JP7093256B2 - セルロースアセテートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロースアセテート及びセルロースアセテートの製造方法に関する。
セルロースアセテートは、セルロース誘導体であるセルロースの有機酸エステルの一つであって、その用途は、衣料品繊維、タバコ用のフィルターまたはチップ、プラスチックス、フィルム、塗料、医薬品、食料、化粧品、及び建築用途など多岐にわたり、セルロース誘導体の中でも生産量が多く、工業的に重要なものである。
代表的なセルロースアセテートの工業的製法としては、無水酢酸を酢化剤、酢酸を希釈剤、硫酸を触媒とするいわゆる酢酸法が挙げられる。酢酸法の基本的工程は、(1)α-セルロース含有率の比較的高いパルプ原料(溶解パルプ)を、離解、解砕、または離解及び解砕後、酢酸を散布混合する前処理工程と、(2)無水酢酸、酢酸及び酢化触媒(例えば硫酸)よりなる混酸で、(1)の前処理パルプを反応させる酢化工程と、(3)セルロースアセテートを加水分解して所望の酢化度のセルロースアセテートとする熟成工程と、(4)加水分解反応の終了したセルロースアセテートとを反応溶液から沈殿分離、精製、安定化、及び乾燥する後処理工程より成る(特許文献1、非特許文献1)。
以上のような方法で製造されるセルロースアセテートは、一般に若干の黄色を帯びており、要求される他の諸性質を満足していても外観に難があり、この点で著しい商品価値の低下を招いている。この着色は、セルロース原料であるパルプ、特には木材パルプに含有されるヘミセルロース成分から生じる黄色性の主要因であると指摘される(非特許文献2、3)。
例えば、木材パルプを原料とするセルロースアセテートの製造工程において、有機溶媒を添加することでグルコマンナンのアセチル化物を有機溶媒中に抽出させる方法により、透明性に優れたセルロースアセテートを取得できること(特許文献2)、また、熟成後の二酢酸セルロースを、当該二酢酸セルロースを溶解し得る溶媒に一旦溶解した後、これを回収する方法により、透明性に優れた二酢酸セルロースを取得できること(特許文献3)が開示されている。
特開昭56-059801号公報 特開平06-157601号公報 特開平06-157602号公報
Macromol. Symp. 2004, 208, 49-60 J. D. Wilson, R. S. Tabke, Tappi, 57, 77 (1974) F. L. Wells, W. C. Shattner, A. Walker, Tappi, 46, 581 (1963)
しかしながら、上記のような従来の製造方法により得られたセルロースアセテートは、着色の原因となる物質が十分に低減されたものではなかった。
本発明者らが検討したところ、上記の従来着目されたヘミセルロース成分すなわちグルコマンナンのアセチル化物以外にも、セルロースに含まれる物質を出発原料として生成する着色物質が存在することが判明した。すなわち、原材料中に含まれるフルフラール(furfural)を出発原料とする着色物質である。フルフラールは芳香族アルデヒドの一種で示性式は(CO)CHO、IUPAC命名法では2-フランカルボキシアルデヒド(2-furancarboxaldehyde)である。
多くのセルロースは、ヘミセルロース成分を含んでいるが、希硫酸と共に加熱すると、ヘミセルロース成分が加水分解し、主にキシロースなどの糖類に変わる。同じ条件下で、さらにキシロースなどのC5糖類は脱水して、水分子3つを出してフルフラールに変わる。フルフラールは、アルコール及びエーテルなどのほとんどの有機溶剤に対して易溶である。しかしながら、フルフラールは、セルロースのアセチル化の過程で重合され、アセチル化の過程で一般的に溶媒として用いられる酢酸を含む、ほとんどの有機溶媒に不溶性或いは難溶性となることから、生成物であるセルロースアセテートに残留して、その色味を悪くすることを、本発明者らは見出し本発明に想到した。
特には、αセルロース成分が低いパルプ、言い換えれば、溶解パルプではないパルプを原料として用いた場合には、ヘミセルロース成分が多く、そのアセチル化工程でフルフラールの重合成分が多くなり、その結果、着色が著しくなることを見出した。
本発明は、着色の原因となる物質が十分に少なく、色相に優れたセルロースアセテートを提供することを目的とする。
本発明の第一は、下記一般式(a)で表される化合物の含有量が0ppb以上100ppb以下であり、アセチル総置換度が2.3以上2.6以下である、セルロースアセテートに関する。
Figure 0007093256000001
本発明の第二は、パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(1)、前記前処理をした後、前記パルプに含まれるセルロースを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(2)、前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(3)、及び前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(4)を有し、前記加水分解工程(3)までにジアセトアミドを添加する、セルロースアセテートの製造方法に関する。
前記セルロースアセテートの製造方法では、前記アセチル化工程(2)において、前記無水酢酸にジアセトアミドを添加してもよい。
前記セルロースアセテートの製造方法では、前記無水酢酸の重量に対して50ppm以上200ppm以下のジアセトアミドを添加してもよい。
前記セルロースアセテートの製造方法では、前記前処理工程(1)において、前記酢酸にジアセトアミドを添加してもよい。
前記セルロースアセテートの製造方法では、前記酢酸の重量に対して350ppm以上1500ppm以下のジアセトアミドを添加してもよい。
前記セルロースアセテートの製造方法では、前記アセチル化工程(2)において、アセチル化反応開始時にアセチル化反応系内の真空度を9.3kPa以下としてもよい。
前記セルロースアセテートの製造方法では、前記加水分解工程(3)において、反応系内の最高到達温度を100℃以上200℃以下としてもよい。
本発明によれば、着色の原因となる物質が十分に少なく、色相に優れたセルロースアセテートを提供することができる。
以下、好ましい実施の形態の一例を具体的に説明する。
[セルロースアセテート]
本開示のセルロースアセテートは、下記一般式(a)で表される化合物の含有量が0ppb以上100ppb以下であり、アセチル総置換度が2.3以上2.6以下である。
Figure 0007093256000002
上記一般式(a)で表される化合物において、「n=2-8」は、nが2以上8以下のうち何れかの整数であることを示す。
本開示のセルロースアセテートは、上記一般式(a)で表される化合物の含有量が0ppb以上100ppb以下であるところ、その含有量は、0ppb以上80ppb以下が好ましく、0ppb以上50ppb以下がより好ましく、0ppb以上30ppb以下がさらに好ましい。上記一般式(a)で表される化合物は、セルロースアセテートの製造工程において生じるフルフラールの重合体であって、セルロースアセテートの着色の直接の原因となる物質、特に吸光度法色相の値を高くする原因となる物質である。そのため、その含有量はより少ない方が好ましく、0ppbが最も好ましい。
本開示のセルロースアセテートにおける上記一般式(a)で表される化合物の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって定量することができる。HPLCによる測定条件は、例えば次のとおりである。
分析装置:Corona CAD(Thermo社製)
カラム:ULTRON AF-HILIC-CD(4.6φ×100mm,5μm)(信和化工株式会社製)
カラム温度:30℃
溶離液:A液:10mM 酢酸アンモニウム(pH6.8)、B液:アセトニトリル(HPLC用)
グラジエント:A液/B液=10/90(25min)→A液/B液=50/50(0.1min)→A液/B液=10/90(29.9min) 合計55min
流量:0.4mL/min
検出:CADPDA(Thermo社製)
A:シグナル220nm、バンド幅10nm、リファレンスOFF、スリット1nm
B:シグナル285nm、バンド幅10nm、リファレンスOFF、スリット1nm
C:シグナル380nm、バンド幅10nm、リファレンスOFF、スリット1nm
D:シグナル430nm、バンド幅10nm、リファレンスOFF、スリット1nm
スペクトル保存全てシグナル190~600nm
注入量:15μL
(アセチル総置換度)
本開示のセルロースアセテートのアセチル総置換度は、2.3以上2.6以下であるところ、2.4以上2.6以下であってよく、2.4以上2.5以下であってよい。アセチル総置換度をより低くしようとすれば、加水分解を行って、脱アセチル化を進行する必要があるが、脱アセチル化の進行に伴い、上記一般式(a)で表される化合物も発生しやすくなる。しかしながら、本開示のセルロースアセテートは、アセチル総置換度が2.3以上2.6以下と低いにもかかわらず、上記一般式(a)で表される化合物の含有量が十分に低く、優れた色相を有する。
アセチル総置換度は、セルロースアセテートのグルコース環の2,3,6位の各アセチル平均置換度の和である。
セルロースアセテートのアセチル総置換度は、セルロースアセテートを置換度に応じた適切な溶媒に溶解し、セルロースアセテートの置換度を求める公知の滴定法により測定できる。アセチル総置換度は、手塚(Tezuka, Carbonydr. Res. 273, 83(1995))の方法に従い、セルロースアセテートの水酸基を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、重クロロホルムに溶解し、NMR(13C-NMRまたは1H-NMR)により測定することができる。
さらに、アセチル総置換度は、ASTM:D-817-91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定法に準じて求めた酢化度を次式で換算することにより求められる。これは、最も一般的なセルロースアセテートのアセチル総置換度の求め方である。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052-42.037×AV×0.01)
DS:アセチル総置換度
AV:酢化度(%)
まず、乾燥したセルロースアセテート(試料)500mgを精秤し、超純水とアセトンとの混合溶液(容量比4:1)50mlに溶解した後、0.2N-水酸化ナトリウム水溶液50mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、0.2N-塩酸50mlを添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2N-水酸化ナトリウム水溶液(0.2N-水酸化ナトリウム規定液)で、脱離した酢酸量を滴定する。また、同様の方法によりブランク試験(試料を用いない試験)を行う。そして、下記式にしたがってAV(酢化度)(%)を算出する。
AV(%)=(A-B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N-水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N-水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N-水酸化ナトリウム規定液のファクター
(吸光度法色相)
本開示のセルロースアセテートの波長430nmにおける吸光度法色相の値は、0.65cm-1以下が好ましく、0.50cm-1以下がより好ましく、0.45cm-1以下がさらに好ましい。波長430nmにおける吸光度法色相の値は、より小さい方が色相に優れるため好ましく、下限は特に限定されない。
後述するセルロースアセテートの製造方法によれば、上記一般式(a)で表される化合物を十分に低減できるため、優れた吸光度法色相を有するセルロースアセテートを得ることができる。
セルロースアセテートの波長430nmにおける吸光度法色相は、以下の方法により求めることができる。セルロースアセテート濃度既知のDMSO溶液をサンプルとして調製し、波長λ=430nmの吸光度及び波長λ=740nmの吸光度をそれぞれ測定してそれらの吸光度の差を求め、さらにセルロースアセテート濃度を100%換算して得られた値を波長430nmにおける吸光度法色相とする。下記式のとおりである。
吸光度法色相(cm-1)=吸光度(A-B)/セル厚(cm)/セルロースアセテート濃度(重量%)×100
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV-1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
セルロースアセテート濃度(重量%):絶乾セルロースアセテート重量(g)/セルロースアセテート溶液全体重量(g)×100
絶乾セルロースアセテート重量(g):セルロースアセテートの重量(g)×(1-含水率(%)/100)
含水率(%):赤外線水分計 METTLER TOLEDO HB43
(6%粘度)
本開示のセルロースアセテートは、6%粘度が60mPa・s以上が好ましく、80mPa・s以上がより好ましく、90mPa・s以上がさらに好ましく、100mPa・s以上が最も好ましい。また、160mPa・s以下、130mPa・s以下、110mPa・s以下であってよい。
6%粘度が60mPa・s未満であると、セルロースアセテートの分子量も小さくなりすぎ、成形体にした場合にその機械的強度(特に脆性)に劣る傾向がある。また、6%粘度が160mPa・sを超えると、セルロースアセテートの製造工程においてセルロースアセテートを含む混合液を沈殿槽へラインを通じて送ると、そのライン中でセルロースアセテートが閉塞しやすく、セルロースアセテートの生産効率が低下してしまう。さらに、本開示のセルロースアセテートを繊維、フィルム等の成形体とする場合、その成形工程において、メチレンクロライドやアセトン等の溶剤に溶解した溶液(言い換えれば、ドープ)とするところ、この溶液(ドープ)が、濾材を閉塞したりし易いため、これら成形体の生産効率が低下する場合がある。
6%粘度は、乾燥試料3.00gを、95%アセトン水溶液39.90gで溶解させた6wt/vol%の溶液をオストワルド粘度計を使用して測定した粘度である。
(ろ過度)
本開示のセルロースアセテートのろ過度KWとしては、400ml-1以下が好ましく、200ml-1以下がより好ましく、100ml-1以下がさらに好ましく、95ml-1以下が最も好ましい。
ろ過度は、以下の方法により測定することができる。95%アセトン水溶液に、20重量%濃度となるように溶解したセルロースアセテート溶液を30℃、一定圧力(2kgf/cm)下で、所定のろ布金巾(直径15mm、ろ過面積1.77cm)に通し、ろ過する。この時、ろ過開始後20分までのろ過量をP(ml)、20分より60分までのろ過量をP(ml)として測定し、下記式によりろ過度KW(ml-1)を算出する。
KW=〔(2-P/P)/(P+P)〕×10
ここで、ろ過度KWは、上記セルロースアセテート溶液中の不溶解成分量の多少を示していることから、ろ過性の指標となる。上記式に従えば、KW値が小さい程、溶液の不溶解成分量が少なく、セルロースアセテートのろ過性が良好であることを示す。
(糖鎖成分の構成比)
本開示のセルロースアセテートの糖鎖成分の構成比としては、マンノース単位(Man)、キシロース単位(Xyl)、及びグルコース単位(Glc)の3成分の合計を100として、マンノース単位(Man)及びキシロース単位(Xyl)の合計含量(モル%)は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。また、原料となるパルプ製造における環境負荷、ならびに製造コストの観点からは、マンノース単位(Man)及びキシロース単位(Xyl)の合計含量(モル%)は、1.0以上であってよい。
糖鎖成分の構成比は、クロマトグラフィにより測定することができる。
本開示のセルロースアセテートは、後述のセルロースアセテートの製造方法により製造することができる。
[セルロースアセテートの製造方法]
本開示のセルロースアセテートの製造方法は、パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(1)、前記前処理をした後、前記パルプに含まれるセルロースを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(2)、前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(3)、及び前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(4)を有し、前記加水分解工程(3)までにジアセトアミドを添加するものである。ジアセトアミドは、加水分解工程(3)までの何れかの工程において添加されていればよい。
(パルプ)
本開示のセルロースアセテートの原料となるセルロース源として、パルプを用いることができる。パルプとしては、例えば、木材パルプ、及びリンターパルプが挙げられる。特には、木材パルプを用いることができる。
木材パルプとしては、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプが挙げられる。針葉樹パルプとしては、例えば、トウヒ、マツ、及びツゲ等から得られる針葉樹パルプが挙げられる。広葉樹パルプとしては、例えば、ユーカリ、及びアカシア等が挙げられる。パルプは単独で又は二種以上組み合わせてもよく、例えば、針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用してもよい。
原料となるパルプのα-セルロース含有率が低い場合でも本開示のセルロースアセテートの製造方法により、優れた吸光度法色相を有するセルロースアセテートを得ることができるが、本開示のセルロースアセテートの製造方法において、原料となるパルプのα-セルロース含有率は、85重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。α-セルロース含有率は、98重量%以下、96重量%以下が好ましく、95重量%以下が特に好ましい。α-セルロース含有率としては、90重量%以上で95重量%以下が特に好ましい。
α-セルロース含有率が98重量%を超えるパルプは、セルロースに由来するフルフラール含有量がもともと少なく、アセチル化工程でのパルプにおけるフルフラール含有量も少ない。α-セルロース含有率が98重量%を超えるパルプを原料として得られるセルロースアセテートの色相は良好となるが、このようなα-セルロース含有率が高い原料の入手が今後困難となることが予想される。
また、α-セルロース含有率が98重量%を超えるパルプは、通常溶解パルプとよばれ、特殊な精製法を用いて調製されるが、このような調製方法は環境負荷が大きい。将来、環境負荷の軽減がより要求されることが予想されるため、将来的な資源供給で不安がある。
一方、α-セルロース含有率が85重量%未満のパルプの場合には、本発明の解決課題以外にゲルなどの問題が生じ易いし、フルフラールが多くなりすぎ、本発明の効果が十分には得られない場合もある。
α-セルロース含有率は、以下のようにして求めることができる。重量既知のパルプを25℃で17.5%と9.45%の水酸化ナトリウム水溶液で連続的に抽出し、その抽出液の可溶部分に対して重クロム酸カリウムで酸化し、酸化に要した重クロム酸カリウムの容量からβ,γ-セルロースの重量を決定する。初期のパルプの重量からβ,γ-セルロース重量を引いた値を、パルプの不溶部分の重量、α-セルロースの重量とする(TAPPI T203)。初期のパルプの重量に対する、パルプの不溶部分の重量の割合が、α-セルロース含有率(重量%)である。
本開示のセルロースアセテートの製造方法において、原料となるパルプのα-セルロース含有率の違いにより、得られるセルロースアセテートの糖構成比が変化する。原料となるパルプのα-セルロース含有率が低い場合には、セルロースアセテートの糖構成比として当然、キシランやマンナンの含有割合が多くなる。
パルプは、シート状のものを用いることができる。この場合、シートの坪量が300g/m以上850g/m以下で、密度が0.40g/cm以上0.60g/cm以下、また、破裂強度が50kPa以上1000kPa以下のものが好ましいが、これらに限定されるものではない。
(解砕)
本開示のセルロースアセテートの製造方法においては、予めパルプを解砕する工程を有してもよい。これにより、以降の工程で反応が効率的に均一に進み、取扱いも容易になる。解砕工程は、特に、パルプがシート状の形態で供給されるような場合に有効である。
パルプ、特には木材パルプを解砕する方法としては、湿式解砕法と乾式解砕法とがある。湿式解砕法は、パルプ(特に、シート状のパルプ)に水または水蒸気などを添加して解砕する方法である。湿式解砕法としては、例えば、蒸気による活性化と反応装置中での強い剪断攪拌を行う方法や、希酢酸水溶液中で離解してスラリーとした後、脱液と酢酸置換を繰り返す、いわゆるスラリー前処理を行う方法等が挙げられる。また、乾式解砕法は、パルプ(特に、シート状のパルプ)を乾燥状態のまま解砕する方法である。乾式解砕法としては、例えば、ピラミッド歯を有するディスクリファイナーで粗解砕したパルプを、線状歯を有するディスクリファイナーで微解砕する方法や、内壁にライナーを取付けた円筒形の外箱と、外箱の中心線を中心として高速回転する複数の円板と、各円板の間に前記中心線に対して放射方向に取り付けられた多数の翼とを備えたターボミルを用い、翼による打撃と、ライナーへの衝突と、高速回転する円板、翼及びライナーの三者の作用で生じる高周波数の圧力振動とからなる三種類の衝撃作用により、外箱の内部に供給される被解砕物を解砕する方法等が挙げられる。
本開示のセルロースアセテートの製造方法においては、これらの解砕方法をいずれも適宜使用することができるが、特に、ディスクリファイナー及びターボミルを順に用いて二段解砕する方法により未反応セルロースを低減でき、得られるセルロースアセテートのろ過度が向上できるため(言い換えれば、ろ過度の値を低くできるため)好ましい。
(前処理)
パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(1)において、酢酸は、例えば、パルプに含まれるセルロース100重量部に対して、好ましくは10重量部以上500重量部以下を添加することにより接触させることができる。この時、酢酸は、99重量%以上の濃度のものを用いることができる。
パルプと酢酸とを接触させる方法としては、例えば、酢酸もしくは1~10重量%の硫酸を含む酢酸(含硫酢酸)を一段階で添加する方法、または、酢酸を添加して一定時間経過後、含硫酢酸を添加する方法、含硫酢酸を添加して一定時間経過後、酢酸を添加する方法等の酢酸または含硫酢酸を2段階以上に分割して添加する方法等が挙げられる。添加の具体的手段としては、噴霧してかき混ぜる方法が挙げられる。
そして、前処理による、パルプに含まれるセルロースの活性化は、パルプに酢酸及び/または含硫酢酸を添加した後、17℃以上40℃以下の条件下で0.2時間以上48時間以下静置する、または17℃以上40℃以下の条件下で0.1時間以上24時間以下密閉及び攪拌すること等により行うことができる。
パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(1)において、前記酢酸にジアセトアミドを添加してもよく、ジアセトアミドの添加量としては、前記酢酸に対し、350ppm以上1500ppm以下であってよい。前処理する工程(1)において、前記酢酸にジアセトアミドを添加することにより、無水酢酸へのジアセトアミドの添加が不要となる。
(アセチル化)
前記パルプに含まれるセルロースを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(2)において、アセチル化は、具体的には、例えば、酢酸、無水酢酸及び硫酸からなる混合物に、前処理により活性化したパルプに含まれるセルロースを添加すること、または前処理により活性化したパルプに含まれるセルロースに、酢酸と無水酢酸との混合物及び硫酸を添加すること等により開始することができる。ここで、酢酸は、99重量%以上の濃度のものを用いることができる。硫酸は、98重量%以上の濃度のものを用いることが好ましい。
酢酸と無水酢酸との混合物を調整する場合、酢酸と無水酢酸とが含まれていれば、特に限定されないが、酢酸と無水酢酸との割合としては、酢酸300重量部以上600重量部以下に対し、無水酢酸200重量部以上400重量部以下が好ましく、酢酸350重量部以上530重量部以下に対し、無水酢酸240重量部以上280重量部以下がより好ましい。
パルプに含まれるセルロース、酢酸と無水酢酸との混合物、及び硫酸の割合としては、パルプに含まれるセルロース100重量部に対して、酢酸と無水酢酸の混合物は500重量部以上1000重量部以下が好ましく、硫酸は5重量部以上15重量部以下であること好ましく、7重量部以上13重量部以下がより好ましく、8重量部以上11重量部以下がさらに好ましい。
前記パルプに含まれるセルロースを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(2)において、無水酢酸にジアセトアミドを添加することが好ましい。ジアセトアミドの添加量としては、無水酢酸の重量に対し、10ppm以上500ppm以下が好ましく、50ppm以上200ppm以下がより好ましい。この範囲にあることで、特に優れた色相を有するセルロースアセテートを得ることができる。
ジアセトアミドの添加方法としては、前記パルプに含まれるセルロースを前記無水酢酸と反応させる前に、無水酢酸に添加しておくことが好ましい。言い換えれば、予めジアセトアミドを無水酢酸溶液として調製しておくことが好ましい。これによりパルプに均一に接触させることで、均一に着色抑制効果を発現できるためである。
アセチル化工程(2)は、以下のように減圧条件下または常圧条件下にて行う場合があるため、それぞれの場合に分けて述べる。
<減圧条件>
減圧条件下のアセチル化工程(2)においては、少なくともアセチル化反応開始時にアセチル化反応系内の真空度を70Torr(9.3kPa)以下とすることが好ましい。下限は特に限定されないが、例えば60Torr(8.0kPa)以上である。これにより、アセチル化反応のため無水酢酸の溶媒として酢酸を用いた場合に、酢酸の蒸発を促してアセチル化反応で消費された無水酢酸の濃度を高め、アセチル化反応を促すことができ、無水酢酸及び溶媒の使用率を低減することができ、セルロースアセテートの生産性を向上することができる。この方法では、アセチル化反応に伴う温度上昇を抑えるための酢酸及び無水酢酸の混合溶液の冷却が不要になる利点がある。
少なくともアセチル化反応開始時から、セルロースアセテートが不均一から均一状態に変換するまで、アセチル化反応系内の真空度を70Torr(9.3kPa)以下とすることがより好ましい。アセチル化反応に伴う温度上昇を抑えるためである。
アセチル化反応系内の真空度を70Torr(9.3kPa)以下とする場合のアセチル化工程(2)の手順の一例を示す。前処理工程(1)により活性化したセルロースパルプと、酢酸及び無水酢酸からなる混合物とを接触させた後、アセチル化反応系内を真空ポンプなどを用いて減圧にして、真空度を70Torr(9.3kPa)以下に調節する。続いて、硫酸と酢酸とを含有する混合物を添加してアセチル化反応を開始し、蒸発する酢酸、無水酢酸の混合物の蒸気をコンデンサで凝縮して、反応系外に留出させる。これにより、反応生成物は徐々に濃縮され、所定量(目的の反応率に相当する留出量)留出したとき、もしくは留出する液がほとんど無くなったとき反応系内を常圧にし、常圧時もしくは反応系内の温度上昇が止まったときから1分以上30分以下の間保持する。
アセチル化反応系内の真空度を70Torr(9.3kPa)以下とする場合、アセチル化反応系内の最高到達温度としては、55℃以上75℃以下とすることが好ましく、60℃以上70℃以下とすることがより好ましい。
アセチル化反応系内の最高到達温度を55℃以上75℃以下とする場合、あらかじめ冷却しない酢化混液(酢酸、無水酢酸、及び硫酸を含む混合溶液)にパルプを投じて撹拌することで、無水酢酸の反応熱が生じ、昇温することで実現することができる。具体的には、例えば、セルロースパルプ100重量部に対して、200重量部以上400重量部以下の無水酢酸と5重量部以下の酸性触媒(例えば硫酸)を含む混合物を添加し、20分以上40分以下の時間を要して最終55℃以上75℃以下の温度に到達させることができる。
また、減圧条件下でのアセチル化反応にかかる時間は、40分以上60分以下が望ましい。本開示において、アセチル化にかかる時間とは、セルロースパルプが、無水酢酸と反応を開始した時点(特に、セルロースパルプが、無水酢酸、溶媒及び触媒と接触してアセチル化反応を開始した時点)から中和剤投入までの時間をいう。
<常圧条件>
常圧条件下のセルロースアセテートの製造方法について述べる。常圧条件でアセチル化する場合には、反応温度を制御するために、添加する無水酢酸、酢酸を低温にする必要がある。
アセチル化反応系内の最高到達温度としては、中温度領域が好ましい。具体的には、38℃以上52℃以下とすることが好ましく、42℃以上50℃以下とすることがより好ましい。より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
アセチル化反応系内の最高到達温度が中温度領域となるように、アセチル化を行う場合は、無水酢酸を予冷する工程を有することが好ましい。また、無水酢酸以外にも、酢酸及び触媒等をセルロースと接触させる場合は、それらを全て予冷しておくことがより好ましい。無水酢酸、酢酸及び触媒等の混合溶液を調製してから、予冷してもよい。予冷温度は、-25℃以上-10℃以下であること好ましく、-22℃以上-20℃以下がより好ましい。上記範囲とすることにより、アセチル化工程(2)において反応系内の最高到達温度を、中温度領域(38℃以上52℃以下程度)とすることができ、より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
例えば、溶媒として酢酸、アセチル化剤として無水酢酸、触媒として硫酸を含む酢化混液を、予め-25℃以上-10℃以下に冷却しておき、当該酢化混液にセルロース(パルプ)を投じて撹拌する。無水酢酸の量はこれと反応するセルロース及び系内に存在する水分量よりかなり過剰に使用する。これにより、冷却された酢化混液は無水酢酸の反応熱により昇温するが最高到達温度を38℃以上52℃以下とすることができる。撹拌条件下、外部から反応系の内外には一切の熱は加えず行うこと、または併せて、撹拌条件下、反応系を冷媒により冷却して中温に調整することもできる。
アセチル化工程(2)において用いる反応器としてはセルロースアセテートを製造するときに通常使用される公知の反応器(酢化反応器)が使用出来るが、好ましくは混和型反応器である。
また、常圧条件下でのアセチル化反応にかかる時間は、60分以上90分以下が望ましい。ここで、アセチル化にかかる時間とは、セルロースパルプが、無水酢酸と反応を開始した時点(特に、セルロースパルプが、無水酢酸、溶媒及び触媒と接触してアセチル化反応を開始した時点)から中和剤投入までの時間をいう。
アセチル化反応初期は固液不均一系での反応となるので、解重合アセチル化反応を抑えつつアセチル化反応を進ませ未反応物を減らすため可能な限り時間を掛けて昇温するのが良いが、生産性の観点からは、45分以下、さらに好ましくは30分以下で昇温を行うことが好ましい。
(加水分解)
前記アセチル化により得られたセルロースアセテートは、ほぼ全ての水酸基がアセチル基に置換されている状態であり、これを所望の置換度に調整するために加水分解を行う必要がある。前記アセチル化反応の触媒として硫酸を用いた場合、当該硫酸は、硫酸エステルとしてセルロースに結合しているため、加水分解する工程(3)においては、前記アセチル化反応終了後、熱安定性向上のためこの硫酸エステルを加水分解して除去する目的もある。
アセチル置換度の調整は、水(水蒸気を含む);希酢酸;または、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム若しくは亜鉛等の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物若しくは酸化物;などからなる中和剤を添加して、アセチル化反応を停止することにより行うことができる。水は、セルロースアセテートを含む反応混合物中に存在する無水酢酸と反応してカルボン酸を生成させ、アセチル置換度を調整した後のセルロースアセテートを含む反応混合物の水分量がカルボン酸に対し5mol%以上70mol%以下になるように添加することができる。5mol%未満であると、加水分解反応が進まず解重合が進み、低粘度のセルロースアセテートとなり、70mol%を超えると、アセチル化反応終了後のセルロースアセテート(加水分解前のセルロースアセテート)が析出し加水分解反応系から出るため、析出したセルロースアセテートの加水分解反応が進まなくなる。
なお、希酢酸とは、酢酸濃度が、1重量%以上50重量%以下の酢酸水溶液をいう。また、酢酸マグネシウム水溶液を用いる場合は、当該水溶液における酢酸マグネシウムの濃度は5重量%以上30重量%以下が好ましい。
また、セルロースアセテートを含む反応混合物における硫酸イオン濃度が高いと効率よく硫酸エステルを除去することができないため、酢酸マグネシウム等の酢酸のアルカリ土類金属塩の水溶液又は酢酸-水混合溶液を添加して不溶性の硫酸塩を形成させることにより、硫酸イオン濃度を低下させることが好ましい。セルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対し、セルロースアセテートを含む反応混合物の硫酸イオンを1重量部以上6重量部以下に調整することが好ましい。なお、例えば、セルロースアセテートを含む反応混合物に酢酸マグネシウムの酢酸-水混合溶液を添加することにより、アセチル化反応の停止とセルロースアセテート100重量部(セルロース換算)に対する硫酸イオンの重量比の低下とを同時に行うこともできる。
加水分解工程(3)においては、水蒸気を用いた高温で加水分解を行う方法がある(高温熟成)。
加水分解工程(3)は、反応系内の温度が常温(中温)または高温のいずれにおいても行うことができる。常温において行う加水分解は、常温熟成と称し、反応系内の最高到達温度が55℃以上100℃未満である場合をいい、好ましくは55℃以上90℃未満である。高温において行う加水分解は、高温熟成と称し、反応系内の最高到達温度が100℃以上200℃以下の範囲をいう。高温熟成においては、水蒸気を用いて系内の温度を上昇させる。
また、セルロースアセテートの加水分解は、常温(中温)下で行うことが色相の点で好ましい。すなわち加水分解反応が充分に進行し、高温に比べて低品位のパルプに起因するヘミセルロース成分の解重合が生じにくく、より色相に優れたセルロースアセテートが得られるためである。
尚、加水分解工程を高温下で行うと、常温(中温)に比べ色相は悪化するが、ヘミセルロースを化学的に微細化できるため、ろ過度は良化する。しかし、本開示のセルロースアセテートの製造方法を用いれば、加水分解工程を高温で行った場合でも色相の悪化を抑制できる。
(沈殿)
前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(4)においては、セルロースアセテートを含む混合物と水又は希酢酸等の沈殿剤とを混合し、生成したセルロースアセテート(沈殿物)を分離して沈殿物を得ることができる。また、沈殿剤としては、希酢酸が好ましい。
さらに、その沈殿物を水洗して遊離の金属成分や硫酸成分などを除去してもよい。特に、セルロースアセテートの熱安定性を高めるため、水洗の際に、その水に安定剤として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物、特に水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加することが好ましい。
セルロースアセテートを沈殿工程(4)の後、セルロースアセテートを乾燥させてもよい。乾燥の方法としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、送風や減圧などの条件下乾燥を行うことができる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥が挙げられる。
従来の技術として、セルロースアセテートの製造工程において、有機溶媒を添加する方法や(特許文献2)、二酢酸セルロースを良好な溶解性を有する溶媒に一旦溶解した後、これを回収する方法(特許文献3)が挙げられるが、これらは、α-セルロース含有率の低い低品位パルプを用いるときのみ効果を及ぼすものであって、α-セルロース含有率の高いパルプを用いる際は利用できない。
本開示のセルロースアセテートの製造方法によれば、着色の原因となる物質(例えば、フルフラール)を原料から抽出または除去するのではなく、その着色の原因となる物質を生じる重合反応を阻害することができる。このように、従来の技術とは異なり、着色の原因となる物質(例えば、フルフラール)を原料から少なくするのではなく、着色の原因となる物質(例えば、フルフラール)が製品中に残留する化学変化を防止することにより、着色の原因となる物質(例えば、フルフラール)を原料から殊更に少なくしなくても、色相がよいセルロースアセテートを得ることができる。
すなわち、着色の原因となる物質(例えば、フルフラール)の低分子化合物がセルロースアセテート中に残留しにくいという点を利用して、高分子化を防止することで、通常の工程で低分子の着色物原因物質は除去される。
このため、単位量の原料から得られるセルロースアセテートの量が低下する(言い換えれば収率が低下する)懸念がない。さらに、セルロースアセテートの沈殿工程の後に、沈殿物の水洗を行うだけで、過剰なジアセトアミドは除去されることから、さらに、セルロースアセテートからジアセトアミドを分離する工程を導入する必要がない。このため、本開示のセルロースアセテートの製造方法は、生産性にも優れる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
後述する実施例及び比較例に記載の各物性は以下の方法で評価した。
<α-セルロース含有率>
重量既知のパルプを25℃で17.5%と9.45%の水酸化ナトリウム水溶液で連続的に抽出し、その抽出液の可溶部分に対して重クロム酸カリウムで酸化し、酸化に要した重クロム酸カリウムの容量からβ,γ-セルロースの重量を決定した。初期のパルプの重量からβ,γ-セルロース重量を引いた値を、パルプの不溶部分の重量、つまりα-セルロースの重量とした(TAPPI T203)。初期のパルプの重量に対する、パルプの不溶部分の重量の割合が、α-セルロース含有率(重量%)である。
<アセチル総置換度>
アセチル総置換度は、上記の手塚の方法に従い、1H-NMRを用いた方法により測定した。
<吸光度法色相>
(1)セルロースアセテートの含水率測定
赤外線水分計(METTLER TOLEDO HB43)を用いて、セルロースアセテートの含水率を測定し、記録用紙に記録した。
(2)吸光度の測定
まずサンプル調製を行った。1)三角フラスコにDMSO95.00gを計量した。2)三角フラスコにスターラー回転子を入れ、セロファン、シリコン栓をして攪拌した。3)セルロースアセテートサンプル5.00gを薬包紙等に計量し攪拌している三角フラスコ内に添加した。4)セロファン、シリコン栓をしてスターラーで1hr攪拌した。5)回転振盪機(高速)で2hr振盪した。6)回転振盪機から取り外した後30分間静置し脱泡し、サンプルを調製した。
次に、吸光度の測定を行った。サンプル調製後直ちに、つまり回転振盪機から取り外した後30分間静置し脱泡した後直ちに、島津製作所社製UV-1700にて波長λ=430nmの吸光度及び波長λ=740nmの吸光度を測定した。具体的には、1)測定する30分以上前に装置の電源を入れ、装置が安定化したことを確認した。2)10cmガラスセルにレファレンス、ブランク液としてDMSOを入れベースライン補正を行った。3)三角フラスコ内のサンプルを気泡が発生しないように10cmガラスセルに移した。4)手前の測定側セルをサンプルが注入されたガラスセルに入れ替えた。5)スタートボタンを押して測定を開始した。6)表示された測定結果を記録用紙に記録した。
(3)吸光度法色相
以下の計算式で得られた数値をセルロースアセテートのその溶媒における「吸光度法色相」値とした。
吸光度法色相(cm-1)=吸光度(A-B)/セル厚(cm)/セルロースアセテート濃度(重量%)×100
吸光度:分光光度計 島津製作所社製UV-1700
A:430nmの吸光度(液の黄色味を測定)
B:740nmの吸光度(液の濁りを測定:ベースライン)
セルロースアセテート濃度(重量%):絶乾セルロースアセテート重量(g)/セルロースアセテート溶液全体重量(g)×100
絶乾セルロースアセテート重量(g):セルロースアセテートの重量(g)×(1-含水率(%)/100)
含水率(%):上記赤外線水分計で測定した値
<6%粘度>
三角フラスコに乾燥試料3.00g、95%アセトン水溶液39.90gを採取し、密栓して約1時間攪拌した。その後、回転振盪機で約1.5時間振盪して完溶させた。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約30分間整温した。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度(mPa・s)を算出した。
6%粘度(mPa・s)=流下時間(s)×粘度計係数
ここで、粘度計係数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS-200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求めた。
粘度計係数={標準液絶対粘度(mPa・s)×溶液の密度(0.827g/cm)}/{標準液の密度(g/cm)×標準液の流下秒数(s)}
<ろ過度>
ろ過度は、以下の方法により測定した。95%アセトン水溶液に、20重量%濃度となるように溶解したセルロースアセテート溶液を30℃、一定圧力(2kgf/cm)下で、所定のろ布金巾(直径15mm、ろ過面積1.77cm)に通し、ろ過した。この時、ろ過開始後20分までのろ過量をP(ml)、20分より60分までのろ過量をP(ml)として測定し、下記式によりろ過度KW(ml-1)を算出した。
KW=〔(2-P/P)/(P+P)〕×10
<糖鎖成分の構成比>
充分に乾燥した試料200mgを精秤し、72%硫酸3mLを加え、氷水で冷却しながら超音波を用いて撹拌し、2時間以上かけて試料を完全に溶解させた。得られた溶液に蒸留水39mLを加えて十分に振盪し、窒素気流下、110℃で3時間還流した後、30分間放冷した。次いで、炭酸バリウム14gを加え、氷水で冷却しつつ超音波を用いて撹拌し、硫酸を中和した。30分後、さらに炭酸バリウム10gを加え、pH5.5~6.5程度になるまで硫酸を中和し、ろ過した。得られた濾液を超純水で100重量倍に希釈し、分析用の試料を調製した。
得られた試料を下記の条件でイオンクロマトグラフィにより分析した。
高速液体クロマトグラフィ(HPLC:アジレント・テクノロジー社製Agilent 1200シリーズシステム)
検出器: CoronaPlus CAD検出器
カラム: Shodex社製、Asahipak NH2P-50 4E(250×4.6mm)
ガードカラム: Shodex社製、Asahipak NH2P-50G 4A
溶離液: 超純水/アセトニトリル(HPLC用)= 25/75(v/ v)
溶離液流量:1.0mL/分
カラム温度:20℃
なお、マンノース単位(Man)、キシロース単位(Xyl)、及びグルコース単位(Glc)のモル比は、予め、マンノース、キシロース、及びグルコース標品を用いて作成した検量線より求めることができる。これらの3成分の合計を100として各構成糖鎖成分の含量をモル%で表した。
<上記一般式(a)で表される化合物の含有量>
上記一般式(a)で表される化合物の含有量は、次のとおり、高分子量不純物測定法にて測定した。50℃のアセトン-水溶液(50重量%-50重量%)130gで、セルロースアセテート10gを1時間洗浄した後、抽出して得た抽出液を濃縮し、上記測定条件のHPLCで分析し定量した。
(実施例1)
セルロース原料として木材パルプ、レイアセタ-HJ(含水率約3.0%、α-セルロース含有率98重量%)を解砕機でフラッフ状に解砕した。フラッフ状のセルロースパルプ100重量部を前処理機に入れ、氷酢酸38重量部を散布して、前処理により活性化(25℃、60分)した。また、無水酢酸に対してジアセトアミドを200ppmとなるように添加して溶解させ、無水酢酸溶液を調製した。前処理によって酢酸を含浸させたセルロースパルプを、酢化反応器に撹拌しながら入れ、酢化反応器に仕込んだ。さらに酢化反応器に氷酢酸200重量部、無水酢酸溶液270重量部、硫酸1.1重量部を添加し、12℃に冷却し、10分かけて60℃に到達させた後、80分間保持して、アセチル化反応を行った。
11重量部の24重量%酢酸マグネシウム酢酸-水混合溶液を酢化反応器に添加混合し、無水酢酸を分解し、アセチル化反応を停止した。その後、酢化反応器中の反応混合物を熟成槽(言い換えれば、オートクレーブ)に移した。次に、密閉下、撹拌しながらジャケットにゲージ圧5kg/cmの水蒸気を吹き込み、90分かけて150℃に昇温し、150℃で50分間保持した。その後、熟成槽内(言い換えれば、オートクレーブ内)の反応物を、ノズルを通して少量ずつ大気下に取り出し、放冷した。冷却したセルロースアセテート溶液をミキサーで撹拌しながら、3倍量の10%希酢酸中に投入し、フレーク状の沈殿物を得た。この沈殿物を十分量の流水で洗浄、及び脱水し、100℃のオーブンで2時間乾燥し、セルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテート及び各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。なお、表1中の「n.d」は、未検出を意味する。
(比較例1)
無水酢酸に対してジアセトアミドを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてセルロースアセテートを得た。得られたセルロースアセテート及び各原料の物性を評価した結果は、表1に示す。
Figure 0007093256000003
表1に示すように、製造工程において、ジアセトアミドを添加することで、6%粘度、ろ過度を維持したまま、着色に寄与する物質である、一般式(a)で表される化合物(不純物)が十分に少なく、色相た優れたセルロースアセテートを調製することができた。

Claims (7)

  1. パルプと酢酸とを接触させて前処理する工程(1)、
    前記前処理をした後、前記パルプに含まれるセルロースを無水酢酸と反応させてアセチル化する工程(2)、
    前記アセチル化により得られたセルロースアセテートを加水分解する工程(3)、及び
    前記加水分解によりアセチル置換度が調整されたセルロースアセテートを沈殿する工程(4)を有し、
    前記加水分解工程(3)までにジアセトアミドを添加する、セルロースアセテートの製造方法。
  2. 前記アセチル化工程(2)において、前記無水酢酸にジアセトアミドを添加する、請求項に記載のセルロースアセテートの製造方法。
  3. 前記無水酢酸の重量に対して50ppm以上200ppm以下のジアセトアミドを添加する、請求項に記載のセルロースアセテートの製造方法。
  4. 前記前処理工程(1)において、前記酢酸にジアセトアミドを添加する、請求項のいずれか一項に記載のセルロースアセテートの製造方法。
  5. 前記酢酸の重量に対して350ppm以上1500ppm以下のジアセトアミドを添加する、請求項に記載のセルロースアセテートの製造方法。
  6. 前記アセチル化工程(2)において、アセチル化反応開始時にアセチル化反応系内の真空度を9.3kPa以下とする、請求項の何れか一項に記載のセルロースアセテートの製造方法。
  7. 前記加水分解工程(3)において、反応系内の最高到達温度を100℃以上200℃以下とする、請求項の何れか一項に記載のセルロースアセテートの製造方法。
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