JP4577706B2 - 液体麹の製造方法及びその利用 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体麹の製造方法、酒類又は食品の製造方法、及びみりんに関する。
【0002】
【従来の技術】
酒類の製造に用いられる麹は、蒸きょう等の処理後の原料に糸状菌の胞子を接種して培養する固体麹と、水に原料及びその他の栄養源を添加して液体培地を調製し、これにかび類の胞子又は前培養した菌糸等を接種して培養する液体麹がある。固体麹は、従来より広く使用されているが、形状が固体であるため酒類の製造工程の自動化、特に醪の管理の自動制御に大きな障壁の一つとなっている。
【0003】
液体麹は、アルコール製造において様々な検討がなされており〔麹学、村上英也編著、第302〜312頁、日本醸造協会、昭和61年3月25日第1版発行〕、酒類の製造においても液体麹を用いる製造方法が開示されている。しかし、清酒では多孔性膜上に麹菌を培養する必要があるため操作が煩雑になる(特開平11−225746号公報)、及び酵素力価が不十分である等〔醗酵協会誌、第22巻、第4号、第155〜161頁(1964)〕の欠点を有し、焼酎では発酵速度が従来の固体麹に比べて低くなる〔日本醸造協会誌、第89巻、第11号、第913〜914頁(1994)〕といった欠点を有する。また、みりんでは所望の酵素力価を得るために、リンゴ酸ナトリウム又はシュウ酸ナトリウム等の化合物を添加する工程が必要であり(特公昭37−3540号公報)、最近の消費者の傾向としてこのような化合物を含まない食品が好まれている。
【0004】
食品添加物の一つにD−ソルビトール液があり、この用途の一つに酒類、清涼飲料水、みそ、しょうゆのコク付け、保香剤、つや出しが挙げられている〔1995年度版 食品添加物便覧(改訂第32版)、第366頁、(株)食品と科学社、平成8年4月1日第2刷発行〕。みりん中のグルコースの寒冷析出を防止する方法として、みりんにソルビトール及び/又はグリセロール等の多価アルコールを添加する方法が特公昭39−24574号公報に開示されている。該公報ではみりんに多価アルコールを添加することによりグルコースの寒冷析出を防止するだけでなく、みりんの香味も向上することが述べられている。しかし、添加するソルビトール及びグリセロールは食品添加物であり、消費者の最近の傾向として食品添加物を含まないものが好まれている。また、ソルビトール及びグリセロールは現行の酒税法上用いることはできない。
【0005】
更に、甘味糖類に糖アルコール及び/又は果糖を用いる低カロリーみりん風調味料について特開2000−23634号公報に開示されている。該公報で得られるみりん風調味料は従来のみりん風調味料と比べて遜色のない調理適性を有することが述べられている。しかし、みりん風調味料は一般にみりんの調理効果を目指しているが、現在までに、みりんと同等の調理効果が得られていない。また、醤油酵母(Zygosaccharomyces rouxii)を培養し、その発酵液を酒精含有糖質調味料に用いる方法が特開2001−178399号公報に開示されている。該公報では、発酵液中のグリセロール及びアラビトールを酒精含有糖質調味料に含有させることにより、煮崩れ防止及びてりつや出しといった加工食品の調理機能を有意に改善できることが述べられている。しかし、醤油酵母の培養液には、糸状菌の培養液のようにアミラーゼ、プロテアーゼ等の酵素がほとんど含まれておらず、麹の有する好ましい風味も得ることはできない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況にかんがみて行われたものであり、液体麹の製造方法、並びにそれを用いる酒類又は食品の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すると、第1の発明はアスペルギルス属に属する糸状菌を用いる液体麹の製造方法において、該製造工程に、培地に対して1〜3v/v%のエタノールを添加する工程を包含する液体麹の製造方法に関し、第2の発明は第1の発明により得られる液体麹に関し、第3の発明は第2の発明を用いる酒類又は食品の製造方法に関し、第4の発明は第3の発明を用いることにより得られるみりんに関する。
【0008】
本発明者らは液体麹の製造方法、及びこれを用いる酒類又は食品の製造方法について鋭意検討を行った。その結果、液体麹の製造において、培地に対して1〜3v/v%のエタノールを添加する工程を包含することにより糖アルコールを含有する液体麹を得ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明における液体麹の製造方法は、原料等を添加した液体培地にスペルギルス属に属する糸状菌の培養を行い、その培養中に、培地に対して1〜3v/v%のエタノールを添加する工程を包含するものである。原料は固体麹を製造する場合と同様の原料であれば特に限定はない。具体的には、梗米、糟米、大麦、小麦、ライ麦、燕麦、蕎麦、ヒエ、アワ、コウリャン、トウモロコシ、マイロ等の穀類、サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ、タロイモ、キャッサバ等の芋類、デーツ、クリ、ゴマ、大豆等の果実、種子、及び豆類等を挙げることができる。これらの原料の形状には特に限定はなく、未精白物、精白物粒状物、粉体物、及び裁断物等を用いることができ、有機溶剤等の処理物、エクストルーダー等の造粒機による造粒物を用いてもよい。原料は水と混合して液体培地を調製する。混合割合は糸状菌が増殖できる程度であれば特に問題はないが、原料の割合が高い方が糖アルコールの生成量が多くなるので好ましい。
【0010】
原料に含まれるでん粉は、培養前にあらかじめ糊化及び/又は液化しておくことが好ましい。でん粉の糊化方法については特に限定はなく、蒸きょう法、焙炒法等常法に従って行えばよい。後述する液体培地の殺菌工程において、高温高圧滅菌等によりでん粉の糊化温度以上に加熱する場合はこのときにでん粉が糊化されるので同時に行うこともできる。でん粉の液化方法は特に限定はなく、例えば、回分法及び/又は連続法等によりα−アミラーゼで液化すればよい。用いるα−アミラーゼは中温性又は高温性のどちらでも使用可能であり、複数のもの又はグルコアミラーゼ等の糖化酵素を組合せて用いることもできる。更に、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、及び/又はリパーゼ等の酵素製剤を併用してでん粉の液化を行ってもよい。回分法による液化方法の例としては、原料、水、プロテアーゼ、α−アミラーゼ、及び酵素剤の安定化剤を混合し、40〜45℃で30分間保持後、85〜95℃で1〜2時間保持する方法を挙げることができる。
【0011】
前述の原料の他に栄養源として有機物、無機塩等を添加しても液体麹を製造することができる。これらの添加物は糸状菌の培養に一般に使用されているものであれば特に限定はないが、有機物としては米糠、小麦麩、コーンスティープリカー、大豆粕、脱脂大豆等を、無機塩としてはアンモニウム塩、硝酸塩、カリウム塩、酸性リン酸塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の水溶性の化合物を挙げることができ、2種類以上の有機物及び/又は無機塩を同時に使用してもよい。これらの添加量は糸状菌の増殖を促進する程度であれば特に限定はない。このようにして得られる糸状菌の液体培地は必要に応じて滅菌処理を行ってもよく、処理方法には特に限定はない。例としては、高温高圧滅菌法を挙げることができ、120℃で25分間行えばよい。
【0012】
滅菌した液体培地を培養温度まで冷却後、糸状菌を液体培地に接種する。本発明でいう糸状菌は、栄養繁殖の期間に菌糸体の形態で増殖する微生物である。特に、酒類、醸造食品等に用いることのできる糸状菌が好ましい。その例として、アスペルギルス オリーゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス ソーエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス ウサミ(Aspergillus usamii)、アスペルギルス カワチ(Aspergillus kawachii)、モナスカス アンカ(Monascus anka)等を挙げることができる。これらの糸状菌は一種類の菌株による培養、又は同種若しくは異種の二種類以上の菌株による混合培養のどちらでも用いることができる。これらは胞子又は前培養により得られる菌糸のどちらの形態のものを用いても問題はないが、菌糸を用いる方が対数増殖期に要する時間が短くなるので好ましい。胞子又は菌糸の液体培地への接種量には特に制限はないが、少ない場合は所望の糖アルコール濃度になるのに必要な液体培地当りの菌体量に到達する時間も要し、雑菌汚染を受けやすくなる。一方、添加量が多いと胞子の回収又は菌糸の前培養に手間がかかり、要する費用も高くなる。このため、液体培地1ml当り菌糸1〜2mgが好ましい。胞子は糸状菌又は市販の種麹を固体培養して得られる胞子を回収して用いることができる。具体例としては、Brix10の麹汁培地に2w/v%寒天を加えた麹汁寒天培地に糸状菌を培養して得られる胞子を回収すればよい。菌糸の前培養は液体培養を行えばよく、培地に胞子又は菌糸を接種して培養後、菌糸を無菌的に回収すればよい。この場合の液体培地の例としては、Brix10の麹汁培地を挙げることができる。
【0013】
糸状菌の培養温度は、生育に影響を及ぼさないものであれば特に限定はないが、好ましくは25〜42℃、より好ましくは30〜40℃で行うのがよい。培養温度が低いと糸状菌の増殖が遅くなるため雑菌による汚染が起きやすくなる。培養時間は40〜200時間で培養するのが好ましい。液体麹中の糖アルコールの濃度は培養時間と共に増加する。培養装置は液体培養を行うことができるものであればよいが、糸状菌は好気培養を行う必要があるので、無菌の酸素又は空気を培地中に供給する必要がある。また、培養中は培地中の原料、酸素、及び菌糸が装置内に均一に分布するようにかくはんをする必要がある。酸素の供給量及びかくはん条件は培養装置、培地の粘度等により適宜選択すればよい。
【0014】
本発明では糸状菌の培養中にエタノールを添加する工程を包含する。エタノールを添加することにより、培養中の糸状菌の生育に対してストレスが負荷され、その結果、糖アルコールを高濃度で含有する液体麹を得ることができる。本発明では、酒類又は食品の製造に用いる安全性からエタノールが最も好適である。エタノールは少なくとも一回添加すればよく、培地に対する添加割合は1〜10v/v%、好ましくは1〜3v/v%であり、一回の添加はできるだけ短時間で行うことが好ましい。エタノールと水等との混合物における添加量は水等による培地の体積の増加を考慮する必要があるが、エタノールの濃度が99.0v/v%以上の場合は考慮しなくてもよい。エタノールの添加割合が1v/v%未満では所望の糖アルコール濃度に到達しない。一方、エタノールの添加割合が10v/v%より多い場合は培地の粘度の大幅な変化がみられるためにかくはん回転数及び/又は通気量等の調整が必要となり、その操作は煩雑になる。エタノールの添加時期は、糸状菌の培養中であれば特に限定はないが、培養開始40時間以内が好ましい。エタノール添加後はその濃度を一定に保持する必要はなく、自然に蒸発しても問題はない。
【0015】
更に、本発明では、前述の製造方法により得られる液体麹を培地の一部及び/又は糸状菌の前培養の菌糸として用いて繰り返し培養することにより新たに液体麹を製造することができる。このように行うことにより、得られる液体麹の糖アルコール濃度は用いた液体麹より更に高くすることができる。このときの液体培地に対する液体麹の割合は特に限定はないが、好ましくは10〜70v/v%、より好ましくは20〜60v/v%であり、30〜50v/v%が特に好適である。新たに製造する液体麹の原料、培養条件等は前述に従って実施すればく、アルコール類の添加は任意である。この例として、前述の方法により得られるグリセロール及びマンニトールをそれぞれ1.9及び2.5w/v%含有する液体麹1.5リットルとこの液体麹を得るのに用いた培地1.5リットルとを混合し、一価のアルコールを添加せずに培養する。その結果、得られる液体麹のグリセロール及びマンニトールの濃度はそれぞれ、5.2及び5.7w/v%と増加した。更に、このグリセロール及びマンニトールの濃度が増加した液体麹1.5リットルと前述の培地1.5リットルとを混合し、一価のアルコールを添加せずに前述と同様に培養すると、得られる液体麹のグリセロール及びマンニトールの濃度はそれぞれ、7.0及び6.0w/v%にまで増加した。
【0016】
本発明によって得られる液体麹は、糖アルコールを高濃度で含有するものであり、糸状菌由来のα−アミラーゼ、酸性プロテアーゼ等の酵素活性も十分に有するものである。本発明における糖アルコールは糖のカルボニル基が還元された多価アルコールを示し、具体的には、マンニトール、エリトリトール、アラビトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等を挙げることができ、グリセロールも本発明の糖アルコールに含まれる。また、本発明における糖アルコールの濃度とはこれらの化合物の濃度の総和を示す。液体麹中の糖アルコールの濃度は、その一例として、カラムにCAPCELL PAK NH2〔(株)資生堂製、φ=4.6mm×250mm〕を用いて高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0017】
本発明の液体麹はそのまま酒類又は食品の製造に用いることができ、甘味つけ、コクつけ、つやつけ、保香、増粘、保湿等の効果を得ることができる。また、得られる酒類又は食品は香味の優れたものであり、特に、麹由来の好ましい風味に優れている。更に、酵素の失活しない条件で後処理を行っても同様に用いることができる。後処理方法としては、減圧濃縮法、凍結乾燥法、圧搾ろ過法、遠心分離法等による濃縮、乾燥、固液分離等の操作を挙げることができ、これらの方法は常法に従って実施すればよい。
【0018】
得られる液体麹を原料の少なくとも一部に用いて、酒類又は食品を製造することができる。本発明でいう酒類は特に限定はないが、みりん、清酒、焼酎、本直し、及び赤酒が好適である。しかし、固体麹と液体麹とでは水分含量が大きく異なるので、液体麹を用いる仕込時の水分の総量は、固体麹を用いる仕込配合に基づいて仕込を行うときの総量に調整する方が好ましい。掛原料は蒸きょう法、焙炒法等によりでん粉を糊化させて用いる方法の他に掛原料の液化物を用いることもでき、これらは常法に従って調製すればよい。また、必要に応じて各酒類の醪に酵素剤を添加してもよい。酵素剤の種類としては、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ等を挙げることができる。例えば、清酒は添、仲、及び留仕込の三段仕込みで液体麹、蒸きょうした精白米、汲水、清酒酵母、及び醸造用乳酸を混合して10〜15℃で発酵させ、上槽、及び精製工程により得ることができる。焼酎の製造の例としては、二段仕込において、麹に本発明の液体麹を用い、以下常法に従って製造する方法を挙げることができる。これらのようにして得られる酒類は香味の優れたものになる。
【0019】
液体麹を用いるみりんの製造は、従来の固体麹を用いるみりんの製造と同様の方法で製造することができる。用いる液体麹の量は特に限定はなく、蒸し糯米等の掛米の代りに本発明により得られる液体麹を用いてもよい。また、固体麹等の本発明の方法以外の方法により得られる麹との併用、及び/又は前述の酵素剤を添加してもよい。ただし、前述の酒類の製造と同様に固体麹を用いる仕込配合の水分の総量に調整する方が好ましい。製造方法の一例として、以下の方法を挙げることができる。本発明の液体麹、蒸し糯米、汲水、及び醸造用アルコールを混合してみりん醪を調製する。みりん醪を時々かくはんし、30℃前後で30〜60日熟成後、圧搾ろ過等により上槽してみりんを得ることができる。
【0020】
このようにして得られるみりんはグリセロール、マンニトール、エリトリトール、アラビトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等の糖アルコールを含有するものである。みりん中の糖アルコール濃度は液体麹の用いる量により異なるが、例えば、後述の実施例1により得られる本発明1〜本発明3を用いて実施例2、表2の仕込配合でみりんを製造することにより、糖アルコール濃度が0.8w/v%のみりんを得ることができる。また、前述の本発明の製造方法により得られる液体麹の一部を用いて製造することにより得られる液体麹を用いて同様にみりんを製造すると糖アルコール濃度が2.5w/v%のみりんを得ることができる。更に、本発明の製造方法により得られる液体麹を酵素が失活しないように濃縮及び/又は乾燥させた液体麹を用いる等により糖アルコール濃度が20w/v%以上のみりんも得ることができる。一方、固体麹を用いることにより得られるみりんでは、糖アルコール濃度が0.1w/v%未満の微量である。このようにして得られるみりんは糖類及び/又は醸造用アルコールの添加、おり下げ、活性炭処理、火入れ等の工程を行ってもよい。
【0021】
本発明のみりんは従来のみりんよりてりつや効果が高い、保湿性に優れている等の調理効果を有し、香味に優れたみりんである。本発明でいうてりつやとは、加工及び/又は調理することにより得られる加工食品に生じる光沢を示し、加工食品、その原料、及び加工又は調理方法には特に限定はない。てりつやは目視による官能評価により判断することもできるが、光沢計を用いて光沢測定を行うことによりその大小で表すこともできる。光沢計の種類には特に限定はなく、測定方法及び評価は用いる光沢計の取扱方法に従って行えばよい。本発明でいう保湿性とは、前述の加工食品における調理後の水分含量の経時変化により表すことができ、水分含量の減少が少ないほど保湿性に優れている。
【0022】
本発明でいう食品には特に限定はないが、調味料、漬物、甘酒、菓子類、米飯類、水産加工品等が好適である。更に、本発明の液体麹、その自己消化物、並びにこれらを凍結及び/又は乾燥させることにより得られるものも本発明でいう食品の対象となる。みそ、醤油、食酢、魚醤油、アルコール含有発酵調味料等、それらの製造に麹を用いる調味料は、麹の少なくとも一部に本発明の液体麹を用いればよく、その割合は適宜選択すればよい。また、本発明の液体麹に各種原料を混合し、必要に応じて圧搾ろ過、加熱殺菌等を行うことにより液状調味料を得ることができ、配合量は適宜選択すればよい。各種原料としては、糖類等の甘味料、増粘安定剤、動物性原料又は植物性原料の蛋白分解物、魚介類、鰹節、肉類、昆布類、椎茸、又は醸造用酵母等のエキス、L−グルタミン酸ナトリウム又は5´−イノシン酸二ナトリウム等の呈味料、各種アミノ酸又はペプチド、果汁類、果実酢、又は有機酸等の酸味料、食塩、油脂、乳化剤、保存料、酸化防止剤、着色料、着香料等を挙げることができる。漬物の製造は調味液の原料に本発明の液体麹を用いて漬込みを行えばよい。例えば、大根の麹漬において、液体麹、砂糖、みりん、及び食塩を混合した調味液を用いて本漬を行うことができる。甘酒の製造は本発明の液体麹にでん粉を糊化させた米及び/又は水を混合し、55℃前後で熟成すればよく、配合量及び時間は適宜選択すればよい。
【0023】
かくして本発明により、アスペルギルス属に属する糸状菌を用いる液体麹の製造方法において、該製造工程に、培地に対して1〜3v/v%のエタノールを添加する工程を包含することを特徴とする液体麹の製造方法及び該製造方法により得られる液体麹、該液体麹を用いる酒類又は食品の製造方法、並びにてりつや効果及び保湿性等の調理効果が高く、香味に優れたみりんが提供される。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1
液体麹の製造において、一価のアルコールの添加量及び添加時期の検討を行った。塩化ナトリウム1.22g及び塩化カルシウム二水和物3.08gを溶解した水2.5リットルに、90%精白米2.25kg、及びα−アミラーゼにクライスターゼY7〔大和化成(株)製〕2.7gを添加して95℃で1時間液化を行った。精白米の添加はかくはんしながら行い、クライスターゼY7の添加は精白米を1/5量添加した段階で行った。該液化物3リットルを培養装置BMA−05PI〔(株)バイオット製〕に入れ、硝酸カリウム9.0g及びリン酸二水素カリウム6.0gを添加し、120℃で25分間高温高圧滅菌を行った。40℃まで冷却後、アスペルギルス カワチをBrix10の麹汁培地(pH4.7)で振とう培養後無菌的に集菌及び洗浄した菌糸4.5gを添加し、かくはん回転数、通気量、及び培養温度をそれぞれ、400rpm、1.5vvm、及び40℃で170時間培養を行った。一価のアルコールとして99.5v/v%エタノール(EtOH)を表1に示す液量及び時間に添加して培養した。得られた液体麹を3,000rpmで10分間遠心分離し、その上清をろ過したろ液中について糖アルコールとしてグリセロール及びマンニトールを前述のように測定した。測定結果を表1に示す。表1中の糖アルコールはグリセロールとマンニトールの和を示す。
【0026】
【表1】
Figure 0004577706
【0027】
表1よりエタノールを培地に対する添加割合が1v/v%で培養開始時に添加した本発明1、3v/v%で培養開始24時間後に添加した本発明2、及び3v/v%で40時間後に添加して製造した本発明3は、糖アルコールの濃度がそれぞれ2.8、4.2、及び4.4w/v%である液体麹が得られた。また、前述のようにして得られたろ液を透析外液に水を用いて透析後、α−アミラーゼ活性及び酸性プロテアーゼ活性を第四回改正国税庁所定分析法注解〔(財)日本醸造協会、平成5年2月20日 第四回改正版発行〕に基づいて測定したところ、本発明1〜本発明3は十分に高い活性を有するものであった。したがって、液体麹の製造においてエタノールを添加することにより、糖アルコール濃度が高く、十分に高いα−アミラーゼ活性及び酸性プロテアーゼ活性を有する液体麹を得ることができることが明らかになった。
【0028】
実施例2
本発明3の液体麹を用いてみりんの製造を行った(以下、本発明4という)。表2に示す仕込配合でみりん醪を調製し、30℃で40日間熟成後に固液分離をしてみりんを得た。対照例として、アスペルギルス オリーゼの固体麹及びアスペルギルス カワチの固体麹を用いてみりんの製造を行った(以下、それぞれ、対照例1及び対照例2という)。固体麹の製麹は常法に従って行った。これらのみりんのpH、アミノ態窒素、全窒素、全糖、グリセロール、マンニトール、及びα−エチルグルコシド(α−EG)の分析、並びに官能検査を行った。pH、アミノ態窒素、全窒素、及び全糖は第四回改正国税庁所定分析法注解〔(財)日本醸造協会、平成5年2月20日第四回改正版発行〕に基づき行い、グリセロール及びマンニトールは前述の方法で行った。α−EGはグリセロール及びマンニトールの測定時に同時に測定した。分析値を表3に、官能検査結果を表4に示す。
【0029】
【表2】
Figure 0004577706
【0030】
【表3】
Figure 0004577706
【0031】
【表4】
Figure 0004577706
【0032】
香 0点;香が良くない〜3点;香が良い。
味 0点;味が良くない〜3点;味が濃厚でふくらみがある。
総合 0点;風味が良くない〜3点;風味が良くバランスがとれている。
上記表4の数値は、パネラー15人の合計点である。
【0033】
表3より、本発明4のみりんはpH、アミノ態窒素、全窒素、及び全糖の分析値が対照例1及び対照例2と同等であったが、グリセロール及びマンニトールといった糖アルコール、並びにα−EGの濃度が高い値であった。また、表4より、本発明4のみりんは対照例1及び対照例2よりも重厚な香気と上品な甘味を呈するものであった。また、本発明4、対照例1、及び対照例2を用いて調理試験を行った結果、本発明4のみりんは対照例1及び対照例2のみりんよりてりつや効果及び保湿性が高かった。したがって、本発明により得られるみりんは従来のみりんよりグリセロール及びマンニトールといった糖アルコール、並びにα−EGの濃度が高く、優れた香味を有するだけでなく、てりつや効果及び保湿性といった調理効果も高いみりんであるであることが明らかになった。
【0034】
実施例3
本発明3の液体麹を用いて甘酒を製造した(以下、本発明5という)。表5に示す仕込配合で、55℃、18時間熟成して甘酒を得た。対照例として、対照例2で用いた固体麹を用いて本発明5と同様に行い、甘酒を得た(以下、対照例3という)。これらの甘酒について官能検査を行った結果、表6に示すように本発明5の甘酒は、対照例3の甘酒よりも甘味が増し、好ましい風味を有していた。
【0035】
【表5】
Figure 0004577706
【0036】
【表6】
Figure 0004577706
【0037】
香 0点;香が良くない〜3点;香が良い。
味 0点;味が良くない〜3点;味が濃厚でふくらみがある。
総合 0点;風味が良くない〜3点;風味が良くバランスがとれている。
上記表6の数値は、パネラー15人の合計点である。
【0038】
実施例4
本発明3の液体麹を用いて麹風味調味料を製造した(以下、本発明6という)。表7に示す仕込配合で30℃、7日間熟成することにより麹風味調味料を得た。対照例として、対照例2で用いた固体麹を用いて本発明6と同様に行い、麹風味調味料を得た(以下、対照例4という)。これらの麹風味調味料について官能検査を行った結果、本発明6の麹風味調味料は対照例4より麹由来の好ましい風味に優れ、甘味が程よく、べったら漬け、麹漬け、及び塩辛等に好適な麹風味調味料であった。
【0039】
【表7】
Figure 0004577706
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、アスペルギルス属に属する糸状菌を用いる液体麹の製造方法において、該製造工程に、培地に対して1〜3v/v%のエタノールを添加する工程を包含する方法により液体麹を製造すると糖アルコール濃度の高い液体麹を得ることができる。該液体麹を用いて酒類又は食品を製造すると、発酵生産による糖アルコールを含有する香味の優れた、麹由来の好ましい風味を有する酒類又は食品を得ることができる。特に、得られるみりんは、香味が優れているだけでなく、てりつや効果、保湿性等の調理効果が従来の固体麹を用いて得られるみりんよりも優れたものになる。

Claims (4)

  1. アスペルギルス属に属する糸状菌を用いる液体麹の製造方法において、該製造工程に、培地に対して1〜3v/v%のエタノールを添加する工程を包含することを特徴とする液体麹の製造方法。
  2. 糖アルコールを含有することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法により得られる液体麹。
  3. 請求項2に記載の液体麹を用いることを特徴とする酒類又は食品の製造方法。
  4. 請求項3に記載の製造方法により得られるみりん。
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