JP5322150B2 - セルロースを含むバイオマスの糖化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロースを含み、複数種類の糖質から構成されるバイオマスの総合的な糖化技術に関連するものである。本明細書における「糖化」とは、多糖やオリゴ糖などを可能な限り、グルコース、キシロース等の単糖にまで低分子化する工程を示し、製品としてのオリゴ糖の取得を目的として、適度に低分子化することを目的とした「部分加水分解」工程を示すものではない。
本発明は、バイオマス原料を、過分解を抑えた穏和な条件で希硫酸加水分解した後に、硫酸可溶性オリゴ糖を含む硫酸水溶液可溶性画分と、結晶性セルロースを含む不溶性画分に分離することを特徴とする。前者は、pH調整後に酵素固定化物に接触させることによりさらに糖化し、後者は濃硫酸処理後の希硫酸加水分解を含む工程により糖化する。
バイオ燃料への世界的ニーズの高まりに対応して、糖質系バイオマス由来のバイオエタノール製造技術開発競争が世界的規模で繰り広げられている。特に、食料資源と競合しないリグノセルロース系バイオマスの利用技術開発が、欧米のみならず我が国においても最も重要なブレイクスルーとなりうると考えられている。
また、バイオマス原料を単糖に変換することにより、石油化学原料に代わる化学原料を製造するための、いわゆるバイオリファイナリ技術を開発する際には、原料に含まれる多様な糖質資源を単糖として回収する工程が重要である。でん粉系原料をエタノールに変換する場合は、コスト、エネルギー効率およびLCA評価においても実用性が高いという評価を受けているが、リグノセルロース原料を用いた場合には研究開発の余地が大きいのが現状である。
また、馬鈴薯、甘藷、トウモロコシ、稲、ムギ、キャッサバ、サゴ等をホールプラントとして利用したり、砂糖やでん粉の大部分を簡単な工程で除き、残った部分をまとめて糖化したりする際には、砂糖やでん粉と繊維質を両方含む混合物からの簡単な糖化法の開発が求められる。
さらに、農産廃棄物や一次加工廃棄物等の原料を確保する段階で季節性が高いことが問題となり、工場の稼働日数が制限され、雇用の確保が不安定化することが懸念されている。特定の原料に拘らず、選定残渣や雑草、食品廃棄物等の原料が混入して材料がヘテロになった場合においても、安定的に周年稼働する糖化システムの開発が望まれている。
リグノセルロース原料の糖化技術としては、濃硫酸法、希硫酸二段階法、塩酸法などの酸糖化技術や、希硫酸爆砕法、中性水加熱処理法、アルカリ処理法などの化学前処理−酵素糖化技術などが注目されている。
特に、木質系バイオマス原料を用いて糖化を行う場合には、濃硫酸法または希硫酸二段階法が長く注目されてきた(非特許文献1参照)。
濃硫酸法は、セルロースを可溶化させる濃度の硫酸を原料に接触させたのち、全体を水で希釈し、その他の多糖も含めて単糖にまで希硫酸加水分解する方法である。
しかしながら、加水分解を受けやすいキシランなどの多糖を回収する際には、処理条件が過酷すぎることから過分解に注意が必要となる。フルフラールなどの過分解物は、エタノール発酵工程における阻害物質として知られており、その生成を抑えることが重要である。これまでに、予めヘミセルロースを回収するための前・前処理(希硫酸処理)が行われるような方法も考案されているが(鈴木宏之著「バイオマスの科学的転換利用とエンジニアリングアプローチ」、武田書店、H12年発行)、多様なヘミセルロース、ペクチン、でん粉等の多糖を含む単数または複数の原料を用いる場合には、過分解を抑えつつ単糖の収率を最大にするよう原料組成別に処理条件を最適化する必要が生じる。また、濃硫酸処理によってセルロースを可溶化した後には、硫酸濃度を下げて加水分解を行う必要があり、回収・再利用すべき硫酸の濃度が低くなり、その濃縮・再利用工程にエネルギーを消費するという欠点がある。さらに、糖液を分離回収した後には中和を行う必要がある。
希硫酸二段階法は、加水分解を受けやすいヘミセルロースなどの多糖を先に分解し、その後に条件をきつくして、セルロースを加水分解するという方法である。
しかしながら、この方法では、一段階目での加水分解で単糖にまで加水分解することから、糖の種類によっては過分解が起こる可能性に注意をする必要がある。また、二段階目では、希硫酸加水分解の条件をやや強くして、セルロースからグルコースを製造しているが、反応条件が過酷であることから、過分解を抑制する段階で反応を停止する必要が生じ、セルロース由来のグルコース収率が低くなる。さらに、一段階目の希酸加水分解における糖化液と二段階目の希酸加水分解における糖化液は、別々に中和する必要があり、結果的に多量の薬液を使用することとなる。
草本系バイオマスについては、セルロースが剥き出しになりやすいことから、酵素を用いた、希硫酸爆砕法、水蒸気爆砕処理法、アルカリ処理法などの前処理−酵素糖化技術などが注目されている。それぞれ、前処理後に固形物として生成する、セルロースの酵素糖化を主糖化工程と位置づけている。
しかしながら、加水分解を受けやすい細胞壁多糖、セルロースの非晶部分、絞りかす中の砂糖、でん粉の一部などは、処理工程において可溶化することとなり、その一部は過分解されてしまい、その効率的な回収が困難となる。酸性条件下における水蒸気爆砕法による前処理については、セルロースの酵素糖化効率を向上させるが、スケールアップ時の設備コストや硫酸による高圧処理装置の腐食が問題となるとともに、先に述べた過分解の問題が残る。コーンストーバを熱水前処理し、キシランを中心としたヘミセルロースの単糖への分解を行いつつ可溶化率を最大にして、過分解を抑えるという考え方は文献(非特許文献2参照)で発表されているが、pH調整が不要という熱水前処理を用いた利点を活かしたものであり、希硫酸処理法については、可溶化率を指標とした検討は行われていない。
また、希酸前処理により可溶化糖質を回収し、これを基質として固定化酵素を用いて糖化を行い、酵素利用効率を向上させるという糖化方法については試みられていない。
バイオマス中には、加水分解特性の異なる複数種類の糖質が存在していることが一般的である。多糖の特性に応じて単糖にまで加水分解する工程を最適化させるのは極めて困難であり、また、季節性をもつ草本系バイオマス原料を複数利用することを考慮する際には、原料の変化にも対応できる、汎用性の高いシステムを構築することが必要となる。
さらに、酵母が資化できるグルコース、ガラクトースなどの他に、細胞壁多糖の構成成分であるキシロース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノースなども回収することにより、新たな変換技術の適用範囲を拡げることが可能となる。
鈴木宏之著「バイオマスの科学的転換利用とエンジニアリングアプローチ」、武田書店、H12年発行 Mosier Nathanら、Bioresour. Technol., 96, 1986-1993(2005)
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、セルロースを含み、複数種類の糖質から構成されるバイオマスを、可能な限り、グルコース、キシロース等の単糖にまで、過分解を抑制しつつ、しかも効率よく低分子化する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(1)稲わらや他のバイオマスを用いて、硫酸濃度1wt%の硫酸水溶液で処理し、固定化酵素で加水分解することにより、還元糖が得られること、(2)稲わらを硫酸水溶液で処理し、残渣を濃硫酸で処理することにより、グルコースを回収できること、及び(3)先の回収液を再利用して、反応液から再利用前に含まれていた糖を加水分解物として得られることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)セルロースおよびそれ以外の多糖を含むバイオマスに対して、硫酸濃度0.1wt%以上5wt%以下の硫酸水溶液を加え、80℃以上121℃以下の条件で1分から3時間加水分解した後に固液分離し、遊離オリゴ糖を含む液画分と、結晶性セルロースを含む不溶性画分と、に分離し、前記遊離オリゴ糖を含む液画分を、pH調整後に酵素固定化物と接触させて酵素加水分解する、という一連の工程を含むこと;並びに、
前記結晶性セルロースを含む不溶性画分を、硫酸濃度65wt%以上の硫酸水溶液と接触させることにより、セルロースを部分分解物として可溶化後、硫酸水溶液とセルロース部分分解物を分離して、分離されたセルロース部分分解物を、希硫酸により加水分解し糖化する、という一連の工程を含むこと;
を特徴とする、バイオマスの糖化方法である。
(2)前記(1)記載の方法において、セルロース部分分解物を吸着素材に吸着させることにより硫酸水溶液と分離した後に、吸着素材から溶出させた、希硫酸セルロース部分分解物を含む溶液を、第一段階の希硫酸加水分解の際の希硫酸供給源の少なくとも一部として用いる工程を含むことを特徴とする、バイオマスの糖化方法である。

本発明によれば、セルロースを含み、複数種類の糖質から構成されるバイオマスを、可能な限り、グルコース、キシロース等の単糖にまで、過分解を抑制しつつ、しかも効率よく低分子化する方法が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明はバイオマスの糖化方法に関し、セルロースおよびそれ以外の多糖を含むバイオマスに対して、硫酸濃度0.1wt%以上5wt%以下の硫酸水溶液を加え、80℃以上150℃以下の条件で1分から3時間加水分解した後に固液分離し、遊離オリゴ糖を含む液画分は、pH調整後に酵素固定化物と接触させて酵素加水分解し、また、不溶性画分に残存する糖は、適宜、硫酸濃度65wt%以上の硫酸水溶液によるセルロース可溶化後、硫酸水溶液とセルロースを分離して、分離したセルロースを希硫酸を用いた糖化方法により加水分解するというものである。
本発明におけるバイオマスとは、再生可能な、生物由来の有機性資源のうち化石資源を除いたものである。セルロースを含むバイオマスとしては、農作物、樹木、雑草等の高等植物、海藻類のほか、産業上の目的等により、それらに対して分離処理、混合処理、物理学的、化学的または生物学的処理等を施した資源が挙げられる。例えば、植物としてのダイズ、その一部分である大豆(種子)、ダイズの茎葉や根、大豆をゆでて圧搾して絞った豆乳、絞りかすのオカラはいずれもバイオマス原料である。
本発明におけるバイオマス原料としては、セルロースの他に、でん粉、ヘミセルロース、ペクチンなど、セルロース以外の多糖を含むものが用いられる。
セルロースおよびそれ以外の多糖を含むバイオマス原料としては、例えば稲、稲わら、籾殻、麦、麦わら、トウモロコシ、コーンストーバ、バガス、その他の単子葉植物茎葉、竹、芋、豆、サゴヤシ、双子葉草本植物茎葉、広葉樹材、針葉樹材、キャッサバ絞りかす、製紙スラッジ、古紙、濾紙粉末セルロースなどが挙げられる。
セルロース及びでん粉を両方蓄積するバイオマス原料としては、例えば稲、芋、トウモロコシ、豆、サゴヤシ、麦等が挙げられる。
セルロース及び砂糖(ショ糖)を両方蓄積するバイオマス原料としては、例えばサトウキビ、ビート、ソルガム等が挙げられる。これら植物系バイオマス原料は、植物体の全部を用いても、種子、茎、葉、根など一部のみを用いても良い。
バイオマスとしては、でん粉を含み、一回または複数回のでん粉分離後の残渣を用いることができる。
また、バイオマスとしては、ショ糖を含み、一回または複数回のショ糖搾汁後の残渣を用いることができる。
なお、これらバイオマス原料は、1種類を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
特に、本発明では、希酸加水分解によりセルロース以外の易分解性糖質を可溶化することを特徴としていることから、広範な原料の糖化工程として対応可能となる。
バイオマス原料は、腐敗性の高いものも存在する。そのような場合、乾燥により湿度を下げる、乳酸発酵を行う、希硫酸などの酸を噴霧・浸漬させてpHを低下させる、低温保存するなどの方法により、微生物汚染や糖質の分解を抑えつつ貯蔵することが可能となる。また、原料の表面積を増し、希硫酸液を迅速に浸透させるとともに、可溶性糖質の遊離を迅速に行うため、原料を乾式あるいは湿式で粉砕処理することが望ましい。
本発明においては、セルロースおよびそれ以外の多糖を含むバイオマスに対して、硫酸濃度0.1wt%以上5wt%以下の硫酸水溶液を加え、80℃以上150℃以下の条件で1分から3時間加水分解する、希硫酸加水分解工程を行う。
本発明における希硫酸加水分解工程は、先述した希硫酸二段階法において一段階目に行われる加水分解とは異なり、加水分解を受けやすい糖を希硫酸で加水分解する際に、その一部または全部を可溶性オリゴ糖として回収することを特徴とする。加水分解を受けやすい糖としては、でん粉、砂糖、可溶性オリゴ糖、ヘミセルロース、ペクチンなどが挙げられる。
易分解性糖質を希酸加水分解する際には、糖質は、可溶化→単糖への分解→過分解(フルフラール類やタールへの変換)という経路により変換される。これまでの希硫酸加水分解条件は、単糖の回収を最大限にするように決定されていたが、この方法では、加水分解特性の異なる複数の易分解性糖質に対して条件の最適化を行うことが極めて困難となる。
それに対して、本発明においては、液相に易分解性糖質やその部分分解物を一旦回収することが目的であることから、主要な易分解性糖質を対象として、「可溶化→単糖への分解」の間の広い条件範囲を反応条件として設定することが可能となり、主要な易分解性糖質の殆どが可溶化する条件を探索することができる。
希硫酸加水分解を行う際の硫酸濃度は、バイオマス原料の種類により異なるが、0.1wt%から5wt%、好ましくは0.5wt%から5wt%、より好ましくは1wt%から5wt%の範囲に入るようにすべきである。濃度が低い場合、多糖の可溶化効率が低下し、反応温度や圧力を過酷にする、反応時間を長くするなどの条件設定が必要となる。また、5wt%を超える濃度では、試薬の中和コストが高くなり、変換費用全体に及ぼす影響が大きくなる。
反応温度や圧力、反応時間などの条件は、バイオマス原料の種類や硫酸濃度により変化するので、一義的に決定することは困難であるが、反応温度80℃以上150℃以下、反応時間は加温時間を含めて1分から3時間の範囲が望ましい。
例えば、ビートパルプ、ポテトパルプなどのリグニン沈着度が低い原料の場合、反応は100℃程度でも十分に進行する。100℃で1時間程度の加水分解反応を行う場合、耐圧容器を用いる必要がないことから、開放形容器を使用することができ、これにより設備投資費用を抑えて作業安全性を向上することが可能となる。その一方で、スギ粉末、ナラ粉末などの木粉を原料とした場合、リグニン沈着度が大きいことから、収率を上げるためには、適宜、耐圧・耐酸容器を用いて、100℃以上150℃以下程度の比較的過酷な条件下で処理することが望ましい。
上記第一段階の加水分解反応では、糖を単糖として回収する必要がないことから、反応条件は穏やかなものとなるのみならず、反応槽の設備費や酸の使用を抑制し、単糖の過分解反応を抑えるという利点を生む。
本発明においては、上記第一段階の加水分解反応を行った後に、固液分離し、遊離オリゴ糖を含む液画分は、pH調整後に酵素固定化物と接触させて加水分解する。また、不溶性画分に残存する糖は、適宜、硫酸濃度65wt%以上の硫酸水溶液によるセルロース可溶化後、硫酸水溶液とセルロースを分離して、分離したセルロースを希硫酸を用いた糖化方法により加水分解する
ここで、固液分離は、遠心分離などにより行えばよく、例えば20,300×gで3分間程度遠心分離すればよい。
固液分離して得られる、遊離オリゴ糖を含む液画分は、pH調整後に酵素固定化物と接触させて加水分解する。
即ち、固液分離して得られた可溶性オリゴ糖は、固定化酵素の反応性および安定性を考慮し、pH4から9、好ましくはpH4から6の範囲になるように中和した後に、固定化酵素と接触させることにより、単糖にまで加水分解を行う。
pHの中和は、イオン交換樹脂を用いる方法、石灰、アンモニアなどのアルカリを用いる方法、電気透析を行う方法などが考えられる。
可溶性オリゴ糖と酵素の反応は液−液反応となることから、酵素を固定化したバイオリアクターの使用により酵素費用を抑えることが可能となる。特に、複雑な構造のヘミセルロースやペクチンを効率的に酵素分解するためには、原料特性に対応させて複数の酵素を混合したカクテルを用いる必要があるが、1回の使用を想定して酵素カクテルを安定供給することは極めて困難であり、原料に対応した最適化酵素カクテルの製造コストは極めて高いものとなる。セルロースを加水分解した際にセロオリゴ糖が残存することは知られており、酵素反応阻害を抑制したり、単糖収率を向上したりするためにβ−グルコシダーゼを固定化して用いる方法については検討されてきたが(Tuら、Biotechnol. Lett., 28, 151-156 (2006))、希酸加水分解による易分解性多糖からのオリゴ糖の生成は想定しておらず、固定化酵素を用いてリグノセルロース系バイオマスの易加水分解性多糖に注目した糖化を行ったことはない。
本発明では、反応条件を穏やかにするために、単糖の生成量にこだわらず、可溶性画分の収量を最適化させることを特徴としており、本プロセスは固定化酵素を用いることにより最も効率化する。
固定化すべき酵素については、例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、α−D−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、グルコマンナナーゼ、β−D−キシロシダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、α−L−アラビノフラノシダーゼ、α−D−グルクロニダーゼ、β−L−アラビノフラノシダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、フェルロイルエステラーゼ、β−グルカナーゼ、β−ガラクタナーゼ、アラビナナーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクトリアーゼ、α−D−ガラクツロナーゼ、α−D−ガラクトシダーゼ、エンドグルカナーゼ、セロビオハイドロラーゼI、セロビオハイドロラーゼIIなどが挙げられる。その他にも、例えば、フラクタンを含むキクイモをバイオマス原料とした際に、フラクタン分解酵素を固定化して用いることにより糖化が効率化するように、原料に含まれる糖の特性により、用いるべき酵素カクテルの組成が異なる。
ここでバイオマスがでん粉を含んでいる場合には、酵素固定化物に固定化する酵素としては、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、α−D−グルコシダーゼの少なくとも一つを含んでいることが好ましい。
また、バイオマスがヘミセルロースを含んでいる場合には、酵素固定化物に固定化する酵素としては、キシラナーゼ、グルコマンナナーゼ、β−D−キシロシダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、α−L−アラビノフラノシダーゼ、α−D−グルクロニダーゼ、β−L−アラビノフラノシダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、フェルロイルエステラーゼ、β−グルカナーゼ、β−ガラクタナーゼのうち、少なくとも一つを含んでいることが好ましい。
次に、バイオマスがペクチンを含んでいる場合には、酵素固定化物に固定化する酵素がアラビナナーゼ、α−L−アラビノフラノシダーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクトリアーゼ、α−D−ガラクツロナーゼ、α−D−ガラクトシダーゼのうち、少なくとも一つを含んでいることが好ましい。
さらに、バイオマスがセルロースなどのβ-グルカンを含んでいる場合には、酵素固定化物に固定化する酵素がエンドグルカナーゼ、セロビオハイドロラーゼI、セロビオハイドロラーゼII、β−グルコシダーゼのうち、少なくとも一つを含んでいることが好ましい。
これらの酵素として、食品グレード、飼料グレード等の安全性が担保された酵素を用いることにより、糖液や糖化後の廃液等の利用・処理を行う際の受容性が確保できるものと考えられる。
バイオリアクターによる反応方法としては、酵素を固定化したカラムに糖液を流す方法や、酵素を固定したビーズを加えた反応槽内で糖液と接触させる方法などが考えられる。
酵素固定化物と接触させての加水分解の条件は、用いる酵素の種類等により異なり、一義的に決定することは困難であるが、通常、反応温度37℃〜50℃程度、反応時間は0.5時間から4時間の範囲である。
上記したように、本発明では、希硫酸加水分解を行った後に、可溶性の糖を含む液相と、不溶性の糖を含む固相とを分離する。
そして可溶性の糖を含む液相、つまり遊離オリゴ糖を含む液画分は、上記したように、pH調整後に酵素固定化物と接触させて単糖にまで加水分解する。
一方、結晶性の高いセルロースは、希硫酸加水分解条件でオリゴ糖にまで加水分解されず、固相に留まることとなる。
そのため、本発明では、固液分離後に反応条件を変えて固相画分から糖を可溶化させて回収する必要がある。
本発明では、セルロースを主体とする固相から糖を得るために、濃硫酸法の改良法を用いる。
濃硫酸法は、ある程度乾燥した原料を室温前後の温度で65wt%以上の濃度の硫酸と接触させることにより、セルロース鎖などの不溶性多糖を膨潤・加水分解させる工程である。木材チップなどの原料に濃硫酸を噴霧する方法も知られている(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構『開発項目「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発/セルロース系バイオマスを原料とする新規なエタノール発酵技術等により燃料用エタノールを製造する技術の開発』平成13年度〜平成17年度成果報告書」、平成18年3月)。これに水を加えて希釈する際に加水分解が起こり、多糖はさらに低分子化し、適宜、加熱することにより単糖にまで加水分解される。単糖と硫酸の分離は、通常のイオン交換カラムクロマトグラフィーのほか、擬似移動層を用いたイオン交換カラムクロマトグラフィーなどを用いることにより連続的に行うことができる。
しかしながら、先述したとおり、大量の希硫酸が副生することとなり、その回収・濃縮工程にコストがかかることが問題となる。
そこで、本発明では、65wt%以上の濃度の硫酸水溶液存在下で可溶化したセルロースのみをリグニンや硫酸と分離・回収する技術を適用し、セロオリゴ糖などの部分分解物の形で回収されたセルロースを酸により単糖にまで糖化することとした。
このような部分分解物の回収法としては、65wt%以上の濃度の硫酸水溶液中で可溶化したセルロースと親和性を有する素材にセルロースを吸着させ、次いで硫酸濃度を低下させて回収する方法を利用することができる。
具体的には例えば、活性白土などの、高濃度硫酸存在下でセルロース部分分解物を吸着する素材を用いて行うことが可能である。
ここでセルロース部分分解物を吸着する素材としては、鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物を有効成分とするものが用いられ、具体的には例えば活性白土などを挙げることができる。
活性白土など、鉱物の酸処理工程を経て調製された無機物を有効成分とする、セルロース部分分解物を吸着する素材は、単糖との結合性が低いことから、容易に単糖が解離して、希硫酸溶液の方に遊離することになる。
65wt%以上、好ましくは72wt%以上の濃度の硫酸水溶液中で、可溶化したセルロースと親和性を有する素材を用いてセルロースを該素材に吸着させ、硫酸水溶液とセルロース部分分解物(可溶化糖)とを分離した後に、硫酸水溶液の濃度を可能な限りに低下させることにより、セルロースを該素材から溶出させる。
このセルロース部分分解物について、さらに希硫酸により、加水分解する。希硫酸加水分解を行う際の硫酸濃度、反応温度、圧力、反応時間などの条件は、第一段階での希硫酸加水分解と同様である。部分分解を受けて結晶性が大幅に低下したセルロースまたはオリゴ糖は、希酸により速やかに分解される。
この工程により回収される硫酸の濃度は高い状態となり、再利用のための濃縮コストが抑制できる。
後者の方法により可溶化物として回収したセルロースは、上記したように、希硫酸により加水分解を行い、単糖にまで加水分解することができる。
また、硫酸の濃度を下げて活性白土等の吸着材料から溶出させた、セルロースと希硫酸の両方を含む液(希硫酸の残るセルロース部分分解物の溶液)は、第一段階における希酸加水分解時の酸として利用することが可能である。
この場合、第一段階における希酸加水分解工程で、セルロースの部分分解物も低分子化されることとなる。カラムにセルロース分解酵素系を固定化することにより、グルコースの収率はさらに向上する。
この方法により、二段階の工程から得られる硫酸の中和工程を効率化することが可能となり、希硫酸二段階法などのように、ヘミセルロース画分からの糖液とセルロース画分からの糖液を別々に中和する工程を改良することができる。
このような、濃硫酸の希釈を最低限に抑えて、セルロースを多糖または部分分解物として回収することを特徴とした総合的糖化システムはこれまでに提案されていない。
既知の濃硫酸法と同様に、本発明においても、濃硫酸処理前に固相部分の脱水を行い、含水率を制御することにより、濃硫酸が効果的に作用するように条件を制御することが望ましい。また、副生成物として得られるリグニンについては、脱水ケーキとして燃料に回す等の処理技術を用いることが可能である。
本発明は、複数種類のバイオマス中の多糖を高い効率で回収するために適している工程である。でん粉絞りかすに残存するでん粉の一部は、細胞壁中に残存し、中性条件での加熱では溶出しにくい。その一方で、残存でん粉は、希酸中で加熱することにより効率的に遊離する。
このように、本発明は、でん粉を含む原料や植物体全体の変換にも適している。絞りかす中に残存する砂糖についても、細胞壁成分の希硫酸分解の進行に伴い撹拌が内部にまで進み、それに伴って溶出することから、効率的に可溶性糖質の回収を行うことができる。このように、多様な原料に対応する反応方法であることから、季節性の高い農産物残渣や一次加工残渣などの発生に柔軟に対応することができる。
ホールクロップとしてのバイオマスや資源作物などを効率的に糖化する際には、先にでん粉や砂糖の大部分をバイオマスから分離することにより、純度の高い発酵性グルコースやショ糖として回収することができる。
例えば、穀粒を付けたイネ全体を利用する際には、全体を粉砕して、本発明の方法により全量を糖化するか、あるいは、穀粒の部分を乾式粉砕あるいは湿式粉砕により磨り潰してでん粉粉末として分離・回収した後、籾殻などの粉砕残渣を茎葉とともに本発明の方法で糖化することにより、リグノセルロース由来の糖とともに、残存するでん粉由来の糖質の回収が可能となる。
後者の方法で最初に分離したでん粉は、公知の酵素糖化技術などを活用して糖化することにより、効率的に糖化を行うことができる。工業的なでん粉や砂糖回収工程では、数回にわたる糖の回収を行い、高い収率を得るのが一般的であるが、その回数に応じて使用液量や処理コストなどが向上する。
バイオマス原料全体の総合利用を目的とした本発明における糖化工程では、でん粉・砂糖回収工程を省略あるいは簡素化することによりコストを抑えるとともに、細胞壁部分に残存するでん粉や砂糖は、希硫酸処理を行うことにより、細胞壁構成糖ととともに糖化・回収することができる。
上記のようにして、バイオマスを糖化することができる。
このようにして得られた糖化物に、エタノール生産菌を加えて発酵させることにより、エタノールを製造することができる。エタノール生産菌としては、エタノールの生産に通常使用されているものを用いることができる。具体的には、例えばサッカロミセス・セレビシエなどが挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1(各バイオマス原料の希硫酸処理後の中和物に対する固定化酵素処理効果)
1.5 ml容のプラスチック製開放形容器に、稲わら粉砕物、ポテトパルプ粉末、ビートパルプ粉末またはキャッサバでん粉絞りかすを各々10.0 mgとり、1wt%硫酸水溶液を加えて閉栓し、ボルテックスミキサーで撹拌した後に100℃のヒートブロック中で1時間加水分解を行った。その後、20,300×gで3分間遠心分離を行い、別の容器に上澄部分0.5 mlを移した。これを微量の1 N水酸化ナトリウム水溶液で中性付近に中和して中和試料とした。
これとは別に、50 ml容ファルコンチューブへ1 Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を10 ml入れたものを2本用意した。1本には3 mgのViscozyme L(ノボザイム・ジャパン社)と3 mgのPectinex Ultra SP-L(ノボザイム・ジャパン社)を加え、もう1本には20.8 mgのアミログルコシダーゼ(A9228, SIGMA社)と20.3 mgのα-アミラーゼ(A-6380, SIGMA社)を加えた(それぞれPV, AAとした。)。
続いて、それぞれに500 mgの固定化酵素製造用樹脂(オイパーギットC、(株)樋口商会)を加えて、室温で36時間、軽く振とうした。
その後、各々の溶液部分を廃棄し、樹脂部分を冷水40 mlで5回洗った後、100 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に懸濁して8 mlとした。
PVの懸濁液をエッペンドルフチューブに200 μlとり、これに1wt%硫酸で100℃、1時間処理した稲わら(Straw)、ポテトパルプ(PP)あるいはビートパルプ(BP)の反応液上澄み部の中和物を200 μl加え、37℃で1時間、毎分12回転で反応を行った。
コントロール(Control)としては、懸濁液200 μlの代わりに100 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を200 μlを入れたものに、各中和物を加えた試料を用いた。
同様に、AAの懸濁液については、キャッサバでん粉絞りかす(Cassava)の中和試料を200 μl用いた。
反応後、上澄み液中の還元糖量を、グルコースを標準物質としたソモギ・ネルソン法で定量した。結果を表1に示す。
また、反応後、樹脂と反応液の入ったエッペンドルフチューブを遠心分離して上澄み部を除去した後に、沈殿部に残存する樹脂に対して1 mlの50 mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を加え、軽くボルテックスミキサーで撹拌し、遠心分離して上澄みを捨てるという作業を6回繰り返し、樹脂を洗浄した。その後、同緩衝液を加えて200 μlとした後に、これを用い、上述した、各バイオマス原料由来の中和物と反応させる実験を再度実施した。その結果を表1に示す。
表1の結果によれば、各原料から希硫酸処理後に可溶化した糖質は、固定化酵素の作用により還元糖量が増加し、固定化酵素が有効に作用していることが示唆された。また、その効果は、酵素反応後の酵素固定化樹脂を緩衝液で洗浄し、再利用しても酵素活性が維持されていた。
Figure 0005322150
実施例2
稲わら粉末を3.00 g量り取り、これを100 ml容ガラス瓶に入れて、5wt%硫酸を30 ml加えた後、121℃、60分処理した。
これを常温に戻した後、イオン交換水を用いて100 mlにメスアップした。これを懸濁させて3.33 mlとり、15 ml容ファルコンチューブに入れた後、遠心分離により上澄み部を除去し、沈殿部を60℃で12時間乾燥した。
これに、室温下で1 mlの72wt%硫酸を加え、ボルテックスミキサーによる撹拌およびガラス棒を用いた懸濁を行いつつ、1時間処理した。
これを遠心分離にかけた上澄み部を用い、スピンカラム(UFC30LG00、ミリポア社)中に入れて4700×gで遠心分離し、濾液を800 μl回収した。
この濾液を200 μlずつ、150 mgの風乾状態の活性白土をフィルターの上に置いた同スピンカラム4本に分注して、室温で15分間静置した後、4700×gで30分間遠心分離を行った。その濾液(濾液A、総量571 μl)を除いた後、各スピンカラムに対して、200 μlのイオン交換水を加えて、同様に室温で15分静置した後に、4700×gで30分間遠心分離を行った。濾液を回収した後(濾液B、総量730 μl)、濾液Bの100 μlを5.00 mgの稲わら粉末と混合し、さらに400 μlのイオン交換水を加えたもの(試料1)、濾液100 μlに対して400 μlのイオン交換水を加えたもの(試料2)、そして5.00 mgの稲わら粉末に500 μlのイオン交換水を加えたもの(試料3)を用意し、ボルテックスミキサーで撹拌後、100℃で60分間反応した。その後、遠心上澄部の一部を中和し、ソモギ・ネルソン法によりグルコースを標準物質として還元糖を定量した。
その結果、試料1では9.44 μmolの還元糖が生成したのに対して、試料2では1.62 μmol、試料3では0.91 μmolの還元糖がそれぞれ生成した。このように、濃硫酸処理後に回収された、希酸を含む糖液を再利用し、稲わら粉末の希酸加水分解を行うことができた。
実施例3
稲わら粉末を3.00 g量り取り、これを100 ml容ガラス瓶に入れて、5wt%硫酸を30 ml加えた後、121℃、60分処理した。
これを常温に戻した後、イオン交換水を用いて100 mlにメスアップした。これを懸濁させて3.33 mlとり、15 ml容ファルコンチューブに入れた後、遠心分離により上澄み部を除去し、沈殿部を60℃で36時間乾燥した。
これに、室温下で1 mlの72wt%硫酸を加え、ボルテックスミキサーによる撹拌およびガラス棒を用いた懸濁を行いつつ、1時間処理した。
これを遠心分離にかけた上澄み部をスピンカラム(UFC30LG00、ミリポア社)に入れて4700×gで遠心分離し、濾液を回収した(濾液1)。
この濾液200 μlを、150 mgの活性白土をフィルターの上に置いた同スピンカラムに加えて、室温で15分間静置した後、4700×gで30分間遠心分離を行った。その濾液(濾液2、総量134 μl)を回収した後、スピンカラムに対して200 μlのイオン交換水を加えて、同様に室温で15分静置した後に4700×gで30分間遠心分離を行った。その濾液を濾液3として回収した(178 μl)。さらに、同様に200 μlのイオン交換水を加えて同様に室温で15分静置した後に4700×gで30分間遠心分離を行う操作を繰り返し、濾液を回収した(濾液4、154 μl)。濾液1および2はイオン交換水で8倍に希釈し、濾液3はイオン交換水で2倍に希釈し、濾液4は等量の72wt%硫酸と6倍量のイオン交換水を加えることにより、加水分解試料を調製した。これらを100℃で60分間加水分解反応して、中和後に生成したグルコース量をグルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて定量した。
その結果、200 μlの濾液1から11.5 μmolのグルコースが生成し、それに対応する量の濾液2、濾液3および濾液4からは、それぞれ、0.97 μmol、5.29 μmolおよび2.09 μmolのグルコースが生成した。それぞれの濾液の加水分解が定量的に行われていると仮定した場合、濾液1から得られるグルコース残基の64%がイオン交換水溶出液中に存在し、希硫酸処理によりグルコースに変換されることが示唆された。
本発明は、草本系および木質系リグノセルロース系バイオマスの糖化工程におけるブレイクスルーとなることが期待される。
また、本発明は、リグノセルロースのほかに糖質や澱粉を含む、ホールクロップとしてのバイオマスあるいは資源作物から糖質・でん粉を粗く回収した後の糖質含量やでん粉含量の高い原料などに対する、効率的な糖化技術の開発に繋がるものと考えられる。
バイオマス中には、加水分解特性の異なる複数種類の糖質が存在していることが一般的である。
多糖の特性に応じて単糖にまで加水分解する工程を最適化させる技術として、本発明は高い有効性を発揮する。
また、季節性をもつ草本系バイオマス原料や食品廃棄物等を複数利用することを考慮する際には、原料の変化にも対応できる、汎用性の高い総合的糖化システムを提案できる。
さらに、本発明では、希硫酸と糖質加水分解酵素を用いた穏和な反応を想定しており、副産物の利用や廃棄物処理を考慮した際には、環境影響が低く、受容性が高い利用・処理方法を提供できることが期待される。
糖化産物は最終的に弱酸性から中性pH条件で製造されることから、既知の六炭糖、五炭糖あるいはウロン酸を原料とした発酵工程を経てエタノール等の有用物質への変換が可能となる。
本発明により、反応条件が穏和な地域型エネルギー生産プロセスやバイオリファイナリープロセスが開発されることが期待される。

Claims (2)

  1. セルロースおよびそれ以外の多糖を含むバイオマスに対して、硫酸濃度0.1wt%以上5wt%以下の硫酸水溶液を加え、80℃以上121℃以下の条件で1分から3時間加水分解した後に固液分離し、遊離オリゴ糖を含む液画分と、結晶性セルロースを含む不溶性画分と、に分離し、前記遊離オリゴ糖を含む液画分を、pH調整後に酵素固定化物と接触させて酵素加水分解する、という一連の工程を含むこと;並びに、
    前記結晶性セルロースを含む不溶性画分を、硫酸濃度65wt%以上の硫酸水溶液と接触させることにより、セルロースを部分分解物として可溶化後、硫酸水溶液とセルロース部分分解物を分離して、分離されたセルロース部分分解物を、希硫酸により加水分解し糖化する、という一連の工程を含むこと;
    を特徴とする、バイオマスの糖化方法。
  2. 請求項1記載の方法において、セルロース部分分解物を吸着素材に吸着させることにより硫酸水溶液と分離した後に、吸着素材から溶出させた、希硫酸セルロース部分分解物を含む溶液を、第一段階の希硫酸加水分解の際の希硫酸供給源の少なくとも一部として用いる工程を含むことを特徴とする、バイオマスの糖化方法。
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