JP2019122262A - グルコースの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】穏やかな条件で糖化(分解)を進行でき、高収率でグルコースが得られる、グルコースの製造方法を提供する。【解決手段】セルロースアセテートを、前記セルロースアセテートに対して重量基準で5倍量以上の水の存在下、反応系内の温度170℃以上200℃以下、圧力8.1kg/cm2以上15.8kg/cm2以下で分解してグルコースを得る、グルコースの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、グルコースの製造方法に関する。
サトウキビに由来するモラセス、トウモロコシ及び甜菜等の糖質やデンプン質を多く含む資源が、エタノール、プロパノール及びブタノール等のアルコール;フェノール等の芳香族類;乳酸を含むカルボン酸;並びにアミノ酸を含むアミン等の化学品の製造のための原料として利用され又は利用が試みられている。その理由としては、これらの資源が再生可能であること、及び燃焼等によって大気中に排出される二酸化炭素(CO)量とバイオマスが取り込む二酸化炭素(CO)量が同じであり(これをカーボンニュートラルという)、大気中への二酸化炭素(CO)量が増加しないこと、さらには生産効率に優れることが挙げられる。
一方で、これらの資源の生産は食料の生産と競合することとなることから、食料用の資源の生産が減り、特に所得水準の低い国での調達が困難となるとの指摘がなされている。そのため、食料や飼料と競合しない、スイッチグラス(イネ科の多年草)、パルプ廃液、バガス、廃材木、もみ殻及び稲藁等の多様な植物由来資源に含まれる多糖類を原料とする試みがなされている。
上記化学品の製造においては、原料となる多糖類を糖化(分解)して、単糖や二糖を得る工程が経由されるところ、この糖化工程は、その後の工程に比べてエネルギー的及び時間的負担が大きい。
糖化を効率よく進める方法として、例えば、特許文献1では、木本類を加水分解処理して糖類を製造する方法であって、加水分解処理に使用する処理水が、木本類の加水分解処理により得られた糖類を含む加水分解抽出液から糖類を回収した後の酸性水を含むことを特徴とする糖類の製造方法が提案されている。
特開2008−043229号公報
しかしながら、従来の多糖類を糖化(分解)する方法では、pHが2.6〜2.9の酸性水を用いるような厳しい条件が必要であり、また、高収率でグルコースを得ることはできなかった。その他、超臨界または亜臨界状態とする非常に高温高圧の条件を用いるような厳しい条件が必要となる場合もあった。
木本類等の木質系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンが複雑に絡み合い強固に結合した構造を有しており、リグニンを取り除く前処理無しでは、効率よく糖化(分解)することができない。リグニンを取り除く前処理を行うためには、複数の工程や大掛かりな製造設備が必要となり、コストアップとなる。そして、これらのことはグルコース、及びそのグルコースを原料として得られる他の化学品の拡販に向けての課題ともなる。
本発明は、穏やかな条件で糖化(分解)を進行でき、高収率でグルコースが得られる、グルコースの製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、セルロースアセテートを、前記セルロースアセテートに対して重量基準で5倍量以上の水の存在下、反応系内の温度170℃以上200℃以下、圧力8.1kg/cm以上15.8kg/cm以下で分解してグルコースを得る、グルコースの製造方法に関する。
前記グルコースの製造方法において、前記反応系内の温度を下げることにより、前記セルロースアセテートの分解反応を停止してもよい。
前記グルコースの製造方法において、前記セルロースアセテートのアセチル総置換度が、0.1以上であってもよい。
前記グルコースの製造方法の前記セルロースアセテートを分解する分解反応において、セルロースが存在してもよい。
前記グルコースの製造方法において、前記セルロースアセテートは、セルロースをアセチル化し、加水分解して得られたものであってもよい。
前記グルコースの製造方法において、前記セルロースアセテートは、セルロースを原料としてセルロースアセテートを製造する工程で生じる、廃棄セルロースアセテートであってもよい。
本発明によれば、穏やかな条件で糖化(分解)を進行でき、高収率でグルコースが得られる、グルコースの製造方法を提供することができる。
グルコースの収率及び5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率の関係を示すグラフである。
[グルコースの製造方法]
本開示のグルコースの製造方法は、セルロースアセテートを、前記セルロースアセテートに対して重量基準で5倍量以上の水の存在下、反応系内の温度170℃以上200℃以下、圧力8.1kg/cm以上15.8kg/cm以下で分解してグルコースを得る。
(セルロースアセテート)
本開示のグルコースの製造方法に用いられるセルロースアセテートは、原料セルロースをアセチル化して得られるものであってよい。また、アセチル化の後、加水分解して、脱アセチル化されていてもよい。なお、本開示のグルコースの製造方法に用いられるセルロースアセテート中には、セルロース(言い換えれば、アセチル化していない、またはアセチル総置換度が0である)が含まれていてもよい。
原料セルロースは、木材パルプ(針葉樹パルプ及び広葉樹パルプを含む);綿花リンター等のリンターパルプ;バクテリアセルロース;及び再生セルロース等であってよい。また、原料セルロースは、スイッチグラス(イネ科の多年草)、バガス、廃材木、竹、もみ殻、及び稲藁等の多様な植物由来資源から得られたパルプ等であってよい。また、これらの原料セルロースは単独で又は二種以上組み合わせてもよい。さらに、原料セルロースは、シート状に加工されていてもよく、粉末セルロースもしくは微結晶セルロースに加工されていてもよい。
植物由来資源から得られるセルロース、及びバクテリアセルロース等は、セルロースI型結晶構造を有する。このセルロースI型結晶構造は、還元末端が全て同一方向を向いた平行鎖構造をとり、非常に強固なものである。そのため、その構造を壊してセルロースを糖化するためには、非常に大きなエネルギーを要する。
一方、セルロースアセテートは、セルロースII型結晶構造(より正確には、セルロースアセテートII型結晶構造という)を有する。原料セルロースのアセチル化によりセルロースI型からII型へ転換し得る。セルロースII型結晶構造は、還元末端が交互に位置するような逆平行鎖構造をとり、セルロースI型結晶構造のような強固なものではない。なお、セルロースI型結晶構造が、一旦セルロースアセテートII型結晶構造へ変化すると、I型結晶構造への変化は生じないとされている。
本開示のセルロースアセテートは、セルロースII型結晶構造を有することから、セルロースを直接糖化(分解)する場合に比べ、穏やかな条件(低温、低圧、及び穏やかなpH等)で糖化(分解)することができる。また、本開示のセルロースアセテートは、原料セルロースをアセチル化して得られるものであるところ、原料セルロースとしては、糖化(分解)処理をするにあたり、リグニンを除く前処理も必要としない。
原料セルロースのα−セルロース含有率は、90重量%以上が好ましく、92重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、97重量%以上が最も好ましい。α−セルロース含有率はより高い方が、特に、植物由来資源から得られるセルロースを用いた場合において、リグニンが分解されることによって生成する4−ヒドロキシベンズアルデヒド等の糖化処理を阻害する物質が少なく、グルコースの収率をより高められるためである。
α−セルロース含有率は、以下のようにして求めることができる。重量既知のパルプを25℃で17.5%と9.45%の水酸化ナトリウム水溶液で連続的に抽出し、その抽出液の可溶部分に対して重クロム酸カリウムで酸化し、酸化に要した重クロム酸カリウムの容量からβ,γ−セルロースの重量を決定する。初期のパルプの重量からβ,γ−セルロース重量を引いた値を、パルプの不溶部分の重量、α−セルロースの重量とする(TAPPI T203)。初期のパルプの重量に対するパルプの不要部分の重量の割合が、α−セルロース含有率(重量%)である。
原料セルロースのアセチル化は、原料セルロースを、酸触媒の存在下で無水酢酸と反応させることによって行うことができる。具体的には、例えば、酢酸、無水酢酸および硫酸からなる混合物に、前処理活性化した原料セルロースを添加すること、または前処理活性化した原料セルロースに、酢酸と無水酢酸の混合物および硫酸を添加すること等により開始することができる。アセチル化は、例えば、10〜80℃の温度で1分〜360分間で進行することができる。
前処理活性化は、例えば、原料セルロースに酢酸及び/または含硫酢酸を添加した後、例えば、17〜40℃下で0.2〜48時間静置する、または17〜40℃下で0.1〜24時間密閉及び攪拌すること等により行うことができる。
また、脱アセチル化は、水(水蒸気を含む);希酢酸;及び/またはカルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム若しくは亜鉛等の炭酸塩、酢酸塩、水酸化物若しくは酸化物などからなる中和剤を添加して、例えば、25℃〜200℃の温度で10分〜360分間行うことができる。
セルロースアセテートのアセチル総置換度は、特に制限されるものではないが、アセチル総置換度は、0.1以上であってよく、1.0以上であってよく、1.5以上であってよく、2.0以上であってよい。また、3.0以下であってよい。
アセチル総置換度は、セルロースアセテートの置換度を求める公知の滴定法により測定できる。具体的には次のとおりである。
アセチル総置換度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定法に準じて求めた酢化度を次式で換算することにより求められる。これは、最も一般的なセルロースアセテートの置換度の求め方である。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル総置換度
AV:酢化度(%)
まず、乾燥したセルロースアセテート(試料)500mgを精秤し、超純水とアセトンとの混合溶媒(容量比4:1)50mlに溶解した後、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、0.2N−塩酸50mlを添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液(0.2N−水酸化ナトリウム規定液)で、脱離した酢酸量を滴定する。また、同様の方法によりブランク試験(試料を用いない試験)を行う。そして、下記式にしたがってAV(酢化度)(%)を算出する。
AV(%)=(A−B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N−水酸化ナトリウム規定液のファクター
上記の他、アセチル総置換度は、セルロースアセテートの水酸基をプロピオニル化した上で、重クロロホルムに溶解し、NMRにより測定することもできる。
セルロースアセテートの形状としては、特に制限されず、例えば、繊維等の一次元的形状;フィルム等の二次元的形状;並びにペレット、チューブ及び中空円柱状等の三次元的形状のいずれであってよい。また、セルロースアセテートを紡糸して製造したセルロースアセテートフィルタートウのような形状であってよい。その他、セルロースアセテートは、酢酸溶液などの溶液の状態であってもよい。
セルロースアセテートとしては、セルロースを原料としてセルロースアセテートを製造する工程で生じる、廃棄セルロースアセテートであってよい。本開示のグルコースの製造方法によれば、セルロースアセテートの製造やその利用で不可避的に発生する廃棄セルロースアセテートを、グルコース製造のための原材料とできるため、廃棄セルロースアセテートを有効なエネルギーとして活用でき、また、持続可能性のある資源として活用できる。
(セルロースアセテートの分解)
セルロースアセテートの分解は、セルロースアセテートに対して重量基準で5倍量以上の水の存在下、反応系内の温度を170℃以上200℃以下、圧力を8.1kg/cm以上15.8kg/cm以下とすることによって行う。
水の量は、セルロースアセテートに対して重量基準で5倍量以上であるところ、グルコースの収率をより高められるため、8倍量以上が好ましく、10倍量以上がより好ましい。水の量が少すぎると、グルコースの収率が低下する。また、その上限値は特に限定されないが、50倍量以下であってよく、30倍量以下であってよい。水の量が多すぎると、セルロースアセテートを分解してグルコースを製造した後、グルコースの濃縮や精製等を行う場合に、水を除去するための工程及びエネルギー的負担が増えるためである。
セルロースアセテートの分解反応系内の温度は、170℃以上200℃以下とする。170℃以上180℃以下が好ましい。上記範囲とすることにより、温度が低すぎ、グルコースの収率が低下することを避けられる。さらに、グルコースの収率を高く、セルロースアセテートの分解反応によって生じ得る5−ヒドロキシメチルフルフラール等の副生成物の収率を低くすることができる。5−ヒドロキシメチルフルフラール等の副生成物は、得られるグルコースを発酵によって他の化学品を生成しようとする場合に、発酵を阻害する物質であるため、その含有量は低いことが好ましい。
セルロースアセテートの分解反応系内の温度は、反応槽内に設置した温度センサーによって測定することができる。
また、分解反応系内の温度を、170℃以上200℃以下に保持する時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、20分間以上がさらに好ましい。その上限値は特に限定されないが、120分間以下であってよく、60分間以下であってよい。上記範囲とすることにより、より高収率でグルコースを得、副生成物の発生量を最小限にするためである。また、反応時間が長すぎれば、グルコースの収率の増加に対し、相対的に製造コスト及び費用が増加しすぎる可能性がある。
セルロースアセテートの分解反応系内の圧力は、8.1kg/cm以上15.8kg/cm以下とする。下限値としては、10kg/cm以上であってよく、11kg/cm以上であってよい。圧力が低すぎると反応効率が低下し、グルコースの収率が低下するためである。また、上限値としては、13kg/cm以下であってよく、12kg/cm以下であってよい。圧力を高くすれば、グルコースの収率は向上する傾向となるが、圧力が高すぎると、十分な耐圧能力を持った設備とする必要があり、設備費の上昇に繋がるためである。反応系内の圧力を上記範囲とすることで、グルコースの収率を高く、セルロースアセテートの分解反応によって生じ得る5−ヒドロキシメチルフルフラール等の副生成物の収率を低くすることができる。
セルロースアセテートの分解反応系内の圧力は、反応槽内の圧力計によって測定することができる。
また、分解反応系内の圧力を、8.1kg/cm以上15.8kg/cm以下に保持する時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、20分間以上がさらに好ましい。反応時間の適正化によりグルコース回収率を高めるためである。その上限値は特に限定されないが、200分間以下であってよく、100分間以下であってよい。反応時間が長すぎれば、グルコースの収率は増加するものの、相対的に必要用役費(グルコースの製造のために必要な電気等のエネルギー負担や金銭的負担)が増加しすぎる可能性がある。
本開示のグルコースの製造方法によれば、好ましくはpH2〜12、より好ましくはpH3〜12、さらに好ましくはpH3〜8の範囲で、糖化(分解)を進行することができる。更に高収率でグルコースを得るためにpHを酸性側にしてもよいが必須ではない。
また、セルロースアセテートを分解する分解反応においては、セルロースが存在していてもよい。先述のとおりであるが、本開示のグルコースの製造方法に用いられるセルロースアセテート中には、セルロース(言い換えれば、アセチル化していない、またはアセチル総置換度が0である)が含まれる場合がある。
本開示のグルコースの製造方法によれば、高収率でグルコースが得られるところ、このグルコースの収率としては、次のいずれも含む。
(1)グルコースの収率(重量%):原料とするセルロースアセテートの重量に対するグルコースの回収量の割合
(2)グルコースの収率(%):グルコースの理論収率(重量%)に対するグルコースの収率(重量%)の割合
なお、グルコースの理論収率(重量%)は、原料とするセルロースアセテートの重量に対するグルコースの理論回収量の割合であり、次のとおり、オートクレーブ法により導出することができる。
セルロースアセテート試料300mgに、72重量%硫酸を3ml、水を84ml添加し、121℃で1時間オートクレーブする。放冷後、ガラスファイバーフィルター(GA−100、ADVANTEC製)でろ過し、ろ液を水で100mlにメスアップする。メスアップしたろ液を0.2μmPTFEフィルター(GDX、Whatman)でろ過した後、HPLC分析を行う。HPLC分析により、ろ液中に含まれるグルコースの重量を求める。そして、ろ液中に含まれるグルコースの重量に基づき、下記式によって、グルコースの理論収率(重量%)を導くことができる。なお、このようにオートクレーブを用いて、グルコースを定量する方法は、木材化学において一般的なものである。
グルコースの理論収率(重量%):
ろ液中に含まれるグルコースの重量(mg)/セルロースアセテート試料の重量300(mg)×100
本開示のグルコースの製造方法によれば、(1)グルコースの収率(重量%)を、35重量%以上、40%重量%以上、さらには、50%重量以上とすることができる。
本開示のグルコースの製造方法によれば、(2)グルコースの収率(%)を、50%以上、60%以上、さらには、70%以上とすることができる。
本開示のグルコースの製造方法によれば、高収率でグルコースが得られる一方で、副生成物の収率を低くすることもできる。副生成物である5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率としては、次のいずれも含む。
(1)5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率(重量%):原料とするセルロースアセテートの重量に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの回収量の割合
(2)5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率(%):5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論収率(重量%)に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率(重量%)の割合
なお、5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論収率(重量%)は、原料とするセルロースアセテートの重量に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論回収量の割合であり、次のとおり、オートクレーブ法により導出することができる。
セルロースアセテート試料300mgに、72重量%硫酸を3ml、水を84ml添加し、121℃で1時間オートクレーブする。放冷後、ガラスファイバーフィルター(GA−100、ADVANTEC製)でろ過し、ろ液を水で100mlにメスアップする。メスアップしたろ液を0.2μmPTFEフィルター(GDX、Whatman)でろ過した後、HPLC分析を行う。HPLC分析により、ろ液中に含まれる5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量を求める。そして、ろ液中に含まれる5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量に基づき、下記式によって、5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論収率(重量%)を導くことができる。
5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論収率(重量%):
ろ液中に含まれる5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量(mg)/セルロースアセテート試料の重量300(mg)×100
本開示のグルコースの製造方法によれば、(1)5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率(重量%)を、20重量%以下、10%重量%以下、さらには5%重量以下とすることができる。
そして、グルコースの収率(%):グルコースの理論収率(重量%)に対するグルコースの収率(重量%)の割合、及び5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率Y(%):5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論収率(重量%)に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率(重量%)の割合との関係が、以下の式を満たすことが好ましい。
Y≦7.2277X−105.84
セルロースアセテートの分解反応は、反応系内の温度を下げることにより停止することができる。具体的には、例えば、10〜100℃まで下げることが好ましい。また、その方法としては、例えば、反応系を大気圧に解放する;還流冷却器等の冷却管を用いる;また、常温(例えば15〜25℃)程度の風を反応系内に送ること等が挙げられ、いずれかの方法または複数の方法を組み合せて温度を下げればよい。
反応系内の温度を下げることにより生じる固相及び液相のうち、液相には、セルロースアセテートの分解反応によって得られるグルコースが含まれる。また、液相には、5−ヒドロキシメチルフルフラール等の副生成物も含まれ得る。液相を分画することにより、溶液としてグルコースを得ることができる。なお、固相には、残渣としてセルロースアセテートの製造過程で添加した無機塩や中和剤等が含まれ得る。
本開示のグルコースの製造方法により製造されるグルコースは、発酵等により、エタノール、プロパノール及びブタノール等のアルコール;フェノール等の芳香族類;乳酸を含むカルボン酸;並びにアミノ酸を含むアミン等の化学品を製造する原料として利用可能である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
後述する実施例および比較例に記載の各物性は、以下の方法で評価した。
<グルコースの収率>
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によりグルコースの回収量を測定し、グルコースの収率(重量%)(原料とするセルロースアセテートの重量に対するグルコースの回収量の割合)を求めた。
HPLC測定条件は、以下のとおりである。
高速液体クロマトグラフィー:DG−980−50,Degasser(JASCO)
カラム:Shodex SUGAR SH1011
ガードカラム:SUGAR SH−G
カラム温度:室温(25℃)
移動相:25mM HSOaq
移動相流速:1.0ml/min
検出器:RI−930,UV−975
検出波長:280nm
次に、グルコースの収率(%)(グルコースの理論収率(重量%)に対するグルコースの収率(重量%)の割合)を求めた。
上記のグルコースの理論収率(重量%)は、次のようにして決定した。セルロースアセテート試料300mgに、72重量%硫酸を3ml、水を84ml添加し、121℃で1時間オートクレーブした。放冷後、ガラスファイバーフィルター(GA−100、ADVANTEC製)でろ過し、ろ液を水で100mlにメスアップした。メスアップしたろ液を0.2μmPTFEフィルター(GDX、Whatman)でろ過した後、上記の測定条件によってHPLC分析を行った。HPLC分析により、ろ液中に含まれるグルコースの重量を求めた結果、218mgであった。そして、ろ液中に含まれるグルコースの重量に基づき、下記式によって、グルコースの理論収率(重量%)を導いた。
グルコースの理論収率(重量%):
218mg/セルロースアセテート試料の重量300mg×100=72.7(重量%)
<5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率>
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により5−ヒドロキシメチルフルフラールの回収量を測定し、5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率(重量%)(原料とするセルロースアセテートの重量に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの回収量の割合)を求めた。
HPLC測定条件は、上記グルコースの回収量の測定に用いたHPLC測定条件と同じである。
次に、5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率(%)(5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論収率(重量%)に対する5−ヒドロキシメチルフルフラールの収率(重量%)の割合)を求めた。
上記の5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論収率(重量%)は、次のようにして決定した。セルロースアセテート試料300mgに、72重量%硫酸を3ml、水を84ml添加し、121℃で1時間オートクレーブした。放冷後、ガラスファイバーフィルター(GA−100、ADVANTEC製)でろ過し、ろ液を水で100mlにメスアップした。メスアップしたろ液を0.2μmPTFEフィルター(GDX、Whatman)でろ過した後、上記の測定条件によってHPLC分析を行った。HPLC分析により、ろ液中に含まれる5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量を求めた結果、2.1mgであった。そして、ろ液中に含まれる5−ヒドロキシメチルフルフラールの重量に基づき、下記式によって、5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論収率(重量%)を導いた。
5−ヒドロキシメチルフルフラールの理論収率(重量%):
2.1mg/セルロースアセテート試料の重量300mg×100=0.7(重量%)
<実施例1>
反応容器に、セルロースアセテート(L−40、(株)ダイセル製;アセチル総置換度2.5)10g及び水100ml(セルロースアセテートの10倍重量)を入れ、600〜800rpmで撹拌しながら、反応容器内の温度を170℃まで昇温し、圧力を8.1kg/cmとした。その温度及び圧力を30分間保持した。その後、反応容器内容物を冷却管を通し、さらに風乾させて反応容器内容物の温度を室温(25℃)程度まで下げた。
反応容器内容物を遠心分離機(CFM−2000、アズワン製、12,000rpm、10分間)を用いて固液分離し、液相を0.2μmPTFEフィルター(GDX、Whatman)でろ過して、反応生成物を得た。得られた反応生成物のグルコース及び5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の収率を求めた。結果を表1及び図1に示す。
<実施例2>
反応容器内の温度を180℃まで昇温し、圧力を11.3kg/cmとし、その温度及び圧力を30分間保持した以外は、実施例1と同様にして反応生成物を得た。得られた反応生成物のグルコース及び5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の収率を求めた。結果を表1及び図1に示す。
<実施例3>
水の量を50ml(セルロースアセテートの5倍量)とした以外は、実施例1と同様にして反応生成物を得た。得られた反応生成物のグルコース及び5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の収率を求めた。結果を表1及び図1に示す。
<比較例1>
水の量を30ml(セルロースアセテートの3倍量)とした以外は、実施例1と同様にして反応生成物を得た。得られた反応生成物のグルコース及び5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の収率を求めた。結果を表1及び図1に示す。
<比較例2>
反応容器内の温度を160℃まで昇温し、圧力を6.4kg/cmとし、その温度及び圧力を60分間保持した以外は、実施例1と同様にして反応生成物を得た。得られた反応生成物のグルコース及び5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の収率を求めた。結果を表1及び図1に示す。
Figure 2019122262
表1及び図1に示されるように、水の量が少ない場合(比較例1)、及び反応容器内の温度または圧力が低い場合(比較例2)には、グルコースの収率(重量%)(原料とするセルロースアセテートの重量に対するグルコースの回収量の割合)は、高くとも25.6重量%に留まり、また、グルコースの収率(%)(グルコースの理論収率に対するグルコースの収率)としても、高くとも35.2%に留まった。
これに対し、本発明のグルコースの製造方法によれば、グルコースの収率(重量%)(原料とするセルロースアセテートの重量に対するグルコースの回収量の割合)は、39.2重量%〜43.7重量%であり、そして、グルコースの収率(%)(グルコースの理論収率に対するグルコースの収率)としても、53.9%〜60.1%と非常に高い値が得られた。

Claims (6)

  1. セルロースアセテートを、前記セルロースアセテートに対して重量基準で5倍量以上の水の存在下、反応系内の温度170℃以上200℃以下、圧力8.1kg/cm以上15.8kg/cm以下で分解してグルコースを得る、グルコースの製造方法。
  2. 前記反応系内の温度を下げることにより、前記セルロースアセテートの分解反応を停止する、請求項1に記載のグルコースの製造方法。
  3. 前記セルロースアセテートのアセチル総置換度が、0.1以上である、請求項1又は2に記載のグルコースの製造方法。
  4. 前記セルロースアセテートを分解する分解反応において、セルロースが存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のグルコースの製造方法。
  5. 前記セルロースアセテートは、
    セルロースをアセチル化し、加水分解して得られたものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のグルコースの製造方法。
  6. 前記セルロースアセテートは、
    セルロースを原料としてセルロースアセテートを製造する工程で生じる、廃棄セルロースアセテートである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のグルコースの製造方法。

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