JP2007125005A - 黄麹菌を用いた液体麹の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 液体麹の製造方法であって、表面の全部又は一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類;表面が外皮で覆われた豆類及び/又は芋類;細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌアから選ばれた少なくとも1種の培養原料、硝酸塩、リン酸塩、並びに、硫酸塩を含有する液体培地で黄麹菌を培養することを特徴とする液体麹の製造方法、当該方法で得られた液体麹、並びに、当該液体麹を用いて発酵飲食品の製造を行なう発酵飲食品の製造方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
しかし、この液体麹は、清酒等の製造に必要な酵素活性が十分に得られないことがよく知られており、これまで実製造で使用された例は少なかった。
しかしながら、本製法により黄麹菌を培養した際の酵素生産挙動は不明であり、清酒等の製造における鍵酵素であるグルコアミラーゼやα−アミラーゼの高生産方法も見つかっていない。
また、無機塩類の添加量や培養温度を最適化することで、発酵飲食品を製造するために十分な酵素活性を有する液体麹の製造が可能であることも見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
請求項2に係る本発明は、液体培地が、硝酸塩を0.1〜2.0%(w/v)の濃度で含有する請求項1に記載の液体麹の製造方法である。
請求項3に係る本発明は、液体培地が、リン酸塩を0.05〜1.0%(w/v)の濃度で含有する請求項1に記載の液体麹の製造方法である。
請求項4に係る本発明は、液体培地が、硫酸塩を0.01〜0.5%(w/v)の濃度で含有する請求項1に記載の液体麹の製造方法である。
請求項6に係る本発明は、液体麹中に、少なくともグルコアミラーゼとα−アミラーゼとを同時に生成、蓄積させる請求項1に記載の液体麹の製造方法である。
請求項7に係る本発明は、培養原料中のでん粉に由来する糖の培養系への放出速度を抑制することにより、液体麹の酵素活性を調整することを特徴とする請求項1に記載の液体麹の製造方法である。
請求項9に係る本発明は、発酵飲食品が清酒、焼酎、しょうゆ、味噌、みりん、醸造酢および甘酒から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の発酵飲食品の製造方法である。
請求項10に係る本発明は、すべての工程が液相で行なわれる請求項8又は9に記載の発酵飲食品の製造方法である。
請求項12に係る本発明は、請求項11に記載の液体麹を乾燥させてなる液体麹の乾燥品である。
請求項13に係る本発明は、請求項11に記載の液体麹を濃縮させてなる液体麹の濃縮品である。
請求項15に係る本発明は、請求項12に記載の液体麹の乾燥品を用いる酵素製剤の製造方法である。
請求項16に係る本発明は、請求項11に記載の液体麹を用いるエタノールの製造方法である。
請求項17に係る本発明は、表面の全部又は一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類;表面が外皮で覆われた豆類及び/又は芋類;細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌアから選ばれた少なくとも1種の培養原料、硝酸塩、リン酸塩、並びに、硫酸塩を含有する液体培地で黄麹菌を培養することを特徴とする酵素の生産方法である。
また、高い酵素活性を有する当該液体麹は、酵素製剤並びに消化剤などの医薬品としても利用することができる。
さらに、黄麹菌は形質転換の宿主として遺伝子工学の分野で利用されることも多く、本発明によれば、医薬品などに用いられる高付加価値の異種タンパク質の大量製造も容易になる。
本発明における液体麹の製造方法は、上記の穀類、豆類、芋類、特定の雑穀類等の原料を添加して調製された液体培地で黄麹菌の培養を行ない、グルコアミラーゼ及びα−アミラーゼの酵素活性を増強した液体麹を製造する工程を包含するものである。すなわち、前記した各種原料を使用して麹菌を培養するため、当該原料中のでん粉の糖化に時間がかかり、培養系への糖分をはじめとする栄養分の放出速度が抑制され、液体麹の酵素活性が増強される。しかも、グルコアミラーゼとα−アミラーゼが同時にバランスよく生成、蓄積される。
例えば、培養原料が大麦の場合、未精白の精白歩合100%のもの、或いは未精白の精白歩合を100%とし、この未精白の精白歩合(100%)から大麦の穀皮歩合(一般的には7〜8%)を差し引いた割合、すなわち92〜93%程度の精白歩合以上のものである。
なお、本発明においては、培養原料である豆類や芋類の外皮を保持させたまま、加熱あるいは凍結処理を行うこともできる。
培養原料のアマランサスとキヌアは、単独で用いてもよく、あるいは組み合わせて用いてもよい。これらは、細砕や粉砕などの前処理をすることなく、液体培地の調製に用いる。
例えば、大麦を培養原料とした場合には、水に対して大麦を1〜20%(w/vol)添加した液体培地に調製される。また、無精白の大麦を用いた場合には、さらに好ましくは8〜10%(w/vol)添加した液体培地に調製され、95%精白した大麦を原料とした場合には、さらに好ましくは1〜4%(w/vol)添加した液体培地に調製される。
次に、籾殻を除いた玄米を培養原料とした場合には、水に対して玄米を1%(w/vol)から20%(w/vol)、好ましくは5%(w/vol)から13%(w/vol)、より好ましくは8%(w/vol)から10%(w/vol)を添加した液体培地に調製される。
培養原料の使用量が上限値を超えると、培養液の粘性が高くなり、黄麹菌を好気培養するために必要な酸素や空気の供給が不十分となり、培養物中の酸素濃度が低下して、培養が進み難くなるので好ましくない。一方、該原料の使用量が下限値に満たないと、目的とする酵素が高生産されない。
たとえば、硝酸塩としては硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどを用いることができ、特に硝酸ナトリウムが好ましい。リン酸塩としてはリン酸2水素カリウム、リン酸アンモニウムなどを用いることができ、特にリン酸2水素カリウムが好ましい。硫酸塩としては硫酸マグネシウム7水和物、硫酸鉄7水和物、硫酸アンモニウムなどを用いることができ、特に硫酸マグネシウム7水和物、硫酸鉄7水和物が好ましい。これらの無機塩類は、単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、液体培地における上記の無機塩類の濃度は、黄麹菌の培養中にグルコアミラーゼ及びα−アミラーゼが選択的に生成、蓄積される程度のものに調整される。具体的には、硝酸塩の場合は0.1〜2.0%、好ましくは0.2〜1.5%、リン酸塩の場合は0.05〜1.0%、好ましくは0.1〜0.5%、硫酸塩の場合は0.01〜0.5%、好ましくは0.02〜0.1%(いずれもw/v)とする。
なお、上記の無機塩類の好ましい濃度条件は、互いに組み合わせて採用することができるし、本発明の方法のいずれの態様とも組み合わせることができる。
このようにして得られる液体培地は必要に応じて滅菌処理を行なってもよく、処理方法には特に限定はない。例としては、高温高圧滅菌法を挙げることができ、121℃で15分間行なえばよい。
また、黄麹菌の生育フェーズに合わせた培養温度制御を行うことにより、酵素活性を増強できる。具体的には、培養開始から12〜36時間後までの菌体増殖期は25〜35℃、好ましくは28〜33℃とし、その後の酵素生産期は35〜45℃、好ましくは37〜42℃に維持すればよい。また、全体の培養時間は24〜72時間とするのが好ましい。
なお、上記の好ましい培養温度条件は、本発明の方法のいずれの態様とも組み合わせることができる。
したがって、請求項17に記載の酵素の生産方法は、上記した液体麹の製造方法と同様である。
また、得られた液体麹の一部を次の液体麹製造におけるスターターとして用いることもできる。このように液体麹を連続的に製造することにより、安定的な生産が可能になると同時に、生産効率の向上も図ることができる。
本発明の方法で得られた液体麹を用いて発酵法によりエタノールを製造する方法としては、固体麹の代わりに当該液体麹を用いること以外は、既知の工業用アルコール(エタノール)の製造方法に従って製造することができる。
上記原料としては、デンプン質原料であればよく、大麦、裸麦、米、小麦、そば、ヒエ、アワ、キビ、コウリャン、トウモロコシ等の穀類;サツマイモ(甘藷)、キャッサバ等の芋類;などを挙げることができる。
仕込み後は、低温で蒸煮した後、20〜30℃程度の温度で発酵させ、一次仕込み後、二次仕込みを行うこともできる。
発酵終了したもろみを蒸留して不純物を除き、濃縮することにより、工業用アルコール(エタノール)を製造することができる。
1.液体麹製造方法; 以下のような方法で液体麹を製造し、それらの酵素活性を測定した。
すなわち、各種炭素源2.0%(w/vol)、硝酸ナトリウム0.3%(w/vol)、塩化カリウム0.2%(w/vol)、リン酸2水素カリウム0.1%(w/vol)、硫酸マグネシウム7水和物0.05%(w/vol)、硫酸鉄7水和物0.02%(w/vol)および水を配合した液体培地100mlを500mlバッフル付三角フラスコに張り込み、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。
なお炭素源としては、デンプン(溶性、和光純薬製)、デキストリン(和光純薬製)、65%精白大麦(オーストラリア産スクーナー)、98%精白大麦(オーストラリア産スクーナー)を用いた。また、98%精白大麦をミルで粉砕処理したもの(粉砕品)を用いた試験も同様に行なった。
このように調製した培地に、黄麹菌(Aspergillus oryzae RIB40)を1×106個/mlになるように植菌し、30℃、72時間、100rpmで振盪培養した。
98%精白麦は、本願出願人が特願2004-350661号明細書にて開示した、表面が穀皮で覆われた穀類に相当するものであり、これを粉砕すると酵素生産が抑制されたことから、大麦デンプン質を穀皮によって物理的に覆っている構造であることが重要であると推察された。
α−アミラーゼは生産挙動がグルコアミラーゼとは若干異なるものの、やはり98%精白麦試験区で多量の酵素を生産した(図1(b))。
このように、98%精白麦のような表面が穀皮で覆われた穀類を用いることで、グルコアミラーゼやα−アミラーゼといった発酵飲食品の製造に必要な酵素群を同時に高生産させることが可能なことが示された。
1.液体麹製造方法; 以下のような方法で液体麹を製造し、それらの酵素活性を測定した。
すなわち、98%精白大麦(オーストラリア産スクーナー)2.0%(w/vol)、硝酸ナトリウム0.3%(w/vol)、塩化カリウム0.2%(w/vol)、リン酸2水素カリウム0.1%(w/vol)、硫酸マグネシウム7水和物0.05%(w/vol)、硫酸鉄7水和物0.02%(w/vol)および水を配合した液体培地100mlを500mlバッフル付三角フラスコに張り込み、121℃で15分間オートクレーブ滅菌し対照区とした。さらに、表1に示すように各塩類を抜いたこと以外は上記と同様にして培地を調製し、試験区1〜6とした。このように作製した7種類の培地に黄麹菌(Aspergillus oryzae RIB40)を1×106個/mlになるように植菌し、30℃、72時間、100rpmで振盪培養した。
グルコアミラーゼは、硝酸ナトリウムを含まない試験区1、リン酸二水素カリウムを含まない試験区3、硫酸マグネシウムならびに硫酸鉄両方を含まない試験区6ではほとんど生産されなかった(図2(a))。一方、α−アミラーゼは試験区1でほとんど生産されず、試験区3、5、6で生成が抑制される傾向が確認された(図2(b))。
このように、黄麹菌の液体麹における酵素生産性は、培地に含まれる塩類によって大きく影響されることが明らかとなった。すなわち、両酵素を同時に高生産させるには、98%精白麦のような表面が穀皮で覆われた穀類、硝酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウムもしくは硫酸鉄が必須であることが示された。
実施例2では、試験区4の硫酸マグネシウム欠乏培地や試験区5の硫酸鉄欠乏培地では酵素生産性の減少傾向が認めらなかったにもかかわらず、試験区6の硫酸マグネシウムと硫酸鉄の両方を欠乏した培地では顕著に減少することが確認された。そこで、黄麹菌の液体麹における酵素生産性の必須因子を探索する目的で、硫酸塩の影響を確認する試験を行なった。
すなわち、水、98%精白大麦(オーストラリア産スクーナー)2.0%(w/vol)、硝酸カリウム0.2%(w/vol)、リン酸2水素カリウム0.3%(w/vol)、硫酸マグネシウム7水和物0.05%(w/vol)もしくは塩化マグネシウム6水和物0.041%(w/vol)を含む表2に示すような3試験区の液体培地100mlを調製した後、500mlバッフル付三角フラスコに張り込み、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。なお、塩化マグネシウム6水和物の添加量は、硫酸マグネシウム7水和物0.05%に相当するモル濃度である4.06mMから算出し、各々の培地中のマグネシウム濃度が等しくなるように配合した。
この培地に黄麹菌(Aspergillus oryzae RIB40)を1×106個/mlになるように植菌し、30℃、72時間、100rpmで振盪培養した。
以上の結果から、硫酸マグネシウムの添加効果の本体が、硫酸根にあることが示唆された。
実施例2および3にて、黄麹菌の液体麹製造における酵素生産性に、培地に添加される無機塩類が大きな影響を及ぼすことが確認された。そこで、無機塩類の添加量を増加させることで酵素生産性を増強できないか検討を行なった。
すなわち、98%精白大麦(オーストラリア産スクーナー)、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸2水素カリウム、硫酸マグネシウム7水和物、硫酸鉄7水和物および水を表3に示すような組成で配合した液体培地培地100mlを、500mlバッフル付三角フラスコに張り込み、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。この培地に黄麹菌(Aspergillus oryzae RIB40)を1×106個/mlになるように植菌し、30℃、72時間、100rpmで振盪培養した。
試験区1は対照区に比べて無機塩類添加量が2倍に、試験区2は4倍に増強されている。そのときのグルコアミラーゼ活性は、無機塩類濃度が4倍に増強された試験区2で最も高く、無機塩類添加量が酵素生産性向上に寄与することが示された(図4(a))。α−アミラーゼも、無機塩類が対照区に比べ2倍に増強された試験区1で最も高い活性を示し、無機塩類添加量が酵素生産性に影響することが確認された(図4(b))。
黄麹菌の液体麹製造における酵素生産に対する培養温度の影響を確認する試験を行ない、さらなる酵素高生産の可能性を検討した。
すなわち、98%精白大麦(オーストラリア産スクーナー)2.0%(w/vol)、硝酸ナトリウム1.2%(w/vol)、塩化カリウム0.8%(w/vol)、リン酸2水素カリウム0.4%(w/vol)、硫酸マグネシウム7水和物0.2%(w/vol)、硫酸鉄7水和物0.08%(w/vol)および水を含む液体培地100mlを500mlバッフル付三角フラスコに張り込み、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。次いで、この培地に黄麹菌(Aspergillus oryzae RIB40)を1×106個/mlになるように植菌した。
培養条件は、対照区が30℃一定にて72時間、試験区1が37℃一定にて72時間、試験区2が培養開始から24時間目までは30℃、培養24時間目から72時間目までは37℃にて培養した。また、攪拌条件は全試験区とも100rpmの振盪培養とした。
培養温度を37℃一定とした試験区1では酵素生産性が若干下がる傾向が確認されたが、培養温度を30℃から37℃にシフトさせた試験区2では、グルコアミラーゼ(図5(a))とα−アミラーゼ(図5(b))の両酵素活性が増強された。
試験区2では、培養温度30℃のときに菌体増殖が行なわれ、培養温度37℃のときに酵素生産が行なわれていると推察され、このような黄麹菌の生育フェーズにあわせた培養温度制御が、酵素活性の強化に有効であることが示唆された。
また、試験区2の酵素活性はグルコアミラーゼ106.5U/ml、α−アミラーゼ563.5U/mlであり、米焼酎や清酒などの発酵飲食品を製造するに充分な酵素量であると考えられる。
(I)液体麹乾燥品の製造
実施例5記載の試験区2の方法にて製造した液体麹200mlを−30℃で2時間予備凍結後、25℃、真空度0.5Torrにて24時間乾燥することにより、液体麹乾燥品(液体麹真空凍結乾燥品)2.5gを得た。
実施例5記載の試験区2の方法にて製造した凍結乾燥処理を行わない液体麹と前記(I)で得られた液体麹乾燥品とについて、グルコアミラーゼ(GA)とα−アミラーゼ(AA)の活性を測定した。
なお、グルコアミラーゼ活性の測定は、糖化力分別定量キット(キッコーマン製)を用いて行ない、α−アミラーゼ活性はα−アミラーゼ測定キット(キッコーマン製)を用いて行なった。
また、液体麹乾燥品の酵素活性測定は、液体麹乾燥品250mgを10mM酢酸緩衝液(pH5)20mlに溶解したものを用いて測定した。
その結果、凍結乾燥しても酵素失活はほとんど起こらず、液体麹乾燥品が発酵飲食品の製造に十分使用可能なことが示された。
仕込み配合は表5に示した通りである。米は、90%精白米(茨城県産コシヒカリ)を洗米後、15分間浸漬、10分間水切り、30分間蒸煮したものを使用し、実施例5記載の試験区2の方法にて製造した液体麹、乳酸ならびに水を加えた。これにYPD培地で30℃、48時間静置培養した焼酎酵母(鹿児島酵母)50μlを植菌した。発酵条件は、25℃一定とし、18日間発酵を行なった。
この焼酎もろみを減圧蒸留法により蒸留して製造した焼酎原酒の官能評価を専門パネル6名により行なった結果、「すっきり・軽快」とのコメントがあり、すっきりした香味の米焼酎が得られることがわかった。
以上の結果より、液体麹を用いて焼酎の製造が可能であることが示された。
仕込み配合は以下の通りとした。すなわち、90%精白米(茨城県産コシヒカリ)580gを洗米後、15分間浸漬、10分間水切り、30分間蒸煮したものに、水1630ml、実施例5記載の試験区2の方法にて製造した液体麹500ml、90%乳酸1.6mlを混合した。これにYPD培地で30℃、24時間振盪培養した清酒酵母(協会7号)を100μl添加し、25℃で発酵を行なった。3日後に、もろみへ蒸煮した90%精白米(茨城県産コシヒカリ)750gを添加し、引き続き25℃で15日間発酵させ、最終もろみとした。
最終もろみの分析値は以下の表6のとおりである。
以上により、本発明の方法により、液体麹を用いて清酒を製造することが可能であることが明らかとなった。
仕込み; 仕込み配合は下記の表7の通りとした。丸大豆(キタムスメ)は洗浄後、水に一晩浸漬し、60分間水切りした後、4時間蒸煮したものを、フードプロセッサーにより破砕した。小麦(農林61号)は煎った後、挽割した。実施例5記載の試験区2の方法にて製造した液体麹に食塩を添加し、これにZygosaccharomyces rouxii(NBRC0510)の培養液10ml、並びに上記のごとく処理した丸大豆および小麦を添加した。なお、前記Z. rouxiiの培養液としては、YPD培地にて30℃、24時間振盪培養したものを用いた。
得られた最終もろみの分析値は以下の表8の通りである。
後処理;80℃で30分火入れし、おり引きして最終製品を得た。
上記のようにして得られたしょうゆの官能評価を酒類専門パネル6名で行なったところ、醤油として充分使用できる品質と判断された。
以上から、本発明の方法によれば、液体麹を用いてしょうゆを製造することが可能であることが分かった。
仕込み・熟成;
仕込み配合は表9の通りとした。丸大豆は、洗浄後、水に一晩浸漬し、60分間水切り後、4時間蒸煮し、フードプロセッサーにより破砕(つぶし)処理したものを使用した。酵母は、Zygosaccharomyces rouxii(NBRC0510)を10mlのYPD培地にて30℃、24時間振盪培養した後、遠心分離により集菌し、得られた菌体を滅菌水で2回洗浄した。
実施例5記載の試験区2の方法にて製造した液体麹に、食塩、上記酵母、ならびに上記のごとく処理した丸大豆を添加した。発酵条件は、25℃一定とし、6ヶ月間発酵・熟成を行い、味噌を得た。
以上から、本発明によれば、液体麹を用いて味噌を製造することが可能であることが明らかとなった。
仕込み; 仕込み配合は表11のとおりとした。もち米(ヒヨクモチ、90%精白)は洗浄後、水に60分間浸漬し、30分間水切り後、1時間蒸煮し、放冷したものを用いた。蒸もち米、45%原料アルコール、実施例5記載の試験区2の方法にて製造した液体麹を混合した。
ろ過; ナイロンのろ布で絞った。
後処理; おり引きし、最終製品とした。
熟成工程終了後のもろみの成分分析を行なった結果を表12に示す。
以上より、本発明の方法により、液体麹を用いたみりんを製造することが可能であることが明らかとなった。
(I)液体麹を用いたアルコール発酵
仕込み配合は表13の通りとした。丸麦(国産2条大麦、搗精歩合70%)は、洗麦後、60分間浸漬、30分間水切り、60分間蒸煮したものを使用した。酵母は、焼酎酵母(鹿児島酵母)を用い、YPD培地で30℃、48時間静置培養したものを50μl植菌した。
実施例5記載の試験区2の方法にて製造した液体麹に、上記酵母、並びに上記のごとく処理した丸麦、90%乳酸および水を添加した。発酵条件は、25℃一定とし、10日間アルコール発酵させ、液体麹アルコール発酵液を得た。
(1)使用酢酸菌; Acetobacter aceti subsp. aceti (NBRC3284)を用いた。酢酸菌は普通ブイヨン+1%グルコース培地で培養した。
(2)仕込み; 上記(I)で得られた液体麹発酵液を遠心分離し、上清に上記(1)で得られた酢酸菌培養液を1ml添加し、30℃で3ヶ月間培養した。
(3)おり下げ; 培養後、表面の菌膜を取り除き、遠心分離して、最終製品を得た。
上記のようにして得られた穀物酢の酸度は6.1%であり、pHは3.1であった。
この穀物酢の官能評価を専門パネル6名で行なったところ、穀物酢として十分使用できる品質と判断された。
実施例5記載の試験区2の方法にて製造した液体麹を用い、以下のようにして甘酒の製造を行なった。
仕込み配合表は表14の通りとした。米は90%精米(茨城県産コシヒカリ)を用い、洗浄後、水に60分間浸漬し、30分間水切りした後、1時間蒸煮し、放冷した。下記配合の仕込み原料を用い、糖化を55℃で16時間行い、甘酒を製造した。
また、得られた液体麹仕込みの甘酒の官能評価を酒類専門パネル6名で行なったところ、甘酒として十分使用できる品質と判断された。
仕込み配合は表15に示した通りである。米は、90%精白米(茨城県産コシヒカリ)を洗米後、水に15分間浸漬、10分間水切り、30分間蒸煮したものを使用し、実施例5記載の試験区2の方法にて製造した液体麹、乳酸ならびに水を加えた。これにYPD培地で30℃、48時間静置培養した焼酎酵母(鹿児島酵母)50μlを植菌した。発酵条件は、25℃一定とし、16日間発酵を行なった。
上記で得られた発酵終了後のもろみを、精密蒸留機(柴田科学株式会社製、HP−1000T特型)にて連続蒸留し、工業用エタノール(エタノール)を回収した。
得られた工業用アルコール(エタノール)のアルコール度数は95.5%であった。
以上から、本発明によれば、黄麹菌の液体麹を用いて工業用アルコール(エタノール)を製造することが可能であることが明らかとなった。
Claims (17)
- 液体麹の製造方法であって、表面の全部又は一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類;表面が外皮で覆われた豆類及び/又は芋類;細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌアから選ばれた少なくとも1種の培養原料、硝酸塩、リン酸塩、並びに、硫酸塩を含有する液体培地で黄麹菌を培養することを特徴とする液体麹の製造方法。
- 液体培地が、硝酸塩を0.1〜2.0%(w/v)の濃度で含有する請求項1に記載の液体麹の製造方法。
- 液体培地が、リン酸塩を0.05〜1.0%(w/v)の濃度で含有する請求項1に記載の液体麹の製造方法。
- 液体培地が、硫酸塩を0.01〜0.5%(w/v)の濃度で含有する請求項1に記載の液体麹の製造方法。
- 液体培地で黄麹菌を培養するときの培養温度が、培養開始から12〜36時間目までは25〜35℃、その後は35〜45℃であることを特徴とする請求項1に記載の液体麹の製造方法。
- 液体麹中に、少なくともグルコアミラーゼとα−アミラーゼとを同時に生成、蓄積させる請求項1に記載の液体麹の製造方法。
- 培養原料中のでん粉に由来する糖の培養系への放出速度を抑制することにより、液体麹の酵素活性を調整することを特徴とする請求項1に記載の液体麹の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で得られた液体麹を用いる発酵飲食品の製造方法。
- 発酵飲食品が清酒、焼酎、しょうゆ、味噌、みりん、醸造酢および甘酒から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の発酵飲食品の製造方法。
- すべての工程が液相で行なわれる請求項8又は9に記載の発酵飲食品の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で得られた液体麹。
- 請求項11に記載の液体麹を乾燥させてなる液体麹の乾燥品。
- 請求項11に記載の液体麹を濃縮させてなる液体麹の濃縮品。
- 請求項11に記載の液体麹を用いる酵素製剤の製造方法。
- 請求項12に記載の液体麹の乾燥品を用いる酵素製剤の製造方法。
- 請求項11に記載の液体麹を用いるエタノールの製造方法。
- 表面の全部又は一部が少なくとも穀皮で覆われた穀類;表面が外皮で覆われた豆類及び/又は芋類;細砕や粉砕などの前処理をしないアマランサス及び/又はキヌアから選ばれた少なくとも1種の培養原料、硝酸塩、リン酸塩、並びに、硫酸塩を含有する液体培地で黄麹菌を培養することを特徴とする酵素の生産方法。
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