JP4489488B2 - 液体麹酒母の製造方法とそれを用いた酒類の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、発酵飲食品の製造に用いられる液体麹酒母の製造方法とそれを用いた酒類の製造方法に関し、特に、従来別個に行われてきた液体麹の培養と酵母の培養を同時に行い、酒類等の製造に必要な酵素活性と酵母数とを有する液体麹酒母の製造方法とそれを用いた酒類の製造方法に関する。
酒類等の製造に用いられる麹は、蒸煮等の処理後の原料に糸状菌の胞子を接種して培養する固体麹と、水に原料及びその他の栄養源を添加して液体培地を調製し、これに麹菌の胞子又は前培養した菌糸等を接種して培養する液体麹がある。
従来の酒類又は発酵食品、例えば、日本酒、焼酎、しょうゆ、みそ、みりん等の製造では、固体培養法により製麹された、いわゆる固体麹が広く利用されている。この固体培養法は、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)、又は、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)等の麹菌の胞子を、蒸煮した穀類等の固体原料へ散布し、その表面で麹菌を増殖させる培養方法である。
例えば、焼酎の製造では、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)やアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)等の固体麹が広く用いられている。しかしながら、固体培養法は、原料や麹菌体が不均一に分散する培養系であるため、温度や水分含量、各種栄養成分といった因子を均一にすることが困難であり、その培養制御は大変煩雑である。また、開放状態で製麹されることも多く、雑菌による汚染といった品質管理面での注意も要する。そのため大規模製造には不向きな方法ともいえる。
これに対して、液体培養法は、培養制御や品質管理が容易であり、効率的な生産に適した培養形態であるが、例えば焼酎醸造に必要な酵素活性が十分に得られない等で、麹菌を液体培養して得られる培養物を、実際に焼酎麹として用いた例は少ない。ここで、液体培養法で得られる培養物とは、液体培養法で得られる培養物そのもの(以下、液体麹ともいう)、培養液、菌体、それらの濃縮物又はそれらの乾燥物であってもよい。
液体培養法で得られる培養物が利用されない大きな理由として、液体培養では麹菌のアミラーゼ、セルラーゼ等の酵素生産挙動が固体培養と大きく異なるばかりか、全般的に生産性が低下することが知られている(非特許文献1参照)。
通常、焼酎をはじめとする酒類の製造では、並行複発酵によりアルコールが生成される。従って、麹菌へのグルコース供給に影響を与える麹菌の糖質分解関連酵素、特にグルコアミラーゼや耐酸性α−アミラーゼは、アルコール発酵における鍵酵素である。しかしながら、液体培養法で得られる培養物において、グルコアミラーゼの活性は著しく低く、生産挙動も固体培養とは大きく異なることが知られている(非特許文献2参照)。
麹菌のグルコアミラーゼ活性を向上させる方法として、菌糸の生育にストレスを与えながら麹菌を培養する方法(特許文献1参照)、焙炒した穀類を麹菌培養液に添加する方法(特許文献2参照)等が報告されている。また、本発明者らは、麹菌の難分解性糖質を含有する液体培地を用いた麹菌の培養方法に関する発明を提案している(特許文献3参照)。
一方、耐酸性α−アミラーゼについては、最近、分子生物学的な解析が詳細に行われ始めている(非特許文献3参照)。それによれば、白麹菌は非耐酸性のα−アミラーゼと耐酸性のα−アミラーゼという性質の異なる2種類のアミラーゼ遺伝子を有しているが、その発現様式は大きく異なっており、液体培養においては、非耐酸性α−アミラーゼはよく生産されるものの、焼酎醸造の鍵酵素である耐酸性α−アミラーゼはほとんど生産されないことが報告されている。
焼酎製造では、焼酎もろみの腐造防止のために低pH環境下で醸造する。非耐酸性のα−アミラーゼは、低pH条件では速やかに失活してしまうため、焼酎醸造の糖質分解にはほとんど貢献しない。焼酎醸造の糖質分解に寄与していると考えられる耐酸性のα−アミラーゼを、液体培養で大量に生成させることが、焼酎製造のために不可欠である。
過去には、焼酎等の酒類の製造において、液体培養における耐酸性α−アミラーゼの生産挙動を検討した報告があるものの、その方法はペプトンやクエン酸緩衝液を含む合成培地を用いているし、培養時間が100時間以上かかるなど、実際の焼酎醸造に適用できるような液体麹の製造方法であるとは言い難い(非特許文献4参照)。
また、清酒や焼酎などの酒類製造においては、麹菌を固体培養し、麹菌に醸造に必要な酵素をつくらせる工程と、良好なアルコール生成を行うのに充分な数の酵母を増殖させる工程は別個に行われてきた。すなわち、麹菌の培養は、蒸し米そのほかの穀類原料を用いた固体培養による製麹工程により行われ、一方、酵母の増殖は、麹と水と酵母を混ぜ合わせることにより調製される一次もろみもしくは酒母と呼ばれる酵母培養工程で行われ、この2つの工程は全く別個に製造されてきた。
製麹と酵母培養が同一の工程で製造することができれば、酒類製造の効率化につながると考えられるが、これまで試みられた例は少なく、固体培養による製麹工程にて酵母を同時混合培養する方法(特許文献4参照)や酒精アルコール製造における液体麹培養において培養途中で酵母を植菌する液体麹酒母の製造方法(非特許文献5参照)が報告されているくらいである。
特開平11−225746号公報 特開2001−321154号公報 特開2003−265165号公報 特開2001−333762号公報 Iwashita K. et al: Biosci. Biotechnol. Biochem.,62,1938-1946(1998)、山根雄一ら: 日本醸造協会誌.,99,84-92(2004) Hata Y. et al: J. Ferment. Bioeng.,84,532-537(1997)、Hata Y. et al: Gene.,207,127-134(1998)、Ishida H. et al: J. Ferment. Bioeng.,86,301-307(1998)、Ishida H. et al: Curr Genet.,37,373-379(2000) Nagamine K. et al: Biosci. Biotechnol. Biochem.,67,2194-2202(2003) Sudo S. et al: J. Ferment. Bioeng.,76,105-110(1993)、Sudo S. et al: J. Ferment. Bioeng.,77,483-489(1994)、須藤茂俊ら: 日本醸造協会誌.,89,768-774(1994) 伊東ら、発酵協会誌.,12,327-332(1954)
しかしながら、特許文献1に開示の方法は、多孔性膜上又は空隙を有する包括固定化剤中で培養してグルコアミラーゼをコードする新規遺伝子glaBを発現させて同酵素活性を高めるもので、厳密な制御又は特殊な培養装置が必要であり、実用的ではない。また、特許文献2に開示の方法は、原料の少なくとも一部に焙炒した穀類を用いた液体培地で麹菌を培養するもので、穀類を焙炒するという、新たな製造工程が加わることになる。また、特許文献3ではグルコアミラーゼの活性が高い麹菌培養物は難分解性糖質を加えて調製され液体培地で培養されるもので、酒類又は発酵食品の製造に使用可能な、グルコアミラーゼ等の糖質分解関連酵素の活性が高い麹菌培養物を、簡便且つ安価に培養することができるが、穀類等の培養原料で調製された普通の液体培地から培養されるものでない。
一方、グルコアミラーゼの活性が高い麹菌培養物を液体培地で培養する技術は開示されているが、アルコール発酵におけるもう一つの鍵酵素である耐酸性α−アミラーゼの活性が高い液体麹を液体培地から培養するという技術が開示されたものはない。この耐酸性α−アミラーゼは液体培養では生成されない酵素であると一般的にいわれており、これまでに耐酸性α−アミラーゼの活性が高い液体麹は開発されていない。
更に、焼酎等の酒類の製造において、アルコール発酵させて健全なもろみを育成するために、発酵初発に十分な量の酵母を添加する、もしくは、一次もろみといわれる酒母を作成する必要があり、いずれにしてもYPD培地などの栄養培地で培養された酵母を予め製造しておく必要があるが、通常、酒母の製造は1週間ないし2週間程度必要とされることから、そのために必要な労力及びコストは酒類製造業にとって大きな問題となっている。
麹の製造と酵母の製造を同一の工程で製造することができれば、酒類製造の効率化につながると考えられるが、特許文献4に開示の方法は、固体原料表面上で酵母を増殖させる方法であり、原料や麹菌体が不均一に分散する培養系であるため、温度や水分含量、各種栄養成分といった因子を均一にすることが困難であるし、培養制御も大変煩雑であるといえる。また、開放状態であるため、雑菌による汚染の危険性は免れず、品質管理の面からも大規模製造には不向きな方法である。
また、非特許文献5に開示の方法は、液体麹の製造において、その培養途中に酵母を無菌的に加えて、24時間程度培養すると、糖化力と発酵力を有する酒母が得られるという、液体麹酒母の製造方法であるが、この方法は、酒精アルコール製造を目的にしたものであって、清酒や焼酎の製造に用いられてはいない。
一般的に、酒精アルコール製造における酒精もろみの最終アルコール度数は7%前後であり、これは、清酒や焼酎もろみの最終アルコール度数が18〜20%であるのに比べると、たいへん低い値である。アルコール度数が低い理由は、酒精アルコール製造の仕込み容量に対する穀類配合比率が、清酒や焼酎製造の場合に比べて1/3程度と少ないためといえる。
非特許文献5に開示された酒精用の液体麹ならびに液体麹酒母は、穀類デンプンの分解に必要な酵素活性がそれほど高くないため、穀類配合比率が低いもろみでは充分に利用可能であるとしても、穀類配合比率が高い清酒や焼酎といったもろみでは、穀類デンプンの液化糖化が十分に行われないことが予想される。そうなると、清酒や焼酎の発酵を良好にすすめることができなくなるため、酒精用の液体麹ならびに液体麹酒母の製造技術は過去に開示されているものの、清酒や焼酎の製造に適用されてこなかった。
さらに、焼酎製造は、もろみの腐造防止のため、また、官能品質的に良好な焼酎を醸造するために、pHの低い環境下で発酵を進めるわけであるが、その際に鍵となる耐酸性α−アミラーゼは、酒精用の液体麹ならびに液体麹酒母では生産されておらず、非特許文献5に開示の方法で、官能的にも優れた香味の焼酎を製造することは困難であると考えられる。
本発明の目的は、上記した技術の現状に鑑み、特に工業化の面から、酒類等のアルコール飲料や発酵食品を少ない工程で、短期間且つ低コストで効率的に製造できる、焼酎等の酒類他の製造が健全に行われるのに充分な酵素力価と酵母数を有する液体麹酒母を製造する方法を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、穀類を使用した液体培地で麹菌を培養して液体麹を製造する際に、培養の初発もしくは培養の途中に、最適数の酵母を添加し、液体混合培養状態で麹菌の酵素生産と酵母の増殖を同時に行うことで、グルコアミラーゼ、及び耐酸性α−アミラーゼ等の酵素活性が増強されて、焼酎等の飲食品の製造が健全に行われるのに充分な酵素力価と酵母数を有する液体麹酒母が製造されることを見出して本発明を完成するに至った。
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 穀類原料を含む液体培地に麹菌胞子及び/又は麹菌培養液と、酵母培養液及び/又は酵母菌体を添加し、混合培養状態で麹菌の酵素生産と酵母菌体増殖とを同時に行うことにより、麹菌による各種酵素の生産とアルコール発酵のための酵母の増殖とを同時に行う液体麹酒母の製造方法。
(2) 前記酵母培養液及び/又は酵母菌体は、初発酵母数が前記液体培地に対して2×10個/mlから2×10個/ml添加されて培養される(1)に記載の液体麹酒母の製造方法。
(3) 前記穀類は、大麦である(1)または(2)に記載の液体麹酒母の製造方法。
(4) 前記穀類は、米である(1)または(2)に記載の液体麹酒母の製造方法。
(5) 前記穀類を含む液体培地で培養される培養物中に、少なくともグルコアミラーゼと、耐酸性α−アミラーゼと、を同時に生成、蓄積させる(1)から(4)いずれか記載の液体麹酒母の製造方法。
(6) 前記穀類を含む液体培地で培養される培養物中に、酵母数が4×10個/mlから7×10個/ml程度に酵母を増殖させる(1)から(5)いずれか記載の液体麹酒母の製造方法。
(7) (1)から(6)いずれか1項に記載の方法で得られた前記液体麹酒母を用いて発酵飲食品の製造を行う発酵飲食品の製造方法。
(8) 発酵飲料の製造は、全工程が液相で行なわれる(7)に記載の発酵飲食品の製造方法。
(9) 発酵飲料の製造は、外界との遮蔽状態が保たれた状態の液相で行なわれる(7)または(8)に記載の発酵飲食品の製造方法。
(10) 発酵飲料の製造は、前記液体麹酒母に掛け原料を仕込んで一次もろみを製造する(7)から(9)いずれか記載の発酵飲食品の製造方法。
(11) 前記発酵飲食品が、焼酎である(7)から(10)いずれか記載の発酵飲食品の製造方法。
(12) (1)から(6)いずれか1項に記載の方法で得られた前記液体麹酒母を用いて酒類製造用の酒母又は一次もろみを製造する方法。
(13) 少なくとも、グルコアミラーゼ活性と、耐酸性α−アミラーゼ活性と、を有する発酵飲食品用の液体麹酒母のセット。
本発明によれば、穀類原料を含む液体培地に麹菌胞子及び/又は麹菌培養液と、酵母培養液及び/又は酵母菌体を添加し、混合培養状態で麹菌の酵素生産とアルコール発酵のための酵母増殖を並行して行うことにより、培養物中にグルコアミラーゼや耐酸性α−アミラーゼの酵素が生成、蓄積され、また、酵母が増殖されて、焼酎等の酒類他の製造が健全に行われるのに充分な酵素力価と酵母数を有する液体麹酒母が製造されることになる。液体培養は固体培養に比べ厳密な培養コントロールが可能であるため、品質が安定した液体麹酒母を安価に製造することができる。
また、本発明により製造した液体麹酒母を発酵飲食物の製造に用いることで、アルコール発酵のための酵母をYPD培地などで予め大量に培養する工程が縮小、或いは省略することができる。更に、焼酎等の酒類の発酵工程において、一次もろみの発酵期間を短縮することができる等で、焼酎等の酒類の製造が少ない工程で、短期間且つ低コストで効率的に行うことができる。
また、本発明により製造した液体麹酒母を用いると、従来の固体麹を用いた焼酎もろみと同程度の発酵性が得られ、製造された焼酎は固体麹を用いて製造された焼酎と同程度の品質を有し、官能的にも遜色ない焼酎を製造することができる。
また、本発明の液体麹酒母を用いて焼酎を製造する場合に、固体麹を使用する従来の焼酎製造とは異なり、全工程を液相のままで行うことが可能なので、従来に比べ効率的且つ安定的な焼酎製造システムを提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明における液体麹酒母の製造方法は、穀類等の原料を使用して調製された液体培地で麹菌を培養して液体麹を製造する際に、培養の初発もしくは培養の途中に酵母を添加して、麹菌による各種酵素の生産とアルコール発酵のための酵母の増殖とを同時に行う液体麹酒母を製造する工程を包含するものである。尚、本発明において、液体麹酒母とは、麹菌と酵母とが混在する培養物を意味する。
液体麹酒母を培養する液体培地に使用される原料としては、大麦、米、小麦、そば、ヒエ、アワ、コウリャン、トウモロコシ等の穀類を挙げることができる。これらの原料の形状には特に限定はなく、未精白物、精白物、粒状物、粉体物等を用いることができる。原料は水と混合して液体培地を調製する。原料の配合割合は、水に対して穀類を0.5〜20%(w/vol)、好ましくは1〜10%(w/vol)添加した液体培地に調製される。穀類の使用量がこの範囲であると、培養された培養物はグルコアミラーゼや耐酸性α−アミラーゼ等の酵素の生成、蓄積が増強されることになる。
原料に含まれるでん粉は、培養前に予め糊化しておいてもよい。でん粉の糊化方法については特に限定はなく、蒸きょう法、焙炒法等常法に従って行えばよい。尚、後述する液体培地の殺菌工程において、高温高圧滅菌等によりでん粉の糊化温度以上に加熱する場合はこのときにでん粉が糊化されるので同時に行うこともできる。
前述の原料の他に栄養源として有機物、無機塩等を添加するのが好ましい。これら添加物は麹菌の培養に一般に使用されているものであれば特に限定はないが、有機物としては米糠、小麦麩、コーンスティープリカー、大豆粕、脱脂大豆等を、無機塩としてはアンモニウム塩、硝酸塩、カリウム塩、酸性リン酸塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の水溶性の化合物を挙げることができ、2種類以上の有機物及び/又は無機塩を同時に使用してもよい。これらの添加量は麹菌の増殖を促進する程度であれば特に限定はないが、有機物としては0.1〜5%(w/vol)程度、無機塩としては0.1〜1%(w/vol)程度添加するのが好ましい。このようにして得られた液体培地は必要に応じて滅菌処理を行ってもよく、処理方法には特に限定はない。例としては、高温高圧滅菌法を挙げることができ、120℃で25分間行えばよい。
滅菌した液体培地を培養温度まで冷却後、麹菌を液体培地に接種する。本発明で用いる麹菌は、糖質分解酵素生産能を有する麹菌、好ましくはグルコアミラーゼ生産能、耐酸性α−アミラーゼ生産能を有する麹菌であり、例えば、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)等に代表される白麹菌、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)やアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等に代表される黒麹菌、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)やアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)等に代表される黄麹菌等が挙げられる。これらの麹菌は一種類の菌株による培養、又は同種若しくは異種の二種類以上の菌株による混合培養のどちらでも用いることができる。これらは醸造用種麹の胞子又はこの胞子を前培養により菌糸状に生育されたもの(以下、液体種麹と称する)のどちらの形態のものを用いてもよいが、液体種麹を用いる方が対数増殖期に要する時間が短くなるので好ましい。また、醸造用種麹の胞子又は予め前培養された液体種麹の液体培地への接種量には特に制限はないが、胞子で接種する場合は、液体培地1ml当り、胞子であれば1×10〜1×10個程度、菌糸であれば前培養液を0.1〜10%程度接種することが好ましい。
ここで、上記の予め前培養された液体種麹としては、大麦、米、小麦、そば、ヒエ、アワ、コウリャン、トウモロコシ等の穀類の未精白物、精白物、粒状物、粉体物等を、上記の有機物、無機塩等の栄養源が添加された水に対して穀類を4〜12%(w/vol)、好ましくは8%(w/vol)添加して調製された液体培地に、上記の麹菌の胞子を液体培地1ml当り、1×10〜1×10個程度接種して培養されたものが好ましい。培養温度は、25〜45℃、好ましくは30〜40℃で、培養時間は12〜48時間、より好ましくは18〜24時間で行われる。麹菌は好気培養を行う必要があるので、酸素や空気を培地中に供給できる好気的条件下で行う。また、培養中は培地中の原料、酸素、及び麹菌が装置内に均一に分布するように撹拌をするのが好ましい。この液体種麹を使用することで、焼酎等の飲食品の製造が健全に行われるのに充分な酵素活性を有する液体麹酒母が効率的に培養されることになる。
培養の初発に添加される酵母としては、鹿児島酵母(鹿児島県酒造組合連合会で販売)等が挙げられる。これらの酵母は、YPD培地で培養した培養液をそのまま使用してもよいが、遠心分離により集菌を行ったものを生理食塩水などで再度溶解したもの、または乾燥酵母をそのまま用いてもよい。酵母の接種量は液体培地に対して、初発酵母数が2×10〜1×10個/ml、好ましくは4×10個/mlになるように添加される。ここで、YPD培地とは、酵母エキスとグルコースとポリペプトンとの組成からなる培地をいう。
麹菌及び酵母の培養温度は、麹菌の生育や酵母の増殖に影響を及ぼさない限りであれば特に限定はないが、好ましくは25〜45℃、より好ましくは30〜40℃で行うのがよい。培養温度が低いと麹菌の生育や酵母の増殖が遅くなり、雑菌による汚染が起きやすくなる。培養時間は24〜72時間で培養するのが好ましい。培養装置は液体培養を行うことができるものであればよいが、麹菌は好気培養を行う必要があるので、酸素や空気を培地中に供給できる好気的条件下で行う必要がある。また、培養中は培地中の原料、酸素、及び麹菌が装置内に均一に分布するように撹拌をするのが好ましい。撹拌条件や通気量については、培養環境を好気的に保つことができる条件であればいかなる条件でもよく、培養装置、培地の粘度等により適宜選択すればよい。
このようにして、穀類を使用した液体培地で麹菌及び酵母を並行して培養することで、焼酎等の飲食品の製造が健全に行われるのに充分な酵素力価と酵母数を有する液体麹酒母が製造される。すなわち、少なくとも、グルコアミラーゼの酵素活性が100U/ml以上、耐酸性α−アミラーゼの酵素活性が10U/ml以上の酵素力価を有し、酵母数が5×10個/ml程度に増殖された液体麹酒母が製造されることになる。尚、上記の培養法で得られる液体麹酒母は、培養したそのものの他に、培養物を遠心分離等することにより得られる培養液、それらの濃縮物又はそれらの乾燥物等としてもよい。
本発明の製造方法で得られた液体麹酒母、或いは培養物の液体麹酒母から得られる培養液、又はそれらの濃縮物等は、酒類又は発酵食品の製造に用いることができる。例えば、清酒を製造する場合には、もろみ仕込み段階において、焼酎を製造する場合には、もろみ仕込み段階において、しょうゆを製造する場合には、盛り込みの段階において、味噌を製造する場合には、仕込み段階において、みりんを製造する場合は、仕込み段階において、液体麹酒母、或いは培養物の液体麹酒母から得られる培養液、又はそれらの濃縮物等を固体麹の代わりに用いることができる。
また、上記した液体麹酒母、或いは培養物の液体麹酒母から得られる培養液、又はそれらの濃縮物等を酒類又は発酵食品の製造に用いる場合には、全工程を液相で行うことができる。全工程を液相で行う酒類の製造方法としては、例えば、焼酎を製造する場合、麦、米、いも、とうもろこし、さとうきび等の穀類を掛け原料に用い、該原料を約80℃の高温で耐熱性酵素剤を使用して溶かして液化した後、これに上記した液体麹酒母を添加することでアルコール発酵させたもろみを、常圧蒸留法又は減圧蒸留法等により蒸留して製造する方法が挙げられる。
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<試験例1>[液体麹酒母の初発酵母数と液体麹酒母を用いた焼酎もろみの発酵性能の検討]
培養時の初発に添加する酵母数を表1に示すように変えた各試験区で麹菌及び酵母を培養して液体麹酒母を製造し、培養後の液体麹酒母中の増殖された酵母数、及びグルコアミラーゼ、耐酸性α−アミラーゼの酵素活性を測定し、液体麹酒母の初発酵母数と液体麹酒母を用いた焼酎もろみの発酵性能の検討した。
先ず、鹿児島酵母をグルコース2%(w/vol)、ポリペプトン2%(w/vol)、酵母エキス1%(w/vol)に調製したYPD培地で、30℃、24時間振盪培養し、酵母数2×10個/mlの酵母培養液を製造した。
次いで、硝酸カリウム0.2%(w/vol)、リン酸2水素カリウム0.3%(w/vol)が添加された水に大麦が2%(w/vol)になるように加えた液体培地を6個調製した。この調製された6個の液体培地について、液体培地100mlを容量500mlのバッフル付三角フラスコに入れ、オートクレーブ滅菌後、あらかじめ液体培地で前培養した河内菌白麹(河内源一郎商店製)を液体培地に対して1%(v/vol)になるように接種した。次に、上記のYPD培地で培養した酵母培養液を、表1に示すように、調製された5個の各液体培地に対して、無添加(試験区1)、4.0×10個/ml(試験区2)、2.0×10個/ml(試験区3)、1.0×10個/ml(試験区4)、4.0×10個/ml(試験区5)、2.0×10個/ml(試験区6)となるように添加して6種類の試験区を調製した。尚、大麦は国産2条大麦を70%精白したものを使用した。
その後、温度37℃、振盪速度100rpmにて48時間培養を行って、それぞれの試験区について液体麹酒母を製造した。
得られたそれぞれの液体麹酒母について、グルコアミラーゼ、耐酸性α−アミラーゼの酵素活性、及び酵母数を測定し、その結果を表1に示した。尚、グルコアミラーゼ、及び耐酸性α−アミラーゼの酵素活性の測定は、糖化力分別定量キット(キッコーマン製)を用いた。また、耐酸性α−アミラーゼの酵素活性の測定は、<非特許文献4>に記載の方法を若干改良し、培養物を酸処理にすることで非耐酸性α−アミラーゼを失活させた後、α−アミラーゼ測定キット(キッコーマン製)を用いて耐酸性α−アミラーゼを分別測定した。より具体的には、培養液1mlに9mlの100mM酢酸緩衝液(pH3)を添加し、37℃で1時間酸処理を行うことで、非耐酸性α−アミラーゼを失活させた後に、α−アミラーゼ測定キット(キッコーマン製)を用いて、耐酸性α−アミラーゼのみを分別測定した。また、酵母数の測定はトーマ氏血球計数器を用い、第4回改正国税庁所定分析法注解に記載の方法により測定した。
Figure 0004489488
表1に示すように、培養終了後の液体麹酒母の酵母数は4.4×10〜1.4×10個/mlで、焼酎仕込みを行うのに充分な酵母数が得られていることが確認された。しかしながら、グルコアミラーゼの酵素活性は37.7〜11.2U/mlで、耐酸性α−アミラーゼの酵素活性は5.5〜11.7U/mlであり、試験区1、4、5、6では焼酎仕込みを行うのに充分な酵素活性が得られていることが確認されたものの、初発酵母数が高い試験区2、3では、酵素生成が阻害されている傾向がみられた。因みに、焼酎仕込みを行うのに必要な酵母数は1×10個/ml〜1×10個/ml程度、また、焼酎製造に必要なグルコアミラーゼと耐酸性α−アミラーゼの酵素活性値は、グルコアミラーゼが100U/ml以上、耐酸性α−アミラーゼが10U/ml以上である。
次に、表1に記載の試験区1の液体麹ならびに試験区2〜6の液体麹酒母を用いて、表2に示す配合で仕込み、発酵温度25℃で焼酎もろみ発酵試験を実施した。尚、試験区1の発酵試験の酵母は試験例1と同様の方法で調製した酵母培養液を20μl添加した。そして、図1に上記6個の各試験区の液体麹ならびに液体麹酒母を用いて行った焼酎もろみ発酵試験の発酵経過を経過時間と重量減量積算の関係で示した。尚、掛け麦としては、国産2条大麦の70%精白したものを、水で洗浄後、60分間浸漬、水切り30分間行った後、35分間蒸きょうしたものを用いた。
Figure 0004489488
焼酎もろみ発酵試験で用いた液体麹酒母は、表1に示すように、各試験区とも酵母数が充分高いのにもかかわらず、発酵速度は図1に示すように差異が認められた。これはグルコアミラーゼや耐酸性α-アミラーゼの酵素生産性が、液体麹酒母を培養する際の初発の酵母数によって影響され、ひいては焼酎もろみの発酵性に影響を及ぼしたためと考えられた。すなわち、初発酵母数が4×10個/mlの試験区5のものが最も発酵が良好であり、試験区5、6、4の順に良好な結果であった。これらの結果より、液体麹酒母培養時の初発酵母数は、好ましくは2×10〜1×10個/ml、より好ましくは4×10個/ml程度であることが確認された。
<実施例1>「液体麹酒母の製造」
先ず、試験例1と同様に、鹿児島酵母をグルコース2%(w/vol)、ポリペプトン2%(w/vol)、酵母エキス1%(w/vol)に調製したYPD培地で、30℃、24時間振盪培養し、酵母数2×10個/mlの酵母培養液を製造した。
次に、硝酸カリウム0.2%(w/vol)、リン酸2水素カリウム0.3%(w/vol)が添加された水に大麦が2%(w/vol)になるように加えて液体培地を調製し、調製した液体培地100mlを容量500mlのバッフル付三角フラスコに入れ、オートクレーブ滅菌後、あらかじめ液体培地で前培養した河内菌白麹(河内源一郎商店製)を液体培地に対して1%(v/vol)になるように接種し、また、上記のYPD培地で培養した酵母培養液を液体培地に対して4.0×10個/mlとなるように添加した。尚、大麦は国産2条大麦を70%精白したものを使用した。
その後、温度37℃、振盪速度100rpmにて48時間培養を行って液体麹酒母を製造した。
得られた液体麹酒母について、グルコアミラーゼの酵素活性は糖化力分別定量キット(キッコーマン製)により、また、耐酸性α−アミラーゼは試験例1と同様の方法でα−アミラーゼ測定キット(キッコーマン製)を用いて測定した処、グルコアミラーゼは103.4U/ml、耐酸性α−アミラーゼは10.2U/ml生成されており、焼酎醸造で使用するに十分の酵素活性が得られた。また、酵母数を試験例1と同様の方法で測定の処、6.3×10個/mlと初発の酵母数に比べて約1600倍程度に増殖しており、焼酎の製造が健全に行われるのに充分な酵母数を有するものであった。
<実施例2>[液体麹酒母による焼酎の製造]
上記の実施例1で得られた液体麹酒母70mlを用いて、表3に示した仕込み配合にて、総麦186.0gの仕込みを行い、発酵温度を25℃に保ち、一次仕込み5日間、二次仕込み3日間、三次仕込み15日間の三段仕込みを行った。尚、掛け麦としては、国産2条大麦の70%精白したものを、水で洗浄後、60分間浸漬、水切り30分間行った後、35分間蒸きょうしたものを用いた。また、一次仕込みにおいて、液体麹からの麦持ち込み量0.7gでは発酵を行うのに不十分なため、固体麹仕込みと同量の麦が入るよう掛け麦43.1gを仕込んだ。
Figure 0004489488
また、対照仕込みA(液体麹仕込み)として、液体麹を用いて、表4に示した仕込み配合で焼酎製造を行った。液体麹70mlを用いて、表4に示した仕込み配合にて、総麦186.0gの仕込みを行った。酵母は実施例1で使用の酵母培養液を一次もろみの初発に55μl添加した。また、一次仕込みにおいて、液体麹からの麦持ち込み量0.7gでは発酵を行うのに不十分なため、固体麹仕込みと同量の麦が入るよう掛け麦43.1gを仕込んだ。尚、発酵条件等は上記の本発明仕込み(液体麹酒母仕込み)と同一とした。
尚、対照仕込みA(液体麹仕込み)で使用した液体麹は、実施例1において、液体培地に酵母を添加しない以外は同じ条件で培養して製造した。すなわち、硝酸カリウム0.2%(w/vol)、リン酸2水素カリウム0.3%(w/vol)が添加された水に大麦が2%(w/vol)になるように加えて液体培地を調製し、調製した液体培地100mlを容量500mlのバッフル付三角フラスコに入れ、オートクレーブ滅菌後、あらかじめ液体培地で前培養した河内菌白麹(河内源一郎商店製)を液体培地に対して1%(v/vol)になるように接種した。その後、温度37℃、振盪速度100rpmにて48時間培養を行って液体麹を製造した。尚、大麦は国産2条大麦を70%精白したものを使用した。
この液体麹のグルコアミラーゼ、及び耐酸性α―アミラーゼの酵素活性は、グルコアミラーゼが103.5U/ml、耐酸性α−アミラーゼが11.0U/mlであり、焼酎醸造で使用するに十分の酵素活性が得られていた。尚、グルコアミラーゼの酵素活性は糖化力分別定量キット(キッコーマン製)により、また、耐酸性α−アミラーゼは試験例1と同様の方法でα−アミラーゼ測定キット(キッコーマン製)を用いて測定した。
Figure 0004489488
また、対照仕込みB(固体麹仕込み)として、液体麹を用いて、表5に示した仕込み配合で焼酎製造を行った。固体麹の麹麦43.8gを用いて、表5に示した仕込み配合にて、総麦186.0gの仕込みを行った。酵母は実施例1で使用の酵母培養液を一次もろみの初発に55μl添加した。尚、発酵条件等は上記の本発明仕込み(液体麹酒母仕込み)と同一とした。
Figure 0004489488
本発明仕込み(液体麹酒母仕込み)の発酵経過を対照仕込みA(液体麹仕込み)及び対照仕込みB(固体麹仕込み)と対比して図2に示した。また、発酵終了後の熟成もろみのアルコール度数を第4回改正国税庁所定分析法注解に記載の方法にて測定して表6に示した。
Figure 0004489488
図2から明らかなように、液体麹及び固体麹を使用した対照仕込みA,Bと比較して、液体麹酒母を用いた本発明仕込みは、若干ではあるが発酵速度が速いことが確認された。尚、液体麹を使用した対照仕込みAと、固体麹を使用した対照仕込みBとほぼ同様の発酵経過を示した。また、得られた最終もろみのアルコール度数は、表6に示すように、本発明の液体麹酒母、液体麹、固体麹のいずれを用いたものも同等で、液体麹酒母仕込み、液体麹仕込みとも固体麹仕込みのように良好に発酵することが確認された。また、同じ総麦を仕込んでもろみを製造する際に、初発酵母は、液体麹仕込みや固体麹仕込みの約1/4程度の使用量で、固体麹を使用して製造した焼酎と同様の酒質の焼酎が製造でき、酵母の使用量を大幅に減少できた。
次に、得られた最終もろみを減圧蒸留して、得られた原酒をアルコール度数25%に和水したものをパネラー8名による採点法(5点評価法、1:良〜5:悪)により官能評価を行い、その平均点を表7に示した。
Figure 0004489488
その結果、酒質の差異もほとんど認められず、液体麹酒母、液体麹を用いても、固体麹を用いたのと同様な酒質の焼酎製造が可能であることが確認された。
以上の結果から、本発明によれば、大麦を2%(w/vol)使用した液体培地で麹菌を培養することで液体麹を製造する際に、培養の初発に酵母数が液体培地に対して2.0×10〜2.0×10個/ml、好ましくは4.0×10個/ml程度添加することで、焼酎等の酒類の製造に充分のグルコアミラーゼ、及び耐酸性α−アミラーゼ等の酵素力価を有し、酵母数が4×10個/ml〜7×10個/ml程度に増殖された液体麹酒母を得ることができることになった。更に、この焼酎等の酒類の製造に充分のグルコアミラーゼ、及び耐酸性α−アミラーゼ等の酵素力価を有し、アルコール発酵に充分な酵母数に増殖された液体麹酒母が、特別な培養装置や特殊な培養工学的手法による厳密な培養制御を行うことなく、簡便な液体培地にて製造することができ、しかも固体培養に比べて極めて厳密な製麹の管理を容易に行うことで、品質の高い液体麹酒母の安定的な製造が可能になった。更には、麹の液体化により、もろみの流動化による発酵管理の簡易化だけでなく、麹製造プロセス、ひいては焼酎製造プロセスの省力化、効率化も可能となった。
以上に説明したこれらの実施例は、原料として大麦を2%使用して液体麹酒母を製造する方法について説明したが、大麦の使用量はこれに限定されるものでない。また、原料として大麦以外の穀類、例えば米等を使用してもよい。
初発酵母数別の試験区で製造した液体麹酒母で行った焼酎もろみ発酵試験における発酵経過を試験区別に示す図である。 麦焼酎発酵経過を液体麹酒母仕込み、液体麹仕込み、固体麹仕込み別に示す図である。

Claims (10)

  1. 精白された麦を含む液体培地に、アスペルギルス・カワチ胞子及び/又は培養液と、初発酵母数が前記液体培地に対して2×10 個/mlから1×10 個/mlとなる酵母培養液及び/又は酵母菌体を添加し、混合培養状態でグルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼの生産とアルコール発酵のための酵母の増殖とを同時に行う液体麹酒母の製造方法。
  2. 前記精白された麦は、大麦である請求項1に記載の液体麹酒母の製造方法。
  3. 前記精白された麦を含む液体培地で培養される培養中に、酵母数が4×10個/mlから7×10個/ml程度に酵母を増殖させる請求項1または2に記載の液体麹酒母の製造方法。
  4. 請求項1からいずれか1項に記載の方法で得られた前記液体麹酒母を用いて発酵飲食品の製造を行う発酵飲食品の製造方法。
  5. 発酵飲料の製造は、全工程が液相で行なわれる請求項に記載の発酵飲食品の製造方法。
  6. 発酵飲料の製造は、外界との遮蔽状態が保たれた状態の液相で行なわれる請求項またはに記載の発酵飲食品の製造方法。
  7. 発酵飲料の製造は、前記液体麹酒母に掛け原料を仕込んで一次もろみを製造する請求項からいずれか記載の発酵飲食品の製造方法。
  8. 前記発酵飲食品が、焼酎である請求項からいずれか記載の発酵飲食品の製造方法。
  9. 請求項1からいずれか1項に記載の方法で得られた前記液体麹酒母を用いて酒類製造用の酒母又は一次もろみを製造する方法。
  10. 精白した麦を含む液体培地に、アスペルギルス・カワチ胞子及び/又は培養液と、初発酵母数が前記液体培地に対して2×10 個/mlから1×10 個/mlとなる酵母培養液及び/又は酵母菌体を添加し、混合培養状態で、グルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼの生産とアルコール発酵のための酵母の増殖とを同時に行う発酵飲食品用の液体麹酒母。
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