JP5301922B2 - 低結晶性セルロースの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、低結晶性セルロースの製造方法に関する。
パルプ等のセルロース含有原料を粉砕して得られるセルロースは、セルロースエーテルの原料、化粧品、食品、バイオマス材料等の工業原料として用いられる。これらの工業原料としては、セルロース結晶構造が低結晶化されたセルロースが特に有用である。
例えば、シート状パルプを粉砕機で機械的に処理して、粉末状パルプを製造する方法が知られている(特許文献1及び2参照)。しかし、これらの特許文献にはセルロースの結晶化度についての記載はない。
また、パルプを粉砕機で機械的に処理して、セルロースの結晶化度を低減する方法が知られている(特許文献3〜6参照)。
特許文献3の実施例1及び4には、シート状パルプを振動ボールミル又は二軸押出機で処理する方法が開示されており、特許文献4の実施例1〜3には、パルプをボールミルで処理する方法が開示されている。
特許文献5の実施例1及び2には、パルプを加水分解等の化学的処理をして得られたセルロース粉体を、ボールミルさらには気流式粉砕機で処理する方法が開示されており、特許文献6には、パルプを水に分散させた状態で振動ボールミル等の媒体ミルで処理する方法が開示されている。
しかし、これらの方法は、セルロースの結晶化度及び平均粒径を低減させるにあたり、効率性及び生産性において満足できるものではない。
一方、特許文献7には、スクリュフライトの外周面とバレル内面とのクリアランスが0.5〜1.5mmである押出スクリューが開示されている。しかしながら、この押出スクリューは、熱可塑性樹脂を溶融、混練、押し出しする際に、炭化物やゲル化物等の生成を抑制し、押出製品の外観向上を図ることを目的にしたものであり、押出対象がセルロースではなく、目的も異なるものである。
特開平5−168969号公報 特開2001−354701号公報 特開昭62−236801号公報 特開2003−64184号公報 特開2004−331918号公報 特開2005−68140号公報 特開2006−187923号公報
本発明は、セルロース含有原料からセルロースI型結晶化度を低減させた低結晶性セルロースを効率的に得ることができる、生産性に優れた製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、水分含量を低減したセルロース含有原料を二軸押出機を用いて特定条件下で処理することにより、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、下記式(1)で示されるセルロースのセルロースI型結晶化度が33%を超えるセルロース含有原料を二軸押出機で処理して低結晶性セルロースを製造する方法であって、水分含量が5質量%以下のセルロース含有原料を、二軸押出機のシリンダー内壁面とニーディングスクリュの外周面とのクリアランスが0.05〜5.0mmである二軸押出機を用いて、せん断速度600〜4000sec-1で処理して、該セルロースI型結晶化度を33%以下に低減する、低結晶性セルロースの製造方法である。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
本発明の低結晶性セルロースの製造方法によれば、セルロース含有原料から、セルロースI型結晶化度を低減させた低結晶性セルロースを、効率的に、生産性よく得ることができる。
本発明の低結晶性セルロースの製造方法は、上記式(1)で示されるセルロースのセルロースI型結晶化度が33%を超えるセルロース含有原料を二軸押出機で処理して低結晶性セルロースを製造する方法であって、水分含量が5質量%以下のセルロース含有原料を、二軸押出機のシリンダー内壁面とニーディングスクリュの外周面とのクリアランスが0.05〜5.0mmである二軸押出機を用いて、せん断速度600〜4000sec-1で処理して、該セルロースI型結晶化度を33%以下に低減することを特徴とする。
〔セルロース含有原料〕
セルロースには幾つかの結晶構造が知られており、結晶領域(アモルファス部と結晶部)の全量に対する結晶部の割合から、一般に結晶化度が算出される。
本発明に用いられるセルロース含有原料は、上記式(1)で示されるセルロースのセルロースI型結晶化度が33%を超えるものである。一般的な市販パルプは、該結晶化度が概ね60%以上のいわゆる結晶性のセルロースである。
また、本発明に用いられるセルロース含有原料中の水分含量は、5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。セルロース含有原料中の水分含量が5質量%以下であれば、容易に粉砕できるとともに、粉砕処理により結晶化度を容易に低減させることができる。
該セルロース含有原料から水を除いた残余の成分中のセルロース含有量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、更に好ましくは97.5質量%以上である。ここで、セルロース含有量とはセルロース量及びヘミセルロース量の合計量を意味する。
市販のパルプの場合、水を除いた残余の成分中のセルロース含有量は、一般には75〜99質量%であり、他の成分はリグニン等を含む。
前記セルロース含有原料には特に制限はなく、各種木材チップ;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等が挙げられる。
セルロース含有原料の嵩密度は、好ましくは10kg/m3以上、より好ましくは50kg/m3以上、更に好ましくは100kg/m3以上である。該嵩密度が10kg/m3以上であれば、セルロース含有原料が適度な容積を有するために取扱い性が向上し、また、粉砕機へ原料仕込み量を多くすることができるので処理能力が向上する。一方、該嵩密度の上限は、取扱い性及び生産性の観点から、好ましくは500kg/m3以下、より好ましくは400kg/m3以下、更に好ましくは350kg/m3以下である。これらの観点から、該嵩密度は、好ましくは10〜500kg/m3、より好ましくは50〜400kg/m3、更に好ましくは100〜350kg/m3である。
嵩密度が10kg/m3未満のセルロース含有原料を用いる場合には、後述するように前処理を行うことが好ましい。なお、セルロース含有原料の嵩密度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
〔低結晶性セルロース〕
本発明方法により製造される低結晶性セルロースは、セルロースI型結晶化度を33%以下に低減させたものである。
一般的な市販パルプは、結晶化度が概ね60%以上のいわゆる結晶性セルロースであるが、本発明により得られるセルロースは低結晶性セルロースである。
ここで、本発明における結晶化度とは、天然セルロースの結晶構造に由来するI型の結晶化度を意味し、粉末X線結晶回折スペクトル法による回折強度値からSegal法により算出したもので、下記式(1)により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
また、「低結晶性」とは、セルロースの結晶構造においてアモルファス部の割合が多い状態を示し、具体的には上記式(1)から算出されるセルロースI型結晶化度が33%以下であることを意味し、該結晶化度が0%の完全非晶化の場合を含む。
なお、本明細書において、セルロースのセルロースI型結晶化度を単に「結晶化度」ということがある。
結晶化度は、セルロースの物理的、化学的性質とも関係し、その値が大きいほど、セルロースの結晶性が高く、非結晶部分が少ないため、硬度、密度等は増すが、伸び、柔軟性、水や溶媒に対する溶解性、化学反応性は低下する。結晶化度が33%以下であれば、セルロースの化学反応性が十分であり、例えば、セルロースエーテルの製造において、アルカリを加えた際にアルカリセルロース化が容易に進行し、結果としてセルロースエーテル化反応の反応転化率を向上させることができる。この観点から、結晶化度は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、分析でI型結晶が検出されない0%が特に好ましい。なお、式(1)で定義されたセルロースI型結晶化度では計算上マイナスの値になる場合があるが、マイナスの値の場合はセルロースI型結晶化度は0%とする。
本発明により得られる低結晶性セルロースの平均粒径は、低結晶性セルロースを工業原料として用いる際の化学反応性及び取扱い性の観点から、好ましくは10〜250μm、より好ましくは30〜200μm、より好ましくは50〜190μm、更に好ましくは60〜180μm、特に好ましくは70〜150μmである。特に平均粒径が10μm以上であれば、低結晶性セルロースを水等の液体と接触させたときに「ママコ」になることを抑えることができる。
〔低結晶性セルロースの製造〕
〔前処理〕
本発明においては、セルロース含有原料中の水分含量を5質量%以下にするために、必要に応じて、乾燥処理を行うことができる。乾燥処理装置としては、水含有量を効率よく5質量%以下にできるものであれば特に制限はない。例えば、バッチ式の棚乾燥機としては、アドバンテック東洋株式会社のDRV320DA、DRM420RAが挙げられ、流動層式の乾燥機としては、株式会社西村製作所のGZQ3や株式会社栗本鐵工所の流動層乾燥機が挙げられる。その他、日本バイオン株式会社の起熱減圧乾燥機、株式会社大川原製作所のスーパーロータリードライヤー、ロートスルー、カスタムドライヤー、ユタカ産業株式会社の真空乾燥機、株式会社長門電機製作所の箱型バンド乾燥機、株式会社いすゞ製作所の自然対流式の乾燥機、ヤマト科学株式会社の真空乾燥機等が挙げられる。
乾燥温度は、好ましくは30〜150℃、より好ましくは30〜120℃である。乾燥時間は、乾燥温度等により異なるが、通常30分〜12時間、好ましくは40分〜3時間である。また、乾燥処理は真空下等の条件で行ってもよい。
本発明において、嵩密度が10kg/m3未満のセルロース含有原料を用いる場合は、前処理を行い、嵩密度を10〜500kg/m3にすることが好ましい。
前処理としては、粗粉砕処理を行うことができる。
粗粉砕処理は、セルロース含有原料を二軸押出機に投入する前に、チップ状に粗粉砕する処理である。この粗粉砕処理を予め行うことにより、二軸押出機処理をより効率的に行うことができる。二軸押出機に供給するセルロース含有原料の大きさは、好ましくは1〜50mm角、より好ましくは1〜30mm角のチップ状である。
セルロース含有原料をチップ状に粗粉砕する方法としては、シュレッダー、ロータリーカッター等を使用する方法が挙げられる。ロータリーカッターを使用する場合、得られるチップ状セルロース含有原料の大きさは、スクリーンの目開きを変えることにより、制御することができる。スクリーンの目開きは、1〜50mmが好ましく、1〜30mmがより好ましい。スクリーンの目開きが1mm以上であれば、セルロース含有原料が綿状化することがなく、後の二軸押出機処理に用いるセルロース含有原料として適度な嵩高さを有するために取扱い性が向上する。スクリーンの目開きが50mm以下であれば、後の二軸押出機処理に用いるセルロース含有原料として適度な大きさを有するために二軸押出機処理において負荷を低減することができる。
〔二軸押出機処理〕
本発明においては、水分含量が5質量%以下のセルロース含有原料を、二軸押出機のシリンダー内壁面とニーディングスクリュの外周面とのクリアランスが0.05〜5.0mmである二軸押出機を用いて、せん断速度600〜4000sec-1で処理することにより、低結晶性セルロースを効率的に得ることができる。
前記二軸押出機は、シリンダーの内部に2本のスクリュが回転自在に挿入された公知の押出機を使用することができる。2本のスクリュの回転方向は、同一でも逆方向でもよいが、搬送能力を高める観点から、同一方向の回転が好ましい。また、前記二軸押出機は、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリュのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えたニーディングスクリュを有する。
ニーディングディスク部とは、複数のニーディングディスクで構成され、これらを連続して、一定の位相でずらしながら組み合わせたものである。例えば3〜20、好ましくは6〜16のニーディングディスクを90°の位相で互い違いにずらしながら組み合わせたものが挙げられる。ニーディングディスク部は、スクリュの回転にともなって、その狭い隙間にセルロース含有原料を強制的に通過させることで極めて強いせん断力を付与することができる。
二軸押出機のスクリュの構成としては、ニーディングディスク部と複数のスクリュセグメントとを交互に配置することが好ましい。また、二軸押出機の場合は、2本のスクリュを同一の構成とすることが好ましい。
二軸押出機のシリンダー内壁面とニーディングスクリュの外周面とのクリアランスは、低結晶化セルロースを効率的に、生産性よく製造する観点から、好ましくは0.1〜5.0mmであり、より好ましくは0.3〜2.0mmであり、更に好ましくは0.3〜1.0mmである。
前記クリアランスの関係は、ニーディングスクリュのスクリュ羽根が周回する有効長さの全てにおいて充足する必要はなく、少なくとも該スクリュ羽根が周回する有効長さの一部において充足しておればよい。具体的には、該スクリュ羽根が周回する有効長さの好ましくは1/4以上、より好ましくは1/3以上で、該クリアランスが0.05〜5.0mmであることが好ましい。
また、前記クリアランスは、スクリュの長さ方向において一定であってもよいし、0.05〜5.0mmの間で変化させてもよい。例えば、スクリュ根元部(原料供給部)はクリアランスを大きくし、スクリュの先端部はクリアランスを小さくすると、原料の供給安定性と低結晶性セルロースの生産性のバランスが良くなるので好ましい。
また、ニーディングディスクの外周面同士の距離(クリアランス)は、低結晶化セルロースを効率的に得る観点から、好ましくは0.05〜5.0mmであり、より好ましくは0.1〜5.0mmであり、より好ましくは0.3〜2.0mmであり、更に好ましくは0.3〜1.0mmである。
二軸押出機のニーディングスクリュの噛み合い条件としては、完全噛み合い、部分噛み合い、非噛み合いの各形式の二軸押出機のいずれでもよいが、処理能力を向上させる観点から、完全噛み合い型、部分噛み合い型が好ましい。
ニーディングスクリュの回転数は、せん断速度の観点、及び二軸押出機のバレル内の滞留によりセルロース含有原料が分解するのを抑制する観点から、好ましくは40〜800rpm、より好ましくは80〜500rpm、更に好ましくは100〜400rpmである。
二軸押出機処理の方法としては、セルロース含有原料、好ましくは前記チップ状セルロース含有原料を二軸押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。せん断速度としては、セルロース含有原料の分解抑制の観点から、600〜4000sec-1であり、800〜3000sec-1が好ましく、1000〜2000sec-1がより好ましい。せん断速度が600sec-1以上であれば、有効に高嵩密度化が進行する。その他の処理条件に特に制限はなく、処理温度は、通常5〜200℃、好ましくは10〜100℃である。
また、二軸押出機処理によるパス回数としては、1パスでも十分効果を得ることができるが、セルロース含有原料を高嵩密度化する観点から、1パスで不十分な場合は、2パス以上行うことが好ましい。生産性の観点からは、1〜10パスが好ましい。処理回数を重ねることにより、粗大粒子が粉砕され、粒径のばらつきが少ない粉末状セルロース含有原料を得ることができる。2パス以上行う場合は、生産能力を考慮し、複数の押出機を直列に並べて処理を行ってもよい。
本発明によれば、セルロース含有原料を出発原料として、セルロースI型結晶化度が33%以下の低結晶性セルロースを、効率的に、生産性よく製造することができる。
実施例及び比較例で使用した又は得られたセルロース含有原料又は低結晶性セルロースの平均粒径、嵩密度、結晶化度、水分含量及びセルロース含有量の測定は、下記に記載の方法で行った。
(1)平均粒径の測定
平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定条件は、粒径測定前に超音波で1分間処理し、測定時の分散媒体として水を用い、体積基準のメジアン径を、温度25℃にて測定した。
(2)嵩密度の測定
嵩密度の測定は、サンプルを規定の容器(容量100mL)に投入して、該容器中のサンプルの質量を測定することにより算出した。ただし綿状化したサンプルについては、ふるいを通さずにシュートを通じ落下させ、規定の容器(容量100mL)に受け、該容器中のサンプルの質量を測定することにより算出した。
(3)結晶化度の算出
セルロースI型結晶化度は、サンプルのX線回折強度を、株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定し、前記式(1)に基づいて算出した。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kv、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°で測定した。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。X線のスキャンスピードは10°/minで測定した。
(4)水分含量の測定
水分含量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、「FD−610」)を使用し、150℃にて測定を行った。
(5)セルロース含有量の測定
セルロース含有量は、社団法人日本分析化学会編、分析化学便覧(改訂四版、平成3年11月30日、丸善株式会社発行)の1081頁〜1082頁に記載のホロセルロース定量法により測定した。より具体的には、以下の方法で行った。
粉砕した試料をエタノール・ベンゼン混合溶剤(1:1)で6時間ソックスレー抽出を行い、さらにエタノールで4時間ソックスレー抽出を行って、抽出後の試料を60℃で真空乾燥した。得られた試料2.5gに水150mL、亜塩素酸ナトリウム1.0g及び酢酸0.2mLを加え、70〜80℃で1時間加温した。引き続き亜塩素酸ナトリウム及び酢酸を加えて加温する操作を繰り返し行い、試料が白く脱色するまで3〜4回処理を繰り返した。得られた白色の残渣をグラスフィルター(1G−3)でろ過し、冷水及びアセトンで洗浄した後、105℃で恒量になるまで乾燥し、残渣重量を求め、下記式によりセルロース含有量(%)を算出した。
セルロース含有量(%)=〔残渣重量(g)/真空乾燥後の試料重量(g)〕×100
実施例1
(1)シュレッダー処理(前処理)
セルロース含有原料として、シート状木材パルプ(Borregard社製「Blue Bear Ultra Ether」、800mm×600mm×1.5mm、結晶化度81%、セルロース含有量96質量%(セルロース含有原料から水を除いた残余の成分中の含有量。以下同じ。)、水分含量7質量%)、をシュレッダー(株式会社明光商会製、「MSX2000−IVP440F」)にかけ、約10mm×5mm×1.5mmのチップ状パルプを得た。このチップ状パルプの嵩密度は247kg/m3であった。
(2)二軸押出機処理
得られたチップ状のパルプの水分含量を0.2質量%に調整後、二軸押出機(株式会社栗本鐵工所社製、「KEXN−40S−40/V」、完全噛み合い型同方向回転)に1kg/hrで投入し、せん断速度1745sec-1、スクリュ回転数250rpm、外部から冷却水を流しながら、1パス処理した。
二軸押出機の処理温度は発熱により30〜70℃であり、得られたパルプは、結晶化度が8%、平均粒径が115μmであった。
なお、前記二軸押出機は、互い違い(位相90°)に8ブロックを組み合わせた、ニーディングスクリュ径40mmのニーディングディスク部を10ヶ所有し、2本のスクリュは、同じ構成を有するものであり、シリンダー内壁面とニーディングスクリュの外周面とのクリアランスが0.3〜1mmであった。
実施例2及び3
実施例1(1)と同様に処理して得られたチップ状パルプの水分含量を1.0質量%又は2.2質量%に調整したチップ状のパルプを用いた以外は、実施例1と同様に処理して、低結晶性パルプを得た。結果を表1に示す。
比較例1〜3
実施例1において、水分含量を7.0質量%又は8.2質量%に調整したチップ状のパルプを用い、せん断速度(sec-1)を変えた以外は、実施例1と同様に処理して、パルプを得た。結果を表1に示す。
Figure 0005301922
表1から、実施例1〜3の方法によれば、比較例1〜3の方法に比べて、セルロースの結晶化度を低減させた低結晶性セルロースを効率的に得ることができ、生産性に優れていることが分かる。
本発明の低結晶性セルロースの製造方法によれば、セルロースI型結晶化度33%以下に低減させた低結晶性セルロースを効率的に、生産性よく得ることができる。得られた低結晶性セルロースは、セルロースエーテルの原料、化粧品、食品、バイオマス材料等の工業原料として特に有用である。

Claims (3)

  1. 下記式(1)で示されるセルロースのセルロースI型結晶化度が33%を超えるセルロース含有原料を二軸押出機で処理して低結晶性セルロースを製造する方法であって、水分含量が5質量%以下のセルロース含有原料を、二軸押出機のシリンダー内壁面とニーディングスクリュの外周面とのクリアランスが0.05〜5.0mmである二軸押出機を用いて、せん断速度600〜4000sec-1で処理して、該セルロースI型結晶化度を33%以下に低減する、低結晶性セルロースの製造方法。
    セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
    〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
  2. セルロース含有原料の嵩密度が10〜500kg/m3である、請求項1に記載の低結晶性セルロースの製造方法。
  3. セルロース含有原料がパルプである、請求項1又は2に記載の低結晶性セルロースの製造方法。
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