JP6006853B1 - リグノセルロース系バイオマス中の発酵阻害物質低減装置および発酵阻害物質低減方法 - Google Patents
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Abstract
Description
前処理されたバイオマスは糖化槽に供給され、一般的に45〜55℃で酵素により糖化される。その後、糖化液は発酵槽に供給され、目的生産物が生産されるが、この時の温度は一般に45℃以下であることが多いため、糖化液を冷却することが必要となる。
特許文献2には、ポリスチレン系樹脂を用いて、発酵阻害物質を吸着または保持させて分離させる方法が開示されている。
特許文献3には、酵素による糖化工程を2回に分けて実施し、片方もしくは両方の糖化工程を真空環境下において実施する方法が開示されている。
(1)本発明のリグノセルロース系バイオマス中の発酵阻害物質低減装置は、糖化槽と発酵槽との間に、発酵阻害物質を低減させ、且つ、前記糖化槽で生成された糖化液及び糖化残渣を32℃以下に冷却するための真空ポンプを有する真空蒸発器を備えることを特徴とする発酵阻害物質低減装置である。
(2)さらに、前記真空蒸発器からの発酵阻害物質を含む蒸気の抜出配管と、前記抜出配管内に、発酵阻害物質を含む蒸気を気液接触させるための充填物と、を備える(1)に記載の発酵阻害物質低減装置である。
(3)さらに、前記抜出配管の先に、発酵阻害物質を含む蒸気を冷却し凝縮するためのコンデンサと、前記発酵槽後に、発酵液および発酵残渣を分離するための固液分離装置と、前記固液分離装置で分離された発酵残渣を糖化槽へ投入する装置と、前記発酵残渣に含まれる発酵生成物を回収するために、前記コンデンサで凝縮された液及び前記真空ポンプの吐出流体を蒸留塔に導入する装置と、を備える(2)に記載の発酵阻害物質低減装置である。
(4)低減される発酵阻害物質がフルフラールである(1)〜(3)のいずれか一つに記載の発酵阻害物質低減装置である。
(6)さらに、前記真空蒸発工程において抜出された発酵阻害物質を含む蒸気を充填物により気液接触させる工程を有する(5)に記載の発酵阻害物質低減方法である。
(7)さらに、前記気液接触工程において発酵阻害物質が濃縮された蒸気をコンデンサにより冷却し、凝縮する工程と、発酵液及び発酵残渣を分離する固液分離工程と、前記固液分離工程で分離された発酵残渣を糖化槽に投入する工程と、前記発酵残渣に含まれる発酵生成物を回収するために、前記コンデンサで凝縮された液及び前記真空ポンプの吐出流体を蒸留塔に導入する工程と、を有する(6)に記載の発酵阻害物質低減方法である。
(8)低減される発酵阻害物質がフルフラールである(5)〜(7)のいずれか一つに記載の発酵阻害物質低減方法である。
セルロースは、6つの炭素を構成単位として有するので、加水分解を受けると、炭素6つからなる六炭糖の単糖やその単糖が複数個連結された六炭糖のオリゴ糖を生ずる。一般に、単糖及び/またはオリゴ糖の構成比率や生成量は、前処理方法や原料として用いた農林産物資源、農林産物廃棄物及び農林産物加工品の種類によって異なる。
図1は、本発明の第一実施形態に係る発酵阻害物質低減装置の概略構成を示す図である。本実施形態の発酵阻害物質低減装置10は、糖化槽1と発酵槽3との間に、発酵阻害物質を低減させ、且つ、前記糖化槽で生成された糖化液及び糖化残渣を冷却するための真空ポンプ5を有する真空蒸発器2が配管を介して配設されている。
セルラーゼは、セルロースをグルコースに分解するものであればよく、エンドグルカナーゼ(EG)、セロビオヒドロラーゼ(CBH)及びβ−グルコシダーゼ(BGL)の各活性の少なくとも1つの活性を有するものを挙げることができ、これらの各活性を有する酵素混合物であることが、酵素活性の観点から好ましい。
同じくヘミセルラーゼは、ヘミセルロースをキシロース等の単糖に分解するものであればよく、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ及びアラビノフラノシダーゼの各活性の少なくとも1つの活性を有するものを挙げることができ、これらの各活性を有する酵素混合物であることが、酵素活性の観点から好ましい。
本発明において「酵素活性成分」とは、酵素混合物とした場合にはこれらの糖化酵素のそれぞれを意味し、単独の糖化酵素を用いた場合には、用いられる糖化酵素そのものを意味する。
これらセルラーゼ及びヘミセルラーゼの起源は限定されることはなく、糸状菌、担子菌、細菌類等のセルラーゼ及びヘミセルラーゼを用いることができる。
まず、糖化槽1に前処理済リグノセルロース系バイオマスと、水と、酵素とを投入し、糖化反応を行う。糖化工程において生成された糖化液および糖化残渣は、配管を介して真空蒸発器2に送られる。真空蒸発器2では、真空ポンプ5により真空環境となり、糖化工程において生成された糖化液および糖化残渣中に含まれる発酵阻害物質は水と共沸することで低減し、且つ、真空蒸発することで糖化液及び糖化残渣を冷却することができる。
このとき、低減される発酵阻害物質としては、揮発性を有する物質であり、例えば、フルフラールが好ましい。
図2は、本発明の第二実施形態に係る発酵阻害物質低減装置の概略構成を示す図である。本実施形態の発酵阻害物質低減装置20は、糖化槽1と発酵槽3との間に、真空ポンプ5を有する真空蒸発器2と、が配管を介して配設されており、さらに、真空蒸発器2からの発酵阻害物質を含む蒸気の抜出配管6と、抜出配管6内に、発酵阻害物質を含む蒸気を気液接触させるための充填物7と、が配設されている。
本実施形態の発酵阻害物質低減装置20は、抜出配管6と、抜出配管6内に充填物7と、が配設されている点で、図1に示す発酵阻害物質低減装置10と相違し、その他の構成は発酵阻害物質低減装置10と同じである。
なお、図2において、図1に示す構成要素と同一のものについては同じ符号を用いている。
真空蒸発工程が行われるところまでは、第一実施形態と同様である。真空蒸発工程において抜出された発酵阻害物質を含む蒸気は、抜出配管6から排出される。このとき、発酵阻害物質は、水よりも優先的に蒸発されるが、充填物7により気液接触させることで、発酵阻害物質の水に対する蒸発の優先度をさらに高めることができる。
図3は、本発明の第三実施形態に係る発酵阻害物質低減装置の概略構成を示す図である。本実施形態の発酵阻害物質低減装置30は、糖化槽1と発酵槽3との間に、真空ポンプ5を有する真空蒸発器2と、が配管を介して配設されており、真空蒸発器2の上部に抜出配管6と、抜出配管6内に充填物7とが配設されている。さらに、抜出配管6の先に、発酵阻害物質を含む蒸気を冷却し凝縮するためのコンデンサ8と、発酵槽3の後に、発酵液および発酵残渣を分離するための固液分離装置9と、固液分離装置9で分離された発酵残渣を糖化槽へ投入する返送管11と、発酵残渣に含まれる発酵生成物を回収するために、コンデンサ8で凝縮された液及び真空ポンプ5の吐出流体を蒸留塔に導入する配管12と、が配設されている。
本実施形態の発酵阻害物質低減装置30は、抜出配管6の先にコンデンサ8と、固液分離装置9と、返送管11と、配管12と、が配設されている点で、図3に示す発酵阻害物質低減装置20と相違し、その他の構成は発酵阻害物質低減装置20と同じである。
なお、図3において、図2に示す構成要素と同一のものについては同じ符号を用いている。
発酵液には、未反応の単糖及びオリゴ糖、並びに発酵生成物が含まれている。
発酵生成物とは、リグノセルロース系バイオマスから得られた単糖及びオリゴ糖を酵母が摂取することにより生成された化合物を意味し、例えば、エタノール、ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなどのアルコール、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、乳酸など有機酸、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、カダベリンなどのジアミン化合物などが好ましく、エタノールが最も好ましい。発酵によって得られた化合物が乳酸などのモノマーである場合は、重合によりポリマーに変換することもある。
発酵液は配管を介してポンプにより、蒸留塔13へ送液される。
気液接触工程を行うところまでは、第二実施形態と同様である。気液接触工程後、気液接触により発酵阻害物質が濃縮された蒸気をコンデンサ8により冷却し、凝縮されることで、糖化液中の発酵阻害物質が低減される。
また、真空蒸発工程を経た糖化液および糖化残渣は、発酵槽3へ酵母と共に投入され、発酵工程が行われる。このとき、糖化残渣中には酵素が含まれているため、糖化工程を同時に行ってもよい。発酵工程で得られた発酵液及び発酵残渣は固液分離装置9に投入され、分離する。分離された発酵液は、蒸留塔13へ送役され、次の蒸留工程に用いられる。一方、分離された発酵残渣は糖化槽に投入され、再利用される。上述の通り、発酵残渣には、未発酵の単糖及びオリゴ糖、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等が含まれており、リグニンには糖化酵素が吸着しているため、糖化工程において活用することができる。
また、発酵残渣には、発酵生成物の一部が混入しており、揮発性を有するアルコール等の発酵生成物は、真空蒸発工程において蒸発して、発酵阻害物質と共にコンデンサ8で凝縮された液及び真空ポンプ5の吐出流体に含まれる。従って、それら発酵生成物を回収する為に、コンデンサ8で凝縮された液及び真空ポンプ5の吐出流体をそれぞれ配管12a及び配管12bを介して蒸留塔に導入する。
フルフラールの低減量について、プロセスシミュレータPROII(インベンシス社製)を用いて、下記[表1]の条件により算出した。[表1]中、「Mixed」とは、液体と気体が混ざっている状態を示している。
したがって、濃縮糖化液(S3)のフルフラール量は125kg(=150kg−25kg)となり、濃縮糖化液中のフルフラール濃度は0.129重量%まで低減された。また、当初糖化液に含まれていたフルフラールのうち、約17%(=25kg/150kg×100)低減された。
フルフラールの低減量について、実施例1と同様にプロセスシミュレータPROIIを用いて、下記[表2]の条件により算出した。
フルフラールの低減量について、実施例1と同様にプロセスシミュレータPROIIを用いて、下記[表3]の条件により算出した。
Claims (8)
- リグノセルロース系バイオマス中の発酵阻害物質低減装置であって、
糖化槽と発酵槽との間に、発酵阻害物質を低減させ、且つ、前記糖化槽で生成された糖化液及び糖化残渣を32℃以下に冷却するための真空ポンプを有する真空蒸発器を備えることを特徴とする発酵阻害物質低減装置。 - さらに、前記真空蒸発器からの発酵阻害物質を含む蒸気の抜出配管と、
前記抜出配管内に、発酵阻害物質を含む蒸気を気液接触させるための充填物と、
を備える請求項1に記載の発酵阻害物質低減装置。 - さらに、前記抜出配管の先に、発酵阻害物質を含む蒸気を冷却し凝縮するためのコンデンサと、
前記発酵槽後に、発酵液および発酵残渣を分離するための固液分離装置と、
前記固液分離装置で分離された発酵残渣を糖化槽へ投入する返送管と、
前記発酵残渣に含まれる発酵生成物を回収するために、
前記コンデンサで凝縮された液及び前記真空ポンプの吐出流体を蒸留塔に導入する配管と、
を備える請求項2に記載の発酵阻害物質低減装置。 - 低減される発酵阻害物質がフルフラールである請求項1〜3のいずれか一項に記載の発酵阻害物質低減装置。
- リグノセルロース系バイオマス中の発酵阻害物質低減方法であって、
真空下で、糖化工程で生成された糖化液及び糖化残渣に含まれる発酵阻害物質を蒸発させて低減させ、且つ、前記糖化工程で生成された糖化液及び糖化残渣を32℃以下に冷却する真空蒸発工程を有することを特徴とする発酵阻害物質低減方法。 - さらに、前記真空蒸発工程において抜出された発酵阻害物質を含む蒸気を充填物により気液接触させる工程を有する請求項5に記載の発酵阻害物質低減方法。
- さらに、前記気液接触工程において発酵阻害物質が濃縮された蒸気をコンデンサにより冷却し、凝縮する工程と、
発酵液及び発酵残渣を分離する固液分離工程と、
前記固液分離工程で分離された発酵残渣を糖化槽に投入する工程と、
前記発酵残渣に含まれる発酵生成物を回収するために、前記コンデンサで凝縮された液及び前記真空ポンプの吐出流体を蒸留塔に導入する工程と、
を有する請求項6に記載の発酵阻害物質低減方法。 - 低減される発酵阻害物質がフルフラールである請求項5〜7のいずれか一項に記載の発酵阻害物質低減方法。
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