JP2018058941A - セルロースアセテートおよびセルロースアセテートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】α−セルロース含量が特に低い低品位のパルプを用いるにもかかわらず、色相に優れると共に、成形体の成形性およびその生産効率にも優れたセルロースアセテートを得ることを目的とする。また、抽出などの工程を経ることなく優れた安定製造性および生産効率でセルロースアセテートを得ることができるセルロースアセテートの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く15mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.80cm−1以下の条件を満たすが、そのうち、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.1mol%より高く5.0mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1以下の条件を除き、6%粘度が160mPa・s以下である、セルロースアセテート。
【選択図】なし
【解決手段】キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く15mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.80cm−1以下の条件を満たすが、そのうち、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.1mol%より高く5.0mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1以下の条件を除き、6%粘度が160mPa・s以下である、セルロースアセテート。
【選択図】なし
Description
本発明は、セルロースアセテートおよびセルロースアセテートの製造方法に関する。
従来の標準的な技術では、色相に優れたセルロースアセテートを製造するために、特別に製造された溶解パルプというパルプが原料として用いられていた。この溶解パルプのα−セルロース成分の含量は標準的には98wt%以上であることから極めて高品位である。溶解パルプの原料は木材チップであるが、木材チップの中にはα−セルロース以外のヘミセルロースなどがかなりの量含有されており、この木材チップから溶解パルプを得るためには、パルプの製造工程での木材チップのハンドリング設備、蒸解、洗浄、漂白、乾燥において特別な処理が必要であり、収率を犠牲にしてα−セルロース純度を上げることが必要である。そして、溶解パルプとしてはα−セルロース純度が高いことが必要であるが、α−セルロース含量が90%前後のところで、α−セルロースの含量を1%高めるためには、原木からのパルプ歩留まりが2〜3%低下する。そして、α−セルロース含量が高くなればなるほど歩留まりの低下率は大きくなる。このため、α−セルロース含量が98wt%以上の溶解パルプの製造は環境負荷が極めて高いものである。
そのため、従来からα−セルロース含量が低い低品位パルプを、高品位パルプとすることなく、より高品質なセルロースアセテートを得ることが検討されている。例えば、特許文献1では、α−セルロース含量92〜93%の木材パルプを希酢酸水溶液中で離解しスラリーとした後、脱液と酢酸置換を繰り返す所謂スラリー前処理を行い、次に、従来技術で1次酢酸セルロースを得た後、反応系内の硫酸触媒を完全に中和し、反応混合物を125〜170℃でケン化・熟成して透明性、濾過性そして可紡性の良好な2次酢酸セルロースを得ている。
特許文献2では、溶剤による膨潤処理を施したセルロース原料からセルロースアセテートを調製することによって、α−セルロース含有率の低いビスコース、及びセルロースエーテル用のセルロース原料を用いたにもかかわらず、色相の非常に優れたセルロースアセテートが得られることが開示されている。
引用文献1に記載されるようなα−セルロース成分以外のヘミセルロース成分などの不純物を抽出などにより除去して、色目に優れた(例えば、YI値が低い)セルロースアセテートを得る方法は、低品位パルプを用いることによる環境負荷低減の効果を相殺してしまう。
また、引用文献2に記載されるセルロースアセテートの製造方法は、α−セルロース含量が90%以下のように、α−セルロース含量が低いパルプを原料とした場合には、色相の改善効果が低いという欠点があった。
本発明は、α−セルロース含量が特に低い低品位のパルプを用いるにもかかわらず、色相に優れると共に、成形体の成形性およびその生産効率にも優れたセルロースアセテートを得ることを目的とする。また、抽出などの工程を経ることなく優れた安定製造性および生産効率でセルロースアセテートを得ることができるセルロースアセテートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第一は、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く15mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.80cm−1以下の条件を満たすが、そのうち、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く5.0mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1以下の条件を除き、6%粘度が160mPa・s以下である、セルロースアセテートに関する。
前記セルロースアセテートは、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.2mol%以上であってもよい。
前記セルロースアセテートは、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が5.0mol%以下であってもよい。
前記セルロースアセテートは、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が7.0mol%より高く15mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1未満であってもよい。
前記セルロースアセテートは、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が5.0mol%より高く7.0mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1未満であってもよい。
前記セルロースアセテートは、マグネシウム含量が5ppmより多く40ppm以下であることが好ましい。
本発明の第二は、木材パルプを解砕する工程(1)、前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)、前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)、前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(4)、および前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)を有し、前記加水分解工程(4)において、加水分解反応系内の温度80℃を越え90℃以下を100分以上150分以下継続する、セルロースアセテートの製造方法に関する。
本発明によれば、α−セルロース含量が特に低い低品位のパルプを用いるにもかかわらず、色相に優れると共に、成形体の成形性およびその生産効率にも優れたセルロースアセテートを得ることができる。また、抽出などの工程を経ることなく優れた安定製造性および生産効率でセルロースアセテートを得ることができる。
本開示のセルロースアセテートは、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く15mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.80cm−1以下の条件を満たすが、そのうち、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く5.0mol%以下、かつ、波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1以下の条件を除き、6%粘度が160mPa・s以下である。
本開示のセルロースアセテートは、α−セルロース含量が低く、その分ヘミセルロース成分であるキシロースのモル含量の割合が比較的高いにもかかわらず、ヘミセルロース成分が分解されることにより生じる着色成分が少なく、優れた色相を有するものである。また、成形体とした場合の成形性およびその生産効率にも優れる。
(キシロース)
本開示に係るセルロースアセテートにおけるキシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合は、1.0mol%より高く15mol%以下であるところ、その下限値は、1.2mol%以上、2.0mol%以上、3.0mol%以上、及び4.0mol%以上であってよく、その上限値は、14mol%以下、13mol%以下、10mol%以下、7.0mol%以下、及び5.0mol%以下であってよい。下限値が1.2mol%以上であることにより、パルプの歩留まりに優れる。また、上限値が5.0mol%以下であることにより、特に色相に優れる。
本開示に係るセルロースアセテートにおけるキシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合は、1.0mol%より高く15mol%以下であるところ、その下限値は、1.2mol%以上、2.0mol%以上、3.0mol%以上、及び4.0mol%以上であってよく、その上限値は、14mol%以下、13mol%以下、10mol%以下、7.0mol%以下、及び5.0mol%以下であってよい。下限値が1.2mol%以上であることにより、パルプの歩留まりに優れる。また、上限値が5.0mol%以下であることにより、特に色相に優れる。
本開示のセルロースアセテートの波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1未満の場合、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合は、7.0mol%より高く15mol%以下、または5.0mol%より高く7.0mol%以下であってもよい。十分な成形性および色相を有しセルロースアセテートとしての商品価値を維持できるためである。
本開示に係るセルロースアセテートを構成する糖として、キシロース、マンノースおよびグルコースが存在するところ、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合は、以下の方法により求めることができる。
セルロースサンプルの加水分解過程、水酸化ナトリウムによる中和過程、フィルターによるろ過過程を経た後、HPLC(LC−20Aシステム)を用いて、得られたデータからキシロースのみならずその他の構成糖の割合を算出することができ、キシロースのモル含量の割合を求めることができる。
(吸光度法色相)
本開示に係るセルロースアセテートの波長430nmにおける吸光度法色相は、0.80cm−1以下であるところ、その値はより小さい方が好ましく、下限値は特に限定されないが、例えば、0.1cm−1以上、0.2cm−1以上、及び0.3cm−1以上であってもよく、その上限値は、0.65cm−1以下が好ましく、0.40cm−1以下がより好ましい。
本開示に係るセルロースアセテートの波長430nmにおける吸光度法色相は、0.80cm−1以下であるところ、その値はより小さい方が好ましく、下限値は特に限定されないが、例えば、0.1cm−1以上、0.2cm−1以上、及び0.3cm−1以上であってもよく、その上限値は、0.65cm−1以下が好ましく、0.40cm−1以下がより好ましい。
一方で、本開示に係るセルロースアセテートにおけるキシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が7.0mol%より高く15mol%以下、または5.0mol%より高く7.0mol%以下の場合は、0.60cm−1以上0.80cm−1未満であってもよい。
本開示に係るセルロースアセテートの波長430nmにおける吸光度法色相は、以下の方法により求めることができる。セルロースアセテート濃度既知のDMSO溶液をサンプルとして調製し、波長λ=430nmの吸光度および波長λ=740nmの吸光度をそれぞれ測定して吸光度の差を求め、さらにセルロースアセテート濃度を100%換算して得られた値を波長430nmにおける吸光度法色相とする。下記式のとおりである。
吸光度法色相(cm−1)=吸光度(A−B)/セル厚(cm)/セルロースアセテート濃度(重量%)×100
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV−1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
セルロースアセテート濃度(重量%):絶乾セルロースアセテート重量(g)/セルロースアセテート溶液全体重量(g)×100
絶乾セルロースアセテート重量(g):セルロースアセテートの重量(g)×(1−含水率(%)/100)
含水率(%):赤外線水分計 METTLER TOLEDO HB43
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV−1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
セルロースアセテート濃度(重量%):絶乾セルロースアセテート重量(g)/セルロースアセテート溶液全体重量(g)×100
絶乾セルロースアセテート重量(g):セルロースアセテートの重量(g)×(1−含水率(%)/100)
含水率(%):赤外線水分計 METTLER TOLEDO HB43
(6%粘度)
本開示に係るセルロースアセテートは、6%粘度が160mPa・s以下であるところ、その上限値は、155mPa・s以下、150mPa・s以下であってよい。成形体の成形性及びその生産効率、並びにセルロースそれ自体の安定製造性及び生産効率にも優れるためである。また、その下限値は、特に限定されるものでもないが、例えば、60mPa・s以上、110mPa・s以上であってよい。60mPa・s未満であると機械的強度が低下する。
本開示に係るセルロースアセテートは、6%粘度が160mPa・s以下であるところ、その上限値は、155mPa・s以下、150mPa・s以下であってよい。成形体の成形性及びその生産効率、並びにセルロースそれ自体の安定製造性及び生産効率にも優れるためである。また、その下限値は、特に限定されるものでもないが、例えば、60mPa・s以上、110mPa・s以上であってよい。60mPa・s未満であると機械的強度が低下する。
6%粘度を低くするためには、加水分解反応系内の温度を高くする必要があり、これにより、波長430nmにおける吸光度法色相が悪化する。そして、6%粘度が60mPa・s未満であると、セルロースアセテートの分子量も小さくなりすぎ、成形体にした場合に用途によっては、その機械的強度(特に脆性)が問題となる場合もある。また、6%粘度が160mPa・sを超えると、当該セルロースアセテートの製造工程においてセルロースアセテートを含む混合液を沈殿槽へラインを通じて送ると、そのライン中でセルロースアセテートが閉塞しやすく、セルロースアセテートの生産効率が低下してしまう。さらに、得られるセルロースアセテートを繊維、フィルム等の成形体とする成形工程において、メチレンクロライドやアセトン等の溶剤に溶解した溶液(言い換えれば、ドープ)とするところ、この溶液(ドープ)が、濾材を閉塞したりし易いため、これら成形体の生産効率が低下する場合がある。特に、セルロースアセテートを熱成形により賦形使用とした場合(押出成形、射出成形)では成形性に劣る。
6%粘度は、乾燥試料3.00gを、95%アセトン水溶液39.90gで溶解させた6wt/vol%の溶液をオストワルド粘度計を使用して測定した粘度である。
(カルシウム含量およびマグネシウム含量)
本開示のセルロースアセテートに含まれるカルシウムおよびマグネシウムは、セルロースアセテート製造時に使用される中和剤、安定剤、または洗浄水に由来する部分が多く、例えば、セルロースアセテートフレーク表面への付着、セルロース繊維に含まれるカルボキシル基や製造時に形成された硫酸エステル部位との静電相互作用により存在している。
本開示のセルロースアセテートに含まれるカルシウムおよびマグネシウムは、セルロースアセテート製造時に使用される中和剤、安定剤、または洗浄水に由来する部分が多く、例えば、セルロースアセテートフレーク表面への付着、セルロース繊維に含まれるカルボキシル基や製造時に形成された硫酸エステル部位との静電相互作用により存在している。
本開示に係るセルロースアセテートは、カルシウム含量が60ppm以上100ppm以下であることが好ましく、70ppm以上100ppm以下であることがより好ましく、80ppm以上100ppm以下であることがさらに好ましく、90ppm以上100ppm以下であることが最も好ましい。カルシウム含量が少なすぎるとセルロースアセテートの耐熱性が悪化する傾向があり、多すぎると色相が悪化する傾向があるためである。
本開示に係るセルロースアセテートは、マグネシウム含量が5ppmより多く40ppm以下であることが好ましく、5ppmより多く35ppm以下であることがより好ましく、5ppmより多く30ppm以下であることがさらに好ましく、5ppmより多く25ppm以下であることが最も好ましい。マグネシウム含量が少なすぎるとセルロースアセテートの耐熱性が悪化する傾向があり、多すぎると色相が悪化する傾向があるためである。
セルロースアセテートのカルシウム含量およびマグネシウム含量は、それぞれ以下の方法により測定することができる。
未乾燥試料3.0gをルツボに計量し、電熱器上で炭化させた後、750〜850℃の電気炉で2時間程度灰化させる。約30分放冷した後、0.07%の塩酸溶液25mLを加え、220〜230℃で加熱溶解させる。放冷後、溶解液を200mLまで蒸留水でメスアップし、これを検液として標準液と共に原子吸光光度計を用いて吸光度を測定して、検液のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求め、以下の式で換算して、試料のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求めることができる。なお、試料中の水分は、例えばケット水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて測定することができる。ケット水分計のアルミ受け皿に含水状態の試料約2.0gを乗せ、重量が変化しなくなるまで120℃で加熱することで加熱前後の重量変化から試料中の水分(重量%)が算出できる。
(酢化度)
本開示に係るセルロースアセテートは、酢化度が51%以上62%以下の範囲であることが好ましく、51%以上58%以下の範囲であることがより好ましく、54%以上58%以下の範囲であることがさらに好ましい。酢化度は、保持時間により調整することができる。ここで、保持時間とは、熟成工程の昇温終了から加水分解反応完了までの時間をいう。保持時間が長いと色相は悪化傾向になる。
本開示に係るセルロースアセテートは、酢化度が51%以上62%以下の範囲であることが好ましく、51%以上58%以下の範囲であることがより好ましく、54%以上58%以下の範囲であることがさらに好ましい。酢化度は、保持時間により調整することができる。ここで、保持時間とは、熟成工程の昇温終了から加水分解反応完了までの時間をいう。保持時間が長いと色相は悪化傾向になる。
ここで、酢化度とは、セルロース単位重量当たりの結合酢酸の重量百分率を意味する。酢化度は、ASTM-D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)における酢化度の測定および計算に従う。具体的には、以下のようにして求めることができる。乾燥したセルロースアセテート1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定する。また、上記と同様の方法でブランク試験を行い、下記式に従って酢化度を算出する。
酢化度(%)=[6.5×(B−A)×F]/W
(式中、Aは試料での1N−硫酸の滴定量(ml)、Bはブランク試験での1N−硫酸の滴定量(ml)、Fは1N−硫酸の濃度ファクター、Wは試料の重量を示す)。
酢化度(%)=[6.5×(B−A)×F]/W
(式中、Aは試料での1N−硫酸の滴定量(ml)、Bはブランク試験での1N−硫酸の滴定量(ml)、Fは1N−硫酸の濃度ファクター、Wは試料の重量を示す)。
[セルロースアセテートの製造]
本開示のセルロースアセテートの製造方法について詳述する。木材パルプを解砕する工程(1)、前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)、前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)、前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(4)、および前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)を有し、前記加水分解工程(4)において、加水分解反応系内の温度80℃を超え90℃以下を100分以上150分以下継続するものである。本開示のセルロースアセテートは、上記の製造方法により製造することができる。なお、一般的なセルロースアセテートの製造方法については、「木材化学」(上)(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。
本開示のセルロースアセテートの製造方法について詳述する。木材パルプを解砕する工程(1)、前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)、前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)、前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(4)、および前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)を有し、前記加水分解工程(4)において、加水分解反応系内の温度80℃を超え90℃以下を100分以上150分以下継続するものである。本開示のセルロースアセテートは、上記の製造方法により製造することができる。なお、一般的なセルロースアセテートの製造方法については、「木材化学」(上)(右田ら、共立出版(株)1968年発行、第180頁〜第190頁)を参照できる。
α−セルロース含量の低い低品位パルプは、ヘミセルロース成分であるキシロースを含有し、その一部は高温下で酸化されて、キシラン由来のフルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、5−ホルミル−2−フランカルボン酸(FFA)などになる。そして、これらキシラン由来の成分が、着色成分としてセルロースアセテート自身の色相を悪化させている。本発明では、特に高温下にさらされる加水分解工程において、温度条件等を最適化することにより、色相に優れたセルロースアセテートを得る。
(木材パルプ)
本開示のセルロースアセテートの原料となるセルロース源として、低品位の木材パルプなどヘミセルロース成分であるキシロースが含まれるものを使用する。本明細書において、パルプまたはセルロースは、ヘミセルロースなどのセルロース以外の異成分を含有するものを含む意味で用いる場合がある。
本開示のセルロースアセテートの原料となるセルロース源として、低品位の木材パルプなどヘミセルロース成分であるキシロースが含まれるものを使用する。本明細書において、パルプまたはセルロースは、ヘミセルロースなどのセルロース以外の異成分を含有するものを含む意味で用いる場合がある。
木材パルプとしては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプが挙げられる。例えば、針葉樹パルプとしては、例えば、トウヒ、マツ、ツゲ等から得られる針葉樹パルプが挙げられる。広葉樹パルプとしては、例えば、ユーカリ、アカシア等が挙げられる。これらのパルプは単独で又は二種以上組み合わせてもよく、例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用してもよい。
木材パルプのα−セルロース含有率がより低い場合でも本開示の製造方法により色相に優れたセルロースアセテートを得ることができるが、80重量%以上であることが好ましく、85重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが最も好ましい。α−セルロース含有率が、上記範囲であれば、波長430nmにおける吸光度法色相が0.80cm−1未満のセルロースアセテートが得られ易い。
α−セルロース含有率は、以下のようにして求めることができる。重量既知のパルプを25℃で17.5%と9.45%の水酸化ナトリウム水溶液で連続的に抽出し、その抽出液の可溶部分に対して重クロム酸カリウムで酸化し、酸化に要した重クロム酸カリウムの容量からβ,γ−セルロースの重量を決定する。初期のパルプの重量からβ,γ−セルロース重量を引いた値を、パルプの不溶部分の重量、α−セルロースの重量とする(TAPPI T203)。初期のパルプの重量に対するパルプの不要部分の重量の割合が、α−セルロース含有率(重量%)である。
木材パルプは、シート状のものを用いることができる。この場合、シートの坪量が300g/m2以上850g/m2以下で密度が0.40g/cm3以上0.60g/cm3以下、破裂強度が50KPa以上1000KPa以下のものであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
(解砕)
本開示のセルロースアセテートの製造方法は、木材パルプを解砕する工程を有する。これにより、以降の工程で反応が効率的に均一に進み、反応物の取扱いも容易になる。解砕工程は、特に、木材パルプがシート状の形態で供給されるような場合に有効である。
本開示のセルロースアセテートの製造方法は、木材パルプを解砕する工程を有する。これにより、以降の工程で反応が効率的に均一に進み、反応物の取扱いも容易になる。解砕工程は、特に、木材パルプがシート状の形態で供給されるような場合に有効である。
木材パルプを解砕する工程(1)において、木材パルプを解砕する方法としては、湿式解砕法と乾式解砕法とがある。湿式解砕法は、パルプシートなどの木材パルプに水または水蒸気などを添加して解砕する方法である。湿式解砕法としては、例えば、蒸気による活性化と反応装置中での強い剪断攪拌を行う方法や、希酢酸水溶液中で離解してスラリーとした後、脱液と酢酸置換を繰り返す、いわゆるスラリー前処理を行う方法等が挙げられる。また、乾式解砕法は、パルプシートなどの木材パルプを水または水蒸気などを添加せずに乾燥状態のまま解砕する方法である。乾式解砕法としては、例えば、ピラミッド歯を有するディスクリファイナーで粗解砕したパルプを、線状歯を有するディスクリファイナーで微解砕する方法や、内壁にライナーを取付けた円筒形の外箱と、外箱の中心線を中心として高速回転する複数の円板と、各円板の間に前記中心線に対して放射方向に取り付けられた多数の翼とを備えたターボミルを用い、翼による打撃と、ライナーへの衝突と、高速回転する円板、翼及びライナーの三者の作用で生じる高周波数の圧力振動とからなる三種類の衝撃作用により、外箱の内部に供給される被解砕物を解砕する方法等が挙げられる。
本開示のセルロースアセテートの製造方法においては、これらの解砕方法をいずれも適宜使用することができるが、特に、ディスクリファイナーおよびターボミルを順に用いて二段解砕する方法が、得られるセルロースアセテートのろ過度が向上するため好ましい。一般的技術では、解砕されたかさ高いパルプシートの解砕物は空気搬送される。本開示の製造方法においては、このパルプシートの解砕物の搬送について空気ではなく不活性ガスを用いることでも良い。
(前処理)
前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)において、酢酸は、例えば、木材パルプ100重量部に対して、好ましくは10重量部以上500重量部以下を用いる。この時、酢酸は、99重量%のものを用いることができる。
前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)において、酢酸は、例えば、木材パルプ100重量部に対して、好ましくは10重量部以上500重量部以下を用いる。この時、酢酸は、99重量%のものを用いることができる。
木材パルプと酢酸とを接触させる方法としては、例えば、酢酸もしくは1重量%以上10重量%以下の硫酸を含む酢酸(含硫酢酸)を一段階で添加する方法、または、酢酸を添加して一定時間経過後、含硫酢酸を添加する方法、含硫酢酸を添加して一定時間経過後、酢酸を添加する方法等の酢酸または含硫酢酸を2段階以上に分割して添加する方法等が挙げられる。添加の具体的手段としては、噴霧してかき混ぜる方法が挙げられる。
そして、前処理活性化は、パルプに酢酸及び/または含硫酢酸を添加した後、17℃以上40℃以下の条件下にて0.2時間以上48時間以下の間静置する、または17℃以上40℃以下の条件下にて0.1時間以上24時間以下の間、密閉及び攪拌すること等により行うことができる。
(アセチル化)
前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)において、アセチル化は、具体的には、例えば、酢酸、無水酢酸および硫酸からなる混合物に、前処理活性化したパルプを添加すること、または前処理活性化したパルプに、酢酸と無水酢酸の混合物および硫酸を添加すること等により開始することができる。ここで、酢酸は、99重量%以上のものを用いることができる。硫酸は、98重量%以上の濃度のものを用いることが好ましい。
前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)において、アセチル化は、具体的には、例えば、酢酸、無水酢酸および硫酸からなる混合物に、前処理活性化したパルプを添加すること、または前処理活性化したパルプに、酢酸と無水酢酸の混合物および硫酸を添加すること等により開始することができる。ここで、酢酸は、99重量%以上のものを用いることができる。硫酸は、98重量%以上の濃度のものを用いることが好ましい。
酢酸と無水酢酸との混合物を調整する場合、酢酸と無水酢酸とが含まれていれば、特に限定されないが、酢酸と無水酢酸との割合としては、酢酸300重量部以上600重量部以下に対し、無水酢酸200重量部以上400重量部以下であることが好ましく、酢酸350重量部以上530重量部以下に対し、無水酢酸240重量部以上280重量部以下であることがより好ましい。
パルプ、酢酸と無水酢酸との混合物、および硫酸の割合としては、パルプ100重量部に対して、酢酸と無水酢酸の混合物は500重量部以上1000重量部以下であることが好ましく、硫酸は5重量部以上15重量部以下であることが好ましく、7重量部以上13重量部以下であることがより好ましく、8重量部以上11重量部以下であることがさらに好ましい。
アセチル化反応系内の最高到達温度は、35℃以上55℃以下とすることが好ましく、42℃以上50℃以下とすることがより好ましい。より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
アセチル化反応系内の最高到達温度が35℃以上55℃以下の範囲(中温度領域)とするため、無水酢酸を予冷しておくことが好ましい。また、無水酢酸以外に酢酸および触媒等を木材パルプと接触させる場合は、それら無水酢酸以外の酢酸および触媒等をそれぞれ全て予冷しておくことがより好ましい。無水酢酸、酢酸および触媒等の混合溶液を調製してから予冷してもよい。
予冷温度は、−25℃以上−10℃以下の範囲であることが好ましく、−22℃以上−20℃以下の範囲であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、アセチル化工程(3)において反応系内の最高到達温度を、35℃以上55℃以下の範囲(中温度領域)とすることができ、より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
例えば、溶媒として酢酸、アセチル化剤として無水酢酸、触媒として硫酸を含む酢化混液を、予め−25℃以上−10℃以下に冷却しておき、当該酢化混液に木材パルプを投じて撹拌する。無水酢酸の量はこれと反応するセルロース及び系内に存在する水分量よりかなり過剰に使用する。これにより、冷却された酢化混液は無水酢酸の反応熱により昇温するが最高到達温度を35℃以上55℃以下の範囲とすることができる。撹拌条件下、外部から反応系の内外には一切の熱は加えず行うこと、または併せて、撹拌条件下、反応系を冷媒により冷却して中温度領域に調整することもできる。
アセチル化反応初期は固液不均一系での反応となり解重合アセチル化反応を抑えつつアセチル化反応を進ませ未反応物を減らすため、可能な限り時間を掛けてアセチル系内の最高到達温度が35℃以上55℃以下の範囲(中温度領域)に到達するよう昇温するのがよいが、生産性の観点からは、木材パルプと無水酢酸とを接触させてから45分以下、さらに好ましくは30分以下で最高到達温度が35℃以上55℃以下の範囲(中温度領域)に到達するよう昇温を行うことが好ましい。そして最高到達温度に到達した後、一定時間の間、アセチル化反応を継続する。このアセチル化反応を継続する一定時間は、30分以上50分以下が好ましい。
また、アセチル化反応にかかる時間は、60分以上90分以下であることが望ましい。ここで、アセチル化にかかる時間とは、木材パルプと無水酢酸とを接触させて反応を開始した時点から中和剤投入までの時間をいう。
(加水分解)
前記アセチル化により得られたセルロースアセテートは、ほぼ全ての水酸基がアセチル基に置換されている状態であり、これを所望の置換度に調整するために加水分解を行う必要がある。加水分解する工程(4)においては、前記アセチル化反応により、触媒として硫酸を用いた場合、当該硫酸は、硫酸エステルとしてセルロースに結合しているため、前記アセチル化反応終了後、熱安定性向上のためこの硫酸エステルを加水分解して除去する目的もある。
前記アセチル化により得られたセルロースアセテートは、ほぼ全ての水酸基がアセチル基に置換されている状態であり、これを所望の置換度に調整するために加水分解を行う必要がある。加水分解する工程(4)においては、前記アセチル化反応により、触媒として硫酸を用いた場合、当該硫酸は、硫酸エステルとしてセルロースに結合しているため、前記アセチル化反応終了後、熱安定性向上のためこの硫酸エステルを加水分解して除去する目的もある。
アセチル置換度の調整は、アセチル化反応停止のために水(水蒸気を含む)、希酢酸、または、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム若しくは亜鉛等の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物若しくは酸化物などからなる中和剤を添加することにより行うことができる。そして、水またはこの中和剤に含まれる水は、セルロースアセテートを含む反応混合物中に存在する無水酢酸と反応してカルボン酸を生成させ、アセチル置換度を調整した後のセルロースアセテートを含む反応混合物の水分量がカルボン酸に対し5mol%以上70mol%以下になるように添加することができる。5mol%未満であると、加水分解反応が進まず解重合が進み、低粘度のセルロースアセテートとなり、70mol%を超えると、アセチル化反応終了後のセルロースアセテート(加水分解前のセルロースアセテート)が析出し加水分解反応系から出るため、析出したセルロースアセテートの加水分解反応が進まなくなる。
なお、希酢酸とは、1重量%以上50重量%以下の酢酸水溶液をいう。また、酢酸マグネシウム水溶液を用いる場合は、当該水溶液は5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
また、セルロースアセテートを含む反応混合物における硫酸イオン濃度が高いと効率よく硫酸エステルを除去することができないため、酢酸マグネシウム等の酢酸のアルカリ土類金属塩の水溶液又は酢酸−水混合溶液を添加して不溶性の硫酸塩を形成させることにより、硫酸イオン濃度を低下させることが好ましい。セルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対し、セルロースアセテートを含む反応混合物の硫酸イオンを1重量部以上6重量部以下に調整することが好ましい。なお、例えば、セルロースアセテートを含む反応混合物に酢酸マグネシウムの酢酸−水混合溶液を添加することにより、アセチル化反応の停止とセルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対する硫酸イオンの重量比の低下とを同時に行うこともできる。
加水分解工程(4)においては、反応系内の温度を中温、つまり80℃を越え90℃以下とする。中温において行う加水分解は、中温熟成と称する。中温とするには、水蒸気を用いて系内の温度を上昇させてもよい。例えば、高圧(例えば、ゲージ圧5kg/cm2)の水蒸気を撹拌下に反応系内に吹き込み、一定時間かけて80℃を越え90℃以下の範囲(中温)に到達させる。この酢酸マグネシウム水溶液の添加開始から80℃を越え90℃以下に到達させるまでの昇温にかかる一定時間は、50分以上60分以下が好ましい。また、この昇温中にも酢酸マグネシウム水溶液を添加混合し、系内の硫酸を一部を中和する。そして、100分以上150分以下、好ましくは100分以上130分以下の間、80℃を越え90℃以下(中温)を保った後、酢酸マグネシウム水溶液を添加混合し、系内の硫酸を完全に中和する。これによりセルロースアセテートの加水分解反応を完了させる。
また、高温において行う加水分解は、高温熟成と称し、反応系内の最高到達温度が90℃を超えて200℃以下の範囲である場合をいう。高温とするには、加水分解反応容器(熟成槽)の設定温度を高温側に変更し系内の温度を上昇させる。さらに低温において行う加水分解は、低温熟成と称し、反応系内の最高到達温度が80℃以下である場合をいう。低温とするには、加水分解反応容器(熟成槽)の設定温度を低温側に変更する。
加水分解工程(4)は、反応系内の温度を80℃を越え90℃以下を100分以上150分以下継続して行うことにより、色相に優れたセルロースアセテートが得られ、さらに、得られたセルロースアセテートを繊維、フィルム等の成形体とする成形工程において、メチレンクロライドやアセトン等の溶剤に溶解した溶液(言い換えれば、ドープ)とするところ、この溶液(ドープ)が、濾材を閉塞にくく、これら成形体の生産効率にも優れるため好ましい。
加水分解工程(4)を低温下、つまり80℃以下で行うと、6%粘度が160mPa・sを超えるため、加水分解工程(4)の後、セルロースアセテートを含む混合液を沈殿槽へラインを通じて送ると、そのライン中でセルロースアセテートが閉塞しやすく、セルロースアセテートの生産効率が低下してしまう。さらに、得られるセルロースアセテートを繊維、フィルム等の成形体とする成形工程において、メチレンクロライドやアセトン等の溶剤に溶解した溶液(言い換えれば、ドープ)とするところ、この溶液(ドープ)が、濾材を閉塞したりし易いため、これら成形体の生産効率が低下する場合がある。また、加水分解工程(4)を高温下、つまり90℃を超えて200℃以下で行うと、ヘミセルロースを化学的に微細化できるため6%粘度は160mPa・sを超えないが、色相が悪化する。
(沈殿)
前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)においては、セルロースアセテートを含む混合物と水、希酢酸、又は酢酸マグネシウム水溶液等の沈澱剤とを混合し、生成したセルロースアセテート(沈澱物)を分離して沈殿物を得、水洗により遊離の金属成分や硫酸成分などを除去することにより行うことができる。ここで、セルロースアセテートの沈殿物を得る際に用いる沈澱剤としては、水または希酢酸が好ましい。セルロースアセテートを含む反応混合物中の硫酸塩を溶解し、沈澱物として得られるセルロースアセテート中の硫酸塩を除去しやすいためである。
前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)においては、セルロースアセテートを含む混合物と水、希酢酸、又は酢酸マグネシウム水溶液等の沈澱剤とを混合し、生成したセルロースアセテート(沈澱物)を分離して沈殿物を得、水洗により遊離の金属成分や硫酸成分などを除去することにより行うことができる。ここで、セルロースアセテートの沈殿物を得る際に用いる沈澱剤としては、水または希酢酸が好ましい。セルロースアセテートを含む反応混合物中の硫酸塩を溶解し、沈澱物として得られるセルロースアセテート中の硫酸塩を除去しやすいためである。
特に、前記加水分解化工程(4)の後(完全中和の後)、水洗により遊離の金属成分や硫酸成分などを除去したり、セルロースアセテートの熱安定性を高めるため、水洗の際に安定剤として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加してもよい。
セルロースアセテートを沈殿工程(5)の後、脱水及び乾燥させてもよい。乾燥の方法としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、送風や減圧などの条件下乾燥を行うことができる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥が挙げられる。
[セルロースアセテートの製造装置]
図1に示すような製造装置を用いて、セルロースアセテートを製造することができる。前処理機1、酢化反応器2、熟成槽3および予冷機4を有している。前処理機1に入れるパルプは、解砕機(図示しない)で木材パルプを解砕して得られたフラッフ状のパルプである。フラッフ状のパルプを前処理機1に入れ、撹拌させながらパルプと酢酸を接触させてパルプを前処理活性化する。なお、図1中のMは、モーターを示し、各装置の反応混合物の撹拌に用いる。
図1に示すような製造装置を用いて、セルロースアセテートを製造することができる。前処理機1、酢化反応器2、熟成槽3および予冷機4を有している。前処理機1に入れるパルプは、解砕機(図示しない)で木材パルプを解砕して得られたフラッフ状のパルプである。フラッフ状のパルプを前処理機1に入れ、撹拌させながらパルプと酢酸を接触させてパルプを前処理活性化する。なお、図1中のMは、モーターを示し、各装置の反応混合物の撹拌に用いる。
また、予冷機4に無水酢酸−酢酸溶液、硫酸、及び酢酸を投入して溶液とし、予め−25℃以上−10℃以下に冷やしておく。予冷機4の溶液を酢化反応器2に仕込んだ後、酢酸を含浸させたパルプ(セルロース)をラインL1を通じて酢化反応器2に撹拌しながら仕込み、アセチル化反応を行う。酢化反応器2としてはセルロースアセテートを製造するときに通常使用される公知の反応器が使用出来るが、好ましくは混和型反応器である。
その後、酢酸マグネシウム水溶液を酢化反応器2に添加混合し、系内の硫酸を一部中和する。酢化反応器2中の反応混合物を熟成槽3に移す。そして、高圧(例えば、ゲージ圧5kg/cm2)の水蒸気を撹拌下に熟成槽3内に吹き込み、一定時間かけて80℃を越え90℃以下の範囲(中温)に到達させる。
その後、100分以上150分以下、好ましくは100分以上130分以下の間、80℃を越え90℃以下(中温)を保った後、酢酸マグネシウム水溶液を添加混合し、系内の硫酸を完全に中和する。これによりセルロースアセテートの加水分解反応を完了させる。
さらに、熟成槽3内の反応混合物を激しい撹拌の下に、水、希酢酸、又は酢酸マグネシウム水溶液等の沈澱剤を加えて、フレークス状セルロースアセテートとする。生成したセルロースアセテート(沈澱物)を分離して沈殿物を得る。水洗により遊離の金属成分や硫酸成分などを除去したり、セルロースアセテートの熱安定性を高めるため、水洗の際に安定剤として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加してもよい。最後に、脱水、乾燥し、セルロースアセテートを得ることができる。
本開示のセルロースアセテート、及びセルロースアセテートの製造方法により製造されたセルロースアセテートは、例えば、衣料用繊維、タバコ・フィルター・チップ、プラスチックス、フィルム、塗料等、広範囲に使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。なお、以下「部」とは特に断りのない限り、「重量部」を意味する。
後述する実施例および比較例に記載の各物性は以下の方法で評価した。
<α−セルロース含有率>
重量既知のパルプを25℃で17.5%と9.45%の水酸化ナトリウム水溶液で連続的に抽出し、その抽出液の可溶部分に対して重クロム酸カリウムで酸化し、酸化に要した重クロム酸カリウムの容量からβ,γ−セルロースの重量を決定した。初期のパルプの重量からβ,γ−セルロース重量を引いた値を、パルプの不溶部分の重量、つまりα−セルロースの重量とした(TAPPI T203)。初期のパルプの重量に対する、パルプの不溶部分の重量の割合が、α−セルロース含有率(重量%)である。
重量既知のパルプを25℃で17.5%と9.45%の水酸化ナトリウム水溶液で連続的に抽出し、その抽出液の可溶部分に対して重クロム酸カリウムで酸化し、酸化に要した重クロム酸カリウムの容量からβ,γ−セルロースの重量を決定した。初期のパルプの重量からβ,γ−セルロース重量を引いた値を、パルプの不溶部分の重量、つまりα−セルロースの重量とした(TAPPI T203)。初期のパルプの重量に対する、パルプの不溶部分の重量の割合が、α−セルロース含有率(重量%)である。
<吸光度法色相>
(1)セルロースアセテートの含水率測定
赤外線水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて、セルロースアセテートの含水率を測定し、記録用紙に記録した。
(1)セルロースアセテートの含水率測定
赤外線水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて、セルロースアセテートの含水率を測定し、記録用紙に記録した。
(2)吸光度の測定
まずサンプル調製を行った。1)三角フラスコにDMSO95.00gを計量した。2)三角フラスコにスターラー回転子を入れ、セロファン、シリコン栓をして攪拌した。3)セルロースアセテートサンプル5.00gを薬包紙等に計量し攪拌している三角フラスコ内に添加した。4)セロファン、シリコン栓をしてスターラーで1hr攪拌した。5)回転振盪機(高速)で2hr振盪した。6)回転振盪機から取り外した後30分間静置し脱泡し、サンプルを調製した。
まずサンプル調製を行った。1)三角フラスコにDMSO95.00gを計量した。2)三角フラスコにスターラー回転子を入れ、セロファン、シリコン栓をして攪拌した。3)セルロースアセテートサンプル5.00gを薬包紙等に計量し攪拌している三角フラスコ内に添加した。4)セロファン、シリコン栓をしてスターラーで1hr攪拌した。5)回転振盪機(高速)で2hr振盪した。6)回転振盪機から取り外した後30分間静置し脱泡し、サンプルを調製した。
次に、吸光度の測定を行った。サンプル調製後直ちに、つまり回転振盪機から取り外した後30分間静置し脱泡した後直ちに、島津製作所社製UV−1700にて波長λ=430nmおよび740nmの吸光度を測定した。具体的には、1)測定する30分以上前に装置の電源を入れ、装置が安定化したことを確認した。2)10cmガラスセルにレファレンス、ブランク液としてDMSOを入れベースライン補正を行った。3)三角フラスコ内のサンプルを気泡が発生しないように10cmガラスセルに移した。4)手前の測定側セルをサンプルが注入されたガラスセルに入れ替えた。5)スタートボタンを押して測定を開始した。6)表示された測定結果を記録用紙に記録した。
(3)吸光度法色相
以下の計算式で得られた数値をセルロースアセテートのその溶媒における「吸光度法色相」値とした。
吸光度法色相(cm−1)=吸光度(A−B)/セル厚(cm)/セルロースアセテート濃度(重量%)×100
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV−1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
セルロースアセテート濃度(重量%):絶乾セルロースアセテート重量(g)/セルロースアセテート溶液全体重量(g)×100
絶乾セルロースアセテート重量(g):セルロースアセテートの重量(g)×(1−含水率(%)/100)
含水率(%):上記赤外線水分計で測定した値
以下の計算式で得られた数値をセルロースアセテートのその溶媒における「吸光度法色相」値とした。
吸光度法色相(cm−1)=吸光度(A−B)/セル厚(cm)/セルロースアセテート濃度(重量%)×100
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV−1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
セルロースアセテート濃度(重量%):絶乾セルロースアセテート重量(g)/セルロースアセテート溶液全体重量(g)×100
絶乾セルロースアセテート重量(g):セルロースアセテートの重量(g)×(1−含水率(%)/100)
含水率(%):上記赤外線水分計で測定した値
<キシロースのモル含量>
セルロースサンプルの加水分解過程、水酸化ナトリウムによる中和過程、フィルターによるろ過過程を経た後、HPLC(LC−20Aシステム)を用いて、得られたデータからキシロースのみならずその他の構成糖の割合を算出し、5炭糖と6炭糖の合計を基準として、キシロースのモル含量(mol%)を求めた。これをキシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合(mol%)とした。
セルロースサンプルの加水分解過程、水酸化ナトリウムによる中和過程、フィルターによるろ過過程を経た後、HPLC(LC−20Aシステム)を用いて、得られたデータからキシロースのみならずその他の構成糖の割合を算出し、5炭糖と6炭糖の合計を基準として、キシロースのモル含量(mol%)を求めた。これをキシロース、マンノース及びグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合(mol%)とした。
HPLC測定条件は、以下のとおりである。
カラム:TSK−gel Sugar AXG 4.6mmI.D.×15cm(東ソー株式会社)
カラム温度:70℃
移動相:0.5mol/L ホウ酸カリウム緩衝液、PH8.7
移動相流速:0.4mL/min
ポストカラム標識:反応試薬:1w/v%アルギニン・3w/v%ホウ酸
反応試薬流速:0.5mL/min
反応温度:150℃
検出波長:Ex.320nm Em.430nm
カラム:TSK−gel Sugar AXG 4.6mmI.D.×15cm(東ソー株式会社)
カラム温度:70℃
移動相:0.5mol/L ホウ酸カリウム緩衝液、PH8.7
移動相流速:0.4mL/min
ポストカラム標識:反応試薬:1w/v%アルギニン・3w/v%ホウ酸
反応試薬流速:0.5mL/min
反応温度:150℃
検出波長:Ex.320nm Em.430nm
<カルシウム含量およびマグネシウム含量>
未乾燥試料3.0gをルツボに計量し、電熱器上で炭化させた後、750℃以上850℃の電気炉で2時間程度灰化させた。約30分放冷した後、0.07%の塩酸溶液25mLを加え、220℃以上230℃以下で加熱溶解させた。放冷後、溶解液を200mLまで蒸留水でメスアップし、これを検液として標準液と共に原子吸光光度計を用いて吸光度を測定して、検液のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求め、以下の式で換算して、試料のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求めた。なお、試料中の水分は、例えばケット水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて測定することができる。ケット水分計のアルミ受け皿に含水状態の試料約2.0gを乗せ、重量が変化しなくなるまで120℃で加熱することで加熱前後の重量変化から試料中の水分(重量%)が算出できる。
未乾燥試料3.0gをルツボに計量し、電熱器上で炭化させた後、750℃以上850℃の電気炉で2時間程度灰化させた。約30分放冷した後、0.07%の塩酸溶液25mLを加え、220℃以上230℃以下で加熱溶解させた。放冷後、溶解液を200mLまで蒸留水でメスアップし、これを検液として標準液と共に原子吸光光度計を用いて吸光度を測定して、検液のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求め、以下の式で換算して、試料のカルシウム(Ca)含量またはマグネシウム(Mg)含量を求めた。なお、試料中の水分は、例えばケット水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて測定することができる。ケット水分計のアルミ受け皿に含水状態の試料約2.0gを乗せ、重量が変化しなくなるまで120℃で加熱することで加熱前後の重量変化から試料中の水分(重量%)が算出できる。
<6%粘度>
三角フラスコに乾燥試料3.00g、95%アセトン水溶液39.90gを採取し、密栓して約1時間攪拌した。その後、回転振盪機で約1.5時間振盪して完溶させた。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約30分間整温した。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度(mPa・s)を算出した。
6%粘度(mPa・s)=流下時間(s)×粘度計係数
三角フラスコに乾燥試料3.00g、95%アセトン水溶液39.90gを採取し、密栓して約1時間攪拌した。その後、回転振盪機で約1.5時間振盪して完溶させた。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約30分間整温した。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度(mPa・s)を算出した。
6%粘度(mPa・s)=流下時間(s)×粘度計係数
ここで、粘度計係数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求める。
粘度計係数={標準液絶対粘度(mPa・s)×溶液の密度(0.827g/cm3)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数(s)}
粘度計係数={標準液絶対粘度(mPa・s)×溶液の密度(0.827g/cm3)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数(s)}
<実施例1〜5>
図1に示す反応装置を用いて、表1に記載の各原料パルプを用いてセルロースアセテートを製造した。まず、表1に記載の原料パルプを解砕機(図示しない)でフラッフ状に解砕した。フラッフ状のパルプ100重量部を前処理機1に入れ、29重量部の酢酸を添加して35℃下60分の間前処理活性化した。また、予冷機4に45重量%無水酢酸−酢酸溶液503重量部、98重量%硫酸13質量部、99重量%酢酸29重量部を投入し、予め−17℃に冷やしておいた。予冷機4の溶液を酢化反応器2に仕込んだ後、この酢酸を含浸させたパルプを、酢化反応器2に撹拌しながら仕込んだ。さらに前処理機1と酢化反応器2とを結ぶラインL1を通じ、酢化反応器2に45重量%無水酢酸−酢酸溶液18重量部を仕込み、アセチル化反応を開始した。アセチル化反応初期は、原料パルプに含まれる水分と無水酢酸の加水分解が急激に進行した。その後、アセチル化反応熱により、約45分で約48℃になるように調整した。その後、約30分反応を行った。反応終了後、45重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を酢化反応器2に添加混合し、系内の硫酸を一部中和すると共に無水酢酸を加水分解した。その後、酢化反応器2中の反応混合物を熟成槽3に移した。熟成工程は85℃の温度下で110分行った。熟成工程中に10重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を熟成槽3に添加混合し、系内の硫酸を一部中和した。更に系内濃度を調整するため、17重量部の水を熟成槽3に加えた。熟成工程終了後、16重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加混合し、系内の硫酸を完全に中和した。最後に、系内濃度を調整するため、熟成槽3に58重量部の水を加えた。反応混合物は激しい撹拌の下に、希酢酸水溶液を加えて、フレークス状セルロースアセテートとした。その後、十分水洗して取り出し、脱水及び熱風乾燥により乾燥した。得られたセルロースアセテートおよび各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
図1に示す反応装置を用いて、表1に記載の各原料パルプを用いてセルロースアセテートを製造した。まず、表1に記載の原料パルプを解砕機(図示しない)でフラッフ状に解砕した。フラッフ状のパルプ100重量部を前処理機1に入れ、29重量部の酢酸を添加して35℃下60分の間前処理活性化した。また、予冷機4に45重量%無水酢酸−酢酸溶液503重量部、98重量%硫酸13質量部、99重量%酢酸29重量部を投入し、予め−17℃に冷やしておいた。予冷機4の溶液を酢化反応器2に仕込んだ後、この酢酸を含浸させたパルプを、酢化反応器2に撹拌しながら仕込んだ。さらに前処理機1と酢化反応器2とを結ぶラインL1を通じ、酢化反応器2に45重量%無水酢酸−酢酸溶液18重量部を仕込み、アセチル化反応を開始した。アセチル化反応初期は、原料パルプに含まれる水分と無水酢酸の加水分解が急激に進行した。その後、アセチル化反応熱により、約45分で約48℃になるように調整した。その後、約30分反応を行った。反応終了後、45重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を酢化反応器2に添加混合し、系内の硫酸を一部中和すると共に無水酢酸を加水分解した。その後、酢化反応器2中の反応混合物を熟成槽3に移した。熟成工程は85℃の温度下で110分行った。熟成工程中に10重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を熟成槽3に添加混合し、系内の硫酸を一部中和した。更に系内濃度を調整するため、17重量部の水を熟成槽3に加えた。熟成工程終了後、16重量部の24重量%酢酸マグネシウム水溶液を添加混合し、系内の硫酸を完全に中和した。最後に、系内濃度を調整するため、熟成槽3に58重量部の水を加えた。反応混合物は激しい撹拌の下に、希酢酸水溶液を加えて、フレークス状セルロースアセテートとした。その後、十分水洗して取り出し、脱水及び熱風乾燥により乾燥した。得られたセルロースアセテートおよび各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
<比較例1〜5>
図1に示す反応装置を用いて、表1に記載の各原料を用いてセルロースアセテートを製造した。熟成工程を100℃以上105℃以下の温度下で110分行った以外は、各実施例と同様にしてセルロースアセテートを調製した。得られたセルロースアセテートおよび各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
図1に示す反応装置を用いて、表1に記載の各原料を用いてセルロースアセテートを製造した。熟成工程を100℃以上105℃以下の温度下で110分行った以外は、各実施例と同様にしてセルロースアセテートを調製した。得られたセルロースアセテートおよび各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
<比較例6〜10>
図1に示す反応装置を用いて、表1に記載の各原料を用いてセルロースアセテートを製造した。熟成工程を60℃以上65℃以下の温度下で110分行った以外は、各実施例と同様にしてセルロースアセテートを調製した。得られたセルロースアセテートおよび各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
図1に示す反応装置を用いて、表1に記載の各原料を用いてセルロースアセテートを製造した。熟成工程を60℃以上65℃以下の温度下で110分行った以外は、各実施例と同様にしてセルロースアセテートを調製した。得られたセルロースアセテートおよび各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
表1に示すように、加水分解工程において最高到達温度を100℃とした比較例1〜5は、波長430nmにおける吸光度法色相がいずれも0.8cm−1を超えており色相に劣る。また、加水分解工程において最高到達温度を60℃とした比較例6〜10は、波長430nmにおける吸光度法色相はいずれも0.8cm−1であり色相に優れるものの、6%粘度が160mPa・sを超えており、得られるセルロースアセテートの成形工程において、濾材を閉塞しやすく成形体の生産効率に劣る。一方、加水分解工程において最高到達温度を85℃とした実施例1〜5は、波長430nmにおける吸光度法色相はいずれも0.8cm−1であって、6%粘度も160mPa・s以下であるため、色相に優れると共に、成形体の成形性およびその生産効率にも優れるセルロースアセテートを得ることができた。
Claims (7)
- キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く15mol%以下、かつ、
波長430nmにおける吸光度法色相が0.80cm−1以下の条件を満たすが、
そのうち、キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.0mol%より高く5.0mol%以下、かつ、
波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1以下の条件を除き、
6%粘度が160mPa・s以下である、セルロースアセテート。 - キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が1.2mol%以上である、請求項1に記載のセルロースアセテート。
- キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が5.0mol%以下である、請求項1または2に記載のセルロースアセテート。
- キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が7.0mol%より高く15mol%以下、かつ、
波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1未満である、請求項1に記載のセルロースアセテート。 - キシロース、マンノースおよびグルコースのモル含量の和におけるキシロースのモル含量の割合が5.0mol%より高く7.0mol%以下、かつ、
波長430nmにおける吸光度法色相が0.60cm−1以上0.80cm−1未満である、請求項1に記載のセルロースアセテート。 - マグネシウム含量が5ppmより多く40ppm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロースアセテート。
- 木材パルプを解砕する工程(1)、
前記解砕した木材パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(2)、
前記前処理をした後、前記木材パルプを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(3)、
前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(4)、
および前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(5)を有し、
前記加水分解工程(4)において、加水分解反応系内の温度80℃を越え90℃以下を100分以上150分以下継続する、セルロースアセテートの製造方法。
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