JP4179720B2 - 炭素材料および黒鉛材料の製造方法並びにリチウムイオン二次電池負極用材料 - Google Patents
炭素材料および黒鉛材料の製造方法並びにリチウムイオン二次電池負極用材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メソフェーズ含有ピッチの炭素化、黒鉛化時の粒子の溶融、粒子同士の融着および発泡を防止することが可能で、さらには、黒鉛化度の高い黒鉛材料を得ることが可能な炭素材料、黒鉛材料の製造方法に関する。
また、本発明は、充放電容量が大きいリチウムイオン二次電池を得ることが可能なリチウムイオン二次電池負極用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウムイオン二次電池が、従来の携帯用電気製品の電池の主流であったニッケル・カドミウム電池に取って代わり、携帯電話、ノート型パソコン用バッテリーなどとして大幅な需要増加が期待されている。
これは、リチウムイオン二次電池が、▲1▼小型で軽量、▲2▼充放電容量が大きい、▲3▼高電圧・大電流が取り出せる、▲4▼サイクル寿命に優れる、▲5▼安全性が高い、▲6▼環境汚染上の問題が少ないなど種々の優れた特性を有しているためである。
【0003】
一方、リチウムイオン二次電池負極用材料としては、リチウムイオンの吸蔵、脱離能力を有する黒鉛粉末が用いられ、黒鉛粉末に対しては、下記で述べるように▲1▼高度の黒鉛化度、▲2▼粒状(非鱗片状、非針状)の粒子形状が要求される。
〔リチウムイオン二次電池負極用材料としての黒鉛粉末に対する要求特性:〕
▲1▼高度の黒鉛化度:
黒鉛中におけるリチウムイオンの吸蔵、脱離の基本的なメカニズムは、黒鉛層間へのリチウムイオンの挿入と層間からの脱離であり、示性式LiC6に示されるLiとCの量論比で最大の吸蔵量となる。
【0004】
したがって、充放電容量の向上のためには、層状構造が十分発達した高度の黒鉛化度を有する黒鉛を用いることが必要である。
▲2▼粒状(非鱗片状、非針状)の粒子形状:
リチウムイオン二次電池負極用材料としての黒鉛粉末においては、充放電容量以外に粒子形状が重要視される。
【0005】
すなわち、リチウムイオン二次電池負極を製造する場合、黒鉛粉末を集電板上に塗布した後プレスするが、この際に粒子形状が天然黒鉛のように薄片状あるいは針状であると、一方向に配列し易くなるため、電解液の浸透性に劣るかあるいはリチウムイオンの吸蔵、脱離に伴う膨張収縮による黒鉛粒子の集電板からの剥離などが生じる。
【0006】
すなわち、リチウムイオン二次電池負極用材料としての黒鉛粉末は、高度の黒鉛化度と粒状(非鱗片状、非針状)の粒子形状を有することが要求される。
以上、リチウムイオン二次電池負極用材料としての黒鉛粉末に対する要求特性について述べたが、上記した用途に用いるため、近年、ピッチ類を原料とした炭素粉末、黒鉛粉末の開発が行われている。
【0007】
原料として石炭ピッチなどのピッチ類を用い、液相状態で炭素化する場合、光学的異方性小球体であるメソフェーズが生成し、さらにそれらが合体してバルクメソフェーズとなり、その後、全面が光学的異方性を示すようになる。
上記の光学的異方性は、芳香族分子の積層(スタッキング)から生じるものであり、その秩序性がその後の高温炭化、黒鉛化処理でさらに発達し、高度の黒鉛化度を有する黒鉛粉末が得られる。
【0008】
すなわち、石炭ピッチなどから製造したメソフェーズを含有する炭素質粉末は、易黒鉛化性の炭素質粉末であり、また、メソフェーズを含有する炭素質粉末を高温処理することによって、高度の黒鉛化度を有する黒鉛粉末が得られるが、得られる黒鉛粉末の黒鉛化度は、天然黒鉛の黒鉛化度に比べて低い。
これに対して、ナフタレン類をHF/BF3などの強酸で重合して得られるメソフェーズ含有ピッチは、光学的に全面異方性を示すピッチでも低い溶融粘度を有している。
【0009】
この結果、ナフタレン類を重合させて得られるメソフェーズ含有ピッチは、熱処理時におけるメソフェーズ内部での芳香族分子のモビリティーが十分に高く、熱処理時に芳香族分子の積層が容易に進行し、また不純物を全く含まないため、得られる炭素材料は優れた易黒鉛化性を示し、高温処理によって黒鉛化度の極めて高い黒鉛材料となる。
【0010】
また、ナフタレン類を重合して得られるメソフェーズ含有ピッチは、粉砕することによって球状の粒子を得ることができる。
しかしながら、ナフタレン類をHF/BF3などの強酸で重合させて得られるメソフェーズ含有ピッチは、予め粉砕によって所定の形態(粒径、粒子形状)を付与したとしても、炭素化、黒鉛化の過程で溶融し、粒子同士が融着する。
【0011】
また、ナフタレン類をHF/BF3などの強酸で重合させて得られるメソフェーズ含有ピッチは、分子中に比較的多くの水素原子を含み、高温下で脱水素反応が激しく進行し、発泡、膨張し、上記した溶融、粒子同士の融着と相まって、所定の粒子形態を維持したまま炭素化、黒鉛化することが極めて困難であり、リチウムイオン二次電池負極用材料として用いることが困難であった。
【0012】
上記した問題の解決方法として、炭素繊維製造時の不融化と同様に、メソフェーズ含有ピッチを酸化性雰囲気で処理し、芳香族分子同士を架橋、不融化し、粒子同士の融着を防止する方法が考えられる。
しかしながら、芳香族分子同士の酸化架橋は、分子配向を低下し、その後の炭素化、黒鉛化における分子の再配列を阻害するため、黒鉛材料の黒鉛化度が低下するといった問題があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来技術の問題点を解決し、触媒の存在下で縮合多環芳香族炭化水素を重合して得られるメソフェーズ含有ピッチを用いた炭素材料、黒鉛材料の製造方法において、メソフェーズ含有ピッチの炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着および発泡を防止することが可能で、さらには、黒鉛化度の高い黒鉛材料を得ることが可能な炭素材料および黒鉛材料の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、充放電容量が大きいリチウムイオン二次電池を得ることが可能なリチウムイオン二次電池負極用材料を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、触媒の存在下で縮合多環芳香族炭化水素を重合して得られるメソフェーズ含有ピッチを、非酸化性雰囲気中、 200 〜 450 ℃で加熱処理(以下予備熱処理とも記す)した後、得られた熱処理物に、金属酸化物および/または金属を添加し、非酸化性雰囲気中、300 〜1200℃で加熱処理することを特徴とする炭素材料の製造方法である。
【0018】
前記した第1の発明の好適な態様は、触媒の存在下で縮合多環芳香族炭化水素を重合して得られるメソフェーズ含有ピッチから軽質成分を溶媒を用いて抽出除去した後、得られたメソフェーズ含有ピッチを、非酸化性雰囲気中、200 〜450 ℃で加熱処理(:予備熱処理)した後、得られた熱処理物に金属酸化物および/または金属を添加し、非酸化性雰囲気中、300 〜1200℃で加熱処理することを特徴とする炭素材料の製造方法である(第1の発明の第1の好適態様)。
【0019】
前記した第1の発明のより好適な態様は、触媒の存在下で縮合多環芳香族炭化水素を重合して得られるメソフェーズ含有ピッチを、非酸化性雰囲気中、200 〜450 ℃で加熱処理(:予備熱処理)した後、得られた熱処理物から軽質成分を溶媒を用いて抽出除去した後、得られた処理物に金属酸化物および/または金属を添加し、非酸化性雰囲気中、300 〜1200℃で加熱処理することを特徴とする炭素材料の製造方法である(第1の発明の第2の好適態様)。
【0020】
前記した第1の発明、第1の発明の第1の好適態様、第1の発明の第2の好適態様においては、前記金属酸化物が、酸化鉄であることが好ましい(第1の発明の第3の好適態様、第4の好適態様、第5の好適態様)。
第2の発明は、前記した第1の発明、第1の発明の第1の好適態様〜第5の好適態様のいずれかの製造方法で得られた炭素材料を黒鉛化処理することを特徴とする黒鉛材料の製造方法である。
【0021】
第3の発明は、前記した第2の発明の製造方法で得られた黒鉛材料からなることを特徴とするリチウムイオン二次電池負極用材料である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者らは、触媒の存在下で縮合多環芳香族炭化水素を重合して得られるメソフェーズ含有ピッチ(以下、メソフェーズ含有ピッチとも記す)に関して、予め粉砕、分級などによって所定の形態(粒径、粒子形状)を付与した後のメソフェーズ含有ピッチの炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着、発泡を抑制する方法について鋭意検討した結果、下記知見(1) 〜(4) を見出し、本発明に至った。
【0023】
(1) メソフェーズ含有ピッチの黒鉛化処理を行う前に、非酸化性雰囲気中で金属酸化物または金属または金属酸化物および金属の両者の共存下、300 〜1200℃の加熱処理を施す工程を導入することによって、上記した溶融、粒子同士の融着、発泡を防止できる。
(2) メソフェーズ含有ピッチを、上記した金属酸化物、金属の共存下での加熱処理後、黒鉛化処理することによって、黒鉛化度の高い黒鉛材料が得られる。
【0024】
(3) 前記(1) におけるメソフェーズ含有ピッチの金属酸化物、金属の共存下での加熱処理の前に、メソフェーズ含有ピッチの軽質成分を溶媒抽出除去することによって、前記した溶融、粒子同士の融着、発泡をさらに完全に防止できる。
(4) 前記(1) におけるメソフェーズ含有ピッチの金属酸化物、金属の共存下での加熱処理の前に、メソフェーズ含有ピッチを加熱処理(:予備熱処理)することによって、前記した溶融、粒子同士の融着、発泡をさらに完全に防止できる。
【0025】
表1に、本発明の炭素材料の製造方法のフローシートを示し、表2に、本発明の黒鉛材料の製造方法のフローシートを示す。
表1におけるa〜eの製造方法が、それぞれ第1の参考発明、第2の参考発明、第1の発明および第1の発明の第1の好適態様、第1の発明の第2の好適態様の炭素材料の製造方法に対応し、表2におけるA〜Eの製造方法が、それぞれ第1の参考発明、第2の参考発明、第1の発明および第1の発明の第1の好適態様、第1の発明の第2の好適態様の炭素材料の製造方法で得られた炭素材料を用いた第2の発明の黒鉛材料の製造方法に対応する。
【0026】
すなわち、本発明の炭素材料の製造方法の要旨は、触媒の存在下で縮合多環芳香族炭化水素を重合して得られるメソフェーズ含有ピッチに、金属酸化物および/または金属を添加し、加熱処理する炭素材料の製造方法である。
また、本発明においては、上記した金属酸化物および/または金属を添加し、加熱処理する前に、加熱処理(:予備熱処理)を行う(第1の発明)。
【0027】
また、本発明においては、上記した金属酸化物および/または金属を添加し、加熱処理する前に、メソフェーズ含有ピッチの軽質成分の溶媒抽出除去および加熱処理(:予備熱処理)の両者を行うことも好ましく、この場合、溶媒抽出後、加熱処理(:予備熱処理)を行ってもよく、また、加熱処理(:予備熱処理)後、溶媒抽出を行ってもよい(第1の発明の第1の好適態様、第1の発明の第2の好適態様)。
【0028】
前記した第1の発明、第1の発明の第1の好適態様、第1の発明の第2の好適態様においては、前記金属酸化物が酸化鉄であることが好ましい。
また、本発明の黒鉛材料の製造方法の要旨は、前記した第1の発明、第1の発明の第1の好適態様、第1の発明の第2の好適態様のいずれかの炭素材料の製造方法で得られた炭素材料を黒鉛化処理する黒鉛材料の製造方法である(第2の発明)。
【0029】
また、本発明のリチウムイオン二次電池負極用材料の要旨は、前記した第2の発明の製造方法で得られた黒鉛材料である(第3の発明)。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
以下、本発明におけるI.メソフェーズ含有ピッチ、II. メソフェーズ含有ピッチの粒度調整工程、III.メソフェーズ含有ピッチの軽質成分の抽出除去工程、IV. メソフェーズ含有ピッチの加熱処理(:予備熱処理)工程、V.メソフェーズ含有ピッチ、メソフェーズ含有ピッチ処理物の金属酸化物、金属共存下での加熱処理工程、VI. 黒鉛化処理前の粒度調整工程、VII.黒鉛化処理工程の順に説明する。
【0033】
〔I.メソフェーズ含有ピッチ:〕
本発明におけるメソフェーズ含有ピッチの原料である縮合多環芳香族炭化水素としては、ナフタレン、アントラセン、メチルナフタレン、フェナントレン、アセナフテン、アセナフチレンおよびピレンなどから選ばれる1種または2種以上の縮合多環芳香族炭化水素を用いることが好ましい。
【0034】
本発明においては、メソフェーズ含有ピッチの原料である縮合多環芳香族炭化水素として、コールタール蒸留で得られる縮合多環芳香族炭化水素の混合物であるタール蒸留油を用いることもできる。
本発明における触媒としては、ルイス酸系触媒が好ましい。
ルイス酸系触媒としては、超強酸触媒および/またはルイス酸触媒が挙げられる。
【0035】
超強酸触媒としては、ルイス酸とブレンステッド酸を組み合わせた弗化水素・三弗化硼素触媒(:HF/BF3)が挙げられ、ルイス酸触媒としては、AlCl3 、CuCl2 などが挙げられる。
また、本発明におけるメソフェーズ含有ピッチは、偏光顕微鏡で観察した光学的異方性相含有率が、80〜100 面積%であることが好ましく、さらには、メトラー法による軟化点が200 〜320 ℃、上記光学的異方性相含有率が、90〜100 面積%であることがより好ましい。
【0036】
〔II. メソフェーズ含有ピッチの粒度調整工程:〕
前記したメソフェーズ含有ピッチは、予め、所定の粒度に粉砕および/または分級し、粒状の形態に調整して用いることが好ましい。
粉砕機としては、ジェットミル、振動ボールミル、衝撃ミル、ハンマーミル、マイクロアトマイザーなどを使用することができ、粉砕機の方式、型式は特に制限されるものではない。
【0037】
分級機としては、機械式分級機、風力式分級機などを使用することができ、分級機の方式、型式は特に制限されるものではない。
上記した粒度調整後の粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置による50%累積体積平均粒径として、1〜200 μm であることが好ましく、さらには5〜100 μm であることがより好ましい。
【0038】
〔III.メソフェーズ含有ピッチの軽質成分の抽出除去工程:〕
本発明においては、メソフェーズ含有ピッチの炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着および発泡をさらに抑制するために、金属酸化物および/または金属(以下、金属酸化物、金属とも記す)の共存下での加熱処理の前に、予め、メソフェーズ含有ピッチもしくは前記した粒度調整後のメソフェーズ含有ピッチから軽質成分を、溶媒を用いて抽出除去することが好ましい。
【0039】
本発明においては、上記した溶媒として、複素環式化合物および/または多環芳香族炭化水素を用いることが好ましい。
また、上記した抽出溶媒としての複素環式化合物としては、ピリジンおよび/またはテトラヒドロフランなどの単環の複素環式化合物が好ましい。
また、上記した抽出溶媒としての多環芳香族炭化水素としては、タール系中油および/またはメチルナフタレンが好ましい。
【0040】
なお、上記したタール系中油としては、コールタールを蒸留して得られるタール系中油を用いることが好ましい。
メソフェーズ含有ピッチの軽質成分の抽出溶媒として、キノリンなどの多環複素環式化合物を用いた場合は、抽出力が強く抽出処理後のメソフェーズ含有ピッチの収率が低下する。
【0041】
また、メソフェーズ含有ピッチの軽質成分の抽出溶媒としてベンゼン、トルエンなどの単環の芳香族炭化水素を用いた場合は、抽出力が弱く、抽出処理後のメソフェーズ含有ピッチを加熱処理する際の粒子同士の融着の抑制効果が低下する。
抽出時の処理温度は、常温(25℃)〜抽出溶媒の沸点の範囲内であることが好ましく、タール系中油などの複数の成分の混合物である混合溶媒を用いる場合、処理温度は、常温(25℃)〜混合溶媒の初留点の範囲内であることが好ましい。
【0042】
抽出溶媒のメソフェーズ含有ピッチに対する添加量は、ピッチ:100 重量部(質量部)に対して300 〜800 重量部(質量部)であることが好ましい。
添加量が 300重量部未満の場合、軽質分の抽出が十分に進まず、抽出処理後のメソフェーズ含有ピッチを加熱処理する際のメソフェーズ含有ピッチの溶融および粒子同士の融着の抑制効果が低下する。
【0043】
また、逆に添加量が 800重量部を超える場合、添加量を増加してもメソフェーズ含有ピッチの粒子同士の融着防止効果に差が見られず、処理装置が大型化するため好ましくない。
本発明においては、好ましくは上記した条件下でメソフェーズ含有ピッチから軽質成分を抽出除去した後、得られる混合物から固体を分離する。
【0044】
この場合の固液分離方法としては、遠心分離またはろ過などの固液分離方法を用いることができるが、固液分離方法は特に制限を受けるものではない。
固液分離後に得られたメソフェーズ含有ピッチの処理物は、残存する溶媒を除去するために、好ましくは80〜200 ℃の温度で加熱処理する。
なお、上記した加熱処理においては、メソフェーズ含有ピッチの処理物の過度の酸化防止のために、非酸化性雰囲気下で加熱処理することが好ましい。
【0045】
〔IV. メソフェーズ含有ピッチの加熱処理(:予備熱処理)工程:〕
本発明においては、メソフェーズ含有ピッチの炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着および発泡をさらに抑制するために、金属酸化物、金属の共存下での加熱処理の前に、予め、メソフェーズ含有ピッチもしくは前記した粒度調整後のメソフェーズ含有ピッチを200 〜450 ℃の温度で加熱処理(:予備熱処理)し、軽質成分の除去や予備的な炭素化を行う。
【0046】
上記した予備熱処理の特に好ましい温度は、300 〜450 ℃である。
予備熱処理温度が200 ℃未満の場合、メソフェーズ含有ピッチの炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着、発泡の抑制効果が低減し、予備熱処理温度が450 ℃を超える場合は、熱処理後の粉砕時に、粉末の粒子形状が鱗片状になり易い。
また、上記した温度範囲における予備熱処理時間は、30分〜12時間であることが好ましい。
【0047】
予備熱処理時間が30分未満の場合、メソフェーズ含有ピッチの炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着、発泡の抑制効果が低減し、予備熱処理時間が12時間を超える場合、処理時間を長くしても上記した抑制効果に差が見られず、生産性の面から好ましくない。
上記した予備熱処理も、メソフェーズ含有ピッチの酸化防止のために、非酸化性雰囲気下で行う。
【0048】
予備熱処理時の雰囲気が酸化性雰囲気の場合は、黒鉛化度が高いという本発明の効果が損なわれることがある。
なお、前記した非酸化性雰囲気としては、N2、ArおよびHeなどから選ばれる1種または2種以上の不活性ガス雰囲気、減圧雰囲気、真空雰囲気、非酸化性ガス雰囲気などを用いることができ、メソフェーズ含有ピッチが実質的に酸化しない雰囲気であれば非酸化性雰囲気の内容は特に制限されるものではない。
【0049】
本発明においては、上記した予備熱処理後、メソフェーズ含有ピッチの処理物を粉砕してもよい。
また、さらに、粉砕で得られた粉末の分級を行ってもよい。
なお、本発明における粉砕とは、通常の粉砕以外に解砕をも含む。
〔V.メソフェーズ含有ピッチ、メソフェーズ含有ピッチ処理物の金属酸化物、金属共存下での加熱処理工程:〕
本発明においては、本工程において、下記▲1▼〜▲5▼のメソフェーズ含有ピッチおよび/またはメソフェーズ含有ピッチ処理物(以下、ピッチ、ピッチ処理物とも記す)を、金属酸化物および/または金属の共存下、300 〜1200℃で加熱処理を行う。
【0050】
(本工程で加熱処理するメソフェーズ含有ピッチ、メソフェーズ含有ピッチ処理物:)
[1] :メソフェーズ含有ピッチまたは粒度調整後のメソフェーズ含有ピッチに予備熱処理を施した予備熱処理物(メソフェーズ含有ピッチ処理物)
[2] :メソフェーズ含有ピッチまたは粒度調整後のメソフェーズ含有ピッチから軽質成分を溶媒を用いて抽出除去し、その後予備熱処理を施した予備熱処理物(メソフェーズ含有ピッチ処理物)
[3] :メソフェーズ含有ピッチまたは粒度調整後のメソフェーズ含有ピッチに予備熱処理を施した後、軽質成分を溶媒を用いて抽出除去したメソフェーズ含有ピッチ(メソフェーズ含有ピッチ処理物)
本発明によれば、メソフェーズ含有ピッチ、メソフェーズ含有ピッチ処理物中に金属酸化物および/または金属を共存させ、300 〜1200℃、より好ましくは450 〜950 ℃で加熱処理を行うことによって、上記したピッチ、ピッチ処理物の炭素化時、さらにはその後の黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着、発泡を防止することができる。
【0051】
加熱処理時の温度が300 ℃未満の場合、上記した溶融、粒子同士の融着、発泡の防止効果が低減し、1200℃を超える場合、黒鉛化後粉砕して得られる黒鉛粒子が薄片状あるいは針状になり易く、リチウムイオン二次電池負極用材料として用いた場合、一方向に配列し易くなる。
なお、本工程においては、メソフェーズ含有ピッチ、メソフェーズ含有ピッチ処理物の酸化防止のために、非酸化性雰囲気下で加熱処理を行う。
【0052】
なお、上記した非酸化性雰囲気としては、N2、ArおよびHeなどから選ばれる1種または2種以上の不活性ガス雰囲気、減圧雰囲気、真空雰囲気、非酸化性ガス雰囲気などを用いることができ、メソフェーズ含有ピッチが実質的に酸化しない雰囲気であれば非酸化性雰囲気の内容は特に制限されるものではない。
メソフェーズ含有ピッチ、メソフェーズ含有ピッチ処理物の金属酸化物、金属の共存下での加熱処理時間は、到達温度や昇温速度によって異なり、30分程度から数十日程度まで適宜選択される。
【0053】
本発明における金属酸化物としては、Fe2O3 、Cr2O3 、Al2O3 、K2O 、MgO 、CuO 、MnO2、MoO3、SiO2、SeO2、Sb2O3 、Bi2O3 およびCa8Ni(PO4)6 などから選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。
なお、本発明においては、ピッチ、ピッチ処理物の炭素化時、その後の黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着、発泡の抑制効果、経済性、安全性の観点から、金属酸化物としてFe2O3 を用いることが最も好ましい。
【0054】
また、本発明における金属としては、Cu、PtおよびPdなどから選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。
さらに、本発明における金属酸化物、金属としては、メソフェーズ含有ピッチ、メソフェーズ含有ピッチ処理物の黒鉛化処理温度よりも低い温度で分解もしくは蒸発する金属酸化物、金属であることが好ましい。
【0055】
本発明においては、粒状のメソフェーズ含有ピッチおよび/またはメソフェーズ含有ピッチ処理物と金属酸化物および/または金属とを、予め均一に混合しておくことが好ましい。
混合方法としては、特に制限されるものではなく、機械的な乾式混合や液状媒体を介した湿式混合などが例示される。
【0056】
また、ピッチ、ピッチ処理物との混合性、ピッチ、ピッチ処理物の炭素化時、その後の黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着、発泡の抑制効果の観点から、金属酸化物、金属の平均粒径は、ピッチ、ピッチ処理物の平均粒径よりも小さいことが好ましい。
本発明においては、金属酸化物および/または金属の平均粒径が、レーザー回折式粒度分布測定装置による50%累積体積平均粒径として、5μm 以下であることが特に好ましい。
【0057】
金属酸化物および/または金属の配合量は、合計量として、全配合物中で0.1 〜70%(質量百分率)であることが好ましく、さらには、全配合物中で1〜30%(質量百分率)であることがより好ましい。
上記した配合量が0.1 %未満の場合は、ピッチ、ピッチ処理物の炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着、発泡を抑制することが困難となると共に、得られる黒鉛材料の黒鉛化度が低下することがある。
【0058】
また、上記した配合量が70%を超える場合、ピッチ、ピッチ処理物の炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着、発泡の抑制効果および黒鉛化度の向上効果が実用上飽和し、経済的でない。
なお、メソフェーズ含有ピッチの黒鉛化処理を行う前に、金属酸化物、金属の共存下、加熱処理を施す工程を導入することによって、メソフェーズ含有ピッチの溶融、粒子同士の融着、発泡が防止できるメカニズムは、下記のように推定される。
【0059】
すなわち、メソフェーズ含有ピッチを金属酸化物および/または金属の共存下で加熱すると、それらの酸化および触媒作用によってメソフェーズ含有ピッチの脱水素開始温度が低下し、比較的低温でメソフェーズ含有ピッチの炭素化が進行し、溶融を防止できるためと考えられる。
本発明においては、金属酸化物、金属の共存下での加熱処理は、複数回実施してもよい。
【0060】
本発明においては、前記したように、ピッチ、ピッチ処理物の炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着、発泡の抑制効果をさらに向上するために、金属酸化物および/または金属の共存下での加熱処理の前に、前記したピッチ、ピッチ処理物の軽質成分を除去するための溶媒抽出工程、予備熱処理工程を設けることが好ましい。
【0061】
上記した溶媒抽出工程、予備熱処理工程はそのいずれかを設けてもよく、その両者を設けてもよい。
また、金属酸化物、金属の共存下での加熱処理工程の前に溶媒抽出工程および予備熱処理工程の両者を設ける場合は、溶媒抽出工程の後に予備熱処理工程を設けてもよく、予備熱処理工程の後に溶媒抽出工程を設けてもよい。
【0062】
また、本発明においては、金属酸化物および/または金属の共存下での加熱処理の後、過剰の金属酸化物、金属を除去してもよい。
これは、黒鉛化処理の際に、過剰の金属酸化物、金属が大量に分解もしくは蒸発することによる黒鉛の形状変化などを防ぐためである。
金属酸化物、金属は、分級などによって除去できるが、磁力を利用して除去することもできる。
【0063】
〔VI. 黒鉛化処理前の粒度調整工程:〕
本発明においては、前記した金属酸化物および/または金属の共存下での加熱処理の後、黒鉛化処理の前に粒度調整を行うことが好ましい。
この場合、粒度調整法として、粉砕または分級または粉砕および分級の両者を用いることができる。
【0064】
粉砕機としては、ジェットミル、振動ボールミル、衝撃ミル、ハンマーミル、マイクロアトマイザーなどを使用することができ、粉砕機の方式、型式は特に制限されるものではない。
なお、本発明における粉砕とは、通常の粉砕以外に解砕をも含む。
分級機としては、機械式分級機、風力式分級機などを使用することができ、分級機の方式、型式は特に制限されるものではない。
【0065】
粉砕、分級後の粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置による50%累積体積平均粒径として、1〜100 μm であることが好ましく、さらには5〜50μm であることがより好ましい。
これは、本発明で製造される黒鉛材料をリチウムイオン二次電池負極用材料として用いる場合、上記した平均粒径が1μm 未満の場合、電解液の分解が激しくなり、サイクル特性の低下を生じる原因となり、100 μm を超える場合は、電極の厚みむらや不良を生じることがあるためである。
【0066】
〔VII.黒鉛化処理工程:〕
本発明においては、前記した金属酸化物および/または金属の共存下での加熱処理後のメソフェーズ含有ピッチ熱処理物、もしくは該メソフェーズ含有ピッチ熱処理物を粒度調整した粉末を、黒鉛化する。
黒鉛化炉としては、通常工業的に用いられる黒鉛化炉などを用いることができる。
【0067】
黒鉛化時の温度は、特に制限されるものではないが、本発明においては、黒鉛化度を上げる観点から黒鉛化時の温度が高いほど好ましい。
本発明においては、本発明で製造される黒鉛材料をリチウムイオン二次電池負極用材料などとして用いる場合に要求される層状構造が十分発達した高度の黒鉛化度を有する黒鉛を製造するために、非酸化性雰囲気下で好ましくは2500℃以上、より好ましくは2800℃以上の温度で黒鉛化処理を行う。
【0068】
なお、黒鉛化度を上げる観点から黒鉛化時の温度の上限は特に制限されるものではないが、黒鉛化炉の設備上の面から、黒鉛化の温度は3000℃以下であることが好ましい。
本発明においては、前記した加熱処理時に共存せしめる金属酸化物および/または金属として、黒鉛化処理時の温度より低い温度で分解または蒸発する金属酸化物、金属を選択、使用し、黒鉛化処理によって、ピッチ、ピッチ処理物の加熱処理後に残存する金属酸化物、金属を分解、気化などによって除去することが好ましい。
【0069】
なお、黒鉛化処理後に残存する場合は、分級、磁選などの方法で除去することも可能である。
【0070】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
なお、以下の実施例に示す平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置による50%累積体積平均粒径を示し、重量部は、質量部を示す。
(参考例1)
ナフタレンをHF/BF3の存在下で重合して得られた下記に示すメソフェーズ含有ピッチを60mesh以下に粉砕した。
【0071】
〔メソフェーズ含有ピッチ:〕
TI(トルエン不溶分量): 73 %
QI(キノリン不溶分量): 44 %
軟化点(メトラー法) :255 ℃
偏光顕微鏡で観察した光学的異方性相含有率:100 面積%
次に、得られたメソフェーズ含有ピッチの粉末:70重量部に、平均粒径:0.3 μm のヘマタイト(Fe2O3) を30重量部配合し、乾式混合した後、窒素雰囲気下、450 ℃(到達温度)で6時間加熱処理を行った。
【0072】
加熱処理後のピッチ(炭素材料)は、部分的に僅かに融着が見られる程度で、粒状の形態を維持し、発泡は見られなかった。
得られた加熱処理後のピッチを再度粉砕し、60mesh以下(平均粒径:30μm)になるように粒度調整し、同時にヘマタイトを分級除去した。
次に、得られた粉末を黒鉛るつぼに入れ、るつぼの周囲にコークスブリーズを充填し、3000℃で黒鉛化を行った。
【0073】
得られた黒鉛粉末の粒子形状は、粒状(非鱗片状、非針状)であり、粒子同士の融着は見られなかった。
次に、得られた黒鉛粉末の黒鉛化度を、X線回折法によって測定した。
すなわち、得られた黒鉛粉末の結晶構造をX線回折によって解析し、黒鉛の(002) 面の格子面間距離:d002 および結晶子の大きさ:Lc を求めた。
【0074】
また、得られた黒鉛粉末を用い、下記に示す三極式電池を組み立て、ドライボックス中で、アルゴンガス流通下、下記条件で充放電容量を測定した。
〔セル形式:〕
3極式ビーカーセル
対極および参照極:金属リチウム
作用極:黒鉛粉末を銅箔上に塗布、さらにプレスしたもの
作用極の製法:
黒鉛粉末:100 重量部に、10重量部のPVDF(ポリビニリデンジフロライド)を混合した後、得られた混合物にN−メチルピロリドンを添加し、PVDFを十分に溶解し、銅箔上に塗布した。
【0075】
100 ℃で予備乾燥後、ロールプレスを用いてプレスし、さらに、100 ℃、真空条件下でN−メチルピロリドンを除去し、作用極とした。
〔電解液:〕
電解液としては、エチレンカーボネートおよび炭酸ジエチルを1:1(質量比)で混合した溶媒に1Mの過塩素酸リチウムを溶解した電解液を用いた。
【0076】
〔充放電試験:〕
上記の三極式電池を用い、充電、放電とも電流密度:1.0mA/cm2 、電圧:2.5 〜0Vの条件下で定電流充放電試験を行った。
得られた試験結果を、表3に示す。
表3に示されるように、本発明の黒鉛材料(黒鉛粉末)を用いたリチウムイオン二次電池は、高い放電容量を示した。
【0077】
(参考例2)
参考例1と同じメソフェーズ含有ピッチを60mesh以下に粉砕した。
次に、得られたメソフェーズ含有ピッチの粉末:100 重量部に対してピリジン:600 重量部を添加、混合し、抽出溶媒(ピリジン)の還流条件下、130 ℃で3時間抽出を行った。
【0078】
抽出後に得られた固液混合物を濾過した後、濾過残渣にさらにピリジン600 重量部を添加、混合し、初回と同一条件で抽出、濾過を行った。
次に、濾過残渣を、窒素雰囲気下、120 ℃で1時間加熱し、ピリジンを除去した。
ピリジン除去後に得られた粉末:85重量部に、平均粒径:0.3 μm のヘマタイト(Fe2O3) を15重量部配合し、湿式混合した後、窒素雰囲気下、550 ℃(到達温度)で3時間加熱処理を行った。
【0079】
なお、上記した湿式混合は、ピリジン除去後に得られた粉末とヘマタイトとをエタノール媒体中で混合した後、エタノールを乾燥、除去する方法で行った。
加熱処理後のピッチ(炭素材料)は、全く溶融、融着しておらず、粉状の形態を維持し、発泡も見られなかった。
次に、得られた粉末中のヘマタイトを分級除去した後、参考例1と同様の方法で黒鉛化処理を行った。
【0080】
得られた黒鉛粉末の粒子形状は、粒状(非鱗片状、非針状)であり、粒子同士の融着は見られなかった。
次に、得られた黒鉛粉末の黒鉛化度を、参考例1と同様の方法で測定した。
また、得られた黒鉛粉末を用い、前記した参考例1と同様の方法で三極式電池を組み立て、参考例1と同一の条件下で定電流充放電試験を行った。
【0081】
得られた試験結果を、表3に示す。
表3に示されるように、本発明の黒鉛材料(黒鉛粉末)を用いたリチウムイオン二次電池は、高い放電容量を示した。
(実施例1)
参考例1と同じメソフェーズ含有ピッチを、粗粉砕し、常圧、窒素雰囲気下、400 ℃で5時間、溶融状態で攪拌しながら加熱処理(:予備熱処理)した。
【0082】
次に、熱処理物を冷却、固化して得られた熱処理ピッチを、60mesh以下に粉砕した。
次に、得られた熱処理ピッチの粉末:90重量部に、平均粒径:0.3 μm のヘマタイト(Fe2O3) を10重量部配合し、乾式混合した後、窒素雰囲気下、650 ℃(到達温度)で3時間加熱処理を行った。
【0083】
加熱処理後のピッチ(炭素材料)は、全く溶融、融着しておらず、粉状の形態を維持し、発泡も見られなかった。
次に、得られた粉末中のヘマタイトを分級除去した後、参考例1と同様の方法で黒鉛化処理を行った。
得られた黒鉛粉末の粒子形状は、粒状(非鱗片状、非針状)であり、粒子同士の融着は見られなかった。
【0084】
次に、得られた黒鉛粉末の黒鉛化度を、参考例1と同様の方法で測定した。
また、得られた黒鉛粉末を用い、前記した参考例1と同様の方法で三極式電池を組み立て、参考例1と同一の条件下で定電流充放電試験を行った。
得られた試験結果を、表3に示す。
表3に示されるように、本発明の黒鉛材料(黒鉛粉末)を用いたリチウムイオン二次電池は、高い放電容量を示した。
【0085】
(実施例2)
参考例1と同じメソフェーズ含有ピッチを60mesh以下に粉砕した。
次に、得られたメソフェーズ含有ピッチの粉末:100 重量部に対してコールタールの蒸留で得られたタール系中油:600 重量部を添加、混合し、抽出溶媒(タール系中油)の還流条件下、130 ℃で3時間抽出を行った。
【0086】
次に、抽出後に得られた固液混合物を濾過した後、濾過残渣にさらに上記したタール系中油:600 重量部を添加、混合し、初回と同一条件で抽出、濾過を行った。
次に、濾過残渣を、窒素雰囲気下、120 ℃で1時間加熱し、タール系中油を除去した。
【0087】
タール系中油除去後に得られた粉末を、窒素雰囲気下、300 ℃で6時間、非溶融状態で熱処理した。
次に、熱処理物(熱処理ピッチ)を60mesh以下に解砕した。
得られた熱処理ピッチの粉末:95重量部に、平均粒径:0.3 μm のヘマタイト(Fe2O3) を5重量部配合し、乾式混合した後、窒素雰囲気下、750 ℃(到達温度)で3時間加熱処理を行った。
【0088】
加熱処理後のピッチ(炭素材料)は、全く溶融、融着しておらず、粉状の形態を維持し、発泡も見られなかった。
次に、得られた粉末中のヘマタイトを分級除去した後、参考例1と同様の方法で黒鉛化処理を行った。
得られた黒鉛粉末の粒子形状は、粒状(非鱗片状、非針状)であり、粒子同士の融着は見られなかった。
【0089】
次に、得られた黒鉛粉末の黒鉛化度を、参考例1と同様の方法で測定した。
また、得られた黒鉛粉末を用い、前記した参考例1と同様の方法で三極式電池を組み立て、参考例1と同一の条件下で定電流充放電試験を行った。
得られた試験結果を、表3に示す。
表3に示されるように、本発明の黒鉛材料(黒鉛粉末)を用いたリチウムイオン二次電池は、高い放電容量を示した。
【0090】
(実施例3)
参考例1と同じメソフェーズ含有ピッチを、粗粉砕し、窒素雰囲気下、400 ℃で5時間、溶融状態で攪拌しながら熱処理した。
次に、熱処理物を冷却、固化して得られた熱処理ピッチを、60mesh以下に粉砕した。
【0091】
次に、得られた熱処理ピッチの粉末:100 重量部に対してコールタールの蒸留で得られたタール系中油:600 重量部を添加、混合し、抽出溶媒(タール系中油)の還流条件下、130 ℃で3時間抽出を行った。
次に、抽出後に得られた固液混合物を濾過した後、濾過残渣にさらに上記したタール系中油:600 重量部を添加、混合し、初回と同一条件で抽出、濾過を行った。
【0092】
次に、濾過残渣を、窒素雰囲気下、120 ℃で1時間加熱し、タール系中油を除去した。
タール系中油除去後に得られた粉末:98重量部に、平均粒径:0.3 μm のヘマタイト(Fe2O3) を2重量部配合し、前記した実施例2と同様の方法で湿式混合した後、窒素雰囲気下、850 ℃(到達温度)で3時間加熱処理を行った。
【0093】
加熱処理後のピッチ(炭素材料)は、全く溶融、融着しておらず、粉状の形態を維持し、発泡も見られなかった。
次に、得られた粉末を、参考例1と同様の方法で黒鉛化処理を行った。
得られた黒鉛粉末の粒子形状は、粒状(非鱗片状、非針状)であり、粒子同士の融着は見られなかった。
【0094】
次に、得られた黒鉛粉末の黒鉛化度を、参考例1と同様の方法で測定した。
また、得られた黒鉛粉末を用い、前記した参考例1と同様の方法で三極式電池を組み立て、参考例1と同一の条件下で定電流充放電試験を行った。
得られた試験結果を、表3に示す。
表3に示されるように、本発明の黒鉛材料(黒鉛粉末)を用いたリチウムイオン二次電池は、高い放電容量を示した。
【0095】
(実施例4〜6)
前記した実施例3において、850 ℃での加熱処理に際してのメソフェズ含有ピッチの粉末に対するヘマタイト(Fe2O3) の配合量を、表3のように変えた以外は実施例3と同様の方法で黒鉛粉末を製造した。
次に、得られた黒鉛粉末の黒鉛化度を、参考例1と同様の方法で測定した。
【0096】
また、得られた黒鉛粉末を用い、前記した参考例1と同様の方法で三極式電池を組み立て、参考例1と同一の条件下で定電流充放電試験を行った。
得られた試験結果を、表3に示す。
表3に示されるように、加熱処理時のヘマタイト(Fe2O3) の配合量を増加することによって、得られる黒鉛粉末の黒鉛化度が向上し、リチウムイオン二次電池の放電容量が増加することが分かった。
【0097】
(比較例1)
参考例1において、450 ℃での加熱処理時にヘマタイト(Fe2O3) を配合しない以外は参考例1と同様の方法で黒鉛粉末を製造した。
なお、450 ℃での加熱処理後のピッチ(炭素材料)は完全に溶融し、激しく発泡しており、また、黒鉛粉末の粒子形状は、鱗片状であった。
【0098】
次に、得られた黒鉛粉末の黒鉛化度を、参考例1と同様の方法で測定した。
また、得られた黒鉛粉末を用い、前記した参考例1と同様の方法で三極式電池を組み立て、参考例1と同一の条件下で定電流充放電試験を行った。
得られた試験結果を、表3に示す。
表3に示されるように、450 ℃での加熱処理時にヘマタイト(Fe2O3) を配合しない場合、得られる黒鉛粉末の黒鉛化度が低く、放電容量が低かった。
【0099】
(比較例2)
参考例1と同じメソフェーズ含有ピッチを、60mesh以下に粉砕し、得られたメソフェーズ含有ピッチの粉末を、空気の流通下、下記条件で350 ℃で熱処理(不融化処理)を行った。
〔熱処理(不融化処理)条件:〕
空気流量:50ml/min・g-ピッチ
常温から200 ℃までの昇温速度 :5℃/min
200 ℃から350 ℃までの昇温速度:1℃/min
350 ℃での保持時間:60分
次に、引き続き、ヘマタイト(Fe2O3) を配合せずに、窒素雰囲気下、450 ℃で6時間加熱処理を行った。
【0100】
加熱処理後のピッチ(炭素材料)は、全く溶融、融着しておらず、粒状の形態を維持していた。
次に、得られた粉末を黒鉛るつぼに入れ、参考例1と同様の方法で黒鉛粉末を製造した。
次に、得られた黒鉛粉末の黒鉛化度を、参考例1と同様の方法で測定した。
【0101】
また、得られた黒鉛粉末を用い、前記した参考例1と同様の方法で三極式電池を組み立て、参考例1と同一の条件下で定電流充放電試験を行った。
得られた試験結果を、表3に示す。
表3に示されるように、メソフェーズ含有ピッチを酸化性雰囲気で処理することによって、メソフェーズ含有ピッチの炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着は防止できるが、得られる黒鉛粉末の黒鉛化度が低下し、この黒鉛材料(黒鉛粉末)を用いたリチウムイオン二次電池の放電容量は低い値を示した。
【0102】
【表3】
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、メソフェーズ含有ピッチの炭素化、黒鉛化時の溶融、粒子同士の融着および発泡を防止することが可能で、さらには、黒鉛化度の高い黒鉛材料を得ることが可能となった。
また、本発明によれば、充放電容量が大きいリチウムイオン二次電池を得ることが可能となった。
Claims (4)
- 触媒の存在下で縮合多環芳香族炭化水素を重合して得られるメソフェーズ含有ピッチを、非酸化性雰囲気中、200 〜450 ℃で加熱処理した後、得られた熱処理物に金属酸化物および/または金属を添加し、非酸化性雰囲気中、300 〜1200℃で加熱処理することを特徴とする炭素材料の製造方法。
- 前記金属酸化物が、酸化鉄であることを特徴とする請求項1に記載の炭素材料の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法で得られた炭素材料を黒鉛化処理することを特徴とする黒鉛材料の製造方法。
- 請求項3に記載の製造方法で得られた黒鉛材料からなることを特徴とするリチウムイオン二次電池負極用材料。
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