JP4755869B2 - 液体麹を用いたみその製造方法 - Google Patents
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Description
固体麹は、伝統的な製造方法で得られるものであるが、固体培養という特殊な培養形態であるため、大規模製造に不向きである。
しかし、この液体麹は、みその製造に必要な酵素活性が十分に得られないことが当業者に知られているため、これまで実製造に使用された例はない。
次に、請求項2に係る本発明は、表面の全部が穀皮で覆われた穀類が玄米及び/又は玄麦である請求項1記載のみその製造方法を提供するものである。
この方法によれば、従来の固体麹を用いたみその製造法により得られるみそと同程度の品質を有し、官能的にも遜色のないみそを製造することができる。
さらに、種々の原料や麹菌株を用いた麹菌培養物を組み合わせて製造した液体麹を使用することにより、みそのバラエティー化を図ることが極めて容易となる。
みそは、このうち麹の原料の名称を冠して、麹の原料が米ならば米みそ、大麦または裸麦ならば麦みそ、大豆ならば豆みそと一般に呼ばれている。この他に、米みそ、麦みそ、豆みそのいずれにも属さない調合みそと呼ばれるみそがある。調合味噌とは、米みそ、麦みそ、豆みそを調合したみそと、米麹に麦麹または豆麹を混合したものを使用したみそと、前記3種のみそに使用される原料(米、大麦、裸麦、大豆)以外の原料(例えば、脱脂大豆、トウモロコシなど)を用いたみそと、を指す。
請求項1に係る本発明は、この麹として、固体麹ではなく、培養原料として、表面の全部又は一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類を含む液体培地と、表面が外皮で覆われた豆類及び/又は芋類を含む液体培地と、細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌアを含む液体培地と、から選ばれた少なくとも1種の液体培地で麹菌を培養して得た液体麹を使用することを特徴とするものである。
本発明のみその製造に用いる液体麹は、本発明者らが提案した方法(特願2004−350661号明細書、同2004−352320号明細書、同2004−352324号明細書、同2004−378453号明細書)により得られる。
すなわち、この方法は、表面の全部又は一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類、表面が外皮で覆われた豆類及び/又は芋類、細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌア等の原料を添加して調製された液体培地で麹菌の培養を行なうことにより、液体麹を製造する工程を包含する。具体的には、この方法では、前記した原料を使用して麹菌を培養するため、当該穀類中のでん粉の糖化に時間がかかり、培養系への糖の放出速度が抑制され、液体麹の酵素活性が増強される。しかも、プロテアーゼ、グルコアミラーゼと耐酸性α−アミラーゼが同時にバランスよく生成、蓄積される。
例えば、穀類が大麦の場合、未精白の精白歩合100%のもの、或いは未精白の精白歩合を100%とし、この未精白の精白歩合(100%)から大麦の穀皮歩合(一般的には7〜8%)を差し引いた割合、すなわち92〜93%程度の精白歩合以上のものである。
培養原料のアマランサスとキヌアは、単独で用いてもよく、或いは組み合わせて用いてもよい。これらは、細砕や粉砕などの前処理をすることなく、液体培地の調製に用いる。
すなわち、上記の培養原料は、水と混合して液体培地を調製する。原料の配合割合は、麹菌の培養中にプロテアーゼ、グルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼが選択的に生成、蓄積される程度のものに調整される。
例えば、大麦または裸麦を培養原料とした場合には、水に対して大麦または裸麦を1〜20%(w/vol)添加した液体培地に調製される。また、無精白の大麦または裸麦を用いた場合には、さらに好ましくは8〜10%(w/vol)添加した液体培地に調製され、95%精白した大麦または裸麦を原料とした場合には、さらに好ましくは1〜4%(w/vol)添加した液体培地に調製される。
次に、籾殻を除いた玄米を培養原料とした場合には、水に対して玄米を1%(w/vol)から20%(w/vol)、好ましくは5%(w/vol)から13%(w/vol)、より好ましくは8%(w/vol)から10%(w/vol)を添加した液体培地に調製される。
なお、培養原料の使用量が上限値を超えると、培養液の粘性が高くなり、麹菌を好気培養するために必要な酸素や空気の供給が不十分となり、培養物中の酸素濃度が低下して、培養が進み難くなるので好ましくない。一方、培養原料の使用量が下限値に満たないと、目的とする酵素が高生産されない。
これらの添加物は、麹菌の培養に一般に使用されているものであれば特に限定はないが、有機物としては米糠、小麦麩、コーンスティープリカー、大豆粕、脱脂大豆等を、無機塩としてはアンモニウム塩、硝酸塩、カリウム塩、酸性リン酸塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の水溶性の化合物を挙げることができ、2種類以上の有機物及び/又は無機塩を同時に使用してもよい。これらの添加量は、麹菌の増殖を促進する程度であれば特に限定はないが、有機物としては0.1〜5%(w/vol)程度、無機塩としては0.1〜1%(w/vol)程度添加するのが好ましい。
このようにして得られる麹菌の液体培地は、必要に応じて滅菌処理を行なってもよく、処理方法には特に限定はない。例としては、高温高圧滅菌法を挙げることができ、121℃で15分間行なえばよい。
本発明で用いる麹菌は、蛋白質分解酵素生産能および糖質分解酵素生産能を有する麹菌、好ましくはプロテアーゼ生産能、グルコアミラーゼ生産能、耐酸性α−アミラーゼ生産能を有する麹菌であり、例えば、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)等に代表される白麹菌、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)やアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等に代表される黒麹菌等が挙げられる。これら白麹菌と黒麹菌は、請求項2に記載したように、それぞれ単独で用いてもよいし、或いは両者を併用してもよい。また、培地に接種する麹菌の形態は任意であり、胞子又は菌糸を用いることができる。
培養装置は液体培養を行なうことができるものであればよいが、麹菌は好気培養を行なう必要があるので、酸素や空気を培地中に供給できる好気的条件下で行なう必要がある。
また、培養中は培地中の原料、酸素、及び麹菌が装置内に均一に分布するように撹拌をするのが好ましい。撹拌条件や通気量については、培養環境を好気的に保つことができる条件であればいかなる条件でもよく、培養装置、培地の粘度等により適宜選択すればよい。
主原料として用いられる大豆としては丸大豆や脱脂大豆等があるが、これらは選別、洗浄した後、水中に浸漬して吸水させ、次いで蒸煮して蒸煮大豆とする。
仕込み後は、20〜30℃程度の温度で半年間程度発酵・熟成すればよい。
仕込み後は、20〜30℃程度の温度で半年間程度熟成すればよい。
以上のようにして目的とするみそを製造することができる。
(I)玄麦液体麹の製造
1)前培養方法;丸麦(国産2条大麦、搗精歩合70%)8gと水100mlを500mlバッフル付三角フラスコに張り込み、121℃、15分間オートクレーブ滅菌した。この前培養培地に白麹菌アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)(NBRC 4308)を1×106個/mlになるように植菌し、37℃、24時間、100rpmで振とう培養した。
仕込み配合は表1の通りとした。丸大豆は、洗浄後、水に一晩浸漬し、60分間水切り後、4時間蒸煮し、フードプロセッサーにより破砕(つぶし)処理したものを使用した。酵母は、Zygosaccharomyces rouxii (NBRC0510)を10mlのYPD培地にて30℃、24時間培養した後、遠心分離により集菌し、得られた菌体を滅菌水で2回洗浄した。
上記(I)で得られた玄麦液体麹に、食塩、上記酵母、並びに上記の如く処理した丸大豆を添加した。発酵条件は、25℃一定とし、6ヶ月間発酵・熟成を行い、麦みそを得た。
この方法によれば、従来の固体麹を用いたみその製造法により得られるみそと同程度の品質を有し、官能的にも遜色のないみそを製造することができる。
さらに、種々の原料や麹菌株を用いた麹菌培養物を組み合わせて製造した液体麹を使用することにより、みそのバラエティー化を図ることが極めて容易となる。
従って、本発明は、みそ製造の効率化だけでなく、需要者の多様な要望に応じた製品を提供することにより、みその市場拡大に貢献することが期待される。
Claims (2)
- 液体麹を用いたみその製造方法であって、培養原料として、表面の全部が穀皮で覆われた穀類を含む液体培地で白麹菌又は黒麹菌を培養して液体麹を得、該液体麹を使用することを特徴とするみその製造方法。
- 表面の全部が穀皮で覆われた穀類が玄米及び/又は玄麦である請求項1記載のみその製造方法。
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