JP3696951B2 - たばこ煙用フィルター素材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性や湿潤時の崩壊性に優れるたばこ煙用フィルター素材及びその製造方法、並びに前記素材を用いた、たばこ煙の喫味が良好なたばこ煙用フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
たばこの有害成分の除去効率や喫味に優れるたばこ煙用フィルターとして、セルロースアセテートの繊維束をトリアセチンなどの可塑剤を用いて成型したフィルタープラグが広く使用されている。しかしこのフィルタープラグは、生分解性に劣ると共に、可塑剤により繊維同士が部分的に融着しているため、使用後に廃棄すると、環境中で形状が崩壊して分解するまでに長時間を要し、環境汚染の一因となる。また、廃棄されたフィルタープラグをすべて回収することは多大な費用を要し、事実上不可能であると共に、フィルタープラグを焼却処分すると、焼却時の発熱量が大きいため焼却炉の寿命が短くなる。
【0003】
一方、木材パルプを原料とし、シート状、クレープ状に加工した紙製のたばこフィルターや、再生セルロース繊維束からなるたばこ煙用フィルターも知られている。これらのフィルターは、セルロースアセテート繊維からなるフィルタープラグと比較して、生分解性に優れ、湿潤時の崩壊性も若干高いため、環境汚染をある程度軽減できる。しかし、たばこの喫味が劣ると共に、セルロースアセテートと比較して、フェノール類の選択除去性が極端に低く、同一圧力損失時においてフィルター硬度が低い。さらに、木材パルプからなるシート状素材は、嵩高性が低く、通気抵抗を低下させるため、嵩高性を付与しようとすると毛羽立ちやすくなり、成形性に劣る。
【0004】
特開昭53−45468号公報には、表面積の大きなセルロースエステル小繊維5〜35重量%とセルロースエステル短繊維65〜95重量%とを含む不織繊維状シートを用いたシートが開示されている。また、この先行文献には、セルロースエステル小繊維とセルロースエステル短繊維との混合物に木材パルプを混合しても良いことも記載されている。しかし、前記セルロースエステルはフィブリル化しにくいため、表面積の大きな前記小繊維を得るためには、特殊な方法を採用する必要があるだけでなく、フィルター材料の崩壊性、生分解性が十分ではなく、環境汚染の虞れが高い。
【0005】
特開昭55−141185号公報には、木材パルプ繊維を主とするシート状物とセルロースエステル誘導体繊維トウよりなるシート状物を接合した複合シート状物で構成されたフィルター素材が開示されている。しかし、前記フィルター素材は、たばこの喫味はある程度改善されるものの、トリアセチンなどの可塑剤を用いてシート状物の成型及び両シートの接合を行っているので、繊維同士、シート同士が融着し、湿潤時の崩壊性が十分でない。
【0006】
また、シート状たばこフィルター素材を成形する際に、クレープ加工などを施すことがあるが、この加工や乾燥状態での使用には、乾燥状態の高い強度が要求される。しかし、乾燥時の強度が十分なシート状素材は湿潤時の崩壊性に乏しく、また湿潤時の崩壊性に優れた素材は乾燥状態での強度が不十分である。
【0007】
特公昭44−1944号公報には、紙に疎水性高分子溶液を含浸またはスプレーによって添加したものを棒状に成形したたばこフィルターが開示されている。このようなたばこフィルターは硬度と弾力性が改善されており、たばこ喫味もある程度改善されているようである。しかし、疎水性高分子の添加により紙を構成するセルロース繊維などが接着またはコーティングされるので、紙製フィルターが従来有する湿潤時の崩壊性が大きく損なわれる。
【0008】
このように、従来のフィルター素材では、良好なたばこの喫味、高い有害成分の除去効率や乾燥状態での強度などのフィルター素材としての優れた特性と、高い生分解性や湿潤時の崩壊性とを両立させることが困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、たばこの喫味を損なうことなく、湿潤時の崩壊性及び生分解性に優れ、環境汚染を軽減できるたばこ煙用フィルター素材及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、乾燥状態においては強度が大きく、湿潤時には容易かつ迅速に崩壊するたばこ煙用フィルター素材及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、たばこ煙中の有害成分を効率よく除去できると共に、適度な通気抵抗(圧力降下)を有するフィルター素材を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記の如き優れた特性を有するたばこ煙用フィルターを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、繊維状又は粉末状セルロース表面をセルロースエステルにより被覆した被覆セルロースが、たばこの喫味を損なうことがなく、たばこ煙中の有害成分の除去効率に優れ、しかも雨水などにより自然環境下で容易に崩壊し、生分解されることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明のたばこ煙用フィルター素材は、繊維状又は粉末状セルロースがセルロースエステルで被覆された被覆セルロースを含む抄紙構造のシート状たばこ煙用フィルター素材であって、前記被覆セルロースを含むスラリーを湿式抄紙することにより得られ、かつ、ASTM D5209に準ずる試験方法において、発生する炭酸ガス量を基準として、4週間後に40重量%以上分解する。前記被覆セルロースにおけるセルロースエステルの被覆量は、広い範囲から選択でき、例えば、被覆セルロースの総量に対して、0.1重量%以上である。セルロースエステルには、例えば炭素数2〜4程度の有機酸エステルが含まれる。フィルター素材は、抄紙構造を有するシート状である場合が多く、クレープ加工又はエンボス加工されていてもよい。たばこ煙用フィルターは、前記たばこ煙用フィルター素材で構成される。
【0015】
前記たばこ煙用フィルター素材は、繊維状又は粉末状セルロースの表面を、セルロースエステルで被覆し、得られた被覆セルロースを含むスラリーを湿式抄紙することにより得られる。前記被覆は、例えば、浸漬、噴霧などによりセルロースエステルを繊維又は粉末の表面に付着させ、乾燥したり、セルロースエステルと繊維状又は粉末状セルロースとの混合物を、セルロースエステルに対する貧溶媒に添加したり、噴霧乾燥することにより行える。
【0016】
なお、本明細書において、「シート」とは、二次元的拡がりを有する紙状物を意味し、巻き取り可能であればよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
前記セルロースとしては、天然又は再生セルロースのいずれを用いてもよく、例えば、木材繊維(例えば、針葉樹、広葉樹等の木材パルプなど)、種子毛繊維(例えば、リンターなどの綿花、ボンバックス綿、カポックなど)、ジン皮繊維(例えば、麻、亜麻、黄麻、ラミー、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻など)等から得られる天然セルロース;ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、硝酸人絹等の再生セルロースを用いることができる。これらは、一種又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
セルロースの形状は、繊維状又は粉末状である。繊維状セルロースは、通常、フィブリル化されている場合が多い。セルロースのフィブリル化の方法は、特に限定されず、慣用のフィブリル化方法、例えば、木材パルプなどのセルロース原料を、叩解機などの叩解手段を用いて叩解処理することにより行うことができる。また、フィブリル化されたセルロースにさらに衝撃力を作用させて、微細化してもよい。
【0019】
繊維状セルロースの繊維径及び繊維長は、フィルターとしての特性を損なわない範囲で適宜選択できる。繊維状セルロースの繊維径は、特に制限されないが、例えば、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜50μm程度である場合が多い。繊維長も特に限定されず、いずれの繊維長のものも用いることができるが、例えば、50〜3000μm、好ましくは100〜2000μm程度である場合が多い。
【0020】
本発明においては、繊維状セルロースを用いることが好ましいが、粉末状セルロースを用いることもできる。粉末状セルロースの粒度は、成形性や崩壊性を損なわない限り広い範囲で選択でき、例えば、平均粒度は0.1〜600μm、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜250μm程度である。平均粒度が0.1μm未満では、素材からの粉末の脱離が生じ易く、600μmと越えると、素材の表面平滑性が低下するとともに、素材の比表面積が低下する。
【0021】
好ましい繊維状又は粉末状セルロースには、木材繊維、特に、木材パルプが含まれる。木材パルプとしては、慣用のパルプが使用でき、その純度は特に限定されず、α−セルロース含有量が90%以上の高度に精製された木材パルプの外、例えば、ヘミセルロース含有量の高い、低純度のペーパーグレードパルプなども用いることができる。木材パルプは、解砕されていてもよく、また、叩解処理によりフィブリル化され、あるいはフィブリル化されたものを乾式又は湿式抄紙してシート状にしたものであってもよい。木材パルプの叩解度は、適宜選択できるが、カナディアンフリーネステスタ(カナダ標準形試験器)によるろ水度、すなわちカナダ標準ろ水度が100〜800ml、好ましくは150〜700ml程度のものを用いる場合が多い。このような木材パルプは、フィブリル化により、繊維同士の絡み合いが強化され、強度が高いとともに嵩高く、しかも湿潤時の崩壊性が高い。
【0022】
前記繊維状又は粉末状セルロースは、その表面がセルロースエステルで被覆され、被覆セルロースを構成する。なお、セルロースエステルは、繊維又は粉末の表面が少なくとも部分的にセルロースエステルで被覆されていればよいが、表面全体が均一に被覆されていることが好ましい。
【0023】
本発明の特色は、前記繊維状又は粉末状セルロースの表面を、セルロースエステルで被覆することにより、良好なたばこ喫味などのフィルター素材としての特性と、優れた生分解性及び湿潤時の崩壊性とを両立させる点にある。すなわち、このような被覆セルロースを含むフィルター素材は、たばこ煙の瀘過に関係する繊維又は粉末の表面がセルロースエステルで被覆されているので、たばこ煙の喫味やたばこ煙中の有害成分、例えばタール分の除去効率などの瀘過特性は、セルロースアセテート繊維からなるフィルターと同程度に優れていると共に、木材パルプや再生セルロース繊維からなるフィルターに匹敵する優れた生分解性を示す。しかも、前記被覆セルロースは、可塑剤などを用いなくても成形できるので、湿潤時の崩壊性に優れる。また、前記被覆繊維又は粉末は、表面積が大きく、有害成分の除去効率に優れると共に、良好な成形性を維持しつつ、適度な通気抵抗が得られる。
【0024】
前記セルロースエステルとしては、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどの有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、燐酸セルロースなどの無機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテートなどのセルロースエステル誘導体などが例示される。これらのセルロースエステルは、単独でまたは二種以上混合して使用できる。
【0025】
なお、セルロースエステルの原料としては、前記例示の天然又は再生セルロースなどの種々のセルロース、例えば木材パルプなどを用いることができる。木材パルプの純度は、高純度であっても、低純度であってもよい。
【0026】
セルロースエステルの平均重合度(粘度平均重合度)は、通常10〜1000(例えば50〜1000)、好ましくは50〜900(例えば100〜800)、より好ましくは200〜800程度である。平均重合度が小さすぎると、フィルター素材の機械的強度が低下し、平均重合度が大きすぎると、流動性、成形性のみならず、生分解性が低下する。
【0027】
セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度の範囲から選択でき、平均置換度1〜2.15、好ましくは1.1〜2.0程度のセルロースエステルは、生分解性を高める上で有用である。なお、本発明のフィルター素材は、平均置換度が2.0〜2.6程度のセルロースエステルを用いた場合であっても、高い生分解性が得られるという特色がある。
【0028】
セルロースエステル中に残存する硫酸量とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との当量比(後者/前者)が0.1〜1.5、好ましくは0.3〜1.3(例えば、0.5〜1.1)程度のセルロースエステルは、耐熱性が高いと共に、生分解性に優れる。前記硫酸は、セルロースエステルの製造に触媒として使用する硫酸に由来し、硫酸、硫酸塩、スルホアセテートや硫酸エステルとして残存し、遊離していてもよい。アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなど)やアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)は、触媒である硫酸の中和剤として添加されると共に、セルロースエステルの耐熱性を高めるために添加される。
【0029】
好ましいセルロースエステルには、有機酸エステル(例えば炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが含まれるが、特にセルロースアセテートが好ましい。セルロースアセテートの結合酢酸(酢化度)は、43〜62%程度である場合が多いが、酢化度30〜50%程度のセルロースアセテートは、生分解性にも優れている。そのためセルロースアセテートの酢化度は、30〜62%程度の範囲で適当に選択できる。
【0030】
前記被覆セルロースにおけるセルロースエステルの被覆量は、例えば、被覆セルロースの総量に対して、0.1重量%以上(例えば0.1〜50重量%程度)、好ましくは1重量%以上(例えば1〜30重量%程度)、より好ましくは5重量%以上(例えば、5〜15重量%程度)である。被覆セルロースは、その総量に対して、例えば0.5〜15重量%、好ましくは1〜12%程度のセルロースエステルで被覆されている場合が多い。被覆量が0.1重量%未満では、たばこの喫味に劣ると共に、有害成分の除去効率が低下し、50重量%を越えると、生分解性や崩壊性が低下する場合がある。
【0031】
本発明の素材は、前記被覆セルロースで構成される。素材の形状は、特に制限されず、繊維状、毛状、織布状、不織布状、トウ状、シート状などいずれであってもよい。好ましい素材には、不織布状で抄紙構造を有するシート状の素材が含まれる。なお、抄紙構造とは、繊維が互いに絡み合った構造を意味する。このような素材は、乾燥時の紙力が大きく、しかも雨水などによる湿潤に伴って迅速に崩壊する。このようなシート状素材は、前記被覆セルロースを含むスラリーを、慣用の方法に従って抄造機等を用いて湿式抄紙することにより得られる。
【0032】
なお、前記セルロースエステル、フィルター素材は、その特性を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、カオリン、タルク、ケイソウ土、酸化チタン、アルミナ、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機微粉末等のサイズ剤;前記例示のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩などの熱安定化剤;着色剤;歩留まり向上剤などを含んでいてもよい。また、微小繊維状セルロース(例えば、比表面積100〜300m2 /g、繊維径2μm以下、好ましくは1μm以下、繊維長50〜1000μm程度)などの紙力強化剤等を含有させることにより、乾燥時の強度を高めることができる。さらに、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの生分解促進剤、アナターゼ型酸化チタンなどの光分解促進剤のいずれか一方、又は双方を含有させることにより、前記高い生分解性及び崩壊性と相俟って、素材の分解性をさらに高めることができる。
【0033】
なお、フィルター素材は、崩壊性や生分解性を損なわない範囲で、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテートなどの可塑剤を含んでいてもよいが、湿潤による崩壊性を高めるため、可塑剤は含まないのが好ましい。また、必要により、接着剤を含んでいてもよいが、湿潤時の崩壊性を高めるため、接着剤としては、水溶性接着剤を用いるのが好ましい。前記水溶性接着剤としては、例えば、天然物系接着剤(例えば、デンプン、変性デンプン、可溶性デンプン、デキストラン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カゼイン、ゼラチンなど);セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロースなど);合成樹脂系接着剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性アクリル樹脂など)等が例示される。
【0034】
なお、水溶性接着剤の水溶液または分散液を用いる場合、水性溶媒の使用量によっては、フィルターロッドの強度及び硬度が低下する場合がある。そのため、フィルター素材の巻き上げ性が低下するだけでなく、ロッドをフィルターチップに切断するのが困難になりやすい。特に、水溶性接着剤の水溶液を、浸漬により前記繊維または粒子に添加すると、素材の強度及び硬度が著しく損なわれることが多い。従って、水溶性接着剤の水溶液または分散液を用いる場合、前記繊維または粒子に添加する水の量はできるだけ少ないことが望ましい。一方、溶融によって接着性を発現するホットメルト接着剤(水溶性ホットメルト接着剤)は溶媒が不要であり、溶媒による上記のような問題が生じない。このような水溶性接着剤(水溶性ホットメルト接着剤)には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアミド、ポリエステル、アクリル系ポリマーなどのホットメルト接着性を有するポリマーなどが含まれる。
【0035】
本発明のフィルター素材は、生分解性に優れ、例えば、ASTM(American Society for Testing and Materials) D5209に準ずる試験方法において、発生する炭酸ガス量を基準として、4週間後に20重量%以上(例えば30〜100重量%)、好ましくは40重量%以上(例えば50〜100重量%程度)分解する。生分解性の測定に際して、活性汚泥として、都市下水処理場の活性汚泥が使用できる。なお、被覆セルロースの分解%は、二酸化炭素の発生量を分解された炭素数に換算し、分解前の総炭素数に対する割合から算出することができる。また、前記素材は、例えばセルラーゼなどの酵素による分解性も高い。
【0036】
本発明のフィルター素材を構成する被覆セルロースは、前記繊維状又は粉末状セルロースをセルロースエステルで被覆することにより得られる。被覆は、(1)浸漬、又は(2)噴霧により、セルロースエステル溶液を前記繊維又は粉末の表面に付着させ、乾燥する方法(以下、各々溶液浸漬法及び溶液噴霧乾燥法という)、(3)繊維状又は粉末状セルロースと、セルロースエステル溶液との混合物を、セルロースエステルに対する貧溶媒に添加する方法(以下、混合物添加法という)、(4)前記混合物を、噴霧乾燥する方法(以下、混合物噴霧乾燥法という)などにより行うことができる。
【0037】
なお、セルロースエステル溶液の溶媒は、セルロースエステルに対する良溶媒の中から適宜選択でき、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、酢酸などの有機溶媒;アセトン−水混合溶媒、ジクロロメタン−アルコール混合溶媒、酢酸−水混合溶媒、塩化メチレン−メタノール混合溶媒などの混合溶媒等を用いることができる。好ましい溶媒には、アセトンが含まれる。
【0038】
以下、各方法について説明する。
(1)溶液浸漬法
繊維状又は粉末状セルロースを、セルロースエステル溶液に浸漬し、乾燥して、被覆を形成する方法である。
【0039】
セルロースエステル溶液中のセルロースエステルの濃度は、通常、0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%程度である。濃度が30重量%を越えると、溶液の粘度が上昇し、操作性が低下する。繊維状又は粉末状セルロースとセルロース溶液との割合は、通常、前者:後者=1:10000〜1:1(重量比)、好ましくは1:200〜1:20(重量比)程度の広い範囲から選択できる。浸漬時間は、セルロースエステル溶液の濃度などに応じて、数秒以上(例えば3秒〜10分間、好ましくは5秒〜3分間程度)の範囲から適当に選択できる。
【0040】
セルロースエステル溶液を含浸したセルロース繊維又は粉末を、例えば風乾又は加熱下乾燥することにより、セルロース繊維又は粉末の表面にセルロースエステルの被覆を形成できる。
【0041】
(2)溶液噴霧乾燥法
セルロース繊維又は粉末にセルロースエステル溶液を噴霧し、乾燥することにより被覆を形成する方法である。
【0042】
セルロースエステル溶液中のセルロースエステル濃度は、通常、0.01〜25重量%(例えば0.1〜15重量%)、好ましくは、0.5〜10重量%(例えば0.1〜7重量%)程度である。また、繊維状又は粉末状セルロースとセルロース溶液との割合は、通常、前者:後者=1:100〜1:0.5(重量比)、好ましくは1:20〜1:1(重量比)、より好ましくは1:10〜1:2(重量比)程度の広い範囲から選択できる。なお、パルプなどの繊維状セルロースを用いる場合、予め解砕しておくと、セルロースエステル溶液を均一に噴霧できる。このようにしてセルロースエステル溶液を噴霧したセルロース繊維又は粉末を、風乾又は加熱下乾燥することにより、表面がセルロースエステルで被覆された被覆セルロースを得ることができる。
【0043】
(3)混合物添加法
セルロース繊維又は粉末とセルロースエステル溶液との混合物を、セルロースエステル溶液に対する貧溶媒に撹拌下添加することにより、被覆を形成する方法である。
【0044】
この方法では、繊維又は粉末の表面にセルロースエステルを凝固、沈澱化させることにより被覆を形成できる。その際、前記混合物を添加した貧溶媒に、撹拌などにより剪断力を加えると、過剰のセルロースエステルが付着するのを抑制でき、セルロース繊維又は粉末の表面の被覆がより効率よく、かつ均一に行える。前記剪断力は、通常、ミキサー、ホモジナイザー、渦巻きポンプ、スターラーなどを用いて作用させることができる。
【0045】
セルロースエステル溶液は、例えば、0.1〜30重量%、好ましくは1〜25重量%(例えば1〜10重量%)程度のセルロースエステルを含む場合が多い。セルロースエステルの濃度が30重量%を越えると、溶液の粘度が高くなり、特にセルロース繊維又は粉末の割合が多い場合に、前記繊維又は粉末を均一に分散、混合できず、繊維又は粉末の表面の被覆効率が低下し易い。前記混合物におけるセルロース繊維又は粉末の含有量は、固形物換算で、混合物の全量に対して、0.01〜80重量%、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは1〜20重量%程度である。前記混合物は、固形物換算で、例えば0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%程度のセルロース繊維又は粉末を含む場合が多い。
【0046】
セルロースエステルに対する貧溶媒としては、例えば、水、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、灯油などが挙げられる。好ましい貧溶媒には水が含まれる。前記貧溶媒の使用量は、例えば、前記混合物の全量に対して、1〜1000倍(重量比)、好ましくは10〜100倍(重量比)程度の広い範囲から選択できる。
【0047】
(4)混合物噴霧乾燥法
この方法では、繊維状又は粉末状セルロースとセルロースエステル溶液とを混合し、得られた混合物を、噴霧乾燥することにより被覆を形成できる。
【0048】
この方法では、例えば、スプレードライヤーなどを用いて、前記混合物を、気流中(例えば、高温気流中)に噴霧することにより、繊維又は粉末表面をセルロースエステルで被覆できる。
【0049】
セルロースエステル溶液中のセルロースエステル濃度は、通常、0.1〜30重量%、好ましくは1〜25重量%(例えば1〜10重量%)程度である。セルロースエステルの濃度が30重量%を越えると、溶液の粘度が高くなり、特にセルロース繊維又は粉末の割合が多い場合に、前記繊維又は粉末を均一に分散、混合できず、繊維又は粉末の表面を効率的に被覆できない。前記混合物におけるセルロース繊維又は粉末の含有量は、固形物換算の割合で、混合物の全量に対して、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%程度である。
【0050】
なお、被覆セルロースの製造において、乾燥時に被覆セルロースの塊状物が生成する場合には、乾燥時又は乾燥後に、例えばリファイナー等の解砕手段を用いて解砕するとよい。また、少量のセルロースエステルの溶媒を塊状物の表面と接触させることにより、セルロースエステルを部分的に除去し、セルロースエステルの被覆量を調整し、塊状物を小さくすることができる。
【0051】
なお、前記特公昭44−1944号公報には、疎水性高分子溶液を紙に含浸または噴霧したものを棒状に成形して得られるたばこフィルターが開示されているが、このようなフィルターは疎水性高分子の添加によりフィルターを構成するセルロース繊維などが接着または被覆されているため、フィルターの湿潤時の崩壊性が著しく損なわれる。
【0052】
これに対して本願発明の方法によれば、繊維を予めセルロースエステルで被覆し、得られた被覆繊維を所望の形状に成形する。従って、本願発明のフィルター素材は湿潤時の崩壊性が高く、しかも良好なたばこ喫味が得られる。
【0053】
このように、繊維状又は粉末状のセルロースの表面をセルロースエステルで被覆する本発明の方法によれば、繊度の細い被覆繊維や粒度の小さい被覆粉末を容易に得ることができ、表面積の大きな被覆セルロースを得ることができるという特色がある。
【0054】
本発明のたばこ煙用フィルター素材は、たばこ煙用フィルター(たばこ用フィルターロッド)を製造する上で有用である。前記たばこ煙用フィルターは、慣用の方法、例えば(a)繊維状などのフィルター素材を、そのままフィルターロッド成型用金型に充填してフィルタープラグとする方法、(b)シート状フィルター素材を、プラグ巻上げ機を用いて渦巻き状に巻き上げ又は折りたたんで、フィルタープラグとする方法などにより得られる。前記(b)の方法では、シート状素材を渦巻き状に巻き上げ又は折りたたんで成型した後乾燥してもよいし、乾燥した後に渦巻き状折りたたんで成型してもよい。
【0055】
また、シート状素材は、フィルタープラグを通じて、チャンネリングを抑制しつつ、煙を円滑かつ均一に通過させるため、クレープ加工又はエンボス加工されているのが好ましい。クレープ加工又はエンボス加工によって、断面が均一で外観の良好なフィルタープラグが得られる。クレープ加工によりシートの進行方向に沿って皺及び若干の裂け目が形成される。またエンボス加工により格子状、ランダム状などの凹凸部が分散して形成される。クレープ加工又はエンボス加工の深さは0.3〜5mm(例えば、0.5〜5mm)、ピッチは0.1〜2mm(例えば、0.1〜1mm)程度である場合が多い。このようなシート状フィルター素材は、成形性、通気性(通気抵抗)、吸着除去率などの特性を調整できる利点がある。さらに、クレープ加工やエンボス加工により、たばこ煙用に適した通気性(例えば、200〜600mmWG(ウォーターゲージ)、好ましくは300〜500mmWG程度)を有するフィルターを得ることができる。
【0056】
前記プラグ巻上げ機では、クレープ加工又はエンボス加工したシート状素材をロート中に巻き込んだ後、巻紙により円筒状に巻き上げ、糊付けし、適当な長さに切断することにより、フィルタープラグを作製できる。巻き上げに際して、クレープ加工したシート状素材は、皺が延びる方向に横断又はほぼ直交する方向に巻き上げる場合が多い。
【0057】
フィルタープラグの作製に際して、円筒状の巻紙同士での端部での糊付け、巻き上げられた円筒状の素材と巻紙との糊付けが必要な場合は、崩壊性を損なわないため、接着剤として、例えば、前記水溶性接着剤を用いるのが好ましい。
【0058】
このようなたばこ煙用フィルターを用いると、たばこ煙の喫味が良好である。すなわち、本発明のたばこ煙用フィルターを構成する被覆セルロースは、前記のように、たばこ喫味が良好であり、高い生分解性、湿潤時の崩壊性を有する。そのため、フィルターを屋外などに廃棄したとしても、速やかに雨水などにより崩壊し、分解されるので、環境汚染の虞れが少ない。
【0059】
なお、フィルターの生分解は、生物が作用しうる種々の外部環境、例えば、温度0〜50℃、好ましくは10〜40℃、相対湿度30〜90%程度で行うことができる。また、フィルターの生分解を促進するために、セルロースや有機酸などのセルロースエステルの構成成分に対して馴化した微生物を含む土壌や水中などの環境下にフィルターを晒すのが有用である。上記微生物を含む活性汚泥を用いると、フィルターの生分解性を高めることができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明のたばこ煙用フィルター素材及びたばこ煙用フィルターは、セルロースエステルで表面を被覆した繊維状又は粉末状セルロースを用いるので、たばこの喫味を損なうことなく、湿潤時の崩壊性及び生分解性に優れ、環境汚染を軽減できる。また、乾燥状態においては紙力が大きいにも拘わらず、湿潤時に容易かつ迅速に崩壊する。さらに、有害物質の除去効率に優れ、適度な通気性を有するにも拘わらず、成形性及び生分解性に優れる。
【0061】
本発明の方法によれば、前記の如き優れた特性を有するたばこ煙用フィルター素材を製造できる。
【0062】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、崩壊性、ろ水度、秤量、被覆量及び粘度平均重合度は、以下の方法により測定した。
【0063】
水崩壊度(%):試料約0.2gを精秤し、1リットルビーカー(外径110mm×高さ150mm)内の水500ml中に投入し、渦中心部の高さが最も高い液面の高さの1/2の高さとなるように、マグネチックスターラーで撹拌し、30分後に5メッシュの金網で瀘過し、105℃、2時間乾燥後の瀘残重量を測定し、下記式により水崩壊度を算出し、湿潤時の崩壊性を評価した。
【0064】
水崩壊度(%)=100[1−(B/A)]
式中、Aは試料の重量(g)、Bは乾燥後の瀘残の重量(g)を示す。
【0065】
カナダ標準ろ水度(ml):JIS−P−8121
秤量(g/m2 ):JIS−P−8121
被覆量(重量%):原料繊維又は粉末を精秤し、セルロースアセテートで被覆し、得られた被覆セルロースを105℃、2時間乾燥後秤量し、下記式に従って、重量増加分を算出することよりセルロースアセテートの被覆量を求めた。
【0066】
被覆量(重量%)=100[(D−C)/D]
式中、Cは木材パルプの重量(g)、Dは被覆セルロースの重量(g)を示す。
【0067】
粘度平均重合度:100ml容メスフラスコに乾燥した試料0.5000gを精秤し、これをCとする。約70mlのアセトンを加え試料を溶解させた後、25℃に温調し、アセトンで全溶を100mlに合わせる。その10mlをオストワルド粘度管にとり、25℃で標線間を流下する時間を0.01秒の精度で測定しこれをtとした。同様にブランクテストを行いこのときの流下時間をt0として下記の式から平均重合度を求めた。
平均重合度=169.93×[η]1.623
[η]=(ηsp/C)/(1+k×ηsp)
ηsp=t/t0−1
k=0.366
【0068】
また、生分解性は、下記の2つの方法により評価した。
(1)活性汚泥法:ASTM D5209に準拠し、活性汚泥として都市下水処理場活性汚泥を用いた。また供試試料は、試料2gを液体窒素中で3分間初期凍結し、コーヒーミルで3分間粉砕した後、液体窒素で1分間凍結し、振動粉砕機で3分間粉砕することにより調製した(100メッシュパス)。供試試料100ppm(仕込量30mg)と前記汚泥30ppm(仕込量9mg)の濃度で、25±1℃で4週間に亘って試験し、発生した二酸化炭素を分解された炭素数に換算し、供試試料の総炭素数との比率から4週間後の分解率(%)を求めた。
【0069】
(2)酸素分解法:酵素による分解性を測定する方法であり、試料0.1gをセルラーゼ(セルクラスト1.5L、ノボルボデイスクバイオインダストリー製)288CUNを含む緩衝液(PH4.8)20mlに添加し、100rpmで撹拌しながら45℃で7時間反応させた。反応終了後洗浄し、G4のグラスフィルターで瀘過、乾燥して反応後の試料重量を測定し、下記式により試料の残存率(%)を求めた。
【0070】
残存率(%)=[x/0.1]×100
式中、xは反応後の試料重量(g)を示す。
【0071】
喫味試験は、紙巻きたばこ[市販のたばこ(日本たばこ産業(株)、商品名わかば)のフィルタープラグを除去したもの]にフィルタープラグ化した試料を取り付け、喫煙愛好者5人によって喫味試験を行い、下記の基準で香喫味を評価し、5人の評価の平均値で表した。
評価基準
香喫味3:辛味がなく、たばこの旨味がある
香喫味2:辛味はないが、旨味が落ちる
香喫味1:辛味がある
【0072】
実施例1
セルロースアセテート(酢化度55.5%、平均置換度2.45、残存カルシウム/残存硫酸=1.2(モル比)、平均重合度370)を0.15重量%含むアセトン溶液500ml中に、水解砕後アセトン置換した針葉樹漂白クラフトパルプ(カナダ標準ろ水度270ml)10gを、撹拌下、15秒間浸漬し、浸漬後のパルプを引き上げて風乾し、表面をセルロースアセテートで被覆した被覆繊維を得た。被覆繊維におけるセルロースアセテートの被覆量は、5.0重量%であった。得られた被覆繊維を、水50リットルに均一に分散し、常法に従って湿式抄造し、脱水乾燥して坪量30g/m2 のシートを得た。そして、水崩壊性を調べたところ、65.9%であった。生分解性は、活性汚泥法では4週間後に63%の分解率を示し、酵素分解法では72.2%の残存率を示した。
【0073】
実施例2
水解砕後アセトン置換した針葉樹漂白クラフトパルプ(カナダ標準ろ水度270ml)10gと、セルロースアセテート(酢化度55.5%、平均置換度2.45、残存カルシウム/残存硫酸=1.2(モル比)、平均重合度370)を3.0重量%含むアセトン溶液400mlとを撹拌下混合した後、瀘過により脱液した。得られた混合物をミキサーで十分な撹拌力を与えた水浴中に投入し、セルロースアセテートを凝固させた後、風乾して、表面をセルロースアセテートで被覆した被覆繊維を得た。前記被覆繊維におけるセルロースアセテートの被覆量は2.1重量%であった。そして、実施例1と同様にして、常法により湿式抄造し、脱水、乾燥して秤量34.1g/m2 のシートを得た。そして崩壊性、生分解性を調べたところ、水崩壊性は63.2%、活性汚泥法による分解率は63%、酵素分解法による残存率は71.5%であった。
【0074】
実施例3
セルロースアセテート濃度5.0重量%のアセトン溶液を用いる以外は実施例2と同様にして、セルロースアセテートによる被覆量が9.7重量%の被覆繊維を調製した。そして、得られた被覆繊維から、実施例1と同様にして秤量34.6g/m2 のシートを作製した。前記シートの崩壊性、生分解性を調べたところ、水崩壊性は60.2%、活性汚泥法による分解率は59%、酵素分解法による残存率は72.1%であった。
【0075】
実施例4
セルロースアセテート(酢化度55.5%、平均置換度2.45、残存カルシウム/残存硫酸=1.2(モル比)、平均重合度370)を5.0重量%含むアセトン溶液1リットル中に、粉末状に解砕した針葉樹漂白クラフトパルプ(60メッシュパス)30.0gを加え、ミキサーで撹拌し均一に分散させた。この混合物を直径1mmのノズルから1mm/秒の速度で、回転数10000回転/分の羽根で撹拌された水浴中に押し出し、表面を被覆量9.76重量%のセルロースアセテートで被覆した被覆繊維を得た。前記被覆繊維から、実施例1と同様にして秤量25.0g/m2 のシートを作製した。得られたシートの水崩壊性は58.6%であり、生分解性は、活性汚泥法では4週間で60%の分解率、酵素分解法では76.4%の残存率を示した。
【0076】
実施例5
セルロースアセテート(酢化度55.5%、平均置換度2.45、残存カルシウム/残存硫酸=1.2(モル比)、平均重合度370)を1.0重量%含むアセトン溶液1リットル中に、粉末状セルロース(針葉樹漂白サルファイトパルプ、330メッシュパス)10gを加え、ミキサーで撹拌し均一に分散させて混合物を調製した。この混合物をスプレードライヤーを用いて100℃の気流中に噴霧し、乾燥して、表面をセルロースアセテートで被覆したセルロース粉末を得た。被覆粉末におけるセルロースアセテートの被覆量は、10.2重量%であった。得られた被覆粉末を、実施例1と同様に湿式抄造し、脱水乾燥して秤量25.0g/m2 のシートを作製した。そして崩壊性及び生分解性を調べたところ、水崩壊性は61.2%であり、生分解性は、活性汚泥法にでは60%の分解率、酵素分解法では、73.0%の残存率を示した。
【0077】
実施例6
水解砕後アセトン置換した針葉樹漂白クラフトパルプ10gを十分に揉みほぐした後、セルロースアセテート(酢化度55.5%、平均置換度2.45、残存カルシウム/残存硫酸=1.2(モル比)、平均重合度370)を1.0重量%含むアセトン溶液30gを噴霧器を用いて、出来るだけ均一になるようにパルプの表面に吹き付けた後風乾し、表面をセルロースアセテートで被覆した被覆繊維を得た。前記被覆繊維におけるセルロースアセテートの被覆量は1.8重量%であった。そして、得られた被覆繊維を実施例1と同様にして湿式抄造し、脱水乾燥して、秤量28.4g/m2 のシートを作製した。得られたシートの崩壊性、生分解性を調べたところ、水崩壊性は64.8%、活性汚泥法による分解率は66%、酵素分解法による残存率は70.1%であった。
【0078】
実施例7
セルロースアセテート濃度が3.0重量%のアセトン溶液を用いる以外は実施例6と同様にして、セルロースアセテートによる被覆量が5.7重量%の被覆繊維を得た。前記被覆繊維を用いて、実施例1と同様にして、秤量29.0g/m2 のシートを得た。前記シートの崩壊性及び生分解性を調べたところ、水崩壊性は、62.2%、活性汚泥法による分解率は65%、酵素分解法による残存率は71.6%であった。
【0079】
実施例8
セルロースアセテート濃度が5.0重量%のアセトン溶液を用いる以外は実施例6と同様にして、被覆繊維(セルロースアセテートによる被覆量:9.4重量%)を得た。得られた被覆繊維を用いて、実施例1と同様にして、秤量28.6g/m2 のシートを作製した。得られたシートの水崩壊性は56.1%、生分解性は、活性汚泥法による分解率が61%、酵素分解法による残存率が73.5%であった。
【0080】
比較例1
実施例1で用いたものと同様の針葉樹漂白クラフトパルプを用いて、常法に従って湿式抄造し、脱水乾燥して坪量29.5g/m2 のシートを得た。前記シートの崩壊性及び生分解性を評価したところ、水崩壊性は69.7%であり、生分解性は、活性汚泥法では73%の分解率を、酵素分解法では54.3%の残存率を示した。
【0081】
比較例2
断面Y形の捲縮セルロースアセテート短繊維(繊度3デニール、繊維長5mm、酢化度55.5%、平均置換度2.45、残存カルシウム/残存硫酸=1.2(モル比)、平均重合度370)の生分解性を調べたところ、活性汚泥法では分解率6%、酵素分解法では残存率96.8%であった。
【0082】
実施例9
実施例1で得た幅28cmのシート状フィルター素材を、クレープ化ロール(表面温度150℃、溝ピッチ幅2.0mm、溝深さ0.7mm)により100m/分の速度でクレープ化加工したところ、良好な加工性を示した。クレープ化したシート状フィルター素材を、可塑剤を添加せずに、250m/分の速度で巻き上げ、長さ108mm、円周23.5mm、重量1.05g/本のフィルタープラグを作製した。
【0083】
実施例10〜16
実施例2〜8で得たシート状フィルター素材をそれぞれ用いる以外は、実施例9と同様にして、フィルタープラグを作製した。
【0084】
比較例3
比較例2で得たシート状フィルター素材を用いる以外は、実施例9と同様にして、フィルタープラグを作製した。
【0085】
比較例4
比較例2と同様のセルロースアセテート短繊維束と、可塑剤としてトリアセチンを用いて、フィルタープラグ(長さ108mm、円周23.5mm、重量1.10g/本)を作製した。
【0086】
実施例9〜16、比較例3、4で得たフィルタープラグの崩壊性を調べたところ、表に示す結果を得た。
【0087】
【表1】
表から明らかなように、実施例9〜16のフィルターは、比較例4のフィルターより水崩壊性に優れ、たばこ喫味は、比較例3のフィルターよりも良好で、比較例4のフィルターに匹敵する。
Claims (10)
- 繊維状又は粉末状セルロースがセルロースエステルで被覆された被覆セルロースを含む抄紙構造のシート状たばこ煙用フィルター素材であって、前記被覆セルロースを含むスラリーを湿式抄紙することにより得られ、かつASTM D5209に準ずる試験方法において、発生する炭酸ガス量を基準として、4週間後に40重量%以上分解するたばこ煙用フィルター素材。
- セルロースエステル中に残存する硫酸量とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との当量比(後者/前者)が、0.1〜1.5である請求項1記載のたばこ煙用フィルター素材。
- 木材パルプが、平均置換度1〜3のセルロースアセテートで被覆され、前記セルロースエステルの被覆量が、被覆セルロースの総量に対して、0.1〜50重量%である請求項1記載のたばこ煙用フィルター素材。
- 木材パルプ又はその粉末の表面が、酢化度30〜62%のセルロースアセテートで被覆された被覆セルロースを含む抄紙構造のシート状たばこフィルター素材であって、前記被覆セルロースを含むスラリーを湿式抄紙することにより得られ、かつセルロースアセテートの被覆量が、被覆セルロースの総量に対して、1.0〜30重量%であり、ASTM D5209に準ずる試験方法において、発生する炭酸ガス量を基準として、4週間後に40重量%以上分解するたばこ煙用フィルター素材。
- 請求項1記載のたばこ煙用フィルター素材からなるたばこ煙用フィルター。
- 繊維状又は粉末状セルロースの表面を、セルロースエステルで被覆し、得られた被覆セルロースを含むスラリーを湿式抄紙する請求項1記載のたばこ煙用フィルター素材の製造方法。
- 繊維状又は粉末状セルロースの表面に、セルロースエステルを付着させ、乾燥することにより被覆する請求項6記載のたばこ煙用フィルター素材の製造方法。
- 浸漬又は噴霧によりセルロースエステルを付着させる請求項7記載のたばこ煙用フィルター素材の製造方法。
- 繊維状又は粉末状セルロースとセルロースエステル溶液との混合物を、撹拌下、前記セルロースエステルに対する貧溶媒に添加することにより被覆する請求項6記載のたばこ煙用フィルター素材の製造方法。
- 繊維状又は粉末状セルロースとセルロースエステル溶液との混合物を、噴霧乾燥することにより被覆する請求項6記載のたばこ煙用フィルター素材の製造方法。
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