JP2011001547A - 非晶化セルロースの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース含有原料から水を除いた残余の成分中のセルロース含有量が20質量%以上であり、下記計算式(1)で示されるセルロースのセルロースI型結晶化度が33%を超え、かつ水分含量が1.8質量%以下であるセルロース含有原料を粉砕機で処理して、該セルロースI型結晶化度を33%以下に低減する、非晶化セルロースの製造方法である。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
【選択図】なし
Description
セルロースの結晶化度を低減する方法として、木材やパルプを粉砕機で機械的に処理する方法が知られている(例えば、特許文献1〜7参照)。
特許文献1には、木材の含有水分を3〜6%に調節した後、振動ボールミルで粉砕処理することによって、木材中のセルロースミクロフィブリルを破壊する木材の前処理方法が開示され、特許文献2には、木質材料を振動ボールミルで粉砕処理するに際して、まず木質材料を粗粉砕し、次いで得られた木質材料の含有水分を2〜7%に調整しつつ、更に微粉砕する振動ボールミルによる木質材料の多段粉砕処理方法が開示されている。
また、特許文献6及び7には、嵩密度が100〜500kg/m3のセルロース含有原料を、ボール又はロッドを充填した粉砕機で処理して、セルロースI型結晶化度が33%以下の非晶化セルロースを製造する方法が開示されている。しかし、セルロースの結晶化度をさらに効率的に低減させる方法の開発が望まれている。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
以下、本明細書において、セルロースのセルロースI型結晶化度を単に「結晶化度」ということがある。
本発明に用いられるセルロース含有原料は、該原料から水を除いた残余の成分中のセルロース含有量が20質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上のものである。
本発明におけるセルロース含有量とは、セルロース量及びヘミセルロース量の合計量を意味する。
前記セルロース含有原料には特に制限はなく、各種木材チップ、各種樹木の剪定枝材、間伐材、枝木材、建築廃材、工場廃材等の木材類;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、段ボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等が挙げられる。これらの中では、パルプ類や木材類が好ましい。
市販のパルプの場合、水を除いた残余の成分中のセルロース含有量は、通常75〜99質量%であり、他の成分としてリグニン等を含む。また市販のパルプのセルロースI型結晶化度は、通常60%以上である。
本発明により製造される非晶化セルロースは、セルロースI型結晶化度を33%以下に低下させたものである。結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したもので、下記計算式(1)により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
結晶化度が33%以下であれば、セルロースの化学反応性が向上し、例えば、セルロースエーテルの製造において、アルカリを加えた際にアルカリセルロース化が容易に進行し、結果としてセルロースエーテル化反応の反応転化率を向上させることができる。この観点から、結晶化度としては、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、分析でI型結晶が検出されない0%以下が特に好ましい。
本発明では、水分含量が1.8質量%以下である前記セルロース含有原料を粉砕機で処理して、該セルロース中のセルロースI型結晶化度を33%以下に低減して非晶化セルロースを製造する(以下、該処理を「非晶化処理」という)。
本発明における非晶化処理に用いるセルロース含有原料中の水分含量は1.8質量%以下であり、1.7質量%以下が好ましく、1.5質量%以下が好ましく、1.2質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましい。この水分含量が1.8質量%以下であれば、容易に粉砕できるとともに、粉砕処理による非晶化速度が向上し、短時間で効率的に結晶化度を低下させることができる。一方、この水分含量の下限としては、生産性及び乾燥効率の観点から、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましい。
以上の観点から、非晶化処理に用いるセルロース含有原料中の水分含量は、0.2〜1.8質量%が好ましく、0.3〜1.7質量%がより好ましく、0.4〜1.5質量%が更に好ましく、0.4〜1.0質量%が特に好ましい。
本発明における非晶化処理に用いるセルロース含有原料の嵩密度は、粉砕、非晶化をより効率的に行う観点から、好ましくは50kg/m3以上、より好ましくは65kg/m3以上、更に好ましくは100kg/m3以上である。この嵩密度が50kg/m3以上であれば、セルロース含有原料が適度な容積を有するために取扱い性が向上する。また、粉砕機へ原料仕込み量を多くすることができるので、処理能力が向上する。一方、この嵩密度の上限としては、取扱い性及び生産性の観点から、好ましくは600kg/m3以下、より好ましくは500kg/m3以下、更に好ましくは400kg/m3以下である。これらの観点から、この嵩密度としては、好ましくは50〜600kg/m3、より好ましくは65〜500kg/m3、更に好ましくは100〜400kg/m3である。なお、上記の嵩密度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記のセルロース含有原料を粉砕機で処理することにより、セルロース含有原料を粉砕し、かつ短時間で効率的にセルロースを非晶化させることができる。
粉砕機に供給するセルロース含有原料が1mm以下の粒子状の場合は、生産性および粉砕機中に粉砕原料を効率的に分散させる観点から、比表面積が、3〜750m2/kgの範囲にあるものが好ましく、4.5〜200m2/kgがより好ましく、7.5〜50m2/kgが更に好ましい。
嵩密度が50kg/m3未満のセルロース含有原料を用いる場合には前処理を行い、嵩密度を50〜600kg/m3、あるいは比表面積を0.2〜750m2/kgの範囲にすることが好ましい。例えば、セルロース含有原料の前処理として、裁断処理及び/又は粗砕処理することで、セルロース含有原料の嵩密度、及び比表面積を前述の好ましい範囲にすることができる。少ない工程数で非晶化セルロースを製造する観点から、セルロース含有原料の前処理として裁断処理を行うことが好ましい。
セルロース含有原料を裁断する方法は、セルロース含有原料の種類や形状により適宜の方法を選択することができるが、例えば、シュレッダー、スリッターカッター及びロータリーカッターから選ばれる1種以上の裁断機を使用する方法が挙げられる。
シート状のセルロース含有原料を用いる場合、裁断機としてシュレッダー又はスリッターカッターを使用することが好ましく、生産性の観点から、スリッターカッターを使用することがより好ましい。
スリッターカッターは、シートの長手方向に沿った縦方向にロールカッターで縦切りして、細長い短冊状とし、次に、固定刃と回転刃でシートの幅方向に沿って短く横切りすることにより、さいの目形状のセルロース含有原料を容易に得ることができる。スリッターカッターとしては、株式会社ホーライ社製のシートペレタイザを好ましく使用でき、この装置を使用すると、シート状のセルロース含有原料を約1〜20mm角に裁断することができる。
ロータリーカッターを使用する場合、得られる粗粉砕物の大きさは、スクリーンの目開きを変えることにより、制御することができる。スクリーンの目開きは、1〜70mmが好ましく、2〜50mmがより好ましく、3〜40mmがさらに好ましい。スクリーンの目開きが1mm以上であれば、適度な嵩高さを有する粗粉砕物が得られ取扱い性が向上する。スクリーンの目開きが70mm以下であれば、後の粉砕処理において、粉砕原料として適度な大きさを有するために、負荷を低減することができる。
次に、セルロース含有原料、好ましくは前記裁断処理で得られたセルロース含有原料を必要に応じてさらに粗砕処理することができる。粗砕処理としては押出機処理が好ましく、押出機処理により、圧縮せん断力を作用させ、セルロースの結晶構造を破壊して、セルロース含有原料を粉末化させ、嵩密度を更に高めることができる。
圧縮せん断力を作用させて機械的に粉砕する方法として、従来よく用いられる衝撃式の粉砕機、例えば、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル等では、粉砕物が綿状化して嵩高くなり、取扱い性を損ない、質量ベースの処理能力が低下する。一方、押出機を用いることにより、所望の嵩密度を有する粉砕原料が得られ、取扱い性を向上させることができる。
二軸押出機としては、シリンダの内部に2本のスクリューが回転自在に挿入された押出機であり、従来から公知のものが使用できる。2本のスクリューの回転方向は、同一でも逆方向でもよいが、搬送能力を高める観点から、同一方向の回転が好ましい。
また、スクリューの噛み合い条件としては、完全噛み合い、部分噛み合い、非噛み合いの各形式の押出機のいずれでもよいが、処理能力を向上させる観点から、完全噛み合い型、部分噛み合い型が好ましい。
ニーディングディスク部とは、複数のニーディングディスクで構成され、これらを連続して、一定の位相で、例えば90°ずつに、ずらしながら組み合わせたものであり、スクリューの回転にともなって、ニーディングディスク間あるいはニーディングディスクとシリンダの間の狭い隙間にセルロース含有原料を強制的に通過させることで極めて強いせん断力を付与することができる。スクリューの構成としては、ニーディングディスク部と複数のスクリューセグメントとが交互に配置されることが好ましい。二軸押出機の場合、2本のスクリューが、同一の構成を有することが好ましい。
また、押出機によるパス回数としては、1パスでも十分効果を得ることができるが、セルロースの結晶化度及び重合度を低下させる観点から、1パスで不十分な場合は、2パス以上行うことが好ましい。また、生産性の観点からは、1〜10パスが好ましい。パスを繰返すことにより、粗大粒子が粉砕され、粒径のばらつきが少ない粉末状セルロース含有原料を得ることができる。2パス以上行う場合、生産能力を考慮し、複数の押出機を直列に並べて処理を行ってもよい。
本発明において、セルロース含有原料、好ましくは上記裁断処理及び/又は粗砕処理して得られたセルロース含有原料を非晶化処理前に乾燥処理することが好ましい。
一般に、市販のパルプ類、バイオマス資源として利用される紙類、木材類、植物茎・葉類、植物殻類等の一般に利用可能なセルロース含有原料は、5質量%を超える水分を含有しており、通常5〜30質量%程度の水分を含有している。
したがって、本発明では、乾燥処理を行うことによって、セルロース含有原料の水分含量を1.8質量%以下に調整することが好ましい。
上記の乾燥方法において、公知の乾燥機を適宜選択して使用することができ、例えば、「粉体工学概論」(社団法人日本粉体工業技術会編集 粉体工学情報センター1995年発行) 176頁に記載の乾燥機等が挙げられる。
これらの乾燥方法及び乾燥機は1種でも又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。乾燥処理はバッチ処理、連続処理のいずれでも可能であるが、生産性の観点から連続処理が望ましい。
乾燥処理における温度は、乾燥手段、乾燥時間等により一概には決定できないが、10〜250℃が好ましく、25〜180℃がより好ましく、50〜150℃が更に好ましい。処理時間としては0.01〜2hrが好ましく、0.02〜1hrがより好ましい。必要に応じて減圧下で乾燥処理を行なってもよく、圧力としては、1〜120kPaが好ましく、50〜105kPaがより好ましい。
非晶化処理に使用する粉砕機としては、媒体式粉砕機を好ましく用いることができる。媒体式粉砕機には容器駆動式粉砕機と媒体撹拌式粉砕機とがある。
容器駆動式粉砕機としては転動ミル、振動ミル、遊星ミル、遠心流動ミル等が挙げられる。この中で、粉砕効率が高く、生産性の観点から、振動ミルが好ましい。
媒体撹拌式粉砕機としてはタワーミル等の塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の撹拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機等が挙げられる。この中で、粉砕効率が高く、生産性の観点から、撹拌槽型粉砕機が好ましい。媒体攪拌式粉砕機を用いる場合の攪拌翼の先端の周速は、好ましくは0.5〜20m/s、より好ましくは1〜15m/sである。
粉砕機の種類は「化学工学の進歩 第30集 微粒子制御」(社団法人 化学工学会東海支部編、1996年10月10日発行、槇書店)を参照することができる。
処理方法としては、バッチ処理及び連続処理のどちらでもよいが、生産性の観点から連続処理が好ましい。
粉砕機の媒体の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられる。
振動ミルとしては、ユーラステクノ株式会社製のバイブロミル、中央化工機株式会社製の振動ミル、株式会社吉田製作所製の小型振動ロッドミル1045型、ドイツのフリッチュ社製の振動カップミルP−9型、日陶科学株式会社製の小型振動ミルNB−O型等を用いることができる。
粉砕機の媒体として用いるロッドとは棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。
ロッドの外径は、好ましくは0.5〜200mm、より好ましくは1〜100mm、更に好ましくは5〜50mmの範囲である。ロッドの長さは、粉砕機の容器の長さよりも短いものであれば特に限定されない。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られるとともに、ロッドのかけら等が混入してセルロース含有原料が汚染されることなく効率的にセルロースを非晶化させることができる。
粉砕機の処理時間は、粉砕機の種類、ボール、ロッド等の媒体の種類、大きさ及び充填率等により一概に決定できないが、結晶化度を効率的に低下させる観点から、好ましくは0.5分〜24時間、より好ましくは2分〜12時間、更に好ましくは3分〜6時間、更により好ましくは、4分〜1時間、特に好ましくは5〜40分である。である。
処理温度は、特に制限はないが、熱によるセルロースの劣化を防ぐ観点から、好ましくは5〜250℃、より好ましくは10〜200℃である。
得られる非晶化セルロースの平均粒径は、この非晶化セルロースを工業原料として用いる際の化学反応性及び取扱い性の観点から、好ましくは1〜150μm、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは7〜100μmである。特に平均粒径が7μm以上であれば、非晶化セルロースを水等の液体と接触させたときに「ママコ」(ダマ)になることを抑えることができる。
本発明において、非晶化処理して得られた非晶化セルロースを必要に応じてさらに小粒径化処理することができる。小粒径化処理としては、公知の粉砕機を適宜選択して使用することができ、例えば、「改定六版 化学工学便覧」(社団法人化学工学会編集 丸善株式会社1999年発行)843頁に記載の粉砕機が挙げられる。
これらの粉砕機は1種でも又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。小粒径化処理はバッチ処理、連続処理のいずれでも可能であるが、生産性の観点から連続処理が望ましい。
粉砕機としては、粉砕効率が高く、粒径を小さくできるという観点から、高速回転ミルが好ましく、ターボ型、アニュラー型ミルがさらに好ましい。ターボ型ミルとしては、ターボ工業株式会社製のターボミルを好ましく使用できる。アニュラー型ミルとしては、株式会社アーステクニカ製のクリプトロンシリーズを好ましく使用できる。
小粒径化処理の方法としては、非晶化処理して得られた非晶化セルロースを粉砕機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。小粒径の非晶化セルロースを得る観点から、高速回転ミルのローターの周速度としては、50m/s以上が好ましく、100m/s以上がさらに好ましい。その他の処理条件としては、特に制限はないが、処理温度としては5〜200℃が好ましい。
本発明において、非晶化処理して得られた非晶化セルロースを必要に応じてさらに分級処理することができる。分級機処理により、所望の粒径の非晶化セルロースを得ることができる。分級処理方法としては、公知の乾式分級手段を適宜選択すればよく、篩い分け、風力分級が挙げられる。
分級処理後の粗粉はセルロース含有原料とともに再度振動ミルに投入し非晶化処理を行うことで、効率よく小粒径の非晶化セルロースを得ることができる。
(1)嵩密度の測定
嵩密度は、ホソカワミクロン株式会社製の「パウダーテスター」を用いて測定した。測定は、ふるいを振動させて、サンプルをシュートを通じ落下させ、規定の容器(容量100mL)に受け、該容器中のサンプルの質量を測定することにより算出した。ただし綿状化したサンプルについては、ふるいを通さずにシュートを通じ落下させ、規定の容器(容量100mL)に受け、該容器中のサンプルの質量を測定することにより算出した。
(2)比表面積の測定
比表面積は、セルロース含有原料の長径が1mm以上の形状である場合、電子画像あるいは物差しを用いてセルロース含有原料1個あたりの表面積A1(m2)と体積V1(m3)を求め、セルロース結晶の真比重(ρ=1600kg/m3)を用いて、A1/(V1×ρ)より算出する。セルロース含有原料が1mm角以下の形状である場合、電子画像よりセルロース含有原料1個あたりの円相当径を求め、円相当径より表面積A1(m2)と体積V1(m3)を求め、A1/(V1×ρ)より算出する。セルロース含有原料100個についてこれらの値を求め、その平均値を代表値とする。
(3)平均粒径の測定
平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定条件は、粒径測定前に超音波で1分間処理し、測定時の分散媒体として水を用い、体積基準のメジアン径を、温度25℃にて測定した。
セルロースI型結晶化度は、サンプルのX線回折強度を、株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定し、前記計算式に基づいて算出した。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kv,管電流:120mA,測定範囲:回折角2θ=5〜45°、X線のスキャンスピードは10°/minで測定した。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。
(5)水分含量の測定
水分含量は、赤外線水分計(株式会社島津製作所製、「MOC−120H」)を使用し、秤量皿に試料5gを載せ、乾燥温度120℃、自動停止モード(30秒間の水分変化量が0.05%以下になったら測定終了)の条件下で水分蒸発量を求めて算出した。
(6)セルロース含有量の測定
セルロース含有量は、社団法人日本分析化学会編、分析化学便覧(改訂四版、平成3年11月30日、丸善株式会社発行)の1081頁〜1082頁に記載のホロセルロース定量法により測定した。
〔裁断処理〕
セルロース含有原料として、シート状木材パルプ〔テンベック社製「HV−10」、800mm×600mm×1.0mm、結晶化度81.5%、セルロース含有量(セルロース含有原料から水を除いた残余の成分中の含有量、以下同じ)96質量%、水分含量8.5質量%〕を、シートペレタイザ(株式会社ホーライ製、「SG(E)−220」)にかけ、約4mm×4mm×1.0mmの大きさ(比表面積1.8m2/kg)に裁断した。
〔乾燥処理〕
裁断処理により得られたパルプを、棚乾燥機〔アドバンテック(ADVANTEC)社製、真空定温乾燥器「DRV320DA」〕を用いて、乾燥後のパルプの水分含量が、1.0質量%になるように乾燥した。乾燥処理後のパルプのX線回折強度から算出した結晶化度は82%であった。乾燥処理後のパルプの嵩密度は200kg/m3であった。
〔非晶化処理〕
乾燥処理により得られたパルプを、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、「MB−1」、容器全容量3.5L)に100g投入し、ロッドとして、直径30mm、長さ218mm、材質ステンレス、断面形状が円形のロッド13本を振動ミルに充填(充填率57%)して、振幅8mm、円回転1200cpmの条件で、30分間処理した。
処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にパルプの固着物等はみられなかった。非晶化セルロースを前記振動ミルから取り出し、得られた非晶化セルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表1に示す。
乾燥処理において、裁断処理して得られたパルプを乾燥後のパルプの水分含量が、0.4質量%になるように乾燥したこと、結晶化度が79%のセルロース含有原料を用いたこと、非晶化処理を15分間行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で非晶化セルロースを得た。得られた非晶化セルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表1に示す。
乾燥処理において、裁断処理して得られたパルプを乾燥後のパルプの水分含量が、0.6質量%になるように乾燥したこと、及び乾燥機としてQAD(熱風受熱型乾燥機):三菱マテリアルテクノ株式会社製を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非晶化セルロースを得た。得られた非晶化セルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表1に示す。
乾燥処理において、裁断処理して得られたパルプを乾燥後のパルプの水分含量が、1.7質量%になるように乾燥したこと以外は、実施例1と同様の方法で非晶化セルロースを得た。得られた非晶化セルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表1に示す。
[裁断処理]
セルロース含有原料として、棒状の温州みかん木の剪定枝(φ10mm×500mm、セルロース含有量64質量%、結晶化度46%、水分含量22質量%)を用いて、プラスチック粉砕機(森田精機工業株式会社製、JC−2型)にかけ、約2mm×3mm×1mmのチップ状(比表面積2.2m2/kg)に裁断処理した。
[乾燥処理]
得られたチップ状のセルロース含有原料を、棚乾燥機〔アドバンテック(ADVANTEC)社製、真空定温乾燥器「DRV320DA」〕を用いて、乾燥後のパルプの水分含量が、1.7質量%になるように乾燥した。
[非晶化処理]
振動ミルに充填するロッドの本数を11本に変え、充填率48%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、乾燥処理により得られたチップ状のセルロース含有原料を用いて非晶化処理を行い、非晶化セルロースを得た。得られたセルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表1に示す。
乾燥処理において、裁断処理して得られたパルプを乾燥後のパルプの水分含量が、4.9質量%(比較例1)及び5.9質量%(比較例2)になるように乾燥したこと以外は、実施例1と同様の方法で裁断、乾燥及び非晶化処理を行った。得られたセルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表2に示す。
[裁断処理]
セルロース含有原料として、棒状の街路樹(ソメイヨシノ、ウバメガシ、クスノキ、クヌギ、及びノウゼンカズラの混合物)の剪定枝(比較例3:φ10mm×300mm、セルロース含有量67質量%、結晶化度51%、水分含量12質量%)、及び棒状の温州みかん木の剪定枝(比較例4:φ10mm×500mm、セルロース含有量64質量%、結晶化度46%、水分含量22質量%)を用いて、実施例5と同様の方法で裁断処理した。得られたチップ状のセルロース含有原料を、乾燥処理を行わずに、実施例5と同様の方法で非晶化処理して、非晶化セルロースを得た。得られたセルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表2に示す。
乾燥処理において、裁断処理して得られたパルプを乾燥後のパルプの水分含量が、2.0質量%になるように乾燥したこと以外は、実施例1と同様の方法で非晶化セルロースを得た。得られた非晶化セルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表3に示す。
乾燥処理において、裁断処理して得られたパルプを乾燥後のパルプの水分含量が、3.2質量%になるように乾燥したこと以外は、実施例1と同様の方法で非晶化セルロースを得た。得られた非晶化セルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表3に示す。
乾燥処理において、裁断処理して得られたパルプを乾燥後のパルプの水分含量が、3.9質量%になるように乾燥したこと以外は、実施例1と同様の方法で非晶化セルロースを得た。得られた非晶化セルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表3に示す。
セルロース含有原料として、比較例3で用いたのと同じ棒状の街路樹の剪定枝(比較例8:水分含量12質量%)、比較例4で用いたのと同じ棒状の温州みかん木の剪定枝(比較例9:水分含量22質量%)を用いて、実施例5と同様の方法で裁断処理した。
次に、得られたチップ状の街路樹及び温州みかん木の剪定枝の水含有量をそれぞれ2.3質量%、3.5質量%になるまで棚乾燥機(ADVANTEC社製、真空定温乾燥器「DRV320DA」)を用いて乾燥させた後、実施例5と同様の方法で非晶化処理して、非晶化セルロースを得た。得られた非晶化セルロースのメジアン径を測定し、X線回折強度から結晶化度を算出した。結果を表3に示す。
〔2軸横型攪拌乾燥機による乾燥処理〕
実施例1の裁断処理により得られたパルプを、熱媒として0.18MPa(130度)のスチームで加熱した2軸パドルドライヤー〔株式会社奈良機械製作所製「NPD−1.6W−1/2L」、容積47L、伝熱面積1.445m2〕に連続的に21kg/hで供給して47分間乾燥した。乾燥物は、常に排出口より21kg/hで排出した。乾燥後のパルプの水分含量は、0.7質量%であった。乾燥後に乾燥機内壁およびバグフィルターより回収した微粉量は、原料の投入量に対して0.6質量%であった。
〔1軸ディスクドライヤーによる乾燥処理〕
実施例1の裁断処理により得られたパルプを、熱媒として0.18MPa(130度)のスチームで加熱した1軸ディスクドライヤー〔三菱マテリアルテクノ株式会社製「FDK−60LDK」、容積60L、伝熱面積1.4m2〕に連続的に21kg/hで供給して90分間乾燥した。乾燥物の排出流量は乾燥開始時より徐々に増加し60分後に21kg/hに達した。乾燥後のパルプの水分含量は、1.1質量%であった。乾燥後に乾燥機内壁およびバグフィルターより回収した微粉量は、原料の投入量に対して1.1質量%であった。
〔非晶化処理〕
乾燥処理において、裁断処理して得られたパルプを乾燥後のパルプの水分含量が0.8質量%になるように乾燥したこと、非晶化処理を13分間行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で非晶化セルロースを得た。この非晶化セルロースのメジアン径は59μm、結晶化度は15%であった。
〔アニュラー型ミルによる小粒径化処理〕
上記非晶化処理により得られたメジアン径59μmの非晶化セルロースを、ローター周速135m/sとしたクリプトロン〔株式会社アーステクニカ製「KTM−0型」〕に連続的に18kg/hで供給して小粒径化処理を行った。処理後のメジアン径は25μmであった。
〔ターボ型ミルによる小粒径化処理〕
参考例3の非晶化処理により得られたメジアン径64μmの非晶化セルロースを、ローター周速157m/sとしたターボミル〔ターボ工業株式会社製「T400−RS型」〕に連続的に60kg/hで供給して小粒径化処理を行った。処理後のメジアン径は23μmであった。
Claims (8)
- セルロース含有原料から水を除いた残余の成分中のセルロース含有量が20質量%以上であり、下記計算式(1)で示されるセルロースのセルロースI型結晶化度が33%を超え、かつ水分含量が1.8質量%以下であるセルロース含有原料を粉砕機で処理して、該セルロースI型結晶化度を33%以下に低減する、非晶化セルロースの製造方法。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕 - 前記セルロース含有原料の嵩密度が50〜600kg/m3である、請求項1に記載の非晶化セルロースの製造方法。
- 前記セルロース含有原料の比表面積が0.2〜750m2/kgである、請求項1又は2に記載の非晶化セルロースの製造方法。
- 粉砕機での処理時間が0.5分〜24時間である、請求項1〜3のいずれかに記載の非晶化セルロースの製造方法。
- 粉砕機が媒体式粉砕機である、請求項1〜4のいずれかに記載の非晶化セルロースの製造方法。
- 前記セルロース含有原料が、シュレッダー、スリッターカッター及びロータリーカッターから選ばれる1種以上の裁断機を使用する裁断処理により得られたものである、請求項1〜5のいずれかに記載の非晶化セルロースの製造方法。
- 前記セルロース含有原料が、乾燥処理により水分含量が1.8質量%以下に低減したものである、請求項1〜6のいずれかに記載の非晶化セルロースの製造方法。
- セルロース含有原料が、パルプ類、紙類、植物茎・葉類、植物殻類、及び木材類からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の非晶化セルロースの製造方法。
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