JP2003265165A - 麹菌の培養方法 - Google Patents
麹菌の培養方法Info
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Abstract
分解関連酵素の活性が高い麹菌を取得するための簡便で
安価な麹菌の培養方法、該培養方法により得られる培養
物、該培養物を用いた酒類または発酵食品の製造方法、
特に全工程を液体化した酒類の製造方法、糖質分解関連
酵素の活性が高い麹菌培養物の簡便で安価な製造方法、
グルコアミラーゼを含有する麹菌培養物の製造方法およ
びグルコアミラーゼの製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明によれば、麹菌を該麹菌の難分解
性糖質を含有する液体培地を用いて培養することによ
り、グルコアミラーゼ活性が高い麹菌培養物を提供する
ことができる。該培養物を用いることにより、全行程が
液相化された酒類または発酵食品の製造方法を提供する
ことができる。
Description
質を含有する液体培地を用いた麹菌の培養方法、該培養
方法で得られる培養物または該培養物の処理物、該培養
物または該培養物の処理物を用いた酒類または発酵食品
の製造方法、麹菌の難分解性糖質を含有する液体培地を
用いた麹菌培養物の製造方法、グルコアミラーゼを含有
する麹菌培養物の製造方法およびグルコアミラーゼの製
造方法に関する。
酒、焼酎、しょうゆ、みそ、みりん等の製造では、アス
ペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペ
ルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペル
ギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス
・オリーゼ(Aspergillus oryzae)またはアスペルギル
ス・ソーヤ(Aspergillus sojae)などの麹菌の胞子を、
蒸煮した穀類などの固体原料へ散布し、その表面で麹菌
を増殖させる固体培養法により製麹された、いわゆる固
体麹が広く利用されている。
カワチ(Aspergillus kawachii)やアスペルギルス・ア
ワモリ(Aspergillus awamori)などの固体麹が用いら
れている。しかしながら、固体培養は、原料や麹菌体が
不均一に分散する培養系であるため、温度や水分含量、
各種栄養成分といった因子を均一に保つことが困難であ
り、その培養制御は大変煩雑といえる。また、開放状態
で製麹されることも多く、雑菌汚染といった品質管理面
での注意も要する。
べ、培養制御や品質管理がはるかに容易であるが、麹菌
を液体培養して得られる培養物が、実際の焼酎麹として
用いられた例は少ない。なお、液体培養法で得られる培
養物とは、液体培養法で得られる培養物そのもの(以
下、液体麹ともいう)、培養液、菌体、それらの濃縮物
またはそれらの乾燥物のことをいう。
い大きな理由として、液体培養では麹菌のアミラーゼ、
ペプチダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ等の酵素の生
産性が固体培養と比較して全般的に著しく低下すること
があげられる。(Sudo S. etal: J. Ferment. Bioeng.,
77, 483-489 (1994)、Hashimoto T. et al: J. Fermen
t. Bioeng., 88, 479-483 (1999)、Iwashita K. et al:
Biosci. Biotechnol. Biochem.,62,1938-1946)。
並行複発酵によりアルコールが生成される。従って、麹
菌へのグルコース供給に影響を与える麹菌の糖質分解関
連酵素、特にグルコアミラーゼがアルコール発酵におけ
る鍵酵素となるが、液体培養法で得られる培養物におけ
るその活性は著しく低いことが知られている[IshidaH.
et al: J. Ferment. Bioeng., 86, 301-307(1998)、Mor
imura S. et al: J.Ferment. Bioeng., 71, 329-334(19
91)]。
際の焼酎製造に利用するためには、培養工学的手法によ
る麹菌のグルコアミラーゼ活性の向上や焼酎仕込み方法
の改良などが必須となる。液体培養法で得られる麹菌体
あたりのグルコアミラーゼ生産性が低い場合、高密度菌
体培養することにより培養物全体の活性を焼酎製造に十
分なレベルまで増強させる方法が考えられるが、麹菌の
高密度菌体培養は、麹菌の形態制御をはじめとする種々
の培養制御が必要とされる[Julie M. et al: Biotech.
Bioeng., 59, 407-418(1998)、Pedersen H. et al.: Ap
pl. Microbiol. Biotechnol., 53,272-277(2000)]た
め、麹菌を高密度菌体培養することは容易ではない。
焼酎製造への利用には、比較的培養が容易な低密度菌体
培養によってグルコアミラーゼ活性が増強された培養物
が得られることが望ましいが、これまでに知られている
液体培養法において麹菌体あたりのグルコアミラーゼ生
産性を向上させる方法は、厳密な制御または特殊な培養
装置が必要であり(特開平11-225746)、現実的な方法
ではない。
方法としては、麹菌培養系内にデンプン、デキストリン
またはマルトースなどの麹菌によって容易に分解、資化
される糖質を添加する方法が知られており、遺伝子レベ
ルでその発現機構も解明されつつある[Y.Hata et al.:
Curr.Gent.,22, 85-91(1992)]。しかしながら、実際
の酒類等の製造においては、添加したこれらの糖質が麹
菌によって速やかに資化されてしまうため、培養液中の
麹菌密度が増加してしまい、培養液の粘性の上昇による
通気不足、撹拌不十分といった現象が生じる。前述した
ように麹菌の高密度培養の培養制御は困難なため、上記
糖質の添加培養も実用的な方法ではない。
させる方法として、焙炒した穀類を麹菌培養液に添加す
る方法(特開2001-321154)も報告されているが、穀類
を焙炒するという、新たな製造工程が加わることにな
る。一方、実際の焼酎製造においては、麹歩合を上げ
る、すなわち単一仕込あたりの麹菌培養物の使用量を増
やした仕込み方法も有効であると考えられるが、麹歩合
の上昇は製麹プロセスの省力化、低コスト化という点か
ら望ましい方法ではない。また、酵素活性の低い液体麹
を濃縮する方法や市販酵素を添加する方法も報告されて
いるが安価な方法ではない(土谷ら,熊本県工業技術セ
ンター研究報告,58-61,1994)。
に使用することができる、グルコアミラーゼ等の糖質分
解関連酵素の活性が高い麹菌培養物を簡便に、しかも安
価に製造する方法が望まれているが、現在までそのよう
な方法は知られていない。
または発酵食品の製造に使用可能な糖質分解関連酵素の
活性が高い麹菌培養物を取得するための簡便で安価な麹
菌の培養方法、該培養方法により得られる培養物、該培
養物を用いた酒類または発酵食品の製造方法、特に全工
程を液体化した酒類の製造方法、糖質分解関連酵素の活
性が高い麹菌培養物の簡便で安価な製造方法、グルコア
ミラーゼを含有する麹菌培養物の製造方法およびグルコ
アミラーゼの製造方法を提供することにある。
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、麹菌の難分解性糖
質を含有する液体培地を用いて麹菌を培養することによ
り、麹菌あたりの糖質分解関連酵素、特にグルコミアラ
ーゼの比活性が飛躍的に向上することを見出し、本発明
を完成するに至った。
2)に関する。 (1) 麹菌を、該麹菌の難分解性糖質を含有する液体
培地を用いて培養することを特徴とする麹菌の培養方
法。 (2) 麹菌の難分解性糖質が、該麹菌を液体培養した
ときに発現する糖質分解酵素による分解率が50%以下
の糖質である上記(1)の培養方法。 (3) 麹菌の難分解性糖質が、難消化性デキストリ
ン、ポリデキストロース、水溶性セルロースおよびプル
ランからなる群より選ばれる糖質である上記(1)また
は(2)の培養方法。 (4) 上記(1)〜(3)のいずれか1つの方法で得
られる培養物。 (5) 麹菌を、該麹菌の難分解性糖質を含有する液体
培地を用いて培養することを特徴とする麹菌培養物の製
造方法。 (6) 麹菌を、該麹菌の難分解性糖質を含有する液体
培地を用いて培養し、培養物中にグルコアミラーゼを生
成、蓄積させることを特徴とする、グルコアミラーゼを
含有する麹菌培養物の製造方法。 (7) 麹菌を、該麹菌の難分解性糖質を含有する液体
培地を用いて培養し、培養物中にグルコアミラーゼを生
成、蓄積させることを特徴とするグルコアミラーゼの製
造方法。 (8) 麹菌の難分解性糖質が、該麹菌を液体培養した
ときに発現する糖質分解酵素による分解率が50%以下
の糖質である上記(5)〜(7)のいずれか1つの製造
方法。 (9) 麹菌の難分解性糖質が、難消化性デキストリ
ン、ポリデキストロース、水溶性セルロースおよびプル
ランからなる群より選ばれる糖質である上記(8)の製
造方法。 (10)上記(4)の培養物を用いることを特徴とする
酒類または発酵食品の製造方法。 (11) 酒類の製造方法が、全行程を液相で行うこと
を特徴とする上記(10)の製造法。 (12) 酒類が、焼酎である上記(10)または(1
1)の製造方法。
分解酵素生産能を有する麹菌、好ましくはグルコアミラ
ーゼ生産能を有する麹菌であり、例えば前記したような
アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)等に
代表される白麹菌、アスペルギルス・アワモリ(Aspergi
llus awamori)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus
niger)等で代表される黒麹菌、アスペルギルス・オリ
ーゼ(Aspergillus oryzae)やアスペルギルス・ソーヤ
(Aspergillus sojae)等に代表される黄麹菌などをあ
げることができる。
(Aspergillus kawachii)IFO4308、アスペルギルス・
アワモリ(Aspergillus awamori)IFO4033、IFO4388、I
FO1955、IFO8875、IFO8876、IFO8877、アスペルギルス
・ニガー(Aspergillus niger)IFO4414、IFO4415、IFO
4416、IFO4417、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergill
u s oryzae)IFO4079、IFO4176、IFO4177、IFO4178、IFO
4181、IFO4182、IFO4183、IFOP4184、IFO4190、IFO419
1、IFO4193、IFO4194、IFO4202、IFO4206、IFO4209、IF
O4210、IFO4214、IFO4215、IFO4228、IFO4240、IFO425
4、IFO4255、IFO4268、IFO4370、IFO4377、IFO4379、IF
O4384、IFO4385、IFO5238、IFO5239、IFO5240、IFO887
1、IFO30104、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus s
ojae)IFO4239、IFO4241、IFO4243、IFO4244、IFO425
2、IFO4274、IFO4279、IFO4386、IFO4391、IFO5241、IF
O32074、IFO33082、IFO33083、IFO33084、IFO33085、IF
O33086、IFO33087、IFFFO33088などをあげることができ
る。
態は任意であり、胞子または菌糸を用いることができ
る。本発明に使用する液体培地は、上記麹菌が生育し、
かつ該麹菌の難分解性糖質を含有する液体培地であれば
いずれでもよく、例えば麹菌の難分解性糖質および糸状
菌の培養に一般的に用いられる窒素源、無機塩類等を含
む液体培地をあげることができる。また、上記麹菌が生
育し、かつ該麹菌の難分解性糖質を含有する液体培地で
あれば、天然培地または合成培地のいずれも本発明に用
いることができる。
ンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リ
ン酸アンモニウム等の無機塩もしくは有機酸のアンモニ
ウム塩、その他の含窒素化合物、ならびにペプトン、肉
エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイ
ン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物等を用い
ることができる。
ン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシ
ウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫
酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。前述の
天然培地としては、焼酎蒸留粕をあげることができる。
ここでいう焼酎蒸留粕とは、本格焼酎を製造する際の蒸
留残さのことであり、芋焼酎、米焼酎、麦焼酎、そば焼
酎など種々の焼酎蒸留粕をあげることができる。
は、該麹菌を液体培養したときに発現する糖質分解酵素
によって分解されにくい糖質を意味し、通常、該酵素に
よる分解率が50%以下の糖質、好ましくは0.01%〜50%の
糖質、より好ましくは0.1〜40%の糖質、さらに好ましく
は0.5〜30%の糖質、特に好ましくは1〜20%の糖質をあげ
ることができる。
して、具体的には該麹菌を液体培養したときに発現する
糖質分解酵素による分解率が50%以下である水溶性グル
コースポリマーをあげることができる。さらに具体的に
は、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、プル
ランおよび水溶性セルロースをあげることができる。ま
た、上記の糖質分解酵素による分解率は、以下の方法に
より決定されるものである。
衝液(10mmol/L 酢酸:10mmol/L酢酸ナトリウム=3.2:
6.8の比で混合したもの、pH5.0)10mLに溶解し、121
℃、20分間オートクレーブ処理する。これに麹菌酵素液
10mLを投入し、30℃で12時間処理した後、該処理液の上
清(以下、処理上清という)の還元糖量を測定する方法
により決定されるものである。
調製したものを用いる。まず、改変ツァペックドックス
培地[マルトース2%、ポリペプトン(Difco)1%、リ
ン酸水素2カリウム0.1%、塩化カリウム0.05%、硫酸マグ
ネシウム7水和物0.05%、硫酸鉄7水和物0.01%]100ml
を容量500mlのバッフル付三角フラスコに入れ、オート
クレーブ滅菌後、その後の実際の酒類または発酵食品の
製造に用いる麹菌、例えば焼酎の製造にアスペルギルス
・カワチ(Aspergillus kawachii)IFO4308を用いる場合
は該IFO4308を接種し、30℃、180rpmにて48時間培養す
る。この培養液をろ紙(アドバンテック社製、No.5A)
にてろ過し、その上清10mLを透析膜に入れ、10mmol/L酸
緩衝液(10mmol/L 酢酸:10mmol/L 酢酸ナトリウム=3.
2:6.8の比で混合、pH5.0)に対して低温で一晩透析した
後、水で10mLにしたものを、上記麹菌酵素液とする。
定分析法注解[注解編集委員会編、日本醸造協会(199
3)]に記載の方法に従い測定できる。具体的にはフェ
ーリング溶液10mLを300mL容三角フラスコにとり、水40m
Lおよびブドウ糖標準溶液約18mLを加えて電気コンロ上
で沸騰させ、なお沸騰を続ける程度に火力を弱めて2分
間沸騰を続けた後、ビューレットよりブドウ糖標準溶液
を滴下し、硫酸銅の青色がなくなってから、メチレンブ
ルー溶液4滴を加え煮沸しつつさらに液を滴下し、青色
が消失したところを終点とする。滴定は沸騰を始めてか
ら3分以内に終わらせる。ここで使用したブドウ糖標準
液の全量をbmLとする。
ラスコにとり、処理上清の適当量(糖量50mg以下を含む
ようにようにする)をピペットで加え、前記の操作にな
らってブドウ糖標準溶液を用いて滴定し、このmL数をm
とすれば還元糖は次式により求められる。 還元糖量(g/100ml)=2(b−m)×[100/加えた処
理上清(mL)]/1000 なお、上記で用いるメチレンブルー溶液は、メチレンブ
ルー1gを水に溶かして調製する。また、フェーリング
溶液はA液とB液の2種類の溶液を調製し、これを5mL
ずつ加えることで調製する。A液は、硫酸銅・5水和物
34.639gを水に溶かして500mLとし、2日間放置後ろ過
して使用する。B液は酒石酸カリウム・4水和物173gと
水酸化ナトリウム50gを水に溶かして500mLとし、これを
2日間放置後ろ過して使用する。ブドウ糖標準液は、ブ
ドウ糖2.046gと安息香酸1gを水に溶かして1Lとしたも
のを使用する。
の値から糖質の分解率を以下の式に従って算出する。 分解率(%)=処理上清還元糖(g/100ml)/(1/20
×100)×100 麹菌の難分解性糖質の培地への添加量は特に制限されな
いが、好ましくは0.1〜5%(重量/容量)、より好まし
くは1〜2%(重量/容量)である。また、糖質の添加時
期については、培養初発から添加することが好ましい
が、菌体増殖が定常期に入る培養1日〜2日目に添加して
もよい。
培養などの好気的条件下で行い、培養温度は15〜45℃、
好ましくは30〜40℃が適当である。撹拌数や通気量につ
いては、培養環境を好気的に保つことができる条件であ
ればいかなる条件でもよい。培養時間は通常1〜7日間で
ある。また、本発明の培養方法では、ペレット状の菌形
態で培養が進行するため、デキストリン等の糖質添加培
養のようにパルプ状の菌形態を示す培養に比べ、格段に
液体培地の粘性が低く、撹拌不足による酸素律速等の培
養工程における障害が回避され、培養工程の管理が容易
である。
る糸状菌が示す形態の一種で、1個ずつが独立した、肉
眼で容易に認められる大きさの菌糸塊であって、球状ま
たは球状に近似した形状を示す菌形態であり、パルプ状
とは、繊維状の菌糸群が液中にほぼ均一に分散している
菌形態とされている[Aspergillus, Plenum Press, New
York(1994)]。上記の培養法で得られる培養物およ
び培養物の処理物としては、該培養物そのもの、該培養
物を遠心分離等することにより得られる培養液、麹菌
体、それらの濃縮物またはそれらの乾燥物等をあげるこ
とができる。
または発酵食品の製造に用いることができる。例えば、
清酒を製造する場合には、酒母や各もろみ仕込み段階に
おいて、焼酎を製造する場合には、もろみ仕込み段階に
おいて、しょうゆを製造する場合には、盛り込みの段階
において、みそを製造する場合には、仕込み段階におい
て、みりんを製造する場合は、仕込み段階において、該
培養物または該培養物の処理物を固体麹の代わりに用い
ることができる。
得られる培養液またはそれらの濃縮物などを用いて酒類
または発酵食品の製造に用いる場合には、全行程を液相
で行うことができる。全工程を液相で行う酒類の製造方
法としては、例えば焼酎を製造する場合、とうもろこ
し、麦、米、いも、さとうきび、黒糖などを原料に用
い、該原料を約80℃の高温で耐熱性酵素剤を使って溶か
した後、これに上記した培養物若しくは該培養物から得
られる培養液またはそれらの濃縮物、および酵母を添加
することでアルコール発酵させた発酵液を、常圧蒸留法
または減圧蒸留法などにより蒸留して製造する方法をあ
げることができる。
用い、該原料を約80℃の高温で耐熱性酵素剤を使って溶
かした後、これに上記した培養物若しくは該培養物から
得られる培養液またはそれらの濃縮物、および酵母を添
加することでアルコール発酵させ、該発酵液を圧搾など
によりろ過して製造する方法をあげることができる。グ
ルコアミラーゼを含有する麹菌培養物は、上記した液体
培地、培養方法に従って麹菌を培養することにより製造
できる。グルコアミラーゼ活性は、基質にでんぷんを用
いて酵素反応を行い、生成したグルコース量を公知の化
学的または酵素的方法により定量することで測定でき
る。具体的には、第四回改訂国税庁所定分析法[注解編
集委員会編、日本醸造協会(1993)]に記載の方法によ
って酵素反応を行った後、生成したグルコース量を市販
のグルコース定量キット(和光純薬工業社製 グルコー
スB-テストワコーキットなど)等を用いて測定する方法
をあげることができる。
培養方法に従って麹菌を培養し、培養液中にグルコアミ
ラーゼを生成蓄積させ、該培養液上清から通常の酵素の
単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、
脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル
(DEAE)−セファロース、DIAION HPA-75(三菱化学社
製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー
法、S-Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用
いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファ
ロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水
性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、
アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォー
カシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を
単独あるいは組み合わせて用い、分離精製することがで
きる。
限定するものではない。以下の実施例で用いているアス
ペルギルス・カワチ IFO4308は、財団法人発酵研究所発
行のカタログに記載されており、請求により分譲を受け
ることができる。
し、該酵素液を用いて上記した第四回改正所定分析法注
解に記載の方法に従い、還元糖量を測定することにより
決定した。糖質には、イソマルトース、マルトトリオー
ス、デキストリン、可溶性デンプン、ポリデキストロー
ス(カルター・フードサイエンス社製のライテス)、難
消化性デキストリン(松谷化学工業製のパインファイバ
ー)、水溶性セルロース(日本食品化工社製のセルエー
ス)およびプルラン(林原商事社製)を用いた。結果を
表1に示す。
ミラーゼ活性量をそれぞれ測定した後、次の式により決
定した。 グルコアミラーゼ比活性(U/mg‐菌体)=培養物グルコ
アミラーゼ活性(U/ml)/培養物麹菌体量(mg/ml) また、上記培養物菌体量は、培養物中の麹菌体を溶菌酵
素で分解した後、遊離するN‐アセチルグルコサミンを
測定するキッコーマン社製麹菌体量測定キットを用いて
測定した。具体的には、麹菌培養物を溶菌用緩衝液にて
5倍に希釈した試料を調製し、該試料1mlに溶菌酵素液1m
l、溶菌用緩衝液3mlを添加した後、37℃で3時間加温す
ることで麹菌を溶菌し、該溶菌液中のN‐アセチルグル
コサミンを該測定キット付属の説明書に従って定量する
ことにより、麹菌培養物1mlあたりの麹菌mg数を計算し
た。
所定分析法[注解編集委員会編、日本醸造協会(199
3)]に従って測定した。すなわち、デンプン溶液1mlに
M/5酢酸緩衝液(10mmol/L 酢酸:10mmol/L 酢酸ナト
リウム=3.2:6.8の割合で混合し調製したもの、pH5.0)
0.2mlを加え、40℃で5分間予熱した。これに酵素液(麹
菌培養物から遠心分離により菌体を除いた培養上清)0.
1mlを加え、40℃で20分間反応させ、1mol/L 塩酸溶液を
0.1ml加えて中和した。別の対照として、デンプン溶液1
mlにM/5酢酸緩衝液(組成は前記のものと同様)0.2mlを
加え、40℃で5分間予熱し、1mol/L水酸化ナトリウム溶
液を0.1ml加えた後に酵素液を0.1ml添加し、以下上記と
同様に操作した。続いて、反応溶液中に生成したグルコ
ース含量(mg)を和光純薬工業(株)製のグルコースB-
テストワコーキットを用い、添付の説明書に従って測定
した。
にキットに同梱の発色試薬3.0mlをよく混合した後、37
℃で20分間加温し、分光光度計を用いて505nmの吸光度
を測定した。別の対照として発色試薬のみ3.0mlを37
℃、20分間加温したものについても上記と同様の操作で
吸光度を測定した。グルコース濃度を算定する検量線
は、キット同梱のグルコース標準液を蒸留水で希釈し、
これを試料として用い、上記と同様の操作で吸光度を測
定することで作成した。
から酵素反応溶液の吸光度に相当するグルコース濃度を
求めた。グルコアミラーゼ活性は、可溶性デンプンから
40℃で60分間に1mgのブドウ糖を生成する活性を1単位
とした。
用いたグルコアミラーゼ活性が増強された麹菌培養物の
製造 ポリペプトン(Difco社製)1%、リン酸水素2カリウム
0.1%、塩化カリウム0.05%、硫酸マグネシウム7水和物
0.05%、硫酸鉄7水和物0.01%を含有する培地に、イソマ
ルトース、マルトトリオース、デキストリン、可溶性デ
ンプン、難消化性デキストリン(松谷化学工業製のパイ
ンファイバー)、ポリデキストロース(カルター・フー
ドサイエンス社製のライテス)、水溶性セルロース(日
本食品化工社製のセルエース)またはプルラン(林原商
事社製)を2%になるように加えた培地(pH無調整)1
00mlを容量500mlのバッフル付三角フラスコに入れ、オ
ートクレーブ滅菌後、アスペルギルス・カワチ IFO4308
の胞子懸濁液を1×106胞子数/mlになるように接種し
た。その後、温度30℃、振盪速度180rpmにて48時間培養
を行った。培養終了後、培養物の菌体量およびグルコア
ミラーゼ活性を測定し、菌体量あたりの比活性としてグ
ルコアミラーゼ活性を評価した。表2に各炭素源におけ
る培養物のグルコアミラーゼ比活性を示した。
いるマルトースの類縁物質であるイソマルトース、マル
トトリオース、およびデキストリン添加区におけるグル
コアミラーゼの比活性は、それぞれ2.5U/mg-菌体、2.7U
/mg-菌体、および2.1U/mg-菌体であり、グルコース添加
区0.8U/mg-菌体の約3倍の誘導能を示したのに対し、ア
スペルギルス・カワチ IFO4083の難分解性糖質である難
消化性デキストリン添加区では8.8U/mg-菌体、ポリデキ
ストロース添加区では9.6U/mg-菌体、水溶性セルロース
添加区では4.5U/mg-菌体、プルラン添加区では5.4U/mg-
菌体であり、それぞれグルコース添加区の11倍、12倍、
約5.6倍、6.8倍と顕著に高いグルコアミラーゼ誘導能を
示した。これは、麹菌の難分解性糖質がグルコアミラー
ゼの発現誘導にきわめて適した誘導基質であることを示
している。
方法においては、ペレット状の菌形態が観察された。ペ
レット状の菌体からなる培養液は、その粘土が低く、撹
拌によって十分な酸素を培養液に供給できるので、麹菌
の難分解性糖質を添加する培養方法は培養作業の面にお
いても優れた培養方法であることが確認された。
コアミラーゼ活性が増強された麹菌培養物の製造(1) 麦焼酎蒸留粕を以下の方法で調製し、麹菌の培養に供し
た。すなわち、発酵温度を25℃に保ち、表3に示した配
合で、焼酎用酵母を用いた一次仕込を5日間行い、次に
大麦700gを用いた二次仕込を14日間行った。
バポレーター N-1NW-29型を用いて、300〜100mHg、醪品
温48〜52℃、冷却温度10℃の条件下で減圧蒸留し、400m
lの留出部を焼酎原酒として回収する一方、600mlの濃縮
部を麦焼酎蒸留粕として取得した。該麦焼酎蒸留粕を水
道水で5倍に希釈したものに、デキストリン、難消化性
デキストリン(松谷化学工業製のパインファイバー)、
ポリデキストロース(カルター・フードサイエンス社製
のライテス)、水溶性セルロース(日本食品化工社製の
セルエース)またはプルラン(林原商事社製)を2%に
なるように添加した培地(pH無調整)100mlを作成し、
容量500mlのバッフル付三角フラスコに入れ、オートク
レーブ滅菌後、アスペルギルス・カワチ IFO4308の胞子
懸濁液を1×106胞子数/mlになるように接種した。その
後、温度30℃、振とう速度180rpmにて48時間培養を行っ
た。培養終了後、培養物の菌体量ならびにグルコアミラ
ーゼ活性を測定し、菌体量あたりの比活性としてグルコ
アミラーゼ活性を評価した。表4に各炭素源における培
養物のグルコアミラーゼ比活性を示した。
菌体であり、誘導基質無添加の対照区1.8U/mg-菌体の約
1.7倍の誘導能を示したのに対し、難消化性デキストリ
ン添加区は8.7U/mg-菌体で対照区の約4.8倍、ポリデキ
ストロース添加区は7.5U/mg-菌体で対照区の約4.2倍、
水溶性セルロース添加区は3.9U/mg-菌体で対照区の約2.
2倍、プルラン添加区は5.4U/mg-菌体で対照区の3.0倍と
いずれもデキストリン添加区に比べ高い誘導能を示し
た。これは、麦焼酎蒸留粕培地を用いた場合において
も、麹菌の難分解性糖質はグルコアミラーゼの優れた発
現誘導基質であることを示している。
コアミラーゼ活性が増強された麹菌培養物の製造(2) 上記実施例2で得られた麦焼酎蒸留粕を水道水で5倍に
希釈したものに、デキストリンまたは難消化性デキスト
リン(松谷化学工業製のパインファイバー)を2%にな
るように添加した培地(pH無調整)1Lを作成し、容量2L
のジャーファーメンターに入れ、オートクレーブ滅菌
後、アスペルギルス・カワチ IFO4308の胞子懸濁液を1×
106胞子数/mlになるように接種した。その後、温度30
℃、撹拌数400rpmにて72時間培養を行った。培養期間
中、1日おきに培養物のサンプリングを行い、菌体量な
らびにグルコアミラーゼ活性を測定し、菌体量あたりの
比活性としてグルコアミラーゼ活性を、デキストリンお
よび難消化性デキストリンのいずれも無添加の対照区と
比較評価した。図1に各炭素源における培養物のグルコ
アミラーゼ比活性の経時変化を示した。
養の進行に伴って上昇していく傾向にあったが、特に難
消化性デキストリン添加区で顕著であった。培養72時
間目の比活性を比較すると、デキストリン添加区は3.6U
/mg-菌体で、対照区の2.0U/mg-菌体と比較して1.8倍な
のに対し、難消化性デキストリン添加区は9.5U/mg-菌体
で、対照区の約4.3倍にまで活性が誘導された。これ
は、麦焼酎蒸留粕培地を用いた大量培養においても、麹
菌の難分解性糖質はグルコアミラーゼの優れた発現誘導
基質であることを示している。
れた麹菌培養物を用いた全行程が液相による焼酎の製造 実施例3において、麹菌の難分解性糖質添加培養により
調製した培養物を用い、全工程が液相による焼酎製造を
行った。すなわち、表5に示した仕込配合にて、総麦1k
gの仕込を行い、発酵温度を25℃に保ち、一次仕込5日
間、二次仕込14日間の二段仕込を行った。
は液化処理したものを用いた。大麦の液化処理は、以下
の方法で行った。すなわち、内容量5Lの撹拌機、ジャケ
ット付き反応缶に水1.5 Lを入れ、50℃に保温しなが
ら、原料精白大麦(精麦度80%)1.0 kgを投入し、リク
イファーゼL45(阪急バイオインダストリー製、α‐
アミラーゼ)1gとオリエンターゼ10NL(阪急バイオイ
ンダストリー製、中性プロテアーゼ)0.5gとを添加
し、撹拌しながら60分間反応させ、ついで3時間で直線
的に90℃まで昇温させた。20分後、冷却を開始し、45℃
まで冷却した時点で、セルロシンAL(阪急バイオインダ
ストリー製、ヘミセルラーゼ剤)1.0gを添加し、引き
続き冷却し、25℃になった時点で液化処理を終了した。
引き続き、該液化処理液を容量比1:4に分割し、おの
おの一次仕込、二次仕込に使用した。また、対照仕込と
して表6に示すような固体麹と液化処理しない粒原料を
用いた仕込を実施した。
らかなように、固体麹を使用した対照仕込みと比較し
て、液体麹を用いた仕込みにおいても、ほぼ同様の発酵
経過を示した。また、両者を減圧蒸留後、アルコール度
数25%に和水したものをパネラー10名による採点法
(5点評価法、1:良、5:悪)により官能評価を行
い、その平均点を表7に示した。
ず、液体麹を用いて十分に焼酎製造が可能であることが
確認された。以上の結果から、本発明によれば、液体培
養によっても焼酎製造に必要なグルコアミラーゼ活性の
高い麹菌培養物を、特別な培養装置や特殊な培養工学的
手法による厳密な培養制御を行うことなく、簡便な液体
培養法にて製造することができることが示された。ま
た、固体培養に比べて極めて厳密な製麹管理を容易に行
うことができる液体培養によって、品質の高い麹の安定
的な製造が可能になった。また、麹の液体化により、も
ろみの流動化による発酵管理の簡易化だけでなく、麹製
造プロセス、ひいては焼酎製造プロセスの省力化、効率
化も可能となった。
コミラーゼ活性が増強された麹菌培養物を提供すること
ができる。液体培養は固体培養に比べ厳密な培養コント
ロールが可能なので安価に品質が安定した麹を製造する
ことができる。液体培養によって得られる培養物そのも
のは、液体麹として利用することができ、固体麹を使用
する従来の焼酎製造とは異なり、全工程を液相のままで
行うことが可能なので、本発明により従来に比べ効率的
かつ安定的な焼酎製造システムを提供することができ
る。
ける麹菌のグルコアミラーゼ生産性に対する該麹菌の難
分解性糖質の添加効果を示す図である。図中、▲は難消
化性デキストリン添加区、●はデキストリン添加区、◆
は対照区を示す。
焼酎製造における発酵経過を示す図である。図中、▲は
難消化性デキストリン含有液体培地で培養した麹菌培養
物を、●は固体培養で培養して得られる麹菌を用いた発
酵経過を示す。
Claims (12)
- 【請求項1】 麹菌を、該麹菌の難分解性糖質を含有す
る液体培地を用いて培養することを特徴とする麹菌の培
養方法。 - 【請求項2】 麹菌の難分解性糖質が、該麹菌を液体培
養したときに発現する糖質分解酵素による分解率が50
%以下の糖質である請求項1記載の培養方法。 - 【請求項3】 麹菌の難分解性糖質が、難消化性デキス
トリン、ポリデキストロース、水溶性セルロースおよび
プルランからなる群より選ばれる糖質である請求項1ま
たは2記載の培養方法。 - 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方
法で得られる培養物または該培養物の処理物。 - 【請求項5】 麹菌を、該麹菌の難分解性糖質を含有す
る液体培地を用いて培養することを特徴とする麹菌培養
物の製造方法。 - 【請求項6】 麹菌を、該麹菌の難分解性糖質を含有す
る液体培地を用いて培養し、培養物中にグルコアミラー
ゼを生成、蓄積させることを特徴とする、グルコアミラ
ーゼを含有する麹菌培養物の製造方法。 - 【請求項7】 麹菌を、該麹菌の難分解性糖質を含有す
る液体培地を用いて培養し、培養物中にグルコアミラー
ゼを生成、蓄積させることを特徴とするグルコアミラー
ゼの製造方法。 - 【請求項8】 麹菌の難分解性糖質が、該麹菌を液体培
養したときに発現する糖質分解酵素による分解率が50
%以下の糖質である請求項5〜7のいずれか1項に記載
の製造方法。 - 【請求項9】 麹菌の難分解性糖質が、難消化性デキス
トリン、ポリデキストロース、水溶性セルロースおよび
プルランからなる群より選ばれる糖質である請求8記載
の製造方法。 - 【請求項10】 請求項4記載の培養物または該培養物
の処理物を用いることを特徴とする酒類または発酵食品
の製造方法。 - 【請求項11】 酒類の製造方法が、全行程を液相で行
うことを特徴とする請求項10記載の製造法。 - 【請求項12】 酒類が、焼酎である請求項10または
11記載の製造方法。
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