JP4504573B2 - 遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、農業用ハウスや農業用トンネルなどの農業用施設に使用される遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムに関し、更に詳しくは、遮光安定性、フイルム強度、耐候性の良好な5層構造の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より遮光性フイルムを利用して、花卉園芸植物の開花時期の調整を行う電照栽培や遮光栽培、また、夏期のほうれん草、ダイコン、イチゴ栽培などの遮熱栽培に使用されてきた。
これらに使用される遮光性フイルムは、一層乃至三層構造のものが使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特に、上記の電照栽培に使用されるナトリウムランプ等の光に対して、従来の内面側にアルミニウム顔料を使用したフイルムは、反射率が低いという欠点があり、また、遮光率を保持するため多量の無機顔料やカーボンブラックの添加が必要であり、フイルム強度の低下や強度のバラツキが大きくなるという欠点があった。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、上記の問題点を解消し、ナトリウムランプ等の光に対する反射率が大きく、フイルム強度や遮光率の低下がなく耐久性に優れた5層構造の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、農業用施設などに被覆される遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムの外面側の層から、(A)線状低密度ポリエチレン樹脂を主成分とする透明樹脂層、(B)線状低密度ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂成分に酸化チタン顔料を配合した白色樹脂層、(C)線状低密度ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂成分に酸化チタン顔料およびカーボンブラック顔料を配合した灰色樹脂層、(D)酢酸ビニル含有量が5〜28重量%のポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成分に酸化チタン顔料を配合した白色樹脂層、(E)酢酸ビニル含有量が3〜15重量%のポリオレフィン系樹脂からなる透明樹脂層の順に5層構造とされ、フイルム全体の厚みが75〜160μmの範囲で、遮光率が99.9%以上であることを特徴とする遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムである。
【0006】
また、(E)層および/または(D)層には、防曇剤を配合することによって、防曇性を付与することもできる。防曇剤としては、通常、農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムに使用されているもので、例えば、ソルビタン系、グリセリン系、ジグリセリン系などの多価アルコールと脂肪酸との部分エステル或いはこれらとアルキレングリコールとの縮合物を挙げることができる。
【0007】
(A)層、(B)層および(C)層に使用される線状低密度ポリエチレン樹脂は、メタロセン触媒系やチグラー触媒系で製造されたもので、これらの層に使用することにより、(B)層の酸化チタン顔料、(C)層の酸化チタン顔料およびカーボンブラックを多量に配合しているにもかかわらず、(A)層が補強して、極めて強度の高い遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムとすることができる。
【0008】
また、本発明は、上記(B)層、(C)層および(D)層の少なくとも1層の樹脂成分において、リアクターTPOを1〜35重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲で配合し、これらの層に多量に配合される酸化チタン顔料やカーボンブラック顔料によるフイルム強度の低下を防止することができる。
このリアクターTPOは、重合段階でオレフィン系樹脂にエチレンプロピレンゴムをアロイ化させた樹脂であって、反応器中で製造するTPOということから、リアクターTPOと呼ばれている。
具体的には、モンテル社の「キャタロイ」、徳山曹達社の「P.E.R」等が挙げられる。
この配合量が35重量%を超えると、フイルム生産時にモータ負荷が大きくなり、製膜が困難となるので好ましくない。
【0009】
本発明の(B)層及び(D)層は、これらの層の樹脂成分100重量部に対して、酸化チタン顔料の配合割合が、25〜100重量部、好ましくは30〜80重量部の範囲で用いられ、また、(C)層は、この層の樹脂成分100重量部に対して、酸化チタン顔料の配合割合が3〜35重量部、好ましくは5〜18重量部の範囲、およびカーボンブラック顔料の配合割合が3〜35重量部、好ましくは5〜18重量部の範囲で用いられる。
【0010】
(D)層の酢酸ビニル含有量が5〜28重量%のポリオレフィン系樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体単独またはエチレン−酢酸ビニル共重合体と低密度ポリエチレン樹脂の混合物であってもよく、また、(E)層の酢酸ビニル含有量が3〜15重量%のポリオレフィン系樹脂も上記の(D)層と同様にエチレン−酢酸ビニル共重合体単独またはエチレン−酢酸ビニル共重合体と低密度ポリエチレン樹脂の混合物であってもよい。
これらの層に酢酸ビニル含有量のポリオレフィン系樹脂を用いることにより、フイルムに柔軟性が付与することができ、農業用ハウス等にフイルム展張作業が容易となり、安定した防曇性を付与することも可能となる。これらの層には防曇剤と共にフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤を配合して防霧性も付与することもできる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。
【0012】
(遮光率)
キセノンランプの照度を照度計で測定し基準値を決めた後、キセノンランプを各試料で遮蔽し、キセノンラップの漏れた光の照度を測定し、遮光率を計算で求めた。
◎:99.95%以上
○:99.9%以上、99.95%未満
△:99.0%以上、99.9%未満
×:99.0%未満
【0013】
(突き刺し強度)
インフレーションフイルムの押出し方向に長さ110cm、その直交方向に8cmの試料を採取し、10cm間隔にφ1cmの印を10ヶ所つけたものを10枚用意した。常温で指抜け試験(N=100)を行い、抵抗無く指抜けする割合を算出し、下記の基準で評価した。
◎:7%未満
○:7%以上、15%未満
△:15%以上、40%未満
×:40%以上
【0014】
(内面の反射率)
日立製分光光度計を用いて、フイルム内面側の反射率を測定し、下記の基準で評価した。
○:50%以上
△:38%以上、50%未満
×:38%未満
【0015】
実施例1
5種5層のインフレーション装置を用いて、外面側より(A)層として、線状低密度ポリエチレン樹脂(出光石油化学社製、「モアテック0138」)を、(B)層として、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)86重量部に、酸化チタン顔料マスターバッチ(日弘ビックス社製、「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)7 0重量部を、(C)層として、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)86重量部に、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)10重量部とカーボンブラック顔料マスターバッチ(東洋インキ社製、「TET−01337ブラック」、バインダー:低密度ポリエチレン60重量%、顔料40重量%)20重量部を、(D)層として、酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体86重量部に、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)70重量部を、(E)層として、酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に、防曇剤2重量部およびフッ素系界面活性剤0.1重量部をそれぞれ用い、また、各層には樹脂成分100重量部に対して、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量部を配合し、これらを各押出機に供給し、各層16μm、合計厚さ80μmの5種5層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表1に示す。
【0016】
実施例2
前記の実施例1において、(D)層の樹脂成分として、酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体78重量部に、リアクターTPO(モンテル社、「キャタロイ」)10重量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして5種5層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表1に示す。
【0017】
実施例3
前記の実施例1において、(D)層の樹脂成分として、酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体68重量部に、リアクターTPO(「キャタロイ」)20重量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして5種5層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表1に示す。
【0018】
実施例4
前記の実施例1において、(C)層が、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)80重量部に、リアクターTPO(「キャタロイ」)5重量部配合した樹脂成分を用い、(D)層が、酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体80重量部に、リアクターTPO(「キャタロイ」)8重量部配合した樹脂成分を用いたこと以外は、実施例1と同様にして5種5層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表1に示す。
【0019】
実施例5
前記の実施例1において、(B)層および(C)層の線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)5重量部減量し、そのかわりに、リアクターTPO(モンテル社、「キャタロイ」)5重量部配合した樹脂成分を用い、また、(D)層の酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を5重量部減量し、リアクターTPO(「キャタロイ」)5重量部配合した樹脂成分を用いたこと以外は、実施例1と同様にして5種5層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表1に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0004504573
【0021】
実施例6
前記の実施例1において、(B)層は、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)90重量部に対して、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)50重量部を配合し、(C)層は、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)79重量部に対して、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)15重量部とカーボンブラック顔料マスターバッチ(「TET−01337ブラック」、バインダー:低密度ポリエチレン60重量%、顔料40重量%)30重量部を配合し、(D)層は、酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体80重量部、リアクターTPO(「キャタロイ」)10重量部に対して、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)50重量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして5種5層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表2に示す。
【0022】
実施例7
前記の実施例1において、(B)層は、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)92重量部に対して、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)40重量部を配合し、(C)層は、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)79重量部に対して、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)15重量部とカーボンブラック顔料マスターバッチ(「TET−01337ブラック」、バインダー:低密度ポリエチレン60重量%、顔料40重量%)30重量部を配合し、(D)層は、酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体74重量部、リアクターTPO(「キャタロイ」)10重量部に対して、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)80重量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして5種5層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表2に示す。
【0023】
比較例1
前記の実施例1において、(A)層、(B)層および(C)層で使用した線状低密度ポリエチレン樹脂の代わりに、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(日本ユニカー社製、「NUC−8133」)に変更し、(D)層を酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体82重量部に対して、アルミニウム顔料マスターバッチ(住化カラー社製、「SPEM−8K445シルバー」、バインダー:低密度ポリエチレン60重量%、顔料40重量%)30重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして5種5層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表2に示す。
【0024】
比較例2
3種3層のインフレーション装置を用いて、外面側より(B)層として、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(「NUC−8133」)86重量部に、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)70重量部を配合し、(C)層として、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(「NUC−8133」)100重量部に、酸化チタン顔料マスターバッチ(日弘ビックス社製、「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)10重量部とカーボンブラック顔料マスターバッチ(「TET−01337ブラック」、バインダー:低密度ポリエチレン60重量%、顔料40重量%)20重量部を配合し、(D)層として、酢酸ビニル含有量10重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体86重量部に酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)70重量部を配合し、また、各層には樹脂成分100重量部に対して、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量部を配合し、これらを各押出機に供給し、各層約27μm、合計厚さ80μmの3種3層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表2に示す。
【0025】
比較例3
3種3層のインフレーション装置を用いて、外側より(B)層として、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)70重量部に、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)150重量部を配合し、(C)層として、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)86重量部に、酸化チタン顔料マスターバッチ(「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)10重量部とカーボンブラック顔料マスターバッチ(「TET−01337ブラック」、バインダー:低密度ポリエチレン60重量%、顔料40重量%)20重量部を配合し、(D)層として、線状低密度ポリエチレン樹脂(「モアテック0138」)70重量部に、酸化チタン顔料マスターバッチ(「「PO−0907ホワイト」、バインダー:低密度ポリエチレン20重量%、顔料80重量%)150重量部を配合し、また、各層には樹脂成分100重量部に対して、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量部を配合し、これらを各押出機に供給し、各層約27μm、合計厚さ80μmの3種3層の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを製造した。
このフイルムの評価を表2に示す。
【0026】
【表2】
Figure 0004504573
【0027】
【発明の効果】
内面側の光の反射率やフイルム強度に優れた5層構造の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムを提供することできる。

Claims (5)

  1. 農業用施設などに被覆される遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルムの外面側の層から、(A)線状低密度ポリエチレン樹脂を主成分とする透明樹脂層、(B)線状低密度ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂成分に酸化チタン顔料を配合した白色樹脂層、(C)線状低密度ポリエチレン樹脂を主成分とする樹脂成分に酸化チタン顔料およびカーボンブラック顔料を配合した灰色樹脂層、(D)酢酸ビニル含有量が5〜28重量%のポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成分に酸化チタン顔料を配合した白色樹脂層、(E)酢酸ビニル含有量が3〜15重量%のポリオレフィン系樹脂からなる透明樹脂層の順に5層構造とされ、フイルム全体の厚みが75〜160μmの範囲で、遮光率が99.9%以上であることを特徴とする遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルム。
  2. 上記(B)層、(C)層および(D)層の少なくとも1層の樹脂成分において、リアクターTPOを1〜35重量%の範囲で配合したことを特徴とする請求項1記載の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルム。
  3. 上記(B)層及び(D)層の樹脂成分100重量部に対して、酸化チタン顔料の配合割合が、25〜100重量部であることを特徴とする 請求項1または2に記載の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルム。
  4. 上記(C)層の樹脂成分100重量部に対して、酸化チタン顔料の配合割合が3〜35重量部およびカーボンブラック顔料の配合割合が3〜35重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルム。
  5. 上記(E)層および/または(D)層に防曇剤を配合したことを特徴とする請求項1記載の遮光性農業用ポリオレフィン系樹脂フイルム。
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