JP4482365B2 - 液体麹の製造方法 - Google Patents

液体麹の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4482365B2
JP4482365B2 JP2004115901A JP2004115901A JP4482365B2 JP 4482365 B2 JP4482365 B2 JP 4482365B2 JP 2004115901 A JP2004115901 A JP 2004115901A JP 2004115901 A JP2004115901 A JP 2004115901A JP 4482365 B2 JP4482365 B2 JP 4482365B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
koji
liquid
culture
vol
producing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2004115901A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005295872A (ja
Inventor
利和 杉本
博志 小路
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Breweries Ltd
Original Assignee
Asahi Breweries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Breweries Ltd filed Critical Asahi Breweries Ltd
Priority to JP2004115901A priority Critical patent/JP4482365B2/ja
Publication of JP2005295872A publication Critical patent/JP2005295872A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4482365B2 publication Critical patent/JP4482365B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Description

本発明は、発酵飲食品の製造に用いられる液体麹、特に焼酎醸造に必要な酵素活性を有する液体麹の製造方法に関する。
酒類等の製造に用いられる麹は、蒸煮等の処理後の原料に糸状菌の胞子を接種して培養する固体麹と、水に原料及びその他の栄養源を添加して液体培地を調製し、これに麹菌の胞子又は前培養した菌糸等を接種して培養する液体麹がある。
従来の酒類又は発酵食品、例えば、日本酒、焼酎、しょうゆ、みそ、みりん等の製造では、固体培養法により製麹された、いわゆる固体麹が広く利用されている。この固体培養法は、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)、又は、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)等の麹菌の胞子を、蒸煮した穀類等の固体原料へ散布し、その表面で麹菌を増殖させる培養方法である。
例えば、焼酎の製造では、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)やアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)等の固体麹が広く用いられている。しかしながら、固体培養法は、原料や麹菌体が不均一に分散する培養系であるため、温度や水分含量、各種栄養成分といった因子を均一にすることが困難であり、その培養制御は大変煩雑である。また、開放状態で製麹されることも多く、雑菌による汚染といった品質管理面での注意も要する。そのため大規模製造には不向きな方法ともいえる。
これに対して、液体培養法は、培養制御や品質管理が容易であり、効率的な生産に適した培養形態であるが、例えば焼酎醸造に必要な酵素活性が十分に得られない等で、麹菌を液体培養して得られる培養物を、実際に焼酎麹として用いた例は少ない。ここで、液体培養法で得られる培養物とは、液体培養法で得られる培養物そのもの(以下、液体麹ともいう)、培養液、菌体、それらの濃縮物又はそれらの乾燥物であってもよい。
液体培養法で得られる培養物が利用されない大きな理由として、液体培養では麹菌のアミラーゼ、セルラーゼ等の酵素生産挙動が固体培養と大きく異なるばかりか、全般的に生産性が低下することが知られている(非特許文献1参照)。
通常、焼酎をはじめとする酒類の製造では、並行複発酵によりアルコールが生成される。従って、麹菌へのグルコース供給に影響を与える麹菌の糖質分解関連酵素、特にグルコアミラーゼや耐酸性α−アミラーゼは、アルコール発酵における鍵酵素である。しかしながら、液体培養法で得られる培養物において、グルコアミラーゼの活性は著しく低く、生産挙動も固体培養とは大きく異なることが知られている(非特許文献2参照)。
麹菌のグルコアミラーゼ活性を向上させる方法として、菌糸の生育にストレスを与えながら麹菌を培養する方法(特許文献1参照)や焙炒した穀類を麹菌培養液に添加する方法(特許文献2参照)が報告されている。特許文献1に開示の方法は、多孔性膜上又は空隙を有する包括固定化剤中で培養してグルコアミラーゼをコードする新規遺伝子glaBを発現させて同酵素活性を高めるもので、厳密な制御又は特殊な培養装置が必要であり、実用的ではない。また、特許文献2に開示の方法は、原料の少なくとも一部に焙炒した穀類を用いた液体培地で麹菌を培養するもので、穀類を焙炒するという、新たな製造工程が加わることになる。
そこで、本発明者らは、麹菌の難分解性糖質を含有する液体培地を用いた麹菌の培養方法に関する発明を提案した(特許文献3参照)。この発明によれば、麹菌の液体培養において、酒類又は発酵食品の製造に使用可能な、グルコアミラーゼ等の糖質分解関連酵素の活性が高い麹菌培養物を、簡便且つ安価に培養することができる。
一方、耐酸性α−アミラーゼについては、最近、分子生物学的な解析が詳細に行われ始めている(非特許文献3参照)。それによれば、白麹菌は非耐酸性のα−アミラーゼと耐酸性のα−アミラーゼという性質の異なる2種類のアミラーゼ遺伝子を有しているが、その発現様式は大きく異なっており、液体培養においては、非耐酸性α−アミラーゼはよく生産されるものの、焼酎醸造の鍵酵素である耐酸性α−アミラーゼはほとんど生産されないことが報告されている。
焼酎製造では、焼酎もろみの腐造防止のために低pH環境下で醸造する。非耐酸性のα−アミラーゼは、低pH条件では速やかに失活してしまうため、焼酎醸造の糖質分解にはほとんど貢献しない。焼酎醸造の糖質分解に寄与していると考えられる耐酸性のα−アミラーゼを、液体培養で大量に生成させることが、焼酎製造のために不可欠である。
過去には、液体培養における耐酸性α−アミラーゼの生産挙動を詳細に検討した報告があるものの、その方法はペプトンやクエン酸緩衝液を含む合成培地を用いているし、培養時間が100時間以上かかるなど、実際の焼酎醸造に適用できるような液体麹の製造方法であるとは言い難い(非特許文献4参照)。
特開平11−225746号公報 特開2001−321154号公報 特開2003−265165号公報 Iwashita K. et al: Biosci. Biotechnol. Biochem.,62,1938-1946(1998)、山根雄一ら: 日本醸造協会誌.,99,84-92(2004) Hata Y. et al: J. Ferment. Bioeng.,84,532-537(1997)、Hata Y. et al: Gene.,207,127-134(1998)、Ishida H. et al: J. Ferment. Bioeng.,86,301-307(1998)、Ishida H. et al: Curr Genet.,37,373-379(2000) Nagamine K. et al: Biosci. Biotechnol. Biochem.,67,2194-2202(2003) Sudo S. et al: J. Ferment. Bioeng.,76,105-110(1993)、Sudo S. et al: J. Ferment. Bioeng.,77,483-489(1994)、須藤茂俊ら: 日本醸造協会誌.,89,768-774(1994)
しかしながら、特許文献3ではグルコアミラーゼの活性が高い麹菌培養物は難分解性糖質を加えて調製された液体培地で培養されるもので、穀類等の培養原料で調製された普通の液体培地から培養されるものでない。
また、グルコアミラーゼの活性が高い麹菌培養物を液体培地で培養する技術は開示されているが、アルコール発酵におけるもう一つの鍵酵素である耐酸性α−アミラーゼの活性が高い液体麹を液体培地から培養するという技術が開示されたものはない。この耐酸性α−アミラーゼは液体培養では生成されない酵素であると一般的にいわれており、これまでに耐酸性α−アミラーゼの活性が高い液体麹は開発されていない。
本発明の目的は、発酵飲食品の製造に用いられる液体麹、特に焼酎醸造のアルコール発酵における鍵酵素となるグルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼの活性が高い液体麹を特殊な糖質等を加えたり、焙炒処理された原料を使用するといった特別の液体培地でなく、穀類等の原料を使用した液体培地で麹菌培養物を培養して製造する方法を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、穀類等を使用した液体培地で麹菌を培養する際に、穀類等の原料の配合割合或いは種類が異なるそれぞれの液体培地で培養する、また、培養する麹菌株の種類が異なるものを使用することで、グルコアミラーゼの酵素活性が増強された麹菌培養物、或いは耐酸性α−アミラーゼの酵素活性が増強された麹菌培養物が製造されることを見出し、更に、得られたこれらの異なる酵素活性が増強された麹菌培養物をそれぞれ混合することにより焼酎醸造に必要な酵素活性を有する液体麹が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 発酵飲食品製造に用いられる液体麹の製造方法であって、麹菌を液体培地で培養するに当たって、酵素活性の異なる2種類以上の麹菌培養物をそれぞれ別個に製造し、それぞれ別個に製造することにより得られたこれらの麹菌培養物をそれぞれ所定量混合することにより目的とする発酵飲食品用の液体麹を得る液体麹の製造方法。
(2) 前記液体培地は、主原料が穀類および/または芋類である(1)に記載の液体麹の製造方法。
(3) 前記麹菌培養物は、同一種類の前記穀類を異なる割合で調製されたそれぞれの液体培地で前記麹菌を培養して得られたものである、および/または異なる前記穀類を使用して調製されたそれぞれの液体培地で前記麹菌を培養して得られたものである、および/または異なる2種類以上の麹菌株を使用して前記液体培地で前記麹菌を培養して得られたものである、(1)または(2)に記載の液体麹の製造方法。
(4) 前記麹菌培養物は、少なくともグルコアミラーゼ活性が増強された麹菌培養物であり、また、耐酸性α−アミラーゼ活性が増強された麹菌培養物である(1)から(3)いずれか記載の液体麹の製造方法。
(5) 前記耐酸性α−アミラーゼ活性が増強された麹菌培養物は、培養中にクエン酸が生成、蓄積されているものである(4)に記載の液体麹の製造方法。
(6) 前記グルコアミラーゼ活性が増強された麹菌培養物は、大麦を0.1%(w/vol)から4%(w/vol)添加した前記液体培地で前記麹菌を培養して得られたものである(4)に記載の液体麹の製造方法。
(7) 前記耐酸性α−アミラーゼ活性が増強された麹菌培養物は、大麦を4%(w/vol)から20%(w/vol)添加した前記液体培地で前記麹菌を培養して得られたものである(4)または(5)に記載の液体麹の製造方法。
(8) (1)から(7)いずれか1項に記載の方法で得られた前記液体麹を用いて発酵飲食品を製造する発酵飲食品の製造方法。
(9) 発酵飲料の製造は、全工程が液相で行なわれる(8)に記載の発酵飲食品の製造方法。
(10) 発酵飲料の製造は、外界との遮蔽状態が保たれた状態の液相で行なわれる(8)または(9)に記載の発酵飲食品の製造方法。
(11) 発酵飲料の製造は、前記液体麹に掛け原料を仕込んで一次もろみを製造する(8)から(10)いずれか記載の発酵飲食品の製造方法。
(12) 前記発酵飲食品が、焼酎である(8)から(11)いずれか記載の発酵飲食品の製造方法。
(13) グルコアミラーゼ活性と、耐酸性α−アミラーゼ活性と、を有する発酵飲食品用の液体麹のセット。
本発明によれば、穀類等を使用した液体培地で麹菌を培養する際に、穀類等の配合割合や種類が異なるそれぞれの液体培地で培養する、また麹菌株の種類が異なるものを使用することでグルコアミラーゼ、或いは耐酸性α−アミラーゼの酵素活性が増強された麹菌培養物が培養される。また、得られたこれらの異なる酵素活性が増強された麹菌培養物を所定量混合することで、焼酎醸造に必要な酵素活性を有する液体麹、すなわち、グルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼの酵素活性を有する液体麹を得ることができる。液体培養は固体培養に比べ厳密な培養コントロールが可能であるため、品質が安定した麹菌培養物を安価に製造することができる。
また、本発明により製造した液体麹を用いると、従来の固体麹を用いた焼酎もろみと同程度の発酵性が得られ、製造された焼酎は固体麹を用いて製造された焼酎と同程度の品質を有し、官能的にも遜色ない焼酎を製造することができる。更に、種々の原料や麹菌株を用いて培養された麹菌培養物を組み合わせて製造した液体麹を使用することで、風味の異なる焼酎を製造することができ、品種の多様化が可能となる。
また、本発明の液体麹を用いて焼酎を製造する場合に、固体麹を使用する従来の焼酎製造とは異なり、全工程を液相のままで行うことが可能なので、従来に比べ効率的かつ安定的な焼酎製造システムを提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明における液体麹の製造方法は、穀類等の原料を使用して調製された液体培地で麹菌の培養を行い、グルコアミラーゼの酵素活性、或いは耐酸性α−アミラーゼ等の酵素活性を増強した麹菌培養物を得る工程、及びこれら酵素活性の異なる麹菌培養物を混合して液体麹を製造する工程を包含するものである。
原料は固体麹を製造する場合と同様の原料であれば特に限定はない。具体的には、大麦、米、小麦、そば、ヒエ、アワ、コウリャン、トウモロコシ等の穀類、サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ等の芋類を挙げることができる。これらの原料の形状には特に限定はなく、未精白物、精白物、粒状物、粉体物、及び裁断物等を用いることができ、有機溶剤等の処理物、エクストルーダー等の造粒機による造粒物を用いてもよい。原料は水と混合して液体培地を調製する。原料の配合割合は培養中にグルコアミラーゼが選択的に生成、蓄積される程度のものと、耐酸性α−アミラーゼが選択的に生成、蓄積される程度のものに調製される。例えば、大麦を原料とした場合には、大麦を0.1〜4%(w/vol)、好ましくは2%(w/vol)を添加した液体培地と、大麦を4〜20%(w/vol)、好ましくは8%(w/vol)を添加した液体培地に調製される。
大麦を0.1〜4%(w/vol)、好ましくは2%(w/vol)を添加した液体培地で麹菌を培養するとグルコアミラーゼが増強された麹菌培養物が得られ、また、大麦を4〜20%(w/vol)、好ましくは8%(w/vol)を添加した液体培地で麹菌を培養すると、耐酸性α−アミラーゼが増強された麹菌培養物が得られ、更に、この麹菌培養物にはもろみの腐造防止の働きをするクエン酸の生成が大幅に増加され、pHも5以下に低下して、雑菌が生成しにくい発酵に好適なpHを呈するようになる。
原料に含まれるでん粉は、培養前に予め糊化しておいてもよい。でん粉の糊化方法については特に限定はなく、蒸きょう法、焙炒法等常法に従って行えばよい。尚、後述する液体培地の殺菌工程において、高温高圧滅菌等によりでん粉の糊化温度以上に加熱する場合はこのときにでん粉が糊化されるので同時に行うこともできる。
グルコアミラーゼ、或いは耐酸性α−アミラーゼが培養中に選択的に生成、蓄積される液体培地として、上記の様に同一種類の原料を用いて、原料の配合割合を変える以外に、原料の種類を変えたものであってもよい。また、麹菌株の種類を変えて培養してもよい。また、これら原料の異なる配合割合と異なる種類とを組み合わせた液体培地にしたり、更には、異なる麹菌株の種類も組み合わせてもよい。尚、選択的に生成、蓄積される酵素としては、グルコアミラーゼ、或いは耐酸性α−アミラーゼに限定されるものではなく、例えばペプチターゼ等の別の酵素を生成、蓄積されるものであってもよい。
前述の原料の他に栄養源として有機物、無機塩等を添加するのが好ましい。これら添加物は麹菌の培養に一般に使用されているものであれば特に限定はないが、有機物としては米糠、小麦麩、コーンスティープリカー、大豆粕、脱脂大豆等を、無機塩としてはアンモニウム塩、硝酸塩、カリウム塩、酸性リン酸塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の水溶性の化合物を挙げることができ、2種類以上の有機物及び/又は無機塩を同時に使用してもよい。これらの添加量は麹菌の増殖を促進する程度であれば特に限定はないが、有機物としては0.1〜5%(w/vol)程度、無機塩としては0.1〜1%(w/vol)程度添加するのが好ましい。このようにして得られた液体培地は必要に応じて滅菌処理を行ってもよく、処理方法には特に限定はない。例としては、高温高圧滅菌法を挙げることができ、120℃で25分間行えばよい。
滅菌した液体培地を培養温度まで冷却後、麹菌を液体培地に接種する。本発明で用いる麹菌は、糖質分解酵素生産能を有する麹菌、好ましくはグルコアミラーゼ生産能、耐酸性α−アミラーゼ生産能を有する麹菌であり、例えば、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)等に代表される白麹菌、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)やアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等に代表される黒麹菌、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)やアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)等に代表される黄麹菌等が挙げられる。また、培地に接種する麹菌の形態は任意であり、胞子又は菌糸を用いることができる。
これらの麹菌は一種類の菌株による培養、又は同種若しくは異種の二種類以上の菌株による混合培養のどちらでも用いることができる。これらは胞子又は前培養により得られる菌糸のどちらの形態のものを用いても問題はないが、菌糸を用いる方が対数増殖期に要する時間が短くなるので好ましい。麹菌の液体培地への接種量には特に制限はないが、液体培地1ml当り胞子であれば1×10〜1×10個程度、菌糸であれば前培養液を0.1〜10%程度接種することが好ましい。
麹菌の培養温度は、生育に影響を及ぼさない限りであれば特に限定はないが、好ましくは25〜45℃、より好ましくは30〜40℃で行うのがよい。培養温度が低いと麹菌の増殖が遅くなるため雑菌による汚染が起きやすくなる。培養時間は24〜72時間で培養するのが好ましい。培養装置は液体培養を行うことができるものであればよいが、麹菌は好気培養を行う必要があるので、酸素や空気を培地中に供給できる好気的条件下で行う必要がある。また、培養中は培地中の原料、酸素、及び麹菌が装置内に均一に分布するように撹拌をするのが好ましい。撹拌条件や通気量については、培養環境を好気的に保つことができる条件であればいかなる条件でもよく、培養装置、培地の粘度等により適宜選択すればよい。
上記の培養法で得られるグルコアミラーゼの酵素活性が増強された麹菌培養物と耐酸性α−アミラーゼの酵素活性が増強された麹菌培養物とを混合することで、グルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼの酵素活性が増強された液体麹となる。尚、上記の培養法で得られる麹菌培養物は、培養物そのものの他に、培養物を遠心分離等することにより得られる培養液、麹菌体、それらの濃縮物又はそれらの乾燥物等としてもよい。
本発明の製造方法で得られた液体麹或いは麹菌培養物は、酒類又は発酵食品の製造に用いることができる。例えば、清酒を製造する場合には、酒母や各もろみ仕込み段階において、焼酎を製造する場合には、もろみ仕込み段階において、しょうゆを製造する場合には、盛り込みの段階において、味噌を製造する場合には、仕込み段階において、みりんを製造する場合は、仕込み段階において、液体麹或いは麹菌培養物を固体麹の代わりに用いることができる。
また、上記した液体麹或いは培養物から得られる培養液又はそれらの濃縮物等を用いて酒類又は発酵食品の製造に用いる場合には、全工程を液相で行うことができる。全工程を液相で行う酒類の製造方法としては、例えば、焼酎を製造する場合、とうもろこし、麦、米、いも、さとうきび等を掛け原料に用い、該原料を約80℃の高温で耐熱性酵素剤を使用して溶かして液化した後、これに上記した液体麹、及び酵母を添加することでアルコール発酵させたもろみを、常圧蒸留法又は減圧蒸留法等により蒸留して製造する方法が挙げられる。
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>[大麦使用量の異なる液体培地を用いた麹菌培養物の製造]
大麦の配合割合を表1に示すように変えて5種類の液体培地を調製し、それぞれの液体培地で麹菌を培養して麹菌培養物を製造した。
まず、硝酸カリウム0.2%(w/vol)、リン酸2水素カリウム0.3%(w/vol)が添加された水に大麦が1、2、3、4、8%(w/vol)になるように加えて5種類の液体培地を調製した。それぞれの液体培地について、調製した液体培地100mlを容量500mlのバッフル付三角フラスコに入れ、オートクレーブ滅菌後、あらかじめ液体培地で前培養した河内菌白麹(河内源一郎商店製)を液体培地に対して1%(v/vol)になるように接種した。尚、大麦は国産2条大麦の70%精白したものを使用した。
その後、温度37℃、振盪速度100rpmにて48時間培養を行った。培養終了後、得られたそれぞれの培養物について、グルコアミラーゼ、耐酸性α−アミラーゼ、及びクエン酸の生成量を測定した。また、培養物のpHも測定した。そして、表1及び図1に大麦の使用量別のそれぞれの液体培地で培養して得られた培養物のグルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼ生成量を示した。また、表1及び図2にクエン酸の生成量と培養物のpHを示した。尚、グルコアミラーゼの酵素活性の測定は、糖化力分別定量キット(キッコーマン製)を用いた。また、耐酸性α−アミラーゼの酵素活性の測定は、<非特許文献4>に記載の方法を若干改良し、培養物を酸処理にすることで非耐酸性α−アミラーゼを失活させた後、α−アミラーゼ測定キット(キッコーマン製)を用いて耐酸性α−アミラーゼを分別測定した。より具体的には、培養液1mlに9mlの100mM酢酸緩衝液(pH3)を添加し、37℃で1時間酸処理を行うことで、非耐酸性α−アミラーゼを失活させた後に、α−アミラーゼ測定キット(キッコーマン製)を用いて、耐酸性α−アミラーゼのみを分別測定した。また、クエン酸量の測定には、F−キット・クエン酸(日本ロッシュ製)を用いた。
Figure 0004482365
表1及び図1に示すように、グルコアミラーゼは大麦の使用量が2%(w/vol)において最大となるかたちで生成されることが確認された。一方、耐酸性α−アミラーゼは、大麦の使用量が1、2%(w/vol)では生成される量が少ないが、3%(w/vol)以上になると生成量が増加し、8%(w/vol)において最も多く生成されることが確認された。また、もろみの雑菌の繁殖を抑制する働きを有するクエン酸は、大麦の使用量が1〜3%(w/vol)では殆ど生成していないが、4%(w/vol)以上になると生成量が増加している。そして、クエン酸の増加に伴ってpHも低下していることが確認された。
このようにして、グルコアミラーゼの酵素活性が増強された麹菌培養物は、大麦の使用量が4%(w/vol)以下、好ましくは2%(w/vol)の液体培地で培養することで得られることになる。また、耐酸性α−アミラーゼの酵素活性とクエン酸が増強された麹菌培養物は、大麦の使用量が4%〜20%(w/vol)、好ましくは8%(w/vol)の液体培地で培養することで得られることになる。
<実施例2>[大麦使用量の異なる2種類の麹菌培養物からなる液体麹による焼酎の製造]
実施例1において、大麦を2%(w/vol)加えて調製した液体培地で培養して得られた麹菌培養物(グルコアミラーゼが増強された培養物)と大麦を8%加えて調製した培地で培養して得られた麹菌培養物(耐酸性α−アミラーゼが増強された培養物)とを混合した液体麹を用いて焼酎製造を行った。
すなわち、実施例1における大麦を2%(w/vol)添加して調製された液体培地で培養して得られた麹菌培養物100mlと、大麦を8%(w/vol)添加して調製された液体培地で培養して得られた麹菌培養物100mlとを混合して計200mlの液体麹とし、この液体麹を用いて、表2に示した仕込み配合にて、総麦520.4gの仕込みを行い、発酵温度を25℃に保ち、一次仕込み5日間、二次仕込み2日間、三次仕込み13日間の三段仕込みを行った。尚、掛け麦としては、国産2条大麦を70%精白したものを用いた。掛け麦は、水で洗浄後、60分間浸漬、水切り30分間行った後、35分間蒸きょうしたものを用いた。また、一次仕込みにおいて、液体麹からの麦持ち込み量10.0gでは発酵を行うのに不十分なため、固体麹仕込みと同量の麦が入るよう掛け麦114.8gを仕込んだ。
Figure 0004482365
また対照仕込み(固体麹仕込み)として、固体麹の麹麦を用いて、表3に示した仕込み配合で焼酎製造を行った。尚、発酵条件等は上記の本発明仕込み(液体麹仕込み)と同一とした。
Figure 0004482365
その発酵経過を対照の固体麹仕込みと対比して図3に示した。図3から明らかなように、固体麹を使用した対照仕込みと比較して、液体麹を用いた仕込みにおいても、ほぼ同様の発酵経過を示した。また、得られた最終もろみのアルコール度数は液体麹、固体麹いずれを用いたものも17.8%で、同一であった。
次に、得られた最終もろみを減圧蒸留して、得られた原酒をアルコール度数25%に和水したものをパネラー8名による採点法(5点評価法、1:良〜5:悪)により官能評価を行い、その平均点を表4に示した。
Figure 0004482365
その結果、酒質の差異もほとんど認められず、液体麹を用いても、固体麹を用いたと同様な酒質の焼酎製造が可能であることが確認された。
以上の結果から、本発明によれば、大麦を0.1〜4%(w/vol)、好ましくは2%(w/vol)使用した液体培地で麹菌を培養することでグルコアミラーゼが増強され麹菌培養物が得られ、大麦を4〜20%(w/vol)、好ましくは8%(w/vol)使用した液体培地で麹菌を培養することで耐酸性α−アミラーゼ及びクエン酸が増強され麹菌培養物が得られた。また、これらの培養物を混合することでグルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼの酵素活性が高い液体麹を得ることができることになった。このため、この液体麹を用いることで、固体麹を用いて製造した焼酎と同等の酒質の焼酎を製造することができるようになった。更に、グルコアミラーゼ活性や耐酸性α−アミラーゼ活性の高い液体麹が、特別な培養装置や特殊な培養工学的手法による厳密な培養制御を行うことなく、簡便な液体培地にて製造することができ、しかも固体培養に比べて極めて厳密な製麹管理を容易に行うことで、品質の高い麹の安定的な製造が可能になった。更には、麹の液体化により、もろみの流動化による発酵管理の簡易化だけでなく、麹製造プロセス、ひいては焼酎製造プロセスの省力化、効率化も可能となった。
以上に説明したこれらの実施例は、大麦の使用量が異なるそれぞれの液体培地で麹菌を培養して麹菌培養物を製造し、得られたこれら培養物を混合してグルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼの酵素活性が高い液体麹を製造する方法について説明したが、原料として大麦以外を使用してもよく、また、培養する麹菌株を違えてもよい。更に、異なった種類の原料を用いた2種類以上の液体培地として培養してもよい。また、培養で得られた麹菌培養物として、グルコアミラーゼ活性或いは耐酸性α−アミラーゼ活性の高いものに限定されず、例えば、ペプチターゼ他の酵素活性が高いものを培養するものであってもよい。
大麦を使用した液体培地を用いた麹菌培養における大麦使用量と、グルコアミラーゼ及び耐酸性α−アミラーゼの生成量との関係を示す図である。 大麦を使用した液体培地を用いた麹菌培養における大麦使用量とのクエン酸生成量及び培養物のpH値との関係を示す図である。 液体麹を用いた焼酎製造における発酵経過を示す図である。

Claims (9)

  1. 発酵飲食品製造に用いられる液体麹の製造方法であって、麦が1%(w/vol)以上4%(w/vol)以下添加された液体培地で培養して得られた第1の白麹菌培養液と、麦が4%(w/vol)以上20%(w/vol)以下添加された液体培地で培養して得られた第2の白麹菌培養液とを混合する液体麹の製造方法。
  2. 前記液体培地は、主原料が穀類および/または芋類である請求項1に記載の液体麹の製造方法。
  3. 前記第2の白麹菌培養液は、培養中にクエン酸が生成、蓄積されているものである請求項1または2に記載の液体麹の製造方法。
  4. 請求項1からいずれか1項に記載の方法で得られた前記液体麹を用いて発酵飲食品を製造する発酵飲食品の製造方法。
  5. 発酵飲料の製造は、全工程が液相で行なわれる請求項に記載の発酵飲食品の製造方法。
  6. 発酵飲料の製造は、外界との遮蔽状態が保たれた状態の液相で行なわれる請求項またはに記載の発酵飲食品の製造方法。
  7. 発酵飲料の製造は、前記液体麹に掛け原料を仕込んで一次もろみを製造する請求項からいずれか記載の発酵飲食品の製造方法。
  8. 前記発酵飲食品が、焼酎である請求項からいずれか記載の発酵飲食品の製造方法。
  9. 麦が1%(w/vol)から4%(w/vol)添加された液体培地で培養して得られた第1の白麹菌培養液と、麦が4%(w/vol)から20%(w/vol)添加された液体培地で培養して得られた第2の白麹菌培養液と、を有する発酵飲食品用の液体麹のセット。
JP2004115901A 2004-04-09 2004-04-09 液体麹の製造方法 Expired - Lifetime JP4482365B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004115901A JP4482365B2 (ja) 2004-04-09 2004-04-09 液体麹の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004115901A JP4482365B2 (ja) 2004-04-09 2004-04-09 液体麹の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005295872A JP2005295872A (ja) 2005-10-27
JP4482365B2 true JP4482365B2 (ja) 2010-06-16

Family

ID=35328169

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004115901A Expired - Lifetime JP4482365B2 (ja) 2004-04-09 2004-04-09 液体麹の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4482365B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4482366B2 (ja) * 2004-04-09 2010-06-16 アサヒビール株式会社 液体種麹の製造方法並びに該液体種麹を使用した液体麹の製造方法
JP2009044965A (ja) * 2007-08-14 2009-03-05 Okinawa Pref Gov サトウキビ機能性エキスおよびその製造方法
JP2011229441A (ja) * 2010-04-27 2011-11-17 Asahi Breweries Ltd 芋液体麹の製造方法
CN103509670B (zh) * 2012-06-15 2016-07-27 张凤鸣 一种苡仁琼浆及其生产方法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002330747A (ja) * 2001-05-02 2002-11-19 Sakuramasamune Kk 清酒製造法
JP2005295873A (ja) * 2004-04-09 2005-10-27 Asahi Breweries Ltd 液体種麹の製造方法並びに該液体種麹を使用した液体麹の製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002330747A (ja) * 2001-05-02 2002-11-19 Sakuramasamune Kk 清酒製造法
JP2005295873A (ja) * 2004-04-09 2005-10-27 Asahi Breweries Ltd 液体種麹の製造方法並びに該液体種麹を使用した液体麹の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005295872A (ja) 2005-10-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2011200747B2 (en) Method of Manufacturing Liquid Koji
TWI422679B (zh) 液體麴的製法
KR101324811B1 (ko) 식물섬유소화 효소가 증강된 액체국의 제조방법, 상기방법에 의해 제조되는 액체국, 및 그 액체국의 용도
JP3718677B2 (ja) 液体麹の製造方法
JP4083194B2 (ja) 液体麹の製造方法
JP4482365B2 (ja) 液体麹の製造方法
JP4096026B2 (ja) 液体麹を用いた穀類又は芋類の液化方法
JP4482366B2 (ja) 液体種麹の製造方法並びに該液体種麹を使用した液体麹の製造方法
JP4723340B2 (ja) 液体麹を用いた清酒の製造方法
JP3718678B1 (ja) 玄米を用いる液体麹の製造方法
JP3718681B1 (ja) 雑穀類を用いる液体麹の製造法
JP4908815B2 (ja) 液体麹の製造法
JP3718679B1 (ja) 豆類又は芋類を用いる液体麹の製造法
CN101591621B (zh) 生产液态曲的方法
JP4489488B2 (ja) 液体麹酒母の製造方法とそれを用いた酒類の製造方法
JP5080730B2 (ja) 液体麹の連続製造方法
JP4652804B2 (ja) 上面ビール酵母を用いた焼酎の製造方法
JP6699022B2 (ja) 液体麹の製造法
WO2012049737A1 (ja) デンプン分解酵素活性及び食物繊維分解酵素活性が増強された液体麹の製造方法
JP2011078366A (ja) デンプン分解酵素活性及び食物繊維分解酵素活性が増強された液体麹の製造方法
JP2006180809A (ja) 液体麹と固体麹を併用した酒類の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070131

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090415

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091215

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100210

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100316

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100319

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130326

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130326

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140326

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250