JPWO2006109497A1 - メソカーボンマイクロビーズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
粒度分布が狭く、球状で表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを収率よく製造する方法を提供する。炭素質成分(1)と、この炭素質成分(1)より芳香族性の低い炭素質成分(2)との混合物であって、前記炭素質成分(1)の芳香族炭素分率fa1に対する炭素質成分(2)の芳香族炭素分率fa2の比fa2/fa1が0.95以下である混合物を熱処理してメソカーボンマイクロビーズを製造する。前記炭素質成分(1)は、コールタール及びコールタールピッチから選択された一種で構成してもよい。また、前記炭素質成分(2)は、例えば、エチレンボトム油、デカントオイル、アスファルテン、これらを原料とするピッチなどで構成してもよい。炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜30/70であってもよい。
Description
本発明は、リチウム二次電池負極材料、特殊炭素材などの種々の炭素材料に有用なメソカーボンマイクロビーズ(未焼成および焼成メソカーボンマイクロビーズ)の製造方法およびメソカーボンマイクロビーズ、ならびリチウム二次電池用負極に関する。
メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)などの炭素前駆体を炭素化(炭素化処理、焼成処理)した炭素材料(又は炭素粉末材料)は、種々の用途、例えば、負極活物質(例えば、リチウムイオン二次電池の負極活物質など)、導電性充填剤などの種々の用途に用いられている。特に、リチウム二次電池は、携帯機器端末の電源として、小型で軽量の高エネルギー密度型リチウムイオン二次電池が注目されており、今後も自動車搭載電源、電力貯蔵などの用途への応用など需要の伸びが期待されている。すなわち、焼成処理(黒鉛化処理)されたMCMBは、黒鉛類似の構造を有するため、インターカレーション反応によりリチウムイオンの吸蔵放出が可能となり、リチウム二次電池の高容量負極材料として用いられている(J. Power Sources 43-44(1993)233-239(非特許文献1)、 The Electrochemical Society Extended Abstracts, Vol.93-1 (1993) 8(非特許文献2)、炭素 No.165(1994)261-267(非特許文献3)など)。焼成(黒鉛化)処理されたMCMB(焼成MCMB)は、放電容量、効率、レート特性、かさ密度、電解液との低反応性など性能のバランスがよいものの、天然黒鉛あるいは人造黒鉛と比較してやや結晶性が低く、リチウム2次電池用負極材として用いる場合、放電容量が劣る傾向にある。このような焼成MCMBの放電容量は、焼成温度を上昇させるほど、結晶化度の向上にともなってある程度向上するが、焼成温度の上昇には、設備上およびコスト上の制約があり、実用上限界がある。
このような炭素材料としての特性(放充電容量、可逆容量、サイクル特性及び熱安定性など)は、使用される炭素材料の結晶化度、表面形態、粒子サイズ、内部粒子構造、組成などに依存するため、このような炭素材料としての特性を向上又は付与できるメソカーボンマイクロビーズへの関心が高まっている。
従来から、メソカーボンマイクロビーズは、ピッチ類を300〜500℃程度に加熱し、生成するメソカーボンマイクロビーズを溶剤分別などの手段により分離回収することにより製造されている。しかしながら、この方法は生産効率が低く、分離して得られるMCMBの収率は、原料タール重量のせいぜい10%程度にとどまっている。また、得られるMCMBの粒度が不均一で、表面の平滑性にも欠ける。
例えば、特公平1−27968号公報(特許文献1)には、(i)コールタールを温度300〜500℃、圧力常圧〜20kg/cm2・Gの条件下に0.5〜50時間熱処理する工程、(ii)得られる熱処理反応生成物を150〜450℃で遠心分離することにより固形分と清澄液とを分離する工程、及び(iii)得られる固形分を洗浄する工程を備えたカーボン微粒子の製造方法が記載されている。また、特開平1−242691号公報(特許文献2)には、石炭系重質油を熱処理し、生成した粗メソカーボンマイクロビーズを分離し、洗浄精製し、乾燥してメソカーボンマイクロビーズを製造するに際し、乾燥後のメソカーボンマイクロビーズを、破壊を生じさせない程度の力で分散させた後、分級しメソカーボンマイクロビーズを製造する方法が記載されている。しかし、これらの方法では、前記のように、粒子表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを得ることができず、また、収率も低い。
また、特公平6−35581号公報(特許文献3)では、ピッチを加熱処理することによりピッチ中に生成する光学的異方性小球体が成長・合体して形成されるバルクメソフェーズを前記バルクメソフェーズの粘度が200ポイズを示す温度より60℃ないし160℃高い温度範囲のシリコンオイル浴中に微分散させた後、冷却することによって微分散したメソフェーズを固化させてバルクメソフェーズからメソカーボンマイクロビーズを製造している。しかし、この方法でも、前記のように、表面が滑らかなメソフェーズビーズは得ることができない。また、一度生成した光学的異方性小球体(すなわち、メソカーボンマイクロビーズ)をさらなる加熱処理により合体させ、バルクメソフェーズとして沈降凝集させて、得られるバルクメソフェーズを単離して粉砕するという粉砕工程が必要であり、工程数が増加し製造手順が煩雑になる。さらに、粉砕したバルクメソフェーズをシリコンオイル浴中で加熱処理し、その後シリコンオイルをアルコールなどで洗浄する必要があるため、使用済みのシリコンオイルや洗浄に使用したアルコール等の廃液が発生してコスト面、環境面において不利である。
さらに、特公昭63−1241号公報(特許文献4)では、ピッチ類を350℃〜500℃にて熱処理してピッチ中にメソカーボン小球体を生成させ、生成したメソカーボン小球体を分離するメソカーボン小球体の製造方法において、ピッチを熱処理し、メソカーボン小球体を生成させ、次いで沸点300℃乃至前記熱処理温度の炭化水素油を熱処理物に対して1/4倍量以上添加し、再び熱処理してメソカーボン小球体を生成させることを繰り返し行い、得られた多量にメソカーボン小球体を含有するピッチ類からメソカーボン小球体を分離するメソカーボン小球体の製法が記載されている。また、この文献の実施例には、ピッチ収率38%でピッチ中のメソフェーズ量が31%のピッチが得られ、得られたメソカーボンは、20〜150μの径の球であったことが記載されている。しかし、この文献の方法でも表面が平滑なメソカーボンマイクロビーズを得ることができない。また、ピッチ類を熱処理してピッチ中にメソカーボン小球体を生成させてから、炭化水素油を添加して再度加熱処理しているので、工程が煩雑である。
また、メソカーボンマイクロビーズの凝集又は合体を抑制する方法として、特許第3674623号公報(特許文献5)には、石油系重質油を熱処理し、生成した粗メソカーボンマイクロビーズの表面を、厚み0.1〜1μmのピッチ成分で被覆する方法が開示されている。しかし、この文献の方法でも、MCMB表面を平滑にできないだけでなく、リチウム二次電池の負極材料として用いた場合、放電容量や初期効率を低下させる一次QI分がMCMB表面に付着している。なお、MCMB表面のフリーカーボン量(一次QI分)を低減する方法として、MCMBのα成分、β成分、γ成分を調整し、揮発分を減少させ、焼成雰囲気を少し酸化雰囲気にすることにより、フリーカーボンを選択的に燃焼させる方法が知られているが、この方法では、酸化によりMCMBの結晶性が低下し、しかも、粘着成分が増大して、凝集状態のMCMBが得られるため、球状のMCMBを得ることが出来ない。
なお、石炭系ピッチなどの炭素化可能な材料と、他の材料とを組み合わせてメソフェーズを生成させる種々の方法が知られている。例えば、特許第2697482号公報(特許文献6)には、ピッチを水素化し、熱処理してその軟化点を250〜380℃の範囲にし、このピッチに対し、さらに微細化処理および酸化処理を施すピッチ系素材の製造方法が開示されている。この文献には、前記水素化処理を予め移行可能な水素を保持した溶媒をピッチに混合して水素化処理してもよいことが記載されている。具体的には、例えば、実施例1において、軟化点が120℃の石炭系ピッチ100重量部に石油系FCC残油を170重量部混合して、420℃で水素化処理した後、420℃で熱処理し、熱処理したピッチを平均粒子径10μmまで微粒子化し、酸化処理して、ピッチ系素材を得たことが記載されている。しかし、この文献の方法では、生成物がバルクメソフェーズとなり、球状の粒子を得ることができない。このため、炭素材としての密度を高めることが困難であり、組織が不均一化する。また、粉砕するため表面が滑らかな粒子を得ることは困難である。さらに、粉粒状とするために、粉砕処理および酸化処理を必要とし、プロセスが煩雑化し、コストアップにもつながる。
また、J. Anal. Appl. Prosis, Vol.68/69, (2003)(非特許文献4)には、軟化点SPが95℃の含浸用コールタールピッチと、SPが127℃の石油ピッチA−240(「Energy & Fuels 1993, 7」の第421頁には芳香族炭素分率=0.89の石油系ピッチと記載)とを固体状態で混合し、窒素吹き込み下での熱処理によりSPが176℃以上のピッチを合成し、初期段階でのメソフェーズの生成と固形分(一次キノリン不溶分QI)の影響を調べ、石油ピッチの混合によりメソフェーズの生成促進ならびに一次キノリン不溶分によるメソフェーズの合体抑制効果を報告している。そして、この文献には、生成したピッチは水素リッチなため、熱ろ過によりメソフェーズ相とアイソトロピック相とを容易に分離できる可能性があること、分離後のメソフェーズピッチは、これまでと異なる可塑性が期待でき、含浸性改良への可能性があることを報告している。しかし、生成ピッチの軟化点が176℃以上であり、この文献の方法では、メソフェーズ相を工業的に効率よく分離することは実用上困難であり、ほとんど熱可塑性のないMCMBを製造することを目的とはしていない。たとえ、この文献の方法で得られた生成物からメソフェーズ相を分離したとしても、球状の粒子を得ることはできない。また、粒子表面に一次キノリン不溶分が付着し、表面に平滑性を付与できない。そのため、このような方法により得られた粒子を負極用途に使用すると、放電容量などの特性が低下する。なお、この文献には、結晶性に関する報告もない。
さらに、特開昭61−271392号公報(特許文献7)および特開昭61−215692号公報(特許文献8)には、石炭系ピッチに石油系ピッチを混合し熱処理することによる水素化処理後、減圧あるいは不活性ガスを吹き込むことにより、大部分がメソフェーズ組織であり、比較的高軟化点の炭素繊維用メソフェーズピッチを製造する方法が開示されている。また、特公昭62−23084号公報(特許文献9)にも、ほぼ同様の方法により、大部分が等方性のプリメソフェーズピッチを製造し、紡糸性、不融化性などを改善できることが開示されている。これらのいずれの方法も、大部分をメソフェーズあるいはプリメソフェーズ組織で占める高軟化点ピッチを製造し、高い軟化点の石炭ピッチを原料とし、高い軟化点の石油ピッチを水素化剤として使用している。そして、水素化後は真空あるいは不活性ガスを吹き込むことにより水素化剤を除去し、同時に軟化点を向上させるものである。しかし、メソフェーズ組織を分離することを想定しておらず、ピッチが高い軟化点であるためメソフェーズ組織を分離することは困難である。すなわち、これらの文献の方法では、メソフェーズを球状化(メソフェーズの凝集又は合体抑制)するための固形分(一次QI分)が、紡糸時の糸切れ原因になるため、予めあるいは製造の途中で除去されており、球状粒子を形成し得ない。さらに、上記とほぼ同様な方法により、コールタール成分にエチレンタール成分が反応した軟化点280〜308℃のメソフェーズピッチを製造し、不融化性を改善できる技術も報告されている(非特許文献5、炭素材料学会年会要旨集、17回、(1990))。この文献の方法でも、同様の理由で、球状で、高結晶性のメソカーボンマイクロビーズを収率よく得ることはできない。
特公平1−27968号公報(特許請求の範囲)
特開平1−242691号公報(特許請求の範囲)
特公平6−35581号公報(特許請求の範囲)
特公昭63−1241号公報(特許請求の範囲、実施例)
特許第3674623号公報(特許請求の範囲)
特許第2697482号公報(特許請求の範囲、実施例)
特開昭61−271392号公報(特許請求の範囲)
特開昭61−215692号公報(特許請求の範囲)
特公昭62−23084号公報(特許請求の範囲)
Power Sources 43-44(1993)、第233〜239頁
The Electrochemical Society Extended Abstracts, Vol.93-1 (1993),第8頁
炭素 No.165(1994),第261〜267頁
J. Anal. Appl. Prosis, Vol.68/69, (2003) 第409〜424頁
炭素材料学会年会要旨集、17回、(1990)、第30〜33頁
従って、本発明の目的は、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを収率よく工業的に製造できる方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、粒度分布がシャープで、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを収率よく製造する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、リチウムイオン二次電池の負極活物質などとして有用な結晶性の高い炭素材料(焼成メソカーボンマイクロビーズ)を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、メソカーボンマイクロビーズ(以下、MCMBなどということがある)を生成可能な炭素質成分(1)を、この炭素質成分(1)より芳香族性の低い炭素質成分(2)の存在下で熱処理することにより、表面が滑らかな球状(特に真球状)のメソカーボンマイクロビーズを製造できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、メソカーボンマイクロビーズを生成可能な炭素質成分(1)と、この炭素質成分(1)より芳香族性の低い炭素質成分(2)との混合物を熱処理する工程を少なくとも含むメソカーボンマイクロビーズの製造方法である。この方法において、前記炭素質成分(1)の芳香族炭素分率fa1に対する炭素質成分(2)の芳香族炭素分率fa2の比fa2/fa1は0.95以下(例えば、0.9以下)である。前記炭素質成分(1)は、コールタール及びコールタールピッチから選択された少なくとも一種で構成してもよい。また、前記炭素質成分(1)は、fa1=0.9〜0.99程度の炭素質成分であってもよく、一次キノリン不溶分の含有割合が1〜7重量%程度の炭素質成分であってもよい。
前記炭素質成分(2)は、炭素質成分(1)より芳香族性が低ければよく、例えば、水素化されていてもよいピッチ及び水素化されていてもよい重質油から選択された少なくとも一種で構成してもよい。特に、炭素質成分(2)は、エチレンボトム油、デカントオイル、アスファルテンおよびこれらを原料とするピッチから選択された少なくとも1種で構成してもよい。また、前記炭素質成分(2)は、fa2=0.55〜0.85程度の炭素質成分であってもよく、ヘプタンとジメチルホルムアミドとを、前者/後者(重量比)=1/1の割合で含む混合溶媒に対してヘプタンに溶解する成分(ヘプタン可溶分)の含有割合が1〜40重量%程度の炭素質成分であってもよい。前記前記炭素質成分(1)および前記炭素質成分(2)は、それぞれ60℃以下の軟化点を有していてもよい。
本発明の方法において、本発明の方法において、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜30/70程度であってもよい。
代表的には、前記方法において、(i)炭素質成分(1)が、室温(例えば、15〜25℃程度)で液状であって、fa1=0.93〜0.97および一次キノリン不溶分の含有割合が1〜7重量%の炭素質成分であり、(ii)炭素質成分(2)が、室温で液状であって、fa2=0.6〜0.8、前記ヘプタン可溶分の含有割合が2〜30重量%の炭素質成分であり、(iii)fa2/fa1が0.9以下であり、かつ(iv)炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との割合が、前者/後者(重量比)=90/10〜45/55であってもよい。なお、前記混合物は、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との相溶性を向上させるため、さらに相溶化剤を含んでいてもよい。
前記方法は、少なくとも熱処理する工程を含んでいればよく、さらに焼成処理する工程を含んでいてもよい。このような焼成処理により、焼成メソカーボンマイクロビーズを得ることができる。例えば、前記方法において、熱処理後、生成したメソカーボンマイクロビーズを熱処理生成物(又は反応生成物、単に生成物などということがある)から分離し、この分離したメソカーボンマイクロビーズを焼成処理して、焼成メソカーボンマイクロビーズを得てもよい。
本発明の方法により得られるメソカーボンマイクロビーズ(未焼成および焼成メソカーボンマイクロビーズ)は、表面が滑らかな球状の粒子である。このような本発明のメソカーボンマイクロビーズ(未焼成メソカーボンマイクロビーズ)は、赤外線吸収スペクトルにおいて、芳香族炭素のC−H伸縮振動に対応する波数(例えば、3050cm−1)の吸収強度をI1とし、脂肪族炭素のC−H伸縮振動に対応する波数(例えば、2920cm−1)の吸収強度をI2とするとき、I1/(I1+I2)の値が0.5〜0.8程度であってもよい。また、前記メソカーボンマイクロビーズは、真球状であるとみなして粒径から算出したみかけの比表面積をS1とし、BET比表面積をS2とするとき、S2/S1で表される凹凸度が、1〜5程度であってもよい。
本発明には、前記メソカーボンマイクロビーズを焼成処理(黒鉛化)した球状の焼成メソカーボンマイクロビーズも含まれる。このような焼成メソカーボンマイクロビーズは、球状であるとともに、結晶性が高く、例えば、面間隔d(002)の値が、0.3354〜0.3357nm程度であってもよい。このような焼成メソカーボンマイクロビーズ(炭素材料)は、結晶性が高く、リチウムイオン二次電池の負極活物質などの種々の材料に有用である。そのため、本発明には、前記焼成メソカーボンマイクロビーズで形成されたリチウム二次電池用負極(およびこの負極を備えたリチウム二次電池)も含まれる。
本発明では、メソカーボンマイクロビーズを生成可能な炭素質成分と、この炭素質成分よりも芳香族性の低い炭素質成分との混合物を熱処理するので、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを製造できる。また、本発明では、粒度分布がシャープで、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズを収率よく製造できる。このようなメソカーボンマイクロビーズを炭素化処理した炭素材料(焼成メソカーボンマイクロビーズ)は、結晶性が高く、種々の炭素材料、例えば、リチウムイオン二次電池の負極活物質や放電加工用電極等の特殊炭素材料の一元原料として、あるいはプラスチックの導電用充填材として好適に使用できる。
[メソカーボンマイクロビーズの製造方法]
本発明の方法は、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)を生成可能な炭素質成分(1)を、この炭素質成分(1)より芳香族性の低い炭素質成分(2)の存在下で熱処理してメソカーボンマイクロビーズを製造する。
本発明の方法は、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)を生成可能な炭素質成分(1)を、この炭素質成分(1)より芳香族性の低い炭素質成分(2)の存在下で熱処理してメソカーボンマイクロビーズを製造する。
(メソカーボンマイクロビーズを生成可能な炭素質成分(1))
炭素質成分(1)としては、メソカーボンマイクロビーズを生成可能で、炭素化(又は黒鉛化)可能な材料であればよく、例えば、芳香族化合物(ナフタレン、アズレン、インダセン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセンなどの2環以上の縮合多環式炭化水素;インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェナントロジンなどの3員環以上の複素環と芳香族炭化水素環とが縮合した縮合複素環式化合物;アントラセン油、脱晶アントラセン油、ナフタレン油、メチルナフタレン油、タール(又はコールタール)、クレオソート油、カルボル油、ソルベントナフサなどの芳香族系油など)、樹脂(例えば、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニルなど)、ピッチ類(例えば、石炭系ピッチ(コールタールピッチ)、石油系ピッチなど)、コークスなどが例示できる。なお、前記ピッチとは、石油蒸留残査、石炭液化油、コールタールなどの石油系又は石炭系重質油を蒸留操作に付すことにより沸点200℃未満の低沸点成分を除去した成分をいい、具体的には、コールタールピッチなどを代表として挙げることができる。なお、これらの炭素質成分(1)は、置換基、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基などを有していてもよい。また、炭素質成分(1)は、水素化されていてもよいが、芳香族性が高い成分を用いるという観点から、通常、炭素質成分(1)として、水素化されていない炭素質成分を使用する場合が多い。環集合化合物(ビフェニル、ビナフタレンなどの環集合炭化水素など)なども使用してもよく、この環集合化合物と炭素質成分(1)とを併用することもできる。炭素質成分(1)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
炭素質成分(1)としては、メソカーボンマイクロビーズを生成可能で、炭素化(又は黒鉛化)可能な材料であればよく、例えば、芳香族化合物(ナフタレン、アズレン、インダセン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセンなどの2環以上の縮合多環式炭化水素;インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、フェナントロジンなどの3員環以上の複素環と芳香族炭化水素環とが縮合した縮合複素環式化合物;アントラセン油、脱晶アントラセン油、ナフタレン油、メチルナフタレン油、タール(又はコールタール)、クレオソート油、カルボル油、ソルベントナフサなどの芳香族系油など)、樹脂(例えば、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニルなど)、ピッチ類(例えば、石炭系ピッチ(コールタールピッチ)、石油系ピッチなど)、コークスなどが例示できる。なお、前記ピッチとは、石油蒸留残査、石炭液化油、コールタールなどの石油系又は石炭系重質油を蒸留操作に付すことにより沸点200℃未満の低沸点成分を除去した成分をいい、具体的には、コールタールピッチなどを代表として挙げることができる。なお、これらの炭素質成分(1)は、置換基、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基などを有していてもよい。また、炭素質成分(1)は、水素化されていてもよいが、芳香族性が高い成分を用いるという観点から、通常、炭素質成分(1)として、水素化されていない炭素質成分を使用する場合が多い。環集合化合物(ビフェニル、ビナフタレンなどの環集合炭化水素など)なども使用してもよく、この環集合化合物と炭素質成分(1)とを併用することもできる。炭素質成分(1)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
上記炭素質成分(1)のうち、低沸点および低分子量の非芳香族性の炭化水素成分(例えば、脂肪族性や脂環族性の炭化水素成分など)が少ない炭素質成分が好ましい。例えば、このような炭素質成分(1)としては、コスト面や入手容易性の点から、重質油(特に、コールタールなどの水素化されていない石炭系重質油)、ピッチ類(特に、コールタールピッチなどの水素化されていないピッチ類)などが例示できる。なお、炭素質成分(1)は、予め熱処理(例えば、300〜500℃程度で熱処理)された成分であってもよいが、通常、熱処理されていない炭素質成分(1)である場合が多い。
なお、炭素質成分(1)には、一次QI分(キノリン不溶分)が含まれていてもよく、このような一次キノリン不溶分の含有割合(一次QIという場合がある)は、例えば、炭素質成分(1)全体の0.1〜7重量%(例えば、0.3〜6.5重量%程度)、好ましくは0.8〜4.5重量%、さらに好ましくは1〜4重量%程度であってもよく、通常1〜7重量%(例えば、1.5〜6.5重量%、好ましくは1.8〜6重量%程度)であってもよい。なお、後述するように、一次キノリン不溶分は、生成するMCMBの球状化に寄与する一方、MCMBの結晶化を防げるとともに、MCMBの凝集(又は合体)を抑制する効果があるため、混合物中に適度に含まれているのが好ましい。
また、前記のように炭素質成分(1)は、非芳香族性成分の含有量が少ない成分であるのが好ましい。特に、脂肪族成分(例えば、脂肪族又は脂環族炭化水素成分など)の含有量は、ヘプタンに可溶な成分(ヘプタン可溶分又はヘプタン可溶分量、ヘプタンに溶解可能な成分)を目安とすることができる、例えば、炭素質成分(1)全体に対するヘプタン可溶分の含有割合(HS)は、例えば、5重量%以下(例えば、0又は検出限界〜4重量%程度)、好ましくは3重量%以下(例えば、0〜2.5重量%程度)、さらに好ましくは2重量%以下(例えば、0〜1.8重量%程度)であってもよい。なお、前記ヘプタン可溶分は、ヘプタンとジメチルホルムアミドとを、前者/後者(重量比)=1/1の割合で含む混合溶媒に対してヘプタンに溶解する成分とすることができる。
炭素質成分(1)の軟化点(SP)は、80℃以下(−80℃〜75℃程度)の範囲から選択でき、例えば、70℃以下(例えば、−50〜65℃程度)、好ましくは60℃以下(例えば、−30℃〜55℃程度)、さらに好ましくは50℃以下(例えば、−10℃〜45℃程度)、特に40℃以下(例えば、0〜35℃程度)であってもよく、通常30℃以下(例えば、−20℃〜20℃程度)であってもよい。
また、炭素質成分(1)は、室温(例えば、15〜25℃程度)において、固体状又は液体状(液状)であってもよいが、通常、少なくとも反応生成物からのMCMBの分離回収時の温度(例えば、濾過温度)において液状であるのが好ましいため、炭素質成分(1)は、特に、常温又は室温(例えば、15〜25℃程度)において液状であるのが好ましい。なお、液状の炭素質成分(1)は、室温において流動性を有していれば、粘稠状(粘稠物)であってもよい。
このような低軟化点又は液状の炭素質成分(1)を使用すると、反応生成物からのMCMBの分離を容易にできるとともに、粒径、表面状態などにおいて均一なMCMBを効率よく得ることができる。すなわち、熱処理により反応系(又は炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との反応生成物)の軟化点が、各成分の軟化点よりも上昇し、このような軟化点の上昇は反応生成物からのMCMBの分離又は回収効率を低下させるだけでなく、MCMB粒子表面の平滑性を低下させる。しかし、上記のような低軟化点の炭素質成分(1)(さらには、低軟化点の炭素質成分(2))を使用することにより、反応生成物の軟化点を極端に高くする(例えば、95℃以上、特に130℃以上とする)ことなくMCMBを生成できるため、分離又は回収効率を向上できる。なお、熱処理における圧力を高めることにより、反応中の揮発分や分解物を反応系にとじこめ、反応生成物の軟化点の上昇をある程度抑制することができるが、高圧での反応は効率的でなく、コストアップにつながるばかりか、得られるMCMBの表面状態などを改善できない。
炭素質成分(1)の芳香族炭素分率(芳香族性炭素原子の割合)fa1は、通常、0.65〜0.99(例えば、0.7〜0.98)、好ましくは0.75〜0.98、さらに好ましくは0.78〜0.98(例えば、0.8〜0.97)であってもよい。通常、fa1は、0.85以上(例えば、0.88〜0.995程度)の範囲から選択でき、例えば、0.9以上(例えば、0.91〜0.99程度)、好ましくは0.92以上(例えば、0.93〜0.98程度)、さらに好ましくは0.93〜0.97、通常0.9〜0.99程度であってもよい。
なお、芳香族炭素分率は、炭素原子[芳香族炭素と非芳香族炭素(例えば、脂肪族炭素(特に脂環族炭素、アルキル基などの直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭素など)など)]の合計に対する芳香族炭素の存在比として表される。詳細には、例えば、使用される炭素質成分を試料としてNMRスペクトル(例えば、13C NMRスペクトル)測定し、得られたスペクトルにおける芳香族炭素の面積強度(pa)と非芳香族炭素の面積強度(pf)との比から求めてもよい。すなわち、NMR測定により求める場合、芳香族炭素分率(fa)は、次式で表される。
fa=pa/(pa+pf)
(式中、faは芳香族炭素分率、paは芳香族炭素の面積強度、pfは非芳香族炭素の面積強度を表す)。
(式中、faは芳香族炭素分率、paは芳香族炭素の面積強度、pfは非芳香族炭素の面積強度を表す)。
(芳香族性の低い炭素質成分(2))
炭素質成分(2)は、全体として炭素質成分(1)よりも芳香族性が低ければよく(詳細には、芳香族炭素分率が低ければよく)、例えば、(i)比較的芳香族性の低い炭素質成分を単独で又は2種以上組み合わせた混合物であってもよく、(ii)比較的芳香族性の低い炭素質成分と芳香族性の高い炭素質成分とを組み合わせた混合物であり、その混合物としての芳香族性を全体として低い炭素質成分であってもよい。なお、本発明では、芳香族性を低くするという観点から、炭素質成分(2)として、水素化(又は水素化処理又は水素添加)された炭素質成分を好適に用いることができる。
炭素質成分(2)は、全体として炭素質成分(1)よりも芳香族性が低ければよく(詳細には、芳香族炭素分率が低ければよく)、例えば、(i)比較的芳香族性の低い炭素質成分を単独で又は2種以上組み合わせた混合物であってもよく、(ii)比較的芳香族性の低い炭素質成分と芳香族性の高い炭素質成分とを組み合わせた混合物であり、その混合物としての芳香族性を全体として低い炭素質成分であってもよい。なお、本発明では、芳香族性を低くするという観点から、炭素質成分(2)として、水素化(又は水素化処理又は水素添加)された炭素質成分を好適に用いることができる。
具体的な炭素質成分(2)としては、例えば、比較的低分子量の成分[例えば、アントラセンなどの前記例示の炭素化可能な成分又はその水素化物など]、水素化されていてもよい重質油[石油系重質油(アスファルテンなどの石油蒸留残渣、分解重油(エチレンボトム油、デカントオイル)など)、石炭系重質油(石炭液化油、コールタールなど)およびこれらの水素化物など]、水素化されていてもよいピッチ類[石油系ピッチ、エチレンボトム油ピッチ、石炭系ピッチ(コールタールピッチなど)、およびこれらの水素化物など]が挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。例えば、重質油と重質油の水素化物とを組み合わせてもよく、水素化されていてもよい重質油と水素化されていてもよいピッチとを組み合わせてもよい。
好ましい炭素質成分(2)には、水素化されていてもよい重質油[例えば、水素化されたコールタール(コールタールの水素化物)、石油系重質油(特に、エチレンボトム油)など]、水素化されていてもよいピッチ(特に、コールタールピッチの水素化物)などが挙げられる。特に好ましい炭素質成分(2)には、エチレンボトム油、デカントオイル、アスファルテン、およびこれらを原料とするピッチ、なかでもエチレンボトム油などが挙げられる。
なお、炭素質成分(2)は、一次QI分(一次キノリン不溶分)を含んでいてもよいが、芳香族性の低さの観点から一次QI分を実質的に含んでいない炭素質成分(2)が好ましい。一次QI分(一次キノリン不溶分)の含有割合(一次QI)は、例えば、炭素質成分(2)全体の0.2重量%以下(例えば、0又は検出限界〜0.2重量%)、好ましくは0.1重量%以下(例えば、0〜0.1重量%)、特に0.05重量%以下(例えば、0〜0.05重量%)であってもよい。一次QI分は、熱処理に先立って、濾過などの手段により、炭素質成分(2)から除去してもよい。
炭素質成分(2)は、通常、脂肪族成分(例えば、脂肪族又は脂環族炭化水素成分など)を含有している。このような脂肪族成分の含有量は、前記と同様に、ヘプタン可溶分と相関関係があり、このヘプタン可溶分の含有割合HSを脂肪族成分の含有量の目安とすることができる。例えば、炭素質成分(2)全体のヘプタン可溶分の含有割合(HS)は、0.5〜50重量%程度の範囲から選択でき、1〜40重量%(例えば、2〜35重量%)、好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは4〜25重量%程度であってもよく、通常2〜30重量%程度であってもよい。なお、前記のようにヘプタン可溶分は、ヘプタンとジメチルホルムアミドとを、前者/後者(重量比)=1/1の割合で含む混合溶媒に対してヘプタンに溶解する成分とすることができる。炭素質成分(2)(又は混合物)中に適度な脂肪族成分を含んでいると、混合物中の一次キノリン不溶分(特に、炭素質成分(1)中の一次キノリン不溶分)とともに(又は相俟って)、MCMBの凝集(又は合体)を効率よく抑制できる。このため、通常、MCMBは粒径が大きくなるほど球形を保持できなくなり、バルク状あるいはバルク状が粉砕された粉砕状(又は破砕状)になる傾向があるが、脂肪族成分を適度に含んでいると、粒子表面に対する一次QI分の付着を防止しつつ、粒子表面を平滑化できるとともに、粒径が大きくなった場合であっても、球状のMCMBを効率よく得ることができる。なお、HSは、芳香族炭素分率faとある程度相関関係があり、おおよそfaが0.8を越えると、炭素質成分中にほとんど脂肪族成分が存在しない場合が多い。例えば、FCCデカントオイルは、芳香族炭素分率0.8程度のアロマティクス(芳香族)分子と芳香族炭素分率が0のサチュレート(脂肪族)分子とで構成されており、芳香族炭素分率が0.8以上ではほとんど脂肪族成分が存在しないと記載されている(カーボン用語辞典、炭素材料学会、アグネ承風社、第30頁)。
また、脂肪族成分は、反応生成物の粘度又は軟化点を低減し、しかも、反応生成物において、一次QI分の分散性を向上させる効果があるとともに、一次QI分および反応により生じたキノリン不溶分(又は二次QI分、すなわち、一次QI分よりも一層巨大な芳香族性分子)の析出を促進する効果がある。そのため、反応生成物において、生成したMCMB表面に対する一次QI分の付着を抑制できるとともに、反応生成物からの一次QI分およびMCMBの分離性を高めて、MCMB中に内包される一次QI分(小粒径の粒子)の含有量を低減でき、配列しやすくなるため、焼成MCMBの結晶化度を向上できる。
炭素質成分(2)の芳香族炭素分率fa2は、0.5〜0.9の範囲から選択でき、例えば、0.55〜0.85、好ましくは0.6〜0.82、さらに好ましくは0.65〜0.8、特に0.68〜0.78(例えば、0.7〜0.77)程度であってもよく、通常0.6〜0.8程度であってもよい。fa2が大きすぎると、後述するように、炭素質成分(1)の水素化能力が十分でない場合があり、fa2が小さすぎると脂肪族成分の割合が多くなりすぎて炭素質成分(1)に対する相溶性が低下して結果として十分に炭素質成分(1)を水素化できなくなる虞がある。
炭素質成分(1)の芳香族炭素分率に対する炭素質成分(2)の芳香族炭素分率の比(fa2/fa1)は、例えば、0.95以下(例えば、0.4〜0.95程度)であればよく、例えば、0.5〜0.9(例えば、0.55〜0.88)、好ましくは0.6〜0.85、さらに好ましくは0.63〜0.82、特に0.65〜0.81程度であってもよく、通常0.61〜0.86であってもよい。fa2/fa1が大きすぎると、炭素質成分(1)の水素化能力が低下し、また、前記のように脂肪族成分による二次QIの析出効果も低下する。また、fa2/fa1が小さすぎると、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との相溶性が低下し、スラッジが発生してMCMBにスラッジが混入したり、また、比重差が大きすぎることに起因して相分離し、均一混合および均一反応が困難になったり、熱処理中における脂肪族成分の分解やガム化、さらにはその後の焼成においてMCMBの融着が生じやすくなり好ましくない。スラッジ発生の有無は、炭素質成分(1)および炭素質成分(2)の混合物を用いて確認することができる。なお、炭素質成分(2)から炭素質成分(1)に十分に水素が移行したか否かは、炭素質成分(1)のみの場合と、炭素質成分(1)および炭素質成分(2)を使用した場合とにおいて、生成したMCMBにおける芳香族炭素分率を比べることによりおおよそ評価できる。炭素質成分(1)のみを使用した場合のMCMBの芳香族炭素分率に対して、炭素質成分(1)および(2)を使用した場合のMCMBの芳香族炭素分率が十分に小さくなっていれば、水素の移行が十分に行われたことを示し、あまり変化がなければ水素が十分に移行しなかったことを示す。なお、MCMBは固体であるため、炭素質成分(1)の場合とは異なり、IRなどの固体を利用する測定方法により芳香族炭素分率faを求めてもよい。
炭素質成分(2)の軟化点(SP)は、前記炭素質成分(1)と同様に比較的低いのが好ましく、例えば、80℃以下[例えば、−100℃〜75℃程度、好ましくは70℃以下(例えば、−70〜65℃程度)]、好ましくは60℃以下(例えば、−50℃〜55℃程度)、さらに好ましくは50℃以下(例えば、−30℃〜45℃程度)、特に40℃以下(例えば、−20℃〜35℃程度)であってもよく、通常30℃以下(例えば、−40℃〜20℃程度)であってもよい。
また、炭素質成分(2)は、室温において、固体状又は液体状(液状)であってもよいが、通常、常温又は室温(例えば、15〜25℃程度)において液状であるのが好ましい。なお、液状の炭素質成分(2)は、室温において流動性を有していれば、粘稠状(粘稠物)であってもよい。炭素質成分(2)(および炭素質成分(1)の双方)を液状とすると、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との相溶性をより一層向上できる。
また、炭素質成分(1)の芳香族炭素分率fa1と炭素質成分(2)の芳香族炭素分率fa2との差(fa1−fa2)は、例えば、0.05〜0.4、好ましくは0.1〜0.35、さらに好ましくは0.15〜0.33、特に0.18〜0.3程度であってもよい。
本発明では、メソカーボンマイクロビーズを生成可能な炭素質成分(1)と、この炭素質成分(1)より芳香族性の低い炭素質成分(2)との混合物を熱処理することで、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズが得られる。本発明の方法により、表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズが生成される理由(原理)は定かではないが、芳香族性の低い炭素質成分(2)から炭素質成分(1)に水素(活性水素)の移行が生じることで、熱処理による反応系内の粘度上昇を有効に抑制し、その結果として表面が滑らかな高結晶性のメソカーボンマイクロビーズの発達や生成が促進されるものと考えられる。なお、一次QIも水素化されているものと考えられる。また、反応系内の粘度が有効に低減されるとともに炭素質成分(2)が炭素質成分(1)を被覆しつつ熱処理されるためか、球状(ほぼ真球状)であり、粒度分布の狭いメソカーボンマイクロビーズを効率よく得ることができる。すなわち、炭素質成分(1)に、この炭素質成分(1)よりも芳香族性の低い炭素質成分(2)(例えば、重質油、ピッチなど)を混合することにより、系内を低粘度状に変化させることができ、生成したMCMB粒子間に炭素質成分(2)が介在して、MCMB粒子の凝集を効率よく抑制又は防止できる。
前記混合物において、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜30/70、好ましくは95/5〜35/65、さらに好ましくは90/10〜40/60、特に90/10〜45/55程度であってもよい。なお、炭素質成分(1)の割合が少ないほど、メソカーボンマイクロビーズの収率が上がり、逆に炭素質成分(1)の割合が多いほど収率が下がる傾向がある。そのため、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との重量割合を変化させることで、メソカーボンマイクロビーズの収率を制御することもできる。炭素質成分(2)の割合が小さすぎると、混合の効果が小さくなり、大きすぎると生成するMCMBが大きくなりすぎる虞がある。
なお、前記混合物は、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との相溶性を改善するため、必要に応じて、相溶化剤を含んでいてもよい。相溶化剤としては、例えば、脂肪族炭化水素基を有する芳香族化合物(例えば、メチルナフタレンなどのアルキルアレーン類)、窒素原子,硫黄原子,酸素原子などのヘテロ原子を含む芳香族化合物(例えば、キノリン、N−メチルー2−ピロリドンなど)などが挙げられる。これらの相溶化剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。相溶化剤の割合は、例えば、混合物全体に対して、1〜10重量%程度であってもよい。なお、相溶化剤による相溶性向上効果は、炭素質成分(1)および炭素質成分(2)の軟化点を低くするほど高めることができる。
また、前記混合物において、一次キノリン不溶分の含有割合(一次QI、QAということがある)は、例えば、前記混合物全体の0.05〜6重量%(例えば、0.1〜5重量%程度)、好ましくは0.2〜4重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%程度であってもよく、通常0.4〜3.5重量%(例えば、0.5〜3重量%程度)であってもよい。なお、一次QI分は、生成したMCMBの凝集又は合体を抑制する効果があり、通常、炭素質成分(1)に少なくとも含有されている場合が多く、特に炭素質成分(1)のみに含有されていてもよい。また、熱処理条件が同じであれば、一次QI分の量が多いと、生成するMCMBの粒子径が小さくなる傾向がある。
なお、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)と(必要に応じてさらに相溶化剤と)の混合は、慣用の方法で行うことができ、特に、両成分をより一層確実に相溶化するため、両成分は、固体状で混合するよりも液状で混合するのが好ましい。すなわち、前記混合物は、液状の炭素質成分(1)と液状の炭素質成分(2)とを混合して調製するのが好ましい。混合は、加温下(例えば、70℃程度)で行ってもよく、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)とをより均一に混合するためには、攪拌(攪拌機を用いた攪拌など)、循環(ポンプを用いた循環など)、振動(超音波を利用した振動など)を利用して混合してもよい。
炭素質成分(1)と、この炭素質成分(1)より芳香性の低い炭素質成分(2)との混合物の熱処理は、通常、温度300〜500℃の条件下で行われる場合が多く、好ましくは320〜480℃、さらに好ましくは340〜460℃、特に350〜450℃程度の範囲で行われてもよい。熱処理温度が、300℃未満の場合には、メソカーボンマイクロビーズの形成が十分に達成されず、一方熱処理温度が500℃を超える場合には、反応容器やプラントなどの耐熱性、長期安定性などを維持することが困難となり工業的な実用性に欠ける場合がある。
熱処理時の反応系内は、減圧してもよく、常圧でもよく、あるいは加圧してもよい。通常、反応系内は加圧されている場合が多く、例えば、加圧下での系内の圧力は、0.15〜10MPa程度、好ましくは0.2〜8MPa、さらに好ましくは0.25〜6MPa、特に0.3〜5MPa程度であってもよい。加圧下で熱処理すると、混合物中の揮発性成分が反応系外に留出するのを抑制し、反応生成物の軟化点の上昇を抑制できる。
また、熱処理時間は、使用する原料の種類、熱処理温度等を考慮して適宜選択でき、メソカーボンマイクロビーズが生成されるのに十分な時間、例えば、1〜100時間、好ましくは2〜50時間、さらに好ましくは3〜30時間、特に好ましくは5〜20時間程度であってもよい。
熱処理時は、目的とするメソカーボンマイクロビーズが生成される限り不活性ガスによる反応系内の置換等を行わなくてもよいが、副反応を抑制し、生成されたメソカーボンマイクロビーズの炭素含有量を高めるために、不活性ガス(窒素、ヘリウム、アルゴンガス等)雰囲気下であるのが好ましい。
なお、反応は、バッチ式、セミバッチ式、連続式のいずれであってもよい。
熱処理後の混合物(熱処理生成物、反応混合物、反応生成物)には、反応により生成したキノリン不溶分が含まれている。このような反応により生成するキノリン不溶分は、原料に含まれるキノリン不溶分(一次キノリン不溶分、一次QI分)に対して、二次キノリン不溶分(二次QI分)と呼ばれ、生成したメソカーボンマイクロビーズで構成されている。このような熱処理により生成するキノリン不溶分(二次キノリン分)の含有割合、すなわち、二次キノリン不溶分の含有割合(二次QI又はΔQI)は、熱処理の進行とともに大きくなり、二次QIの増大は、粒子の凝集又は合体が繰り返され、粒径が大きくなることを示す。このような二次キノリン不溶分の含有割合(二次QI、ΔQI)は、例えば、反応生成物全体に対して、3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは8〜20重量%(例えば、10〜15重量%)程度であってもよい。
なお、ΔQIは、(反応生成物のQI×反応収率)−(一次QI)で求めることができる。
ΔQI(熱処理により生成するキノリン不溶分の含有割合)と一次QI(熱処理前の混合物全体のQI)との比(すなわち、ΔQI/一次QI)は、例えば、0.5〜20、好ましくは1〜18、さらに好ましくは2〜15(例えば、2.5〜14)、特に3〜12程度であってもよい。上記比は、MCMBの平均粒径と相関があり、おおよそ比例関係にある場合が多い。一次QIは原料段階で、ΔQIは熱処理条件で調整可能であるが、これらが変わっても、ΔQI/一次QIと平均粒径との関係はほぼ同様の関係にある。そのため、上記比が小さすぎると、MCMBの粒径が小さくなり、また生産性が低下する場合がある。また、上記比が大きすぎると、MCMBの粒径が大きくなりすぎる場合がある。
また、反応生成物においては、反応により混合物の軟化点(又は粘度)に上昇が見られる。このような軟化点又は粘度の上昇は、生成したMCMBの分離性を高めるという観点から、できるだけ低くなるように調整することが好ましい。例えば、反応生成物の軟化点(SP)は、150℃以下の範囲から選択でき、例えば、130℃以下(例えば、30〜120℃程度)、好ましくは110℃以下(例えば、50〜100℃程度)、さらに好ましくは95℃以下(例えば、60〜90℃程度)、通常65〜85℃程度であってもよい。このような反応生成物の軟化点は、炭素質成分(1)および(2)の軟化点や、熱処理条件(例えば、加圧下での熱処理など)により調整できるが、少なくとも軟化点が低い炭素質成分(1)および(2)を用いることにより、反応生成物の軟化点を低減するのが好ましい。
熱処理後の反応生成物は、生成したメソカーボンマイクロビーズ(未焼成又は生のメソカーボンマイクロビーズ、焼成前のメソカーボンマイクロビーズ)を含む成分(液状成分)である。本発明では、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との組み合わせ(特に、一次QI分を含む液状の炭素質成分(1)と、液状の炭素質成分(2)との組み合わせ)により、粒子として分離できないバルクメソフェーズではなく、表面が滑らかな球状のMCMBが得られる。
熱処理後の液状成分(反応混合物又は反応生成物)からのメソカーボンマイクロビーズの回収又は分離は、沈降、濾過、遠心分離、溶媒分別等の当該分野で公知の方法で行われる。炭素質成分(1)と、この炭素質成分(1)よりも芳香族性の低い炭素質成分(2)との混合により、炭素質成分(1)のみの場合よりも低粘度となった熱処理後の液状成分が、生成したメソカーボンマイクロビーズ間に介在し、メソカーボンマイクロビーズの合体や凝集を防止又は抑制していると考えられる。そのためか、本発明では、熱処理後の液状成分からのメソカーボンマイクロビーズの回収又は分離が容易となっている。
回収又は分離されたメソカーボンマイクロビーズは、適切な溶媒[例えば、タール中質油、タール軽質油、有機溶媒(例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン、キノリン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサンなど)など]で洗浄され乾燥(例えば、真空乾燥)される。
なお、メソカーボンマイクロビーズを分離した残余の液状成分は、必要に応じて、再利用してもよい。例えば、本発明の製造方法における炭素質成分(1)及び炭素質成分(2)の少なくとも一種の全部又は一部に代えて残余の液状成分を使用してもよい。
本発明の方法により得られるメソカーボンマイクロビーズの収率は高く、例えば、脱水原料基準で12.5重量%以上(例えば、12.5〜50重量%)、好ましくは12.8重量%以上(例えば、12.8〜40重量%)、さらに好ましくは13重量%以上(例えば、13〜35重量%)、特に13.5重量%以上(例えば、13.5〜30重量%)程度であってもよい。なお、通常、芳香族平面ユニットが大きく、反応活性点である脂肪族炭素を多く有しているほど、MCMBが生成するための反応性が高くなるものの、このような原料は従来存在しなかった。本発明では、炭素質成分(1)と炭素質成分(2)とを組み合わせることにより、芳香族平面ユニットを大きくするとともに、脂肪族炭素を多く有するという互いにトレードオフの関係にある構造を有する原料系を作ることができ、このためMCMBを収率よく得ることができる。
なお、本発明の方法は、前記炭素質成分(1)と炭素質成分(2)とを熱処理する工程を少なくとも含んでいればよく、熱処理後、生成したMCMB(生MCMB)をさらに焼成処理してもよい。このような焼成処理(黒鉛化処理)により、焼成MCMB(黒鉛化されたMCMB)を得ることができる。
本発明には、表面に付着した付着物(又は表面凹凸)が著しく少ない球状(特に真球状)のメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)も含まれる。なお、このようなMCMBは、特に制限されないが、例えば、前記方法(炭素質成分(1)と炭素質成分(2)とを用いる方法)により得ることができる。
例えば、本発明のMCMBを真球状であるとみなして、粒径から算出したMCMBのみかけの比表面積をS1とし、MCMBのBET比表面積をS2とするとき、S2/S1で表されるMCMBの凹凸度は、例えば、6以下(例えば、1〜5.5程度)、好ましくは5以下(例えば、1.1〜4.9程度)、さらに好ましくは1.2〜4.8(例えば、1.3〜4.5程度)、通常1〜5であり、4以下[例えば、1〜3.7、好ましくは1.2〜3.6、さらに好ましくは1.3〜3.3、特に3以下(例えば、1.5〜2.5程度)]にすることもできる。上記凹凸度は、MCMB表面の付着物の付着の程度の目安となる指標であり、凹凸度=1のときMCMBが真球状であることを示し、大きいほど表面の凹凸(又は一次QI分などの付着物)が多いことを示す。なお、みかけの比表面積S1は、MCMB全体の表面積をMCMBの質量で除することにより得ることができ、MCMBの表面積はMCMBの粒径を2rとするとき、真球の表面積、すなわち、S1=4πr2で表すことができる。
なお、本発明のメソカーボンマイクロビーズの形状は、球状(特に真球状)であり、しかも、前記のように、その表面には、付着物がなく(又は付着物が少なく)、大きな凹凸などがなく滑らかである。
また、本発明のメソカーボンマイクロビーズはシャープな粒度分布を示し、粒度が均一である)。
メソカーボンマイクロビーズの粒度分布は、レーザー光回折法によって容易に測定できる。累積度数分布において、累積度50%の粒径(D50)は平均的な粒子径の指標となり、粒度分布の広がりは、累積度10%の粒径(D10)に対する累積度90%の粒径(D90)の比で表すことができ、前記比(D90/D10)を均斉度(D90/D10)と称する。この均斉度の数値が大きいと、ブロードな粒度分布であることを示し、この数値が小さいと、粒径が揃った粒度分布であることを示す。メソカーボンマイクロビーズのD50は、体積基準で、例えば、5〜200μmであり、代表的には6〜150μm、通常8〜120μm、好ましくは10〜100μm程度であってもよい。特に、D50は、5〜50μm、好ましくは5〜40μm、さらに好ましくは15〜30μm程度であってもよい。また、本発明のメソカーボンマイクロビーズの粒度分布は狭く、例えば、前記均斉度(D90/D10)は20以下(例えば、2〜15)、好ましくは8以下(例えば、2.5〜8)、さらに好ましくは7以下(例えば、3〜7)、特に好ましくは6以下(例えば、3.5〜6)程度であってもよい。なお、粒径は、分級などによりコントロールすることもできる。
なお、本発明のMCMBは、前記のように、バルク状ではなく、比較的小さい粒径を有する球状の粒子である。そのため、本発明のMCMBは、適度な芳香族炭素分率を有しており、例えば、本発明のMCMBをIR(赤外線吸収スペクトル)において、芳香族炭素のC−H伸縮振動に対応する波数(例えば、3050cm−1)の吸収強度をI1とし、脂肪族炭素のC−H伸縮振動に対応する波数(例えば、2920cm−1)の吸収強度をI2とするとき、I1/(I1+I2)の値は、0.5〜0.8、好ましくは0.55〜0.75、さらに好ましくは0.57〜0.7、通常0.5〜0.7程度であってもよい。
また、通常、MCMBには、二次QI分以外にも、小粒径の成分(一次QI分)が含まれている。このような一次QI分は、前記のようにMCMBの生成や粒径制御においては重要な役割を果たすが、リチウム二次電池の負極材料用途を考慮した場合、一次QI分は結晶性が低く、放電容量や初期効率を低下させるため、MCMBにはできるだけ含まれないのが好ましい。しかし、従来の方法では、MCMB中の一次QI分の含有量を効率よく除去できなかった。これに対して、本発明では、前記のように、脂肪族成分による一次QIの反応生成物中に対する分散性を向上させる効果などにより、MCMBに含まれる一次QI量が極めて低減されており、例えば、MCMB全体に対する平均粒径1.85μm以下の粒子(すなわち、MCMBではない小さい粒子)の含有割合は、例えば、7体積%以下(例えば、0〜6.5体積%程度)、好ましくは6体積%以下(例えば、0.3〜5.5体積%程度)、さらに好ましくは5体積%以下(例えば、0.5〜4.5体積%程度)、通常0.8〜5体積%(例えば、1〜4.7体積%程度)であってもよい。
(焼成メソカーボンマイクロビーズ)
本発明には、表面が滑らかな焼成メソカーボンマイクロビーズ(黒鉛化されたメソカーボンマイクロビーズ)も含まれる。このような焼成メソカーボンマイクロビーズは、例えば、前記メソカーボンマイクロビーズ(生のメソカーボンマイクロビーズ)を焼成処理することにより得ることができる。すなわち、前記MCMBは、表面の凹凸が著しく少ない球状(特に真球状)の粒子であるため、焼成後においても、前記形状が反映されており、焼成MCMBの形状は表面が滑らかな球状である。そして、このような焼成MCMBは、MCMBを焼成成分とした球状の炭素材料であり、しかも、極めて高い結晶性を有している。例えば、焼成MCMBの結晶性は、炭素質成分(2)を組み合わせることなく、炭素質成分(1)のみを焼成した場合よりも高くなる。特に、前記MCMBは、表面が滑らかで球状であるとともに、一次QI分が少なく、適度に水素化されていることにより、芳香族環の欠陥やひずみが少なく、分子運動性が良好なため、焼成により結晶性のよいMCMBを生成しやすい。例えば、前記黒鉛化されたメソカーボンマイクロビーズの結晶構造は、面間隔(結晶子面間隔)d(002)の値が、例えば、0.335〜0.340nm、好ましくは0.335〜0.338nm(例えば、0.335〜0.336nm)程度であってもよく、通常0.3354〜0.3357nm程度であってもよい。これまで、このような球状と高い結晶性とを備えた炭素材料は知られてない。なお、種々の先行文献には、前記d(002)の値について、一般的に黒鉛に対応する理論値(0.3354nm)を含む数値が記載されている場合があるが、理論値に極めて近いd(002)を有する焼成MCMBおよびその製造方法について、具体的には記載されていない。なお、球状の焼成MCMBは、比表面積が小さいため、電極用途に用いたとき、初期効率、充填密度、安全性などを向上できる。例えば、リチウム二次電池用途では、リチウムの出入口としてのエッジ部分を多くすることができ、初期効率およびレート特性を向上できる。
本発明には、表面が滑らかな焼成メソカーボンマイクロビーズ(黒鉛化されたメソカーボンマイクロビーズ)も含まれる。このような焼成メソカーボンマイクロビーズは、例えば、前記メソカーボンマイクロビーズ(生のメソカーボンマイクロビーズ)を焼成処理することにより得ることができる。すなわち、前記MCMBは、表面の凹凸が著しく少ない球状(特に真球状)の粒子であるため、焼成後においても、前記形状が反映されており、焼成MCMBの形状は表面が滑らかな球状である。そして、このような焼成MCMBは、MCMBを焼成成分とした球状の炭素材料であり、しかも、極めて高い結晶性を有している。例えば、焼成MCMBの結晶性は、炭素質成分(2)を組み合わせることなく、炭素質成分(1)のみを焼成した場合よりも高くなる。特に、前記MCMBは、表面が滑らかで球状であるとともに、一次QI分が少なく、適度に水素化されていることにより、芳香族環の欠陥やひずみが少なく、分子運動性が良好なため、焼成により結晶性のよいMCMBを生成しやすい。例えば、前記黒鉛化されたメソカーボンマイクロビーズの結晶構造は、面間隔(結晶子面間隔)d(002)の値が、例えば、0.335〜0.340nm、好ましくは0.335〜0.338nm(例えば、0.335〜0.336nm)程度であってもよく、通常0.3354〜0.3357nm程度であってもよい。これまで、このような球状と高い結晶性とを備えた炭素材料は知られてない。なお、種々の先行文献には、前記d(002)の値について、一般的に黒鉛に対応する理論値(0.3354nm)を含む数値が記載されている場合があるが、理論値に極めて近いd(002)を有する焼成MCMBおよびその製造方法について、具体的には記載されていない。なお、球状の焼成MCMBは、比表面積が小さいため、電極用途に用いたとき、初期効率、充填密度、安全性などを向上できる。例えば、リチウム二次電池用途では、リチウムの出入口としてのエッジ部分を多くすることができ、初期効率およびレート特性を向上できる。
本発明の焼成MCMBは、前記のように、前記メソカーボンマイクロビーズ(生のMCMB)を焼成処理(黒鉛化又は黒鉛化処理)した炭素材料である。なお、前記方法を利用して焼成する場合には、前記熱処理後、生成したメソカーボンマイクロビーズ(生のメソカーボンマイクロビーズ)を熱処理生成物から分離し、この分離したメソカーボンマイクロビーズを焼成処理して、焼成メソカーボンマイクロビーズを得ることができる。
このような炭素材料(焼成メソカーボンマイクロビーズ)は、メソカーボンマイクロビーズをそのまま焼成処理(又は黒鉛化)することにより得てもよく、炭化(又は炭化処理又は炭素化)したのち、焼成処理することにより得てもよい。炭化処理する場合、炭化温度(又は最終到達温度)は、例えば、450〜1500℃、好ましくは500〜1200℃、さらに好ましくは500〜1100℃程度であってもよい。炭化は、通常、非酸化性雰囲気中(特に、窒素、ヘリウム、アルゴンガスなどの不活性雰囲気中)、真空中などで行うことができる。なお、炭化処理は、慣用の固定床または流動床方式の炭素化炉(リードハンマー炉、トンネル炉、単独炉など)で行うことができ、所定の温度まで昇温できる炉であれば、炭化炉加熱方式や種類は特に限定されない。
焼成処理温度(又は最終到達温度)は、例えば、1700〜3200℃、好ましくは1800〜3100℃、さらに好ましくは1900〜3000℃(例えば、1950〜2900℃)程度であり、2000〜2800℃程度であってもよく、通常2500〜3200℃程度であってもよい。
焼成処理(黒鉛化処理)は、必要に応じて、還元剤(例えば、コークス、黒鉛、炭など)の存在下で行ってもよい。また、焼成処理は、通常、非酸化性雰囲気(特に、ヘリウム、アルゴン、ネオンガスなどの不活性雰囲気)中、又は真空中で行うことができ、通常、不活性雰囲気中で行うことができる。なお、焼成処理は、通常、黒鉛化炉で行うことができ、前記黒鉛化炉としては、所定の温度に到達し得る炉であれば加熱方式や種類は特に限定されず、例えば、アチソン炉、直接通電黒鉛化炉、真空炉などが例示できる。なお、焼成処理は、ホウ素化合物の存在下で行ってもよい。このような技術については、特開平11−283625号公報を参照できる。ホウ素化合物の存在下で焼成すると、黒鉛化度の高い焼成MCMBを得ることができるものの、黒鉛化炉(アチソン炉など)を損傷したり、リチウム電池の負極材料に適用したとき、過電圧が大きくなるため、本発明では、ホウ素化合物の非存在下で焼成するのが好ましい。
なお、メソカーボンマイクロビーズの最終焼成物は、粉砕機(ボールミル、ハンマーミルなど)などにより粉砕して、最終生成物としての炭素材料としてもよい。
本発明の炭素材料(焼成メソカーボンマイクロビーズ)は結晶性が高く、種々の材料、例えば、電極材料(例えば、リチウム二次電池負極材料や放電加工用電極等)などの特殊炭素材料の一元材料、あるいは充填剤(プラスチックの導電用充填材等)などに有効に使用できる。
特に、本発明の炭素材料は、リチウム二次電池用負極(さらにはリチウム二次電池)の構成材料として好適に使用できる。本発明の焼成MCMBをリチウム二次電池負極又は負極材料に用いると、結晶性向上に伴って容量を向上でき、しかも、初期効率、サイクル特性、安全性、レート特性、環境負荷低減などの特性を向上できる。すなわち、結晶性向上により、(i)導電性向上により、サイクル特性が向上し、(ii)水素化によるMCMB表面の官能基量の低減、粒子表面の平滑性、一次QIの低減、さらには小さい表面積により、効率および安全性が向上する。また、炭素質成分(2)の使用などにより、MCMB中の金属成分やベンツピレン成分を低減でき、環境負荷を低減できる。そのため、本発明には、前記焼成メソカーボンマイクロビーズで形成されたリチウム二次電池用負極(又は負極材料)も含まれる。例えば、炭素材料、バインダーなどを含む混合物を成形する方法;炭素材料、有機溶媒、バインダーなどを含むペーストを炭素材料に塗布手段(ドクターブレードなど)を用いて塗布する方法などにより、任意の形状のリチウム二次電池用負極(又は負極材料)とすることができる。負極の形成においては、必要に応じて端子と組み合わせてもよい。
負極集電体は、特に制限されず、公知の集電体、例えば、銅などの導電体を使用することができる。有機溶媒としては、通常、バインダーを溶解又は分散可能な溶媒が使用され、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒を例示することができる。有機溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。有機溶媒の使用量は、ペースト状となる限り特に制限されず、例えば、負極炭素材100重量部に対して、通常、60〜150重量部、好ましくは60〜100重量部程度である。
バインダーとしては、例えば、フッ素含有樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなど)などが例示できる。バインダーの使用量(分散液の場合には、固形分換算の使用量)は、特に限定されず、例えば、炭素材料(焼成物)100重量部に対して、3〜20重量部、好ましくは5〜15重量部(例えば、5〜10重量部)程度であってもよい。ペーストの調製方法は、特に制限されず、例えば、バインダーと有機溶媒との混合液(又は分散液)と、炭素材料とを混合する方法などを例示することができる。
なお、本発明の方法で得られた炭素材料と導電材(炭素質材料又は導電性炭素材)とを併用して、負極を製造してもよい。導電材の使用割合は特に制限されないが、本発明の方法により得られた炭素材料と炭素質材料の総量に対して、通常、1〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%程度である。導電材[例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック)などの炭素質材料]を併用することにより、電極としての導電性を向上させてもよい。導電材は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、導電材は、例えば、炭素材料と溶媒とを含むペーストに混合し、このペーストを負極集電体に塗布する方法などにより、炭素材料とともに有効に利用できる。
前記ペーストの負極集電体への塗布量は特に制限されず、通常、5〜15mg/cm2程度、好ましくは7〜13mg/cm2程度である。また、負極集電体に塗布した膜の厚さ(前記ペーストの膜厚)は、例えば、50〜300μm、好ましくは80〜200μm、さらに好ましくは100〜150μm程度である。なお、塗布後、負極集電体には、乾燥処理(例えば、真空乾燥など)を施してもよい。
そして、本発明の炭素材料(焼成MCMB)は、上記のように負極構成材料としてリチウム二次電池を構成できる。特に、本発明の炭素材料は、繰り返し充放電を可能とするためのリチウム二次電池を構成できる。リチウム二次電池は、前記負極(前記炭素材料を含む負極)と、リチウムを吸蔵・放出可能な正極および電解液とを組み合わせ、さらに、セパレータ(通常使用される多孔質ポリプロピレン製不織布などのポリオレフィン系多孔質膜のセパレータなど)、集電体、ガスケット、封口板、ケースなどの電池構成要素を用い、常法により、組み立ておよび製造できる。なお、リチウム二次電池の組立て方法の詳細は、例えば、特開平7−249411号公報に記載の方法などを参照することができる。
正極は、特に制限されず、公知の正極が使用でき、正極は、例えば、正極集電体、正極活物質、導電剤などで構成できる。正極集電体として、例えば、アルミニウムなどを例示することができる。正極活物質としては、例えば、TiS2、MoS3、NbSe3、FeS、VS2、VSe2などの層状構造を有する金属カルコゲン化物;CoO2、Cr3O5、TiO2、CuO、V3O6、Mo3O、V2O5(・P2O5)、Mn2O(・Li2O)、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4などの金属酸化物;ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性を有する共役系高分子物質などを用いることができる。好ましくは、金属酸化物(特に、V2O5、Mn2O、LiCoO2)を用いる。
また、電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルなどの非プロトン性溶媒などが例示できる。また、電解液は、これらの非プロトン性溶媒に、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCl、LiIなどの溶媒和しにくいアニオンを生成する塩を溶解させたものも含まれる。電解液は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。好ましい電解液には、強い還元雰囲気でも安定な溶媒としてのテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソランのような強い還元雰囲気でも安定なエーテル系溶媒や、前記非プロトン性溶媒(好ましくは2種以上の混合溶媒)に、前記例示の塩を溶解させた溶液などが含まれる。
なお、リチウム二次電池は、円筒型、角型、ボタン型など任意の形状又は形態とすることができる。
本発明の方法では、粒度分布が狭く、球状で表面の滑らかなメソカーボンマイクロビーズが収率よく得られる。また、本発明のメソカーボンマイクロビーズ(焼成MCMB)又は炭素材料は、結晶性が高く、リチウム二次電池負極材料、放電加工用電極、キャパシタ用電極材料、高密度高強度の炭素材料などの特殊炭素材料の一元材料、あるいはプラスチックの導電用充填材などの用途に好適に利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[芳香族炭素分率faの測定]
試料を、炭素質成分(1)又は炭素質成分(2)に緩和剤としてアセチルアセトンクロム塩を混合物全体に対して約0.5mol%添加して調製した。測定は、日本電子社製400MHz FT−NMR装置(ECX−400)を用い、温度150℃でゲート付プロトンデカップリング法によって行った。得られたスペクトルの芳香族炭素の面積強度と非芳香族炭素の面積強度との比から芳香族炭素分率faを算出した。
試料を、炭素質成分(1)又は炭素質成分(2)に緩和剤としてアセチルアセトンクロム塩を混合物全体に対して約0.5mol%添加して調製した。測定は、日本電子社製400MHz FT−NMR装置(ECX−400)を用い、温度150℃でゲート付プロトンデカップリング法によって行った。得られたスペクトルの芳香族炭素の面積強度と非芳香族炭素の面積強度との比から芳香族炭素分率faを算出した。
[軟化点]
軟化点SPは、熱測定装置(メトラートレド(株)製、FP83)を用い測定した。
軟化点SPは、熱測定装置(メトラートレド(株)製、FP83)を用い測定した。
[溶剤分析]
JIS K−2425に従い、トルエン不溶分(TI)および一次キノリン不溶分(QI)を測定した。なお、反応により生成したQI(ΔQI)は、熱処理後の反応生成物のキノリン不溶分QBおよび反応生成物の収率Y×100(%)と、原料(炭素質成分)全体の一次キノリン不溶分QAから、値(QB×Y)−QAとして算出した。また、ΔQIとQAとの比(ΔQI/QA)も同様に算出した。
JIS K−2425に従い、トルエン不溶分(TI)および一次キノリン不溶分(QI)を測定した。なお、反応により生成したQI(ΔQI)は、熱処理後の反応生成物のキノリン不溶分QBおよび反応生成物の収率Y×100(%)と、原料(炭素質成分)全体の一次キノリン不溶分QAから、値(QB×Y)−QAとして算出した。また、ΔQIとQAとの比(ΔQI/QA)も同様に算出した。
また、ヘプタン可溶分(HS)の測定は、100mgの試料に、30mlのジメチルホルムアミドおよび30mlのヘプタンを混合し、10分間超音波洗浄器にかけ、遠心分離(2500rpm、3分間)し、2層に分かれた上層を30ml採取し、エバポレータにて溶剤を除去後、重量を測定し、試料中の重量%を算出した。
[電子顕微鏡観察]
電子顕微鏡は、日立(HITACHI)社製S−3000 Scaning Electron Microscopeを用い、印加電圧を20kVとして観察を行った。そして、実施例3〜9および比較例2〜15では、得られた電子顕微鏡写真から、粒子の形状を以下の基準で評価した。
電子顕微鏡は、日立(HITACHI)社製S−3000 Scaning Electron Microscopeを用い、印加電圧を20kVとして観察を行った。そして、実施例3〜9および比較例2〜15では、得られた電子顕微鏡写真から、粒子の形状を以下の基準で評価した。
A:粒子表面に付着物がなく、粒子表面が滑らかである
B:粒子表面に付着物があり、粒子表面に凹凸が見られる
C:粒子が球状にならず、破砕物となっている
D:粒子が凝集している。
B:粒子表面に付着物があり、粒子表面に凹凸が見られる
C:粒子が球状にならず、破砕物となっている
D:粒子が凝集している。
[偏光顕微鏡観察]
メソカーボンマイクロビーズとアクリル樹脂(リファインテック(株)製 透明樹脂)とを重量割合(1/2)で混合し、成型、研磨して観察用試料とした。光源にハロゲン白熱灯を用いたオリンパス(Olympus)社製BX60Mにより直交ニコル下で石膏検板を介して観察用試料の組織を観察した。
メソカーボンマイクロビーズとアクリル樹脂(リファインテック(株)製 透明樹脂)とを重量割合(1/2)で混合し、成型、研磨して観察用試料とした。光源にハロゲン白熱灯を用いたオリンパス(Olympus)社製BX60Mにより直交ニコル下で石膏検板を介して観察用試料の組織を観察した。
[X線回折測定]
X線回折測定は(株)リガク社製RINT2000を用い管電圧40kV、管電流200mAにて行った。
X線回折測定は(株)リガク社製RINT2000を用い管電圧40kV、管電流200mAにて行った。
[粒度分布測定]
粒径(粒度)は、パーティクルアナライザ(JEOL HELOS SYSTEM)を用いて、D10、D50、D90ならびに粒径1.85μm以下の量を測定し、D90/D10を計算した。また、パーティクルアナライザにより測定した粒径から、粒子を真球状とみなしたときの比表面積(みかけの比表面積)S1も測定した。
粒径(粒度)は、パーティクルアナライザ(JEOL HELOS SYSTEM)を用いて、D10、D50、D90ならびに粒径1.85μm以下の量を測定し、D90/D10を計算した。また、パーティクルアナライザにより測定した粒径から、粒子を真球状とみなしたときの比表面積(みかけの比表面積)S1も測定した。
[BET比表面積および凹凸度の測定]
窒素吸着BET比表面積測定装置(Quantachrome社製、NOVA2000)を用いて、粒子のBET比表面積S2を測定した。そして、BET比表面積S2を、前記粒度分布測定により求めたみかけの比表面積S1で除することにより、凹凸度(S2/S1)を求めた。凹凸度が1であるとき、粒子は真球状粒子であり、凹凸度が大きくなるにつれて粒子表面の凹凸が多い(すなわち、粒子表面の滑らかさが低い)ことを意味する。
窒素吸着BET比表面積測定装置(Quantachrome社製、NOVA2000)を用いて、粒子のBET比表面積S2を測定した。そして、BET比表面積S2を、前記粒度分布測定により求めたみかけの比表面積S1で除することにより、凹凸度(S2/S1)を求めた。凹凸度が1であるとき、粒子は真球状粒子であり、凹凸度が大きくなるにつれて粒子表面の凹凸が多い(すなわち、粒子表面の滑らかさが低い)ことを意味する。
[スラッジ生成有無の確認]
ろ過した炭素質成分(1)と炭素質成分(2)とを100℃で混合した混合物について、キノリン不溶分の分析法(JIS K−2425)に従い、ろ紙上の汚れを確認した。
ろ過した炭素質成分(1)と炭素質成分(2)とを100℃で混合した混合物について、キノリン不溶分の分析法(JIS K−2425)に従い、ろ紙上の汚れを確認した。
[IR強度比の測定]
生成したメソカーボンマイクロビーズ(焼成前のメソカーボンマイクロビーズ)とKBrとを前者/後者(重量比)=1/100の割合で混合し、成形器にて成形サンプルを作製した。そして、分光器(サーモニコレ社、AVATAR370FT−IR)を用い、室温で透過法により成形サンプルのIRスペクトル(赤外線吸収スペクトル)を測定し、このIRスペクトルと、KBrのみで測定したIRスペクトルとから、メソカーボンマイクロビーズのIRスペクトルを得た。そして、相対的な芳香族分率として、得られたスペクトルの芳香族C−H伸縮ピーク(3050cm−1)強度I1と脂肪族C−H伸縮ピーク(2920cm−1)強度I2の値から、I1/(I1+I2)の値を算出した。なお、メソカーボンマイクロビーズは溶剤に不溶であり、軟化しないため、NMR測定による芳香族分率の代わりに、IRによる相対的な芳香族分率を適用した。前記I1/(I1+I2)の値が大きいほど、NMR測定の場合と同様に、相対的な芳香族分率が大きい。
生成したメソカーボンマイクロビーズ(焼成前のメソカーボンマイクロビーズ)とKBrとを前者/後者(重量比)=1/100の割合で混合し、成形器にて成形サンプルを作製した。そして、分光器(サーモニコレ社、AVATAR370FT−IR)を用い、室温で透過法により成形サンプルのIRスペクトル(赤外線吸収スペクトル)を測定し、このIRスペクトルと、KBrのみで測定したIRスペクトルとから、メソカーボンマイクロビーズのIRスペクトルを得た。そして、相対的な芳香族分率として、得られたスペクトルの芳香族C−H伸縮ピーク(3050cm−1)強度I1と脂肪族C−H伸縮ピーク(2920cm−1)強度I2の値から、I1/(I1+I2)の値を算出した。なお、メソカーボンマイクロビーズは溶剤に不溶であり、軟化しないため、NMR測定による芳香族分率の代わりに、IRによる相対的な芳香族分率を適用した。前記I1/(I1+I2)の値が大きいほど、NMR測定の場合と同様に、相対的な芳香族分率が大きい。
[電極特性評価方法]
正極体には、LiCoO2を使用した。負極体としては、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として、黒鉛化後のメソカーボンマイクロビーズとポリフッ化ビニリデンとを混合し、スラリー状にした後、負極成型機を用いて銅版ロールに得られたスラリーを100〜140μmの厚みで塗布し、200℃で真空乾燥を行い負極体とした。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(重量比1:1)に過塩素酸リチウムを1mol/Lの割合で溶解して電解液とした。セパレータとしてポリプロピレン不織布を用いてリチウム二次電池を作製した。この得られたリチウム二次電池の放電特性を測定した。
正極体には、LiCoO2を使用した。負極体としては、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として、黒鉛化後のメソカーボンマイクロビーズとポリフッ化ビニリデンとを混合し、スラリー状にした後、負極成型機を用いて銅版ロールに得られたスラリーを100〜140μmの厚みで塗布し、200℃で真空乾燥を行い負極体とした。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(重量比1:1)に過塩素酸リチウムを1mol/Lの割合で溶解して電解液とした。セパレータとしてポリプロピレン不織布を用いてリチウム二次電池を作製した。この得られたリチウム二次電池の放電特性を測定した。
充電は、1mA/cm2での定電流充電の後、1mVで定電位充電を行い、総充電時間を12時間として行った。また、放電は、1mA/cm2の定電流とした。電極特性の測定は、放電容量が1.3Vに低下するまで行った。
なお、実施例で得られたメソカーボンマイクロビーズの黒鉛化(焼成)は、メソカーボンマイクロビーズを窒素雰囲気中、圧力0.1MPaおよび温度1000℃の条件下で、保持時間2時間で炭化処理し、その後、アルゴン雰囲気中、圧力0.1MPaおよび温度2800℃(実施例1、実施例2および比較例1)又は3000℃(実施例3〜9、比較例2〜12)の条件下で焼成処理することにより行った。
(実施例1)
コールタール(fa1=0.941、QI2.58重量%)と芳香族性の低いエチレンボトム油(fa2=0.730、QI0.0重量%)とを重量割合を前者/後者=80/20として混合(コールタールの芳香族炭素分率に対するエチレンボトム油の芳香族炭素分率の比=0.776)し、オートクレーブ中、窒素による加圧下(0.5MPa)430℃で8時間熱処理することにより、反応生成物を収率63.6重量%で得た。この反応生成物をタール中質油とタール軽質油とでそれぞれ洗浄することにより、メソカーボンマイクロビーズを脱水原料基準で収率14.5重量%で得た。
コールタール(fa1=0.941、QI2.58重量%)と芳香族性の低いエチレンボトム油(fa2=0.730、QI0.0重量%)とを重量割合を前者/後者=80/20として混合(コールタールの芳香族炭素分率に対するエチレンボトム油の芳香族炭素分率の比=0.776)し、オートクレーブ中、窒素による加圧下(0.5MPa)430℃で8時間熱処理することにより、反応生成物を収率63.6重量%で得た。この反応生成物をタール中質油とタール軽質油とでそれぞれ洗浄することにより、メソカーボンマイクロビーズを脱水原料基準で収率14.5重量%で得た。
得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はシャープ(D10=7.1μm、D50=27.6μm、D90=37.3μm、均斉度(D90/D10)=5.25)であり、電子顕微鏡観察により表面が滑らかであることが示された。2800℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズのX線回折測定では、d(002)は、0.3356nmであり、結晶構造が発達していた。電極特性評価では、放電容量が337.3mAh/gであり、初期効率は92.4%と高い値を示した。
(実施例2)
実施例1において、コールタール(fa1=0.941、QI2.58重量%)と芳香族性の低いエチレンボトム油(fa2=0.730、QI0.0重量%)との重量割合を前者/後者=50/50とした(コールタールの芳香族炭素分率に対するエチレンボトム油の芳香族炭素分率の比=0.776)以外は、実施例1と同様にメソカーボンマイクロビーズを調製した。コールタールとエチレンボトム油との反応生成物の収率は、51.4%であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料基準で、15.6重量%であった。
実施例1において、コールタール(fa1=0.941、QI2.58重量%)と芳香族性の低いエチレンボトム油(fa2=0.730、QI0.0重量%)との重量割合を前者/後者=50/50とした(コールタールの芳香族炭素分率に対するエチレンボトム油の芳香族炭素分率の比=0.776)以外は、実施例1と同様にメソカーボンマイクロビーズを調製した。コールタールとエチレンボトム油との反応生成物の収率は、51.4%であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料基準で、15.6重量%であった。
得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はシャープ(D10=13.7μm、D50=41.6μm、D90=55.6μm、均斉度(D90/D10)=4.06)であり、電子顕微鏡観察により表面が滑らかであることが示された。2800℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズのX線回折測定では、d(002)は、0.3354nmであり、結晶構造が発達していた。電極特性評価では、放電容量は347.3mAh/gであり、初期効率は92.0%と高い値を示した。
(比較例1)
実施例1において、コールタールのみを使用した以外は、条件は実施例1と同様であった。コールタールの反応生成物の収率は、69.9%であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料基準で、12.2重量%であった。
実施例1において、コールタールのみを使用した以外は、条件は実施例1と同様であった。コールタールの反応生成物の収率は、69.9%であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料基準で、12.2重量%であった。
得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はブロード(D10=1.1μm、D50=16.2μm、D90=23.8μm、均斉度(D90/D10)=21.6)であり、電子顕微鏡観察では、表面に付着物のある凹凸のある形状を示した。2800℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズのX線回折測定では、d(002)は、0.3358nmであった。電極特性評価では、放電容量が327.3mAh/gであり、初期効率は92.4%であった。
(実施例3)
液状のコールタール(fa1=0.941、QI2.58重量%、HS1.5重量%)と芳香族性の低い液状のエチレンボトム油(fa2=0.730、QI0.0重量%、HS10重量%)とを、前者/後者=80/20の重量割合で、70℃、1時間攪拌混合し、オートクレーブ中、窒素による加圧下(0.5MPa)、回転数600rpm、430℃で8時間熱処理することにより、反応生成物を収率63.6重量%で得た。この反応生成物とタール中質油とを、前者/後者=1/1.5の重量割合で、130℃で30分間攪拌混合した後、遠心分離(5000rpmで30分間)し沈殿物を得た。同様の操作をもう1回繰り返した後、沈殿物とトルエンとを前者/後者=1/2の重量割合で、80℃で30分間攪拌混合した後、80℃で加圧ろ過して洗浄し、沈殿物を得た。さらに同様の操作をもう1回繰り返した後、沈殿物を真空乾燥(120℃で60分間)処理することにより、メソカーボンマイクロビーズを脱水原料(脱水タール)基準で収率14.5重量%で得た。
液状のコールタール(fa1=0.941、QI2.58重量%、HS1.5重量%)と芳香族性の低い液状のエチレンボトム油(fa2=0.730、QI0.0重量%、HS10重量%)とを、前者/後者=80/20の重量割合で、70℃、1時間攪拌混合し、オートクレーブ中、窒素による加圧下(0.5MPa)、回転数600rpm、430℃で8時間熱処理することにより、反応生成物を収率63.6重量%で得た。この反応生成物とタール中質油とを、前者/後者=1/1.5の重量割合で、130℃で30分間攪拌混合した後、遠心分離(5000rpmで30分間)し沈殿物を得た。同様の操作をもう1回繰り返した後、沈殿物とトルエンとを前者/後者=1/2の重量割合で、80℃で30分間攪拌混合した後、80℃で加圧ろ過して洗浄し、沈殿物を得た。さらに同様の操作をもう1回繰り返した後、沈殿物を真空乾燥(120℃で60分間)処理することにより、メソカーボンマイクロビーズを脱水原料(脱水タール)基準で収率14.5重量%で得た。
得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はシャープ(D10=7.1μm、D50=27.6μm、D90=37.3μm、均斉度(D90/D10)=5.25)であり、電子顕微鏡観察により表面が滑らかであることが示された。3000℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズのX線回折測定では、d(002)は、0.3356nmであり、結晶構造が発達していた。電極特性評価では、放電容量が350.4mAh/gであり、初期効率は93.8%と高い値を示した。
(実施例4)
実施例3において、コールタールと芳香族性の低いエチレンボトム油との重量割合を前者/後者=50/50としたこと以外は、実施例3と同様にメソカーボンマイクロビーズを調製した。コールタールとエチレンボトム油との反応生成物の収率は、51.4%であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料(脱水タール)基準で、15.6重量%であった。
実施例3において、コールタールと芳香族性の低いエチレンボトム油との重量割合を前者/後者=50/50としたこと以外は、実施例3と同様にメソカーボンマイクロビーズを調製した。コールタールとエチレンボトム油との反応生成物の収率は、51.4%であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料(脱水タール)基準で、15.6重量%であった。
得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はシャープ(D10=13.7μm、D50=41.6μm、D90=55.6μm、均斉度(D90/D10)=4.06)であり、電子顕微鏡観察により表面が滑らかであることが示された。3000℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズのX線回折測定では、d(002)は、0.3354nmであり、結晶構造が発達していた。電極特性評価では、放電容量は358.8mAh/gであり、初期効率は93.4%と高い値を示した。
(比較例2)
実施例3において、コールタールのみを使用した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。コールタールの反応生成物の収率は、69.9%であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料(脱水タール)基準で、12.2重量%であった。
実施例3において、コールタールのみを使用した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。コールタールの反応生成物の収率は、69.9%であり、メソカーボンマイクロビーズの収率は、脱水原料(脱水タール)基準で、12.2重量%であった。
得られたメソカーボンマイクロビーズの粒度分布はブロード(D10=1.1μm、D50=16.2μm、D90=23.8μm、均斉度(D90/D10)=21.6)であり、電子顕微鏡観察では、表面に付着物のある凹凸のある形状を示した。3000℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズのX線回折測定では、d(002)は、0.3358nmであった。電極特性評価では、放電容量が338.1mAh/gであり、初期効率は92.4%であった。
(比較例3)
実施例3で使用したコールタールを、加圧ろ過(160℃および0.3MPa)し、固形分(一次QI)を除去した液状のコールタール(fa1=0.941、QI0.0重量%、HS1.5重量%)を得た。そして、実施例3において、得られた固形分を除去したコールタールのみを使用した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。QIが存在しなかったため、生成物は球状物ではなく破砕物であったため、3000℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズの結晶化度も低く、放電容量、充放電容量も低かった。
実施例3で使用したコールタールを、加圧ろ過(160℃および0.3MPa)し、固形分(一次QI)を除去した液状のコールタール(fa1=0.941、QI0.0重量%、HS1.5重量%)を得た。そして、実施例3において、得られた固形分を除去したコールタールのみを使用した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。QIが存在しなかったため、生成物は球状物ではなく破砕物であったため、3000℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズの結晶化度も低く、放電容量、充放電容量も低かった。
(比較例4)
実施例3において、コールタールのみを使用し、450℃で4時間熱処理した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。熱処理温度を高くした結果、粒径が大きくなりすぎ、メソカーボンマイクロビーズは球状を保てなくなり、粉砕状であった。実施例(例えば、実施例4)で得られたメソカーボンマイクロビーズは、粒子径(D50)がより大きくなっても、球状であったことから、一次QI以外にもエチレンボトム油中の脂肪族成分が球状化に寄与しているものと考えられる。
実施例3において、コールタールのみを使用し、450℃で4時間熱処理した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。熱処理温度を高くした結果、粒径が大きくなりすぎ、メソカーボンマイクロビーズは球状を保てなくなり、粉砕状であった。実施例(例えば、実施例4)で得られたメソカーボンマイクロビーズは、粒子径(D50)がより大きくなっても、球状であったことから、一次QI以外にもエチレンボトム油中の脂肪族成分が球状化に寄与しているものと考えられる。
(比較例5)
実施例3において、比較例3でコールタールから除去された固形分をキノリンで洗浄後、アセトン洗浄した固形分(fa1=0.99、QI100重量%、HS0.0重量%、固体状)を得た。この固形分のみを使用した以外は、実施例3と同様にメソカーボンマイクロビーズを調製した。3000℃で黒鉛化した黒鉛化物は、一次QI分そのものの黒鉛化物であり、粒径が小さく、結晶化度が低く、放電容量、充放電収率も低かった。
実施例3において、比較例3でコールタールから除去された固形分をキノリンで洗浄後、アセトン洗浄した固形分(fa1=0.99、QI100重量%、HS0.0重量%、固体状)を得た。この固形分のみを使用した以外は、実施例3と同様にメソカーボンマイクロビーズを調製した。3000℃で黒鉛化した黒鉛化物は、一次QI分そのものの黒鉛化物であり、粒径が小さく、結晶化度が低く、放電容量、充放電収率も低かった。
(比較例6)
実施例3において、エチレンボトム油のみを使用し、400℃で熱処理した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。一次QI分が存在しなかったため、生成物は球状物ではなく破砕物であった。また、原料中の芳香族炭素分率が低いため、3000℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズの結晶化度は低く、放電容量、初期効率も低かった。なお、熱処理温度410℃以上では反応系がコーキングして攪拌できなくなり熱処理できなかった。
実施例3において、エチレンボトム油のみを使用し、400℃で熱処理した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。一次QI分が存在しなかったため、生成物は球状物ではなく破砕物であった。また、原料中の芳香族炭素分率が低いため、3000℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズの結晶化度は低く、放電容量、初期効率も低かった。なお、熱処理温度410℃以上では反応系がコーキングして攪拌できなくなり熱処理できなかった。
(比較例7)
実施例3で使用したコールタールを真空蒸留し、軟化点96.6℃のピッチ(fa1=0.940、QI4.1重量%、HS0.1重量%)を得た。実施例3において、この高軟化点のピッチのみを使用した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。反応生成物(反応油)の軟化点が171.0℃と高かったため、メソカーボンマイクロビーズの分離、洗浄が難しく、分離および洗浄後においても、ビーズの周りに一次QIおよびピッチ成分が多く点在していた。
実施例3で使用したコールタールを真空蒸留し、軟化点96.6℃のピッチ(fa1=0.940、QI4.1重量%、HS0.1重量%)を得た。実施例3において、この高軟化点のピッチのみを使用した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。反応生成物(反応油)の軟化点が171.0℃と高かったため、メソカーボンマイクロビーズの分離、洗浄が難しく、分離および洗浄後においても、ビーズの周りに一次QIおよびピッチ成分が多く点在していた。
(比較例8)
実施例3において、コールタールのみを使用し、圧力1.1MPaで熱処理した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。反応圧力を高くしても、粒径分布、表面状態などは比較例2とほとんど変わりはなかった。
実施例3において、コールタールのみを使用し、圧力1.1MPaで熱処理した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。反応圧力を高くしても、粒径分布、表面状態などは比較例2とほとんど変わりはなかった。
(実施例5)
実施例3において、液状のコールタール(fa1=0.951、QI3.80重量%、HS1.4重量%)と芳香族性の低い液状のエチレンボトム油(fa2=0.755、QI0.0重量%、HS6.5重量%)とを混合したこと以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
実施例3において、液状のコールタール(fa1=0.951、QI3.80重量%、HS1.4重量%)と芳香族性の低い液状のエチレンボトム油(fa2=0.755、QI0.0重量%、HS6.5重量%)とを混合したこと以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
(実施例6)
実施例5において、コールタールとエチレンボトム油との重量割合を前者/後者=50/50としたこと以外は、実施例4と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
実施例5において、コールタールとエチレンボトム油との重量割合を前者/後者=50/50としたこと以外は、実施例4と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
(実施例7)
実施例5において、エチレンボトム油に代えて、液状のエチレンボトム油(fa2=0.653、QI0.0重量%、HS21.7重量%)を使用したこと以外は、実施例5と同様にして、比較的良好なメソカーボンマイクロビーズを調製した。なお、熱処理前の混合物には、スラッジは生成していなかった。また、コールタールとエチレンボトム油と前者/後者=50/50の重量割合で混合した混合物でもスラッジの生成は確認できなかった。さらに、前者/後者=30/70の重量割合で混合した混合物では、スラッジの生成を確認したが、この混合物にキノリンを5重量%添加したものについてはスラッジの生成は確認できなかった。
実施例5において、エチレンボトム油に代えて、液状のエチレンボトム油(fa2=0.653、QI0.0重量%、HS21.7重量%)を使用したこと以外は、実施例5と同様にして、比較的良好なメソカーボンマイクロビーズを調製した。なお、熱処理前の混合物には、スラッジは生成していなかった。また、コールタールとエチレンボトム油と前者/後者=50/50の重量割合で混合した混合物でもスラッジの生成は確認できなかった。さらに、前者/後者=30/70の重量割合で混合した混合物では、スラッジの生成を確認したが、この混合物にキノリンを5重量%添加したものについてはスラッジの生成は確認できなかった。
(比較例9)
実施例5において、コールタールのみを使用した以外は、実施例5と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
実施例5において、コールタールのみを使用した以外は、実施例5と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
(実施例8)
実施例5において、コールタールに代えて、液状のコールタール(fa1=0.964、QI1.00重量%、HS1.3重量%)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして比較的良好なメソカーボンマイクロビーズを調製した。
実施例5において、コールタールに代えて、液状のコールタール(fa1=0.964、QI1.00重量%、HS1.3重量%)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして比較的良好なメソカーボンマイクロビーズを調製した。
(比較例10)
実施例8において、コールタールのみを使用した以外は、実施例8と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
実施例8において、コールタールのみを使用した以外は、実施例8と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
(実施例9)
実施例5において、コールタールに代えて、液状のコールタール(fa1=0.959、QI5.30重量%、HS1.3重量%)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして比較的良好なメソカーボンマイクロビーズを調製した。
実施例5において、コールタールに代えて、液状のコールタール(fa1=0.959、QI5.30重量%、HS1.3重量%)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして比較的良好なメソカーボンマイクロビーズを調製した。
(比較例11)
実施例9において、コールタールのみを使用した以外は、実施例9と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
実施例9において、コールタールのみを使用した以外は、実施例9と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。
(比較例12)
実施例3において、コールタールおよびエチレンボトム油に代えて、液状の減圧蒸留残渣(アスファルト、fa2=0.286、QI0.0重量%、HS76.1重量%)のみを使用し、400℃で熱処理した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。QIが存在しなかったため、生成物は球状物ではなく破砕物であった。また、原料中の芳香族炭素分率が低いため、3000℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズの結晶化度は低く、放電容量、初期効率も低かった。なお、熱処理温度410℃以上では反応系がコーキングして攪拌できなくなり熱処理できなかった。
実施例3において、コールタールおよびエチレンボトム油に代えて、液状の減圧蒸留残渣(アスファルト、fa2=0.286、QI0.0重量%、HS76.1重量%)のみを使用し、400℃で熱処理した以外は、実施例3と同様にしてメソカーボンマイクロビーズを調製した。QIが存在しなかったため、生成物は球状物ではなく破砕物であった。また、原料中の芳香族炭素分率が低いため、3000℃で黒鉛化したメソカーボンマイクロビーズの結晶化度は低く、放電容量、初期効率も低かった。なお、熱処理温度410℃以上では反応系がコーキングして攪拌できなくなり熱処理できなかった。
結果を表1および表2に示す。
また、図1に、実施例3で得られた未焼成MCMBの電子顕微鏡写真(285倍)を、図2に実施例4で得られた未焼成MCMBの電子顕微鏡写真(160倍)を、図3に比較例2で得られた未焼成MCMBの電子顕微鏡写真(660倍)をそれぞれ示す。
表からも明らかなように、比較例に対して、実施例では、粒度分布が狭く、球状で表面が滑らかなメソカーボンマイクロビーズが収率よく得られることがわかった。
Claims (17)
- メソカーボンマイクロビーズを生成可能な炭素質成分(1)と、この炭素質成分(1)より芳香族性の低い炭素質成分(2)との混合物を熱処理する工程を少なくとも含むメソカーボンマイクロビーズの製造方法であって、前記炭素質成分(1)の芳香族炭素分率fa1に対する炭素質成分(2)の芳香族炭素分率fa2の比fa2/fa1が0.95以下である製造方法。
- fa2/fa1が、0.9以下である請求項1記載の方法。
- 炭素質成分(1)が、コールタール及びコールタールピッチから選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の方法。
- 炭素質成分(1)が、fa1=0.9〜0.99、および一次キノリン不溶分の含有割合が1〜7重量%の炭素質成分である請求項1記載の製造方法。
- 炭素質成分(2)が、水素化されていてもよいピッチ及び水素化されていてもよい重質油から選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の方法。
- 炭素質成分(2)が、エチレンボトム油、デカントオイル、アスファルテンおよびこれらを原料とするピッチから選択された少なくとも1種で構成されている請求項1記載の方法。
- 炭素質成分(2)が、fa2=0.55〜0.85、およびヘプタンとジメチルホルムアミドとを、前者/後者(重量比)=1/1の割合で含む混合溶媒に対してヘプタンに溶解する成分の含有割合が1〜40重量%の炭素質成分である請求項1記載の製造方法。
- 炭素質成分(1)および炭素質成分(2)が、それぞれ60℃以下の軟化点を有する請求項1記載の製造方法。
- 炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との割合が、前者/後者(重量比)=99/1〜30/70である請求項1記載の方法。
- (i)炭素質成分(1)が、室温で液状であって、fa1=0.93〜0.97および一次キノリン不溶分の含有割合が1〜7重量%の炭素質成分であり、(ii)炭素質成分(2)が、室温で液状であって、fa2=0.6〜0.8、およびヘプタンとジメチルホルムアミドとを、前者/後者(重量比)=1/1の割合で含む混合溶媒に対してヘプタンに溶解する成分の含有割合が2〜30重量%の炭素質成分であり、(iii)fa2/fa1が0.9以下であり、かつ(iv)炭素質成分(1)と炭素質成分(2)との割合が、前者/後者(重量比)=90/10〜45/55である請求項1記載の方法。
- 混合物が、さらに相溶化剤を含む請求項1記載の方法。
- 熱処理後、生成したメソカーボンマイクロビーズを熱処理生成物から分離し、この分離したメソカーボンマイクロビーズを焼成処理して、焼成メソカーボンマイクロビーズを得る請求項1記載の製造方法。
- 請求項1記載の方法により得られ、焼成処理されていないメソカーボンマイクロビーズであって、赤外線吸収スペクトルにおいて、芳香族炭素のC−H伸縮振動に対応する波数の吸収強度をI1とし、脂肪族炭素のC−H伸縮振動に対応する波数の吸収強度をI2とするとき、I1/(I1+I2)の値が0.5〜0.8であるメソカーボンマイクロビーズ。
- 真球状であるとみなして粒径から算出したみかけの比表面積をS1とし、BET比表面積をS2とするとき、S2/S1で表される凹凸度が、1〜5である請求項13記載のメソカーボンマイクロビーズ。
- 請求項13記載のメソカーボンマイクロビーズを焼成処理した球状の焼成メソカーボンマイクロビーズ。
- 面間隔d(002)の値が、0.3354〜0.3357nmである請求項15記載の焼成メソカーボンマイクロビーズ。
- 請求項15記載の焼成メソカーボンマイクロビーズで形成されたリチウム二次電池用負極。
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