JP2012217973A - セルロースの結晶化指数の予測方法 - Google Patents

セルロースの結晶化指数の予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】非球形媒体を用いた容器駆動媒体ミル装置によって、セルロース含有原料を処理した後の粉体におけるセルロースの結晶化指数を、精度良く予測できる方法を提供すること。
【解決手段】容器駆動媒体ミル装置における非球形媒体の運動を、粘弾性力学モデルを用いた離散要素法によりシミュレーションすることで、該ミル装置内で生じるすべての衝突に起因する単位時間散逸エネルギーを算出する。次にセルロース含有原料を処理して得られた粉体におけるセルロースの結晶化指数を予め実測しておき、該結晶化指数と、単位時間散逸エネルギー及び処理条件から算出される投下散逸エネルギーとの相関を求める。そして結晶化指数と投下散逸エネルギーとの相関に基づき、所定の投下散逸エネルギーをミル装置に与えてセルロース含有原料を処理したときの前記粉体におけるセルロースの結晶化指数を予測する。
【選択図】図1

Description

本発明は、セルロース含有原料をメカノケミカル処理によって処理するときの条件に応じて得られる粉体におけるセルロースの結晶化指数を予測する方法に関する。
パルプ等のセルロース含有原料を粉砕して得られるセルロースは、セルロースエーテルの原料、化粧品、食品、バイオマス材料等の工業原料に用いられる。これらの工業原料としては、セルロース結晶構造が非晶化されたセルロースが特に有用である。例えば本出願人は先に、セルロースI型結晶化指数が33%を超えるセルロース含有原料から、非晶化セルロースを製造する方法を提案した(特許文献1参照)。この方法においては、原料から水を除いた残余の成分中のセルロースの含有量が20質量%以上である原料を用い、かつセルロース含有原料を、ロッドを充填した振動ミルを用いて機械的に処理して、該セルロースI型結晶化指数を33%以下に低減している。また、特許文献2は、処理に使用する粉砕機としては、転動ミル、振動ミル、遊星ミル、遠心流動ミル等の容器駆動式粉砕機が挙げられており、これらの中で、粉砕効率が高く、生産性の観点から、振動ミルが好ましいとの記載がある。更に、粉砕機としては、ボール、ロッド、チューブ等があるが、生産性の観点からボール、ロッドが好ましく、ロッドがより好ましいと記載されている。
容器駆動媒体ミル装置の工業化検討においては、実験室で用いる小型のラボ機の操作条件を用いても、大型の量産機では同等の性能を実現することが難しい。その理由は、ラボ機と量産機とでは、運転中における媒体の動きが異なるので、ラボ機で採用した運転条件から量産機の運転に適した条件を見いだすことは容易でないためである。そのため、ラボ機と量産機の中間サイズのパイロット機や量産機を用いた実験を試行錯誤的に繰り返すことで、セルロース含有原料の非晶化のための最適条件を見いだしているのが状況であり、量産条件の確立までに日数とコストを要する。
更に「量産機の性能向上を目指したミル装置の構造の改良」や「より大規模な量産機の製作」を行うときには、設計の選択肢が広がるため、具体的な指針を見いだすことが一層難しくなり試行錯誤性が強くなる。しかし、ミル装置が大規模になることから多くの検討を行うことは難しく、所望する性能を実現できないこともある。
これらの課題を解決するために、球形媒体を用いた容器駆動媒体ミル装置では、転動・振動・遊星等の装置運動に対して離散要素法を用いたシミュレーション解析を行い、シミュレーションから得られる単位時間散逸エネルギーや衝突エネルギーと実験結果である粉砕粒径や結晶化指数との関係を明らかにすることが試みられている(特許文献3ないし5参照)。
しかし、特許文献3ないし5に記載の技術は、媒体として球形のものを用いることを前提としている。したがって、これらの文献に記載の技術を、特許文献1及び2に記載されているロッドのような非球形媒体にそのまま適用することはできない。その理由として、球状以外の離散要素法に関しては手法が確立されていないことが挙げられる。商用ソフトウエアのなかには、非球形粒子を球形粒子で近似するMulti−Sphere DEM法が用いられているものがあり、そのようなソフトウエアを用いれば原理的には解析が可能である。しかし、接触する球形粒子の接触点数に応じてシミュレーション結果が大きく変わることも知られており、非特許文献1及び2には定量性に関する課題が提示されている。
非特許文献1ではMulti-Sphere DEM法の妥当性を確認するため、球状粒子(アルミ合金、酸化アルミニウム)の反跳実験から得られた反発係数、回転速度、衝突時間等の衝突特性パラメータのシミュレーションによる再現検討が行われている。そこでは球状粒子を1つの弾性体として考える一般的な解析と、Multi-Sphere DEM法を用いて複数の球状粒子で構成された結合粒子での解析とを比較している。また、結合粒子に対しては球状粒子近似による人工的な衝突状態を考慮するため1点接触、2点接触及び3点接触の3つの状態における衝突特性が比較されている。球状粒子を1つの弾性体として考えたシミュレーションで得られた衝突パラメータは、実験結果から得られた衝突特性パラメータと定性的に一致することが確認されたが、Multi-Sphere DEM法では衝突状態に対して結果が大きく変わり、1点接触及び2点接触では合わないが、3点接触では一部の衝突パラメータを除いて実験結果と良い一致を示している。
非特許文献2では、ロッドミル解析と同様に円柱を球状粒子で構成し、その接触状態をFEMによる解析結果と比較し、Multi-Sphere DEM法の課題を示している。そこでは、円柱を傾かせた状態で平板に接触させ、その接触角及び接触距離を変えた場合の応力を、有限要素法(FEM)により計算(線形弾性モデル)している。そしてFEMで解析した円柱と同じ形状を、粒子間距離一定として球状粒子で構成し、FEMで得られた接触角−応力、接触距離−応力の結果を再現する球状粒子接触モデルの物性値を逆算している。球状粒子接触モデルに用いられている物性値は材料固有であることが望まれるが、応力の接触角依存性が大きいため得られた物性値は接触角により大きく異なり、その変化も複雑で簡単な関数で表現することもできないことを報告している。
特開2009−161717号公報 特開2011−1547号公報 特開平11−147048号公報 特開平11−207203号公報 特開2006−10261号公報
H. Kruggel-Emden, S. Rickelta, S. Wirtza and V. Scherer, "A study on the validity of the multi-sphere Discrete Element Method", Powder Technology 188, (2008), 153-165. M. Kodam, R. Bharadwaj, J. Curtis, B. Hancock, and C. Wassgren, "Force Model Considerations for Glued Sphere Discrete Element Method Simulations", Chemical Engineering Science, 64, (2009), 3466-3475.
したがって本発明の課題は、非球形媒体を用いた容器駆動媒体ミル装置によってセルロースを含有する粒子からなる粉体を処理した後の該セルロースの結晶化指数を、精度良く予測できる方法を提供することにある。
本発明は、セルロース含有原料を、容器駆動媒体ミル装置を用いて処理して得られる粉体におけるセルロースの結晶化指数の予測方法であって、
前記ミル装置における非球形媒体の運動を、粘弾性力学モデルを用いた離散要素法によりシミュレーションすることで、該ミル装置内で生じるすべての衝突に起因する単位時間散逸エネルギーを算出し、
所定の条件下に前記ミル装置によって前記セルロース含有原料を処理して得られた粉体におけるセルロースの結晶化指数を予め実測しておき、該結晶化指数と、前記単位時間散逸エネルギー及び前記ミル装置を用いた処理条件から算出される投下散逸エネルギーとの相関を求め、
前記結晶化指数と前記投下散逸エネルギーとの相関に基づき、所定の投下散逸エネルギーを前記ミル装置に与えて前記セルロース含有原料を処理したときの前記粉体におけるセルロースの結晶化指数を予測する、セルロースの結晶化指数の予測方法を提供するものである。
前記の予測方法においては、前記非球形媒体を、複数の球形粒子を重ね合わせた結合体で構成し、その前記結合体どうしの衝突及び前記結合体とミル内壁との衝突における該結合体中の前記球形粒子の平均接触数を予め求めておくことで、該結合体の運動状態を離散要素法によってシミュレーションし、前記投下散逸エネルギーを算出することが好ましい。
また本発明は、セルロース含有原料を容器駆動媒体ミル装置を用いて処理し、処理によって得られる粉体におけるセルロースの結晶化指数を目標値まで低減するのに要する投下散逸エネルギーを予測する、投下散逸エネルギーの予測方法であって、
前記ミル装置における非球形媒体の運動を、粘弾性力学モデルを用いた離散要素法によりシミュレーションすることで、該ミル装置内で生じるすべての衝突に起因する単位時間散逸エネルギーを算出し、
所定の条件下に前記ミル装置によってセルロース含有原料を処理して得られた粉体におけるセルロースの結晶化指数を予め実測しておき、該結晶化指数と、前記単位時間散逸エネルギー及び前記ミル装置を用いた処理条件から算出される投下散逸エネルギーとの相関を求め、
前記結晶化指数と前記投下散逸エネルギーとの相関に基づき、前記粉体におけるセルロースの結晶化指数を目標値まで低減するのに要する投下散逸エネルギーを予測する、投下散逸エネルギーの予測方法を提供するものである。
更に本発明は、セルロース含有原料を、容器駆動媒体ミル装置を用いて処理し、セルロースの結晶化指数が目標値まで低減した粉体を製造する方法であって、
前記投下散逸エネルギーの予測方法を用い、前記粉体における前記セルロースの結晶化指数が前記目標値まで低下するのに要する投下散逸エネルギーを予測し、
予測された投下散逸エネルギーが発生する処理条件に設定された前記ミル装置を用いてセルロース含有原料を処理する、粉体の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、非球形媒体を用いた容器駆動媒体ミル装置によって、セルロースを含有する粒子からなる粉体を処理した後の該セルロースの結晶化指数を、精度良く予測することができる。したがって容器駆動媒体ミル装置をスケールアップしたときに、スケールアップした装置によって、セルロースを含有する粒子からなる粉体を処理した後の該セルロースの結晶化指数を、実際に実験を行うことなく予測できる。
図1は、ロッド状の媒体を、球形粒子を直線状に連ねて重ね合わせた結合体で構成した状態を示すモデル図である。 図2は、本発明の予測方法において行うシミュレーションのフローチャートである。 図3は、図1に示す結合体における球形粒子の結合状態を示す模式図である。 図4は、結合体がミル内壁に衝突したときの状態を示すモデル図である。 図5は、結合体どうしが衝突したときの状態を示すモデル図である。 図6は、本発明の方法に従い実施例で算出された投下散逸エネルギーと、実際に処理を行って得られた粉体におけるセルロースの結晶化指数との関係をプロットしたグラフである。 図7は、実際に測定された投下散逸エネルギーと、実際に処理を行って得られた粉体におけるセルロースの結晶化指数との関係をプロットしたグラフである。
以下、本発明のセルロースの結晶化指数の予測方法を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の予測方法では、容器駆動媒体ミル装置を用いたセルロース含有原料の処理において、該ミル装置に所定の投下散逸エネルギーを与えて該セルロース含有原料を処理して得られる粉体におけるセルロースの結晶化指数を予測する。この予測は、所定の条件下に前記ミル装置によってセルロース含有原料を予め処理して得られた粉体におけるセルロースの結晶化指数(実測値)と、その結晶化指数での投下散逸エネルギー(計算値)との相関に基づき行う。投下散逸エネルギー(計算値)は、単位時間散逸エネルギー(計算値)と、前記ミル装置を用いた実際の処理条件(実測値)とから算出される。単位時間散逸エネルギーとは、前記ミル装置における非球形媒体の運動を、粘弾性力学モデルを用いた離散要素法によりシミュレーションすることで算出される、ミル装置内で生じるすべての衝突に起因する単位時間あたりの散逸エネルギーのことである。
まず、本明細書で用いられている「セルロース含有原料」、「結晶化指数」及び「結晶化指数の算出」について説明を行う。
〔セルロース含有原料〕
セルロース含有原料は、セルロースのみから構成されていてもよく、あるいはセルロースと他の成分とから構成されていてもよい。他の成分としては、リグニン等が挙げられる。セルロース含有原料が、セルロースと他の成分とから構成される場合、該セルロース含有原料から水を除いた残余の成分中のセルロース含有量は、好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、一層好ましくは60質量%以上である。セルロース含有量とは、セルロース含有原料におけるセルロース含有量及びヘミセルロース含有量の合計量を意味する。
セルロース含有原料には特に制限はなく、各種木材チップ;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;新聞紙、ダンボール、雑誌、上質紙等の紙類;稲わら、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等を原料とする粉体が用いられる。市販のパルプの場合、水を除いた残余の成分中のセルロース含有量は、一般には75〜99質量%であり、他の成分としてリグニン等を含む。また市販のパルプにおけるセルロースI型結晶化指数は、通常60%以上である。セルロース含有原料中の水分含量は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。セルロース含有原料中の水分含量が20質量%以下であれば、容器駆動媒体ミル装置を用いてセルロース含有原料を容易に粉砕できるとともに、粉砕処理によりセルロースの結晶化指数を容易に低下させることができる。
〔セルロースI型結晶化指数〕
結晶化指数は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したもので、下記計算式(1)により定義される。
セルロースI型結晶化指数(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
本発明の予測方法を用いて製造される粉体(以下、簡便のため「セルロース含有粉体」という。)におけるセルロースは、好ましくはそのセルロースI型結晶化指数を33%以下に低下させたものである。セルロースI型結晶化指数が33%以下であれば、先に述べたとおり、セルロースの化学反応性が向上し、例えば、セルロースエーテルの製造において、アルカリを加えた際にアルカリセルロース化が容易に進行し、結果としてセルロースエーテル化反応の反応転化率を向上させることができるからである。この観点から、セルロースI型結晶化指数は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、X線回折法で結晶が検出されない0%以下が特に好ましい。セルロースI型結晶化指数が0%以下となる場合、−10%以下が好ましく、−20%以下がより好ましく、−30%以下が更に好ましい。
〔セルロースI型結晶化指数の算出〕
セルロースI型結晶化指数は、サンプルのX線回折強度を、株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X−RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定し、前記計算式に基づいて算出する。測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°とした。測定用サンプルは、粉体を、面積320mm2×厚さ1mmのペレットに圧縮したものである。X線のスキャンスピードは10°/minとした。
次に、シミュレーションによって単位時間散逸エネルギーを算出する手順を説明する。本発明の予測方法は、容器駆動媒体ミル装置を用いたセルロース含有原料の処理に非球形媒体を用いることを特徴としている。本発明の手法は球状媒体への適応も可能であるが、特許文献2の実施例で用いられている媒体はロッドであり、非球状媒体の使用がセルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数を低くできることが示唆されていることから、以下では非球状媒体を用いた場合の単位時間散逸エネルギーを算出する手順を説明する。なお、本シミュレーションは、容器駆動媒体ミル装置内に充填された媒体のみの運動を予測するものであり、粒子の衝突・粉砕等の現象の予測は含まれない。
容器駆動媒体ミル装置に用いられる非球形媒体に特に制限はないが、特許文献1での実施例ではロッド状の媒体が用いられている。ロッド状とは、一軸方向に細長い棒状の形状であって、かつ該方向と直交する方向における断面形状がいずれの位置においても同一である形状のものをいう。ロッド状の媒体における横断面の形状は、例えば円形、楕円形、並びに四角形及び六角形等の多角形が挙げられる。本発明におけるシミュレーションでは、横断面の形状が円形であるロッド状の媒体を対象とする。
本発明においては、非球形媒体を、複数の球形粒子の重ね合わせで構成し、該非球形媒体の衝突運動を離散要素法によってシミュレーションする。具体的には図1に示すように、非球形媒体であるロッド状の媒体Mを、その横断面の直径と同じ直径を有する複数の球形粒子Sを直線状に連ねて重ね合わせて構成された結合体Cとする。そして、結合体Cに対して粘弾性力学モデルを用いた離散要素法を適用してロッド状の媒体Mの衝突運動をシミュレーションする。離散要素法においては、粒子間に力学モデルを採用し、個々の粒子に作用する力を逐一計算する。採用する力学モデルとしては、フォークトモデルが一般的であり、本発明においてもこのモデルを採用する。フォークトモデルとは、弾性的性質のばねと粘性的性質のダッシュポット及び摩擦スライダとによって表現される力学モデルである。
本発明におけるシミュレーションは、例えばパーソナルコンピュータで動作する市販のソフトウエアを用い、初期設定値として後述する各種の値を与えることで行うことができる。そのようなソフトウエアとしては、例えばDEM soultions社のEDEM2.1(商品名)が挙げられる。もちろん独自のプログラムを作成してシミュレーションを行ってもよい。
本シミュレーションは、図2に示すフローチャートにしたがって行われる。同図に示すフローチャートは、(1)設定部、(2)計算部及び(3)物理量算出部に大別される。以下に、これら各部の詳細を説明する。
(1)の設定部においては、シミュレーションを行うための初期状態を設定する。まず、容器駆動媒体ミル装置の粉砕筒の三次元形状を設定する。容器駆動媒体ミル装置は、粉砕媒体(本実施形態ではロッド状の媒体)が挿入されているドラム形の粉砕筒を振動させることで、該粉砕筒中の媒体を運動させる装置であり、一般には振動ミルと呼ばれている。本シミュレーションでは、粉砕筒を水平方向と垂直方向に全振幅8(mm)、回転数1200(rpm)で振動させており、水平方向と垂直方向の振動の位相差はπ/2である。更に、粒子がミル内壁へ衝突した際の反跳運動及びエネルギー損失を求めるために、ミル装置の内壁の材質も設定することが必要となる。内壁の材質を特徴付ける物性値として、内壁の弾性率、ポアソン比及び密度を設定する。
(1)の設定部においては、粒子物性パラメータも設定する。ここでいう粒子とは、図1に示す球形粒子Sのことである。粒子物性パラメータ設定では、図1に示す結合体Cの質量、体積、モーメントなどの諸マクロ物性値をソフトウエア上で自動計算するための基礎的なパラメータを設定する。具体的に設定するパラメータとしては、粒子の半径、粒子の結合体Cでの位置及び粒子の材質が挙げられる。粒子の材質を特徴付ける物性値として、弾性率、ポアソン比及び密度を設定する。
更に(1)の設定部においては、球形粒子S−球形粒子S間の相互作用パラメータを設定する。また、球形粒子S−ミル内壁間の相互作用パラメータも設定する。相互作用パラメータとしては、反発係数、静摩擦係数及び回転摩擦係数の値を設定する。これらの相互作用パラメータは、球形粒子S−球形粒子S間及び球形粒子S−ミル内壁間でそれぞれ別個に設定する。反発係数は、平板上に対象とする球形粒子Sを落下させ運動を再現することにより決定される。静摩擦係数及び回転摩擦係数は、球形粒子Sをミル装置へ充填し、ミル装置を駆動させた際の球形粒子Sの持ち上がり角(安息角)を再現することにより決定される。球形粒子Sの材料が鉄やステンレス等の金属やセラミックスであれば、従来の検討から幾つか候補となる値が特許文献・論文等に記載されているので、それらの値を球形粒子Sの摩擦係数として用いてもよい。
引き続きロッド状の媒体に適合した結合体C(図1参照)の形状を設定する。先に述べたとおり結合体Cは、ロッド状の媒体を、球形粒子Sを一列に連ねて結合した形状で近似したものである。結合する球形粒子の数を増やすと、結合体Cの形状はロッド状に近づく。このことは、シミュレーションの精度が向上する点からプラスに作用する。しかし、結合する球形粒子Sの数Nを増やすことは、シミュレーションの計算負荷が大きくなるという不都合がある。また、先に述べたとおり、結合体Cを構成する球形粒子Sの個数Nにより、接触する球形粒子Sの接触点数が変化し、シミュレーション結果が大きく変わることも知られている。更に、複数の不定形状媒体による多重衝突を考える場合に、衝突毎の接触点数を予め求めることが必要となるため、不定形状媒体の個々の動きを厳密に再現した計算を行うことが必要であるが、この計算は非常な労力を要する。そこで本シミュレーションにおいては、簡便かつ適切に衝突エネルギーや散逸エネルギーの物理量を得るために、平均接触数mという概念を導入している。本シミュレーションで着目するミル装置内での複数の媒体の運動から衝突エネルギーや散逸エネルギー等の時間平均的及び統計平均的な物理量を扱う際には、衝突毎に接触点数を求めなくても、各衝突における衝突の接触点数の平均値として平均接触数を与えることで、個々の衝突の接触点数を厳密に求めることなく本発明の目的に対応できると考えられる。更に、この平均接触数を用いることで、結合する球形粒子Sの数Nの最小値も決定することができる。この概念は本発明において初めて導入されたものであり、従来知られているMulti−Sphere DEM法では用いられていなかった概念である。
平均接触数mとは、結合体Cどうしの衝突及び結合体Cとミル内壁との衝突の際に、該結合体Cを構成する球形粒子Sが接触する平均の数のことである。つまり、ロッド状の媒体Mを、球形粒子Sの結合体Cで近似することによって生じる人工的な接触点数であり、この衝突毎に異なる接触点数をある値mで代表させることを意味している。平均接触数mは、結合体Cを構成する球形粒子Sの数Nとともに次の手順(a)ないし(c)で決定される。なお(a)と(b)の順序は逆でもよい。
(a)単位時間散逸エネルギーの算出。
(b)ミル装置の消費電力の実測。
(c)単位時間散逸エネルギーと消費電力との比較による平均接触数m及び球形粒子の数Nの決定。
前記の(a)においては、単位時間散逸エネルギーをシミュレーションによって算出する。単位時間散逸エネルギーとは、複数個の媒体が充填されているミル装置を運転したときに、媒体どうしの衝突及び媒体とミル内壁との衝突によって生じるエネルギーを単位時間で除した値であり、シミュレーションによって算出される仮想的な値のことである。単位時間散逸エネルギーはW(ワット)で表される。
単位時間散逸エネルギーの算出のためには、結合体Cを構成する球形粒子の数Nの初期値を定める。球形粒子の数Nは、ロッド状の媒体の長さをL、半径をaとした場合、N≧L/2aを満たす自然数である。球形粒子の半径はもちろんaである。隣り合う球形粒子間の距離、すなわち隣り合う球形粒子間の重なりの程度を、図3に示すようにΔxとすると、ロッド状の媒体の長さLは、L=2a+Δx(N−1)で表される。
本シミュレーションにおいては、結合体Cの球形粒子Sの数Nを複数個設定して各結合体Cの単位時間散逸エネルギーを計算し、それらの単位時間散逸エネルギーの球形粒子Sの数Nに対する振る舞いを求めることが重要となる。具体的には、球形粒子Sの数Nの増加に対して単位時間散逸エネルギーが一定値に収束することが必要となる。例えばN=N1、N2、・・、Nn1というn1個の初期値を定めることができる。そして、球形粒子の数が異なるn1種類の結合体Cそれぞれについて平均接触数mを定める。各結合体Cについて、複数の平均接触数mを設定し、計算された単位時間散逸エネルギーが、ミル装置の消費電力の実測値を再現する平均接触数mを求めることが必要になる。
以上のようにして、n1種類の結合体Cのそれぞれについて、n2個の平均接触数mを初期値として与える。すなわちNとmの初期値の組み合わせはn1×n2とおりとなる。このn1×n2とおりの組み合わせについて、以下に述べる計算部によって単位時間散逸エネルギーを算出する(具体的な算出方法は後述する)。算出に際しては、図2に示すフローチャートの(1)の設定部におけるロッド数及びミル動作条件の初期値も設定する(このことについても後述する)。単位時間散逸エネルギーは、n1×n2個の値が算出される。
前記の(b)においては、(a)のシミュレーションのもとになったミル装置を実際に運転して運転時の動力(W)を実測する。具体的には、ミル装置内に所定本数のロッド状の媒体を充填し、該ミル装置の運転を行う。用いたロッド状の媒体は、(a)のシミュレーションで用いた初期値である長さL及び半径aを有するものである。またロッド状の媒体の本数は、シミュレーションの初期値で設定した値とする。使用するミル装置としては、例えば中央化工機株式会社製の振動ミル、ユーラステクノ株式会社製のバイブロミル、株式会社吉田製作所製の小型振動ロッドミル1045型、ドイツのフリッチュ社製の振動カップミルP−9型、日陶科学株式会社製の小型振動ミルNB−O型等を用いることができる。
前記の運転とは別に、ロッド状の媒体を充填せずに前記のミル装置を空運転して空転動力(W)を実測する。運転条件は、ロッド状の媒体を充填しない以外は、前記の運転と同一である。そして運転時の動力(W)−空転動力(W)の式から消費電力(W)を算出する。この消費電力(W)を、ロッド状の媒体どうしの衝突及び該媒体とミル内壁との衝突によって生じたエネルギーであると見なす。
前記の(c)においては、(a)で算出されたn1×n2個の単位時間散逸エネルギー(W)と、(b)で実測された消費電力(W)とが比較される。この比較は、パーソナルコンピュータを用いたシミュレーションの一環として行ってもよく、あるいはシミュレーションとは別に人手で行ってよい。そしてn1×n2個の単位時間散逸エネルギーのうち、ミル装置の消費電力と誤差10%以内で一致するNとmの組み合わせを選定する。誤差は、|単位時間散逸エネルギー−消費電力|≦消費電力×0.1で求める。選定されたNとmの組み合わせが、目的とする結合体Cにおける球形粒子の数N及び平均接触数mである。選定されたNとmの組み合わせが2組以上ある場合には、前記の誤差が最も小さい組み合わせを更に選定すればよい。
図2に示すフローチャートの(1)の設定部におけるロッド数及びミル動作条件を設定は、次のように行う。ロッド数は、ロッド状の媒体の太さ及びミルの寸法に応じて適切な値が設定される。また、ロッド数は、上述したミル装置の実際の運転において運転時の動力(W)を測定したときに用いたロッド状の媒体の数と同数とする。ミルの動作条件としては、例えばミル装置を運転するときの全振幅(mm)及び回転数(rpm)を設定することが必要である。本シミュレーションでは、粉砕筒を水平方向と垂直方向に全振幅8(mm)、回転数1200(rpm)で振動させる。水平方向と垂直方向の振動の位相差はπ/2である。
次に、図2に示すフローチャートの(2)の計算部の処理を実行する。具体的には、これまで設定してきた各設定値に基づき、設定された数の結合体Cをミル装置内に静止した状態で設置する。結合体Cの設置位置は、乱数を発生させて決定する。したがって結合体Cの正確な設置位置(座標)は、実際の計算が始まるまでは未定である(実際にミル装置内にロッドを配置する際にも、配置するロッド本数は設定するが、ロッドの初期の配置位置に関しては規定できない)。また、この時点では各結合体Cは静止しているので、該結合体Cを構成する球形粒子の速度及び加速度はともにゼロである。また、この時点での散逸エネルギーもゼロである。
次に、与えられた設定値に基づき計算を開始する。実際のミル装置は、この設定値に基づき運動(転動、振動及び遊星運動)する。ロッド状の媒体とミル内壁との間には摩擦力があるので、ミル装置の運動に応じてロッド状の媒体も運動する。ロッド状の媒体は、その自重及び慣性モーメントに基づき運動する。その結果、ロッド状の媒体どうしの衝突及びロッド状の媒体とミル内壁との衝突が起こる。これらの衝突によって、ロッド状の媒体は物理法則に基づき反跳する。これらの衝突は、衝突エネルギーの一部が熱エネルギーに変化する非弾性衝突であることが一般的である。この熱エネルギーが先に述べた散逸エネルギーである。本シミュレーションにおいては、図2に示すフローチャートの(3)の物理量算出部によって単位時間散逸エネルギーを算出する。
(2)の計算部における計算は、これまで知られているMulti−Sphere DEM法による計算と同じである。具体的には、静止状態から微少時間Δtが経過するごとに、各結合体Cの位置(座標)を計算し、各結合体Cが他の結合体C又はミル内壁と接触しているか否かを判定する。結合体Cが他の結合体C又はミル内壁に接触している場合には、該結合体Cについて力F及びモーメントMを計算する。力F及びモーメントMの計算は、図4に示すモデル図及び以下に示す式から算出される。
この式はある時間tから微小時間Δtが経過したt+Δtの間において、結合体Cが、結合体どうし又はミル内壁と接触することによる力F及びモーメントMを表している。前記の式及び図4における添え字iは、i番目の結合体を表す。kは、ロッド状の媒体を複数個の球形粒子で近似したときの該球形粒子の番号である。lは、結合体どうし又は結合体とミル内壁との接触点を表す。球状粒子kが結合体又はミル内壁と接触する点lは、数値計算によって結合体の運動を逐次追跡して決定する。この式でのjiklはMulti−Sphere DEM法から生じる人工的な接触点数を示す。例えば、ロッドのような棒状粒子どうしが平行に衝突する場合において、ロッドを構成する結合数が増加するとその増加に応じて衝突の際の接触点数も増加し、結合粒子に働く力Fが増加するため、人工的な接触点数jiklで割ることが必要となる。よって本来は、力とモーメントを計算する際に、衝突毎の接触点数jiklを予め求めることが必要となるが、不定形状媒体の個々の衝突において人工的な接触点数を予め求めるような厳密な計算を行うことは非常な労力を要する。この問題を解決するために、接触点数jikl=平均接触数mとして一定値を予め与えておくことが本発明の特徴である。
また前記の式及び図4において、Fiklは、結合体iがミル内壁又は他の結合体とlの地点で接触したときに、結合体iを構成している球形粒子kが受ける力を表す。xiklは、結合体iを構成している球形粒子kがミル内壁又は他の結合体とlの地点で接触したときの位置(座標)を表す。xikは、結合体iを構成している球形粒子kがミル内壁又は他の結合体とlの地点で接触したときの球形粒子の重心の位置を表す。xiは、結合体iの重心の位置を表す。Mは、衝突に関係した結合体iを構成する球形粒子の数を表す。MNは、衝突に関係した球形粒子kが結合体又はミル内壁と接触した接触点数の総和を表す。Fikl、xikl、xik、xi、M及びMNは数値計算によって結合体の運動を逐次追跡して決定する。
結合体Cが受ける力が上述の手順で算出されたら、図5に示すモデル図及び以下の式から該結合体Cの位置が特定できる。以下の式は、ニュートンの運動方程式に基づいている。これにより各時刻での該結合体Cの位置を求めることができる。
最後に、同図に示すフローチャートの(3)の物理量算出部における処理が行われる。結合体Cの位置を追跡した結果、時刻t→t+Δtで、結合体i1と結合体i2との間に衝突が生じるとき、それらの結合体i1及び結合体i2における衝突した球形粒子をk1及びk2とすると、この球形粒子の半径はaだから、球形粒子k1と球形粒子k2とのオーバーラップδ、つまり運動距離は、以下の式で表される。
そして、結合体i1と結合体i2とが衝突したときに作用する力の粘性項をFvとすると、この衝突に起因する単位時間散逸エネルギーは、δ×Fvで算出される。したがって、衝突ごとの単位時間散逸エネルギーをすべて足し合わせることで、目的とする単位時間散逸エネルギーΣδ×Fvが算出される。
以上のとおりにして、図2に示すフローチャートの(3)の物理量算出部における処理が完了する。以上の処理により単位時間散逸エネルギーを求め、該単位時間散逸エネルギーと、ミル装置を用いてセルロース含有原料を実際に処理したときの条件とから、後述する方法で投下散逸エネルギーを算出する。処理によって得られたセルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数の実測は、処理の途中の粉体を、全体の量に影響を及ぼさない微少量(100gの仕込みに量に対して1g程度)抜き出して行う。これによって、処理時間に対するセルロースの結晶化指数の関係を得ることができる。データの精度を高めるためには、同様の実験を複数回行えばよい。
例えばミル装置を用いた処理をバッチ式で行う場合には、該バッチ式処理の条件である処理時間(h)及び仕込み量(kg)と単位時間散逸エネルギー(W)とから、以下の式(I)によって投下散逸エネルギー(Wh/kg)を算出する。この式を用いた算出を、処理条件の数だけ行う。
投下散逸エネルギー(Wh/kg)=単位時間散逸エネルギー(W)×処理時間(h)/仕込み量(kg) (I)
ミル装置を用いた処理を連続式で行う場合には、該連続式処理の条件である時間当たりフィード量(kg/h)と単位時間散逸エネルギー(W)とから、以下の式(II)によって投下散逸エネルギーを算出する。この式を用いた算出を、処理条件の数だけ行う。
投下散逸エネルギー(Wh/kg)=単位時間散逸エネルギー(W)/時間当たりフィード量(kg/h) (II)
ここでの時間当たりフィード量は、仕込み量を、粉体を投入してから排出されるまでの時間で割ったものを意味している。
以上の処理によって、シミュレーションによる投下散逸エネルギーが、セルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数ごとに算出される。次に、算出された投下散逸エネルギーと、セルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数との相関を求める。この操作は、例えば投下散逸エネルギーと、該投下散逸エネルギーを算出するときに用いた処理条件によって得られた粉体におけるセルロースの結晶化指数とをグラフにプロットすればよい。そのようなグラフの一例を図6に示す。同図は、後述する実施例の結果である。同図から明らかなように、投下散逸エネルギーが大きいほどセルロースの結晶化指数が低下する(すなわち非晶化する)ことが判る。
このようにして得られた投下散逸エネルギーと結晶化指数との相関を示すグラフを用い、所定の投下散逸エネルギーをミル装置に与えたと仮定したときのセルロースの結晶化指数を予測することができる。したがって、前記のグラフを例えば小型のミル装置を用いた実験によって作成しておけば、ある運転条件を決定した場合には、その条件で得られるセルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数を時間及び手間をかけてなくても簡便に予測することができる。
以上の方法は、所定の投下散逸エネルギーをミル装置に与えたときのセルロースの結晶化指数を予測するものであるが、本発明によれば、これに加えて、セルロース含有原料をミル装置を用いて処理し、処理によって得られるセルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数を目標値まで低減するのに要する投下散逸エネルギーを予測することもできる。例えば、大型の量産タイプのミル装置を用いて非晶化の処理をスケールアップするときに、目的とする結晶化度のセルロース含有粉体を得るために適した投下散逸エネルギーを、上述のようにして得られた投下散逸エネルギーと結晶化指数との相関を示すグラフを用いて簡便に予測することができる。そして、予測された投下散逸エネルギーが発生する処理条件に設定されたミル装置を用いてセルロース含有原料を処理することで、結晶化指数が目標値まで低減したセルロース含有粉体を容易に得ることができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態においては、非球形媒体としてロッド状の媒体を用いた場合のシミュレーションを例に挙げて説明したが、本発明の方法はロッド状以外の形状の媒体を用いた場合にも同様に適用することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り「%」は「質量%」を意味する。
(1)小型のラボ機を用いたセルロース含有原料におけるセルロースの非晶化処理
〔1−1裁断処理〕
セルロース含有原料として、シート状木材パルプ〔テンベック社製HV+、800mm×600mm×1mm、結晶化指数81.5%、セルロース含有量(セルロース含有原料から水を除いた残余の成分中の量、以下同じ)96.0%、水分含量8.5%〕を用いた。これをシートペレタイザ(株式会社ホーライ製、「SG(E)−220」)にかけて、約4mm×4mm×1mmのチップ状パルプにした。
〔1−2乾燥処理〕
裁断処理によって得られたチップ状パルプを、棚乾燥機〔アドバンテック(ADVANTEC)社製真空低温乾燥機「DRV320DV」〕を用いて、乾燥後のパルプの水分含量が、1.0%になるように乾燥した。乾燥処理後のパルプにおけるセルロースの結晶化指数は、X線回折強度から算出した値が82%であった。
〔1−3振動ミル処理〕
乾燥処理後のパルプを振動ミル(中央化工機株式会社製、「MB−1」、容器全容量3.6リットル、ミル直径142mm、長手方向の長さ226mm)に投入した。ロッド状の媒体として、半径15mm、長さ211mm、材質ステンレス、横断面形状が円形の13本のロッドを用い、これを振動ミルに充填した。全振幅8(mm)、回転数1200(rpm)の条件で非晶化処理を行った。処理時間を変えることで、セルロースの結晶化指数が異なる5種類の粉体を得た。具体的には、100gのパルプを仕込み、10分、20分、30分、45分及び60分でそれぞれ処理した。処理によって得られたセルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数はX線回折強度から求めた。
(2)振動ミルの消費電力の算出
前記の(1)で用いた振動ミルに、前記の(1)で用いた13本のロッドを充填し、前記の(1)の条件で運転を行い、運転時の動力を実測した。次いで、13本のロッドを取り出し、同条件で空運転を行い、空転動力を実測した。そして、運転時の動力から空転動力を差し引き、得られた値を振動ミルの消費電力(W)とした。この値は268.2Wであった。
(3)単位時間散逸エネルギーの算出
図2に示すフローチャートに従うプログラムをパーソナルコンピュータで実行させて、シミュレーションによって単位時間散逸エネルギーを算出した。シミュレーションにおいては、結合体Cにおける半径15mmの球状粒子の数Nを15個、22個、31個及び43個の4種類に設定した。また、平均接触数mは、1個、N/2個及びN個の3種類に設定した。すなわち球状粒子の数Nと平均接触数mとの組み合わせは4×3=12とおりとした。この12とおりの組み合わせのそれぞれについて単位時間散逸エネルギーを算出した。その結果を以下の表1に示す。同表には前記の(2)で算出した振動ミルの消費電力も記載されている。同表に示す結果から明らかなように、球状粒子の数Nと平均接触数mとの組み合わせのうち、振動ミルの消費電力に最も近いものはN=31、m=31の場合であった。したがって、結合体Cとして31個の球形粒子が直線状に連ねて重ね合わせたものを採用することとした。また、平均接触数は31を採用することとした。このときの単位時間散逸エネルギーは、同表に示すとおり273.8Wであった。
(4)投下散逸エネルギーの算出及びセルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数との相関
前記の(3)で得られた単位時間散逸エネルギーと、前記の(1)のセルロースの非晶化処理での処理時間及び仕込み量から、各結晶化指数における投下散逸エネルギーを、前記の式(I)に従い算出し、算出された投下散逸エネルギーと、そのときのセルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数とから、両者の相関を示すグラフを作成した。これを図6に示す。
(6)実測値との検証
図6に示す結果が、実測値とどの程度一致しているかの検証を行った。検証には、前記の(1)で用いたバッチ式振動ミルである中央化工機株式会社製の「MB−1」に加え、同社製のバッチ式振動ミル「FV−20」(ミル容積68.9リットル、ミル径382.4mm)、連続式振動ミル「CD−25」(ポッド容積58.6リットル×2、ミル径236.0mm)及び連続式振動ミル「MC−15」(ポッド容積15.5リットル×2、ミル径146.0mm)を用いた。装置によっては、安定した振動を得るため振動源の中心とミル重心を一致させることが重要となり、ポットを2つ接続しているものもある。前記の(1)で用いたパルプを原料とし、これらの振動ミルを用いて非晶化セルロース含有粉体を得た。得られたセルロース含有粉体におけるセルロースの結晶化指数を測定し、そのときの投下散逸エネルギーとの関係をグラフにプロットした。投下散逸エネルギーは、これらの振動ミルにおける運転時の動力から空転動力を差し引いて得られた値である消費電力(W)を単位時間散逸エネルギーとみなし、これに式(I)又は式(II)を適用して算出した。結果を図7に示す。
図6と図7に示す結果の対比から明らかなように、本発明に従い得られた結晶化指数と投下散逸エネルギーとの関係は、実測によって得られた結晶化指数と投下散逸エネルギーとの関係と極めてよく一致していることが判る。
M ロッド状の媒体
S 球形粒子
C 球形粒子の結合体

Claims (9)

  1. セルロース含有原料を、容器駆動媒体ミル装置を用いて処理して得られる粉体におけるセルロースの結晶化指数の予測方法であって、
    前記ミル装置における非球形媒体の運動を、粘弾性力学モデルを用いた離散要素法によりシミュレーションすることで、該ミル装置内で生じるすべての衝突に起因する単位時間散逸エネルギーを算出し、
    所定の条件下に前記ミル装置によって前記セルロース含有原料を処理して得られた粉体におけるセルロースの結晶化指数を予め実測しておき、該結晶化指数と、前記単位時間散逸エネルギー及び前記ミル装置を用いた処理条件から算出される投下散逸エネルギーとの相関を求め、
    前記結晶化指数と前記投下散逸エネルギーとの相関に基づき、所定の投下散逸エネルギーを前記ミル装置に与えて前記セルロース含有原料を処理したときの前記粉体におけるセルロースの結晶化指数を予測する、セルロースの結晶化指数の予測方法。
  2. 前記非球形媒体を、複数の球形粒子を重ね合わせた結合体で構成し、該結合体の運動を離散要素法によってシミュレーションする請求項1に記載の予測方法。
  3. 前記非球形媒体がロッド状であり、該非球形媒体を、複数の球形粒子を直線状に連ねて重ね合わせた結合体で構成し、該結合体の運動を離散要素法によってシミュレーションする請求項2に記載の予測方法。
  4. 前記結合体どうしの衝突、及び前記結合体とミル内壁との衝突における該結合体中の前記球形粒子の平均接触数を予め求めておき、前記投下散逸エネルギーを算出する請求項2又は3に記載の予測方法。
  5. 前記結合体どうしの衝突及び前記結合体とミル内壁との衝突に起因する前記単位時間散逸エネルギーが、前記ミル装置の消費電力と誤差10%以内で一致するように前記平均接触数を求める請求項4に記載の予測方法。
  6. 前記ミル装置を用いた処理をバッチ式で行い、該バッチ式処理の条件である処理時間及び仕込み量と、前記単位時間散逸エネルギーとから、以下の式(I)によって前記投下散逸エネルギーを算出する請求項1に記載の予測方法。
    投下散逸エネルギー=単位時間散逸エネルギー×処理時間/仕込み量 (I)
  7. 前記ミル装置を用いた処理を連続式で行い、該連続式の処理の条件である時間当たりフィード量と、前記単位時間散逸エネルギーとから、以下の式(II)によって前記投下散逸エネルギーを算出する請求項1に記載の予測方法。
    投下散逸エネルギー=単位時間散逸エネルギー/時間当たりフィード量(II)
  8. セルロース含有原料を容器駆動媒体ミル装置を用いて処理し、処理によって得られる粉体におけるセルロースの結晶化指数を目標値まで低減するのに要する投下散逸エネルギーを予測する、投下散逸エネルギーの予測方法であって、
    前記ミル装置における非球形媒体の運動を、粘弾性力学モデルを用いた離散要素法によりシミュレーションすることで、該ミル装置内で生じるすべての衝突に起因する単位時間散逸エネルギーを算出し、
    所定の条件下に前記ミル装置によってセルロース含有原料を処理して得られた粉体におけるセルロースの結晶化指数を予め実測しておき、該結晶化指数と、前記単位時間散逸エネルギー及び前記ミル装置を用いた処理条件から算出される投下散逸エネルギーとの相関を求め、
    前記結晶化指数と前記投下散逸エネルギーとの相関に基づき、前記粉体におけるセルロースの結晶化指数を目標値まで低減するのに要する投下散逸エネルギーを予測する、投下散逸エネルギーの予測方法。
  9. セルロース含有原料を、容器駆動媒体ミル装置を用いて処理し、セルロースの結晶化指数が目標値まで低減した粉体を製造する方法であって、
    請求項8に記載の予測方法を用い、前記粉体における前記セルロースの結晶化指数が前記目標値まで低下するのに要する投下散逸エネルギーを予測し、
    予測された投下散逸エネルギーが発生する処理条件に設定された前記ミル装置を用いてセルロース含有原料を処理する、粉体の製造方法。
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