。結果を表1に示す。
特許文献1の実施例に記載された方法と同様の方法により、セルロース誘導体であるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースを製造した。具体的には以下のとおりである。
<工程(I)>
(1)裁断処理
セルロース含有原料として、シート状木材パルプ(Tembec社製、結晶化指数:76%、水分量:7質量%)をシュレッダー(株式会社明光商会製、製品名「MSX2000−IVP440F」)にかけてチップ状にした。
(2)乾燥処理
前記(1)の裁断処理により得られたチップ状のパルプを、50℃減圧下で12時間乾燥処理を行い、チップ状の乾燥パルプ(水分量:0.4質量%)を得た。
(3)セルロース粗粉砕処理
前記(2)の乾燥処理により得られた乾燥パルプを、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz、全振幅8mm、温度30〜70℃の範囲で1時間粉砕処理を行い、粉末状セルロース(結晶化指数:−20.0%、水分量:1.4質量%)を得た。
還流管を取り付けた1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV−1型)に、前記工程(I)で得られた粉末状セルロース90g(水分を含まない質量部)を仕込み、次に48%水酸化ナトリウム水溶液9.0g(粉末状セルロースのAGU1モルに対し0.2モル当量)を滴下しながら加え、ニーダーを温水により50℃に加温し、窒素雰囲気下3時間撹拌した。その後、ニーダーを温水により70℃に加温し、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(以下、「GMAC」ともいう。阪本薬品工業株式会社製、含水量20%、純度90%以上)11.5g(粉末状セルロースのAGU1モルに対し0.10モル)を滴下した。その後、さらに70℃で3時間撹拌した。
次に温度を50℃に調整し、イオン交換水34.9gを滴下した後、プロピレンオキシド161.1g(粉末状セルロースのAGU1モルに対し5.0モル)を滴下して、プロピレンオキシドが消費され還流が止むまで反応を行った。プロピレンオキシド滴下前の反応系内の水分量は、セルロースに対して50.0質量%であった。その後、生成物をニーダーから取り出し、カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース粉末を得た。カチオン化ヒドロキシプロピルセルロースのPO平均付加モル数は3.20、カチオン置換度は0.08であった。
得られたカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース粉末を用いて、実施例1と同様の方法でカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液を製造し、前記方法で評価を行った。結果を表1に示す。
*1:セルロースに対する水分量(質量%)
*2:セルロースのAGU1モルに対するモル当量
*3:工程(I)の粉砕処理後、大気中にさらして吸湿させた。
*4:バッチ処理を行った。
また実施例6の結果によれば、工程(I)の粉砕処理で得られる粉末状セルロースが本発明の要件(所定の水分量及び結晶化指数)を満たしていれば、その後に吸湿等により当該セルロースの水分量及び結晶化指数が変化しても、工程(II)でセルロース誘導体の製造原料として使用した際には実施例1〜5と同様に本発明の効果が得られることがわかる。
Claims (9)
- 下記の工程(I)及び工程(II)を有する、セルロース誘導体の製造方法。
工程(I):セルロース含有原料を粉砕処理し、水分量が2.5質量%未満であり、下記計算式(1)により求められる結晶化指数が−3.5%以下の粉末状セルロースを得る工程
結晶化指数(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
工程(II):工程(I)で得られた粉末状セルロースと反応剤とを、該粉末状セルロースの主鎖を構成するセルロースのアンヒドログルコース単位1モルに対し0.5モル当量以上3.0モル当量以下の塩基性化合物の存在下で反応させてセルロース誘導体を得る工程 - 前記工程(II)における前記反応剤がヒドロキシアルキル化剤及びカチオン化剤からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 前記工程(II)における前記反応剤がヒドロキシアルキル化剤及びカチオン化剤である、請求項2に記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 前記工程(II)において、前記粉末状セルロースとヒドロキシアルキル化剤とを反応させ、次いでカチオン化剤と反応させる、請求項3に記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 前記ヒドロキシアルキル化剤が炭素数3以上12以下のエポキシアルカンである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 前記カチオン化剤が下記一般式(1)又は(2)で表される化合物である、請求項2〜5のいずれか1項に記載のセルロース誘導体の製造方法。
(一般式(1)及び(2)において、R1〜R3は各々独立に炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子を表す。一般式(2)においてZはハロゲン原子を表す。) - 前記粉砕処理に振動ロッドミルを用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 前記粉砕処理に振動ロッドミル及び高速回転式微粉砕機を用いる、請求項7に記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 前記工程(II)における反応を固相状態で行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロース誘導体の製造方法。
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