JP4519914B2 - 電磁波シールド材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
透視性と電磁波シールド性の両方を備えた電磁波シールド材としては、例えば、導電性粉末とバインダーとを用いて、透明樹脂基材表面にスクリーン印刷により形成された導電部を有する電磁波シールド材の報告例がある(特許文献1及び2)。
しかし、一般に、スクリーン印刷を利用して、格子状パターンでシールド層を形成する場合、印刷板の紗の網目との干渉によるモアレ、細線の断線や線太り等の印刷不良が発生しやすく、精密な印刷が容易ではなかった。そのため、電磁波シールド性能が低下したり、透視性が低下したりする問題が発生し易かった。
(1)酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する透明多孔質層を備えた透明性樹脂基材の該透明多孔質層面に、導電性粒子、バインダー及び溶媒を含み、前記バインダーはポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニルエマルジョン、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ニトロセルロース樹脂及び天然樹脂からなる群から選ばれる、一種または二種以上の混合物であって、バインダー/導電性粒子の質量比が0.1以下の導電性ペーストを幾何学パターンにスクリーン印刷した後、該印刷された透明性樹脂基材を加熱処理して該透明多孔質層面に幾何学パターンの導電部を形成することを特徴とする電磁波シールド材の製造方法。
(2)前記導電性粒子が、表面が酸化銀で被覆された銀粒子である前記(1)に記載の電磁波シールド材の製造方法。
(3)前記導電性ペーストを製造する方法が、導電性粉末を界面活性剤存在下に分散用溶剤中に分散させる分散工程、前記分散液を真空凍結乾燥させる乾燥工程、及び前記乾燥工程の生成物をバインダー及び溶媒と混合してバインダー/導電性粒子の質量比が0.1以下の導電性ペーストを作製するペースト化工程を有する前記(1)に記載の電磁波シールド材の製造方法。
(5)前記導電性ペーストが、表面が酸化銀で被覆された銀粒子100重量部、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂及びそれらの共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするバインダー1〜10重量部、並びに芳香族炭化水素、ケトン類、グリコールのエーテル類、グリコールのエーテルエステル類及びテルピネオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする溶媒1〜20重量部を含む導電性ペーストである前記(1)又は(3)に記載の電磁波シールド材の製造方法。
(6)前記透明多孔質層の厚みが0.05〜20μmである前記(1)に記載の電磁波シールド材の製造方法。
(7)前記透明多孔質層が、シリカ、チタニア及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする微粒子の集合体からなり、該微粒子間に細孔を有している前記(1)に記載の電磁波シールド材の製造方法。
(8)前記微粒子の平均粒子径が10〜100nmであり、前記細孔径が10〜100nmである前記(7)に記載の電磁波シールド材の製造方法。
(10)前記加熱処理の温度が130〜200℃である前記(1)に記載の電磁波シールド材の製造方法。
(11)前記透明性樹脂基材の樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、シリコーン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂及びポリエーテルスルホン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記(1)に記載の電磁波シールド材の製造方法。
(12)前記透明性樹脂基材がシート状、フィルム状又は平板状である前記(1)に記載の電磁波シールド材の製造方法。
(14)導電部の幾何学パターンの線幅が10〜30μmであり、開口率が80〜95%である前記(13)に記載の電磁波シールド材。
(15)透明性樹脂基材上に幾何学パターンの導電部を有する電磁波シールド材であって、全光線透過率が72〜91%であり、ヘイズ値が0.5〜6%であり、表面抵抗値が5Ω/□以下であり、導電部の幾何学パターンの線幅が10〜30μmであり、開口率が80〜95%である前記(13)に記載の電磁波シールド材。
(16)前記(13)〜(15)のいずれかに記載の電磁波シールド材を含むプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルター。
(18)前記導電性粒子が、表面が酸化銀で被覆された銀粒子である前記(17)に記載の方法。
また、パターン形成された該導電性ペーストは低い温度で焼成が可能であるため、透明性樹脂基材の白化や黄変を抑制でき透明性を保持できる。特に、ハードコート層を有する透明性樹脂基材の場合、該導電性ペーストの焼成時に、ハードコート層により熱や水分の基材への影響が抑制されるため、より高い透明性が保持される。もちろん、本発明ではスクリーン印刷を用いるため、工程数が少なく簡便でありコスト面でも有利であり、電磁波シールド材の大量生産性及び連続生産性も高い。
また、上記の製造方法で製造される本発明の電磁波シールド材は、導電性パターンにおいて細線の断線がほとんどないため、抵抗値が低く高い電磁波シールド効果が発揮され、また細線の線太りも抑制できるため高い開口率(透視性)及び透明性が確保される。
従って、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのような表示画面の大きなディスプレイに用いる電磁波シールドフィルターとして特に有用である。
本発明の電磁波シールド材の製造方法は、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する透明多孔質層を備えた透明性樹脂基材の該透明多孔質層面に、導電性粒子、バインダー及び溶媒を含む導電性ペーストを幾何学パターンにスクリーン印刷し、さらに印刷後の基材を加熱処理(焼成)して該透明多孔質層面に幾何学パターンの導電部を形成することを特徴とする。
本発明で用いられる透明性樹脂基材の基材樹脂としては、耐熱性が高く、透明であり、該基材上に該透明多孔質層を形成し得るものであれば特に限定はない。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂;シリコーン樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂などが例示される。上記のうち、透明性、コスト、耐久性、耐熱性等の観点から総合的に判断すると、ポリエステル樹脂(特にPET又はPEN)及び環状ポリオレフィン樹脂が好ましく採用される。
透明性樹脂基材の形態は、PDP、CRT等の表示部に用い得る形態、即ち、フィルム状、シート状、平板状等が採用される。かかる形態は、上記の基材樹脂から公知の方法により製造することができる。
環状オレフィン系樹脂には紫外線吸収剤、無機や有機のアンチブロッキング剤、滑剤、静電気防止剤、安定剤等各種公知の添加剤を合目的に添加してもよい。
環状オレフィン系樹脂からフィルムを得る方法は特に限定はなく、例えば溶液流延法、押出し法、カレンダー法等が例示できる。
溶液流延法に用いる溶剤としては、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサノン等の脂環式化合物(脂環式炭化水素及びそれらの誘導体)、メチルイソブチルケトン等の脂肪族化合物(脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体)、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族化合物(芳香族炭化水素及びそれらの誘導体)が例示できる。
ここで、酸化物セラミックスとしては、チタニア、アルミナ、マグネシア、ベリリア、ジルコニア、シリカ等の単純酸化物;シリカ、ホルステライト、ステアタイト、ワラステナイト、ジルコン、ムライト、コージライト、スポジェメン等のケイ酸塩;チタン酸アルミニウム、スピネル、アパタイト、チタン酸バリウム、PZT、PLZT、フェライト、ニオブ酸リチウム等の複酸化物が例示できる。
非酸化物セラミックスとしては、窒化ケイ素、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン等の炭化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイヤモンド、単結晶サファイヤ等の炭素が例示できる。その他、ホウ化物・硫化物・ケイ化物が例示できる。
金属としては、金、銀、鉄、銅、ニッケル等が例示できる。
これらのうち少なくとも1つを原料として用いればよく、より好ましいのはシリカ、チタニア、アルミナであり、その他成分や配合は特に制限はない。
なお、ドライプロセスとしては、例えばCVD、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等が例示できる。
また、該透明多孔質層は、酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする微粒子の集合体(凝集体)からなり、該微粒子間に細孔を有している。該透明多孔質層において、該微粒子の平均粒子径は10〜100nm程度であり、該細孔径は10〜100nm程度である。本発明では、このような透明多孔質層を有しているため、後述する導電性ペーストとのマッチングが優れており、所望のパターン形成が可能となる。
透明多孔質層を有する透明性樹脂基材の形態は、フィルム状、シート状、平板状等である。フィルム状又はシート状の場合、透明多孔質層を有する透明性樹脂基材の厚さは、通常、25〜200μm程度、好ましくは40〜188μm程度であればよい。特に、PDP等のディスプレイ全面の電磁波シールド材として用いる場合、50〜125μm程度が好ましい。また、板状の場合は、その厚さは、通常、0.5〜5mm程度、好ましくは1〜3mm程度であればよい。
透明多孔質層を有する透明性樹脂基材の透明性は、通常、JIS K7105で測定した全光線透過率が85〜90%程度、及びJIS K7105で測定したヘイズ値が0.1〜3%程度である。
ハードコート層としては、透明性を損なわないものであれば一般的な材料を用いればよく、特に制限はない。そのうち紫外線硬化型アクリレート樹脂及びゾル−ゲル反応型セラミックス膜が好ましい。
これらの光重合開始剤の配合割合は、紫外線硬化型アクリレート樹脂100重量部に対し1〜10重量部が好ましい。1重量部未満では充分に重合が開始せず、また、10重量部を超えると場合によっては耐久性が低下するからである。
なお、前記の紫外線硬化型アクリレート樹脂中には、その透明性を損なわない程度で第三成分(UV吸収剤、フィラー等)を含ませてもよく、特に制限はない。
透明性樹脂基材にハードコート層を設けることにより、後述する焼成時に、基材樹脂からのオリゴマーの析出による白化や黄変を抑制することができ、これにより本発明の電磁波シールド材は高い透明性が確保される。また、電磁波シールド材の製造工程中でのキズ防止も可能となる。
本発明で用いられる導電性ペーストは、導電性粒子、バインダー及び溶媒を含むものである。この導電性ペーストは、導電性粉末を界面活性剤存在下に分散用溶剤中に分散させる分散工程、前記分散液を真空凍結乾燥させる乾燥工程、及び前記乾燥工程の生成物をバインダー及び溶媒と混合してバインダー/導電性粒子の質量比が0.1以下の導電性ペーストを作製するペースト化工程を有する方法により製造される。
導電性ペーストに含まれる導電性粒子は、一般的な導体として扱われる金属の粉末を特に限定なく利用することができる。例えばニッケル、銅、金、銀、アルミニウム、クロム、プラチナ、パラジウム、タングステン、モリブデン等、及びこれら2種以上の合金、あるいはこれら金属の化合物で良好な導電性を有するもの等が挙げられる。
導電性粒子として、銀粒子、銀化合物粒子、及び、表面が酸化銀で被覆された銀粒子(以下「酸化銀被覆銀粒子」とも呼ぶ)は、安定した導電性を実現し易く、また熱伝導特性も良好なため、好ましい。
銀粒子等の導電性粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm程度である。銀粒子として、体積平均粒径が異なる大小2種類またはそれ以上の粒子を組み合わせて、銀の充填密度を向上させることにより、導電性膜の導電性を向上させてもよい。
しかも、本発明の製造方法で製造された導電性ペーストは、バインダーの配合量を低減でき、導電性粒子の被覆膜の膜厚が薄いため、焼成後に隣接する粒子同士が容易に融合しやすい。このため本発明の導電性ペーストとして焼成温度が300度以下の低温焼成タイプの銀粒子または銀化合物粒子を用いると、その本来の低温焼結性を充分に発揮させることができ、また焼結後に導電性の良好な導体パターンを得ることができる。
本発明の製造方法で使用する界面活性剤としては、通常使用される多くの種類の界面活性剤、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤の中から選択して用いることができる。
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、等が挙げられる。
本発明で使用される界面活性剤としては、アルキルアミンおよびアルキルアミン塩を好適に用いることができる。特に導電性粒子として、銀粒子、銀化合物粒子、または酸化銀被覆銀粒子を用いるとき一層効果的である。アルキルアミン系の非イオン性界面活性剤、およびアルキルアミン塩系の陽イオン性界面活性剤はそれぞれ単独で使用しても有効であるが、特に併用することによって分散性がより良好となり効果が顕著である。
アルキルアミン系の界面活性剤としてはポリオキシアルキレンアルキルアミン型の界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルアミン型の界面活性剤がさらに好ましい。中でも以下の化学構造(1)を有するものがさらに好ましい。
アルキルアミン系の界面活性剤とアルキルアミン塩系である陽イオン性界面活性剤とを併用する場合は、アルキルアミン系とアルキルアミン塩系との混合比率は1:20〜1:5の範囲が好ましい。
本発明で使用される界面活性剤として、リン酸エステル系の界面活性剤もまた好適に使用できる。特に導電性粒子として、銀粒子、銀化合物粒子、または酸化銀被覆銀粒子を用いるとき一層効果的である。
さらに前記リン酸エステル系界面活性剤としては、HLBが10以上のものを用いるか、または塩基性化合物を添加して酸価を中和して用いることが好ましい。
導電性粒子の分散に用いる分散用溶剤(分散媒)は、該溶剤への界面活性剤の溶解性を考慮して選択されるが、具体例としては、水、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテルなどのアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。これら溶剤はここに挙げたものに限定されるものではなく、その使用に際しては単独、或いは2種類以上混合して用いることができる。
本発明の製造方法においては、分散工程の後に行う乾燥法として真空凍結乾燥を使用するため、上記分散用溶剤のなかから凍結し易い溶剤を選択して使用することが好ましく、具体的には、凝固点が−40℃以上である溶剤が好ましい。
本発明の導電性ペーストの製造方法中、分散工程においては、導電性粒子と界面活性剤とを分散用溶剤(分散媒)中に添加し、攪拌機または分散機にかけて、導電性粒子を微細粉へと解砕するととともに、界面活性剤との混合を行う。
このように、例えば銀粒子と、分散用溶剤と、界面活性剤とを所望の割合で混合して、分散機等により分散させると、界面活性剤の存在下にて銀粒子が分散した分散液を得ることができる。このような分散液中の固形分濃度の範囲は、0.5〜80%が好ましく、特に、1〜50%が好ましい。
使用可能な攪拌機または分散機としては、後述の公知の攪拌機または分散機の中から適宜選択して使用することができる。
配合後0.5〜4.0時間分散すると、凝集していた導電性粒子が1次粒子へと解砕され、導電性粒子の表面に対して界面活性剤が吸着平衡に達する。
上述の分散工程によって、導電性粒子が界面活性剤とともに分散用溶剤中に分散した分散液を得た後、該分散液から真空凍結乾燥法により分散用溶媒の除去を行う。
本発明の乾燥工程において使用する真空凍結乾燥法では、基本的に低温状態で凍結した分散液から、分散用溶剤のみが昇華除去される。すなわち、分散用溶剤に溶出して界面活性剤が失われることがないため、分散液中に含有される界面活性剤のほとんど全てが処理後の導電性粒子とともに残留する。
界面活性剤の分子は、親水基側の末端で導電性粒子の表面に吸着するため、疎水基側の末端が導電性粒子に対して外側を向く。これにより、バインダーとの親和性が向上し、表面処理された導電性粒子の分散性が改善される。また、導電性粒子同士の凝集が抑制され、導電性粒子が1次粒子に分散された状態を持続することができる。
このように真空凍結乾燥による乾燥方法では真空中で分散用溶剤を昇華蒸発させ、乾燥するため、乾燥による収縮がわずかであり、界面活性剤で表面処理された導電性粒子の組織や構造が破壊しにくい。また、熱風乾燥のように高温で試料内での例えば水などの液体成分の移動による乾燥ではなく、固体の凍った状態で低温乾燥するため、液体成分の移動を伴う乾燥のような部分的成分濃縮、部分的成分変化、変形がほとんど無く、優れている。
前記分散工程と乾燥工程によって界面活性剤が表面に吸着した導電性粒子を用いて導電性ペーストを製造するためには、前記表面処理済みの導電性粒子と、バインダー及び溶剤とを混合して、適当な分散機を用いて混練する。
本発明の電磁波シールド材は、上記の導電性ペーストを、透明性樹脂基材の透明多孔質層面上にスクリーン印刷した後、加熱処理して製造される。
本発明では、特定の導電性ペーストを所定の透明多孔質層上にスクリーン印刷することを特徴としており、これにより細線の断線や滲みがほとんどないパターン導電部が形成される。
なお、前記加熱処理(焼成)を多段階で行っても良い。例えば、第一段階として50〜60℃で10〜20分程度加熱処理した後、引き続き、第二段階として160〜180℃で10分〜40分程度加熱処理することも可能である。多段階にすることで、先に溶媒を揮発させることで、さらに滲みを抑制することができる。
また、透明性樹脂基材の透明多孔質層と反対面にハードコート層を有する場合、焼成時に基材樹脂の白化や黄変がさらに抑制される。
なお、印刷される格子状又は網目状パターンの線の間隔(ピッチ)(P)は、上記の開口率及び線幅を満たす範囲で適宜選択することができる。通常、200〜400μm程度の範囲であればよい。
細線の厚み(透明多孔質層面から垂直方向の細線の最大高さ)は、線幅等によって変動し得るが、通常約1μm以上であり、特に1〜30μm程度である。
Rs:導電性ペーストの表面抵抗値(Ω/□)
ρv:導電性ペーストの体積固有抵抗(Ω・cm)
t:導電性ペーストの膜厚
P:格子状又は網目状パターンの間隔(ピッチ)
W:格子状又は網目状パターンの線幅
さらに、透明多孔質層上に形成された導電性パターンは、実質的にその大部分が銀粒子からなり、かつ、この銀粒子が直接融着し結合した高純度の銀の塊となる。このため、本発明の電磁波シールド材は、より低く且つ安定な抵抗値を有している。
平均粒子径400nmの三井金属社製の10%酸化銀処理した銀粉FHD(結晶子径<10nm)50g、アルキルアミン塩の陽イオン性界面活性剤としてココナットアミンアセテートの10質量%水溶液を5g、アルキルアミンの界面活性剤としてポリオキシエチレンココナットアルキルアミンエーテルの10質量%水溶液を0.5g、溶媒である水50g、及び2mm径のジルコニアビーズ400gを容積250mlのポリ瓶に入れて混合し、回転機(ボールミル)を用いて4時間練肉して、銀粒子分散液(a−1)を得た。
界面活性剤として、アルキルアミン系界面活性剤とアルキルアミン塩系界面活性剤の混合物の代わりに、リン含有率が4.4%のポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステルであり、重量平均分子量で1750、HLBが12であるリン酸エステル系界面活性剤の10質量%水溶液5gを用いた以外は、上記製造例1と同様の方法にて、銀粒子分散液(a−2)を得た。次いで、この銀粒子分散液(a−2)から製造例1と同様の方法にて銀粒子表面処理物(b−2)を50g得た。さらに、この銀粒子表面処理物(b−2)から製造例1と同様の方法にて、製造例2の導電性ペースト(c−2)を得た。
透明性樹脂基材として、アルミナ膜の透明多孔質層(層厚さ20μm)を有するポリエチレンテレフタレートフィルム透明基板(透明多孔質層を含む厚さ120μm、ピクトリコ社製、商品名「TPX」)の透明多孔質層とは反対面に、紫外線硬化型アクリレートハードコート剤(大日本塗料社製、商品名「UVクリア」固形分濃度50重量%)を、硬化後の膜厚が2μmになるようにマイヤーバーで塗工し、80℃で2分間乾燥した後、紫外線を照射量300mJ/cm2で照射してハードコート層を形成した。
印刷後、フィルムごと銀化合物ペーストを180℃で30分間焼成して、正方形模様を格子状に描いた導電部を形成し、電磁波シールド材を製造した。
得られた電磁波シールド材の導電部の格子線を、光学顕微鏡(倍率:×100)で観察したところ、断線および線のにじみ(線太り)はほとんどなかった(図1)。
透明性樹脂基材として、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、商品名『A4300』)を用い、このフィルムの表面に、シリカ微粒子が分散したゾル液(オルガノシロキサン系のゾル溶液中に粒径10〜100nmのシリカフィラーを添加したもの)を硬化後の膜厚が1.0μmになるように製膜し、120℃で1分間乾燥した後、60℃で3日間熟成させることにより、シリカ膜の透明多孔質層(層厚さ1.0μm)を有するポリエチレンテレフタレートフィルム透明基板を製造した。該透明多孔質層を有する透明基板の透明多孔質層とは反対面に、ゾル−ゲル反応型ハードコート剤(日本精化社製、商品名「NSC2451(主剤)」、「NSC−CO(硬化剤)」・・・主剤100部に対して硬化剤1.83部)を、硬化後の膜厚が3μmになるようにリバースグラビア塗工し、120℃で2分間乾燥してハードコート層を形成した。
印刷後、フィルムごと銀化合物ペーストを170℃で30分間焼成して、正方形模様を格子状に描いた導電部を形成し、電磁波シールド材を製造した。
透明性樹脂基材として、厚さ100μmの環状ポリオレフィンフィルム(ポリプラスチックス社製、商品名『TOPAS6017』)を用い、このフィルムの表面に、シリカ微粒子が分散したゾル液(オルガノシロキサン系のゾル溶液中に粒径10〜100nmのシリカフィラーを添加したもの)を硬化後の膜厚が1.0μmになるように製膜し、120℃で1分間乾燥した後、60℃で3日間熟成させることにより、シリカ膜の透明多孔質層(層厚さ1.0μm)を有する環状ポリオレフィンフィルム透明基板を製造した。該透明多孔質層を有する透明基板の透明多孔質層とは反対面に、ゾル−ゲル反応型ハードコート剤(日本精化社製、商品名「NSC2451(主剤)」、「NSC−CO(硬化剤)」・・・主剤100部に対して硬化剤1.83部)を、硬化後の膜厚が3μmになるようにリバースグラビア塗工し、120℃で2分間乾燥してハードコート層を形成した。
印刷後、フィルムごと銀化合物ペーストを170℃で30分間焼成して、正方形模様を格子状に描いた導電部を形成し、電磁波シールド材を製造した。
透明性樹脂基材として、透明多孔質層を設けていない厚さ175μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、商品名『A4100』)を用い、その易接着面に紫外線硬化型アクリレートハードコート剤(大日本塗料社製、商品名「UVクリア」固形分濃度50重量%)を、硬化後の膜厚が2μmになるようにマイヤーバーで塗工し、80℃で2分間乾燥した後、紫外線を照射量300mJ/cm2で照射してハードコート層を形成した以外は、実施例1と同様にして電磁波シールド材を製造した。なお、該フィルムのハードコート層を有しない反対面にスクリーン印刷を行った。
得られた電磁波シールド材の導電部の格子線を、光学顕微鏡(倍率:×100)で観察したところ、オリゴマーおよび線のにじみが多数発生していた(図2)。
実施例1で用いた導電性ペースト(c−1)[表面を10%酸化銀処理した粒子状銀、ポリエステル−ウレタン系バインダー及び酢酸カルビトール系溶媒とを含有するもの]の代わりに、従来の一般的な銀ペースト[アサヒ化学研究所製SW−1100−1、成分比:銀粒子(粒径3〜5μm)58.0〜64.0%、カーボン粉末(一次粒子0.1μm以下)0.8〜1.2%、ポリエステル樹脂11.0〜14.0%、添加剤0.05〜0.15%、エチルカルビトールアセテート(残量)、粘度200〜300ps(ビスコテスターVT−04型)]を用いた以外は、実施例1と同様にして電磁波シールド材を製造した。得られた電磁波シールド材の導電部の格子線を、光学顕微鏡(倍率:×100)で観察したところ、断線および線のにじみが多数発生していた(図3)。
透明性樹脂基材として、透明多孔質層を設けていない厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、商品名『A4100』)を用い、その表面に紫外線硬化型アクリレートハードコート剤(大日本塗料社製、商品名「UVクリア」固形分濃度50重量%)を、硬化後の膜厚が2μmになるようにマイヤーバーで塗工し、80℃で2分間乾燥した後、紫外線を照射量300mJ/cm2で照射してハードコート層を形成した。
印刷後、フィルムごと銀化合物ペーストを170℃で30分間焼成して、正方形模様を格子状に描いた導電部を形成し、電磁波シールド材を製造した。
上記実施例1〜3及び比較例1〜3の電磁波シールド材における電磁波シールド効果、全光線透過率、ヘイズ値、シート抵抗、線幅、開口率、及び線厚みの評価結果は、以下の測定方法で測定した。その結果を、表1に示す。
電磁波シールド効果は、関西電子工業振興センター法(一般にKEC法と呼ばれる)における測定装置で測定した。
全光線透過率は、JIS K7105に従って、濁度計NDH−20D型(日本電色工業株式会社製)で測定した。
ヘイズ値は、JIS K7105に従って、濁度計NDH−20D型(日本電色工業株式会社製)で測定した。
シート抵抗は、ロレスタEP(ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて測定した。
線幅は、光学顕微鏡を用いて測定した。
開口率は、光学顕微鏡を用いて、電磁波シールド材の格子状の1パターンの線幅と線間隔を測定し、図4に示される面積Aと面積Bを算出して、これを次式にあてはめることにより算出した。
開口率(%)=(面積B/面積A)×100(%)
線厚みは、表面粗さ計を用いて測定した。
密着度は、テープ剥離試験法を用いて評価した。具体的には、電磁波シールド材に市販のセロハンテープ(ニチバン社製、セロテープ(登録商標)CT−18、LP−18)を貼ってはがした際に、メッシュパターンが90%以上残存しているものを「○」、50%以上90%未満残存しているものを「△」、50%未満の場合を「×」とした。
Claims (18)
- 酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する透明多孔質層を備えた透明性樹脂基材の該透明多孔質層面に、導電性粒子、バインダー及び溶媒を含み、前記バインダーはポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニルエマルジョン、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ニトロセルロース樹脂及び天然樹脂からなる群から選ばれる、一種または二種以上の混合物であって、バインダー/導電性粒子の質量比が0.1以下の導電性ペーストを幾何学パターンにスクリーン印刷した後、該印刷された透明性樹脂基材を加熱処理して該透明多孔質層面に幾何学パターンの導電部を形成することを特徴とする電磁波シールド材の製造方法。
- 前記導電性粒子が、表面が酸化銀で被覆された銀粒子である請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記導電性ペーストを製造する方法が、導電性粉末を界面活性剤存在下に分散用溶剤中に分散させる分散工程、前記分散液を真空凍結乾燥させる乾燥工程、及び前記乾燥工程の生成物をバインダー及び溶媒と混合してバインダー/導電性粒子の質量比が0.1以下の導電性ペーストを作製するペースト化工程を有する請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記透明性樹脂基材が、透明多孔質層と反対面にハードコート層を有している請求項1又は3に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記導電性ペーストが、表面が酸化銀で被覆された銀粒子100重量部、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂及びそれらの共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするバインダー1〜10重量部、並びに芳香族炭化水素、ケトン類、グリコールのエーテル類、グリコールのエーテルエステル類及びテルピネオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする溶媒1〜20重量部を含む導電性ペーストである請求項1又は3に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記透明多孔質層の厚みが0.05〜20μmである請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記透明多孔質層が、シリカ、チタニア及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする微粒子の集合体からなり、該微粒子間に細孔を有している請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記微粒子の平均粒子径が10〜100nmであり、前記細孔径が10〜100nmである請求項7に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記透明多孔質層が、グラビアコーティング、オフセットコーティング、コンマコーティング、ダイコーティング、スリットコーティング、スプレーコーティング、メッキ法、ゾル−ゲル法、LB膜法、CVD、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングからなる群から選ばれる1種により形成されたものである請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記加熱処理の温度が130〜200℃である請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記透明性樹脂基材の樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、シリコーン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂及びポリエーテルスルホン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記透明性樹脂基材がシート状、フィルム状又は平板状である請求項1に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により製造される電磁波シールド材。
- 導電部の幾何学パターンの線幅が10〜30μmであり、開口率が80〜95%である請求項13に記載の電磁波シールド材。
- 透明性樹脂基材上に幾何学パターンの導電部を有する電磁波シールド材であって、全光線透過率が72〜91%であり、ヘイズ値が0.5〜6%であり、表面抵抗値が5Ω/□以下であり、導電部の幾何学パターンの線幅が10〜30μmであり、開口率が80〜95%である請求項13に記載の電磁波シールド材。
- 請求項13〜15のいずれかに記載の電磁波シールド材を含むプラズマディスプレイ用電磁波シールドフィルター。
- 酸化物セラミックス、非酸化物セラミックス及び金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有する透明多孔質層を備えた透明性樹脂基材の該透明多孔質層面に、導電性粒子、バインダー及び溶媒を含み、前記バインダーはポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニルエマルジョン、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ニトロセルロース樹脂及び天然樹脂からなる群から選ばれる、一種または二種以上の混合物であって、バインダー/導電性粒子の質量比が0.1以下の導電性ペーストを幾何学パターンにスクリーン印刷した後、加熱処理して該透明多孔質層面に幾何学パターンの導電部を形成する方法。
- 前記導電性粒子が、表面が酸化銀で被覆された銀粒子である請求項17に記載の方法。
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