JP4497724B2 - 酢酸の微生物的製造方法ならびに醗酵ブロスからの酢酸の抽出のための溶媒 - Google Patents

酢酸の微生物的製造方法ならびに醗酵ブロスからの酢酸の抽出のための溶媒 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、米国エネルギー省(the United States Department of Energy)からの助成金により部分的に支援されている(協同協定第DE−FC02−90CE40939号)。米国政府は本発明にある種の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、全般として、酢酸の微生物的製造の改良方法に関する。より具体的には、本発明は、水性流(aqueous stream)、および、廃ガス流、工業的気体流のような気体流(gaseous stream)、もしくは炭素性物質のガス化から生成される気体流からの所望の化学品の微生物醗酵からの酢酸の抽出に関する。
【0003】
(発明の背景)
酢酸、酢酸塩、もしくはエタノールのような商業的に関心のある他の生成物を製造するための一酸化炭素および/もしくは水素ならびに二酸化炭素の嫌気性醗酵方法は、実験室のベンチスケールで実施されている。例えば、ヴェガ(Vega)ら、(1989)Biotech.Bioeng.34:785−793;クラソン(Klasson)ら(1990)Appl.Biochem.Biotech.24/25:1;ヴェガ(Vega)ら(1989)Appl.Biochem.Biotech.20/21:781−797;およびとりわけクラソン(Klasson)ら(1992)Enz.Microbio.Tech.19:602−608を参照されたい。より最近、本発明者らは、バイオリアクター中での気体流、水性の栄養培地および嫌気性細菌もしくはそれらの混合物の醗酵を使用する方法を使用することによる、工業的気体流、とりわけ廃ガス流の商業的に有用な生成物への大スケールの醗酵方法を検討した。例えば、引用により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,173,429号;米国特許第5,593,886号および国際特許公開第WO98/00558号を参照されたい。
【0004】
発明者らの上に引用された従来技術に従えば、1つのこうした大スケールの方法は以下の要約された段階を必要とする。その中に嫌気性細菌の培養物(単一種もしくは混合種のいずれか)が存するバイオリアクターもしくは醗酵槽に、栄養素を連続的に供給する。気体流をバイオリアクターに連続的に導入し、そしてこの工程の効率を最大にするのに十分な時間の間、バイオリアクター中に保持する。その後、不活性ガスおよび未反応の基質ガスを含有する排気ガスが放出される。液体の排出物は、浮遊して運ばれる微生物を分離するために遠心分離器、中空繊維膜もしくは他の固−液分離装置に進められる。これらの微生物は、より速い反応速度を生じる高細胞濃度を維持するためにバイオリアクターに戻される。浸透物もしくは遠心分離物を抽出器に進めることにより、浸透物もしくは遠心分離物からの所望の生物学的に産生された生成物(1種もしくは複数)の分離が起こり、そこで、それが、適する補助溶媒中のジアルキルおよびトリアルキルアミン、もしくは補助溶媒中のリン酸トリブチル、酢酸エチル、トリオクチルホスフィンオキシドおよび関連化合物のような溶媒と接触される。適する補助溶媒は、長鎖アルコール、ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルムおよびテトラクロロエチレンを包含する。
【0005】
水相中の栄養素および材料はバイオリアクターに戻り、そして、溶媒/酸/水の溶液が蒸留カラムに進み、ここでこの溶液は溶媒から酸および水を分離するのに十分な温度に加熱される。溶媒は、抽出の至適温度まで温度を低下させるために冷却チャンバーを通って蒸留カラムから進み、その後再使用のため抽出器に戻る。酸および水の溶液は最終蒸留カラムに進み、ここで所望の最終生成物を水から分離しそして取り出す。水は栄養素の調製のため再循環される。
【0006】
さらに、新規株のクロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)を包含する、こうした醗酵方法にかけられる場合に酢酸および他の商業的に興味深い生成物を産生する多様な酢酸発生細菌が公知である[例えば、米国特許第5,173,429号および第5,593,886号、ならびに国際特許公開第WO98/00558号を参照されたい]。
【0007】
多様な気体流の微生物醗酵の当該技術分野におけるこうした知識および進歩にもかかわらず、使用される溶媒の酢酸負荷能力により、また、他の問題のなかでも溶媒が製造工程を通って移動する際のその変性により、酢酸製造は制限されている。酢酸の製造、ならびに、工業的廃ガスの有用な汚染しない生成物への転化の常に増大している必要性を鑑み、当該技術分野においては、所望の商業的製品の製造でより効率的である方法、およびこうした方法の性能を高める可能性のある組成物の必要性が存在したままである。
【0008】
(発明の要約)
一局面において、本発明は、高度に分枝したジアルキル(もしくは二級)アミンの異性体の実質的に純粋な混合物を含んで成る水性流からの酢酸の抽出で有用な改変された水不混和性溶媒を提供する。本溶媒は補助溶媒の非存在下で酸を抽出することができる。好ましい一態様において、本溶媒は改変された形態のアドジェン[Adogen]283(商標)溶媒[ウィトコ コーポレーション(Witco Corp.)]であり、これはアルコールおよびモノアルキル(もしくは一級)アミンのその含量が実質的に低下されている。別の好ましい態様において、溶媒はトリアルキル(もしくは三級)アミンの含量がさらに低下(すなわち実質的に精製)されている。
【0009】
別の局面において、本発明は、溶媒から実質的に全部のアルコールおよびモノアルキルアミンを蒸留することを含んで成る、その酢酸抽出能力を改良するためのアルコール、モノアルキルアミン、高度に分枝したジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンの異性体の混合物を含んで成る溶媒の処理方法を提供する。別の態様において、該方法は、蒸留された溶媒を第二の蒸留にかけて実質的に全部のトリアルキルアミンを除去することを必要とする。
【0010】
なおさらなる一局面において、本発明は、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の実質的に純粋な混合物および選択された補助溶媒を含んで成る水性流からの酢酸の抽出で有用な上述された改変された水不混和性溶媒を含んで成る水性流からの(好ましくは10%未満の濃度の)酢酸の抽出に有用な新規の水不混和性溶媒/補助溶媒の混合物を提供する。好ましい一態様において、補助溶媒は9から11個までの炭素原子を有する低沸点炭化水素であり、この炭化水素が水および酢酸と共沸混合物を形成する。
【0011】
なお別の局面において、本発明は、水性流を上述されたような改変溶媒/補助溶媒の混合物と接触させること;水相から溶媒相に酢酸を抽出すること;および、160℃を越えない温度下で溶媒とのその混合状態から酢酸を蒸留することを含んで成る、水性流から酢酸を得るための非醗酵手順を提供する。
【0012】
なおさらなる一局面において、本発明は、水性流を上述されたような溶媒/補助溶媒の混合物と接触させること;水相から溶媒/補助溶媒相に酢酸を抽出すること;および、真空下、160℃を越えない温度下で、溶媒/補助溶媒とのその混合状態から酢酸を蒸留することを含んで成る、水性流から酢酸を得るための非醗酵方法を提供する。
【0013】
さらなる一局面において、本発明は、酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法を提供し、該方法は、(a)一酸化炭素、一酸化炭素および水素、水素および二酸化炭素、ならびに一酸化炭素、二酸化炭素および水素より成る群から選択される気体を含んで成る水性流を、嫌気性の酢酸発生細菌を含む栄養素混合物中でバイオリアクター中で醗酵して、それにより酢酸を含有するブロスを調製すること;(b)上述されたような改変溶媒/補助溶媒の混合物を用いて培地から酢酸を連続的に抽出すること;(c)160℃を越えない温度で溶媒と別個に酢酸を(b)の生成物から連続的に蒸留すること、ならびに(d)場合によっては溶媒および培地をバイオリアクターを通して再循環することの段階を含んで成る。抽出および蒸留段階はアミンをアミドに実質的に品位を低下することなく起こり、そうしてブロスからの酢酸回収の効率を高める。
【0014】
なお別の局面において、本発明は、一酸化炭素、二酸化炭素および水素の1種もしくはそれ以上および嫌気性の酢酸発生細菌を含有する水性流ならびに栄養培地を含んで成る醗酵ブロスからの酢酸回収を高める方法を提供し、該方法は、上述された改変されたジアルキルアミンおよび選択された補助溶媒を含んで成る溶媒と水性流を接触させること;溶媒混合物中の水性流から酢酸を連続的に抽出すること、ならびに、真空下、それから160℃より下の蒸留温度で、アミンをアミドに実質的に品位を低下することなく溶媒混合物から酢酸を蒸留することを含んで成る。
【0015】
なお別の局面において、本発明は、一酸化炭素、一酸化炭素および水素、一酸化炭素、二酸化炭素および水素、もしくは二酸化炭素および水素を含んで成る水性流の嫌気性微生物醗酵からの酢酸回収を高めるための改良方法を提供し、ここで、該方法は、水性流の醗酵生成物を水不混和性溶媒と接触させること、醗酵生成物を水性流から抽出すること、およびそれから酢酸を蒸留することの段階を含んで成る。この改良は、上述された改変溶媒/補助溶媒の混合物を溶媒として使用すること、およびアミンをアミドに実質的に変性することなく160℃を越えない温度で蒸留段階を実施することを含んで成る。
【0016】
なおさらなる一局面において、本発明は、抽出に先立って起こる濾過もしくは細胞分離を伴わずに達成される、酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法(すなわち抽出的醗酵法)を提供する。一態様において、本方法は、嫌気性の酢酸発生細菌を溶媒に順化するのに十分な時間の間、栄養混合物中の該細菌、および選択された補助溶媒を含む高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の実質的に純粋な混合物を含んで成る改変された水不混和性溶媒を、醗酵槽中に提供することを必要とする。二酸化炭素、一酸化炭素および水素の1種もしくはそれ以上を含んで成る気体流を醗酵槽中に導入し、そして細菌、栄養培地、酢酸、溶媒混合物および水を含んで成る醗酵ブロスが調製する。細胞および溶媒混合物を含有する醗酵ブロスを沈降タンクに導入し、ここで、細菌および栄養培地を含有する水相が、濾過を伴わずに酢酸、溶媒および水を含有する溶媒相からタンクの底部に沈降する。160℃を越えない温度下での連続的蒸留が溶媒と別個に酢酸を取り出す。蒸留段階はアミンをアミドに実質的に品位を低下することなく起こり、そうして培地からの酢酸回収の効率を高める。
【0017】
なお別の局面において、本発明は、細菌細胞の濾過を必要としない、酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法(すなわち直接接触抽出法)を提供する。この方法は、(a)嫌気性の酢酸発生細菌を含む栄養素混合物中に一酸化炭素、二酸化炭素および水素の1種もしくはそれ以上を含有する気体を含んで成る水性流をバイオリアクター中で醗酵させ、それにより酢酸、水および細菌細胞を含んで成るブロスを調製すること;(b)連続相として溶媒もしくは水のいずれかを含むカラムのような慣習的抽出装置中に、(i)細胞分離を伴わないブロスならびに(ii)高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の実質的に純粋な混合物および選択された補助溶媒を含んで成る水性流からの酢酸の抽出で有用な改変された水不混和性溶媒を含んで成る溶媒混合物を導入すること(ここで、酢酸、溶媒および水を含有する溶媒相が細菌および栄養培地を含んで成る水相と別個にカラムから出る);ならびに(c)160℃を越えない温度で、溶媒と別個に(b)の溶媒相から酢酸を連続的に蒸留することの段階を含んで成る。段階(b)および(c)はアミンをアミドに実質的に品位を低下することなく起こり、そうして培地からの酢酸回収の効率を高める。
【0018】
なお別の局面において、本発明は、溶解された二酸化炭素および場合によっては溶解された硫化水素を抽出前に醗酵ブロスから除去する段階(1つもしくは複数)を含んで成る、酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法を提供する。本方法の段階は、(a)嫌気性の酢酸発生細菌を含む栄養素混合物中の一酸化炭素、二酸化炭素および水素の1種もしくはそれ以上を含んで成る気体流をバイオリアクター中で醗酵して、それにより酢酸および溶解された二酸化炭素を含んで成る醗酵ブロスを調製すること;(b)抽出に先立ち醗酵ブロスから二酸化炭素を除去すること;(c)酢酸、溶媒および水を含有する溶媒相の形成を引き起こすのに十分な時間の間、ジアルキルアミンを含有する溶媒、好ましくは本発明の改変溶媒/補助溶媒の混合物とブロス(b)を接触させること;ならびに(d)溶媒相から酢酸を連続的に蒸留することを包含することが可能である。二酸化炭素/硫化水素の除去段階は、ブロスを前加熱することもしくは醗酵ブロス圧を迅速に低下させることにより、ストリッピングガスを用いて達成してよい。
【0019】
本発明の他の局面および利点は、その好ましい態様の以下の詳細な記述でさらに記述する。
【0020】
(発明の詳細な記述)
本発明の組成物および方法は、醗酵工程により形成される水相を包含する水相から酢酸を得るための方法の改良に向けられる。従って、一態様において、従来技術の酢酸回収方法が改良され、そして希水性流からの酢酸回収は、抽出および蒸留工程において、高度に分枝したジアルキルアミンの混合物および好ましくはその中で制限された溶媒変性が起こる選択された補助溶媒を含むその溶媒の混合物を含んで成る溶媒を使用することにより高められる。別の態様において、同一の改変溶媒/補助溶媒の混合物の使用は、抽出/蒸留段階を包含する気体流の微生物醗酵の方法からの酢酸回収を高める可能性がある。
【0021】
本発明により提供される、慣習的醗酵方法からの酢酸回収の他の改良は、選択された改変溶媒/補助溶媒の混合物と細菌細胞を直接接触させることにより、該方法中の酢酸含有培地からの細菌細胞の分離に対する要求を除外しそして/もしくは高価な抽出器の使用に取って替わることを伴う。
【0022】
慣習的醗酵方法、ならびに下述される方法からの酢酸回収の効率のなお他の改良は、抽出に先立ち醗酵ブロスから溶解された二酸化炭素および場合によっては硫化水素を除去することを包含する。
A.改変溶媒および溶媒/補助溶媒の混合物
本発明は、酢酸を含有する水相からの酢酸の抽出に高度に望ましい特徴を表す、改変溶媒および溶媒/補助溶媒の混合物を提供する。本溶媒および溶媒混合物は、非醗酵方法での酢酸の抽出、ならびに嫌気性の酢酸発生微生物、水性栄養培地、ならびに気体流からのエネルギーおよび炭素源を包含する醗酵ブロスからの抽出および蒸留の双方に有用である。
【0023】
本発明の所望の溶媒(略記の目的上、「改変溶媒」)は、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の実質的に純粋な混合物を含んで成る水性流からの酢酸の抽出で有用な水不混和性溶媒と定義される。こうした改変溶媒は、好ましくは、10より大きい、そしてより好ましくは15より大きい分配係数(Kd)を有する。本溶媒は補助溶媒の非存在下で酢酸を抽出することができる。
【0024】
「実質的に純粋な」という用語により、該溶媒が50容量%より多くのジアルキルアミンを含有し、かつ、可能な限り小さいパーセンテージのモノアルキルアミンを有することを意味している。より好ましくは、溶媒は70%より多いジアルキルアミンを含有する。別の好ましい態様においては、溶媒は80%より多いジアルキルアミンを含有する。なおより好ましい一態様においては、溶媒は80ないし100%の間のジアルキルアミンを含有する。こうした実質的に純粋な混合物は該溶媒中にあるパーセンテージ(0.01容量%ないし約20容量%の間の範囲にわたる可能性がある)のモノアルキルアミンをさらに含有する。より具体的には、モノアルキルアミンの含有量は1%未満から約10%までの範囲にわたることができる。いくつかの態様においては、モノアルキルアミンのパーセンテージは約5%から約15%までの範囲にわたる。本発明のなお他の態様においては、溶媒は5容量%未満、そして好ましくは1容量%未満のモノアルキルアミンを含有する。こうした改変溶媒の別の態様は、ある量のトリアルキルアミン(最大で50容量%未満、そして好ましくは約0%のトリアルキルアミンである)を有するものである。いくつかの態様において、40容量%未満の溶媒中のトリアルキルアミンの量。なお別の態様は25容量%未満のトリアルキルアミンを含有する。好ましい一態様は、10容量%未満のトリアルキルアミン、そして好ましくは5容量%未満のトリアルキルアミンを含有する。なお好ましい一態様は約1容量%未満のトリアルキルアミンを含有する。本発明のなお他の溶媒は、可能な限り少ないパーセンテージ(望ましくは25容量%未満ないし約0%)のアルコールを場合によっては含有する。別の態様は10容量%未満のアルコール、望ましくは5容量%未満、そして好ましくは1容量%未満のアルコールを含有する。
【0025】
例えば、1種の望ましい改変溶媒は、約90%の高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物および約10%のトリアルキルアミンを含有する。従って、有用な改変溶媒は、少量のアルコール、モノアルキルアミンおよびトリアルキルアミンを有してよく、そして、本発明の方法における酢酸製造の効率をなお増大させる。
【0026】
上述されたような改変溶媒の一態様は、商業的溶媒の改変、すなわちアルコールおよびモノアルキルアミンを除去して上述されたような本発明の方法に所望の改変溶媒を創製することにより調製してよい。商業的製品アドジェン[Adogen]283(商標)溶媒(ウィトコ コーポレーション(Witco Corporation))は、ジアルキルアミン、すなわちジ(トリデシル)アミンもしくはN−トリデシル−1−トリデカンアミン(CAS番号5910−75−8もしくは68513−50−8)である。実質的に、アドジェン[Adogen]283(商標)溶媒は、モノアルキル、ジアルキルおよびトリアルキルアミンとして分類することが可能である異性体の複雑な混合物である。未改変のアドジェン[Adogen]283(商標)溶媒は、395の平均分子量、および144.0の総アミン値を有し、そして、例えば0.29パーセントのアルコール、5.78パーセントのモノアルキルアミンおよび85.99パーセントのジアルキルアミンを含有する。アドジェン[Adogen]283(商標)溶媒のより高沸点のアミンの質量分析スペクトル解析を下の表Iに示す:
【0027】
【表1】
Figure 0004497724
【0028】
この商業的アドジェン[Adogen]283(商標)溶媒は水相から希酢酸を抽出するための有用な抽出溶媒として認識されているが、本発明まで、当該技術は、アドジェン[Adogen]283(商標)溶媒を蒸留した場合にそれが実質的に変性することができた、すなわち、約40%が蒸留条件下で3時間の期間にわたって酢酸とのアミンの反応により望ましくないアミドに転化され[アルトハウス(J.W.Althouse)とタズラリデス(L.L.Tazlarides)、J.Indus.Eng.Chem.Res.31:1971−1981(1992)]、それによりそれを蒸留を必要とする酢酸回収方法に望ましくなくしていたことを認識していた。上の報告によれば、アドジェン[Adogen]283(商標)溶媒中のアルコールもまた、蒸留温度で酢酸と反応してエステルを形成する可能性がある。さらに、アドジェン[Adogen]283(商標)溶媒もしくはその改変物(modification)は、補助溶媒と組み合わせでもなお、その望ましくないアミド形成のため、蒸留を必要とする方法に既に拒絶されている[リッカー(N.L.Ricker)ら、J.Separation Technol.:36−41(1979)]。
【0029】
従って、本発明の重要な一局面は、発明者らによる、その望ましくない特徴を排除するための高い分配係数(例えば5より大きいかもしくはそれと同等の、そして好ましくは約10ないし20の間のKd)を有するアドジェン[Adogen]283(商標)溶媒のような溶媒の改変方法の決定であった。本発明のさらなる一局面は、蒸留を必要とする酢酸回収方法に適する溶媒混合物を作成するための、選択された補助溶媒との改変溶媒の組み合わせである。アルコールおよびモノアルキルアミンを実質的に除去するもしくはそのパーセンテージを低下させるためのアドジェン[Adogen]283(商標)溶媒の改変は以下のとおり達成される。商業的溶媒を好ましくはワイプドフィルムエバポレーター(wiped-film evaporator)中での蒸留にかけ;そして蒸留された溶媒をその後酸洗浄段階にかける。酸洗浄段階は周囲温度で、好ましくは5未満のpHで希有機酸を使用して達成する。1つの例示的酸は希酢酸(約1〜50g/L、好ましくは30g/L未満、そしてより好ましくは3g/L未満)である。酸は、最低1:1の溶媒に対する希酸の比で一般に使用する。好ましい比は約5:1の酸対溶媒である。蒸留および酸洗浄のこれらの2段階が低沸点有機物質およびモノアルキルアミンを除去する。好ましくは、「低沸点」により、約70torrで約115℃より下、好ましくは約100℃より下を意味している。
【0030】
特定の一例において、実験室のワイプドフィルムエバポレーター中で、1時間あたり56.4gのアドジェン[Adogen]283(商標)溶媒のフィード速度、164.3℃の温度および69.9torrの圧で蒸留を実施した。この方法によりアルコールおよびモノアルキルアミンが分離しそして蒸留カラムの上端部で除去され、(蒸留カラムの底部で除去されるはずである)高度に分枝したジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンの混合物を含有する生じる改変溶媒を残す。この改変溶媒を改変溶媒Aと称した。
【0031】
改変溶媒Aは、0.02パーセントの低沸点有機物質、0.16パーセントのモノアルキルアミン、90.78パーセントのジアルキルアミンおよび9.04パーセントのトリアルキルアミンを含有することを特徴とした。表IIは、未改変のアドジェン[Adogen]283(商標)溶媒、改変溶媒Aおよび上述された方法の結果として除去された画分を構成する画分の(パーセンテージでの)比較を提供する:
【0032】
【表2】
Figure 0004497724
【0033】
このより好ましい改変溶媒Aは約10もしくはより大きい抽出係数を有し、かつ、他の成分のなかでも、それからアルコール含量およびモノアルキルアミンの量を実質的に低下させるよう改変された、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物を含有する。改変溶媒Aは、とりわけ本発明の方法での使用のための優れた酢酸濃縮溶媒である。本改変溶媒の抽出係数は酢酸の濃度が低下するにつれて増大する。
【0034】
改変溶媒Aは、その後、さらに精製して、改変溶媒Bと称されるなお別の望ましい改変溶媒を提供することができる。改変溶媒Aを上と同一の条件下で別の蒸留カラムに導入する。本蒸留は、改変溶媒A中のジアルキルアミンが蒸留されそして蒸留カラムの上端部で除去されることを可能にして改変溶媒Bをもたらす一方、トリアルキルアミンはカラムの底部で除去される。改変溶媒Bはわずかにより良好な抽出係数(10より大きい)、および選択された補助溶媒と組み合わせられる場合の本発明の方法でのなおより良好な性能を特徴とする。
【0035】
商業的アドジェン[Adogen]283(商標)溶媒の改変、ならびに改変溶媒AおよびBに関する本明細書の開示に基づけば、水相からの酸の抽出および蒸留を必要とする方法での使用に適する改変溶媒を創製するために本明細書で記述されるとおり、モノアルキルアミン、アルコール、ならびに、アンバーライト(Amberlite)LA−2 MW=375[ローム アンド ハース(Rohm & Haas)]、およびライジンガー(H.Reisinger)とキング(C.J.King)、Ind.Eng.Chem.Res.34:845−852(1995)に挙げられる他者のような他の成分と一緒に数種のトリアルキルアミンを含む高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物を含有する他の慣習的溶媒を類似に処理してアルコール、モノアルキルアミン、および所望の場合はトリアルキルアミンを実質的に除去してよいことが予期される。当業者は、過度の実験を伴わずにこの教示をこうした他の溶媒に容易に適用することが可能である。
【0036】
本発明の別の局面は、選択された補助溶媒との本発明の改変溶媒の混合物を必要とし、この混合物もまた、酢酸回収のための抽出および蒸留工程での使用に好ましい特徴を有する。広範な非アルコール補助溶媒を、上で同定された改変溶媒ならびに商業的に入手可能なアドジェン[Adogen]283(商標)溶媒との混合状態に選択してよい。アドジェン[Adogen]283(商標)溶媒およびその改変されたバージョン(version)の使用で可能である大きな分配係数のため、広範な補助溶媒をこれらの混合状態で使用してよい。補助溶媒は、混合物中で使用される補助溶媒の画分に比例してKdを単に減少させるだけである。一例として、50%のアドジェン[Adogen]283(商標)溶媒もしくはその改変されたバージョン、および50%のいずれかの型の補助溶媒の混合物は、純粋なアドジェン[Adogen]283(商標)溶媒の半分のKdを有する。この現象は他のアミンを基礎とする溶媒(例えばとりわけアラミン[Alamine]336(商標)溶媒、アドジェン[Adogen]381(商標)溶媒、アドジェン[Adogen]260(商標)溶媒)で真実である一方、これらの後者の純粋な溶媒のKdの値は非常に小さく(1ないし3)、従って補助溶媒での希釈は不経済に小さいKd値(0.5ないし1.5もしくはより小さい)をもたらす。商業的に入手可能なアラミン[Alamine]336(商標)溶媒、アドジェン[Adogen]381(商標)溶媒などのような他の溶媒の使用においては、分配係数を高めるように補助溶媒を慎重に選ばなければならない。
【0037】
dは醗酵槽中の酸濃度(通常は約3〜6g/L)に依存するが、溶媒混合物の所望のKdは望ましくは約1と20との間である。約4.5〜5.5g/Lの酸濃度については、溶媒混合物のKdは望ましくは約8〜11の間である。溶媒混合物のなお別のKdは約6〜20である。しかしながら、係数についての他の値を本発明の実務で使用してよい。
【0038】
溶媒/補助溶媒の混合物は水不混和性でありかつ低温で水から容易に分離しなければならない。選択された補助溶媒は、商業的溶媒もしくは上述された改変溶媒の沸点より低い沸点を有しなければならない。例えば、好ましい補助溶媒は125℃と250℃との間で沸騰する。より好ましくは、補助溶媒は約150℃と200℃との間で沸騰する。一態様において、補助溶媒は約165℃で沸騰する。アルコールは、それらが酢酸と反応してエステルを形成し、そしてまた乳化も引き起こすため、補助溶媒の選択で回避すべきである。選択された補助溶媒は混合物の粘度のような物理的特性を改良する可能性があり、また、溶媒の沸点の低下でもまた補助する可能性がある。適する補助溶媒の選択は、低毒性の補助溶媒はいずれかの水溶解性および醗酵槽への戻しに、また、補助溶媒が細菌と接触するであろう場合に不可欠であることをさらに考慮に入れ、当業者により行うことができる。明らかに、選択された補助溶媒は細菌により耐えられることが可能でなければならない。
【0039】
本発明の溶媒混合物での使用に好ましい補助溶媒は、蒸気の形態にある場合に水および酢酸と共沸混合物(すなわち容易に分離されずかつ「1つのものとして」挙動する混合物)を形成するものである。共沸する補助溶媒は成分の最低1つ、例えば水の揮発性を高める。共沸混合物の形成は、補助溶媒および水/酢酸が蒸気として蒸留カラムの上へそしてその上端部から一緒に(実質的に1つのものとして)動くことを可能にする。蒸気が凝縮される場合に補助溶媒および酢酸/水が分離する。下述される蒸留方法において、これは、補助溶媒がデカンテーションされそして第一の蒸留カラムに戻されることを可能にする。酢酸および水(ならびに若干の残余の補助溶媒)はその後酢酸回収のために第二の蒸留カラムに進むことができる。共沸する補助溶媒の主要な利点は、それが、共沸しない補助溶媒に必要とされる3個よりはむしろ2個の蒸留カラムでの酢酸回収を可能にすることである。
【0040】
必要とされる特徴を表す数種の補助溶媒は、酢酸と共沸混合物を形成する低沸点炭化水素補助溶媒を包含する。とりわけ、この記述に合う望ましい補助溶媒は、アルカン、とりわけC−9ないしC−11の範囲にあるものを包含する。こうした有用な補助溶媒のなかにn−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、エーテル、およびオルフォム[Orfom](商標)SX−18(商標)溶媒(フィリップス マイニング インク(Phillips Mining,Inc.))(すなわちC9−C11イソアルカンの混合物である)がある。本発明の改変溶媒との混合物に有用ななお他の補助溶媒は、とりわけ、上で引用されかつ引用により本明細書に組み込まれるアルトハウス(Althouse)(1992)の表3、1976ページに列挙される非アルコール溶媒を包含する。
【0041】
こうした補助溶媒は、上述されたような改変ジアルキルアミン溶媒と混合される場合に、とりわけ溶媒系が真空下で蒸留される場合に溶媒系の沸点を低下させることができる。低下された沸騰温度はまた、ジアルキルアミンからのアミド形成も予防もしくは制限する。こうした溶媒/共沸する補助溶媒の混合物は、蒸留工程を2個のカラムで実施することを可能にする。一般に、溶媒/補助溶媒の混合物中の改変溶媒の量は、混合物中で約10から約90容量%までの範囲にわたることができる。望ましくは、本発明の改変されたジアルキルアミン含有溶媒の量は、溶媒/補助溶媒の混合物の約30ないし約70容量%の間である。好ましい態様において、改変溶媒は約60容量%で混合物中に存在する。本発明の改変溶媒/補助溶媒の混合物を形成するためには最低10%の補助溶媒が必要である。補助溶媒の量は約10から約90%まで;より望ましくは約30から約70容量%までの範囲にわたることができる。好ましい態様において、改変溶媒は約40容量%で混合物中に存在する。従って、本発明の1種の好ましくかつ例示的な溶媒/補助溶媒の混合物は、60%の改変溶媒Aおよび40%のオルフォム[Orfom](商標)SX18溶媒を含んで成る。
【0042】
当業者は、いかなる特定の蒸留装置もしくは方法に所望のように改変溶媒および補助溶媒のパーセンテージを調節することが可能であると期待される。所望の混合物を調製するための補助溶媒に対する改変溶媒の比率に対する調節は、改変溶媒および補助溶媒の正体(identity)および含有量、それらの相対的分配係数、それらの粘度、ならびに熱の利用可能性、装置の大きさおよび2種の溶媒成分の相対的費用のような実際的考慮のような因子に基づくであろう。例えば、最良の抽出係数は高アミン含量と相関するようであり、これは溶媒系の費用を増大させる。従って、いくつかの用途については、高費用が改変溶媒/補助溶媒の所望の比率に影響するとみられる。また、その粘度および沸点(その双方は補助溶媒で低下される)が混合物中の改変溶媒の上限値を制限する。
【0043】
一例として、SX−18補助溶媒は、改変溶媒混合物の分配係数を比例して低下させる(例えば、SX−18溶媒中の50%の改変溶媒Aは100%の改変溶媒Aの分配係数の半分を有するが、しかし、補助溶媒の存在による低下された粘度および増大された回収する能力のため作業するのがより容易である)。補助溶媒SX−18は約160〜167℃の間で沸騰し、そして従って混合物の沸点もまた低下させ、それによりアミド形成を低下させる。当業者は、改変溶媒および補助溶媒のいかなる所望の混合物も調製するためにこれらの因子の均衡を保つ能力を有すると期待される。
【0044】
本発明の改変溶媒/補助溶媒の混合物の望ましい特徴は、酢酸の抽出および蒸留工程での使用のためにそれらにとりわけ合う。抽出に関しての本発明の溶媒混合物の望ましい特性は、高い抽出係数(すなわち約3もしくはそれ以上、そして好ましくは約10もしくはそれ以上)、水との混合不可能性、良好な水/溶媒の分離、細菌培養物に対する低毒性、水の粘度および密度とのその明瞭な差異、ならびにエタノール、塩および水のような醗酵の他の生成物を上回る酢酸に対する良好な選択性を包含する。蒸留に関しての本発明の溶媒および溶媒混合物の望ましい特性は、例えば、酢酸(すなわち118℃)と補助溶媒(例えば165℃)との間の明確な沸点の差異を包含する。これらの差異は本発明の方法の実施でもまた有用である。なぜなら、これらの成分の沸点の間の差異が大きくなるほど蒸留カラムを小さくすることができ、酢酸回収工程の効率および費用の向上をもたらすからである。
【0045】
重要なことには、本発明の改変溶媒/補助溶媒の混合物の使用は、熱もしくは反応による変性(例えば酸化)による無視できる溶媒損失だけを伴う。例えば図4および実施例2を参照されたい。溶媒および補助溶媒は、酢酸、培地成分、生物材料、および水相もしくは培地中の他の未知のものとの制限された反応性、ならびに水との低い混和性もまた特徴とする。望ましくは、溶媒/補助溶媒を使用するための本発明の方法は、酢酸および溶媒/補助溶媒がアミド(本発明の新規改変溶媒および溶媒混合物中のアミンに伴う反応から形成される可能性がある)のような望ましくない副生成物を形成するいかなる傾向も低下もしくは実質的に排除する。
【0046】
当業者は、本明細の教示に照らして、および上に示された因子に関して利用可能な知識に関して、本発明の溶媒/補助溶媒の混合物を改変することが容易に可能であろうことが期待される。こうした改変は付属として付けられる請求の範囲の範囲により包含されると考えられる。
B.酢酸回収における新規溶媒/補助溶媒の混合物の使用
本発明の方法は、上述された改変溶媒/補助溶媒の混合物、および望ましくないアミドの形成を回避するための特定の工程段階を使用する。改変溶媒/補助溶媒の混合物の使用は、非醗酵手順もしくは微生物醗酵方法のどちらでも水相からの酢酸の改良された回収を可能にする。
【0047】
従って、本発明の一態様により、水相から酢酸を得るための非醗酵手順は、上述された改変溶媒/補助溶媒の混合物を使用してよい。こうした方法は、水相からの酢酸が溶媒相中に抽出されることを可能にするために、第一段階として、上述されたような改変されたジアルキルアミン溶媒/補助溶媒の混合物を含んで成る溶媒混合物との水相の連続的接触を使用する。この段階は、カラム、混合タンクおよび沈降タンクのような慣習的抽出装置、ならびに、抽出のために設計されかつ当該技術分野で公知の類似の装置を使用してよい。加えて、抽出条件は当該技術分野の教示に頼ることによってもまた至適化することができる。抽出温度は望ましくは周囲温度、すなわち約20℃ないし約80℃である。約80℃でいかなる二酸化炭素も溶媒から実質的に全部放出されるが、しかし抽出はなお効率的である。
【0048】
その後、溶媒中のアミンのアミドへの転化を低下させる蒸留温度下で酢酸を溶媒相から蒸留する。本明細書で使用されるところの蒸留温度はカラムの底部の温度を意味する。本発明によれば、蒸留温度は、アミド形成を低下させるために約115℃から約160℃までの範囲にわたってよい。より重要には、本発明の方法は、酢酸回収を可能にする一方でアミド形成を制限するために、蒸留温度が130℃より下であることを必要とする。
【0049】
好ましい一態様において、蒸留段階は酸素を含まない真空下で実施され、これは溶媒もしくは溶媒/補助溶媒の混合物のアミド形成および酸化分解を最小限にするように温度を低下させるのにもまた役立つ。真空が大きくなるほど(すなわち絶対圧が低くなるほど)温度が低下し、そしてアミド形成および酸化分解が小さくなる。望ましくは、10psia未満の真空が本段階に必要とされる。好ましくは、真空は、蒸留段階について約0.1psiaと5psiaとの間から選択される。より好ましくは、酢酸回収を高めるために、4psiaもしくはそれより低い真空が本蒸留段階で有用である。今までのところ、本発明の改変溶媒/共沸する補助溶媒の混合物の使用のさらなる一利点は、従来技術の方法に比較して水相からの酢酸回収の効率を高める2個の蒸留カラムの使用である。
【0050】
溶媒の変性を制限するための本発明の方法における蒸留温度の制御は、補助溶媒の選択、補助溶媒に対する溶媒の比、および蒸留段階の真空の条件のような因子の組み合わせにより達成することができる。本明細の教示を考えれば、当業者は、蒸留温度を必要とされるとおり制御するように因子の適切な組み合わせを選択することができる。例えば、当業者は、本発明の溶媒のアミド形成および酸化分解を最小限にしつつ酢酸回収の所望の効率を達成するように、上の範囲内の蒸留段階の温度および真空の条件を容易に調節することができる。こうした改変は付属として付けられる請求の範囲内に包含される。
【0051】
本発明のなお別の態様によれば、酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法は、酢酸回収の効率を高めるために本発明の改変溶媒/補助溶媒の混合物を使用する。本方法において、嫌気性の酢酸発生微生物、栄養素の供給源を含んで成る水性流、および一酸化炭素もしくは二酸化炭素または水素の多様な混合物を含有する気体を含むバイオリアクター中で醗酵することにより、他の成分のなかでも酢酸を含有する醗酵ブロスが形成される。従って、一態様において、気体流は一酸化炭素を含有する。別の態様において、気体流は二酸化炭素および水素を含有する。なお別の態様において、気体流は二酸化炭素、一酸化炭素および水素を含有する。なお別の態様において、気体流は一酸化炭素および水素を含有する。こうした気体は、多様な工業的工程の廃ガスから望ましく得ることができる。
【0052】
また、挙げられたとおり、醗酵ブロス中には嫌気性の酢酸発生細菌および細菌の成長に必要な栄養培地が存在する。嫌気性細菌は、制限なしにアセトバクテリウム キブイ(Acetobacterium kivui)、アセトバクテリウム オーディイ(Acetobacterium woodii)、ブチリバクテリウム メチロトロフィクム(Butyribacterium methylotrophicum)、クロストリジウム アセチクム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム フォルモアセチクム(Clostridium formoaceticum)、クロストリジウム クルイベリ(Clostridium kluyveri)、クロストリジウム テルモアセチクム(Clostridium thermoaceticum)、クロストリジウム テルモセルム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム テルモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)、クロストリジウム テルモサッカロリチクム(Clostridium thermosaccharolyticum)、ユーバクテリウム リモスム(Eubacterium limosum)、ペプトストレプトコッカス プロデュクツス(Peptostreptococcus productus)およびクロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)、ならびにそれらの混合物を包含する1種の株の細菌、または酢酸発生細菌の2種もしくはそれ以上を含有する混合培養物であることができる。とりわけ望ましい酢酸発生細菌は、発明者らにより既に発見された株、すなわちC.ルジュングダーリイ(C.ljungdahlii)株PETC ATCC 49587(この菌株は、当該寄託機関からの求めに応じ、再寄託され新たな受託番号ATCC 55383が付与されている。)、株O−52 ATCC 55989、株ERI2 ATCC 55380および株C−01 ATCC 55988、ならびにそれらの混合物である。これらの酢酸発生細菌は、アメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)、10801 University Boulevard、ヴァージニア州マナサス 20110−2209のような寄託機関、または商業的もしくは教育的機関から一般に入手可能である。上記のように同定された微生物は、特許目的上の微生物の寄託に関するブダペスト条約(the Budapest Treaty for the Deposit of Microorganisms for Patent Purpose)に準拠して寄託され、そしてこうした寄託物は全部のその要件に従う。
【0053】
栄養素は醗酵槽に連続的に供給される。こうした醗酵ブロスで有用な栄養培地は慣習的であり、そしてこうした酢酸発生細菌の成長に不可欠であることが既知の栄養素を包含する。大気圧での酢酸発生細菌の成長のための、および硫化物に基づく例示的栄養培地組成(培地Aおよび培地B)を以下の表IIIに具体的に説明する。しかしながら、栄養培地の多くの異なる処方を異なる濃度の成分で使用してよい。当業者は、本明細書に記述される方法に適する他の栄養培地を容易に処方することができる。表IIIの処方は単に1つの適する処方にすぎない。
【0054】
【表3】
Figure 0004497724
【0055】
【表4】
Figure 0004497724
【0056】
醗酵のための栄養素および他の条件の選択は、現存する知識に頼って当業者により容易になされることができ、そして、使用される微生物、装置の大きさおよび型、使用されるタンクおよびカラム、気体流もしくはエネルギー源の組成などのような多様な因子に依存してよい。こうしたパラメータは、本発明の教示を考慮して当業者により容易に選択されることができ、そして本発明の制限でない。
【0057】
醗酵が起こる際に不活性ガスおよび未反応の基質ガスを含有する排気ガスが放出され、そして、浮遊して運ばれる微生物を分離しそして好ましくはそれらを醗酵槽に戻すために、液体の醗酵ブロスもしくは排出物が遠心分離器、中空繊維膜もしくは他の固−液分離装置に進められる。
【0058】
その後、醗酵ブロスからの実質的に細胞を含まない水性流(下で「細胞を含まない流れ」)が、抽出器中の改変溶媒/補助溶媒の混合物での抽出にかけられる。溶媒対フィード比(細胞を含まない流れの体積に対する溶媒の体積の比)は、例えばほぼ0から10まで大きく変動する可能性がある。溶媒対フィード比が小さくなるほど、溶媒中の酸の濃度は大きくなり、そして溶媒の要求は小さくなる。本発明により、モノアルキルアミンを除去するように改変された高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物を含んで成る溶媒、および選択された補助溶媒、例えば上述された低沸点炭化水素補助溶媒の混合物を抽出段階で使用する。上の態様で記述されたとおり、本抽出は溶媒混合物の粘度に依存して、約20℃ないし約80℃の間の温度で維持される。本抽出段階は細胞を含まない流れから酢酸を取り出し、そして、栄養培地および水相中の他の物質(バイオリアクターに再循環される)から溶媒、非常に少量の水および酢酸を包含する相への酢酸の分離を可能にする。加えて、培地からのSe、Mo、WおよびSのような数種の成分が溶媒中に抽出される。
【0059】
該方法のなお別の段階は、抽出生成物の溶媒および水から酢酸および水成分を連続的に蒸留することを必要とする。本段階を達成するため、溶媒/酸/水の溶液が第一の蒸留カラムに進み、ここでこの溶液は溶媒中のアミンのアミドへの転化を低下させる温度に加熱される。上述されたとおり、蒸留温度は、溶媒の変性およびアミド形成を制限しつつ酢酸回収を可能にするために115℃ないし約160℃の最高温度の間の範囲にわたらなければならない。好ましくは、蒸留段階の温度は、アミド形成を予防するために約130℃を越えない。本発明の重要な一利点は、溶媒のアミンをアミドに実質的に変性することを伴わずに抽出および蒸留段階が起こり、そしてそうして培地からの酢酸回収の効率を高めることである。
【0060】
本発明の溶媒/補助溶媒の混合物が共沸する補助溶媒を使用する場合は、この方法で使用される蒸留カラムはより効率的に稼働する。共沸混合物の形成は、補助溶媒および酸/水が蒸留段階の間に第一の蒸留カラムの上へそしてその上端部から一緒に(実質的に1つのものとして)動くことを可能にする。液体の形態で補助溶媒および酢酸/水が分離する。分離されれば補助溶媒を蒸留カラム中に再導入することができる。その後、酢酸および水(ならびに若干の残余の補助溶媒)が第二の蒸留カラムに進み、そこで補助溶媒は再度水および酸と共沸混合物を形成し、そして3種の成分がカラムの上端部から蒸気として流れる。蒸気が凝縮されそして液体の大部分が還流される。凝縮された液体は少量の補助溶媒を含有するため、少量の流れが溶媒蒸留カラムに連続的に戻される。生成物の酢酸は第一の理論段、すなわち溶媒および酸が分離するカラムの部分のすぐ上で引き出される。
【0061】
本方法の好ましい一態様は酸素を含まない真空下で蒸留段階を実施することを必要とし、これはまた温度を低下させかつ溶媒もしくは溶媒/補助溶媒の混合物の酸化分解を回避するのにも役立つ。真空が大きくなるほど(すなわち絶対圧が低くなるほど)温度が低下し、そしてアミド形成および酸化分解が少なくなる。上述されたとおり、真空は好ましくは10psia未満である。望ましくは約0.1psiaと5psiaとの間の真空が蒸留段階で有用である。より好ましくは、4psiaもしくはそれより低い真空が、溶媒/酸/水の混合物の沸点をさらに低下させるために本蒸留段階で有用であり、アミド形成をさらに低下させそして酢酸回収をさらに高める。今までのところ、本発明の改変溶媒/共沸する補助溶媒の混合物の使用のさらなる一利点は、従来技術の方法に比較して水相からの高められた酢酸回収を達成する2個の蒸留カラムの使用である。
【0062】
溶媒の変性を制限するための本発明の方法における蒸留温度の制御は、補助溶媒の選択、補助溶媒に対する溶媒の比、および蒸留段階の真空の条件のような因子の組み合わせにより達成することができる。本明細の教示を考えれば、当業者は蒸留温度を必要とされるとおり制御するための因子の適切な組み合わせを選択することができる。例えば、当業者は、本発明の酢酸回収の所望の効率を達成するように上の範囲内の蒸留段階の温度および真空の条件を容易に調節することができる。こうした改変は付属として付けられる請求の範囲内に包含される。
C.抽出的醗酵および直接接触抽出の方法
本発明のなお別の態様により、上述された新規の改変溶媒/補助溶媒の混合物は、「直接接触抽出」および「抽出的醗酵」の方法、すなわち、上述された酢酸回収のための嫌気的醗酵の製造方法の改変で有用である。該方法の改変は、抽出もしくは蒸留に先立つ細菌細胞の分離の必要性を伴わずに微生物醗酵を介する酢酸の製造を可能にする。さらに、これらの溶媒混合物は、酢酸の微生物醗酵で使用される場合に別個の抽出器の使用の必要性を排除することができる。本発明は、方法の複雑さを減少させることに加えて、資本、酢酸製造の工程を実施するのに必要とされる装置の稼働および維持の費用、ならびに生成物を得るための時間を減少させる。
【0063】
従って、本発明の「抽出的醗酵」方法は、酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法を提供し、これは上述された方法の改変である。第一段階として、嫌気性の酢酸発生細菌の成長に必要な適する栄養素混合物中に該細菌を含有するバイオリアクターもしくは醗酵槽を、細菌を溶媒の存在に順化する、すなわち細菌が溶媒の存在下で成長することを可能にするのに十分な時間の間、約37℃かつ最低約1大気圧(すなわち14.7psia)で、上述された改変溶媒/補助溶媒の混合物と接触させる。嫌気性細菌は、1種の株の細菌、または2種もしくはそれ以上の株の酢酸発生細菌を含有する混合培養物であってよく;上にB部に列挙された細菌株もまた本発明のこの改変で使用してよい。多くの溶媒が細菌の成長に対し毒性であるため、細菌と溶媒との間の直接接触を必要とする本発明の本局面は溶媒混合物に対する細胞の順化を反映し、それは、時間にわたって細胞と溶媒混合物との間の接触を徐々に増大させることにより得られる。
【0064】
その後、栄養素の供給源を含んで成る水性流、および一酸化炭素もしくは二酸化炭素または水素の多様な混合物を含有する気体を醗酵槽に導入する。従って、一態様において気体流は一酸化炭素を含有する。別の態様において気体流は二酸化炭素および水素を含有する。なお別の態様において、気体流は二酸化炭素、一酸化炭素および水素を含有する。なお別の態様において、気体流は一酸化炭素および水素を含有する。上のとおり、これらの気体は工業的廃ガスから得ることができる。本段階に従い、他の成分のなかでも酢酸、溶媒、細菌細胞および水を含有する醗酵ブロスが形成される。
【0065】
栄養素は醗酵槽に連続的に供給される。特定の栄養素、培地、ならびに醗酵のための温度および圧などの他の条件の選択は、本発明の教示を考えれば当業者により容易になされることができ、そして、使用される微生物、装置の大きさおよび型、使用されるタンクおよびカラム、気体流もしくはエネルギー源の組成、気体保持時間、ならびに醗酵槽中の液体保持時間などのような多様な因子に依存することができる。こうしたパラメータは当業者により容易に均衡を保ちかつ調節されることができ、そして本発明の制限となるとみなされない。
【0066】
醗酵が起こる際に、不活性ガスおよび未反応の基質ガスを含有する排気ガスが放出される。醗酵ブロス内での溶媒の存在は、より重い細菌および栄養培地、ならびに水相中の他のより重い物質から、酢酸および少量の水をより軽い「溶媒相」に連続的に分離する。細胞を含まない流れおよび溶媒の混合物が沈降タンク中に連続的に取り出され、ここではより軽い溶媒相が単純に重力のはたらきによりより重い水相からデカンテーションされる。他の固−液分離方法は使用されない。より重い相はバイオリアクター/醗酵槽に再循環され、そして溶媒、少量の水および酢酸の溶液を包含するより軽い相は第一の蒸留カラムに進む。
【0067】
上述されたとおり、この溶液は、溶媒中のアミンのアミドへの転化を最小限にする酢酸回収のための温度に加熱される。好ましくは、蒸留段階の温度は、アミド形成を予防するために約160℃、そしてより好ましくは130℃を越えない。本発明の重要な一利点は、蒸留段階が溶媒のアミンをアミドに実質的に品位を低下することなく起こり、そして従って酢酸製造の効率を高めることである。
【0068】
本発明の溶媒/補助溶媒の混合物が共沸する補助溶媒を使用する場合、該方法で使用される蒸留カラムはより効率的に稼働する。共沸混合物の形成は、補助溶媒および酸/水が蒸留段階の間に第一の蒸留カラムの上へそしてその上端部から一緒に(実質的に1つのものとして)動くことを可能にする。液体の形態で補助溶媒および酢酸/水が分離する。分離されれば補助溶媒を蒸留カラムに再導入することができる。その後、酢酸および水(ならびに若干の残余の補助溶媒)が第二の蒸留カラムに進み、そこで補助溶媒が再度水および酸と共沸混合物を形成し、そして3種の成分がカラムの上端部から蒸気として流れる。蒸気が凝縮されそして液体の大部分が還流される。凝縮された液体は少量の補助溶媒を含有するため、少量の流れが溶媒蒸留カラムに連続的に戻される。生成物の酢酸は第一の理論段のすぐ上で引き出される。
【0069】
本方法の好ましい一態様は、上述されたような酸素を含まない真空下で蒸留段階を実施することを必要とし、これは溶媒もしくは溶媒/補助溶媒の混合物の温度を低下させそして酸化分解を回避するのにもまた役立つ。真空が大きくなるほど(すなわち絶対圧が低くなるほど)温度が低下し、そしてアミド形成および酸化分解が少なくなる。望ましくは、10psia未満の真空、望ましくは約0.1psiaと5psiaとの間、そしてより好ましくは4psiaもしくはそれより低い真空が、溶媒/酸/水の混合物の沸点をさらに低下させるために本蒸留段階で有用であり、アミド形成をさらに低下させかつ酢酸回収をさらに高める。今までのところ、本発明の改変溶媒/共沸する補助溶媒の混合物の使用のさらなる一利点は、従来技術の方法に比較して水相からの酢酸回収の高められた効率を達成する2個の蒸留カラムの使用である。
【0070】
溶媒の品位低下を制限するための本発明の方法での蒸留温度の制御は、補助溶媒の選択、補助溶媒に対する溶媒の比、および蒸留段階の真空の条件のような因子の組み合わせにより達成することができる。本明細の教示を考えれば、当業者は、必要とされるとおり蒸留温度を制御するための因子の適切な組み合わせを選択することができる。例えば、当業者は、本発明による酢酸回収の所望の効率を達成するために、上の範囲内で蒸留段階の温度および真空条件を容易に調節することができる。こうした改変は付属として付けられる請求の範囲内に包含される。
【0071】
本発明の一代替「直接接触抽出」法においては、抽出に先立つ濾過もしくは遠心分離により酢酸および水から細胞性物質を分離するよりもむしろ、細胞を含有する醗酵ブロス全体を抽出器中に直接導入する。連続相として溶媒相もしくは水相のいずれかを含むカラムは慣習的抽出装置の1つである。これらのカラムは溶媒および水相の培養物のための入口および出口もまた有する。細菌細胞を包含する醗酵ブロスは溶媒が充填されたカラムを通って下向きに流れ、そして溶媒はブロスに向流に上向きに流れる。水が充填されたカラムを用いて逆の流れもまた起こることができる。これらのカラムはカラム中の充填物の型およびそれの大きさに依存して異なる。あるいは、混合タンクおよび沈降タンクのような他の抽出装置が、同一の仕事(task)を達成するために使用されることができ、そして本明細書で教示されるような本段階を達成するための過度の実験を伴わずに当業者により容易に選択される。
【0072】
溶媒の存在は、細菌および栄養培地、酢酸塩、少量の酢酸、ならびに水相中の他のより重い物質を含有するより重い相から、酢酸および少量の水を「溶媒相」に連続的に分離する。酢酸および少量の水を含有する溶媒相は連続的に取り出されかつ第一の蒸留カラムに進められ、そしてその後、すぐ上の態様で記述されたとおりにさらに蒸留される。細胞性物質を含有する水相は抽出器の底部から出る。水相および溶媒相は実質的に混合不可能であるため、それらはまた重量のはたらきにより補助されてカラムに沿って自然に分離する。他の固−液分離方法は使用されない。より重い水相はバイオリアクター/醗酵槽に再循環される。培養物/溶媒の界面で形成されるいかなる細胞性もしくはタンパク質性の物質も抽出器から定期的に除去する。溶媒もしくは水の流れの多様な速度および方向は、選択された抽出器の型に依存して調節することができる。
【0073】
最初に上述された抽出的発酵法の一例を実施例6に表す。直接接触抽出法の例を実施例4(溶媒が充填されたカラムを使用する)および実施例5(水が充填されたカラムを使用する)に示す。水が充填された系は、溶媒を充填された系よりも少ない溶媒を必要とする、溶媒が充填されたカラムに対するより安価な代替である。双方のカラムは商業的代替である
当業者は、本発明の抽出的醗酵および直接抽出の方法が本発明の範囲から離れることなく機能する特定の条件を容易に変更すると期待される。
D.二酸化炭素ストリッピング
本発明のなお別の態様に従えば、酢酸もしくは別の生成物(例えばアルコール、塩など)を製造するための気体流(とりわけ、一酸化炭素、一酸化炭素および水素、ならびに場合によっては二酸化炭素、もしくは二酸化炭素および水素を含有する気体流)の微生物醗酵の方法は、いかなる二酸化炭素および場合によっては(硫化水素の形態の)イオウの存在も醗酵ブロスから実質的に減少させることによりその効率を増大させるように改変することができる。従来技術(PCT第WO98/00558号を参照されたい)のものもしくは本明細書に教示されるもののような、こうした気体の微生物醗酵では、醗酵槽/バイオリアクターから出る気体流および方法中の次の段階へ醗酵槽/バイオリアクターから出る液体醗酵ブロスの双方に、二酸化炭素および硫化水素が存在する。例えば、醗酵槽中で6大気圧(約75psig)で、出口気体は約50パーセントのCO2および700ppmのH2Sを含有し、そして醗酵ブロスはおよそ3g/LのCO2および0.01g/LのH2Sを含有する。抽出の間にCO2およびH2Sは溶媒により酢酸と一緒に除去される。これは、慣習的アミン溶媒を使用する方法、ならびに本発明に記述される改変溶媒/補助溶媒の混合物の使用について真実である。
【0074】
溶媒中に抽出される何かが酸に対する溶媒の能力を低下させる。醗酵ブロス中のCO2の濃度は醗酵ブロス中の酢酸の濃度(5g/L)に類似であるため、それは溶媒中の酢酸負荷に対する真の脅威を表す。従って、醗酵ブロス中に存在するCO2が酢酸についての溶媒の負荷能力を制限する。硫化水素は、その低濃度のため酢酸負荷に対する重大な脅威ではないが、しかし、H2Sは硫化物イオンとして培養物の必須の栄養素である。醗酵槽からの醗酵ブロス中のイオウの除去は醗酵槽中の細菌にとって利用可能なイオウもまた減少させる。反応器からの排気ガスは硫化水素を有し、そして従って実質的にイオウを除去しているようであるが、イオウを抽出させることは栄養素としてのイオウの費用を増大させる。同様に、二酸化炭素は水素の酢酸への転化に必要とされるため、製造工程の間の醗酵ブロスでのその除去は水素の利用を低下させる。
【0075】
従って、本発明は、該方法の一段階として抽出に先立つ醗酵ブロスからの二酸化炭素の除去を包含することによる、酢酸の製造のための気体の微生物醗酵の改良方法を提供する。任意の、しかし望ましい一段階は、抽出に先立つ醗酵ブロスからの硫化水素の除去を必要とする。好ましくは、二酸化炭素および硫化水素の双方が醗酵ブロスから除去され、そして場合によっては醗酵槽に戻される。
【0076】
本方法の一態様は、醗酵ブロス(細菌細胞、酢酸、栄養培地、塩、および醗酵からの他の成分から構成することができる)もしくは細胞を含まない流れ(細菌細胞および他のより重い物質の大部分をそれから除去するために最初に濾過もしくは遠心分離されていてもよい)を、二酸化炭素を欠きそして好ましくは硫化水素を欠く「ストリッピング」ガス流と接触させることを必要とする。この「ストリッピング」ガスは、制限なしに、窒素、ヘリウム、アルゴン、メタン、もしくはそれが二酸化炭素をほとんどないし全く含有せずかつ好ましくは硫化水素を含有しない場合は独創的な希釈ガスを包含することができる。実質的に、いかなる非反応性のガスもしくは非反応性ガスの混合物もこの情況で有用である。醗酵槽から出る醗酵ブロスもしくは細胞を含まない流れへのストリッピングガス(例えばN2)の導入は、液相および気相中の溶解されたCO2(もしくはH2S)との間の平衡を逆転させ、そして液相から気体をストリッピングする。ストリッピングガスとの好ましい接触方法は向流のストリッパーカラム中でである。醗酵槽から出る醗酵液体中に溶解されているCO2(もしくはH2S)ガスの間に平衡が存在する正にそのように、向流カラムに進入する培地もしくは細胞を含まない流れとそれから離れる気体との間にもまた平衡が確立される。ストリッピングガスおよびCO2を負荷された(laden)醗酵ブロスもしくは細胞を含まない流れが相互に接触する際に、ストリッピングガス(例えばN2)と水中のCO2との間の平衡が連続的に更新される。カラム中の充填物は液体とストリッピングガスとの間の十分な表面積を確実にする。
【0077】
底部で向流カラムから出る液体はそのCO2濃度を大きく低下させているが、入ってくる新鮮な窒素ストリッピングガスは水中でCO2との平衡に達する完全な能力を有する。窒素が最後にストリッパーカラムの上端部を離れる場合に、それはCO2(およびH2S)で飽和されている。CO2(もしくはH2S)を負荷された窒素を、CO2およびH2Sを除去するもしくは醗酵槽に戻して再循環するために洗浄することができる。その後、「ストリッピングされた」もしくは洗浄された醗酵ブロスもしくは細胞を含まない流れが、酢酸製造方法の次の段階、例えば溶媒での抽出もしくは上述された直接抽出方法での溶媒との接触、および蒸留に進入する。例えば図3の図解および実施例6Aを参照されたい。
【0078】
本発明の本局面のなお別の態様が、二酸化炭素ストリッピングの方法を変更することにより提供される。実施例6Cに例示されるとおり、本方法は、抽出器もしくは溶媒抽出カラムへの導入に先立ち、醗酵ブロス(細菌細胞、酢酸、栄養培地、塩、および醗酵からの他の成分から構成することができる)もしくは細胞を含まない流れ(細菌細胞および他のより重い物質の大部分をそれから除去するために最初に濾過もしくは遠心分離されていてもよい)を圧の迅速な低下にさらすことを必要とする。例えば、醗酵ブロスもしくは細胞を含まない流れの圧は、6大気圧(もしくはそれ以上)からより低い圧(例えば大気圧)に減少させることができ、これは、培地もしくは細胞を含まない流れの中の二酸化炭素をその平衡濃度に近づけさせる。好ましくは、この圧の減少は、醗酵ブロスもしくは細胞を含まない流れが醗酵槽から出そして分離容器中に入った後に発生する。CO2は、好ましくは醗酵槽に戻して再循環される。
【0079】
その後、「ストリッピングされた」醗酵ブロスもしくは細胞を含まない流れは、酢酸製造方法の次の段階、例えば溶媒での抽出、もしくは上述された直接抽出方法での溶媒との接触、および蒸留に進入する。例えば実施例6Cを参照されたい。
【0080】
二酸化炭素ストリッピングの方法を変更することにより、本発明の本局面のなおさらなる一態様が提供される。実施例6Dに例示されるとおり、本方法は、醗酵ブロス(細菌細胞、酢酸、栄養培地、塩、および醗酵からの他の成分から構成することができる)もしくは細胞を含まない流れ(細菌細胞および他のより重い物質の大部分をそれから除去するために最初に濾過もしくは遠心分離されていてもよい)を醗酵槽から取り出すこと、および、ブロスもしくは細胞を含まない流れを抽出に先立ち約80℃もしくはそれ以上の温度に加熱することを必要とする。高温はブロスもしくは細胞を含まない流れの中の二酸化炭素をその平衡濃度に近づけさせる。CO2およびH2Sは、好ましくは多様な普遍的工学方法を介して醗酵槽に再循環する。
【0081】
その後、「ストリッピングされた」醗酵ブロスもしくは細胞を含まない流れは、酢酸製造方法の次の段階、例えば溶媒での抽出、もしくは上述された直接抽出方法における細胞との接触、および蒸留に進入する。例えば実施例6Dを参照されたい。該方法の本改変の唯一の欠点は、細菌に対する加熱温度の殺す影響により、抽出後の水性培地成分を醗酵槽に戻して再循環することができず、そして廃棄しなければならないことである。
【0082】
当業者は、二酸化炭素および場合によっては硫化水素のストリッピングが起こる特定の条件を、本発明の範囲から離れて容易に変更することが期待される。
【0083】
【実施例】
以下の実施例は本発明の多様な局面を具体的に説明し、そして本発明を制限せず、その範囲は付属として付けられる請求の範囲に具現化される。
実施例1:本発明の溶媒/共沸する補助溶媒の混合物を使用する醗酵生成物流からの酢酸の回収
A.60%改変溶媒Aおよび40%オルフォム[Orfom](商標)SX−18補助溶媒
多様な水性気体流から酢酸を製造するための装置および方法は、本明細書に引用により組み込まれる公開された国際特許出願第PCT WO98/00558号に詳細に記述されている。その中に記述される方法を以下のとおり本発明の一局面に従って改変する。
【0084】
45%一酸化炭素、45%水素および10%二酸化炭素を含有する気体流を、C.ルジュングダーリイ(C.ljungdahlii)株ERI2および適する栄養培地を含有する連続攪拌タンク醗酵槽に導入した。pH4.75で5g/lの遊離酢酸および5g/lの酢酸塩を含有する細胞の再循環(すなわち中空繊維膜を利用する細胞分離)を含む醗酵槽からの液体生成物流(すなわち細胞を含まない流れ)を、多段向流抽出カラムに送った。細胞を含まない流れは、抽出カラムで、37℃の温度でかつ0.09(v/v)の溶媒対フィード比を使用して、60%改変溶媒Aおよび40%オルフォム[Orfom](商標)SX−18補助溶媒を含有する本発明の溶媒/補助溶媒の混合物と接触される。抽出器から出る溶媒は50g/lの酢酸を含有し、また、水性流(再循環として醗酵槽に戻し送られた)は5g/lの酢酸塩および0.5g/lの酢酸を含有した。
【0085】
改変溶媒/補助溶媒および酢酸を含有する溶媒流を、第一の「溶媒」カラム、アキュムレーターおよび第二の「酸」カラムを含有する蒸留系に送った。第一の蒸留カラムの操作において、低沸点補助溶媒および0.3大気圧の穏やかな真空の組み合わせは、カラム温度が最低限にされることを可能にし、また、カラムの底部にとどまる改変溶媒Aおよび若干の補助溶媒からのオーバーヘッド生成物中での酸、水および補助溶媒の分離を可能にする。底部温度は真空操作により130℃の最高温度に保たれる。カラムの底部の改変溶媒および補助溶媒を再循環として抽出器に送り戻す。カラムの上端部の混合物(すなわち水、酢酸および若干の補助溶媒)がカラムの上端部で分離し、そしてその後冷却されて、補助溶媒を凝縮させかつ水/酸から分離させる。
【0086】
水/酸から補助溶媒の大部分を除去することにより、水/酸中のより低い補助溶媒濃度は共沸混合物より下になる。酢酸および水、ならびに少量の補助溶媒を含有するこの混合物を第二の「酸」蒸留カラムに送る。この第二のカラムで、水および補助溶媒、ならびに若干の酸がカラムの上端部から出、そして酢酸は118℃の温度を有する底部に向かう。水/酸相の一部をカラムに還流し、そして残存する水/酸相および補助溶媒を戻して抽出に再循環する。氷酢酸をこのカラムの底部近くで生成物として取り出し、そしてオーバーヘッドは再循環として工程に送り戻す。
B.30%アドジェン[Adogen]283(商標)LA(ウィトコ(Witco))溶媒および70%SX−18補助溶媒
本発明に従って実施される醗酵方法の別の例として、pH5.0で5g/lの遊離酸および10g/lの酢酸塩を含有するA部に記述された液体生成物流を、多段抽出器中で、30%アドジェン[Adogen]283(商標)LA溶媒(ウィトコ(Witco))および70%SX−18補助溶媒を含有する溶媒混合物と接触させた。0.09の溶媒対フィード比を使用する。抽出器から出る溶媒は25g/lの酢酸を含有し、また、水性流は10g/lの酢酸塩および2.75g/lの酢酸を含有する。従って、酸の分配係数は、付加的なSX−18補助溶媒での希釈により減少される。蒸留による生成物回収の方法は、その後は上述されたと同一である。
C.30%改変溶媒Aおよび70%デカン補助溶媒
補助溶媒デカン中の30%の改変溶媒Aを用いて、B部のものと類似の抽出を実施した。分配係数はB部でと同一のままであり、また、蒸留による生成物回収の方法は同等である。
D.60%アドジェン[Adogen]283(商標)LA(ウィトコ(Witco))溶媒および40%n−ドデカン補助溶媒
n−ドデカン補助溶媒中の60%のアドジェン[Adogen]283(商標)LA溶媒(ウィトコ(Witco))を用いてA部の抽出を実施する。抽出方法はB部と同一のままであり、溶媒中の50g/lの酸、ならびに水相中の10g/lの酢酸塩および0.5g/lの酢酸を生じる。
【0087】
酢酸塩を含有する水性流を再度、再循環として醗酵槽に送り戻す。溶媒カラム中での圧が0.2気圧でありかつカラムの底部の温度が127℃であることを除いてB部で提示された系に非常に類似の蒸留系に、酢酸を含有する溶媒流を送る。
実施例2:アミド形成
本実施例は、本発明の基礎、すなわち、蒸留および抽出段階でアミン含有溶媒を使用する場合に、酢酸製造工程でのアミン含有溶媒の効率的な機能発揮に温度制御が極めて重大であるという発明者らによる決定を立証する。
【0088】
溶媒中のアミンからのアミド形成は、式:Y=kX(ここでYは重量パーセントで測定された16時間後のアミド濃度を表し;X=重量パーセントで測定された16時間後の酢酸濃度、そしてk=アミド形成速度定数)により具体的に説明される酢酸濃度での一次数の速度式である。
【0089】
アミド形成の速度、および従って速度定数kは、式:
ln(k)=−9163.21(1/T)+27.41(ここでT=ケルビンでの絶対温度)
により表されるアレニウス型の速度式により温度とともに増大する。
【0090】
図4は、アレニウス速度式を見出すのに使用される絶対温度の逆数の関数としてのln(k)のプロットを具体的に説明する。例えば、150℃(1/T=0.00236)の温度でのアミド形成の速度は110℃(1/T=0.00261)の温度でより9倍より大きい。
実施例3:連続的溶媒相カラムを使用する酢酸の直接抽出
実施例1のものと類似の醗酵槽から得られた醗酵ブロスは、pH4.75で、2.6g/lの細胞(乾燥重量)、過剰の栄養素、5g/lの酢酸および5.0g/lの酢酸塩を含有した。SX−18補助溶媒中に60%のアドジェン[Adogen]283(商標)LA(ウィトコ(Witco))溶媒を含有する連続的溶媒相抽出カラムにこの培地を送る。抽出カラムは、溶媒および水相培養物の入口および出口を有する充填もしくは充填されない筒状カラムである。培養物は溶媒が充填されたカラムを通って下向きに流れ、そして溶媒は培養物と向流で上向きに流れる。カラムから出る溶媒は50g/lの酢酸を含有し、そしてカラムへの再循環の戻しに先立ち酸回収のための蒸留に送られる。カラムの底部から出る培養物流は5.0g/lの酢酸塩、0.5g/lの酢酸、細胞および栄養素を含有し、そして再循環として醗酵槽に戻し送られる。溶媒および培養物は混合不可能であるため、溶媒中には水(培養物)はほとんどないし全く存在せず、また、培養物の再循環流中には溶媒はほとんどないし全く存在しない。細胞のタンパク質性物質より成る薄いくず(rag)層が培養物/溶媒の界面で形成され、これは定期的に除去しなければならない。
実施例4:連続的水相カラムを使用する酢酸の抽出
実施例3の醗酵ブロスを、SX−18補助溶媒中に60%のアドジェン[Adogen]283(商標)LA溶媒(ウィトコ(Witco))を含有する連続的水相抽出カラムを通過させる。カラムは、カラムが溶媒の代わりに水相の培養物で充填されていることを除いて、実施例3でと類似に構築する。再度、溶媒および培養物が向流で流れ、溶媒がカラムの上端部から出、そして培養物はカラムの底部から出る。出てくる水相および溶媒相の濃度は実施例3でと同一である。実施例5:CO、CO2およびH2からの酢酸製造のための内的抽出的醗酵
7.52パーセントの二酸化炭素、31.5パーセントの一酸化炭素、27.96パーセントの水素および33.02パーセントの窒素を含有する工業的廃ガスを、クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)BRI単離物ERI2を使用して、実施例1Aで記述されたような醗酵槽/反応器中、pH5.0で酢酸/酢酸塩に醗酵する。気体保持時間(気体流速に対する反応器の体積の比)は10分であり、また、液体希釈速度(反応器の体積に対する液体培地の流速の比)は毎時0.03である。必須ビタミンおよびミネラルを含有する培地が反応器中に連続的に流れる。攪拌速度は1000rpmである。反応器は、SX−18補助溶媒中の60%の本発明の改変溶媒Aの溶媒相もまた含有する。CO、CO2およびH2から培養物が酢酸を産生する際に、それは溶媒により抽出される。
【0091】
溶媒および培養物の混合物が醗酵槽から出、そして小型の沈降タンクで分離される。培地フィード速度に速度が同等な水相の一部分が廃棄パージとして系から流れる。分離器からの水相の均衡をとる分(balance)を反応器に戻す。抽出された酸を含有する溶媒を回収のため蒸留に送る。回収後、溶媒を反応器に再循環させる。
実施例6:酸抽出に先立つ培養物のストリッピング
A.窒素ストリッピング
pH5.0で細菌細胞、5g/lの酢酸、9.3g/lの酢酸塩ならびに溶解された硫化物および炭酸塩を含有する実施例1〜4の反応器からの培養物を、培養物に抽出カラムを通過させる前に窒素ストリッピングカラムを通過させて、溶解されたCO2およびH2Sとしての硫化物を除去する。この操作は、酢酸の代わりのCO2およびH2Sの溶媒の負荷を予防するため、また、H2Sをイオウ源および還元剤として培養物に戻すために必要とされる。H2SおよびCO2を含有するN2ガス流を二次気体フィードとして反応器に戻し送る。窒素ストリッパーを使用することにより、溶媒に50g/lまで酢酸が負荷される。抽出に先立つCO2およびH2Sの除去を伴わないと溶媒は25〜30g/lまで酢酸が負荷される。
B.代替気体でのストリッピング
A部の培養物を、メタン、もしくはH2、CO、CH4を含有するCO2を含まない合成ガスを包含するN2以外の気体を用いてストリッピングする。本実施例の全部の他の局面は同一である。
C.溶解されたCO2を放出させるための圧力低下を介するストリッピング
抽出器中の負荷に先立ちCO2を放出させるため、A部の醗酵ブロスの圧を6もしくは3気圧から大気圧まで迅速に低下させる。培養物中のCO2圧は1気圧(溶媒による酸抽出を最大限にする助けとなる大きく低下されたレベル)でヘンリーの法則に従って平衡濃度に近づく。
D.溶解されたCO2を放出させるための前加熱を介するストリッピング
C部で示されたと多くは同一の様式でCO2を放出させるために、A部の細胞を含まない流れを抽出に先立ち前加熱する。ブロスは加熱後に再使用できない。
【0092】
全部の公開された文書は本明細書に引用により組み込まれる。本発明の多数の改変および変形が上で同定された明細中に包含され、かつ、当業者に明らかであると期待される。本発明の組成物および方法に対するこうした改変および変更は、それに付属として付けられる請求の範囲の範囲に包含されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 発明にかかる、共沸する溶媒SX−18中の60%の改変溶媒アドジェン[Adogen]283(商標)LAを使用する酢酸回収工程の水相の酢酸(HAc)濃度(g/L)に対する溶媒相HAc濃度(g/L)を作図するグラフである。実験点を三角により;理論点を四角により、また抽出係数(Kd)を丸により表す。
【図2】 発明にかかる、溶媒混合物が補助溶媒中33%の改変溶媒であることを除いて類似のグラフである。
【図3】 発明にかかる、抽出に先立つ醗酵ブロスの二酸化炭素および硫化水素ストリッピングの改変された工程段階を使用し、そして2個のみの蒸留カラムもまた使用する、酢酸の製造のための気体の微生物醗酵に有用な例示的装置の構成の略図である。例えば実施例6を参照されたい。本製造方法の多様な段階の温度を制御する付属の装置を冷水冷却器、熱交換器もしくは水蒸気として図中に同定する。
【図4】 発明にかかる、式Y=kX[ここで、Yは重量パーセントでの16時間後のアミド濃度であり;Xは重量パーセントでのフィード中の酢酸であり;そしてkはギ酸アミド速度定数である]に従ったアミド形成速度の温度依存性を具体的に説明するグラフである。グラフに点が示されている式は、ln(k)=−9163.21*(1/T)+27.41であり、ここでTはケルビンでの絶対温度である。例えば、下の実施例2を参照されたい。

Claims (54)

  1. (a)50容量%より多い、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物、および1容量%未満のモノアルキルアミンを含んで成る水不混和性溶媒であって、10より大きい分配係数を有する溶媒;ならびに
    (b)最低10容量%の、前記溶媒(a)の沸点より低い沸点を有する非アルコール補助溶媒
    を含んで成る水不混和性溶媒と補助溶媒の混合物であって、水性流から酢酸を抽出する上記の混合物。
  2. 請求項1に記載の混合物であって、前記補助溶媒が水と不混和性でありかつ水から容易に分離する、上記の混合物。
  3. 請求項1に記載の混合物であって、前記補助溶媒が線状炭化水素である、上記の混合物。
  4. 請求項に記載の混合物であって、前記線状炭化水素がアルカンである、上記の混合物。
  5. 請求項に記載の混合物であって、前記アルカン9から11個までの炭素原子を含む、上記の混合物。
  6. 請求項に記載の混合物であって、前記アルカンがn−ノナン、n−デカンおよびn−ウンデカンから成る群より選択される、上記の混合物。
  7. 請求項1に記載の混合物であって、前記溶媒(a)が80容量%より多い前記ジアルキルアミンを含有し、そして低沸点化合物が1容量%未満に低減されており、かつ、前記低沸点化合物が69.9トル(Torr)において115℃以下で沸騰する、上記の混合物。
  8. 請求項1に記載の混合物であって、前記溶媒(a)が1容量%から10容量%までのトリアルキルをさらに含有する、上記の混合物。
  9. 請求項1に記載の混合物であって、前記溶媒(a)が、酢酸抽出能力を向上させるために、低沸点化合物、モノアルキルアミン、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンを含有する溶媒から、全部の低沸点化合物およびモノアルキルアミンを蒸留することにより調製され、かつ、前記低沸点化合物が69.9トル(Torr)において115℃以下で沸騰する、上記の混合物。
  10. 請求項9に記載の混合物であって、前記溶媒(a)が、前記蒸留された溶媒を第二の蒸留にかけて全部のトリアルキルアミンを低減させることにより調製される、上記の混合物。
  11. 酢酸を含有する水相から酢酸を得る方法であって、
    (a)(i)50容量%より多い、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物、および容量%未満のモノアルキルアミンを含んで成る水不混和性溶媒であって、10より大きい分配係数を有する溶媒;ならびに
    (ii)少なくとも10容量%の、前記溶媒(i)の沸点より低い沸点を有する非アルコール補助溶媒を含んで成る、
    水不混和性溶媒と補助溶媒の混合物を、水相と接触させる工程;
    (b)結果として生じる溶媒相中へ前記水相から酢酸を抽出する工程;および
    (c)160℃を越えない温度下で前記溶媒相から酢酸を蒸留する工程
    を含んで成る、上記の方法。
  12. 請求項11に記載の方法であって、前記補助溶媒が水と不混和性でありかつ水から容易に分離する、上記の方法。
  13. 請求項11に記載の方法であって、前記補助溶媒が線状炭化水素である、上記の方法。
  14. 請求項13に記載の方法であって、前記線状炭化水素がアルカンである、上記の方法。
  15. 請求項14に記載の方法であって、前記アルカン9から11個までの炭素原子を含む、上記の方法。
  16. 請求項15に記載の方法であって、前記アルカンがn−ノナン、n−デカンおよびn−ウンデカンから成る群より選択される、上記の方法。
  17. 請求項11に記載の方法であって、前記溶媒(i)が1容量%未満ノモノアルキルアミンを含有する、上記の方法。
  18. 請求項11に記載の方法であって、前記溶媒(i)が80容量%より多い前記ジアルキルアミンを含有し、そして低沸点化合物およびものアルキルアミンが1容量%未満に低減されており、かつ、前記低沸点化合物が69.9トル(Torr)において115℃以下で沸騰する、上記の方法。
  19. 請求項11に記載の方法であって、前記溶媒(i)が1容量%から10容量%までのトリアルキルをさらに含有する、上記の方法。
  20. 請求項11に記載の方法であって、前記溶媒(i)が、酢酸抽出能力を向上させるために、低沸点化合物、モノアルキルアミン、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンを含有する溶媒から、全部の低沸点化合物およびモノアルキルアミンを蒸留することにより調製され、かつ、前記低沸点化合物が69.9トル(Torr)において115℃以下で沸騰する、上記の方法。
  21. 酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法であって、
    (a)栄養培地中に嫌気性の酢酸発生クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridum ljungdahlii)細菌でなる水性流の存在下で、(1)一酸化炭素、(2)二酸化炭素および水素、(3)一酸化炭素、二酸化炭素および水素、ならびに(4)一酸化炭素および水素から成る群より選択される少なくとも1種の気体を含有する気体流をバイオリアクター中で醗酵させて、それにより酢酸を含んで成る醗酵ブロスを生産する工程;
    (b)前記細菌を前記ブロス中の他の成分から分離して、細胞を含まない流れを提供する工程;
    (c)前記細胞を含まないブロスを、
    (i)50容量%より多い、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物、および容量%未満のモノアルキルアミンを含んで成る水不混和性溶媒であって、10より大きい分配係数を有する溶媒;および
    (ii)最低10容量%の、前記溶媒(i)の沸点より低い沸点を有する非アルコール補助溶媒を含んで成る、水不混和性溶媒と補助溶媒の混合物と接触させることにより、前記細胞を含まない流れから溶媒相に酢酸を連続的に抽出する工程;
    (d)前記水相を前記バイオリアクターに再循環し、そして前記溶媒相を蒸留塔に通過させる工程、ならびに
    (e)160℃を越えない温度下で(d)の生成物から酢酸を溶媒相と別個に連続的に蒸留する工程
    を含んで成り、かつ、前記抽出および蒸留工程が前記アミンをアミドに実質的に品位を低下することなく起こり、こうして酢酸の製造の効率を高める、上記の方法。
  22. 請求項21に記載の方法であって、前記分離工程が、遠心分離器、中空繊維膜もしくは固−液分離装置を使用する、上記の方法。
  23. 請求項21に記載の方法であって、前記蒸留工程が酸素を含まない真空中で起こる、上記の方法。
  24. 請求項21に記載の方法であって、工程(e)が0.5ないし10psiaの間の圧力の真空をさらに用いる、上記の方法。
  25. 請求項21に記載の方法であって、前記嫌気性細菌が、アセトバクテリウム キブイ(Acetobacterium kivui)、アセトバクテリウム オーディイ(Acetobacterium woodii)、ブチリバクテリウム メチロトロフィクム(Butyribacterium methylotrophicum)、クロストリジウム アセチクム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム フォルミカセチクム(Clostridium formicaceticum)、クロストリジウム クルイベリ(Clostridium kluyvC.eri)、クロストリジウム テルモアセチクム(Clostridium thermoaceticum)、クロストリジウム テルモセルム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム テルモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)、クロストリジウム テルモサッカロリチクム(Clostridium thermosaccharolyticum)、ユーバクテリウム リモスム(Eubacterium limosum)、ペプトストレプトコッカス プロデュクツス(Peptostreptococcus productus)、およびそれらの混合物より成る群から選択される、上記の方法。
  26. 請求項21に記載の方法であって、前記クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)が、PETC ATCC 55383、O−52 ATCC 55989、ERI2 ATCC 55380およびC−01 ATCC 55988、ならびにそれらの混合物より成る株から選択される、上記の方法。
  27. 嫌気性の酢酸発生クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridum ljungdahlii)細菌、水性栄養培地ならびに(1)一酸化炭素、(2)二酸化炭素および水素、(3)一酸化炭素、二酸化炭素および水素、および(4)一酸化炭素および水素より成る群から選択される最低1種の気体を含有し、そこで前記気体は発酵済みである、水性流を含んで成る醗酵ブロスからの酢酸回収の効率を高める方法であって、前記流を
    (i)50容量%より多い、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物、および容量%未満のモノアルキルアミンを含んで成る水不混和性溶媒であって、10より大きい分配係数を有する溶媒;および
    (ii)少なくとも10容量%の、前記溶媒(i)の沸点より低い沸点を有する非アルコール補助溶媒を含んで成る、水不混和性溶媒と補助溶媒の混合物と接触させる工程、
    前記溶媒混合物の前記流から酢酸を連続的に抽出する工程、および
    前記アミンをアミドに品位を低下することなく、160℃を越えない蒸留温度で前記溶媒から前記酢酸を蒸留する工程
    を含んで成る、上記の方法。
  28. 酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法であって、
    (a)栄養混合物および水不混和性溶媒と補助溶媒の混合物中の嫌気性の酢酸発生クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridum ljungdahlii)細菌をバイオリアクターに前記細菌を前記溶媒に順化させるのに十分な時間供給する工程であって、前記水不混和性溶媒と補助溶媒の混合物が、
    (i)50容量%より多い、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物、および容量%未満のもノアルキルアミンを含んで成る水不混和性溶媒であって、10より大きい分配係数を有する溶媒;および
    (ii)少なくとも10容量%の、前記溶媒(i)の沸点より低い沸点を有する非アルコール補助溶媒を含んで成る、上記の工程;
    (b)前記のバイオリアクターに、(1)一酸化炭素、(2)二酸化炭素および水素、(3)一酸化炭素、二酸化炭素および水素、ならびに(4)一酸化炭素および水素から成る群より選択される少なくとも1種の気体を含んで成る気体流を前記バイオリアクターに導入し、そして前記細菌、栄養培地、酢酸、溶媒および水を含んで成る醗酵ブロスを生産せしめる工程であって、かつ、前記気体が発酵済みである、上記の工程;
    (c)前記醗酵ブロスを分離装置に導入する工程であって、前記細菌および栄養培地を含有する水相が、酢酸、溶媒および水を含有する溶媒相から濾過を伴わずに分離される工程;
    (d)160℃を越えない温度下で、酢酸を溶媒相と別個に(c)の溶媒相から連続的に蒸留する工程;
    含んで成り、前記蒸留工程が前記アミンをアミドに品位を低下することなく起こり、そうして酢酸製造の効率を高める、上記の方法。
  29. 請求項28に記載の方法であって、前記溶媒、および前記細菌を含有する前記水相を前記バイオリアクター中に再循環することをさらに含んで成る、上記の方法。
  30. 請求項28に記載の方法であって、前記蒸留工程が酸素を含まない真空中で起こる、上記の方法。
  31. 請求項28に記載の方法であって、工程(d)が0.5ないし10psiaの圧力における真空をさらに使用する、上記の方法。
  32. 請求項28に記載の方法であって、前記嫌気性細菌が、アセトバクテリウム キブイ(Acetobacterium kivui)、アセトバクテリウム オーディイ(Acetobacterium woodii)、ブチリバクテリウム メチロトロフィクム(Butyribacterium methylotrophicum)、クロストリジウム アセチクム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム フォルミカセチクム(Clostridium formicaceticum)、クロストリジウム クルイベリ(Clostridium kluyveri)、クロストリジウム テルモアセチクム(Clostridium thermoaceticum)、クロストリジウム テルモセルム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム テルモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)、クロストリジウム テルモサッカロリチクム(Clostridium thermosaccharolyticum)、ユーバクテリウム リモスム(Eubacterium limosum)、ペプトストレプトコッカス プロデュクツス(Peptostreptococcus productus)、およびそれらの混合物より成る群から選択される、上記の方法。
  33. 請求項28に記載の方法であって、前記クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)が、PETC ATCC 55383、O−52 ATCC 55989、ERI2 ATCC 55380およびC−01 ATCC 55988、ならびにそれらの混合物より成る株から選択される、上記の方法。
  34. 酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法であって、
    (a)水性栄養混合物および嫌気性の酢酸発生クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)細菌を含むバイオリアクター中で(1)一酸化炭素、(2)二酸化炭素および水素、(3)一酸化炭素、二酸化炭素および水素、ならびに(4)一酸化炭素および水素から成る群より選択される少なくとも1種の気体を醗酵させ、それにより酢酸、水および細菌細胞を含んで成るブロスを生産する工程;
    (b)連続的溶媒相もしくは連続的水相のいずれかを含有しかつそのための出口および入口を有する抽出装置中に、(i)細胞分離を伴わない前記ブロスおよび(ii)水不混和性溶媒と捕縄溶媒の混合物であって、
    (I)50容量%より多い、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物、および容量%未満のもノアルキルアミンを含んで成る水不混和性溶媒であって、10より大きい分配係数を有する溶媒;および
    (ii)少なくとも10容量%の、前記溶媒(I)の沸点より低い沸点を有する非アルコール補助溶媒を含んで成る
    混合溶媒を導入する工程であって、ここで、酢酸、溶媒および水を含有する溶媒相は、前記細菌および栄養培地を含んで成る水相と別個に前記抽出装置から排出される工程;
    (c)前記水相をバイオリアクターに再循環し、そして前記溶媒相を蒸留塔に通過せしめる工程;
    (d)前記アミンをアミドに品位を低下することなく160℃を越えない温度で溶媒と別個に酢酸および水を(c)の溶媒相から連続的に蒸留し、こうして酢酸の生産効率を高める工程;
    を含んでなる、上記の方法。
  35. 請求項34に記載の方法であって、前記溶媒が前記ブロスの流れと共通の流れまたは向流状態で前記抽出装置に導入されることを含む、上記の方法。
  36. 請求項34に記載の方法であって、前記蒸留工程が酸素を含まない真空中で起こる、上記の方法。
  37. 請求項36に記載の方法であって、前記工程(d)が0.5ないし10psiaの圧力における真空を用いる、上記の方法。
  38. 請求項34に記載の方法であって、前記嫌気性細菌が、アセトバクテリウム キブイ(Acetobacterium kivui)、アセトバクテリウム オーディイ(Acetobacterium woodii)、ブチリバクテリウム メチロトロフィクム(Butyribacterium methylotrophicum)、クロストリジウム アセチクム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム フォルミカセチクム(Clostridium formicaceticum)、クロストリジウム クルイベリ(Clostridium kluyveri)、クロストリジウム テルモアセチクム(Clostridium thermoaceticum)、クロストリジウム テルモセルム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム テルモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)、クロストリジウム テルモサッカロリチクム(Clostridium thermosaccharolyticum)、ユーバクテリウム リモスム(Eubacterium limosum)、ペプトストレプトコッカス プロデュクツス(Peptostreptococcus productus)、およびそれらの混合物より成る群から選択される、上記の方法。
  39. 請求項34に記載の方法であって、前記クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridiumljungdahlii)が、PETC ATCC 55383、O−52 ATCC 55989、ERI2 ATCC 55380およびC−01 ATCC 55988、ならびにそれらの混合物より成る株から選択される、上記の方法。
  40. 酢酸の製造のための嫌気性微生物の醗酵方法であって、
    (a)水性栄養混合物および嫌気性の酢酸発生クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridiumljungdahlii)細菌を含むバイオリアクター中で(1)一酸化炭素、(2)二酸化炭素および水素、(3)一酸化炭素、二酸化炭素および水素、ならびに(4)一酸化炭素および水素から成る群より選択される少なくとも1種の気体を醗酵させ、それにより酢酸および溶解された二酸化炭素を含んで成る醗酵ブロスを生産する工程;
    (b)前記二酸化炭素を抽出に先立ち醗酵ブロスから除去する工程;
    (c)アミンを含んで成る溶媒と前記ブロス(b)を接触させ、そして酢酸および前記栄養媒体を含有する水相を含んで成る溶媒相の形成を可能にする工程;
    (d)前記溶媒相から酢酸を連続的に蒸留する工程;および
    (e)前記水相を前記バイオリアクターに戻す工程
    を含んで成る上記の方法。
  41. 請求項40に記載の方法であって、前記醗酵ブロスが溶解された硫化水素を含有し、かつ、抽出に先立ち前記硫化水素を前記醗酵ブロスから除去する工程をさらに含んで成る、上記の方法。
  42. 請求項40または41に記載の方法であって、前記除去する工程が、二酸化炭素、酸素もしくは硫化水素を含有しない気体と前記醗酵ブロスを接触させることを含んで成る、上記の方法。
  43. 請求項42に記載の方法であって、前記気体が、窒素、メタン、ヘリウム、アルゴン、非反応性気体もしくはそれらの混合物より成る群から選択される、上記の方法。
  44. 請求項42に記載の方法であって、前記除去する工程が向流ストリッパーカラム中で起こる、上記の方法。
  45. 請求項40または41に記載の方法であって、前記除去する工程が、前記バイオリアクターと別個の容器中で前記醗酵ブロスに対する圧力を低下させることを含んで成る、上記の方法。
  46. 請求項40または41に記載の方法であって、前記除去する工程に先立ち、前記ブロス中の他の成分から前記細菌を分離して細胞を含まない流れを提供することをさらに含んで成る、上記の方法。
  47. 請求項46に記載の方法であって、前記除去する段階が、前記バイオリアクターと別個の容器中で前記細胞を含まない流れを80℃に加熱することを含んで成る、上記の方法。
  48. 請求項40に記載の方法であって、前記溶媒が水不混和性溶媒と捕縄溶媒の混合物であって、
    (i)50容量%より多い、高度に分枝したジアルキルアミンの異性体の混合物、および0.01容量%から20容量%のモノアルキルアミンを含んで成る水不混和性溶媒であって、10より大きい分配係数を有する溶媒;および
    (ii)少なくとも10容量%の、前記溶媒(i)の沸点より低い沸点を有する非アルコール補助溶媒を含んで成る混合溶媒である、上記の方法。
  49. 請求項40に記載の方法であって、前記蒸留段階が、160℃を越えない温度で前記アミンをアミドに品位を低下することなく起こり、こうして酢酸の製造の効率を高める、上記の方法。
  50. 請求項40に記載の方法であって、前記蒸留工程が酸素を含まない真空中で起こる、上記の方法。
  51. 請求項40に記載の方法であって、前記蒸留工程が0.5ないし10psiaの圧力における真空をさらに用いる、上記の方法。
  52. 請求項40に記載の方法であって、前記嫌気性細菌が、アセトバクテリウム キブイ(Acetobacterium kivui)、アセトバクテリウム オーディイ(Acetobacterium woodii)、ブチリバクテリウム メチロトロフィクム(Butyribacterium methylotrophicum)、クロストリジウム アセチクム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム フォルミカセチクム(Clostridium formicaceticum)、クロストリジウム クルイベリ(Clostridium kluyveri)、クロストリジウム テルモアセチクム(Clostridium thermoaceticum)、クロストリジウム テルモセルム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム テルモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)、クロストリジウム テルモサッカロリチクム(Clostridium thermosaccharolyticum)、ユーバクテリウム リモスム(Eubacterium limosum)、ペプトストレプトコッカス プロデュクツス(Peptostreptococcus productus)、およびそれらの混合物より成る群から選択される、上記の方法。
  53. 請求項52に記載の方法であって、前記クロストリジウム ルジュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)が、PETC ATCC 55383、O−52 ATCC 55989、ERI2 ATCC 55380およびC−01 ATCC 55988、ならびにそれらの混合物より成る株から選択される、上記の方法。
  54. 請求項40に記載の方法であって、溶媒との前記接触が向流カラム中で起こる、上記の方法。
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