JP5311548B2 - 稲の糖化法 - Google Patents

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Description

本発明は、稲を原料とした糖の回収方法に関するものである。
バイオ燃料への世界的ニーズの高まりに対応して、糖質系バイオマス由来のバイオエタノール製造技術開発競争が世界的規模で繰り広げられている。特に、食料資源と競合しないリグノセルロース系バイオマスの利用技術開発が、欧米のみならず我が国においても最も重要なブレイクスルーとなりうると考えられている。
リグノセルロース系バイオマスの糖化技術開発は200年の歴史を有しているが、現在、再び活発化している。特に、酸糖化を中心に展開した糖化技術に代わり、セルラーゼを中心とした酵素糖化技術が高い期待を集めている。しかしながら、一般的に、リグノセルロース系バイオマス中の糖質は複雑な構造をとる細胞壁中に埋め込まれており、糖化に先立ち、苛酷な条件による前処理によって糖質を分離する必要がある。そのため、変換コストが大きくなり、細胞壁中の糖質を糖化して加工原料とするプロセスは、現時点で経済的に独立していない。
農産廃棄物としての主要な草本系バイオマス原料として、稲わらが挙げられる。稲わらを原料とした効率的糖化技術の開発については、我が国や米国、中国、韓国、ベトナム、タイなどで、農業政策とバイオマス政策とを一体的に考慮することが可能であり、現在、高い期待を集めているところである。我が国でも、農産廃棄物資源として最も豊富な稲わらを原料とした、国産バイオ燃料製造技術の開発は喫緊の課題となっている。また、ホールプラント原料としての稲植物体全体の糖化技術が完成した場合、農業構造改革上の高い有効性を発揮することが期待される。
稲を糖化する際には、圃場から収穫したものを原料として用いるが、一般的には、植物体地上部を回収後、適宜、脱穀したり、さらに回収時・梱包時の嵩を抑えるために裁断したものを前処理・変換に供することとなる。
稲わらをはじめとする草本系植物細胞壁の回収に用いる農業機械としては、ノッタ(結束装置)がある。これは稲用コンバインに付随するもので、稲わらの後利用向けに、切断なしに結束して後方に落下させる装置がついている。また、トラクターで牽引しながら、コンパクトベーラで稲わらをすくい上げ角型に成型し、ロールベーラ紐を巻付けて放出するタイプの方式も知られている。同様に、ロールベーラと称する円柱状に成型・梱包する機械も存在し、最後にベールラッパでロールベールをラップするフィルムで密封する作業機も使用されている(非特許文献1参照)。また、コメの収穫後、藁部分または稲の地上部全体を回収・保存するために、藁を束にした後に行う天日干し、ロールベール処理、アンモニア処理、尿素処理、乾燥処理などの方法が開発・検討されている。
草本系植物細胞壁の粉砕装置としては、ハンマシュレッダ、植繊機、2軸式低速破砕機、KDS Micronex技術、振動ミル、カッターミルならびにリファイナーなどが挙げられる。ハンマシュレッダは長物の木質廃材などを大型ハンマーが回転することで破砕する装置である(非特許文献2参照)。植繊機とは膨潤破砕機械であり、爆砕に近い性状を持ちながら容易に強固な木質構造を変えて柔らかな素材を得る装置である(非特許文献3参照)。2軸式低速破砕機とは2軸の歯が噛み合った構造となっており、回転刃の外周側面に発生する強力なせん断力によって切断する装置である(非特許文献4参照)。KDS Micronex技術とはカナダFASC社から技術導入を行ったものであり、バイオマスを粉砕するとともに、粉砕物が乾燥される技術である。振動ミルはロッドやボールの衝撃力、カッターミルは装置内部にあるカッターによる切断力、リファイナーは摩擦力を利用した粉砕装置である(非特許文献5参照)。
しかしながら、これらの技術は、稲茎葉中の易分解性糖質、例えば澱粉、遊離糖(シュークロース、フラクトース、グルコース)、β-(1→3), (1→4)-グルカンなどの安定的回収を全く考慮していない方法であり、これらの物質を効率的に回収するための技術は全く検討されていない。また、稲わら等の稲茎葉を粉砕し、前処理・糖化を行う際には、稲茎葉全体を粉砕して一纏めにしているのが現状であり、粉砕性の高い部位や低い部位が混在する稲茎葉部の構造を考慮して、分画・粉砕工程を加えて糖化する技術の開発は行われていない。易分解性糖質の安定的回収を考慮した場合、常温で含水率が高い条件下に放置した際の損耗が激しいことが懸念されるが、逆に、稲茎葉部全体を乾燥すると乾燥コストが高価なものになる。
重田一人:稲わら収集・梱包機の現状と今後の開発方向について、第18号、pp.23-28、2006 津村信弘:木材破砕機紹介「ハンマシュレッダ」リサイクル破砕機の紹介、環境浄化技術、第3巻、第6号、pp.51-53,73、2004 平田和男:植繊機でのバイオマスの利活用-夢の素材ふわふわ君-、建設の施工企画、第667号、pp.27-31、2005 矢野正二郎:バイオマスの利用と固体の取り扱いバイオマスの破砕・粉砕技術、粉体と工業、第38巻、第12号、pp.47-54、2006 小林信介ら:日本エネルギー学会誌、第86巻、第9号、pp.730-735、2007
稈内の易分解性糖質量を安定的に高く保つことや、稈とその他の部位の分離技術を稲わらの品種系統差や栽培条件差を考慮して微修正しつつ、フレキシブルに対応・最適化が可能な分離技術とすることが重要である。また、稈の酵素糖化を効率化し、セルロースやヘミセルロースの糖化効率を向上すること、糖化効率が向上するメカニズムを解明し、酵素糖化効率を最適化させることが重要である。
本発明者は、稲茎葉中の易分解性糖質の蓄積部位を詳細に解析した結果、これらが稈の部分を中心に存在することを確認した。また、稈の部分が茎葉中の他の部位より機械的強度が高く、これを除くことにより残り部分の破砕効率が向上することを見出した。これらの知見をもとに本発明の完成に至った。
すなわち、請求項1に係る本発明は、稲茎葉部を、重量比で全体の7割以上の断片が10cm以下の長さになるように裁断した後、その裁断物中の稈とそれ以外の茎葉部との結合を分断し、稈とそれ以外の茎葉部とを分離した後に、稈が濃縮された画分を酵素糖化することを特徴とする、稲の糖化法である。
請求項2に係る本発明は、「稈が濃縮された画分」を、粉砕処理及び/または80℃以上130℃以下の加熱処理を行った後、セルロース分解酵素、澱粉分解酵素、β-(1→3), (1→4)グルカン分解酵素及びヘミセルロース分解酵素からなる群より選ばれた少なくとも一種類の酵素を含む条件において酵素糖化することを特徴とする、請求項1に記載の稲の糖化法である。
請求項3に係る本発明は、稈とそれ以外の茎葉部とを分離することにより得られた「稈が濃縮された画分」以外の画分を、粉砕処理を行った後、酸処理、アルカリ処理及び水熱処理からなる群より選ばれた少なくとも一種類の前処理を行い、酵素糖化することを特徴とする、請求項1または2に記載の稲の糖化法である。
請求項4に係る本発明は、稲茎葉部が、稲の地上部を刈り取り、籾を分離した後の植物体地上部またはその切断物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の稲の糖化法である。
請求項5に係る本発明は、「稈が濃縮された画分」を、含水率を20%(w/w)以下に下げた状態で貯蔵した後に、酵素糖化することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の稲の糖化法である。
請求項6に係る本発明は、稈とそれ以外の茎葉部との結合部を分断する方法が、磨砕による方法であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の稲の糖化法である。
請求項7に係る本発明は、稈とそれ以外の茎葉部とを分離する方法が、稈とそれ以外の茎葉部の比重差により分離する方法であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の稲の糖化法である。
請求項8に係る本発明は、稈とそれ以外の茎葉部とを分離する工程の前に、稈を加圧して潰すことにより稈の空隙サイズを低下させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の稲の糖化法である。
請求項9に係る本発明は、稈とそれ以外の茎葉部とを分離する方法が、風に飛ばされる際の挙動差により両者を分離する方法であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の稲の糖化法である。
請求項10に係る本発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の稲の糖化法を用いることを特徴とする、エタノールの製造法である。
本発明は、稲から発酵源として有用な糖質を取り出すための糖化工程を効率化する技術に関する。
発酵源として有用な糖質は、主に、稲の茎葉部(稈、葉鞘および葉(身)を主体とする。)、籾(玄米部および籾殻を主体とする。)および根部に存在する。米を収穫するための通常の稲作では、収穫工程において地上部を刈り取り、脱穀後に稲茎葉部(いわゆる「稲わら」。)を適宜、切断して束ねて分離する。この操作で、稲は圃場に残される根部および僅かな稲茎葉部、収穫物としての籾、そして稲茎葉部に分離されることとなる。茎葉部は、圃場に鍬込まれる場合もあるが、適宜、束ねられたり、ロールべーラー等により回収されたりした後、サイレージとして高湿・嫌気条件下で保存されたり、敷き藁等として供給するため、天日乾燥や室内での自然乾燥などの方法で乾燥されたりする。多くの場合、糖化原料として期待が高い「稲わら」とは、このように敷き藁等として供給するために回収された稲茎葉部に近い形で供給されるものと考えられる。
稲の地上部全体(ホールプラントまたはホールクロップと呼ばれる。)をバイオマスとして取り扱うための収穫工程は、主にホールクロップサイレージ調製を目的として検討されている。ホールクロップの収穫方法は、フォレージハーベスタもしくはロールベーラを用いる方法に大別される。フォレージハーベスタではトウモロコシの収穫と同様に、直接、刈り取り・細断して固定サイロに詰めてサイレージ調製を行う。ロールベーラは、主として予乾サイレージ調製に用いられている。(沢村篤:水田作秋作業の改善 飼料イネの収穫作業技術飼料作機械(フォレージハーベスタ)による収穫 大規模作での低コスト化に期待、機械化農業、第3039号、pp.8-12、2004)。
稲茎葉部の糖化技術については複数の報告がある。稲わらの糖化を目的とした研究の殆どは、細胞壁の主要成分であるセルロースやヘミセルロースを糖化し、グルコースやキシロースなどを得ることを目的として行われている。現在、各所で検討が進められている主要な糖化方法は、硫酸法または酵素法の二種類である。硫酸法は、適宜、希硫酸でヘミセルロースやアモルファスなグルカンなどを分解した後、濃硫酸で全グルカンを抽出し、希釈後に加水分解して単糖にまで分解するものである。また、酵素法は、稲わらを適宜、酸、アルカリ、高温水や生物学的処理法などを用いて前処理した後、セルラーゼやキシラナーゼなどの細胞壁分解酵素を加えて糖化する方法である。
本発明者らは、稲茎葉部の詳細な検討を行った結果、稲わらにでん粉、シュークロース、フラクトース、グルコース、β-(1→3), (1→4)-グルカンなどが存在し、これらを考慮した前処理・糖化工程を開発する必要性を見出した(特願2008-045766号明細書参照)。これらの糖質は、適宜、加水分解を行うことによりグルコースとフラクトースに分解し、Saccharomyces属酵母をはじめとする多くの微生物の発酵糖源となるため、その回収は極めて重要である。
しかしながら、これらの糖は易分解性であることから、収穫後に屋外雨ざらし条件のように、高湿度条件下・常温で放置することにより、容易に微生物分解を受けることとなる。また、前処理工程に高温処理を用いる場合、これらの易分解性糖質は溶出してしまうことから、前処理反応後の不溶画分を洗浄回収することにより、これらの糖質は流亡することとなる。それだけでなく、フラクトースは、酸加水分解工程において過分解を受けやすいことから、酸を用いて前処理・糖化を行う前に分離する必要がある。フラクトースやグルコースなどの還元糖はアルカリ存在下でメイラード反応を起こすことから、アンモニア水やアンモニア処理を行う前に分離する必要がある。
このように、本発明者は、草本系原料からの易分解糖質回収を含む糖化工程を開発するために、多くの要因を考慮する必要があることを発見した。
稲茎葉部を回収後、高湿度条件下・常温で放置することにより、易分解性糖質の微生物分解が起こる危険性については先述したが、収穫後、束ねられた稲わらは圃場で雨ざらしにされることも多く、後に天日乾燥を行った時点で、易分解性糖質の相当部分は分解されてしまうと考えられる。また、サイレージ化する際にも、易分解性糖質の相当量は資化されてしまうものと考えられる。
この問題を解決するためには、稲茎葉部を乾燥した後に保存することが極めて有効である。しかしながら、稲茎葉部全体を乾燥処理すると、乾燥コストが極めて高くなり、糖化原料として供給する際のコストを押し上げる原因となる。
このような中で、本発明者らは、さらに検討を重ねた結果、これらの易分解性糖質の殆どが稈の部分に偏在し葉鞘や葉には殆ど存在しないことを見出し、易分解性糖質を豊富に含む稈のみを他の部分と分離することにより、易分解性糖質の殆どを回収・糖化する方法の完成に至った。
稲わらでは、稈とそれ以外の部分の重量比は大体1:2程度であり、稈は全体の1/3前後の重量となる。易分解性糖質を豊富に含む稈の部分だけを分離すれば、雨ざらしなどの高湿度条件での放置を避けるべき画分の量を1/3前後に減少させることができ、乾燥コストを低減することができる。稈以外の部分は、易分解性糖質が少なく、雨ざらしなどの高湿度条件下でもグルカンやキシランなどの消失が少ないことから、分離後にはその回収や乾燥に時間的余裕ができる。
本発明によれば、稲茎葉部の稈とその他(葉鞘や葉を中心とする部分)を分別することにより、バイオマスを糖化する際の粉砕効率や糖化効率を向上できる。この技術は、稲わらや稲のホールプラントを原料とした、低コスト・低環境負荷の糖化技術の開発に繋がる。特に、我が国のみならず世界中で喫緊の課題となっている、国産バイオエタノール生産技術開発に新機軸を提供するものとして重要性が高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、稲茎葉部を構成する稈とそれ以外の部分を分離した後に、各々を別々に処理することを特徴とするものである。
稲茎葉部とは、成熟期に稲を収穫した地上部から籾を除去したものまたはその切断物(いわゆる「稲わら」と言われるもの。)や、成熟期より前の稲植物体を収穫した際の地上部全体またはその切断物を示す。また、稲植物体全体をホールプラントとして利用する際に、収穫後に籾が付着した状態の稲植物体地上部のうち、籾以外の、稈、葉鞘および葉(身)を主体とする部分も稲茎葉部と定義する。稲の機械収穫を行う際には、通常、地際より数cm〜十数cm高い部分から刈り取るが、本発明における稲茎葉部は、地際近くで地上部を刈り取る場合の茎葉部も含まれる。また、コンバインにより稲を収穫する際には、適宜、脱穀を行った後、残った稲茎葉部(いわゆる「稲わら」)を収穫時の長さのものとして排出したり、数cmの長さに切断した後に排出したりすることができる。
本発明における稲(Orizae sativa)については特に制限はなく、ジャポニカ種、インディカ種または両者を交雑した品種系統などを用いることができる。例えば、「コシヒカリ」、「ミルキークィーン」、「夢あおば」などの品種系統を用いることが可能であるが、これに限定されない。また、稲植物体の採取時期としては、稲茎葉と籾の両方が回収できる成熟期に限定されず、茎葉部へのでん粉蓄積性が高くなる出穂期かそれ以降が望ましい。
本発明に用いる稲茎葉部は、圃場から収穫した直後〜収穫後24時間以内の収穫物、または収穫後の稲植物体または稲茎葉部を湿度20%以下あるいは温度60℃以上の条件下で保管し、植物体や微生物による易分解性糖質の分解を抑制したものが望ましい。温度条件にもよるが、収穫後24時間以上経つことにより、切断面などから侵入した微生物が増殖し、易分解性糖質の消失が顕著になる危険性が増大すると考えられる。また、収穫後の稲茎葉部の微生物汚染を抑制するためには、含水率を低く抑えることが有効となる。先述したとおり、易分解性糖質の殆どは稈の部分に存在する。常温保存を考える場合、稈とその他の部分を分離していない稲茎葉部においては、稈部分の含水率を20%(w/w)以下、好適には10%(w/w)以下に抑制することが望ましい。
稲茎葉部から、稈とそれ以外の画分に分離する際には、まず、稈と葉鞘や葉を切り離し、その後、両者を分離・回収することが必要となる。本発明で定義する、稈には、節間部分の稈の間に存在する「節」も含まれることとする。稈と葉鞘は節ごとに結合しているが、両者を含む茎葉部を長軸と垂直方向に近い方向(茎をぶつ切りにする方向)で裁断することにより、茎葉部裁断物の長さを短くすることができる。このことにより、節の間に切れ目が入り、裁断物中の稈とそれ以外の茎葉部と結合が分断され、稈と葉鞘が離れた部分が露出し、その後の機械的切り離しが容易になる。茎の切断は、節間に切れ目が入ることが重要となり、その目安として、重量比で全体の7割以上の断片長が1mm〜10cm、望ましくは5mm〜4cm、より望ましくは2cm程度とすべきである。断片長が小さい程、稈と葉鞘の切り離しが容易になり、稈と葉の切り離しも促されるが、粗粉砕コストが向上することから注意が必要である。
稲茎葉部の裁断により稈の断面が露出された後は、貯蔵時を含め、稈の含水率を上昇させないことが重要となる。ネギの皮むき機などの中には、水圧を利用して皮とネギとの切り離しを行うものがあるが、湿度管理の面から、本発明では稈とその他の部分との切り離しに用いるべきではない。稈と稲茎葉部のその他の部分の切り離しや分離には、風圧を用いることが可能であるが、これに制限されない。しかしながら、その際にも、稈の断面からでん粉粒が落下し、易分解性糖質の回収率に影響を及ぼす危険性に注意する必要がある。分離工程において副生する、でん粉粒を含む粒子を回収して、稈画分の一部として糖化することができる。
稈とその他の部分との切り離しを行う方法は特に限定されず、手で磨り潰す方法もあるが、鋭利な刃物を用いて切断する方法や、臼状のグラインダー(磨砕機)を用いて磨り潰しながら切り離す方法などが特に有効である。稈は葉鞘や葉に比べて機械的強度が高く、磨砕によって稈は殆ど粉砕されないのに対して、葉鞘や葉は磨砕によって容易に粉砕される。特に、葉鞘は、軸と垂直方向の力により分離しやすく、稈とそれ以外の部位は切断・磨砕後のサイズにより粗く分離することができる。また、稈はワックスの沈着が観察されることもあり、その他の部分よりも密度(比重)が高い。ただし、中空の構造が高度に維持されているような稈では、空隙率が高いために見かけ上の密度が低くなる。そのため、密度差(比重差)を利用して両者を分離することを考えた場合には、加圧して稈の中空構造を押し潰し、稈の空隙サイズを低下させることにより、見かけ上の密度を増加させることが重要となる。この操作により、風圧などを利用して両者を分離する際に、風を受けやすい稈の空隙構造に起因する分離効率低下のみならず、稈空隙部における風の侵入によるでん粉の落下を防ぐことができる。
切り離した稈とその他の部分は、目視や機械的センサーを用いた機械的振り分け、サイズ差や振動時の挙動差を用いた分画法などのほか、密度差を利用した風力分離法を用いて分けることができるが、その手段は特に限定されない。風力による分離では、密度の高い稈画分よりも他の部分の方が遠くに飛ばされたり、迅速に飛ばされたりといった、風に飛ばされる際の挙動差を利用して、稈とその他の茎葉部とを分離する。円筒中に試料を入れて、下からブロアーを用いて吹き上げて選別する方法など、様々な風力選別機が開発されている。また、密度差を利用した振動式の選別機では、少し傾けた台の上に試料を載せ、振動させることにより、両者が分離する機械などが開発されている。
稈とその他の部位との分離効率は、易分解性糖質の濃度を用いて評価することができる。ここで易分解性糖質とは、グルコース、フラクトース、シュークロース、澱粉およびβ-(1→3), (1→4)-グルカンを指す。両者を分離せずに粉砕し、その粉末中の易分解性糖質の含有率を評価し、その値と分離試料のデータとを比較することにより、易分解性糖質の回収率として計算できる。稈から落下したでん粉粒の回収が可能な場合、この画分も稈画分として計算することが望ましい。
上記により稲茎葉部から分離された稈は、酵素糖化する前に、適宜貯蔵しておくことができる。このとき、貯蔵中に易分解性糖質が分解するのを避けるため、稈部分の含水率を20%(w/w)以下、好適には10%(w/w)以下とすることが好ましい。
分離した稈画分(稈が濃縮された画分、すなわち稈の比率が分離前の稲茎葉部全体と比較して向上した部分であり、稈から落下したでん粉粒を合わせた画分を指す。)については、易分解性糖質の大部分が存在しており、その中には希酸分解や濃酸分解に対して過分解が懸念されるフラクトースやシュークロースも含まれ、アンモニア水処理などにより変質する還元糖も含まれている。加熱処理により可溶化するでん粉やβ-(1→3), (1→4)-グルカンや低分子糖質が多いことから、加熱処理後に不溶分を洗浄し、薬液を除去するような、アルカリパルプ処理や希硫酸爆砕処理などのような前処理を行うことは避ける必要がある。本発明の稈画分については、先行発明(特願2008-045766号明細書参照)に示されるように、必要に応じて粉砕処理および80℃以上130℃以下の加熱処理のうち少なくともいずれか一つの処理を行った後、酵素糖化する方法が有効である。
本発明における酵素糖化は、アミログルコシダーゼ、α-アミラーゼなどの澱粉分解酵素、セルラーゼ、β-グルコシダーゼなどのセルロース分解酵素、キシラナーゼ、β-D-キシロシダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ、フェルロイルエステラーゼなどのヘミセルロース分解酵素、リケナーゼなどのβ-(1→3),(1→4)グルカン分解酵素などのうち、少なくとも一つを用いることができる。稈画分の酵素分解性を向上し、易分解性糖質以外の難分解性β-グルカンなどの分解効率を向上するためには、弱酸、弱アルカリ条件、オゾンなどの酸化剤処理、有機溶媒処理などの少なくとも一つの簡易かつ穏和な前処理を行うことが可能である。アルカリパルプ処理や希硫酸爆砕処理、強酸、強アルカリ、130℃超の条件での水熱処理、硫酸処理、アンモニア水処理などの苛酷な前処理を行っていないことから、このようにして得られた稈画分の酵素糖化残渣としての不溶性画分には、セルロースやヘミセルロースが部分的に分解されずに残存していると考えられる。稲茎葉部から稈画分と分離した、葉鞘や葉などの部分を、稈画分に対する方法とは異なる前処理・糖化工程に供する際に、稈画分の糖化残渣としての不溶性画分を加えて処理することができるほか、適宜、発酵残渣と混合して飼料やメタン発酵原料などとして用いたり、ボイラー燃料として利用したりすることが可能である。
稲茎葉部から稈画分と分離した、葉鞘や葉などを中心とする画分については、易分解性糖質が少なく、セルロースを中心とする難分解性β-グルカンやヘミセルロースが糖化可能な成分となる。その際には、直接糖化効率は高くないことから、厳しい湿度管理を行わずとも糖化原料の量は殆ど減少しないと考えられる。このようなリグノセルロース系原料については、公知の方法にならい、pH1以下での強酸処理、pH11以上での強アルカリ処理、130℃超の条件での水熱処理、希硫酸爆砕処理などの苛酷な処理を行った後、酵素糖化することが有効である。その際には、稈画分では適用できないような、硫酸処理、アンモニア水処理やアルカリパルプ化処理、希硫酸爆砕処理などを用いることが可能となる。
稲茎葉部の稈画分は、相対的に強度が高く、稲茎葉部全体を破砕する際に、稈が破砕室内に長く残存して破砕効率を低下させるのみならず、破砕機の処理条件によっては、刃の隙間等に挟まり機械停止や故障の原因となる。本発明は、このような問題の解決を行い、糖化のための粉砕工程を効率化させるものである。稲茎葉部の稈とその他の部分を分離することにより、破砕特性に差をもつ二種類の画分を調製し、それぞれの最適条件を用いて別々に破砕を行うことが可能となる。粉砕性の低い部分は、その部分に特化した条件で迅速に粉砕し、粉砕性が高い部分は低いエネルギー投入量で粉砕を行うことができる。また、稲茎葉部から稈画分と分離された画分については、稈画分の糖化に使用する酵素全種類を用いて糖化する必要がないことから、酵素使用種類や量を抑えた効率的な糖化工程を構築することが可能となる。
このようにして本発明の糖化法により回収された稲の糖化液は、そのまま又は濃縮・精製物として、エタノール製造における発酵原料として用いることができる。
また、本発明の糖化法をエタノールの製造法に応用するにあたっては、前記のように糖化液を得てからそれを原料としてエタノール発酵を行う方法だけでなく、糖化工程が終了する前にエタノール発酵を行う微生物を添加して糖化工程とエタノール発酵工程を並行して進行させる「並行複発酵」方式を採ることもできる。
本発明の糖化法で得られた糖化液を用いたエタノール発酵は、酵母、ザイモモナス属細菌など、低重合度の糖類、特にはグルコース、を資化してエタノール発酵を行う微生物を用いて行うことができる。具体的には、酵母であるSaccharomyces cerevisiae (NBRC 0224)を用いて行うことができる。
なお、組換え大腸菌などの遺伝子組換え技術によってエタノール発酵効率を向上させた微生物などを用いて行うことができるが、グルコースやフラクトースなどの六炭糖のみに注目し、酵母やザイモモナス属細菌などの非組換え微生物を用いることにより、遺伝子組換え微生物の拡散防止措置のための設備コストや管理コストを抑えることが可能となる。
本発明の糖化法で得られた糖化液を用いたエタノール発酵は、公知の発酵方法を用いて行うことができる。
本発明においては、糖化処理工程と発酵工程を分離し、得られた糖液をバッチ式または連続式発酵槽に移すことも可能であるが、糖化処理工程と発酵工程を同時に行うという、いわゆる「並行複発酵」を行うことは、省スペース化かつ処理時間短縮などの効果の点から特に望ましい。
当該エタノール発酵に用いる糖化液の糖類の濃度は、0.5%〜30%程度の範囲、望ましくは5%〜30%の範囲である。
糖化液の糖類の濃度が高い方が、発酵効率や蒸留効率が向上するが、操作性を考慮した場合、前記範囲であることが好ましい。例えば、リグノセルロース系原料を懸濁させる際には、かさ高くなり、撹拌等の操作性が低下する。
また、糖化液の糖類の濃度が0.5%程度(好ましくは5%)より低い場合、十分なエタノール量を生産することができず望ましくない。
なお、糖化反応とエタノール発酵を同時に行う並行複発酵を行う際には、生成されることが期待される糖類の濃度が、上記所定の範囲内に入るよう、原料である稲わらの量を調整すべきである。例えば、本発明における糖化法により、乾燥原料(乾燥稲わら)1グラムから0.25グラムのグルコースの生成が期待できる場合、並行複発酵を行う反応液に対して2%以上の前記乾燥原料(乾燥稲わら)を用いることで、0.5%以上のグルコースが生成されることが期待される。
当該エタノール発酵における反応温度は、用いる微生物によって異なるが、酵母の場合には25℃〜50℃の範囲、細菌では25℃〜60℃の範囲内である。反応時間は、酵母の菌体濃度や糖化酵素量、反応温度や撹拌速度などに大きく依存するが、バッチ法では10時間以上48時間以下程度が適当である。
また、糖化反応とエタノール発酵を同時に行う並行複発酵を行った場合、発酵後に、並行複発酵に用いた液を次の原料を含む発酵槽に移動させることにより、液に含まれる糖化酵素と酵母をそのまま次の原料に対して再度作用させることができる。
以下に実施例、および試験例を挙げて本発明を具体的に説明する。
試験例1[ミルキークィーンの粉砕データ]
(1)稈と葉鞘・葉身の物理的強度テスト
稲わら20 g[品種名:ミルキークィーン、成熟期の稲わら(水分含量10%以下)を刈り取ってすぐ4℃の低温室に保管したもの]の各節から3 mm上及び3 mm下を切断し、稈とそれ以外の茎葉部(葉鞘と葉身)を手作業で分離した。分離された稈と葉鞘・葉身部をさらに長さ1 cmになるように切断して各2gを量り取り、ニューパワーミル PM−2002(大阪ケミカル社)を用いて最大回転条件下で1分間粉砕を行った。10分間静置した後、メッシュサイズ4 mm、2 mm、1 mm、500 μm、250 μm、125 μm、63 μm、20 μmの篩(東京スクリーン社)を用いて破砕粒子サイズ分布を調べた。
結果を図1に示す。葉鞘・葉身部(図1中の●)の平均破砕粒子サイズは約100μmである事に比べ、稈部(図1中の○)は物理的強度が強くその2倍の200μmの平均破砕粒子サイズを示した。
(2)稈部粉砕物の糖質含量測定
稈部(平均粒子サイズ200 μm)の全粉砕物を上記メッシュサイズ250 μmの篩で分け、粒子サイズ250 μm以下と以上の粉砕物をそれぞれ100 mg量り取った。これを2段階硫酸処理(72%硫酸、1 ml、30℃で1時間処理後、硫酸濃度9%になるようにメスアップし、100℃で2時間処理)を行い、一部サンプリングして10% NaOH水溶液で中和した後、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いてグルコース量を測定した。
その結果、粒子サイズにかかわらず、稈部乾重当たりグルコース率として55%(粒子サイズ250 μm以上)と54%(粒子サイズ250 μm以下)(w/w)を示した。このように、粉砕過程では、易分解性糖質、特に、澱粉の消失は起こらなかった。
実施例1[コシヒカリ原料の成分データと、手で分けた際の稈とそれ以外(葉鞘・葉身)の成分データ]
(1)稈部と葉鞘・葉身部からの粉砕物の調製
稲わら10 g [品種名:コシヒカリ、成熟期の稲わらを刈り取って天日干ししたものを室温で保管したもの(水分含量10%以下)]を、長さ1 cm間隔で切断して5 gずつ量り取り、ニューパワーミル PM−2002(大阪ケミカル社)を用いて、粉砕物が500 μmの篩を全量通過するまで粉砕を繰り返し行った。これを稲わら全体の成分データ取得のために用いた。
また、上記の稲わら30 g [品種名:コシヒカリ]の各節から3 mm上及び3 mm下を切断し、稈とそれ以外の茎葉部(葉鞘と葉身)を手作業で分離した。分離された稈と葉鞘・葉身部の重さを量り、稲わら全体の重さに対する量率を計算した(表1の「乾重」)。その後、稈と葉鞘・葉身部のみをそれぞれ長さ1 cm間隔で切断して、ニューパワーミルを用いて上記粉砕を行った。これを、稈部と葉鞘・葉身部の各画分における成分データ取得のために用いた。
以上のように粉砕して得られた稲わら粉末と各画分試料(粒子サイズ500 μm以下、水分含量10%以下)の乾重あたりの易分解性糖質(グルコース、フラクトース、シュークロース、澱粉及びβ-(1→3), (1→4)-グルカン)の含有率を、以下に示す方法で測定した。ここにおいて易分解性糖質の糖化法としては、グルコース、フラクトースは水抽出法で、シュークロースは水抽出後インベルターゼ反応で、澱粉はα−アミラーゼとアミログルコシダーゼ反応で、β-(1→3), (1→4)-グルカンはリケナーゼとβ−グルコシダーゼ反応で行った。
(2)稲わらと各画分試料の乾重あたりの澱粉率の計算
稲わらと各画分試料(粒子サイズ500 μm以下、水分含量10%以下)の乾重あたりの澱粉率の計算はTotal starch kit(メガザイム社)で行った。
すなわち、稲わらと各画分試料をそれぞれ10 mg量り取り、1.5 ml容のプラスチックチューブに入れたものを2本用意した。そのうち1本は水(0.02% NaNを含む。)を0.5 ml加え、10分間激しく撹拌した。攪拌後、サンプルを速やかに4 ℃に冷却し、遠心分離(15,000 g、3分)して上清一部分をサンプリングした。これを水で希釈した後、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定し、乾重あたりの遊離グルコース値を計算し、Gとした(表1の「Glc.」)。
他1本は熱安定性のα-アミラーゼ (50 mM MOPS 緩衝液、0.02% NaN、5 mM CaCl、pH 7.0)酵素液を300 μl (30 U)添加し、100℃のヒートブロック中で10分間処理した(2分ごとに激しく撹拌)。その後、サンプルを50℃に冷却し、酢酸ナトリウム緩衝液 400 μl(200 mM、0.02 % NaN、pH 4.5)とアミログルコシダーゼ 10 μl(2 U)を添加して、50℃のヒートブロック中で回転させながら糖化反応を30分間行った。反応後、サンプルは速やかに4℃に冷却し、遠心分離(15,000 g、3分)して上清一部分をサンプリングした。これを水で希釈した後、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いてグルコース量を測定して乾重あたりの酵素反応後のグルコース値を計算し、StaGとした。
乾重あたりの澱粉率はStaG値からG値を差し引き、澱粉量に換算して計算した(表1の「Starch」)。
(3)稲わらと各画分試料の乾重あたりのβ-(1→3),(1→4)-グルカン率の計算
稲わらと各画分試料(粒子サイズ500 μm以下、水分含量10%以下)の乾重あたりのβ-(1→3), (1→4)-グルカン率の計算はMixed-linkage Beta-glucan kit(メガザイム社)で行った。
すなわち、稲わらと各画分試料をそれぞれ10 mg量り取り、1.5 ml容のプラスチックチューブに入れたものを2本用意した。そのうち1本は水(0.02% NaNを含む。)を0.5 ml加え、10分間激しく撹拌した。攪拌後、サンプルを速やかに4℃に冷却し、遠心分離(15,000 g、3分)して上清一部分をサンプリングした。これを水で希釈した後、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定し、乾重あたりの遊離グルコース値を計算し、Gとした。
他1本は酢酸ナトリウム緩衝液(20 mM、pH 5.0)を480 μl 添加して100℃のヒートブロック中で10分間処理した(2分ごとに激しく撹拌)。その後、サンプルを40℃に冷却し、リケナーゼ20 μl(1 U)を添加して、40℃ヒートブロック中で回転させながら糖化反応を60分間行った。反応後、サンプルは速やかに4℃に冷却し、遠心分離(15,000 g、3分)して上清100 μlをサンプリングした。これにβ-グルコシダーゼ(0.2 U, 50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH 4.0) 酵素液 100 ulを添加して40℃のヒートブロック中で、回転させながら糖化反応を30分間行った。反応後、サンプルは速やかに4℃に冷却し、遠心分離(15,000 g、3分)して上清一部分をサンプリングした。これを水で希釈した後、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いてグルコース量を測定して乾重あたりの酵素反応後のグルコース値を計算し、BetaGとした。
乾重あたりのβ-(1→3), (1→4)-グルカン率はBetaG値からG値を差し引き、β-(1→3), (1→4)-グルカン量に換算して計算した(表1の「B-1,3-1,4-Glucan」)。
(4)稲わらと各画分試料の乾重あたりのシュークロース率の計算
稲わらと各画分試料(粒子サイズ500 μm以下、水分含量10%以下)の乾重あたりのシュークロース率の計算はSucrose, D-fructose and D-glucose kit(メガザイム社)で行った。
すなわち、稲わらと各画分試料をそれぞれ20 mg量り取り、1.5 ml容のプラスチックチューブに入れ、水(0.02% NaNを含む。)を1 ml加え、10分間激しく撹拌した。攪拌後、サンプルを速やかに4 ℃に冷却し、遠心分離(15,000 g、3分)して上清10 μlをサンプリングして、96 プレートの2ヶ所のウェルに入れた。そのうち1ウェルはグルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定し、乾重あたりの遊離グルコース値を計算し、Gとした。
他1ウェルはインベルターゼ酵素液(クエン酸ナトリウム緩衝液、pH 4.6)を20 μl (4 U)添加して30℃で10分間反応し、一部分をサンプリングした。これを水で希釈した後、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いてグルコース量を測定して乾重あたりの遊離グルコース値を計算し、SucGとした。
乾重あたりのシュークロース率はSucG値からG値を差し引き、シュークロース量に換算して計算した(表1の「Suc.」)。
(5)稲わらと各画分試料乾重あたりのフラクトース率の計算
稲わらと各画分試料(粒子サイズ500 μm以下、水分含量10%以下)の乾重あたりのフラクトース率の計算はSucrose, D-fructose and D-glucose kit(メガザイム社)で行った。
すなわち、稲わらと各画分試料をそれぞれ20 mg量り取り、1.5 ml容のプラスチックチューブに入れ、水(0.02% NaNを含む。)を1 ml加えて10分間激しく撹拌した。攪拌後、サンプルを速やかに4℃に冷却し、遠心分離(15,000 g、3分)して上清10 μlをサンプリングして、96 プレートのウェルに入れた。このウェルに水200 μlとimidazol緩衝液(2 M 、pH7.6)10 μl及びNADP・ATP(12.5 mg/ml・36.7 mg/ml)水溶液10 μlを添加して30℃で3分間反応した。その後、340 nmでの吸光度を測定してA1とした。A1測定後、ヘキソキナーゼ(0.85 U)とGlucose-6-phosphate dehydrogenase(0.42 U)の混合酵素液を10 μl入れて30℃で10分間反応を行い、340 nmでの吸光度を測定してA2とした(2分間隔で吸光度を測定しながら吸光度安定を確認してから次の反応を行った)。A2測定後、 Phosphoglucose isomerase 10 μl(2U)を添加して30℃で10分間反応を行い、340 nmでの吸光度を測定してA3とした。A3からA2を引いた値と各濃度のフラクトース検量線を作成し、乾重あたりのフラクトース率を計算した(表1の「Fru.」)。
(6)結果
以上の測定結果を表1に示す。コシヒカリは全粉末に対する乾重あたりの澱粉率は2.18%を示していた。また、稈部と葉鞘・葉身部の間では澱粉率に顕著な差がみられ、全易分解性糖質含有率は稈部が1.78%で葉鞘・葉身部(0.54%)より高い値を示した。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose、Fru.:Fructose、Suc.:Sucrose
全含有量:各試料30 g当たりの全易分解性糖質量(g)
量率:易分解性糖質量率(%)=[各試料中の全易分解性糖質量(g)/稈と葉鞘・葉身の全易分解性糖質量の合計(g)]×100
実施例2[コシヒカリを手分けした際の稈とそれ以外(葉鞘・葉身)のセルラーゼ・キシラナーゼ製剤を用いた糖化データ]
稲わらには、易分解性糖質以外にも、グルコースを単位とするセルロースやキシロースなどを単位とするヘミセルロースが含まれている。これらのセルロースとヘミセルロースは、その結晶構造・化学修飾・位置関係などからセルラーゼ製剤とヘミセルラーゼ製剤などによる酵素分解を受けにくくなっている。そこで、未分離稲わらと、手で分離した稈と葉鞘・葉身部位と、機械的に分離した当該部位のそれぞれの易分解性糖質を含み、セルロースとヘミセルロースの糖化実験を行った。
稲わらと各画分試料[品種名:コシヒカリ、実施例1で粉砕を行ったもの、全体(未分離稲わら)と稈及び葉鞘・葉身]50 mgをそれぞれ量り、1.5 ml容のプラスチックチューブに入れたものにクエン酸ナトリウム緩衝液(50 mM、pH 4.8、NaN 0.01 %)を958 μl添加し、100℃のヒートブロック中で10分間処理した(2分ごとに激しく撹拌)。その後、サンプルを50℃に冷却し、セルラーゼ製剤(12 μl、 Celluclast 1.5 L、ノボザイムズ・ジャパン社)、ヘミセルラーゼ製剤(6 μl、 Viscozyme L、ノボザイムズ・ジャパン社)、β-グルコシダーゼ製剤(4 μl、 Novozyme 188、シグマ社)、アミログルコシダーゼ(10 μl(2 U)、メガザイム社)及びインベルターゼ酵素液(10 μl (4 U)、TOYOBO社)を加えて1 mlにメスアップして反応液とした。その後、50℃のヒートブロック中で、回転させながら24時間糖化反応を行った。反応後、一部分をサンプリングして、水で希釈した後、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて糖化後のグルコース量を測定した。
糖化後のグリカンの糖化率の計算は、上記の糖化後のグルコース量と各試料の総グルコース量[試験例1(2)に従い2段階硫酸処理後に測定]から、以下の式で計算した(表2の「グリカン糖化率」)。なお、各試料の乾重あたりに対する総グルコース量から総グルコース率(%)を計算した(表2の「総Glc.率」)。
グリカン糖化率(%)=(酵素糖化後の遊離グルコース量/各試料の総グルコース量)×100
セルロースの糖化率は、上記の酵素糖化後の遊離グルコース量から実施例1で求めた易分解性糖質由来のグルコース量を引いたグルコース量と、上記の2段階硫酸処理後の総グルコース量から実施例1で求めた易分解性糖質由来のグルコース量を引いたグルコース量から、以下の式で計算した(表2の「セルロース糖化率」)。
セルロース糖化率(%)=[(酵素糖化後の遊離グルコース量−易分解性糖質由来のグルコース量)/(総グルコース量−易分解性糖質由来のグルコース量)]×100
なお、稲わらと各画分試料の乾重あたりのセルロース率は、上記の2段階硫酸処理後の総グルコース量から実施例1で求めた易分解性糖質由来のグルコース量を引いたグルコース量を、セルロース量に換算して求めた(表2の「セルロース率」)。
糖化後のヘミセルロースの糖化率の計算は、糖化後のキシロース量(D-キシロースキット(メガザイム社))で測定から換算したキシラン量と、稲わらと各画分試料の総キシラン量(2段階硫酸処理後のキシロース量をD-キシロースキット(メガザイム社)で測定し、キシランとして換算)から、以下の式で計算した(表2の「ヘミセルロース糖化率」)。なお、表2の「総キシラン率」は、上記の総キシラン量の稲わらと各画分試料の乾重あたりの値である。
ヘミセルロース糖化率(%)=(酵素糖化後の分解キシラン量/各試料の総キシラン量)×100
その結果を表2に示す。コシヒカリの稲わら全体のグリカン糖化率は27.91%、セルロース糖化率は22.82%で、ヘミセルロース糖化率は3.65%であった。部位別のグリカン糖化率、セルロースの糖化率及びヘミセルロースの糖化率は全て稈部が高くそれぞれ30.16、30.25及び4.54%を示した。なお、稈部のグリカン糖化率、セルロースの糖化率は共に葉鞘・葉身部に比べて2倍以上の糖化性を示した。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率1、総キシラン率1:2段階硫酸処理で測定(各試料の乾重あたり対する率)
実施例3[コシヒカリを手分けした際の稈以外(葉鞘・葉身)をアルカリ処理した後のセルラーゼ・キシラナーゼ製剤を用いた糖化データ]
コシヒカリの葉鞘・葉身[実施例1、2]部位は易分解性糖質率(0.54%)と総糖化率(13.16%)が最も低く、糖化反応には化学または物理的前処理が必要とされる。そこで、易分解性糖質率と総糖化率が低いコシヒカリの葉鞘・葉身部位の全糖化率を上げるために以下の検討を行った。
画分試料[品種名:コシヒカリ、実施例1で粉砕を行った葉鞘・葉身部位]50 mgを量り、それぞれ2本の1.5 ml容のプラスチックチューブに入れ、そのうち1本にはクエン酸ナトリウム緩衝液(200 mM、pH 4.8、NaN 0.01 %)0.25 mlとNaOH水溶液(50 mM、0.5 ml)とHCl水溶液(100 mM、0.25 ml)を入れた。他1本にはNaOH水溶液(50 mM、0.5 ml)のみを入れて121℃で15分間、アルカリ処理を行った後、クエン酸ナトリウム緩衝液(200 mM、pH 4.8、NaN 0.01 %)0.25 mlとHCl水溶液(100 mM、0.25 ml)を入れた。
次に、それぞれのチューブについて酵素反応による全糖化実験を行った。すなわち、各チューブにセルラーゼ製剤(12 μl、 Celluclast 1.5 L、ノボザイムズ・ジャパン社)、ヘミセルラーゼ製剤(6 μl、 Viscozyme L、ノボザイムズ・ジャパン社)及びβ-グルコシダーゼ製剤(4 μl、 Novozyme188、シグマ社)を添加して50℃のヒートブロック中、回転させながら12、24、91時間糖化反応を行い、各時間に一部分をサンプリングした。これを水で希釈した後、グルコースC-IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて遊離グルコース量を測定した。グリカン糖化率とヘミセルロースの糖化率の計算は実施例2に従い行った。
その結果を表3に示した。グリカン糖化率とヘミセルロースの糖化率は全てアルカリ処理サンプルで高くなり、91時間反応で44.5と18.97%を示していた。
Figure 0005311548
実施例4[ミルキークィーン原料の成分データ、硫酸2段階糖化データ、酵素糖化データと、手で分けた際の稈とそれ以外(葉鞘・葉身)のデータ比較]
稲わら10 g[品種名:ミルキークィーン、成熟期の稲わら(水分含量10%以下)を刈り取ってすぐ4℃の低温室に保管したもの]を、長さ1 cm間隔で切断して実施例1に従って破砕・糖化・易分解性糖質の定量を行った。また、上記稲わら30 g[品種名:ミルキークィーン]を、実施例1によって稈とそれ以外の茎葉部(葉鞘と葉身)を分離した。分離された稈と葉鞘・葉身部の重さを量り、実施例1に従って粉砕・糖化・易分解性糖質の定量を行った。
その結果を表4に示す。全体の稲わら[品種名:ミルキークィーン]には、易分解性糖質としてシュークロース率(4.63%)が一番高く、全易分解性糖質率は12.61%も示していた。本実施例の稲わらは、実施例1のコシヒカリ(全易分解性糖質率2.49%)との品種の差はあるが、その収穫後の保存法(実施例1のコシヒカリは水田での天日干し)により、より多くの易分解性糖質(3.78 g)が簡便に糖化・回収可能であった。また、稈と葉鞘・葉身で全易分解性糖質率は稈部が28.16%で、易分解性糖質量率は91.8%であり、稲わら全体の易分解性糖質量の9割以上が稈に集中していた。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose、Fru.:Fructose、Suc.:Sucrose
全含有量:各試料30 g当たりの全易分解性糖質量(g)
量率:易分解性糖質量率(%)=[各試料中の全易分解性糖質量(g)/稈と葉鞘・葉身の全易分解性糖質量の合計(g)]×100
その後、稲わらと各画分試料[品種名:ミルキークィーン、上記で粉砕を行ったもの、全体、稈と葉鞘・葉身]50 mgをそれぞれ量りとり、実施例2に従い全糖化実験と2段階硫酸処理を行い、総グルコース率、グリカン糖化率、セルロース率、セルロースの糖化率、総キシラン率及びヘミセルロースの糖化率を計算した。
その結果を表5に示す。全体の稲わら[品種名:ミルキークィーン]では、グリカン糖化率は40.01%で、セルロースの糖化率は29.89%で、ヘミセルロースの糖化率は7.60%であった。
一方、稈と葉鞘・葉身ではグリカン糖化率、セルロースの糖化率及びヘミセルロースの糖化率は全て稈部が高く55.29、36.09及び7.00%を示してグリカン糖化率、ヘミセルロースの糖化率は共に葉鞘・葉身部に比べて2倍程度の糖化性を示した。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率、総キシラン率:2段階硫酸処理で測定(各試料の乾重あたり対する率)
実施例5[機械的分離 roller なし、3 cm cut 、グラインダミル、1 mm cutあり
ミルキークィーン原料をグラインダミルで潰し、筒を使って分離したものの低比重部、高比重部の成分データ、硫酸2段階糖化データ、酵素糖化データ]
実施例4で用いた30 gの稲わら[品種名:ミルキークィーン]を長さ3 cm間隔で裁断し、グラインダミル(RDI−15、グローエンジニアリング社)に投入し、回転グラインダ(直径15 cm)と固定グラインダ(直径15 cm)の砥石間隙を500 μm、回転数は1000 rpmでの条件下で擦り潰しながら粉砕を行い、粉砕物をメッシュサイズ1 mmの篩にかけて粒子サイズ1 mm以下の微粉砕稲わらを回収して重さを量った。粒子サイズ1 mm以上の稲わら粉砕物(20.5 g)は長さ1 m×内径 7 cmの上部開放式円筒管に入れ、下から1 L/secの空気を通気して比重差による分離を行った。比重差により円筒管の上部から飛ばされた破砕物を低比重部として回収し、円筒管内に残った稲わら粉砕物を高比重部として回収して、それぞれ重さを量った。回収された稲わらの粉砕物(1 mm 篩通過部、高比重部、低比重部)をさらにウェレミルを用いて粒子サイズ0.5 mm以下に破砕をした。
その後、稲わらと各画分試料を実施例1に従い、易分解性糖質の糖化反応と定量実験を行い、乾重あたりの各易分解性糖質含有率と全易分解性糖質量を計算した。乾重回収率と糖濃縮率及び糖回収率を実施例4によって測定された稲わら[品種名:ミルキークィーン]の稈部位の乾重(35.2%:30 gの稲わらから10.6 gが得られる)と易分解性糖質率(91.8 %)及び全易分解性糖質量(2.97 g)を理想値(100 %)とし、各画分試料の乾重と易分解性糖質率及び全易分解性糖質量と、それぞれ比較して計算した。
その結果を表6に示す。機械的粉砕・分離で得られた1 mm篩通過部と高比重部及び低比重部の乾重回収率、糖濃縮率、糖回収率は、それぞれ(60、43、26)、(27、68、19)、(152、33、50)であり、手で分離した稈部の理想値(100、100、100)と比べると本実施例では風に飛ばされる低比重部(乾重回収率152%)が多いものの、高比重部(糖濃縮率68%)に稈部の特徴である最も高い糖濃縮率を示していた。
Figure 0005311548

:各試料の乾重あたりの全易分解性糖質含有率
:各試料30 gから機械的分離したサンプル稲わらの全易分解性糖質量
:実施例4によって分離された稈部位(乾重10.6 g)に対する各試料の乾重比
:実施例4によって分離された稈部位(易分解性糖質率91.8%)に対する各試料の易分解性糖質率比
:実施例4によって分離された稈部位(全易分解性糖質量2.97 g)に対する各試料の全易分解性糖質量比
:実施例4によって分離された稈部位の乾重・易分解性糖質含有率
その後、各画分試料[品種名:ミルキークィーン、上記で粉砕・分離を行ったもの、1 mm 篩通過部、高比重部、低比重部]50 mgをそれぞれ量りとり、実施例2に従い全糖化実験と2段階硫酸処理を行い、総グルコース率、グリカン糖化率、セルロース率、セルロース糖化率、総キシラン率及びヘミセルロース糖化率を計算した。
その結果を表7に示す。グリカン糖化率、セルロースの糖化率は高比重部粉砕物が高く、それぞれ46.52と31.43%を示した。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率、総キシラン率:2段階硫酸処理で測定
:実施例4によって分離された稈部位のグリカン糖化率、セルロース糖化率及びヘミセルロース糖化率
実施例6[機械的分離 roller あり、3 cm cut、グラインダミル、1 mm cutなし
ミルキークィーン原料をローラーを通し、3 cmに切ってグラインダミルで潰し、筒を使って分離したものの低比重部、高比重部の成分データ、硫酸2段階糖化データ、酵素糖化データ]
実施例4で用いた30 gの稲わら[品種名:ミルキークィーン]を、100 kgの負荷がかかった間隙0 mmのローラー(鉄製、直径14 cm)を垂直方向で通過させながら潰した。その後、長さ3 cm間隔で裁断してグラインダミル(RDI−15、グローエンジニアリング社)に投入し、実施例5に従い粉砕を行った。ただし、粉砕後に実施例5で行った、メッシュサイズ1 mmの篩を用いた分離は実施せず、粉砕後の回収分全量を用いて以下の実験を行った。すなわち、粉砕後、全量の28.1 gの粉砕物から実施例5に従って低比重部と高比重部の分離・破砕を行った。その後、実施例1に従い易分解性糖質の糖化反応と定量実験を行い、乾重あたりの含有率と全易分解性糖質量を計算した。乾重回収率・糖濃縮率・糖回収率は実施例5に従い計算した。
その結果を表8に示す。高比重部と低比重部の乾重回収率、糖濃縮率及び糖回収率はそれぞれ(96、78、75)、(153、23、35)であった。手で分離した稈部の理想値(100、100、100)と比べると最初ローラーに稲わらを通し、グラインダミルで粉砕後の1mm 以下の稲わらを回収しない本実施例では、風に飛ばされにくい高比重部から稈部の特徴である糖濃縮率が最も高く(78%)、乾重回収率(96%)も理論値に相当する値が得られた。本実施例法によって稲わらの稈部が効率よく分離できた。
Figure 0005311548

:各試料の乾重あたりの全易分解性糖質含有率
:各試料30 gから機械的分離したサンプル稲わらの全易分解性糖質量
:実施例4によって分離された稈部位(乾重10.6 g)に対する各試料の乾重比
:実施例4によって分離された稈部位(易分解性糖質率91.8%)に対する各試料の易分解性糖質率比
:実施例4によって分離された稈部位(全易分解性糖質量2.97 g)に対する各試料の全易分解性糖質量比
:実施例4によって分離された稈部位の乾重・易分解性糖質含有率
その後、各試料[品種名:ミルキークィーン、上記で粉砕・分離を行ったもの、高比重部、低比重部]50 mgをそれぞれ量りとり、実施例2に従い全糖化実験と2段階硫酸処理を行い、総グルコース率、グリカン糖化率、セルロース率、セルロース糖化率、総キシラン率及びヘミセルロース糖化率を計算した。
その結果を表9に示す。グリカン糖化率とヘミセルロース糖化率は高比重部粉砕物が高く、それぞれ47.94と6.36%を示し、実施例4の稈部のグリカン糖化率とヘミセルロース糖化率(55.29、7.00%)に類似している値が得られ、本粉砕・分離法で得られた高比重部は、全糖化性が高い(実施例2、4)稲わらの稈部が大半を占めていることがわかった。本実施例法によって稲わらの稈部が効率よく分離できた。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率、総キシラン率:2段階硫酸処理で測定(各試料の乾重あたり対する率)
:実施例4によって分離された稈部位のグリカン糖化率、セルロース糖化率及びヘミセルロース糖化率
実施例7[機械的分離 roller あり、1 cm cut 、グラインダミル、1 mm cutあり
ミルキークィーン原料をローラーを通し、1 cmに切ってグラインダミルで潰し、筒を使って分離したものの低比重部、高比重部の成分データ、硫酸2段階糖化データ、酵素糖化データ]
実施例4で用いた30 gの稲わら[品種名:ミルキークィーン]を、100 kgの負荷がかかった間隙0 mmのローラー(鉄製、直径14 cm)を垂直方向で通過させながら潰した。その後、長さ1 cm間隔で裁断してグラインダミル(RDI−15、グローエンジニアリング社)に投入し、実施例5に従い粉砕を行った。粉砕後、メッシュサイズ1 mmの篩にかけて粒子サイズ1 mm以下の微粉砕稲わらを回収して重さを量った。残りの25.2 gの粉砕物は実施例5に従って低比重部と高比重部の分離・破砕を行った。その後、1mm 篩通過部、高比重部、低比重部の易分解性糖質の糖化反応と定量実験を実施例1に従って行い、乾重あたりの含有率と全易分解性糖質量を計算した。乾重回収率・糖濃縮率・糖回収率は実施例5に従い計算した。
その結果を表10に示した。機械的粉砕・分離で得られた各部位1 mm 篩通過部、高比重部、低比重部の乾重回収率、糖濃縮率及び糖回収率は、それぞれ(35、19、7)、(62、76、47)、(170、23、39)であった。手で分離した稈部の理想値(100、100、100)と比べると本実施例では風に飛ばされる低比重部(乾重回収率170%)が多いものの、高比重部(糖濃縮率76%)に稈部の特徴である最も高い糖濃縮率を示していた。
Figure 0005311548

:各試料の乾重あたりの全易分解性糖質含有率
:各試料30 gから機械的分離したサンプル稲わらの全易分解性糖質量
:実施例4によって分離された稈部位(乾重10.6 g)に対する各試料の乾重比
:実施例4によって分離された稈部位(易分解性糖質率91.8%)に対する各試料の易分解性糖質率比
:実施例4によって分離された稈部位(全易分解性糖質量2.97 g)に対する各試料の全易分解性糖質量比
:実施例4によって分離された稈部位の乾重・易分解性糖質含有率
その後、各試料[品種名:ミルキークィーン、上記で粉砕・分離を行ったもの、1mm 篩通過部、高比重部、低比重部]50 mgをそれぞれ量りとり、実施例2に従い全糖化実験と2段階硫酸処理を行い、総グルコース率、グリカン糖化率、セルロース率、セルロース糖化率、総キシラン率及びヘミセルロース糖化率を計算した。
その結果を表11に示した。グリカン糖化率、セルロースの糖化率及びヘミセルロースの糖化率は全て高比重部粉砕物が高く、それぞれ52.81、27.53及び7.23%を示していた。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率、総キシラン率:2段階硫酸処理で測定(各試料の乾重あたり対する率)
:実施例4によって分離された稈部位のグリカン糖化率、セルロース糖化率及びヘミセルロース糖化率
実施例8[機械的分離 roller あり、2 cm cut 、グラインダミル、1 mm cutあり
ミルキークィーン原料をローラーを通し、2 cmに切ってグラインダミルで潰し、筒を使って分離したものの低比重部、高比重部の成分データ、硫酸2段階糖化データ、酵素糖化データ]
実施例4で用いた30 gの稲わら[品種名:ミルキークィーン]を、100 kgの負荷がかかった間隙0 mmのローラー(鉄製、直径14 cm)を垂直方向で通過させながら潰した。その後、長さ2 cm間隔で裁断してグラインダミル(RDI−15、グローエンジニアリング社)に投入し、実施例5に従い粉砕を行った。粉砕後、メッシュサイズ1 mmの篩にかけて粒子サイズ1 mm以下の微粉砕稲わらを回収して重さを量った。残りの25.7gの粉砕物は実施例5に従って低比重部と高比重部の分離・破砕を行った。その後、1 mm 篩通過部、高比重部、低比重部の易分解性糖質の糖化反応と定量実験を実施例1に従って行い、乾重あたりの含有率と全易分解性糖質量を計算した。乾重回収率・糖濃縮率・糖回収率は実施例5に従い計算した。
その結果を表12に示した。機械的粉砕・分離で得られた各部位1 mm 篩通過部、高比重部、低比重部の乾重回収率、糖濃縮率及び糖回収率は、それぞれ(29、23、7)、(121、66、80)、(114、11、12)であった。手で分離した稈部の理想値(100、100、100)と比べると本実施例では、風に飛ばされにくい高比重部で稈部の特徴である糖濃縮率が最も高く(66%)、乾重回収率(121%)は理論値より高いものの、高い値の糖回収率(80%)が示された。本実施例法によって稲わらの稈部が効率よく分離できた。
Figure 0005311548

:各試料の乾重あたりの全易分解性糖質含有率
:各試料30 gから機械的分離したサンプル稲わらの全易分解性糖質量
:実施例4によって分離された稈部位(乾重10.6 g)に対する各試料の乾重比
:実施例4によって分離された稈部位(易分解性糖質率91.8%)に対する各試料の易分解性糖質率比
:実施例4によって分離された稈部位(全易分解性糖質量2.97 g)に対する各試料の全易分解性糖質量比
:実施例4によって分離された稈部位の乾重・易分解性糖質含有率
その後、各試料[品種名:ミルキークィーン、上記で粉砕・分離を行ったもの、1mm 篩通過部、高比重部、低比重部]50 mgをそれぞれ量りとり、実施例2に従い全糖化実験と2段階硫酸処理を行い、総グルコース率、グリカン糖化率、セルロース率、セルロース糖化率、総キシラン率及びヘミセルロース糖化率を計算した。
その結果を表13に示した。グリカン糖化率、セルロース糖化率及びヘミセルロース糖化率は全て高比重部粉砕物が高く、それぞれ55.92、36.48及び7.21%を示していた。本結果は実施例4の稈部の55.29、36.09及び7.00%に最も近い値であった。本実施例法によって稲わらの稈部が効率よく分離できた。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率、総キシラン率:2段階硫酸処理で測定(各試料の乾重あたり対する率)
:実施例4によって分離された稈部位のグリカン糖化率、セルロース糖化率及びヘミセルロース糖化率
実施例9[機械的分離 roller あり、3 cm cut 、グラインダミル、1 mm cutあり
ミルキークィーン原料をローラーを通し、3 cmに切ってグラインダミルで潰し、筒を使って分離したものの低比重部、高比重部の成分データ、硫酸2段階糖化データ、酵素糖化データ]
実施例4で用いた30 gの稲わら[品種名:ミルキークィーン]を、100 kgの負荷がかかった間隙0 mmのローラー(鉄製、直径14 cm)を垂直方向で通過させながら潰した。その後、長さ3 cm間隔で裁断してグラインダミル(RDI−15、グローエンジニアリング社)に投入し、実施例5に従い粉砕を行った。粉砕後、メッシュサイズ1 mmの篩にかけて粒子サイズ1 mm以下の微粉砕稲わらを回収して重さを量った。残りの23.8gの粉砕物は実施例5に従って低比重部と高比重部の分離・破砕を行った。その後、1mm 篩通過部、高比重部、低比重部の易分解性糖質の糖化反応と定量実験を実施例1に従って行い、乾重あたりの含有率と全易分解性糖質量を計算した。乾重回収率・糖濃縮率・糖回収率は実施例5に従い計算した。
その結果を表14に示す。機械的粉砕・分離で得られた各部位1mm 篩通過部、高比重部、低比重部の乾重回収率、糖濃縮率及び糖回収率は、それぞれ(42、43、18)(94、76、72)、(121、21、25)、であった。手で分離した稈部の理想値(100、100、100)と比べると本実施例では、風に飛ばされにくい高比重部で稈部の特徴である糖濃縮率が最も高く(76%)、乾重回収率(94%)も高い値が得られた。本実施例法によって稲わらの稈部が効率よく分離できた。
Figure 0005311548

:各試料の乾重あたりの全易分解性糖質含有率
:各試料30 gから機械的分離したサンプル稲わらの全易分解性糖質量
:実施例4によって分離された稈部位(乾重10.6 g)に対する各試料の乾重比
:実施例4によって分離された稈部位(易分解性糖質率91.8%)に対する各試料の易分解性糖質率比
:実施例4によって分離された稈部位(全易分解性糖質量2.97 g)に対する各試料の全易分解性糖質量比
:実施例4によって分離された稈部位の乾重・易分解性糖質含有率
その後、各試料[品種名:ミルキークィーン、上記で粉砕・分離を行ったもの、1mm 篩通過部、高比重部、低比重部]50 mgをそれぞれ量りとり、実施例2に従い全糖化実験と2段階硫酸処理を行い、総グルコース率、グリカン糖化率、セルロース率、セルロース糖化率、総キシラン率及びヘミセルロース糖化率を計算した。
その結果を表15に示す。グリカン糖化率は高比重部が高く47.57%を示し、1mm篩通過と低比重部粉砕物より高い値を示していた。本実施例法によって稲わらの稈部が効率よく分離できた。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率、総キシラン率:2段階硫酸処理で測定(各試料の乾重あたり対する率)
:実施例4によって分離された稈部位のグリカン糖化率、セルロース糖化率及びヘミセルロース糖化率
実施例10[機械的分離 roller あり、4 cm cut 、グラインダミル、1 mm cutあり
ミルキークィーン原料をローラーを通し、4 cmに切ってグラインダミルで潰し、筒を使って分離したものの低比重部、高比重部の成分データ、硫酸2段階糖化データ、酵素糖化データ]
実施例4で用いた30 gの稲わら[品種名:ミルキークィーン]を、100 kgの負荷がかかった間隙0 mmのローラー(鉄製、直径14 cm)を垂直方向で通過させながら潰した。その後、長さ4 cm間隔で裁断してグラインダミル(RDI−15、グローエンジニアリング社)に投入し、実施例5に従い粉砕を行った。粉砕後、メッシュサイズ1 mmの篩にかけて粒子サイズ1 mm以下の微粉砕稲わらを回収して重さを量った。残りの24.0 gの粉砕物は実施例5に従って低比重部と高比重部の分離・破砕を行った。その後、1 mm 篩通過部、高比重部、低比重部の易分解性糖質の糖化反応と定量実験を実施例1に従って行い、乾重あたりの含有率と全易分解性糖質量を計算した。乾重回収率・糖濃縮率・糖回収率は実施例5に従い計算した。
その結果を表16に示す。機械的粉砕・分離で得られた各部位1 mm 篩通過部、高比重部、低比重部の乾重回収率、糖濃縮率及び糖回収率は、それぞれ(39、26、10)、(61、71、43)、(157、16、25)であった。手で分離した稈部の理想値(100、100、100)と比べると本実施例では、風に飛ばされる低比重部(乾重回収率157%)が多いものの、高比重部(糖濃縮率71%)に稈部の特徴である最も高い糖濃縮率を示していた。
実施例5、6、7、8、9、10の結果から稲わらの機械的粉砕の際、いずれの粉砕法でも高比重部に糖濃縮率が高いことから高比重部は稲わらの稈部を反映していると考えられる。また、ローラーを通す工程と稲わらを長さ2 cmから 3 cmに切断して粉砕を行うことにより、より稈部の分離効果が上がった。
Figure 0005311548

:各試料の乾重あたりの全易分解性糖質含有率
:各試料30 gから機械的分離したサンプル稲わらの全易分解性糖質量
:実施例4によって分離された稈部位(乾重10.6 g)に対する各試料の乾重比
:実施例4によって分離された稈部位(易分解性糖質率91.8%)に対する各試料の易分解性糖質率比
:実施例4によって分離された稈部位(全易分解性糖質量2.97 g)に対する各試料の全易分解性糖質量比
:実施例4によって分離された稈部位の乾重・易分解性糖質含有率
その後、各試料[品種名:ミルキークィーン、上記で粉砕・分離を行ったもの、1 mm 篩通過部、高比重部、低比重部]50 mgをそれぞれ量りとり、実施例2に従い全糖化実験と2段階硫酸処理を行い、総グルコース率、グリカン糖化率、セルロース率、セルロース糖化率、総キシラン率及びヘミセルロース糖化率を計算した。
その結果を表17に示す。グリカン糖化率は高比重部粉砕物が高く、48.50%を示していた。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率、総キシラン率:2段階硫酸処理で測定(各試料の乾重あたり対する率)
:実施例4によって分離された稈部位のグリカン糖化率、セルロース糖化率及びヘミセルロース糖化率
実施例11[夢あおばの各時期の試料に対する全体の成分データと手分けした稈及びその他(葉鞘・葉身)の成分データ]
稲わら[品種名:夢あおばを各時期(出穂期、乳熟期、糊熟期、黄熟期及び完熟期)に刈り取って、70℃で48時間以上乾燥したもの(水分含量10%以下)]を、長さ1 cm間隔で切断して実施例1に従って全体または稈部及びその他(葉鞘・葉身)に分けて、破砕・糖化・易分解性糖質の定量を実施例1に従い行った。
その結果を表18に示す。全体の稲わら中の易分解性糖質は出穂期から完熟期(収穫期)にかけてその含有率に変化が見られた。出穂期、乳熟期、糊熟期、黄熟期及び完熟期にかけて全含有率は、それぞれ15.73、18.61、10.25、7.18及び12.69%を示しており、実の成熟に伴いその率は下がるものの、収穫期には再び含有率が上がる傾向を示していた。また、その率の変化を一番左右するものは澱粉率であり、時期ごとに8.76、8.57、2.45、0.39及び4.25%を示していた。また、シュークロース率も澱粉率と同様な変化パタンを示し、時期ごとに2.36、4.57、2.89、1.05及び2.96%という経時的変化が見られた。いずれも、収穫期の完熟期にはその率が再び上がっていた。また、稈部の全易分解性糖質含有率は時期にかかわらず高い値を示しており、乳熟期以降は全易分解性糖質量の7割以上が稈部に集中して存在していた。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose、Fru.:Fructose、Suc.:Sucrose
全含有量:各試料30 g当たりの全易分解性糖質量(g)
量率:易分解性糖質量率(%)=[各試料中の全易分解性糖質量(g)/稈と葉鞘・葉身の全易分解性糖質量の合計(g)]×100
実施例12[夢あおばの出穂期の試料に対する全体の硫酸2段階糖化データ及び酵素糖化(セルラーゼ・キシラナーゼ製剤など)データと、手分けした稈及びその他(葉鞘・葉身)の比較データ]
稲わらと各画分試料[品種名:夢あおば、出穂期、実施例11で粉砕を行ったものの全体、稈と葉鞘・葉身]50 mgをそれぞれ量りとり、実施例2に従い全糖化実験と2段階硫酸処理を行い、総グルコース率、グリカン糖化率、セルロース率、セルロース糖化率、総キシラン率及びヘミセルロース糖化率を計算した。
その結果を表19に示す。全体稲わらのグリカン糖化率は64.46%で、セルロース糖化率は51.01%で、ヘミセルロース糖化率は9.74%であった。稈部とその他(葉鞘・葉身)のグリカン糖化率、セルロース糖化率及びヘミセルロース糖化率は全て稈部が高く、74.55、42.90及び9.27%を示していた。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率、総キシラン率:2段階硫酸処理で測定(各試料の乾重あたり対する率)
実施例13[夢あおばの完熟期の試料に対する全体の硫酸2段階糖化データ及び酵素糖化(セルラーゼ・キシラナーゼ製剤など)データと、手分けした稈及びその他(葉鞘・葉身)の比較データ]
稲わらと各画分試料[品種名:夢あおば、完熟期、実施例11で粉砕を行ったものの全体、稈と葉鞘・葉身]50 mgをそれぞれ量りとり、実施例2に従い全糖化実験と2段階硫酸処理を行い、総グルコース率、グリカン糖化率、セルロース率、セルロース糖化率、総キシラン率及びヘミセルロース糖化率を計算した。
その結果を表20に示す。全体稲わらのグリカン糖化率は51.78%で、セルロース糖化率は38.41%で、ヘミセルロース糖化率は6.69%であった。稈部とその他(葉鞘・葉身)のグリカン糖化率、セルロース糖化率及びヘミセルロース糖化率は全て稈部が高く、63.55、47.47及び7.72%を示していた。
Figure 0005311548

Glc.:Glucose
総Glc.率、総キシラン率:2段階硫酸処理で測定(各試料の乾重あたり対する率)
実施例14 [並行複発酵による稲わらのエタノール発酵]
各試料[品種名:ミルキークィーン、実施例4で手分けした稈部と葉鞘・葉身部、実施例9で機械的分離した高比重部と低比重部]の並行複発酵は、実施例3の酵素系とSaccharomyces cerevisiae NBRC0224を用いて行った。
すなわち、各試料[稈部と高比重部]を200 mg量り取り、10 ml容のバイアル瓶に入れたものを2本用意し、クエン酸ナトリウム緩衝液(50 mM、pH 4.8)を2 ml加え、高温高圧滅菌(121℃、15分)を行った。その後、そのうち1本にはフィルター濾過(0.2 μm)したセルラーゼ製剤(24 μl、 Celluclast 1.5 L、ノボザイムズ・ジャパン社)、ヘミセルラーゼ製剤(12 μl、 Viscozyme L、ノボザイムズ・ジャパン社)及びβ-グルコシダーゼ製剤(8 μl、 Novozyme188、シグマ社)を添加して、滅菌ゴム栓とアルミニウムキャップでシリングした。その後、30℃で酵素反応を48時間行った。反応後、サンプルを速やかに4℃に冷却し、遠心分離(15,000 g、3分)して上清一部分をサンプリングした。これを水で希釈した後、グルコースC−IIテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いてグルコース量を測定した。
他1本は上記の酵素液を加えた後、酵母液(事前に30℃のYPD培地で16時間培養を行った培養液を、2回遠心(5,000 g、5分)・洗浄(生理食塩水)し、並行複発酵時の初発O.D.600nmが1になるように調整したもの)を0.1 ml加えて滅菌ゴム栓とアルミニウムキャップでシリングした。その後、30℃で並行複発酵を48時間行った。発酵後、サンプルを速やかに4℃に冷却し、遠心分離(15,000 g、3分)して上清一部分をサンプリングし、フィルター濾過(0.2 μm)した。これを水で希釈した後、島津製HPLC(LC-20AD、SIL-20AC、CTO-20AC、RID-10A)とAminex HPX-87Hカラム(300 mm×7.8 mm、Bio-RAD社)を用いてエタノール定量を行った。
上記の酵素糖化後のグルコース量と実施例4及び9で求めたフラクトース率から得られる理論エタノール量(1分子のグルコースまたは1分子のフラクトースから、2分子のエタノールが生成される。)を100%として、並行複発酵で得られたエタノール発酵収率(%)を計算した。
葉鞘・葉身部と低比重部は糖化率が低いので、これらの部位については、効率的な糖化反応とエタノール発酵を行うため、実施例3で行った稲わらのアルカリ処理を行った。すなわち、各試料[葉鞘・葉身部と低比重部]200 mgをそれぞれ量り取り、10 ml容のバイアル瓶に入れたものを2本用意し、NaOH 水溶液(50 mM)を1 ml加え、121℃で15分間、アルカリ処理を行った後、クエン酸ナトリウム緩衝液(200 mM、pH 4.8、NaN 0.01%)0.5 mlとHCl水溶液(100 mM)0.5 mlを入れた。そのうち1本は上記の酵素液のみを、他1本は酵素液と上記の酵母液を添加して、それぞれ酵素反応と並行複発酵を行った。その後、上記同様にグルコース定量とエタノール定量を行い、エタノール発酵収率を計算した。
その結果を表21に示す。いずれのサンプルにおいても、エタノールの発酵収率は75%を超えていた。各エタノール量は、実施例4、9で求められた易分解性糖質の量を超えており、セルロース由来のエタノール生産が確認された。特に、易分解性糖質を多く含む稈部と高比重部ではエタノール生産も高い結果が得られた。なお、糖化性の低い葉鞘・葉身部と低比重部においても、アルカリ処理後に高いエタノール発酵収率を得ることに成功した。
Figure 0005311548
本発明は、効率的な稲の糖化技術の開発に関するものであり、バイオエタノール製造技術の開発、バイオリファイナリー技術の開発に繋がることが期待される。特に、我が国で喫緊の課題となっている、国産バイオエタノール生産技術開発に新機軸を提供するものとして、極めて重要性が高い。また、アジアやアメリカ西部などを中心とする稲作地帯での稲茎葉利用技術の開発に繋がる。
稈と葉鞘・葉身の物理的破砕による破砕粒子サイズ分布を示すグラフである。●は葉鞘・葉身部、○は稈部の結果を示す。

Claims (10)

  1. 稲茎葉部を、重量比で全体の7割以上の断片が10cm以下の長さになるように裁断した後、その裁断物中の稈とそれ以外の茎葉部との結合を分断し、稈とそれ以外の茎葉部とを分離した後に、稈が濃縮された画分を酵素糖化することを特徴とする、稲の糖化法。
  2. 「稈が濃縮された画分」を、粉砕処理及び/または80℃以上130℃以下の加熱処理を行った後、セルロース分解酵素、澱粉分解酵素、β-(1→3), (1→4)グルカン分解酵素及びヘミセルロース分解酵素からなる群より選ばれた少なくとも一種類の酵素を含む条件において酵素糖化することを特徴とする、請求項1に記載の稲の糖化法。
  3. 稈とそれ以外の茎葉部とを分離することにより得られた「稈が濃縮された画分」以外の画分を、粉砕処理を行った後、酸処理、アルカリ処理及び水熱処理からなる群より選ばれた少なくとも一種類の前処理を行い、酵素糖化することを特徴とする、請求項1または2に記載の稲の糖化法。
  4. 稲茎葉部が、稲の地上部を刈り取り、籾を分離した後の植物体地上部またはその切断物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の稲の糖化法。
  5. 「稈が濃縮された画分」を、含水率を20%(w/w)以下に下げた状態で貯蔵した後に、酵素糖化することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の稲の糖化法。
  6. 稈とそれ以外の茎葉部との結合部を分断する方法が、磨砕による方法であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の稲の糖化法。
  7. 稈とそれ以外の茎葉部とを分離する方法が、稈とそれ以外の茎葉部の比重差により分離する方法であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の稲の糖化法。
  8. 稈とそれ以外の茎葉部とを分離する工程の前に、稈を加圧して潰すことにより稈の空隙サイズを低下させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の稲の糖化法。
  9. 稈とそれ以外の茎葉部とを分離する方法が、風に飛ばされる際の挙動差により両者を分離する方法であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の稲の糖化法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の稲の糖化法を用いることを特徴とする、エタノールの製造法。
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