JP2013133398A - カルボキシメチルセルロースの製造方法 - Google Patents

カルボキシメチルセルロースの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水溶液粘度の高く、かつ該水溶液のチキソトロピー性が高く、塗布時にさっぱりとした良感触を与えるカルボキシメチルセルロースを効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.7〜1.8モルの塩基化合物の存在下、かつ該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で粉砕し、粉砕されたセルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程(1)、得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、水分量をセルロースに対して70〜180重量%に調整して、粉末状アルカリセルロースを得る工程(2)、得られた粉末状アルカリセルロースにモノハロ酢酸又はその塩を加えて40〜100℃で反応させる工程(3)を有するカルボキシメチルセルロースの製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、カルボキシメチルセルロースの製造方法に関する。
カルボキシメチルセルロースは、増粘剤、分散剤、乳化剤、保護コロイド剤、安定化剤等として広範に利用されている。
このカルボキシメチルセルロースの製造法として、特許文献1には、含水有機溶媒中にセルロースを分散させ、そこにアルカリを作用させてアルカリセルロースを調製し、次いでモノハロ酢酸を添加してエーテル化反応を行う溶媒法によるカルボキシメチルセルロースの製造方法が開示されている。
特許文献2には、結晶化度が50%以下の低結晶性の粉末セルロースを、塩基の存在下、有機ハライド化合物と反応させる、セルロース誘導体の製造方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、セルロースを水及びアルカリの存在下、機械的処理をするに際し、水を、水とセルロースの合計に対し10〜30重量%の割合になるような量で使用する、アルカリセルロースの製造方法が開示されている。実施例によれば、この水分量はセルロースに対して11〜25重量%である。
特開平6−107701号公報 国際公開2009/063856号パンフレット 特開2011−37924号公報
しかしながら、特許文献1〜3に開示された方法では、水溶液粘度が高く、かつ該水溶液のチキソトロピー性が高く、塗布時にさっぱりとした良感触を与える増粘剤として有用なカルボキシメチルセルロースを製造することが難しい。
本発明は、水溶液粘度の高く、かつ該水溶液のチキソトロピー性が高く、塗布時にさっぱりとした良感触を与えるカルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう)を製造する方法を提供することを課題とする。
本発明は、下記工程(1)〜(3)を有するカルボキシメチルセルロースの製造方法を提供する。
工程(1):セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.7〜1.8モルの塩基化合物の存在下、かつ該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、粉砕されたセルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程(1)で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して70〜180重量%に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程
工程(3):工程(2)で得られた粉末状のアルカリセルロースにモノハロ酢酸又はその塩を加えて40〜100℃で反応させて、カルボキシメチルセルロースを得る工程
本発明の方法によれば、水溶液粘度が高く、かつ該水溶液のチキソトロピー性が高く、塗布時にさっぱりとした良感触を与えるCMCを製造することができる。
本発明の方法により得られたCMCは、優れたチキソトロピー性を有し、化粧品等に配合した場合、非常に良好な使用感(塗布時ののばしやすさ、さっぱり感等)を発現することができる。
本発明のカルボキシメチルセルロースの製造方法は、下記工程(1)〜(3)を有することにより、水溶液粘度が高く、かつ該水溶液のチキソトロピー性が高く、塗布時にさっぱりとした良感触を与えるCMCを効率よく、かつ簡便に製造することができる。
工程(1):セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.7〜1.8モルの塩基化合物の存在下、かつ該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、粉砕されたセルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程(以下、「粉砕工程」ともいう)
工程(2):工程(1)で得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程(1)で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して70〜180重量%に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程(以下、「アルセル化工程」ともいう)
工程(3):工程(2)で得られた粉末状のアルカリセルロースにモノハロ酢酸又はその塩を加えて40〜100℃で反応させて、カルボキシメチルセルロースを得る工程(以下、「CMC製造工程」ともいう)
本発明においてさっぱりとした感触とは、本発明のCMCを含有する水溶液を指で手肌に塗り伸ばす際に得られる感触であって、高粘度のCMC水溶液の粘度が瞬時に低くなる時に感じるさらっとした感触のことをいい、本発明のCMCを含有する水溶液の高いチキソトロピー性に起因すると考えられる。
以下、本発明の各工程、及び用いられる各成分について詳細に説明する。
[工程(1):粉砕工程]
工程(1)は、セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位(以下、「AGU」ともいう)1モルあたり0.7〜1.8モルの塩基化合物の存在下、かつ該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、粉砕されたセルロース含有原料(以下「粉末セルロース」ともいう)のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程である。
工程(1)において、水分量が非常に少ない条件下で、塩基化合物と共にセルロース含有原料の粉砕することにより、粉砕後のセルロース含有原料中に、塩基化合物を均一に分散させることができる。また水分量が非常に少ない条件下で粉砕を行うことにより、効率的に短時間で粉砕することができ、その結果、低分子量成分が生成せず、水溶液が高いチキソトロピー性を有し、塗布時にさっぱりとした良感触を与えるCMCを得ることができる。
<セルロース含有原料>
本発明に用いられるセルロース含有原料は、該原料中のα−セルロース含有量が20重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることが更に好ましく、75重量%以上がより更に好ましい。α−セルロース含有量の上限は100重量%である。ここで、α−セルロース含有量は、ISO692に従って得られるアルカリ可溶分値;S10(20℃)、及びS18(20℃)の値を用いて、以下の計算式(1)で求めることができる。
α−セルロース含有量(重量%)=100−(S18+S10)/2 (1)
パルプの場合、α−セルロース含有量は、一般には75〜99重量%であり、他の成分は水の他、ごく少量の低重合度セルロース、ヘミセルロース、及びリグニン等を含む。木材を蒸解・漂白した市販のパルプにおいては、低重合度セルロースの含量はごく少量であるので、パルプ中のセルロース含有量とα−セルロース含有量は、略同一として扱うことができる。
セルロース含有原料中のセルロース(以下「原料セルロース」ともいう)の平均重合度は特に限定されない。しかしながら、高い水溶液粘度を発現し、水溶液が高いチキソトロピー性を有して塗布時にさっぱりとした良感触のCMCを得る観点から、原料セルロースの平均重合度は、200以上であることが好ましく、入手の容易さの観点から、10000以下が好ましい。原料セルロースの平均重合度は、より好ましくは500〜5000、更に好ましくは1000〜4000、より更に好ましくは1200〜3000である。
本発明において、平均重合度とは、銅−アンモニア法により測定される粘度平均重合度をいい、具体的には実施例に記載の方法により算出される。
セルロースは結晶部位及びアモルファス部位からなるが、原料セルロースにおいて結晶性部位が占める比率、すなわち結晶化度に、特に限定はない。しかしながら、通常、セルロースの結晶化度を低下させる処理を行うと、セルロース鎖の切断に伴い重合度も低下する。したがって、高い水溶液粘度を発現し、高いチキソトロピー性を有し、塗布時にさっぱりとした良感触を与える水溶液を生成するCMCを得る観点から、本発明においては、重合度低下の少ない、即ちより結晶化度が高いセルロースを含有するセルロース含有原料を用いることが好ましい。一方、結晶化度が95%を超える極めて結晶化度の高いセルロース含有原料の入手も困難である。上記の観点から、原料セルロースの結晶化度は、好ましくは30〜95%、より好ましくは50〜90%、更に好ましくは60〜80%である。
本発明において、セルロースの結晶化度とは原料セルロースのI型結晶構造に由来する結晶化度を示し、X線結晶回折測定の結果から下記計算式(2)により求められる。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (2)
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
セルロース含有原料の種類には特に制限はなく、各種木材チップ;針葉樹材を主としたN材パルプ、広葉樹材を主としたL材パルプ等のウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等が挙げられる。これらの中では、セルロース純度、重合度、結晶化度、及び入手の容易さの観点から、パルプ類が好ましい。
セルロース含有原料の形状は、粉砕装置内への導入に支障がない限り特に制限されないが、操作上の観点から、シート状セルロース含有原料や、シート状セルロース含有原料を裁断又は粗粉砕して得られるペレット状又はチップ状セルロース含有原料、又は微粉砕して得られる粉末状セルロース含有原料であることが好ましい。これらの中でも、高い水溶液粘度を発現し、高いチキソトロピー性を有し、塗布時にさっぱりとした良感触を与える水溶液を生成するCMCを得る観点から、重合度低下の少ないシート状、ペレット状、又はチップ状セルロース含有原料が好ましく、操作性の観点からペレット状又はチップ状セルロース含有原料が好ましい。入手性、操作性の観点から、チップ状パルプが特に好ましい。
チップ状パルプは、シュレッダー(例えば、株式会社明光商会製、商品名:「MSX2000−IVP440F」)や、シートペレタイザー(例えば、株式会社ホーライ製、商品名:「SGG−220−3×3」)を用いることにより得ることができる。
チップ状パルプのチップの大きさは、粉砕をより効率的に行う観点から、好ましくは0.6〜100mm角、より好ましくは0.8〜30mm角、更に好ましくは1〜10mm角である。上記範囲に裁断することにより、必要に応じて行う乾燥処理を効率的に行うことができ、また粉砕時の負荷を軽減することができる。
<塩基化合物>
工程(1)で用いられる塩基化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類等が挙げられる。これらの中では、工程(2)においてセルロース含有原料中のセルロース分子の水酸基を効率的にアルコラート化する観点から、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらの塩基化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
粉砕時の塩基化合物の添加量は、AGU1モルあたり0.7〜1.8モルである。該塩基化合物の添加量が0.7モル以上であれば、工程(2)においてアルカリセルロースが速やかに生成する。また、1.8モル以下であれば、工程(3)のCMC製造工程時の収率が高く、反応終了後に中和を行った場合でも塩の生成量が少ないため、精製工程の省略が可能であるし、精製を行った場合でも精製負荷を低減できる。この観点から、塩基化合物の添加量は、原料セルロースを構成するAGU1モルあたり、好ましくは0.8〜1.8モル、より好ましくは0.8〜1.7モル、更に好ましくは0.9〜1.6モル、より更に好ましくは1.0〜1.5モルである。
塩基化合物の添加方法に特に制限はなく、一括添加でも、分割添加でもよい。一括添加する場合は塩基化合物をセルロース含有原料中に均一に分散させる観点から、(i)塩基化合物をセルロース含有原料中に添加後、撹拌混合するか、又は(ii)セルロース含有原料を撹拌しながら、塩基化合物を添加し混合することが好ましい。
塩基化合物の添加は、後述する粉砕装置の中で行ってもよいし、別途撹拌及び混合を行う装置の中で行ってもよい。
撹拌及び混合を行う装置としては、塩基化合物を原料セルロース中に分散可能な装置であれば特に制限はない。例えば、リボン型混合機、パドル型混合機、円錐遊星スクリュー型混合機、粉体、高粘度物質、樹脂等の混錬に用いられるニーダー等の混合機が挙げられる。これらの中では、水平軸型パドル型混合機がより好ましく、具体的には、チョッパー翼を有する水平軸型のパドル型混合機であるレディゲミキサー(中央機工株式会社製;特徴的なスキ状ショベルを用いる混合機、チョッパー翼を設置可能)、プロシェアミキサー(太平洋機工株式会社製;独自形状のショベル翼による浮遊拡散混合と多段式チョッパー翼による高速剪断分散の2つの機能を備えた混合機)が特に好ましい。
塩基化合物を添加する際の形態に特に制限はないが、粉砕効率の観点から、固体であることが好ましい。塩基化合物を固体の状態で添加する場合、製造時の取り扱い性の観点、及び塩基化合物をセルロース含有原料中に均一に分散させる観点から、塩基化合物はペレット状、粒状又は粉末状であることが好ましく、ペレット状又は粒状であることがより好ましい。なお、塩基化合物が固体であることは、水分を含まないことを意味しない。空気中の水分の吸湿等により、水分を含有していてもよい。
<水分量>
工程(1)における粉砕は、効率的に粉砕を行い粉砕時間を低減することで、高い水溶液粘度を発現し、その水溶液がチキソトロピー性が高く、塗布時にさっぱりとした良感触を与えるCMCを得る観点から、原料セルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で行われる。系内の水分量が、原料セルロースに対して10重量%以下であれば、セルロース含有原料の粉砕効率がよく短時間で粉砕を終了することができ、その結果、高い水溶液粘度を発現し、該水溶液が高いチキソトロピー性を有し、塗布時にさっぱりとした良感触を与えるCMCを得ることができる。該水分量の下限は0重量%である。セルロース含有原料から完全に水分を除去するためには、操作に多大なコストがかかるため、該水分量は原料セルロースに対して0.01重量%以上が好ましい。
よって、原料セルロースに対する水分量は、粉砕効率、重合度の低下抑制、及び操作コストの観点から0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜7重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が更に好ましい。セルロース含有原料中の水分量が、上記範囲を超える場合であっても、粉砕を行う前に、公知の乾燥操作を行い、系内水分量を上記水分量に調整することによって、該セルロース含有原料を使用することができる。
セルロース含有原料中の水分量は、市販の赤外線水分計を用いて測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。また、粉砕時の水分量の測定も、セルロース含有原料の水分量測定と同様に行うことができる。
なお、本発明において、粉砕前、又は粉砕初期の水分量は、特に塩基化合物としてペレット状又は粒状の塩基化合物を用いた場合、塩基化合物がセルロース含有原料中に均一に分散されておらず、サンプルを採取する部位によって水分値が変化する可能性がある。よって、本発明においては、工程(1)の粉砕終了後のセルロース粉末混合物中の水分量の測定値を、工程(1)の粉砕時の水分量とする。
<粉砕>
粉砕は、セルロース含有原料を粉末化して粉末セルロースとし、かつ塩基化合物を粉末セルロース中に可及的に均一に分散させる操作である。この粉砕によって、粉末セルロースのメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る。塩基化合物として固体の塩基化合物を用いた場合は、粉砕によって同時に塩基化合物の粉末化も進行する。
粉末セルロースのメジアン径が150μm以下であれば、工程(2)におけるアルセル化が速やかに進行する。一方、粉末セルロースのメジアン径が10μm以上であることが、高い水溶液粘度を発現し、高いチキソトロピー性を有し、塗布時にさっぱりとした良感触を与える水溶液を生成するCMCが得られることから好ましい。したがって、アルセル化の速度及びアルカリセルロースの生成効率の向上、及び、高い水溶液粘度を発現し、高いチキソトロピー性を有し、塗布時にさっぱりとした良感触を与える水溶液を生成するCMCを得る観点から、粉末セルロースのメジアン径は20〜130μmが好ましく、30〜110μmがより好ましく、40〜100μmが更に好ましく、50〜80μmがより更に好ましい。本発明における粉末セルロースのメジアン径は、実施例に記載の方法により測定される。
粉砕に用いられる粉砕機に特に制限はなく、セルロース含有原料を所望のメジアン径に粉末化でき、塩基化合物をセルロース含有原料中に可及的に均一に分散可能な装置であればよい。
粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミル等が挙げられる。これらの中では、セルロースの粉砕効率、及び生産性の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミル等の振動ミルが更に好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミルがより更に好ましい。
粉砕方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
粉砕に用いる媒体の材質に特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、結晶化度低下効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的な利用の観点から、特に鉄又はステンレスが好ましい。
ボール、ロッド等の媒体の充填率は、粉砕機の機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。充填率がこの範囲内であれば、セルロース含有原料と媒体との接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。
なお、ロッド等の媒体の「充填率」とは、粉砕機容器の内部空間部分の容積に対する、充填した媒体の見かけ体積の比率をいう。ここで「媒体の見かけ体積」は、媒体の質量をその占める嵩密度で割った値であり、嵩密度は媒体を1Lの容器に充填し、その質量より求めることができる。
粉砕機の媒体として用いるロッドとは棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。
粉砕装置が振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、セルロースの粉砕効率の観点から、ロッドの外径は、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mmの範囲である。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望とする粉末セルロース粒子径への効率的な低下ができるとともに、ロッドのかけら等が混入して粉末セルロースが汚染されるおそれが少ない。
粉砕時の温度に特に限定はないが、操作コスト及び高い水溶液粘度を発現し、水溶液が高いチキソトロピー性を有し、塗布時にさっぱりとした良感触を与えるCMCを得る観点から、−100〜200℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、30〜70℃が更に好ましい。
粉砕の時間は、粉末セルロースのメジアン径が所望の値になるよう、適宜調整すればよい。粉砕の時間は、用いる粉砕機や使用するエネルギー量等によって変わるが、通常1分〜12時間であり、粉末セルロースのメジアン径の低下量の観点、及び原料セルロースの重合度低下抑制の観点から、5分間〜3時間が好ましく、8分間〜1時間がより好ましく、10分間〜30分間が更に好ましい。
粉砕時においては、着色や高い水溶液粘度を発現し、水溶液が高いチキソトロピー性を有し、さっぱりとした良感触を与えるCMCを得る観点から、必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気行うことが好ましい。
[工程(2):アルセル化工程]
工程(2)は、工程(1)で得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程(1)で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して70〜180重量%に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程である。
<水分量>
セルロース粉末混合物中の水分量を、工程(1)で用いたセルロース含有原料中のセルロース(原料セルロース)に対して70〜180重量%に調整することで、アルセル化が進み、原料セルロースはアルカリセルロースへと変化し、続く工程3を経ることで、水溶液粘度の高いCMCを得ることができる。
水溶液粘度の高いCMCを得る観点から、セルロース粉末混合物の水分量の調整は、原料セルロースに対して70〜170重量%とすることが好ましく、100〜150重量%とすることがより好ましい。
水をセルロース粉末混合物中に均一に分散させる観点から、水をセルロース粉末混合物中に添加後、撹拌混合するか、又はセルロース粉末混合物を撹拌しながら、水を添加し混合することが好ましい。撹拌及び混合を行う装置に特に制限はなく、その具体例は、塩基化合物の撹拌及び混合の欄で記載した装置と同様である。
水の添加方法にも特に制限はなく、一括添加でも分割添加でもよい。水を一括で添加する場合は、噴霧することが好ましい。
[工程(3):CMC製造工程]
工程(3)は、工程(2)で得られた粉末状のアルカリセルロースにモノハロ酢酸又はその塩を加えて40〜100℃で反応させて、カルボキシメチルセルロースを得る工程である。
<モノハロ酢酸又はその塩>
本発明に用いられるモノハロ酢酸におけるハロゲン原子としては、反応性や汎用性及び取り扱い易さの理由から、好ましくはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子、より好ましくは臭素原子又は塩素原子、更に好ましくは塩素原子である。
モノハロ酢酸の塩を形成しうる金属としては、得られるCMCの高い水溶液粘度発現の観点から、好ましくはリチウム、カリウム又はナトリウム、より好ましくはカリウム又はナトリウム、更に好ましくはナトリウムである。
中和による熱の発生を回避できる観点から、モノハロ酢酸の塩を用いることが好ましい。
本発明に用いられるモノハロ酢酸又はその塩の具体例としては、モノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム等が挙げられ、中和による熱の発生を回避できる観点から、モノクロロ酢酸ナトリウム又はモノクロロ酢酸カリウムが好ましい。
モノハロ酢酸又はその塩は、固体(粉体)のまま使用してもよく、水又は後述する親水性有機溶媒に溶解させて使用してもよい。
セルロース含有原料中のセルロースのAGUに対するモノハロ酢酸又はその塩のモル比(モノハロ酢酸又はその塩/AGU)は、高い水溶液粘度を発現する観点から、好ましくは0.3〜3、より好ましくは0.5〜2.0、更に好ましくは0.5〜1.6であり、より更に好ましくは、0.6〜1.0である。
<反応条件>
CMC製造工程では、工程(2)で得られた粉末状のアルカリセルロースとモノハロ酢酸又はその塩を均一に混合できる混合機を用いることが好ましい。例えば、特開2002−114801号公報の段落〔0016〕で開示しているような、粉体や樹脂等の高粘度物質の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機を反応装置として使用するのが好ましい。ここで、ニーダー等の混合機としては、撹拌が十分できるものであれば特に限定されないが、例えば化学工学協会編「化学工学便覧」改訂五版(丸善株式会社発行)、917〜919頁に記載されている混合機が挙げられる。具体的には、単軸型ニーダーとしては、リボンミキサー、コニーダー、ボテーター、スクリュー型ニーダー等が挙げられ、二軸型ニーダーとしては、双腕型ニーダー等が挙げられる。
反応温度は、副反応を抑制しつつ、反応を効率的に進行させる観点から、40〜100℃であり、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃である。
反応工程における反応雰囲気は、セルロースの重合度の低下を抑制し、高い水溶液粘度を発現する観点から、不活性ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。不活性ガスとしては、好ましくは窒素、ヘリウム又はアルゴン、より好ましくは窒素又はアルゴン、更に好ましくは窒素である。
本発明の方法では、粉末状のアルカリセルロースの分散性を良好にする観点から、好ましくは1〜500rpm、より好ましくは2〜200rpm、更に好ましくは5〜100rpmで撹拌を行う。
反応時間は、反応スケールにもよるが、好ましくは1〜10時間、より好ましくは2〜8時間程度である。
反応の終点は、モノハロ酢酸又はその塩の全添加量の95重量%以上が消費された時点を目安とすることができ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等で反応の進行状況を確認することができる。
反応終了後、得られた反応物にメタノール等の親水性溶媒の水溶液を添加し、撹拌後にろ過することでNaCl等の副生する塩類を除去することができる。CMCはろ過ケーキ分として得られ、アセトン等で洗浄し、効率よく脱水することができる。
(親水性有機溶媒)
工程(3)においては、工程(2)で得られた粉末状のアルカリセルロースとモノハロ酢酸又はその塩との混合性を良好にする観点から、親水性有機溶媒を用いることができる。
親水性有機溶媒としては、アルカリセルロースとモノハロ酢酸又はその塩との反応性の観点から、25℃で水100gに100g以上溶解するものが好ましい。その好適例としては、イソプロパノール、tert−ブタノール等の2級又は3級の低級アルコール;1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジグライム、トリグライム等のエーテル系溶剤;ジメチルスルホキシド等の親水性極性溶剤が挙げられる。これらの中でも、イソプロパノール、tert−ブタノール等の2級又は3級の低級アルコールが好ましく、イソプロパノール、tert−ブタノールがより好ましい。
上記の親水性有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記の親水性有機溶媒の使用量は、工程(1)で用いたセルロース含有原料中のセルロース100重量部に対して、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下、更に好ましくは100重量部以下、より更に好ましくは50重量部以下である。親水性有機溶媒量を上記の範囲にすることにより、凝集が抑えられ、良好な粉体状態を維持したまま効率よく反応を進行させることができ、より効率的に水溶液粘度の高いCMCを得ることができる。
[カルボキシメチルセルロース:CMC]
本発明の方法により得られるCMCは塩であってもよい。塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩又はマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられ、得られるCMCの高い水溶液粘度発現の観点から、アルカリ金属がより好ましく、ナトリウム、カリウムが更に好ましい。
本発明の方法により得られるCMCの1重量%水溶液粘度(全てのカルボキシメチル基がナトリウム塩を形成したCMCの場合)(25℃)は、高い増粘性を発現させる観点から、好ましくは1000mPa・s以上、より好ましくは1500mPa・s以上、更に好ましくは2000mPa・s以上、より更に好ましくは3000mPa・s以上、より更に好ましくは4000mPa・s以上、より更に好ましくは5000mPa・s以上である。上限は特にないが、取り扱い性の観点から、100000mPa・s以下が好ましく、50000mPa・s以下がより好ましい。水溶液粘度の測定方法は実施例に記載の方法により測定される。
本発明の方法により得られるCMCは、化粧料等の増粘剤として有用である。
製造例で得られたチップ状パルプの結晶化度、平均重合度及び水分量、粉末セルロースのメジアン径、CMCの置換度、水溶液粘度、及びチキソトロピー値の測定、感触評価の方法は、下記の方法で行った。
(1)結晶化度の算出
チップ状パルプのセルロースの結晶化度は、チップ状パルプのサンプルのX線回折強度を、株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」(商品名)を用いて以下の条件で測定し、前記式(1)に基づいて算出した。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°で測定した。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。X線のスキャンスピードは10°/minで測定した。
(2)平均重合度の測定(銅−アンモニア法)
((i)測定用溶液の調製)
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、及び25%アンモニア水を加えて、メスフラスコの標線の一寸手前までの量とした。これを30〜40分撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤したパルプ(105℃、20kPaで12時間減圧乾燥したもの)を加え、メスフラスコの標線まで上記アンモニア水を満たした。空気が入らないように密封し、マグネチックスターラーで12時間撹拌して溶解した。同じように添加するパルプ量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
((ii)粘度平均重合度の測定)
上記(i)で得られた測定用溶液(銅アンモニア水溶液)をウべローデ粘度計に入れ、恒温槽(20士0.1℃)中で1時間静置したのち、液の流下速度を測定した。種々のパルプ濃度(g/dL)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))とパルプ無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式により、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を以下の式より求めた。
ηsp/c=(t/t0−1)/c
(式中、cはパルプ濃度(g/dL)である。)
更に、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、以下の式より粘度平均重合度(DPv)を求めた。
DPv=2000×[η]
(式中、2000はセルロースに固有の係数である。)
(3)水分量の測定
パルプ中の水分量は、ハロゲン水分計(メトラー・トレド株式会社製、商品名:「HG53」)を使用し、150℃にて測定を行った。2gのサンプルを用い、50秒間の重量変化率が1mg以下となる点を測定の終点とした。
(4)粉末セルロースのメジアン径の測定
セルロース粉末混合物中の粉末セルロースのメジアン径は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、製品名「LA−920」)を用い、セルロース粉末混合物をエタノール中に分散させて測定した。具体的にはメジアン径の測定前に、セルロース粉末混合物をエタノールに添加して添加後の透過率が70〜95%になる濃度に調整し、1分間超音波分散処理を行って、セルロース粉末混合物中の水酸化ナトリウム(NaOH)の溶解、及び粉末セルロースの分散を行った後、測定を行った。
(5)CMCの置換度の測定
後述する実施例においては、得られたCMCのすべてのカルボキシメチル基は、ナトリウム塩を形成しており、かつ、反応及び中和で生成した副生塩は、精製によって除去されている。よって、精製、乾燥後のCMC中に含まれたナトリウムの数を測定し、これをカルボキシメチル基の数と見なして、CMCの置換度を算出した。
具体的には、精製、乾燥後のCMC試料を、マイクロウェーブ湿式灰化装置(PROLABO社製、商品名:「A−300」)を用いて硫酸−過酸化水素で湿式分解した後、原子吸光装置(株式会社日立製作所製、商品名:「Z−6100型」)を用いて原子吸光法によりNa含量(%)を測定し、下記式(3)により置換度を算出した。
置換度(DS)=(162×Na含量(%))/(2300−80×Na含量(%)) (3)
式(3)中の162は、無水グルコース1モル当たりの分子量の値を示す。2300は、ナトリウムの原子量に百分率の100を乗じた値を示す。また、80は、セルロースの水酸基の水素とカルボキシメチル基(ナトリウム塩)が置換したときの分子量の増加分の値を示す。
なお、置換度とは、CMCのセルロース骨格を構成するアンヒドログルコース単位あたりのカルボキシメチル基の平均数をいう。
(6)水溶液粘度の測定
実施例で得られたCMCの1%水溶液を調製し、E型粘度計(東機産業株式会社製、商品名:「RE80U型粘度計」)を使用し、25℃、ロータ:3°×R17.65、30rpm、3minの条件で測定を行った。
(7)チキソトロピー値の測定
前記した30rpmの粘度測定の場合と同様にして、6rpmで実施例で得られたCMCの1重量%水溶液の粘度を測定し、6rpmで測定した粘度の値を30rpmで測定した粘度の値で除した値をチキソトロピー値とした。数値が大きい程、チキソトロピー性が高いと見なせる。
(8)感触評価の方法
CMCの1重量%水溶液1mlを手の甲に乗せ、指で塗り伸ばして、その感触を下記5段階で5人のパネラーが評価した。評価結果は、5人の平均値をとった。
スコア5:さっぱり感がある
スコア4:ややさっぱり感がある
スコア3:さっぱり感がやや少ない
スコア2:さっぱり感が少ない
スコア1:さっぱり感がない
製造例1(チップ状パルプの製造)
市販の木材パルプシート(テンベック社製、商品名:「Biofloc HV+」、結晶化度74%、含水率6.7重量%)をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製、商品名:「SGG−220−3×3」にかけて3mm角のチップ状(長径(1片のチップの内、最長の長さ)の100個の数平均)にし、チップ状パルプ(結晶化度74%、平均重合度1506、水分量6.7重量%)を得た。
得られたチップ状パルプを80℃、窒素気流下、減圧条件(約70kPa)で15時間乾燥させた(水分量0.3重量%)。
実施例1
(1)工程(1):セルロース粉末混合物の製造
振動ロッドミル(中央化工機株式会社製、商品名:「MB−1」)のポットに、断面が直径30mmの円形のロッド13本、製造例1で得られたチップ状パルプを乾燥重量として110.00g(AGU;0.679mol)、及び、ビーズ状NaOH(東ソ−株式会社製、商品名:「トーソーパール」)28.5g(0.713mol、AGU1モルあたり1.05モル)を入れ、振動数1200cpm、振幅8mm、粉砕時間15分間の条件で混合粉砕した。得られたセルロース粉末混合物中の粉末セルロースのメジアン径は68μmであった。
(2)工程(2):粉末状アルカリセルロースの製造
上記(1)で得られたセルロース粉末混合物126.2g(セルロースとして100.0g、AGU;0.617mol)を乳鉢に入れ、イオン交換水70.0gを入れて5分間混合し、粉末状のアルカリセルロースを得た。
(3)工程(3):CMCの製造
上記(2)で得られた粉末状のアルカリセルロースにモノクロロ酢酸ナトリウム(ClCH2CO2Na、以下「SMCA」ともいう)71.9g(0.617mol)を入れて更に5分間混合した。
上記で得られた混合物を1Lニーダー(株式会社入江商会製、商品名:「PNV−1型」)に仕込み、ニーダー内を減圧(約50kPa)し、次いで窒素で常圧まで戻す操作を3回行って窒素置換した。その後、60℃に昇温し3時間攪拌した。水分量の総和は、工程(1)で用いたチップ状パルプ中のセルロース100重量部に対して82重量部であった。
添加したSMCAの98重量%以上が消費されていることをHPLCで確認して、室温まで冷却し、生成物をニーダーから取り出した。次に、生成物を70重量%メタノール水溶液1000mlに分散した後、酢酸1.9gを加えて余剰の水酸化ナトリウムを中和した。次に、70重量%メタノール水溶液3000mlを添加し、攪拌することで、副生塩及び未反応物等を溶出させた。得られたスラリーをろ過(ろ紙として東洋濾紙株式会社製、商品名:「定性濾紙No.2」を使用)し、ろ過ケーキを、アセトン1000mlで洗浄し、60℃、窒素気流下、減圧条件(約70kPa)で15時間乾燥して、127.6gのCMCを得た。
得られたCMCのアンヒドログルコース単位当たりの置換度は0.64であり、1重量%水溶液粘度(25℃)は3080mPa・sであった。また、チキソトロピー値は2.20であった。1重量%水溶液の感触評価はさっぱり感があるスコア4.6であった。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1の工程(2)において、添加するイオン交換水量を100.0gに変更した点を除き、実施例1と同様にしてCMCを得た。結果を表1に示す。
実施例3
実施例1の工程(2)において、添加するイオン交換水量を120.0gに変更した点を除き、実施例1と同様にしてCMCを得た。結果を表1に示す。
実施例4
実施例1の工程(2)において、添加するイオン交換水量を150.0gに変更した点を除き、実施例1と同様にしてCMCを得た。結果を表1に示す。
実施例5
実施例1の工程(1)において、AGU1モルあたり0.80モルのNaOH量とするために、添加するビーズ状水酸化ナトリウムを21.7gに変更した点、及び工程(2)で用いるセルロース粉末混合物を120.1gに変更した点を除き、実施例2と同様にしてCMCを得た。結果を表1に示す。
実施例6
実施例1の工程(1)において、AGU1モルあたり1.20モルのNaOH量とするために、添加するビーズ状NaOHを32.6gに変更した点、及び工程(2)で用いるセルロース粉末混合物を129.9gに変更した点を除き、実施例2と同様にしてCMCを得た。結果を表1に示す。
実施例7
実施例1の工程(1)において、AGU1モルあたり1.50モルのNaOH量とするために、添加するビーズ状NaOHを40.7gに変更した点、及び工程(2)で用いるセルロース粉末混合物を137.3gに変更した点を除き、実施例2と同様にしてCMCを得た。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1の工程(2)において、添加するイオン交換水量を40.0gに変更した点を除き、実施例1と同様にしてCMCを得た。結果を表1に示す。
比較例2
実施例1の工程(2)において、添加するイオン交換水量を200.0gに変更した点を除き、実施例1と同様にしてCMCを得た。結果を表1に示す。
比較例3
実施例1の工程(1)において、AGU1モルあたり0.60モルのNaOH量とするために、添加するビーズ状NaOHを16.3gに変更した点、及び工程(2)で用いるセルロース粉末混合物を115.1gに変更した点を除き、実施例2と同様にしてCMCを得た。結果を表1に示す。
比較例4
(1)セルロース粉末の製造
市販のコットンリンターパルプシート(山東高蜜化繊公司製、商品名:「PCS2400」、結晶化度94%、含水率6.5重量%)をシートペレタイザー(株式会社ホーライ製、商品名:「SGG−220−3×3」にかけて3mm角のチップ状(長径(1片のチップの内、最長の長さ)の100個の数平均)にし、チップ状パルプ(結晶化度94%、平均重合度2352、水分量6.5重量%)を得た。
振動ロッドミル(中央化工機株式会社製、商品名:「MB−1」)のポットに、断面が直径30mmの円形のロッド13本、上記で得られたチップ状パルプを200.0g入れた。振動数1200cpm、振幅8mm、粉砕時間30分間の条件で粉砕し、セルロース粉末(結晶化度84%、平均重合度1623、水分量6.5重量%)を得た。
得られたセルロース粉末を80℃、窒素気流下、減圧条件(約70kPa)で15時間乾燥させた(水分量0.1重量%)。
(2)CMCの製造
1Lニーダー(株式会社入江商会製、商品名:「PNV−1型」)にイソプロパノール305.2g、28%水酸化ナトリウム水溶液55.4g(0.388mol、AGU1モルあたり0.87モル)、上記セルロース粉末を42.8g(AGU;0.264mol)仕込んだ。その後、25℃で1.5時間攪拌し、アルカリセルロースを得た。そこへ、モノクロロ酢酸17.5g(0.185mol、AGU1モルあたり0.70モル)をイソプロパノール36.0g及びイオン交換水4.0gの混合液に溶解したものを添加した。その後、70℃まで30分間かけて昇温し、70℃で1時間攪拌した。この反応系の場合、イソプロパノールとイオン交換水の混合溶液中にセルロース反応混合物が存在するスラリー状態であった。
添加したモノクロロ酢酸の98重量%以上が消費されていることをHPLCで確認して、室温まで冷却し、生成物をニーダーから取り出した。次に、生成物を70重量%メタノール水溶液1000mlに分散した後、酢酸1.1gを加えて余剰の水酸化ナトリウムを中和した。次に、70重量%メタノール水溶液3000mlを添加し、攪拌することで、副生塩及び未反応物等を溶出させた。得られたスラリーをろ過(ろ紙として東洋濾紙株式会社製、商品名:「定性濾紙No.2」を使用)し、ろ過ケーキを、アセトン1000mlで洗浄し、60℃、窒素気流下、減圧条件(約70kPa)で15時間乾燥して、51.7gのCMCを得た。
得られたCMCのアンヒドログルコース単位当たりの置換度は0.50であり、1重量%水溶液粘度(25℃)は1591mPa・sであった。また、チキソトロピー値は1.30であった。1重量%水溶液の感触評価はさっぱり感がないスコア1.2であった。結果を表1に示す。
比較例5
CMCとして市販品(日本製紙ケミカル株式会社製、商品名:「サンローズF300MC」)を用いた。結果を表1に示す。
Figure 2013133398
工程(2)の水分量が70〜180重量%を外れた比較例1、2では、水溶液粘度が高いCMCは得られなかった。また、得られたCMCは、チキソトロピー性に劣り、さっぱり感がなく、使用感が悪かった。
工程(1)における塩基化合物(NaOH)の量が、セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.7モル未満である比較例3でも水溶液粘度が高いCMCは得られなかった。また、得られたCMCは、チキソトロピー性に劣り、さっぱり感がなく、使用感が悪かった。
イソプロパノールとイオン交換水の混合液中、スラリー状態で製造した比較例4では、水溶液粘度は高いが、チキソトロピー性に劣り、さっぱり感がなく、使用感が悪かった。
市販のCMC(商品名:「サンローズF300MC」)を用いた比較例5では、水溶液粘度は高いが、チキソトロピー性に劣り、さっぱり感がなく、使用感が悪かった。
これらの比較例に対し、実施例1〜7で得られたCMCは、水溶液粘度が高く、チキソトロピー性に優れ、さっぱりとした使用感があった。
本発明の方法により得られる水溶液粘度の高いカルボキシメチルセルロースは、チキソトロピー性に優れ、塗布時にさっぱりとした良感触を与えるため、化粧料等の増粘剤として有用である。

Claims (3)

  1. 下記工程(1)〜(3)を有するカルボキシメチルセルロースの製造方法。
    工程(1):セルロース含有原料中のセルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり0.7〜1.8モルの塩基化合物の存在下、かつ該セルロース含有原料中のセルロースに対する水分量が10重量%以下の条件下で、該セルロース含有原料を粉砕し、粉砕されたセルロース含有原料のメジアン径が150μm以下であるセルロース粉末混合物を得る工程
    工程(2):工程(1)で得られたセルロース粉末混合物に水を添加し、該セルロース粉末混合物中の水分量を、工程(1)で用いたセルロース含有原料中のセルロースに対して70〜180重量%に調整して、粉末状のアルカリセルロースを得る工程
    工程(3):工程(2)で得られた粉末状のアルカリセルロースにモノハロ酢酸又はその塩を加えて40〜100℃で反応させて、カルボキシメチルセルロースを得る工程
  2. 塩基化合物がアルカリ金属の水酸化物である、請求項1に記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。
  3. モノハロ酢酸又はその塩が、モノクロロ酢酸ナトリウム又はモノクロロ酢酸カリウムである、請求項1又は2に記載のカルボキシメチルセルロースの製造方法。
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WO2024057829A1 (ja) * 2022-09-15 2024-03-21 日本製紙株式会社 セルロース系ポリマーの粉砕方法

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