JP4575634B2 - 光ファイバケーブル及びプラグ付き光ファイバケーブル - Google Patents

光ファイバケーブル及びプラグ付き光ファイバケーブル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光信号伝送の配線、高速光通信のためのコンピュータ接続配線、交換機回りの配線、工場自動機械制御の配線、自動車などの移動体用データ伝送用配線、光センサー用配線などに用いられる光ファイバケーブル及びプラグ付き光ファイバケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光ファイバ(以下単に「光ファイバ」という。)は近距離のデータ通信やセンサー用途ですでに実用化されている。その際、光ファイバのみで使用されることは少なく、その外周を被覆層で保護して光ファイバケーブルとして用いられることが多い。
このような光ファイバケーブルの耐熱性や化学薬品に対する耐久性を高めるため、被覆層としてポリアミド系重合体を使用する技術が、特開平10−319281号公報、特開平11−242142号公報、特開平10−332995号公報、特開平10−307218号公報などで提案されている。
【0003】
一方、自動車内、工場内などの屋内で使用する光ファイバケーブルについては、難燃性が要求される。そして、特に燃焼時に発生する有毒ガスを低減するため、ハロゲンを含まず、かつ、難燃性に優れた光ファイバケーブルが要求されている。そこで、ポリアミド系重合体を難燃化する技術として、ポリアミド樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社刊、福本修著)などにおいて、トリアジン系化合物、特にメラミン、メラミンシアヌレートをポリアミド系重合体に混合する技術が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリアミド系重合体を被覆層に用いた光ファイバケーブルは、曲げ弾性率が高く、ボビン等に巻き付けた状態で保存すると巻き癖が残り、ワイヤーハーネスなどの光ファイバケーブル複合材やプラグ付き光ファイバケーブルなどに加工する際の取扱性が悪いという欠点があった。さらに、難燃性を高めるためポリアミド系重合体中にトリアジン化合物を導入した場合には、曲げ弾性率がより高くなり、特に取扱性が悪かった。
【0005】
本発明の目的は、難燃性に優れ、かつ取扱性が良好な光ファイバケーブル及びこの光ファイバケーブルを用いたプラグ付き光ファイバケーブルを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明の光ファイバーケーブルは、光ファイバ外周に二層以上の被覆層を有し、該被覆層のうち少なくとも二層がポリアミド系重合体を含有する樹脂成分を含む材料からなり、これら少なくとも二層の被覆層のなかで、最も曲げ弾性率の高い被覆層と最も曲げ弾性率の低い被覆層の曲げ弾性率の差が500MPa以下であり、さらにこれら少なくとも二層の被覆層のうちの少なくとも一層を形成している材料には、難燃剤が含まれていることを特徴とする。
第2の発明の光ファイバケーブルは、光ファイバ外周に少なくとも一層の被覆層を有し、該被覆層のうち少なくとも一層がポリアミド系重合体を含有する樹脂成分を含む材料からなり、1mm変位時の曲げ弾性率Eが2〜15(N / mm)の範囲で、かつ、DIN72551−5に準拠する難燃性試験に合格することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の好適な実施形態例の光ファイバケーブルは、光ファイバ外周に少なくとも二層の被覆層を有し、この被覆層のうち少なくとも二層が、ポリアミド系重合体を有する樹脂成分を含む材料からなる。図1および図2は、それぞれ本発明の光ファイバケーブル10の一実施形態を示す断面図であって、図1は芯11A及び鞘11Bから構成される光ファイバ12の外周に一次被覆層13と二次被覆層14が順次形成されたもので、図2はさらに三次被覆層15が形成されたものである。
【0008】
ここで使用される光ファイバ12としては、公知の構造を有するものが使用され、例えば、図1のような芯鞘構造を有するSI型光ファイバ、中心から外周に向かってなだらかに芯の屈折率が低下するGI型光ファイバ、中心から外周に向かって芯11Aの屈折率が階段状に低下する多層光ファイバ、1本の光ファイバ12に複数の芯11Aを有するマルチコア光ファイバなどが挙げられる。光ファイバ12を広帯域化して高速の信号伝送を行うためには多層光ファイバを用いることが好ましい。なお、GI型光ファイバまたは多層光ファイバの外周にさらに鞘11Bを被覆したものを使用してもよい。
【0009】
芯材には、公知の光ファイバ12に使用される各種の透明性の高い重合体が使用され、好ましくはメチルメタクリレ−ト系の重合体が使用される。さらに好ましくは、メチルメタクリレ−ト単独重合体及びメチルメタクリレート単位を主成分とする共重合体、ベンジルメタクリレ−ト単位を主成分とする共重合体、またはフッ素化アルキルメタクリレ−ト系重合体であり、これらのなかではメチルメタクリレート単独重合体が特に好ましい。
【0010】
鞘材としては芯材よりも屈折率が低い公知の材料が使用され、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート単位とメチルメタクリレート単位との共重合体、α−フルオロアクリル酸エステルからなる重合体、フッ化ビニリデン単位を含む重合体、及び上記各種重合体からなるブレンド物等が好適である。フッ化ビニリデン単位を有する重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体やフッ化ビニリデン単位と、テトラフルオロエチレン、6−フッ化プロピレン、6フッ化アセトン、エチレン、もしくはプロピレンの各単量体単位とからなる共重合体が好ましく用いられる。さらに、これらの光ファイバ12の外周に保護層を有するものを使用すると、光ファイバ12に取り込める光を増やせるため好ましい。
【0011】
ここで保護層とは、光透過性の層であって、光ファイバ12が光を伝送する際に光の反射屈折に寄与することが可能な光ファイバ12の最外層に積層される層である。保護層は、その内層の芯11Aもしくは鞘11bと光ファイバ12の製造時に融着され、実質的に一体化されて、層間が均一に密着していることが好ましい。
保護層の材料としては、鞘材と同様に公知の材料が使用され、例えば、通常の高開口角を有する光ファイバ12で用いられている短鎖フッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリレートと長鎖フッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとメチルメタクリレートの各単量体単位かなる共重合体、フッ化ビニリデン系重合体等が挙げられる。これらのなかでは、柔軟性や耐溶剤性の観点からはフッ化ビニリデン系重合体を使用することが好ましい。
【0012】
フッ化ビニリデン系重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体やフッ化ビニリデン単位と、テトラフルオロエチレン、6−フッ化プロピレン、6フッ化アセトン、エチレン、もしくはプロピレンの各単量体単位とからなる共重合体が好ましく用いられる。フッ化ビニリデン単位とテトラフルオロエチレン単位とからなる共重合体を用いる場合、フッ化ビニリデン単位を70〜90モル%含むものが透明性が高いため好ましい。また、光ファイバ12曲げ損失を低減するためには、保護層の材料として鞘材を形成している材料よりも屈折率の小さい光透過性のものを使用することが好ましい。このような保護層を光ファイバ12の最外周に用いることにより、一次被覆層13と光ファイバ12の剥離強度を高めることができる。
【0013】
このような光ファイバ12は、溶融紡糸法などの公知の方法で製造できる。
また、本発明の光ファイバケーブル10を70〜80℃などの高温環境や温度差の激しい環境で用いる場合には、ピストニングを抑制するため、光ファイバ12として、熱収縮率が小さいものを使用することが好ましく、90℃乾熱下で50時間加熱した時の収縮率が0〜0.5%の光ファイバ12を使用することがさらに好ましい。このような熱収縮率が小さい光ファイバ12は、例えば光ファイバ12を熱処理することにより得ることができる。この熱処理は連続的に行うこともバッチ毎に行うこともできるが、光ファイバ12の芯材のJIS K 7121−1987に従って測定したガラス転移開始温度Tgと、熱処理温度Tが、 Tg−30≦T<Tg
を満たすような温度で、100時間以内、バッチ毎に熱処理することが好ましい。
【0014】
また、光ファイバ12の外径は、光ファイバ12を光源と結合する際の位置あわせを容易にするためには600μm以上であることが好ましく、900μm以上であることがより好ましい。また、柔軟性をさらに高め、取扱性をより向上させるためには1300μm以下であることが好ましい。
【0015】
この例の光ファイバケーブル10においては、光ファイバ12の外周に設けられた二層以上の被覆層のうちの少なくとも二層が、ポリアミド系重合体を有する樹脂成分を含む材料からなる。
ポリアミド系重合体としては、ポリアミドエラストマー、複数種類のポリアミド単位から構成されるポリアミド系共重合体や、これらの混合物が好ましく用いられる。
ポリアミドエラストマーとしては、ソフトセグメントとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、または脂肪族ポリエステルジオールなどを構成する単量体単位を用い、ハードセグメントとしてポリアミド12またはポリアミド6を構成する単量体単位を用いたものが挙げられる。これらのなかでは、汎用性が高く低コストなポリテトラメチレンエーテルグリコールとポリアミド12の単量体単位からなる共重合体が好ましく用いられる。
【0016】
複数種類のポリアミド単位から構成されるポリアミド系共重合体としては、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド66、の中から選択される単量体単位から構成される2元〜4元共重合体が用いられる。中でもポリアミド12とポリアミド6の単量体単位から構成される共重合体は、融点が例えば180℃以下と低いものが多いので、光ファイバ12に被覆層を設ける際に、光ファイバ12に熱損傷を与えにくく好ましい。
これらは混合して使用することもでき、例えば、ポリアミド11またはポリアミド12とポリアミドエラストマー、ポリアミド11またはポリアミド12とポリアミド系共重合体などの組み合わせが例示できる。
【0017】
ポリアミド系重合体を有する樹脂成分としては、ポリアミド系重合体とその他の樹脂の混合物も使用できる。このような混合物としては、ポリアミド11またはポリアミド12とポリオレフィンの混合物などが挙げられる。ここで使用されるポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンゴムなどが用いられる。ポリオレフィンとして、ポリオレフィンに有機酸または有機酸無水物がグラフト重合されたものを使用すると、ポリアミド系重合体とポリオレフィンとの混合分散性が向上し、耐衝撃性が優れるため好ましい。ポリアミド11またはポリアミド12とポリオレフィンとの混合物を使用する場合には、混合物中、ポリアミド11またはポリアミド12の重量割合が50〜95重量%で、ポリオレフィンの重量割合が5〜50重量%であると、ポリアミドの高い耐熱性を大きくそこなわずに耐衝撃性の向上が可能となるため好ましい。
【0018】
なお、特にポリアミド11は、被覆層に使用する材料として一般的であるポリアミド12に比べ、低温衝撃性、耐屈曲疲労性、引っ張り破断伸び、曲げ弾性が低い等の力学的特性、耐摩耗性、線膨張係数、ガス透過性が低いという優れた特徴を有する。そのため、ポリアミド系重合体としてポリアミド11を使用すると、ポリアミド12を使用した場合に比べ、より柔軟で耐疲労性に優れ、高温環境下でのピストンニング、伝送特性の劣化が少ない光ファイバケーブル10を得ることができる。また、ポリアミド12を含む樹脂成分を被覆層に使用する場合には、被覆層の形成後にポリアミドの結晶化が進行し、ケーブルが徐々に硬くなるおそれがあるが、ポリアミド12よりも融点が約10℃高いポリアミド11を使用する場合には、PMMAを芯材に使用した光ファイバ12の通常の使用上限である80℃程度の温度において、光ファイバケーブル10が全く硬化しないため好ましい。
【0019】
光ファイバケーブル10の曲げ弾性率を低くして、光ファイバケーブル10を巻き癖がつきにくいものとし、かつ、変形した際の回復力や形態安定性を光ファイバケーブル10に付与し、光ファイバケーブル10の取扱性を容易にするためには、被覆層の少なくとも一層に用いられる樹脂成分のASTM・D790により測定される曲げ弾性率が、40〜1200MPaであることが好ましく、より好ましくは、80〜1000MPaである。樹脂成分の曲げ弾性率が40MPa未満では、形態の安定性や、変形した場合の形態回復力が不十分となる場合があり、一方、1200MPaを超えると、柔軟性が低下し、取扱性が低下する場合がある。
【0020】
本実施形態例の光ファイバケーブル10においては、光ファイバケーブルの1mm変位時の曲げ弾性率Eが、2〜15N/mmの範囲で、かつ、DIN72251−5に準拠する難燃性試験に合格することが好ましい。曲げ弾性率Eは、5N/mm 以上であることが好ましく、また、13N/mm 以下であることが好ましい。
曲げ弾性率が2N/mm未満の光ファイバケーブル10は、変形した場合の回復力が遅く、形態安定性が悪いため取扱いにくく、15N/mmを超えた光ファイバケーブル10では、柔軟性が低下し、巻き癖などがつきやすくなり、取扱性が悪くなる。2〜15N/mmであると、変形した場合の回復力が適度に高く、適度に形態が安定していて、また、柔軟性に富み、巻き癖などがつきにくいため取扱性に優れる。
【0021】
また、本発明におけるDIN72551−5に準拠して測定される難燃性試験とは、電線用の難燃性測定法であるDIN72551−5を、光ファイバケーブルの難燃性を測定するために、次のように若干変更したものである。この測定法においては、燃焼時または燃焼後の電線を斜め45°に維持することが必要である。しかし、光ファイバケーブル10は電線とは異なり、光ファイバ12が燃焼した場合に光ファイバケーブル10をこのような斜め45°に維持することが困難である。よって、光ファイバケーブル10を燃焼時または燃焼後に斜め45°に維持するために、光ファイバケーブル10の周上に螺旋状に一対の銅線を、互いが交差するように巻き付けた状態で難燃性を測定する。銅線としては直径0.7mmφのものを用い、螺旋周期は光ファイバケーブル10の長手方向に20mm周期とする。また、難燃性試験の合否の判定基準は、光ファイバ12に着火した後、炎を試料から遠ざけ、30秒以内に炎が消えたものを合格とし、消えなかったものを不合格とする。
【0022】
光ファイバケーブル10にこのような難燃性を付与するためには、被覆層を形成する材料に、ポリアミド系重合体を有する樹脂成分だけでなく、さらに難燃剤を含有させることが好ましい。
難燃剤としては、各種金属水酸化物、燐化合物、トリアジン系化合物などが挙げられるが、ポリアミド系重合体の難燃性の向上効果が大きいためトリアジン系化合物を用いることが好ましく、このなかではシアヌル酸メラミンがより好ましい。また、樹脂成分100重量部に対してトリアジン系化合物を8〜60重量部含有させることが好ましく、10〜60重量部含有させることがより好ましく、さらには11〜25重量部含有させることが好ましい。トリアジン系化合物の含有量が8重量部未満であると、難燃性の向上効果が不十分となるおそれがあり、60重量部を超えると被覆層を構成する材料の曲げ弾性率が上がりすぎ、光ファイバケーブル10の取り扱いが困難となるおそれがある。
【0023】
この例の光ファイバケーブル10においては、光ファイバ12の外周に被覆される被覆層は2層以上であり、各被覆層に異なる機能を付与することで、一層の被覆層では達成できない複数の機能を容易に付与でき、例えば難燃性と柔軟性を兼ね備えた光ファイバケーブル10を容易に得ることができる。
難燃性を光ファイバケーブル10に付与する場合には、上述のように、被覆層を形成する材料に難燃剤を含有させることが有効であるが、一般に、樹脂成分に難燃剤が混合されものでは、難燃剤が混合されていない樹脂成分にくらべて硬く、曲げ弾性率が大きくなる。よって、光ファイバ12に複数の被覆層を設ける場合、使用する樹脂成分の曲げ弾性率を考慮して難燃剤を配合することが必要となる。
【0024】
例えば、難燃剤を含む被覆層と難燃剤を含まない被覆層を有する光ファイバケーブル10において、難燃剤を含む被覆層と難燃剤を含まない被覆層との曲げ弾性率との差が大きすぎると、各被覆層の力学挙動が異なり、この光ファイバケーブル10に高い張力がかかったり、力学的疲労試験を施した場合に、各被覆層間での密着性が低下したり、光ファイバケーブル10の癖づきが大きくなる恐れがある。したがって、各被覆層の弾性率はあまり大きく隔たらないようにすることが好ましく、最も曲げ弾性率の高い被覆層と最も曲げ弾性率の低い被覆層の差は好ましくは500MPa以下であり、さらには350MPa以下とすることがより好ましい。
【0025】
また、さらに、曲げ弾性率の低い樹脂成分を使用した被覆層には難燃剤を多く、曲げ弾性率の高い樹脂成分を使用した被覆層には難燃剤を少なくなるように難燃剤を傾斜配合して、各被覆層間の曲げ弾性率の差を少なくするとともに光ファイバケーブル10全体の曲げ弾性率をも小さくし、取扱性を向上させることが好ましい。
そのため、ポリアミド系重合体を有する樹脂成分を含む材料からなる被覆層を複数有する光ファイバーケーブル10において、これらの材料に難燃剤を混合する場合、最も曲げ弾性率が高い樹脂成分を含有する材料における難燃剤の含有率が、その他の樹脂成分を含有する材料における難燃剤の含有率と比較して最も低く、かつ、最も曲げ弾性率が低い樹脂成分を含有する材料における難燃剤の含有率が、その他の樹脂成分を含有する材料における難燃剤の含有率と比較して最も高いことが好ましい。このようにすると、各被覆層間の曲げ弾性率の差を少なくでき、また、光ファイバケーブル10全体の曲げ弾性率をも小さくできる。
さらに、光ファイバケーブル10の難燃性の向上効果をより大きくするためには、光ファイバケーブル10の最外層に設けられる被覆層には難燃剤を混合することが好ましく、さらに好ましくは、難燃剤の含有率の最も高い被覆層が最外層に設けられていることが好ましい。
【0026】
また、適度な剛性と柔軟性を有し、組み込み作業時などの取扱性をさらに向上させる為には、被覆層の曲げ弾性率だけでなく、被覆層の厚みも考慮することが好ましい。
すなわち、ポリアミド系重合体を有する樹脂成分を含む材料からなる被覆層をn層(n≧2)有し、これらの被覆層のうち内側からk層目に最も曲げ弾性率の高い被覆層が設けられ、この被覆層の曲げ弾性率をE(MPa)、厚さをd(μm)とし、これらの被覆層のうち内側からm層目(k<m≦n)に設けられた任意の被覆層の曲げ弾性率をE(MPa)、厚さをd(μm)としたとき、下記式(1)に示されるように、最も曲げ弾性率が高い被覆層(k層目の層)よりも外側に、最も曲げ弾性率が高い被覆層よりも曲げ弾性率の小さな被覆層(m層目の層)を設け、かつ最も曲げ弾性率の高い被覆層の曲げ弾性率と被覆層の厚みの積が、より外側に設けられた被覆層における曲げ弾性率と被覆層の厚みの積より小さいことがより好ましい。
×E≦d×E…(1)
(ただし、E≦E
【0027】
さらに、最も曲げ弾性率の高い被覆層よりも外側に配置された被覆層(m層目の層)を、最も曲げ弾性率の高い被覆層(k層目の層)よりも厚くする(d≦d)とともに、下記式(2)に示されるように、曲げ弾性率を1200MPa以下とすることがさらに好ましい。
≦ 1200…(2)
【0028】
また、各被覆層間での密着性を向上させ、光ファイバケーブル10の癖づきを防止するためには、前記樹脂成分、すなわちポリアミド系重合体を有する樹脂成分を含む材料からなるn層(n≧2)の被覆層の曲げ弾性率を内側から順にそれぞれE,…,Eとし、厚さを内側から順にそれぞれd,…,dとしたとき、最も曲げ弾性率の高い被覆層とそれよりも外側に配置された、内側からx層目(k<x≦n)に設けられた任意の被覆層の曲げ弾性率Eおよび厚さdが、下記式(3)および(4)を満たすこと、すなわち、外側へ向って徐々に被覆層の弾性率が小さくなるとともに、各被覆層の曲げ弾性率と被覆層の厚みとの積が内側に向かって徐々に小さくなるように設計することが好ましい。
≦Ex−1…(3)
x−1×Ex−1≦d×E…(4)
また、隣り合う被覆層間の曲げ弾性率の差は、下記式(5)に示すように350MPa以下であることがさらに好ましい。
x−1≦E+350…(5)
【0029】
また、光ファイバケーブル10に柔軟性と、適度な形態安定性をともに付与するためには、被覆層を3層以上設けて、最外被覆層と最内被覆層の間に最も曲げ弾性率が高い被覆層を配置することが好ましい。そして、この場合、各被覆層どうしの密着性や、最も内側の被覆層と光ファイバ12との密着性を向上させ、光ファイバケーブル10の癖づきを防止するためには、最も曲げ弾性率の高い被覆層からその内側の被覆層に向かって、下記式(6)のように、徐々に曲げ弾性率が小さくなるように配置されることが好ましい。
- ≦E…(6)
(ただし、1≦y≦k)
また、隣り合う被覆層間の曲げ弾性率の差は350MPa以下、すなわち、式(7)とすることがより好ましい。。
≦E - +350…(7)
【0030】
さらに、本発明の光ファイバケーブル10の好ましい形態としては、図2に示したように、光ファイバ12の外周に一次被覆層13、二次被覆層14、三次被覆層15の3層の被覆層を有し、これら3層の被覆層がいずれもポリアミド系重合体を有する樹脂成分を含む材料からなるものである。そして、さらにこれら被覆層の曲げ弾性率を内側から順にそれぞれE,E,Eとし、厚さを内側から順にそれぞれd,d,dとしたとき、これらが下記式(8)および(9)を満たす光ファイバケーブルが最も好ましい。
×E+d×E≦d×E…(8)
+d≦d…(9)
すなわち、三次被覆層15の厚みは、一次被覆層13と二次被覆層14の合計の厚みより厚いことが好ましい。三次被覆層15の厚みが、一次被覆層13と二次被覆層14の合計の厚み未満では、光ファイバケーブル10全体の曲げ弾性率が高くなり、柔軟性が損なわれる恐れがあるし、識別のために三次被覆層15を形成する材料に着色剤を配合する場合、その発色が低下する場合がある。
【0031】
また、一次被覆層13の曲げ弾性率と被覆層の厚みの積と、二次被覆層14の曲げ弾性率と被覆層の厚みの積との合計が、三次被覆層15の曲げ弾性率と被覆層の厚みの積の積よりも小さいことがより好ましい。このようにすると、従来の多層ポリアミド被覆ケーブルに比較し、曲げ癖がつきにくく、かつ適度な剛性と柔軟性を併せ持ち、取扱性に極めて優れる光ファイバケーブル10を得ることができる。
【0032】
さらに、特に一次被覆層13は200μm以下とすることが好ましい。一次被覆層13の厚さが200μmを超えると、光ファイバ12よりも剛性の高い被覆層が、光ファイバ12の変形に追従できなくなり、屈曲疲労により光ファイバ12の損傷が大きくなったり、光学特定が低下する恐れが生じる。
また、この場合、最も内側の一次被覆層13は、外力の影響から光ファイバ12を物理的に保護すると同時に、材料として耐環境性に優れたポリアミド系重合体を使用することにより、光ファイバ12への有害物質の移行を抑制するものであることが好ましい。その為、通常、光ファイバケーブル10を識別するための染料、顔料、難燃剤などは極力配合せず、光ファイバ12への外光防止用助材を含有させるにとどめることがより好ましい。また、一次被覆層13に使用するポリアミド系重合体としては、光ファイバ12との密着性に優れると同時に、光ファイバ12の変形に追従可能であり、耐疲労性に優れた比較的柔軟な、ポリアミド11などのポリアミド系重合体が好ましい。
【0033】
二次被覆層14は、光ファイバケーブル10全体に適度な形態安定性をもたせ、光ファイバケーブル10の引き回し性を向上させる機能を有するので、比較的曲げ弾性率の大きなポリアミド系重合体を使用して、一次被覆層13や最外層である三次被覆層15よりも、曲げ弾性率を大きくすることが好ましい。また、必要に応じて難燃剤を混合して難燃性を強化してもよい。
三次被覆層15は、本発明の意図する難燃効果と光ファイバケーブル10の柔軟性とを両立させる上で、非常に重要な被覆層である。上述したように、光ファイバケーブル10に識別性を付与したり、難燃性を付与する為には、付与効果が最も高い最外層に、染料、顔料などの着色剤、難燃剤を配することが一般に多い。しかしながら、これらの添加剤を添加した樹脂成分では、これらを含まない単独のポリアミド系重合体よりも剛性が高くなり、その結果、光ファイバケーブル10自体の柔軟性が損なわれてしまう。そのため、主成分には柔軟なポリアミド系重合体を選択し、着色剤、難燃剤を配合した後の最終的な被覆層の曲げ弾性率を1200MPa以下とすることが好ましく、さらに好ましくは1000MPa以下、最も好ましくは800MPa以下とする。
【0034】
このような、3層の被覆層に適用する好ましいポリアミド系重合体の具体例としては、一次被覆層13にはポリアミド11を使用し、二次被覆層14にはポリアミド12を使用する。そして、三次被覆層15または最外層にはポリアミドエラストマーまたはポリアミド612などのポリアミド共重合体を使用するとともに難燃剤を使用する形態である。
【0035】
このような光ファイバケーブル10においては、すべての被覆層中に占める難燃剤の合計重量割合が5〜80重量%であることが好ましい。全被覆層重量に対して5重量%未満では、十分な難燃性が発現しない場合があり、80重量%を超えても、配合量増加に対する難燃効果の増加が少なくなってきたり、光ファイバケーブル10の重量が増加し、取扱性が低下するおそれがある。また、このような難燃剤の配合範囲であれば、最外層を構成している材料のみに難燃剤を配合し、ポリアミド系重合体としては曲げ弾性率の低いものを使用することで、少ない難燃剤の配合量で効果的に難燃性を付与し、光ファイバケーブル10全体の曲げ弾性率を低く維持することができる。例えば、各被覆層に使用するポリアミド系重合体としてポリアミド11、ポリアミド12を主成分とするものを使用し、最外層にのみ難燃剤を添加し、光ファイバケーブルにDIN72551-5に合格する難燃性を付与することもできる。
【0036】
以上説明した本実施形態例によれば、1mm変位時の曲げ弾性率Eが、2〜15N/mmの範囲で取扱性に優れ、かつ、DIN72251−5に準拠する難燃性試験に合格する難燃性を備えた光ファイバケーブルを提供可能であるが、本発明の光ファイバケーブルにおいては、上述しような形態に限定されず、光ファイバ外周に少なくとも一層の被覆層を有し、該被覆層のうち少なくとも一層がポリアミド系重合体を含有する樹脂成分を含む材料からなる光ファイバケーブルであって、1mm変位時の曲げ弾性率Eが2〜15(N / mm)の範囲で、かつ、DIN72551−5に準拠する難燃性試験に合格するものであればよい。
【0037】
本発明の光ファイバケーブル10は、公知の方法で製造でき、例えばクロスヘッド型被覆装置を用いて、樹脂成分を含む材料を光ファイバ12に被覆することにより製造できる。被覆層を複数形成する場合は、一層ずつ順に被覆層を形成してもよいし、同時に複数の被覆層を形成してもよい。なお、被覆層の層数が多すぎると、製造が困難となる傾向があるので、被覆層の層数は、3層以下とすることが好ましい。
また、外観から光ファイバケーブル10を識別するため、最外層に着色樹脂を使用する場合は、その内側に黒色樹脂を用いた被覆層を設けることにより、光ファイバ12への外光の入射を防止することができる。着色剤としては公知のものが用いられるが、染料系の着色剤は高温下などで光ファイバ12に移行し伝送損失を増加させるおそれがあるため、無機顔料を用いることが好ましい。
【0038】
本発明のプラグ付き光ファイバケーブルは、上記の光ファイバケーブル10の少なくとも一端にプラグが接続されたものである。プラグは、用途に応じて公知のものから選択して使用できる。プラグを光ファイバケーブル10に固定するための機構としては、例えば、かしめ機構などが挙げられる。プラグ部としては機械的強度が強いものを用いることが好ましい。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例における各種測定の方法を説明する。
また、本実施例で使用したポリアミド系重合体を有する樹脂成分の曲げ弾性率を表1に示す。
(難燃性)
DIN72551−5に準拠する前述した測定法に基づいて行った。
(光ファイバケーブルの曲げ弾性率)
光ファイバケーブル10を2つの固定点で固定し、ケーブル曲げ具を用いて光ファイバ12を中心軸に対して垂直に押圧した。固定点の間隔は15mmとした。押圧時、光ファイバケーブル10は、曲率半径5mmの円弧形状となった。ケーブル曲げ具が押圧開始から1mm変位したときのケーブル曲げ具にかかる応力(N)を測定し、曲げ弾性率(N/mm)とした。
(被覆層及び樹脂成分の曲げ弾性率)
ASTM・D790に従って測定した。
【0040】
(実施例1)
光ファイバ12の芯材として屈折率1.490のメチルメタクリレート単独重合体、鞘材として屈折率1.417の2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート単位45重量%,1,1,2,2−テトラハイドロパーフルオロデシルメタクリレート単位35重量%,メチルメタクリレート単位19重量%,メタクリル酸単位1重量%からなる共重合体、保護層の材料として屈折率1.402のフッ化ビニリデン単位80mol%とテトラフルオロエチレン単位20mol%との共重合体を用い、芯11Aの直径が980μm、鞘11Bの厚みが10μm、保護層の厚みが10μmである光ファイバ12を製造した。
2台のスクリュー式押出機と2層複合型のクロスヘッドダイと口金を用いて、この光ファイバ12の外周に一次被覆層13及び二次被覆層14を一括に被覆して外径2.3mmの光ファイバケーブル10を得た。なお、使用した被覆装置の要部は、図3のように、ダイス21とニップル22を組み込んだものであり、ダイス21の先端面とニップル22の先端は同一平面上に位置している。符号23はニップル22の中心を通過する光ファイバ12の軸線である。また、被覆温度は200℃とした。
この光ファイバケーブル10の一次被覆層13の厚みは255μm、二次被覆層14の厚みは395μmであった。一次被覆層13としては、カーボンブラックを0.5重量%、無水マレイン酸を1.0重量%含有したポリアミド12(ダイセルヒュルス社製、ダイアミド−L1640、以下これを単に「PA12」という)を用い、二次被覆層14としては、ASTM・D790で測定された曲げ弾性率が340MPaのポリアミド12単位とポリエーテル単位からなるポリアミドエラストマー(ダイセルヒュルス社製、ダイアミドPAE−E62)100重量部に対してシアヌル酸メラミンを15重量部混合したものを用いた。
ASTM・D790で測定された曲げ弾性率は、一次被覆層13が1300MPa、二次被覆層14が620MPaであった。得られた光ファイバケーブル10の曲げ弾性率及び難燃性を測定した。
光ファイバケーブル10における各層の曲げ弾性率、厚み、これらの積と、曲げ弾性率及び難燃試験の結果を表2〜表3に示す。
【0041】
実施例2〜10、比較例1)
一次被覆層13、二次被覆層14を表2のように変更し、一次被覆層13にカーボンブラックを0.5重量%添加し、無水マレイン酸を添加しなかった以外は比較例1と同様にして光ファイバケーブル10を得た。これらの光ファイバケーブル10における各層の曲げ弾性率、厚み、これらの積と、曲げ弾性率及び難燃試験の結果を表2〜表3に示す。
【0042】
実施例11
実施例1と同様にして得られた光ファイバ12を被覆前に熱風乾燥機に入れ、90℃で65時間バッチ熱処理を行った。光ファイバ12の90℃乾熱下50時間での熱収縮率は、0.1%であった。この光ファイバ12に、一次被覆層13、二次被覆層14、及び三次被覆層15として、それぞれカーボンブラックを0.5重%を混合したポリアミド12、カーボンブラックを0.5重量%を混合したポリアミド11、実施例2の二次被覆層14に用いた材料を用い、スクリュー式押出機と単層型のクロスヘッドダイと口金を用いて各被覆層を順次被覆した点を除いて比較例1と同様に光ファイバケーブル10を得た。一次被覆層13の厚さは100μmであった。
そして、得られた光ファイバケーブル10について光ファイバ12と一次被覆層13の間の剥離強度を測定した。
なお、剥離強度は、図4のようにして測定した。まず、一方の端部側の一次被覆層13、二次被覆層14、三次被覆層15が剥離され、他方側が剥離されていない、被覆部分の長さLが30mmである光ファイバケーブル10を用意した。
光ファイバケーブル10の被覆部分を固定治具24で固定し、被覆層の剥離部分、すなわち光ファイバ12が露出している部分を、図示略の応力測定可能な機構を有する引き抜き装置に固定して、光ファイバ12をその中心軸に沿う方向(図中矢印方向)に向かって一定速度100mm/minで引き抜いた。この際の引き抜き応力と光ファイバ12の引き抜き方向の被覆層のずれ量とをプロットした曲線から、引き抜く際の応力のピーク値を読みとり、これを測定値とした。なお、光ファイバ12と一次被覆層13の剥離強度は、光ファイバケーブル10の二次被覆層14と三次被覆層15を剥がしたものを用いて測定した。
また、得られた光ファイバケーブル10の両端面を剃刀にて切断し、−40℃で30分保持し、続いて10分間で85℃に昇温した後その温度で30分保持し、続いて10分間で20℃に降温した後その温度で30分保持し、続いて10分間で−40℃に降温した後その温度で30分保持するというサイクルを10回繰り返し、切断端面における光ファイバ12の形状を観察した。しかし、形状には全く変化がなかった。
表4〜表6に、光ファイバケーブル10の構成、各種測定結果などをまとめる。
【0043】
実施例12〜14
被覆材料を表4に示すように変更した以外は実施例11と同様に光ファイバケーブル10を作成した。なお、一次被覆層13及び二次被覆層14には実施例10と同様にカーボンブラック0.5重量%が含有されている。その他、光ファイバケーブル10の構成、各種測定結果などを表4〜表6に示す。
また、これらのケーブルについても実施例11と同様に、温度サイクル後の光ファイバ12の端面形状を観察したが、実施例11と同様に全く変化は見られなかった。
【0044】
実施例15
実施例11で得られた光ファイバケーブル10について、下記に示す評価を実施し、光学特性及び、耐環境特性を評価した。光ファイバケーブル10の構成と評価結果を表7に示す。
その結果、いずれの特性も良好であり、この光ファイバケーブル10は、高温、高湿度環境下においても信頼性に優れたものであることが明らかとなった。
また、この光ファイバケーブル10は適度な弾性と柔軟性を併せ持ち、曲げ癖もつきにくく、ハーネスへの組む込みに際して非常に取扱性に優れたものであった。さらに最外層に黄色、オレンジ、緑、青等の着色を施したところ、発色もよく、識別性に優れていた。
【0045】
(伝送損失)
25m-5mのカットバック法により、測定波長650nm、励振NA=0.1での伝送損失(dB/km)を測定した。
(ケーブル収縮率評価)
両端面の被覆層と光ファイバをそろえて研磨処理した試長50cmのケーブルを、90℃の乾燥機内にて24時間加熱処理した、加熱処理後の光ファイバケーブル10の長さL(cm)を測定し、以下の式に基づいてケーブル収縮率(%)を算出した。
ケーブル収縮率(%)=(50−L)÷50x100
(湿熱評価)
85℃、95%の湿熱環境で1000時間処理した前後の伝送損失の差(dB/km)を測定した。
(繰り返し屈曲回数)
図5に示すように、一方の端部にLED(発光波長660nm)31が接続され、他方の端部に光パワーメ−ター32が接続された4mの長さの光ファイバケーブル10のパワーメーター32側の端部に500gの錘33を接続して荷重をかけ、光ファイバケーブル10の中央を直径15mmの2本の円柱状支持棒34にて挟持した。ついで、光ファイバケーブル10のLED側を、図中矢印で示すように180°繰り返し移動させた。この際、各指示棒に光ファイバケーブル10が接触角90°で接触するようにした。
このようにして光ファイバケーブル10を繰り返し屈曲させた際における、光パワーメータで測定された光ファイバケーブル10からの出射光量が試験開始前と比較し1dB減少した時の屈曲回数を測定した。
【0046】
実施例16〜18
光ファイバの鞘材、保護材、被覆材料を表7のように変更した以外は、実施例11と同様にして光ファイバケーブル10を作成した。表7には、ケーブル特性試験結果も併せて示す。いずれの光ファイバケーブル10も良好な耐環境性を示し、取扱性も高かった。特に、被覆層の曲げ弾性率の差が小さい実施例16の光ファイバケーブルでは、屈曲特性もさらに向上し、屈曲試験後の光ファイバケーブル10の二次被覆層14と、三次被覆層15との間の隙間もまったく見られず、良好な形態を保持していた。
【0047】
以下に表中等で使用する略号について示す。
PA11:ポリアミド11(アトフィナジャパン社製、リルサンBMN O) PA12:ポリアミド12(ダイセルヒュルス社製、ダイアミド−L1640)
PAE▲1▼:ポリアミドエラストマー(ダイセルヒュルス社製、ダイアミドPAE−E62)
PAE▲2▼:ポリアミドエラストマー(ダイセルヒュルス社製、ダイアミドPAE−E47)
PA612:ポリアミド612(ダイセルヒュルス社製、ダイアミドN−1901)
PA66612:ポリアミド66612(ダイセルヒュルス社製、ベスタメルト171)
MEPR:メラミン酸グラフトエチレンプロピレンゴム
VdF:フッ化ビニリデン
TFE:テトラフルオロエチレン
HFP:ヘキサフルオロプロピレン
【0048】
【表1】
Figure 0004575634
【0049】
なお、以下の表中、難燃剤はいずれもシアヌル酸メラミンであり、数値は、樹脂成分100重量部に対する配合重量部数である。
【表2】
Figure 0004575634
【0050】
【表3】
Figure 0004575634
【0051】
【表4】
Figure 0004575634
【0052】
【表5】
Figure 0004575634
【0053】
【表6】
Figure 0004575634
【0054】
【表7】
Figure 0004575634
(A):αフルオロアクリル酸メチル/αフルオロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル共重合体(10/90(mol%))
(B):VdF/TFE/HFP共重合体(70/20/10(mol%))
(C):VdF/TFE共重合体(80/20(mol%))
【0055】
このように、本実施例の光ファイバケーブルによれば、難燃性が高く、そのうえ取扱性にも優れていた。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光ファイバケーブルは、難燃性に優れるとともに、取扱性が良好である。よって、光信号伝送の配線、高速光通信のためのコンピュータ接続配線、交換機回りの配線、工場自動機械制御の配線、自動車などの移動体用データ伝送用配線、光センサー用配線などに好適に用いられる。
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】 本発明の光ファイバケーブルの他の一例を示す断面図である。
【図3】 実施例で使用した被覆装置の要部の縦断面図である。
【図4】 実施例における剥離強度の測定方法を示す側面図である。
【図5】 実施例における屈曲試験の試験方法を示す側面図である。

Claims (3)

  1. 光ファイバ外周に二層以上の被覆層を有し、該被覆層のうち少なくとも二層がポリアミド系重合体を含有する樹脂成分を含む材料からなり、これら少なくとも二層の被覆層のなかで、最も曲げ弾性率の高い被覆層と最も曲げ弾性率の低い被覆層の曲げ弾性率の差が500MPa以下であり、
    さらにこれら少なくとも二層の被覆層のうちの少なくとも一層を形成している材料には、トリアジン系化合物を含有する難燃剤が含まれ、前記トリアジン系化合物の含有量が、前記樹脂成分100重量部に対して8〜60重量部であることを特徴とする光ファイバケーブル。
  2. 前記少なくとも二層の被覆層のうち、難燃剤の含有率が最も高い材料からなる被覆層が、最外層に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
  3. 請求項1または2に記載の光ファイバケーブルの少なくとも一端にプラグが接続されていることを特徴とするプラグ付き光ファイバケーブル。
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