JP2017128629A - ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法 - Google Patents

ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡便な方法で高い反応選択率を保ったまま、水溶性に優れるヒドロキシプロピルセルロースを製造する方法を提供する。【解決手段】セルロースを、金属水酸化物、該セルロースに対して1.0質量%以上50質量%以下の水、及び該セルロースに対して1.0質量%以上100質量%以下の非水溶媒の存在下で酸化プロピレンと反応させる工程を有する、ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法に関する。
ヒドロキシプロピルセルロースは、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物の配合成分、分散剤、改質剤、凝集剤等に用いられ、その用途は多岐にわたる。これらの用途では製品の透明性が望まれることが多いことから、使用するヒドロキシプロピルセルロースには優れた水溶性が求められる。
ヒドロキシプロピルセルロースの製造原料であるセルロースは、結晶性が高く、反応性に乏しいため、その結晶性を低減し、反応性を改善する必要がある。
一般的なヒドロキシプロピルセルロースの製造方法としては、セルロースと大量の水及び大過剰のアルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合してアルカリセルロースとする、アルセル化又はマーセル化と呼ばれるセルロースの活性化処理の後、酸化プロピレンを反応させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、セルロースをアルカリ水溶液で処理して得られるアルカリセルロースを酸化プロピレンでエーテル化させる際に、親水性有機溶媒存在下で該反応を行い、反応途中で部分的に中和した後、更に酸化プロピレンを添加して反応を行う、アルコール類及び水に対して優れた溶解性を有するヒドロキシプロピルセルロースを製造できることが開示されている。
また、ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法として、機械力を用いて粉砕した低結晶性の粉末セルロース、セルロースのアンヒドログルコース単位(AGU)に対して当量程度のアルカリ金属水酸化物及び水を混合してアルカリセルロースとした後、粉体状態のままプロピレンオキシドと反応させる、反応効率の高い製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−186101号公報 特開2009−143997号公報
しかしながら、特許文献1の製造方法は、大量の水、大過剰のアルカリを使用してセルロース誘導体を製造する手法であるため、酸化プロピレンの反応選択率が低い上に、大量の塩が副生して、その副生塩を除去するための精製負荷が問題になる。
また、特許文献2の製造方法は、粉末状態で反応を行う手法であるため、酸化プロピレンの反応均一性が低下し、これに起因して、得られるヒドロキシプロピルセルロースの水溶性が低下することが問題になる。
本願の課題は、簡便な方法で高い反応選択率を保ったまま、水溶性に優れるヒドロキシプロピルセルロースを製造する方法を提供することにある。
本発明は、セルロースを金属水酸化物、該セルロースに対して1.0質量%以上50質量%以下の水、及び該セルロースに対して1.0質量%以上100質量%以下の非水溶媒の存在下で酸化プロピレンと反応させる工程を有する、ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法に関する。
本発明によれば、セルロースと酸化プロピレンとの反応において高い反応選択率を維持しつつ、水溶性に優れるヒドロキシプロピルセルロースを製造できる。
[ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法]
本発明のヒドロキシプロピルセルロースの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)は、セルロースを、金属水酸化物、該セルロースに対して1.0質量%以上50質量%以下の水、及び該セルロースに対して1.0質量%以上100質量%以下の非水溶媒の存在下で酸化プロピレンと反応させる工程を有することを特徴とする。本発明において、セルロースに対する質量%とは、後述する原料セルロースから水を差し引いた残余の量に対する質量%をいう。
本発明の製造方法によれば、セルロースと酸化プロピレンとの反応において高い反応選択率を維持しつつ、水溶性に優れるヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」ともいう)を製造できるという効果を奏する。このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
セルロースに対して50質量%より多くの水の存在下で、酸化プロピレンを添加して反応を行った場合、セルロースのI型結晶形成が促進されるために、該セルロースの非晶質部分に塩基性化合物である金属水酸化物が局在化して酸化プロピレンが不均一に反応し、水溶性が低下すると考えられる。さらに水は酸化プロピレンと反応するため、反応系内の水分量が多いほど水と酸化プロピレンとの反応が進行し、酸化プロピレンのセルロースに対する反応選択率が低下すると考えられる。
また、セルロースに対して50質量%以下の水の存在下で、酸化プロピレンを添加して反応を行った場合、水と酸化プロピレンの反応割合を低減させることができ、酸化プロピレンのセルロースに対する反応選択率は向上する。一方、反応系内の溶媒量が少ないために金属水酸化物がセルロース全体に浸透せずに一部の非晶質部分に局在化し、さらに、酸化プロピレンの分散性も低下するために、酸化プロピレンが不均一に反応して、得られるHPCの水溶性が低下すると考えられる。
これに対し、本発明の製造方法では、セルロースに対して1.0質量%以上50質量%以下の水の存在下、該セルロースに対して1.0質量%以上100質量%以下の非水溶媒を添加して反応を行うことにより、塩基性化合物である金属水酸化物がセルロースに浸透しやすくなり、該金属水酸化物の局在化を妨げることができる。加えて、酸化プロピレンの分散性を向上することができる。その結果、酸化プロピレンがセルロースと均一に反応し、得られるHPCの水溶性が向上したと考えられる。さらに、非水溶媒として、酸化プロピレンと反応しない溶媒を選択することにより、酸化プロピレンのセルロースに対する反応選択率を低下させることなく、より高い反応選択率を維持することができるものと考えられる。
<セルロース>
本発明の製造方法に用いられるセルロースとしては、化学的に純粋なセルロースの他、各種木材チップ、各種樹木の剪定枝材、間伐材、枝木材、建築廃材、工場廃材等の木材類;木材から製造される木材パルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、段ボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等、種々のセルロース含有原料を用いることができる。これらの中では、原料中のセルロース純度、セルロースの重合度、及び入手容易性の観点から、各種木材チップ、各種樹木の剪定枝材、間伐材、枝木材、建築廃材、工場廃材等の木材類;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類が好ましい。本発明においては、原料に用いる、化学的に純粋なセルロース又はセルロース含有原料をまとめて便宜的に「原料セルロース」という。
原料セルロース中のセルロースの平均重合度は特に限定はないが、得られるHPCを各種用途へ用いた際の性能の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは150以上であり、入手容易性の観点から、該平均重合度は好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1000以下である。
原料セルロースの平均重合度とは、実施例に記載の銅−アンモニア法等により測定される粘度平均重合度をいう。
原料セルロースの形状は、製造装置内への導入に支障がない限り特に限定されないが、操作上の観点から、シート状、ペレット状、チップ状、綿状又は粉末状であることが好ましく、チップ状、綿状又は粉末状がより好ましく、操作上の観点、及び酸化プロピレンとの反応性を向上させる観点から、粉末状が更に好ましい。チップ状のセルロースは、例えば原料セルロースを裁断処理することで得ることができる。粉末状のセルロースは、例えば原料セルロースを必要に応じて裁断処理及び乾燥処理した後、粉砕処理することで得ることができる。粉砕処理では、原料セルロースを粉末化するとともに結晶化度を低減することができるので、反応性をより向上させることができる。以下、裁断処理、乾燥処理、及び粉砕処理について説明する。
(裁断処理)
原料セルロースの種類や形状によっては、前処理として裁断処理を行うことが好ましい。原料セルロースを裁断する方法は、原料セルロースの種類や形状により適宜選択することができるが、例えば、シュレッダー、スリッターカッター及びロータリーカッターから選ばれる1種以上の裁断機を使用する方法が挙げられる。
シート状の原料セルロースを用いる場合、裁断機としてシュレッダー又はスリッターカッターを使用することが好ましく、生産性を向上させる観点から、スリッターカッターを使用することがより好ましい。
スリッターカッターは、シートの長手方向に沿った縦方向にロールカッターで縦切りして、細長い短冊状とし、次に、固定刃と回転刃でシートの幅方向に短く横切りする裁断機であって、スリッターカッターを用いることにより、原料セルロースの形状をさいの目形状にすることができる。スリッターカッターとしては、株式会社荻野精機製作所製の裁断機(スーパーカッター)、株式会社ホーライ製のシートペレタイザー等を好ましく使用でき、この装置を使用すると、シート状の原料セルロースを約1〜20mm角に裁断することができる。
間伐材、剪定枝材、建築廃材等の木材類、あるいはシート状以外の原料セルロースを裁断する場合には、ロータリーカッターを使用することが好ましい。ロータリーカッターは、回転刃とスクリーンから構成され、ロータリーカッターを用いることにより、回転刃によりスクリーンの目開き以下の大きさに裁断された原料セルロースを容易に得ることができる。なお、必要に応じて固定刃を設け、回転刃と固定刃により裁断することもできる。
ロータリーカッターを使用する場合、得られる裁断処理物の大きさは、スクリーンの目開きを変えることにより、制御することができる。
裁断処理後に得られる原料セルロースの大きさとしては、生産性を向上させる観点から、好ましくは1mm角以上、より好ましくは2mm角以上であり、後の粉砕処理における粉砕に要する負荷を軽減する観点、及び後述する乾燥処理を効率よく容易に行う観点から、好ましくは70mm角以下、より好ましくは50mm角以下である。
(乾燥処理)
原料セルロースを粉砕処理する際のの水分量の下限は、原料セルロースに対して0質量%であるが、生産性を向上させる観点から、該水分量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上である。また、原料セルロースを効率よく粉砕及び低結晶化する観点から、該水分量は好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、より更に好ましくは1.0質量%以下、より更に好ましくは0.6質量%以下である。
一般に、市販のパルプ類、バイオマス資源として利用される紙類、木材類、植物茎・葉類、植物殻類等の原料セルロースは、5質量%を超える水分を含有しており、通常5〜30質量%程度の水分を含有している。したがって、原料セルロース、好ましくは裁断処理後に得られる原料セルロースの乾燥処理を行うことによって、原料セルロースの水分量を調整することが好ましい。
当該水分量は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
乾燥処理における温度は、効率よく乾燥を行う観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、品質確保の点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは170℃以下である。乾燥処理時間は、水分量を低減する観点から、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.1時間以上、更に好ましくは0.5時間以上であり、効率よく乾燥を行う観点から、好ましくは2時間以下、より好ましくは1.5時間以下である。必要に応じて減圧下で乾燥処理を行ってもよく、効率よく乾燥を行う観点から、絶対圧力は、好ましくは1kPa以上、より好ましくは50kPa以上、更に好ましくは100kPa以上であり、また、好ましくは120kPa以下、より好ましくは105kPa以下である。
乾燥方法としては、公知の乾燥手段を適宜選択すればよく、例えば、「粉体工学概論」(社団法人日本粉体工業技術会編集 粉体工学情報センター1995年発行) 176頁に記載の方法が挙げられる。該乾燥手段としては、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。
これらの乾燥方法は1種でも又は2種以上を組み合わせて使用してもよく、効率よく乾燥を行う観点から、伝導受熱乾燥法が好ましい。乾燥処理はバッチ処理、連続処理のいずれでも可能であるが、生産性を向上させる観点から連続処理が望ましい。
連続乾燥機としては、伝熱効率の観点から伝導受熱型の横型攪拌乾燥機が好ましい。さらに、微粉が発生しにくく、連続排出の安定性を向上させる観点から2軸の横型攪拌乾燥機が好ましい。2軸の横型攪拌乾燥機としては、株式会社奈良機械製作所製の2軸パドルドライヤーを好ましく使用できる。
(粉砕処理)
粉砕処理で用いられる粉砕機に特に制限はなく、原料セルロースを粉末化できる装置であればよい。
粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動式媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミル等が挙げられる。
これらの中では、原料セルロースの粉砕効率及び低結晶化効率を向上させる観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミル等の振動ミルが更に好ましく、振動ロッドミルがより更に好ましい。粉砕方法としては、バッチ式、連続式のいずれでもよい。
粉砕処理に用いる装置の材質、媒体の材質に特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、原料セルロースの粉砕効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的な利用の観点から、特に鉄又はステンレスが好ましい。
原料セルロースの粉砕効率及び低結晶化効率を向上させる観点から、用いる装置が振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、ロッドの外径は、粉砕効率の観点から好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、同様の観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下である。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、原料セルロースの粉砕効率、及び生産性を向上させる観点から、粉砕容器の体積に対して、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、更に好ましくは50体積%以上、60体積%以上であり、また好ましくは97体積%以下、より好ましくは90体積%以下、更に好ましくは80体積%以下、より更に好ましくは70体積%以下、である。
充填率がこの範囲内であれば、原料セルロースとロッドとの接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、振動ミルの攪拌部の容積に対するロッドの体積をいう。
粉砕処理に用いる粉砕機は1種でもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また原料セルロースの粉砕効率及び低結晶化効率を向上させる観点から、粉砕処理は多段階に分けて行ってもよい。粉砕処理を多段階に分けて行う場合、例えば、裁断処理及び乾燥処理を行った原料セルロースを粗粉砕処理し、次いで、小粒径化処理を行う方法が挙げられる。小粒径化処理では、篩を用いて粗粉を除去する操作を併用してもよい。
粗粉砕処理及び小粒径化処理には、前述した粉砕機を用いることができる。原料セルロースの粉砕効率及び低結晶化効率を向上させる観点から、粗粉砕処理で用いる粉砕機は容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ミルが更に好ましく、振動ロッドミルがより更に好ましい。また小粒径化処理で用いる粉砕機は容器駆動式媒体ミルが好ましく、遊星ボールミルがより好ましい。
粉砕処理時の温度に特に限定はないが、セルロースの分解及び操作コストを抑制する観点から、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−10℃以上、更に好ましくは0℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。処理時の発熱により昇温が認められる場合には、冷却等の操作を行うことができる。
粉砕処理の時間は、原料セルロースが粉末化されるよう、適宜調整すればよい。粉砕処理の時間は、用いる粉砕機や使用するエネルギー量等によって変わるが、原料セルロースを十分に粉末化させる観点から、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.05時間以上であり、生産性を向上させる観点から、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
上記の粉砕処理により、原料セルロースの粉末化及び低結晶化が進行し、本発明の製造方法に用いるのに好適な粉末状の原料セルロースを得ることができる。
粉砕処理後に得られる粉末状の原料セルロースの結晶化度は、酸化プロピレンとの反応性を向上させる観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下であり、好ましくは0%以上である。セルロースの結晶化度が小さいほど、結晶部と非晶部の反応速度に差が生じにくく、より均一に反応が進行する。
本発明において、セルロースの結晶化度とは原料セルロースのI型結晶構造に由来する結晶化度を示し、X線結晶回折測定の結果から下記計算式(1)により求められる。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
粉砕処理後に得られる粉末状の原料セルロースの平均重合度は、水溶液とした際の粘性が十分なHPCが得られる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは150以上である。また、原料セルロースの入手容易性の観点から、該平均重合度は好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1000以下、より更に好ましくは200以下である。
粉砕処理後に得られる粉末状の原料セルロース中の水分量は、0質量%以上であるが、生産性を向上させる観点及び入手容易性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上である。また、セルロースと酸化プロピレンとの反応時の水分量調節の容易性の観点から、該水分量は好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは3.0質量%以下である。
また、粉砕処理後に得られる粉末状の原料セルロースのメジアン径は、反応均一性の観点及び粉末セルロースの生産性を向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
<HPC>
本発明において、好ましくは上記のようにして得られた粉末状の原料セルロースと酸化プロピレンとを所定の条件下で反応させて、HPCを得ることができる。
本発明の製造方法で得られるHPCに導入された、セルロースの主鎖を構成するアンヒドログルコース単位(以下「AGU」ともいう)あたりのヒドロキシプロピル基数の平均値(以下「ヒドロキシプロピル基の置換度」ともいう)には特に制限はないが、得られるHPCの水溶性を向上させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.25以上、より更に好ましくは0.40以上である。一方、HPCの水溶液粘度、及び経済性の観点から、HPCのヒドロキシプロピル基の置換度は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.0以下、より更に好ましくは0.75以下、より更に好ましくは0.60以下である。
HPCのヒドロキシプロピル基の置換度は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
<金属水酸化物>
本発明の製造方法は、セルロース(好ましくは上記のようにして得られた粉末状の原料セルロース)を、金属水酸化物及び所定の溶媒の存在下で酸化プロピレンと反応させる工程を有する。金属水酸化物の存在下で反応を行うことにより、セルロースの反応活性が向上し、セルロースと酸化プロピレンとの反応(以下「ヒドロキシプロピル化反応」ともいう)を効率よく進行させることができる。
本発明で用いられる金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。これらの中では入手容易性及び経済性の観点から、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、水酸化ナトリウムが更に好ましい。これらの金属水酸化物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
金属水酸化物の添加方法に特に限定はなく、一括添加でも、分割添加でもよい。また、金属水酸化物は固体状態で添加してもよく、水溶液としてから添加してもよい。
ヒドロキシプロピル化反応において用いられる金属水酸化物の量は、得られるHPCの水溶性の向上、及び反応時間の短縮の観点から、セルロースのAGU1モルに対して、好ましくは0.01当量以上、より好ましくは0.05当量以上、更に好ましくは0.1当量以上である。また、酸化プロピレンの反応選択率を向上させる観点から、好ましくは3.0当量以下、より好ましくは1.0当量以下、更に好ましくは0.5当量以下、より更に好ましくは0.3当量以下である。
<水>
本発明の製造方法ではまた、セルロースと酸化プロピレンとの反応を、該セルロースに対して1.0質量%以上50質量%以下の水、及び1.0質量%以上100質量%以下の非水溶媒の存在下で行う。
ここで、当該水の量がセルロースに対して1.0質量%以上であると金属水酸化物が溶解及び分散し、セルロースと酸化プロピレンの反応が均一になるため得られるHPCの水溶性が向上する。また、当該水の量がセルロースに対して50質量%以下であると、得られるHPCの水溶性、及び酸化プロピレンのセルロースに対する反応選択率が向上する。
金属水酸化物を溶解させる観点から、当該水の量は、セルロースに対して、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、反応選択率を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
なお、本発明に係るセルロースと酸化プロピレンとの反応中に存在する水は、原料セルロースに由来するもの、又は当該反応前に添加するもののいずれであってもよい。
<非水溶媒>
酸化プロピレンのセルロースに対する反応選択率を低下させることなく、高い反応選択率を維持する観点から、本発明の製造方法に係るセルロースと酸化プロピレンとの反応に、酸化プロピレンと反応し難い非水溶媒を用いる。当該非水溶媒としては、極性溶媒、非極性溶媒のいずれも用いることができる。なお、極性溶媒とは、溶解度パラメータ(POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons, Incに記載のSP値)が9以上の溶媒であり、非極性溶媒とは、溶解度パラメータが9未満の溶媒である。
極性溶媒としては、プロトン性極性溶媒、非プロトン性極性溶媒が挙げられる。プロトン性極性溶媒としては、メタノール(メタノールの前記溶解度パラメータは14.5である。以下、前記溶解度パラメータを有する溶媒については、溶媒名とともにカッコ書きで前記溶解度パラメータの数値を記す。)、エタノール(12.7)、1−プロパノール(11.9)、イソプロパノール(11.5)、1−ブタノール(11.4)、2−ブタノール(10.8)、t−ブタノール(10.6)、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、(1−メチルエトキシ)−2−プロパノール、1−(2−ブトキシエトキシ)−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の1価アルコール;エチレングリコール(14.6)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ポリアルキレングリコール等の2価アルコール;ヘキサントリオール、オクタントリオール、デカントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチルオキシルトリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセリン(16.5)等の3価アルコール等が挙げられる。
非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリル(11.9)、N,N−ジメチルホルムアミド(12.1)、アセトン(9.9)、テトラヒドロフラン(9.1)、1,4−ジオキサン(10.0)、ジメチルスルホキシド(14.5)、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム(9.3)等が挙げられる。
非極性溶媒としては、トルエン(8.9)、キシレン(8.8)、ヘキサン(7.4)、四塩化炭素等が挙げられる。金属水酸化物の転移能向上及びHPCの反応原料の分散性向上の観点から、非極性溶媒の中では、トルエン及びクロロホルムから選ばれる1種以上が好ましく、トルエンがより好ましい。
上記の中でも、水と相溶する観点から、本発明に用いる非水溶媒は極性溶媒が好ましく、プロトン性極性溶媒がより好ましく、1価及び2価アルコールから選ばれる1種以上が更に好ましく、1価アルコールから選ばれる1種以上がより更に好ましく、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、及び1−メトキシ−2−プロパノールから選ばれる1種以上がより更に好ましく、t−ブタノール及び1−メトキシ−2−プロパノールから選ばれる1種以上がより更に好ましく、t−ブタノールがより更に好ましい。
セルロースと酸化プロピレンとの反応における非水溶媒の量は、セルロースに対し1.0質量%以上100質量%以下である。当該非水溶媒の量がセルロースに対して1.0質量%以上であるとセルロースと酸化プロピレンとの反応均一性向上効果が得られ、得られるHPCの水溶性が向上する。また、当該非水溶媒の量がセルロースに対して100質量%以下であると、酸化プロピレンのセルロースに対する反応選択率が向上する。また、反応時に固相状態を維持できるため反応時間が短くなり、生産性が向上する。
反応時の非水溶媒の量は、反応の均一性及び得られるHPCの水溶性を向上させる観点から、セルロースに対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。一方で、反応選択率を維持する観点、及び反応時に固相状態を維持して反応時間を短くする観点からは、非水溶媒の量は、セルロースに対し、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
セルロースと酸化プロピレンとの反応において、水に対する非水溶媒の質量比(非水溶媒/水)は、反応選択率を維持する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上である。一方で、反応時間を短縮する観点からは、当該質量比(非水溶媒/水)は、好ましくは50以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5.0以下、より更に好ましくは3.0以下である。
セルロースと酸化プロピレンとの反応において、水及び非水溶媒の合計量は、セルロースに対して、好ましくは15質量%以上120質量%以下であり、反応均一性及び得られるHPCの水溶性を向上させる観点から、該合計量は、セルロースに対して好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上である。一方、反応選択率を維持し、及び粉末状の原料セルロースの凝集を抑制して反応効率を向上させる観点から、該合計量は、セルロースに対して好ましくは120質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
<酸化プロピレン>
本発明で用いる酸化プロピレンの量は、所望するHPCのヒドロキシプロピル基の置換度に応じて適宜選択できるが、得られるHPCの水溶性を向上させる観点から、セルロースのAGUに対し、好ましくは0.011当量以上、より好ましくは0.11当量以上、更に好ましくは0.28当量以上である。一方、反応生成物の水溶液粘度を向上させる観点、及び経済性の観点から、本発明で用いる酸化プロピレンの量は、セルロースのAGUに対し、好ましくは3.3当量以下、より好ましくは2.2当量以下、更に好ましくは1.1当量以下である。
本発明の製造方法において、セルロース、金属水酸化物、水及び非水溶媒、並びに酸化プロピレン(以下、「各原料」ともいう)の添加順序には特に制限はないが、例えば(a)セルロース、金属水酸化物及び水を混合し、次いで非水溶媒を添加した後、酸化プロピレンを滴下して反応させる方法、(b)セルロースに酸化プロピレンを一括添加した後、金属水酸化物を徐々に加えて反応させる方法が挙げられる。(b)の方法の場合、水及び非水溶媒の添加順序は任意でよい。
反応均一性の観点、及び酸化プロピレン自身の重合を避ける観点からは、(a)の方法がより好ましい。また、酸化プロピレンの沸点以上の温度で反応させる場合には、還流管を備えた反応装置を用い、酸化プロピレンを徐々に滴下させながら行うのが好ましい。
HPCの製造においては、装置を使用して各原料の混合及び反応を行ってもよい。当該装置としては、撹拌が可能なレディゲミキサー等のミキサーや、粉体、高粘度物質、樹脂等の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機を挙げることができる。
HPC製造時の反応温度は、反応速度を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、より更に好ましくは40℃以上である。また、上記各原料の分解を抑制する観点から、反応温度は好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下、より更に好ましくは60℃以下である。
HPC製造時の反応時間は、反応速度及び反応収率を向上させる観点から、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは3時間以上、より更に好ましくは12時間以上、より更に好ましくは24時間以上である。また、アンヒドログルコース由来の主鎖の分子量の低下を抑制する観点からは、該反応時間は、好ましくは96時間以下、より好ましくは72時間以下である。
上記反応は、HPCの着色、及びアンヒドログルコース由来の主鎖の分子量の低下を抑制する観点から、必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
反応終了後は、酸性化合物を用いて金属水酸化物を中和する工程を行うことができる。中和塩の生成を抑制する観点から、全ての反応の終了後に中和工程を行うことが好ましい。酸性化合物としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸、グリコール酸等の有機酸を用いることができる。中和効率の観点、及びHPCのアンヒドログルコース由来の主鎖の分子量の低下を抑制する観点から、当該酸性化合物としては有機酸が好ましく、カルボン酸がより好ましく、ヒドロキシ酸が更に好ましく、乳酸、クエン酸、及びグリコール酸から選ばれる1種以上がより更に好ましく、乳酸がより更に好ましい。
反応終了後に得られたHPCは、必要に応じて、ろ過精製により分別したり、熱水、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等で洗浄して未反応の酸化プロピレン、並びに酸化プロピレン由来の副生物、中和等により副生した塩類を除去したりすることもできる。その他、精製方法としては、再沈殿精製、遠心分離、透析膜を使用した膜精製等、一般的な精製方法を用いることができる。これらの精製方法の中では、精製効率、及び得られるHPC純度の高さの観点から、ろ過精製又は膜精製が好ましい。
得られたHPCは、必要に応じ乾燥を行うこともできる。乾燥方法としては特に制限はないが、乾燥効率を向上させる観点からは減圧乾燥を行うことが好ましく、凍結乾燥を行うことがより好ましい。
本発明の製造方法で得られたHPCは水溶性に優れ、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物の配合成分、分散剤、改質剤、凝集剤等に好適である。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、「%」は「質量%」を意味する。
平均重合度、結晶化度、水分量、メジアン径、ヒドロキシプロピル基の置換度、反応選択率、及び水溶性の測定ないし算出は、下記の方法により行った。
(1)平均重合度の測定
実施例及び比較例において用いた原料セルロース(パルプ)の粘度平均重合度は、以下に示す方法によって測定した。
(i)測定用溶液の調製
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅(関東化学社製)0.5g、25%アンモニア水(アルドリッチ社製)20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅(関東化学社製)1.0g、及び25%アンモニア水を加えた。これを30〜40分、25℃で撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤した粉砕パルプ(105℃、20kPa[abs]で12時間減圧乾燥したもの)を加え、メスフラスコの標線まで前記アンモニア水を満たした。マグネチックスターラーで12時間、25℃で撹拌して溶解した。同じように添加するパルプ量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
(ii)粘度平均重合度の測定
前記(i)で得られた測定用溶液をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20±0.1℃)中で1時間静置したのち、液の流下速度を測定した。種々のパルプ濃度(g/dL)の測定用溶液の流下時間(t(秒))とパルプ無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式により、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を以下の式より求めた。
ηsp/c=(t/t0−1)/c
(式中、cはパルプ濃度(g/dL)である。)
更に、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、以下の式より粘度平均重合度(DPv)を求めた。
DPv=2000×[η]
(式中、2000はセルロースに固有の係数である。)
(2)結晶化度の算出
セルロースの結晶化度は、それぞれのパルプのX線回折強度を、X線回折装置「RINT 2500VC X−RAY diffractometer」(リガク社製)を用いて以下の条件で測定し、前記計算式に基づいて算出した。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100
〔式中、I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kV,管電流:120mA,測定範囲:2θ=5〜45°,X線のスキャンスピード:10°/minであり、測定用のサンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮して作製した。
(3)水分量の測定
原料セルロース中の水分量は、赤外線水分計「FD−610」(ケット科学研究所社製)を用いて測定した。温度120℃にて測定を行い、30秒間の質量変化率が0.1質量%以下となる点を測定の終点とした。前記条件下において測定された水分量の値を、原料セルロースから水を差し引いた残余の質量に対する質量%に換算し、水分量とした。
(4)セルロース含有量
原料セルロースから水を差し引いた残余の成分の含有量をセルロース含有量とした。
(5)メジアン径測定
メジアン径は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(堀場製作所社製)を用い、粉末状原料セルロースをエタノール中に分散させて測定した。具体的にはメジアン径の測定前に、粉末状原料セルロースをエタノールに添加し、1分間超音波分散処理を行って、粉末状原料セルロースの分散を行った後、測定を行った。
(6)ヒドロキシプロピル基の置換度の算出
HPCの、セルロースの主鎖を構成するAGUあたりのヒドロキシプロピル基の導入数の平均値(ヒドロキシプロピル基の置換度)は、第十六改正日本薬局方47頁に記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って得られた値から求めた。
具体的には、実施例で得られた精製HPCのヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(−OCOH)=75.09〕(b(モル/g))(%)を、下記計算式から求めた。
b(モル/g)=ガスクロマトグラフ分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100)
次に、得られた値bと下記計算式からHPCのヒドロキシプロピル基の置換度(m)を算出した。
b=m/(162+m×58.08)
ガスクロマトグラフィー測定は「GC−2014」(島津サイエンス社製)を用いて測定を行った。また、オートサンプラーとして「AOC−20i」(島津サイエンス社製)、水素発生装置として「HG260B」(ジーエルサイエンス社製)を用いた。分析条件は以下の通りである。
カラム:「Silicone SE−30 30% Chromosorb W 60/80 AW−DMCS」(島津サイエンス社製)
カラム温度:60℃(5min)→10℃/1min→300℃(1min)
インジェクター温度:250℃
検出器温度:320℃
打ち込み量:1μL
(7)反応選択率の算出
反応選択率は、酸化プロピレンの投入量とヒドロキシプロピル基の置換度から、下記計算式により算出した。
反応選択率(%)=ヒドロキシプロピル基の置換度(m)/[(酸化プロピレン投入量(モル)/主鎖AGU(モル))×100]
(8)水溶性の評価
HPCの含有量が1.0%となるようにHPCと水の混合液を調製し、マグネチックスターラーで6時間、室温、大気圧下で撹拌した。その後、3000rpm、30分間の条件で、遠心分離機「H−28F」(コクサン社製)を用いて遠心分離して得られた上澄みの一部を3時間、105℃、大気圧下加熱することで乾燥させ、上澄みの固形分濃度(質量%)を測定した。該濃度が高いほど、水溶性に優れることを意味する。
製造例1(粉末状原料セルロースの製造)
(1)裁断処理
セルロース含有原料として、シート状木材パルプ「BioflocHV+」(Tembec社製、結晶化度:82%、水分量:8.5質量%)を、裁断機「RK6−800」(荻野精機製作所社製)を用いて3mm×1.5mm×1mmのチップ状に裁断した。
(2)乾燥処理
前記(1)の裁断処理により得られたチップ状の原料セルロースを、2軸横型攪拌乾燥機「NPD−3W(1/2)」(奈良機械製作所社製)を用いて乾燥した。大気圧下、連続処理にてパルプを乾燥した。このとき乾燥機の加熱媒体は150℃のスチームを用い、チップ状の原料セルロースの供給速度は45kg/hとした。連続処理で得られた乾燥後のチップ状の原料セルロースの水分量は0.5質量%であった。
(3)粗粉砕処理
前記(2)の乾燥処理により得られた乾燥後の原料セルロースを、連続式振動ミル「YAMT−200」(ユーラステクノ社製、第1及び第2粉砕室の容量:112L)を用いて粗粉砕した。第1及び第2粉砕室には、直径30mm、長さ1300mmのステンレス製の丸棒状の粉砕媒体を80本ずつ収容した。粉砕媒体の充填率は66.5%であった。連続式振動ミルを振動数16.7Hz、振幅13.4mm、温度75℃、乾燥後の原料セルロースの滞留時間2.6分間の条件下、乾燥後の原料セルロースを20kg/hで投入した。得られた粗粉砕セルロースのメジアン径は191μm、結晶化度は19%であった。
(4)セルロース小粒径化処理
前記(3)の粗粉砕処理により得られた粗粉砕セルロースを、高速回転式微粉砕機「KIIW−1型」(ダルトン社製)を用いて小粒径化した。目開き0.7mmのスクリーンを装着し、ローター周速度を81m/sで駆動すると共に、原料供給部から粗粉砕セルロースを18kg/hの供給速度で供給した。
次いで、円形振動篩機「KGC−500」(興和工業所社製)に、篩面積0.196m、目開き150μmのSUS製スクリーンを装着し、振動数30Hz(振動回転数1800r/min)、縦方向の片振幅3mm、横方向の片振幅3mm、ウエイト位相角60°で駆動すると共に、原料供給部から原料を14kg/hの供給速度で供給して、粗粉を除去し、篩通過物を小粒径セルロースとして回収した。得られた小粒径セルロース(結晶化度:19%、水分量:1.5質量%)のメジアン径は83μmであった。
得られた小粒径セルロースのうち20gを遊星ボールミル「P−6」(フリッチェ社製、10mmφジルコニアビーズ300g充填)に投入し、撹拌回転数400r/m、3時間粉砕(10分粉砕、10分静置の順に18回繰り返した)を行い、粉末状の原料セルロースを得た〔平均重合度185、結晶化度0%、水分量2.0%〕。
実施例1(HPCの製造)
製造例1で得られた粉末状の原料セルロース1g(水分量2.0%、水:13%/AGU)を乳鉢に移し、25℃で27.7%苛性ソーダ水溶液(水酸化ナトリウム(キシダ化学社製)を脱イオン水に溶解して調製)174.3mg(NaOH:0.2当量/AGU)を加えて混合した(混合後の水:15%/AGU)。その後、t−BuOH(東京化成工業社製)342.7mg(35%/AGU)を加えて混合した後、得られた粉体アルカリセルロースをガラス製容器に移し、酸化プロピレン(和光純薬工業社製)194.9mg(0.56当量/AGU)を添加して、50℃で48時間反応させた。得られた粗HPCに対して乳酸(武蔵野化学研究所社製、水分量10%)120.9mgを用いて中和を行い、中和物を透析膜(和光純薬工業社製、分画分子量1000)を用いて精製を行った後、凍結乾燥を行い、水分量を5.3%まで減らした。
得られた精製HPCについて前述の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2〜3、比較例1〜3
実施例1において、反応条件を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の方法でHPCの製造を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 2017128629
表1より、本発明のHPCの製造方法は反応選択率が高く、得られるHPCは水溶性に優れることがわかる。
本発明によれば、セルロースから、高い反応選択率を維持しつつ、水溶性に優れるHPCを製造できる。得られたHPCは、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物の配合成分、分散剤、改質剤、凝集剤等に好適である。

Claims (6)

  1. セルロースを、金属水酸化物、該セルロースに対して1.0質量%以上50質量%以下の水、及び1.0質量%以上100質量%以下の非水溶媒の存在下で酸化プロピレンと反応させる工程を有する、ヒドロキシプロピルセルロースの製造方法。
  2. 前記水及び非水溶媒の合計量が、前記セルロースに対して15質量%以上120質量%以下である、請求項1に記載のヒドロキシプロピルセルロースの製造方法。
  3. 前記非水溶媒が極性溶媒である、請求項1又は2に記載のヒドロキシプロピルセルロースの製造方法。
  4. 前記水に対する前記非水溶媒の質量比が、0.1以上50以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のヒドロキシプロピルセルロースの製造方法。
  5. 前記金属水酸化物の量が、セルロースの主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1モルに対して0.01当量以上3.0当量以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のヒドロキシプロピルセルロースの製造方法。
  6. 前記ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロピル基の置換度が0.01以上3.0以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のヒドロキシプロピルセルロースの製造方法。
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JP2019052233A (ja) * 2017-09-14 2019-04-04 花王株式会社 ヒドロキシアルキル多糖類の製造方法

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