JP2005099447A - プラスチック光ファイバケーブルの製造方法 - Google Patents

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好宏 塚本
Shu Aoyanagi
周 青柳
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Abstract

【課題】100℃程度の高温環境下においても、光伝送特性並びに寸法安定性に優れ、特に車載用として好適なPOFケーブルの製造方法を提供する。
【解決手段】鞘部の最外層を形成する樹脂が、示差走査熱量測定における結晶融解熱が40mJ/mg以下であり、かつテトラフルオロエチレン単位を含む含フッ素オレフィン系樹脂からなる芯鞘構造のプラスチック光ファイバ素線に、最内層がポリアミド系樹脂からなる被覆層を被覆したのちに、90℃以上の温水に浸漬させて加温処理を行うことを特徴としたプラスチック光ファイバケーブルの製造方法。

Description

本発明は自動車等の移動体内の通信用配線に好適な、耐熱特性、機械特性に優れた耐熱プラスチック光ファイバケーブルに関する。
プラスチック光ファイバ(以下、POFという。)は、石英系光ファイバと比較して伝送距離は短いものの、安価、軽量、柔軟、大口径等の特徴を有しており、照明用途、FA、OA、LAN等の短距離通信用途等の種々の分野で使用されている。
また、近年では、カーナビゲーションシステムや、ITS、ETCシステムが普及し、通信情報量の増加への対応、ハーネスケーブルの軽量化、安価な通信システムの構築等の観点から、POFの自動車用途への展開も行われつつある。しかし、現在実用化されているPOFの使用可能な上限温度は80度程度であり、それ以上の温度環境下では、伝送損失、並びにケーブルの寸法安定性が著しく低下するため、自動車内部の高温で環境的に厳しい個所では使用することが出来ず、その使用が比較的低い温度下にある個所に限定されていた。従って、更なる使用範囲の拡大にあたってはPOFの耐熱上限温度の向上が課題となっていた。
こうした事情を鑑み、伝送損失の優れたPMMAを芯材として用い、鞘材および被覆材料の選択、改善、更にはアニール処理方法の改良等を行うことによりPOFケーブルの耐熱上限温度の向上を図る提案は数多くなされている。
たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4には、鞘材の選択により耐熱性を向上する技術として、耐熱性の高いα−フルオロアクリル酸エステルからなる共重合体を鞘材として用いたPOFが提案されている。
このようなα−フルオロアクリル酸エステルからなる共重合体を鞘材として用いたPOFでは、鞘材自体が非結晶性で高いガラス転移点を有するため、POF素線として105℃程度の高温下でも安定した伝送特性を示すが、初期の伝送損失自体が波長650nm、入射NA0.1で0.21dB/mと若干高く、また鞘材が非常に高価格でありPOF素線のコストが高くなる。また、該POF素線の外側にポリアミド系樹脂からなる被覆層を設けても、被覆層によりPOF素線の収縮を十分に抑えることができず、耐熱環境下での寸法安定性が不十分なものであった。
また、自動車内で使用されるPOFケーブルの被覆層に関しては、特にエンジン等の高温体に近い環境で使用される場合、耐熱性、耐熱寸法安定性が要求され、更にはオイル、電解液、ガソリン等の引火性の材料が存在する環境下であることから耐薬品性、難燃性も合わせて要求されており、これらの条件を満たす被覆層として、特許文献5、特許文献6、特許文献7には、ナイロンをはじめとするポリアミド系樹脂を用いること、その中でも特にナイロン11、ナイロン12、ナイロン612等のポリアミド系重合体を用いることが提案されている。
しかし、単にPOF素線に上記ポリアミド樹脂を被覆したPOFケーブルでは、105℃程度の高温環境下で長期使用した場合に、POFケーブル自体が熱収縮をおこしたり、被覆層に対してPOF素線の引き込みが生じてしまう、いわゆるピストニングが発生したり、鞘材の結晶化などが原因となって伝送損失が大きくなる問題点を有していた。
一方、POFの寸法安定性を向上させるためには、通常POF素線またはPOFケーブルに対してアニール処理を施す手段がとられ、例えば特許文献8には、上記ポリアミド系樹脂を被覆材に用いたPOFケーブルのアニール処理方法に関する技術として、ナイロン12を被覆したPOFケーブルを、110〜120℃の気相中で1時間以上、ケーブルアニール処理することにより、ピストニングを抑制する技術が提案されている。
特開昭61−103107号公報 特開昭61−240205号公報 特開平02−50442号公報 特開2002−55243号公報 特開平7−77642号公報 特開平10−319281号公報 特開平11−242142号公報 特開2001−324626号公報
特許文献8では、POFケーブルに対して、気相中でケーブルアニール処理を行っているが、寸法安定性を満足するための熱収縮特性を得るには非常に長時間を必要とし、さらにそのためにPOFケーブルを構成する材料が熱劣化し、POF素線の初期及び長期耐熱試験後の伝送損失が悪化するという問題を有していた。
そこで、本発明の目的は、100℃程度の高温環境下においても、光伝送特性並びに寸法安定性に優れ、特に車載用として好適なPOFケーブルの製造方法を提供することにある。
すなわち本発明は、鞘部の最外層を形成する樹脂が、示差走査熱量測定における結晶融解熱が40mJ/mg以下であり、かつテトラフルオロエチレン単位を含む含フッ素オレフィン系樹脂からなる芯鞘構造のプラスチック光ファイバ素線に、最内層がポリアミド系樹脂からなる被覆層を被覆したのちに、90℃以上の温水に浸漬させて加温処理を行うことを特徴としたプラスチック光ファイバケーブルの製造方法に関する。
本発明によれば、100℃程度の高温条件下における光伝送特性および寸法安定性に優れ、特に自動車等の車載用途での使用に好適なPOFケーブル及びPOFケーブルの製造方法を提供することができる。
以下に、本発明における実施の最良の形態について説明する。
本発明に用いられるPOF素線は、芯と、その外側に形成された少なくとも1層以上の鞘層を有しており、さらに前記POF素線の外側に少なくとも1層の被覆層を設けることによりPOFケーブルが形成される。
POF素線の芯材としては、公知の透明性樹脂材料が使用可能であるが、優れた透光性を有することからポリメタクリル酸メチルを主成分とする樹脂が好ましい。また、メタクリル酸メチル以外の成分を共重合成分としてポリメタクリル酸メチル中に導入したものや、ポリメチルメタクリル酸メチルと他の重合体との混合物を使用することもできる。共重合成分としては、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル等の材料を適宜選択することができる。本発明においては、特に光伝送特性に優れたPOFケーブルを得るため、メタクリル酸メチルからなる構造単位を90モル%以上含有する(共)重合体を芯材として使用することが好ましく、中でも、メタクリル酸メチルの単独重合体が特に好ましい。
また、本発明に用いられるPOF素線は、芯の外周に少なくとも1層以上の鞘層を有するが、鞘層が複数層から形成される場合、製造コストを低減する観点から、第1鞘層の外周に、第2鞘層を同心円状に設けた2層構造であることが好ましい。
鞘層がこのような2層構造である場合、芯の屈折率n1、第1鞘層の屈折率n2、第2鞘層の屈折率n3が、下記の関係式(1)
1>n2>n3 (1)
を満たすことが好ましい。なお、本発明における屈折率は、ナトリウムD線による25℃における屈折率をいう。
第1鞘層を形成する樹脂としては、フッ素化メタクリレート系重合体、フッ化ビニリデン系重合体等のPOF素線部の鞘材として使用されている材料を適宜選択することができる。本発明においては、良好な透明性及び耐熱性を有しながら、屈曲性及び加工性に優れることから、第1鞘層を形成する樹脂としてフッ素化メタクリレート系重合体を用いることが好ましい。
本発明に用いられるPOF素線の最外周にあたる鞘部最外層を形成する樹脂としては、テトラフルオロエチレン(TFE)単位を含む含フッ素オレフィン系樹脂が好ましい。例えば、フッ化ビニリデン(VdF)とTFEとの共重合体、VdFとTFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体、VdFとTFEとHFPと(パーフルオロ)アルキルビニルエーテルとの共重合体、VdFとTFEと(パーフルオロ)アルキルビニルエーテルとの共重合体、エチレンとTFEとHFPとの共重合体、TFEとHFPとの共重合体、VdFとTFEとヘキサフルオロアセトンとの共重合体等が挙げられる。中でも、TFEと、VdF、HFP、(パーフルオロ)アルキルビニルエーテルの少なくとも1種類を用いて形成される樹脂が、透明性が高く、耐熱特性、コストに優れる点から特に好ましい。
テトラフルオロエチレン単位を含む含フッ素オレフィン系樹脂としては、具体的には、VdF単位16〜44質量%、TFE単位46〜62質量%、HFP単位10〜22質量%からなる3元共重合体、VdF単位5〜25質量%、TFE単位50〜80質量%、(パーフルオロ)アルキルビニルエーテル単位5〜25質量%からなる3元共重合体、エチレン単位5〜60質量%、TFE単位25〜70質量%、HFP単位5〜45質量%からなる3元共重合体、VdF単位10〜30質量%、TFE単位40〜69質量%、HFP単位21〜40質量%、(パーフルオロ)アルキルビニルエーテル単位1〜15質量%からなる4元共重合体等を挙げることができる。
また、前記TFE単位を含む含フッ素オレフィン系樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)における結晶融解熱(ΔH)が40mJ/mg以下である必要があり、30mJ/mg以下が好ましく、15mJ/mg以下であればさらに好ましい。この結晶融解熱は、含フッ素オレフィン系樹脂における、VdF単位とTFE単位に由来する結晶成分の熱融解に起因するものであり、該熱量が40mJ/mgより大きい場合には、樹脂自体の結晶性が高くなるため、後述する温水加熱処理をPOFケーブルに対して行った際に鞘材が白濁し、そのため、POFの初期の伝送損失が増大したり、POFが高温環境下に長期間放置された場合、伝送損失の増加が著しくなる傾向がある。
また、含フッ素オレフィン系樹脂中にVdF単位が含まれる場合には、その含有量は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
VdF単位の含有量が50質量%より多いと、該樹脂から構成される最外層と、その内側の樹脂との間で相溶層の形成が進行する傾向がある。結晶性が高い該樹脂と非結晶性である内層樹脂との間に形成される相溶層は、POFが長時間高温状態に曝されることにより相分離を生じ、相間の界面状態が悪化するため、光伝送特性を低下させる。この影響は、温度85℃湿度95%のような、高温高湿環境下において著しく現れる。
POFケーブルを構成する被覆層の最内層(第1被覆層)としては、ポリアミド系樹脂が用いられる。ポリアミド系樹脂は、耐熱性、耐屈曲性、耐溶剤特性に優れることから、車載用などの耐熱性および耐環境性を要求される用途向けのPOFの被覆材として好適である。また、加工性が良く、適度な融点を有しているため、POFの伝送性能を低下させることなく、容易にPOF素線を被覆することができる。
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、これら各ナイロンの構成単位の2種以上からなるナイロン共重合体、これらナイロンの構成単位と他の単量体単位とからなる共重合体、これらナイロンに柔軟なセグメントが導入されたナイロンエラストマー等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上組み合わせて使用しても良い。また、ポリアミド系樹脂に由来の所望の特性を損なわない範囲であれば他の樹脂や化合物を混合しても良い。
特に、上記ポリアミド系樹脂の中でも、ナイロン11、ナイロン12は、熱収縮特性、耐屈曲性、耐磨耗性に優れ、しかも比較的融点が低く加工性が良いことから、POFの被覆材料として好ましい。また、ナイロン11やナイロン12は、第2鞘層との密着性が優れ、被覆層の寸法安定性と相まってピストニング現象を効果的に防止できるため好ましい。
また、本発明の方法によって製造されるPOFケーブルでは、POFへの外光の入射を防止するために、被覆層にカーボンブラック等の黒色無機成分を含有することもできる。
また、本発明の方法によって製造されるPOFケーブルは、耐久性、耐環境特性をさらに良好なものとするために、POF素線の外周に設けた第1被覆層のさらに外周に熱可塑性樹脂からなる第2被覆層を設けても良い。
この第2被覆層に用いられる熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。中でも、使用される環境により、POFに耐熱性、耐屈曲性、耐溶剤性が求められる場合にはポリアミド系樹脂が好ましい。
また、第2被覆層を形成する樹脂には可塑剤を添加しても良く、塩化ビニル樹脂の場合、例えばジオクチルフタレート、トリオクチルトリメリテート、トリクレジルホスフェート等を添加することができる。可塑剤の添加に際しては、添加された可塑剤がPOFへ移行してPOFの光学性能や機械特性に支障をきたすことのないように適宜選択し、必要量を用いることが好ましい。
また、難燃性を付与あるいは向上させるために、最外層を構成する被覆層には、難燃剤を含有させても良い。難燃剤としては、金属水酸化物、燐化合物、トリアジン系化合物等の公知の難燃剤を用いることができるが、ポリアミド系樹脂を被覆層の主成分として用いる場合は、トリアジン系化合物を用いることが好ましく、この中でもシアヌル酸メラミンがより好ましい。
また最外層を構成する被覆層には着色剤等を添加してもよい。これにより、POFケーブルの識別性、意匠性を容易に高めることができる。着色剤としては公知のものが用いられるが、染料系の着色剤は高温下でPOF素線に移行し伝送損失を増加させる恐れがあるため、無機顔料を用いることが好ましい。
本発明の製造方法に用いられるPOFケーブルにおいては、少なくとも1層の被覆層が延伸されていない状態でPOF素線に被覆されていることが好ましい。POFのコアであるメタクリル酸メチルを主成分とした重合体は、100℃を超えるとガラス転移温度に近づき、コアの分子配向が緩和されるため、熱収縮が起こる。しかし、被覆層として、POFの最外層に形成される鞘層と密着性が良く、耐熱性に優れた樹脂を延伸させずに被覆することで、POFの熱収縮をより抑える効果が得られる。
また、上記のPOFケーブルは、例えば一般的な製造装置である複合溶融紡糸設備により製造できる。また、コア材のみを溶融紡糸の後に、鞘材をジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の溶媒に溶解してソルベントコーティングすることによっても製造できる。また、被覆層の形成方法としては、POF素線のケーブル化法として一般的に使用されている方法で行うことができるが、クロスヘッドダイを用いて被覆層を形成する方法が、本発明の効果を充分に発現するPOFケーブルを得ることができることから好ましい。
以上のような構成からなるPOFケーブル、すなわち、鞘の最外層が、示差走査熱量測定における結晶融解熱が40mJ/mg以下であって、かつテトラフルオロエチレン単位を含む含フッ素オレフィン系樹脂からなるPOF素線に、最内層がポリアミド系樹脂からなる被覆層を被覆したPOFケーブルを、90℃以上の温水中に浸漬し、加熱処理を施すことによって、POFケーブルは、光伝送特性を所望の値に保ちつつ、かつ十分な寸法安定性を得ることができる。温水を用いた加熱処理は、気層中における加熱処理に比べ、熱効率が非常に優れており、POFの光学的特徴を損なうことなく、短時間で低熱収縮特性、寸法安定性を付与することができる。
加熱処理の温度としては、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましい。90℃より低い温度では、所望の熱収縮特性を得るために、長時間の処理が必要であったり、何度も熱処理を行う必要が生じる。100℃を超えた温度による加熱処理を実施するには、オートクレーブ等を用いた加圧化にて実施することができる。その際は120℃以下の温度で加熱処理をすることが好ましい。120℃より高い温度であると、POFの製造工程において強度付与を目的として施されたPOF素線の延伸配向が低下する傾向にあり好ましくない。
所望の光学特性並びに寸法安定性を発現するためには、加熱処理時間を、30分以上5時間以内とすることが必要である。30分より短時間であると、POFケーブルの緩和が不充分となり、低熱収縮性の向上は見られず、ピストニングの抑制も充分には発現されない。また、加熱処理時間が5時間を超えると、POFケーブルの緩和が過剰となり、ピストニングの抑制等寸法安定性には充分効果があるものの、POFケーブルの光学特性が低下するおそれがある。加熱時間は、好ましくは2時間以上4時間以内である。
この方法によれば、気層中で低熱収縮化のためのアニール処理を行う場合に比べ、極めて短時間で所望の特性が得られるため、POFを構成する材料、特に鞘材が熱劣化の影響をうけず、POF素線の初期及び長期耐熱試験後の光伝送特性に優れているという特徴が得られる。
また、POFケーブルに対して上記の温水加熱処理を施した後に、さらに50℃程度の温度で48時間程度の乾燥処理を行う。
本発明において、POF素線に被覆層を被覆する前に、予めPOF素線に熱処理すなわち緩和処理を施すことによって、さらなる低熱収縮化を図ることができる。
POF素線の熱処理温度としては、光ファイバ素線を構成する芯材のガラス転移温度よりも低い温度であることが好ましく、具体的には90℃〜105℃程度が好ましい。これは、105℃より高い温度であると、POF製造時に施された延伸配向が低下する傾向があり、90℃より低い温度では、所望の熱収縮特性を得るために長時間の熱処理が必要になったり、何度も熱処理を行う必要が生じる傾向があるためである。
上記の熱処理の方法としては、水、水蒸気、加熱気体などの加熱媒体によってPOF素線を加熱、あるいは加熱媒体中にPOF素線を通過させ、炉前のPOF素線の供給速度および炉後のPOF素線の排出速度を変化させることで行うことができる。また、このような処理を行う際、POF素線に数百gfの張力を付与して行うことで、延伸配向の保存性を高めることが可能となり好ましい。このように、予めPOF素線に熱処理を施すことによって、POFケーブル形成後の寸法安定性をより高めることが可能となる。
以上のような本発明の方法によって得られたPOFケーブルは、そのケーブル内部のPOF素線部を105℃で24時間熱処理した場合の軸方向の熱収縮率を1.5%以下に抑えることができ、POFケーブルを105℃の高温下で長期使用した場合に、POF素線の軸方向での熱収縮によるピストニングの発生を抑止することができる。POF素線の軸方向での熱収縮率は、高温下でのPOFの寸法安定性をより一層高めるために、1.0%以下が好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
また、本発明の製造方法によって得られたPOFケーブルは、105℃で24時間処理した場合における軸方向の熱収縮率を0.6%以下に抑えることができ、熱収縮によりファイバ全長が短くなり、ケーブルの末端のコネクタ部や、ケーブルを敷設する際に固定するために使用した押さえ治具等に張力がかかり、ケーブルの断線や、プラグはずれ、側圧増加による光学特性の低下等の問題の発生を抑止することができる。POFケーブルの軸方向での熱収縮率は、高温下でのPOFの寸法安定性をより一層高めるために、0.2%以下が好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。
また、通信用途で使用されるPOFケーブルにおいては、ピストニング量を受発光素子との結合効率を劣化させない範囲とする必要があるが、本発明の方法でPOFケーブルを製造することによって、POFケーブル50cmを105℃で1000時間処理した時のピストニング量を30μm以下に抑えることができ、受光端と発光端とを併せてもピストニングを60μm以下とすることができ、位置精度、公差の範囲内で許容することが可能な範囲となり、105℃で数年以上にわたって連続使用をした場合においてもPOFの受発光素子との結合効率の劣化がほとんど発生しないようにできる。
また、本発明の製造方法によって得られたPOFケーブルは、その初期の伝送損失を150dB/km以下に抑えることができ、さらに105℃で2000時間熱処理を施した後の伝送損失の増加量を30dB/km以下に抑えることができるため、100℃程度の高温環境下で長期間使用された場合においても、光伝送特性が損なわれることがなく、光の送受信に障害をきたすことがない。また、伝送損失の増加量は、好ましくは20dB/km以下に抑えることである。
以下、実施例により本発明を説明する。なお、本発明の実施例における評価方法については、下記の方法により実施した。
(示差走査熱量計(DSC)による結晶融解熱(ΔH)の測定)
示差走査熱量計は、セイコーインスツルメンツ社製、DSC−220を使用した。サンプルを昇温速度10℃/分で180℃まで昇温し、10分間保持して溶融させた後、10℃/分で0℃まで急冷し、再度昇温速度10℃/分で昇温を行い、このときの結晶融解熱を求めた。
(ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量計(DSC)(セイコーインスツルメンツ社製、DSC−220)を使用した。サンプルを、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し10分間保持して溶融させた後、10℃/分で0℃まで急冷し、再度昇温速度10℃/分で昇温を行い、このときの発熱および吸熱挙動からガラス転移温度を求めた。
(屈折率)
溶融プレスにより厚さ200μmのフィルム状の試験片を形成し、アッベの屈折計を用い、室温25℃におけるナトリウムD線の屈折率(nD 25)を測定した
(メルトフローインデックス)
メルトフローインデックス(MFR)は、日本工業規格JIS K7210に準じて測定した。230℃、荷重5kgf(49N)の条件下で直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に吐出される重合体量を測定した。
(伝送特性)
測定波長650nm、励振NA=0.1の条件で、25−5mのカットバック法により測定した。
(POFケーブルの熱収縮率評価)
試長間距離を1mとした光ファイバケーブルもしくは光ファイバ素線を105℃の乾燥機内に24時間吊り下げ、試験後の試長間距離を測定することで、ファイバの繊維軸方向の熱収縮率を求めた。
(POF素線の熱収縮率評価)
試験サンプルとして、POFケーブルから被覆層をストリップしたPOF素線を用いて、上記熱収縮率測定と同様にして、POF素線の収縮率を求めた。
(ピストニング)
試長200mmのPOFケーブルを105℃24時間熱処理し、処理後のケーブルと素線の長さの差を測定し、ピストニング量を求めた。
(被覆引抜強度)
被覆層の初期引き抜き強度(POF素線と被覆層の間の初期引き抜き強度)を、図1に示すように、POFケーブル10を保持する治具12と、治具12の一端部に形成された突起14を把持するチャック8と、POFケーブル10の剥離部分5を把持するチャック7とを備えた測定装置20を用いて測定した。治具12には、POFケーブル10の被覆部分4が収容される保持室13と、POFケーブル10の剥離部分5よりも大きく被覆部分4よりも狭い貫通孔15が形成されている。
測定にあたっては、一端側の被覆層を剥離したPOFケーブルを用意し、POFケーブルの被覆部分4の長さが5mmになるように切断した。
次に、治具12に形成されている保持室13内にPOFケーブルの被覆部分4を収容し、POFケーブルの剥離部分5を貫通孔15から抜き出した。
次に、治具12の一端部に形成されている突起14をチャック8で把持し、POFケーブルの剥離部分5をチャック7で把持した。
次に、POFケーブル10の中心軸方向(図中矢印方向)に沿って、一定速度100mm/minでチャック8を移動させて治具12を引っ張り、POFケーブル10の被覆部分4において剥離部分5よりも厚い部分を引き抜いた。このときの引き抜き応力と、POFケーブル10の被覆部分4において剥離部分5よりも厚い部分の引き抜き方向へのずれ量との関係を示す曲線から、引き抜く際の応力のピーク値を読みとり引き抜き強度とした。
(耐熱試験)
POFケーブルを、温度105℃の熱風乾燥機オーブン内に2000時間放置した時の伝送損失(dB/m)を、25m−5mカットバック法により測定した。測定波長が650nm、励振NAが、0.1の光を用いた。
芯材としてPMMA(屈折率1.492)、第1鞘材として2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)/2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(17FM)/メタクリル酸メチル(MMA)=50/30/20(質量%)の共重合体(屈折率1.416、ガラス転移温度は78.4℃)、第2鞘材としてVdF/TFE/HFP共重合体(48.0/42.7/9.3(質量%))、屈折率1.374、MFR42.7、DSCにおけるΔH14.5mJ/mg)を225℃の紡糸ヘッドに供給し、同心円状複合ノズルを用いて紡糸した後、140℃の熱風加熱炉中で繊維軸方向に2倍に延伸し、第1クラッド厚み5μm、第2クラッドの厚み10μmの直径1mmのPOF素線を得た。
上記のようにして得られたPOF素線に、T型ダイを用いてナイロン12(ダイセル・デグサ社製、ダイアミド-L1640)を被覆して被覆層を形成して、直径1.5mmのPOFケーブルを得た。
得られたPOFケーブルを98℃の温水中で3時間加熱処理を行った。
こうして得られたPOFケーブルについて前記の方法で種々の評価を実施し、その結果を表1に示した。
POF素線を90℃の気層中で100時間熱処理を行った以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを作製した。こうして得られたPOFについて前記の方法で評価し、その結果を表1に示した。
第2鞘材として、VdF/TFE/HFP共重合体の共重合比率が39.0/46.9/14.4(質量%)、屈折率1.369、ΔH=13.0mJ/mgである樹脂を用い、実施例2と同様にしてPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表1に示した。このPOFケーブルの伝送損失は、130dB/kmであり、POF素線の熱収縮率は0.75%、POFケーブルの熱収縮率は0.05%、ピストニング量は22μmであった。また、湿熱試験後のPOFケーブルの伝送損失は、145dB/kmであった。
第2鞘材として、VdF/TFE/HFP共重合体の共重合比率が20.0/71.0/9.0(質量%)、屈折率1.358、ΔH=22.0mJ/mgである樹脂を用い、実施例2と同様にしてPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
(比較例1)
POFケーブル対して熱処理を行わないこと以外、実施例1と同様の方法でPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
(比較例2)
POF素線に予め90℃にて100時間気層中にて熱処理を行った以外は、比較例1と同様の方法でPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
(比較例3)
POFケーブル作成後、温水中による加温処理にかえて、気層中にて115℃の温度下で24時間アニールを実施した以外は比較例2と同様にしてPOFケーブルを作成した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
(比較例4)
第2鞘材としてVdF/TFE共重合体(75/25(質量%))、屈折率1.408、メルトフローインデックス15.0、DSCにおけるΔH59.6mJ/mg)を用いたこと以外は実施例2と同様の方法でPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
実施例1〜4のPOFケーブルはPOFケーブルおよびPOF素線の熱収縮率が小さく、ピストニング量も30μm以下に抑えられており、寸法安定性は非常に良好であった。また、初期の伝送損失、耐熱試験後の伝送損失の増加量ともに低く抑えられており、十分な光伝送特性が維持されていた。
比較例1〜4のようにPOF素線の熱収縮率が大きいものでは、ピストニング並びにPOFケーブル自体の熱収縮が大きく、高温環境下での使用時の信頼性が不十分であった。また、比較例4のように、第2鞘の材料のVdF含有量、結晶融解熱が大きいものでは、ケーブル化の際の伝送損失の増加も大きく、耐熱試験後の損失増加も著かった。
Figure 2005099447
表中、化合物の略称は、それぞれ以下の化合物を示す。
フッ素化メタクリレート共重合体:3FM/17FM/MMA(51/31/18質量%)
PMMA:ポリメチルメタクリレート
VdF:フッ化ビニリデン
TFE:テトラフルオロエチレン
HFP:ヘキサフルオロプロピレン
FEVE:パーフルオロエチルビニルエーテル
PA12:ナイロン12 (ダイセル・デグッサ社製、ダイアミド-L1640)
被覆層の引抜強度の測定方法を説明するための図である。
符号の説明
4 被覆部分
5 剥離部分
8、7 チャック
10 POFケーブル
12 治具
13 保持室
14 突起
15 貫通孔
20 測定装置

Claims (2)

  1. 鞘部の最外層を形成する樹脂が、示差走査熱量測定における結晶融解熱が40mJ/mg以下であり、かつテトラフルオロエチレン単位を含む含フッ素オレフィン系樹脂からなる芯鞘構造のプラスチック光ファイバ素線に、最内層がポリアミド樹脂からなる被覆層を被覆したのち、90℃以上の温水に浸漬させて加温処理を行うことを特徴としたプラスチック光ファイバケーブルの製造方法。
  2. 前記プラスチック光ファイバ素線に前期被覆層を被覆する前に、芯部を構成する樹脂のガラス転移温度よりも低い温度で該プラスチック光ファイバ素線に熱処理を行うことを特徴とした請求項1記載のプラスチック光ファイバケーブルの製造方法。
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