JP2014191924A - 非水系二次電池用炭素材の製造方法及びその製造方法によって得られた炭素材 - Google Patents

非水系二次電池用炭素材の製造方法及びその製造方法によって得られた炭素材 Download PDF

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Abstract


【課題】高入出力特性、高容量、高サイクル特性で、電池膨れの小さい非水系二次電池を提供する。
【解決手段】黒鉛粒子に有機化合物を不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下である有機化合物を被覆し、焼成することで得られる非水系二次電池用炭素材の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、非水系二次電池用炭素材の製造方法及びその製造方法によって得られた炭素材に関するものである。
近年、電子機器の小型化に伴い、高容量の二次電池に対する需要が高まってきている。特に、ニッケル・カドミウム電池や、ニッケル・水素電池に比べ、よりエネルギー密度の高く、大電流充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池が注目されてきている。従来、リチウムイオン二次電池の高容量化は広く検討されているが、近年リチウムイオン二次電池に対する高性能化要求の高まりから、更なる高容量化・大電流充放電特性・高温保存特性・高サイクル特性、高速充放電特性、高リチウム入出力特性、高保存特性を満たすことが求められており、特に自動車搭載用リチウムイオン二次電池としては、加速時に大きなエネルギーを要し、また、減速時に発生する大きなエネルギーを効率よく回生させなければならないため、高い入出力特性が要求される。同様に高出力電動工具についても、高い出力特性が要求される。
リチウムイオン二次電池の炭素材としては、コストと耐久性の面で、黒鉛材料や非晶質炭素が使用されることが多い。非晶質炭素材は、リチウムの入出力特性には優れるものの、内部の細孔にリチウムが取り込まれるため、可逆容量が小さく、また活物質層の高密度化が困難なことから高容量化に至らないといった問題点があった。一方、黒鉛材料はリチウム吸蔵の理論容量である372mAh/gに近い容量が得られ、活物質として好ましいが、リチウムイオンとの反応抵抗が非晶質炭素より大きいことで、リチウムイオンの入出特性が劣るといった問題点があった。
上記問題点を解決するため、例えば、特許文献1には、黒鉛質炭素質物の表面に有機物の炭化物を付着してなる炭素材であって、有機物の炭化物量を該黒鉛性炭素質物100質量部に対する残炭量として12質量部以下0.1質量部以上となるように調整することにより、放電容量が高く、且つ初期サイクル時の充放電不可逆容量が低く抑えられ、更に電解液に対する安全性も高い非水溶媒二次電池が得られることが開示されている。
また、特許文献2には鱗片状黒鉛質炭素粒子に力学的エネルギー処理を与えて得られる球形化処理黒鉛を用いること、及び得られた球形化処理黒鉛と有機化合物とを混合した後に、その有機化合物を炭化した炭素材を用いることで、炭素材の充填性、容量、大電流充放電特性、特には高速充放電特性に優れた非水溶媒二次電池が得られることが開示されている。
特許第3712288号明細書 特許第3534391号明細書
しかしながら本発明者らの検討によると、特許文献1に記載の技術では、原料黒鉛粒子として、天然または人工的に得られる、粒子形状が扁平な鱗片状黒鉛粒子若しくは鱗状黒鉛を用いているため、高速充放電特性が現在要望される値を満たしていないという問題がある。電極用炭素材料を非水系二次電池用の負極として用いるためには、炭素材料を適当
なバインダーと共に溶媒に分散させてスラリー状とし、このスラリーを集電体に塗布し、乾燥して溶媒を除去する工程、さらには、電池容器に入る負極の量を多くするために、塗布した負極を圧密して負極の密度を高める工程が必要となる。炭素材料の形状が鱗片であるため、集電体に塗布する工程で、鱗片状の粒子が集電体と並行に配向してしまい、更には、圧密の工程でその傾向が強調されてしまう。その結果リチウムイオンが、負極の厚み方向に移動し難くなり、高速充放電特性が小さい負極材となってしまう。
一方、特許文献2では、鱗片状黒鉛質炭素粒子に力学的エネルギー処理を与えて得られる球形化黒鉛を用いること、及び得られた球形化黒鉛と有機化合物とを混合した後に、その有機化合物を炭化した炭素材を用いることで、炭素材の充填性、容量、特に高速充放電特性に優れた非水溶媒二次電池が得られることが開示されている。これは、負極炭素材粒子が球形をしていることで、炭素材の塗布工程における特許文献1のような粒子の配向が生じ難くなり、圧密しても粒子間に空隙が残るため、負極の厚み方向へのリチウム移動性が容易となり、高速での充放電特性が高まる。しかしながら、鱗片黒鉛に力学的エネルギー処理、すなわち衝撃を加えることにより黒鉛を折り曲げることで球形化しているため、黒鉛の折曲り部にはクラック、欠陥が生じ、得られた球形化黒鉛粒子の比表面積は増加してしまう。また、折曲がり部以外も力学的処理による衝撃を受けているため、微細クラックが生じ、比表面積が増加する。この球形化黒鉛と有機化合物とを混合して炭化することで得られる、黒鉛粒子表面を有機化合物由来の炭素質で被覆してなる炭素材は、粒子が球状であるため、粒子間に満たされている非水系電解液中のリチウムイオンの移動性が高まり、高速での充放電特性に優れる。また、黒鉛粒子表面に球形化処理で生じた、クラック、欠陥が多くあるため、黒鉛粒子へのリチウムの出入りが容易となり、入出力特性に優れた負極材となる。しかし、球形化処理により黒鉛粒子の比表面積が増加しているため、有機化合物由来の炭素質で被覆されてなる炭素材の比表面積も大きいものになってしまう。炭素材をリチウムイオン二次電池用の負極材として用いる場合、負極材の周りは非水系電解液で満たされている状態に在り、充電を行うとリチウムイオンと非水電解液として用いられるカーボネート化合物の一部が負極材の表面で反応して、負極材表面にリチウムアルキルカーボネート等の個体膜を形成し、同時に一酸化炭素や二酸化炭素等のガスを発生する。この個体膜は、負極材表面を覆うことで、安定的な充放電を行うのに必須のものとなる。しかしながら過剰量の膜の形成は、個体膜の形成に使われるリチウムの量が増加し、充放電に預かれるリチウムの量が減少してしまい、電池容量を減少させてしまう。また同時に発生する一酸化炭素や二酸化炭素等のガス量も増加し、そのガスによる電池の膨れを生じる傾向がある。この個体膜の形成、及びガスの発生は、負極材表面とリチウムイオン及び電解液であるカーボネート化合物の反応により生じるもので、負極の表面積が大きいほど増加する傾向にある。そのため、球形化黒鉛はクラックや欠陥が多くあることで、高いリチウムの出入り性を確保し、この球形化黒鉛を有機化合物由来の炭素質で被覆してなる炭素材は、比表面積を小さくことで、負極材表面とリチウムイオン及び電解液であるカーボネート化合物の反応を最低限に抑え、個体膜に消費されるリチウム量や、発生ガス量を減らすことが望まれる。しかしながら、特許文献2の方法の炭素材では、現在我々が目的としている低い比表面積の炭素材とはなっていない。
そこで、本発明は、負極材表面とリチウムイオン及び電解液であるカーボネート化合物の反応を最低限に抑え、個体膜に消費されるリチウム量や、発生ガス量を少なくすることが可能な、低比表面積の水系二次電池用の炭素材を提供すること、及びその製造方法を提供することで、しいては近年の電気自動車や電動工具の用途にも適した、高入出力特性、高容量、高サイクル特性で電池膨れの少ない非水系二次電池の提供を可能化するものである。
特許文献1、及び2では、電極用炭素材料として黒鉛の表面が有機化合物由来の炭素質
で被覆された炭素材を提案しているが、原料として用いる有機化合物特性、及び得られた炭素材の被覆層の特性については言及されていない。特に特許文献2では、黒鉛粒子に力学的エネルギー処理を与えることで黒鉛を球形化しているが、同時に黒鉛の比表面積も増加するため、この球形化黒鉛を有機化合物と混合炭化してなる炭素材の比表面積は、特許文献1の炭素材より高いものとなってしまう。本発明者らは、有機化合物と黒鉛とを混合し焼成炭化することで得られる炭素材の、該有機化合物由来の炭素質被覆層の結晶性に着目して鋭意検討を行った。その結果、有機化合物を不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下となるものを該有機化合物として用いることで、比表面積の低い炭素材が得られることを見出し本発明にいたった。炭素や黒鉛の結晶は、ベンゼン環が平板状に多数結合してなるシート状のグラフェンがファンデルワールス力で多数積層した構造をしており、002面の面間隔(d002)とはこのグラフェン間の距離を表し、グラフェン間の距離、すなわち002面の面間隔(d002)が小さいほど結晶性が高い炭素質となっていることを示している。本発明の趣旨は、結晶性がより高くなる有機化合物を被覆炭素原料として用いることにある。すなわち、1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下である有機化合物を黒鉛粒子の被覆炭素原料として用いることを特徴とする、非水系二次電池負極用炭素材の製造法に存する。
本発明の方法により製造された非水系二次電池用炭素材は、低比表面積な炭素材となり、これを非水系二次電池用負極材として用いることで、電解液と負極材表面との反応を少なくすることが可能となり、反応により損出するリチウム量を減少させることができ、高容量の電池とすることができる。また、反応により発生する一酸化炭素や二酸化炭素等のガス量を減少することができ、ガスによる電池の膨れを、小さくすることができる。その結果、高入出力特性、高容量、高サイクル特性で、電池膨れの小さい非水系二次電池を提供することが可能となる。
以下、本発明の内容を詳細に述べる。なお、以下に記載する発明構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨をこえない限り、これらの形態に特定されるものではない。
<非水系二次電池用炭素材の製造方法>
本発明の非水系二次電池用炭素材は、1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下となる有機化合物を黒鉛粒子の被覆炭素原料として用いることを特徴としている。炭素や黒鉛の結晶は、ベンゼン環が平板状に多数結合してなるシート状のグラフェンがファンデルワールス力で多数積層した構造をしており、002面の面間隔(d002)とはこのグラフェン間の距離を表し、グラフェン間の距離、すなわち002面の面間隔(d002)が小さいほど結晶性が高い炭素質である。
本発明の非水系二次電池用炭素材の製造工程は、(1)黒鉛粒子と有機化合物を混合して、黒鉛粒子に有機化合物を付着させる工程、(2)黒鉛粒子と有機化合物の混合物を不活性雰囲気で焼成することで、黒鉛粒子表面に着いている有機化合物を炭素化処理して、有機化合物由来の炭素質で黒鉛粒子を被覆した炭素材を得る工程、そして好ましくは(3)炭素質で被覆された黒鉛粒子同士の凝集結合を粉砕や解砕により粒子状とする工程、(4)必要に応じて篩や風力分級により炭素被覆粒子の粒度を調整する工程を含むものである。これらの工程の「(1)黒鉛粒子と有機化合物を混合して、黒鉛粒子に有機化合物を付着させる工程」で、原料として用いる有機化合物が、該有機化合物を不活性雰囲気で1
300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下となるものを用いることを特徴としており、このことで比表面積が低い非水系二次電池用炭素材を製造することができる。
また、原料として用いる有機化合物が、該有機化合物を不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下となるものを用いることで、前記「(3)炭素質で被覆された黒鉛粒子同士の凝集結合を粉砕や解砕により粒子状とする工程」に於いて、粉砕や解砕がし易くなり、凝集結合物の量が減少し、前記「(4)必要に応じて篩や風力分級により炭素被覆粒子の粒度を調整する工程」に於いて、篩や風力分級での製品の収率が高いものとなる。黒鉛粒子を被覆している炭素質の結晶性が高いと、炭素質の層状結晶性が高くなり、粉砕性が高くなる。一方、炭素質の結晶性が低いと、炭素質の層状結晶性が低く、三次元結合性高くなり、粉砕性が悪く、粒子の凝集物が多く残る傾向を示す。本発明でいう粉砕性は、目開き63μmを通過す炭素材の質量が、全炭素材質量の何%であるかで表される篩収率で評価することができ、篩歩収率が高いほど、粉砕性に優れている。篩収率は、前記「(3)炭素質で被覆された黒鉛粒子同士の凝集結合を粉砕や解砕により粒子状とする工程」に於いて、粉砕強度、すなわち粉砕機の粉砕回転数に影響されえる。粉砕回転数が大きいと、粒子の凝集物の解砕力が強くなり、記「(4)必要に応じて篩や風力分級により炭素被覆粒子の粒度を調整する工程」での篩収率が高くなる。しかし、粉砕回転数を高くすると粉砕強度が大きいことで、粒子への衝撃が強くなり、炭素材の表面炭素質層の荒れが大きくなり、比表面積の増大を来し、本発明の炭素材から外れる傾向になり易い。しかしながら、本発明の範囲の有機化合物を用いると、前記「(3)炭素質で被覆された黒鉛粒子同士の凝集結合を粉砕や解砕により粒子状とする工程」で大きい回転数で粉砕を行わなくても、篩収率が高くなり、比表面積の低い非水系二次電池用炭素材を得ることができる。篩す収率が悪いということは、廃棄する炭素材量が多過ぎると製造コストが増加し望ましくないので、本発明の篩収率は通常95%以上、好ましくは97%、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上である。
<有機化合物の種類>
炭素材料を被覆する原料として用いる有機化合物としては、石炭系原料油、石油系原料油、樹脂由来の有機化合物があげられるが、本発明の条件を満たす有機化合物としては石炭由来の有機化合物を用いることが望ましい。
樹脂由来の有機化合物としては、熱硬化性樹脂として、フェーノール樹脂、ポリアクリルニトリル、ポリイミドなど、また、熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、また、天然の樹脂として、セルロース類、澱粉、多糖類などを挙げることができる。
石炭系原料油は、石炭を原料として製造されるコールタールピッチ、含浸ピッチ、成形ピッチ、石炭液化油等の石炭系重質油、コールタールピッチ中の不溶成分を取り除いた精製コールタールピッチ等を用いることができる。石炭系原料油は、ベンゼン環が多数結合したジベンゾコロネンやペンタセンなどの平板状の芳香族性炭化水素類を多く含んでいる。平板構造の香族性炭化水素は、焼成工程で温度が高まり流動性が増した時に、該平板構造の芳香族炭化水素の面同士が重なり易く、熱による重縮合反応により該平板構造が重なった状態で進行するため、重縮合により高分子化した炭化水素同士の面間に働くファンデルワールス力が強くなり、該高分子化した炭化水素同士の面間距離が小さくなり易く、結果、結晶化の進行度合いが高くなる。
一方、石油系原料油としては、重油の蒸留残渣油、ナフサ分解残渣油、接触分解重質油等を上げることができる。しかしながら、これらの石油由来の有機化合物は、ベンゼン環
が多数結合した平板状の芳香族性炭化水素類も含んでいるが、直鎖状のパラフィン系炭化水素を多数含んでいることは旧知である。更には、ベンゼン環が多数結合した平板状の芳香族性炭化水素類にメチル基などの側鎖がついているものが多いことや、ベンゼン環の一部がシクロヘキサン環に置換された物も多く含んでいることが知られている。そのため焼成工程で温度が高まり流動性が増し平板構造の芳香族炭化水素の面同士が重なろうとするときに、その面に前記直鎖状のパラフィンが多くあることで、その重なりが阻害される傾向にある。また、平板状の芳香族性炭化水素類にメチル基などの側鎖がついているものは、平板状の芳香族性炭化水素の重なりの邪魔になる傾向にある。また、シクロキサン環も芳香族性炭化水素の重なりを阻害する傾向があるが、シクロキサン環は熱により分解さメチル基などの側鎖になり、更にその重なりを阻害する傾向を示す。これらのことから、前記石炭系原料油は、石油系原料油に比較して、結晶化の進行度合いが大きい傾向となるため、本発明で用いる有機化合物としては好ましく、具体的には、石油精製の際に発生する、石油系重質油と、製鉄用コークスを製造する際に発生するコールタールを出発原料とする石炭系原料油が好ましい。これらのうち、本発明では、石炭系原料油を用いることがより好ましい。本発明で使用する非水系二次電池用炭素材用石炭系原料油としてはコールタールピッチを出発原料として用いることが好ましく、コールタールを蒸留する際に塔底から抜き出される軟化点0℃以上、好ましくは、30〜100℃の軟ピッチ又は中ピッチと称されるピッチである。また、本発明の石炭系原料油としては、これらのコールタールピッチに石油系原料油を添加したものでもよい。
通常、これらのコールタールピッチを出発原料とした石炭系原料油(本明細書では石炭由来ピッチともいう)には、軽質のオイル成分が含まれており、有用成分を取り出すとともに生産性を上げるため蒸留操作を行い、精製されたコールタールピッチとして取り出す。
<有機化合物の物性>
有機化合物は、有機化合物を不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下となるものであれば特に制限はないが、好ましい物性として、特に本発明において好ましい有機化合物である石炭系原料油における物性や製造方法を一例として以下に記載するが、本発明の有機化合物がこれに限定されるものではない。
・X線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)
本発明に用いる有機化合物の学振法によるX線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)は、0.3445nm以下、好ましくは0.3444nm以下、好ましくは0.3443nm以下である。
・キノリン不要分(Qi)
本発明の有機化合物を製造するための出発原料であるコールタールピッチは、Qiが通常0.0〜10.0質量%、好ましくは1.0〜8.0質量%、より好ましくは2.0〜6.0質量%であり、βが通常1.0〜15.0質量%、好ましくは2.0〜10.0質量%、より好ましくは3.0〜8.0質量%のものであれば、特に制限はない。なお、本発明におけるQi及びβは、後述する測定方法により求めることができる。
また、上記のコールタールピッチを蒸留する際は、圧力が通常0.0〜0.1MPa、好ましくは0.01〜0.05MPaであり、温度が320〜360℃、好ましくは330〜350℃の条件下で、加熱炉から蒸留塔出口までの滞留時間は5分〜1時間、好ましくは10〜40分である。なお、蒸留の前に、コールタールピッチに含まれる水を除去するために、脱水をおこなってもよい。この蒸留操作によって、コールタールピッチに含まれる軽油、カルボル油、クレ油、及びナフタリン油を除去することができる。
この蒸留操作後の、コールタールピッチ中のQiは通常0.0〜15.0質量%、好ましくは1.0〜10.0質量%であり、βは通常1.0〜15.0質量%、好ましくは4.0〜10.0質量%である。また、このときのコールタールピッチ中のトルエン可溶アセトン不溶分(以下、「α」と略記することがある)の含有量は、特に限定されないが、5.0〜15.0質量%、好ましくは、6.0〜12.0質量%であり、また、ニトロベンゼン可溶モルホリン不溶分(以下、「β」と略記することがある)の含有量は、特に限定されないが、0.5〜5.0質量%、好ましくは、1.0〜4.0質量%である。
非水系二次電池用炭素材を製造する際に用いられる原料油に、Qiが含まれていると焼成炭素化の過程で結晶成長が不十分となり、品質の良くない炭素となるため、炭素化する前に予めコールタールピッチからQiを除去することが好ましい。
本発明において、Qiを除去する処理方法としては、特に限定されないが、遠心分離法、質量沈降法、濾過法など公知の方法を採用することができるが、残存Qiを少なくするため、濾過法または質量沈降法によりQiを除去することが好ましい。また、この場合、各操作を容易にするために必要に応じて適宜の溶媒を使用してもよい。濾過法によりQiを除去する際は、圧力が通常0.05〜1.0MPa、好ましくは0.1〜0.5MPaであり、温度が20〜200℃、好ましくは50〜150℃の条件下でおこなう。また、濾過に使用するフィルターの目開きは3ミクロン以下が望ましい。
質量沈降法によりQiを除去する場合は、温度が通常20〜350℃、静置時間が通常10分から10時間の条件下で行う。
このようにして、Qiを除去処理した後のコールタールピッチに含まれるQiは通常0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下である。また、Qi除去操作後のコールタールピッチに含まれるβは、通常1.0〜15.0質量%であり、好ましくは4.0〜10.0質量%である。また、このときのコールタールピッチ中のα成分の含有量は、特に限定されないが、通常5.0〜8.0質量%であり、好ましくは、5.5〜7.5質量%であり、また、β成分の含有量は、特に限定されないが、0.3〜2.0質量%であり、好ましくは、0.8〜1.5質量%である。
本発明では、このQi除去操作後のコールタールピッチなどの非水系二次電池用炭素材用石炭系原料油中のα成分の含有量を通常8.0質量%以上とすることでも、本発明の非水系二次電池用炭素材が製造できる。なお、本発明におけるトルエン可溶アセトン不溶分は、以下の測定方法により求めることができる。
Qi、β、α、及びβの測定方法
溶媒として、アセトン(純度95.0%以上、和光純薬工業社製)、キノリン(純度9
5.0%以上、和光純薬工業社製)、ニトロベンゼン(純度99.5%以上、和光純薬工
業社製)、モルホリン(純度98.0%以上、和光純薬工業社製)、及びトルエン(純度99.5%以上、和光純薬工業社製)を用意し、これら、各溶媒に対するニードルコークス製造用石炭系原料油中の不溶分について、以下の(1)〜(6)の手順によって測定した。
(1)試料(コールタール、またはコールタールピッチ)2.0gをフラスコにとり、精
秤する(W1)。
(2)試料の入ったフラスコに上記測定溶媒(例えばキノリン)100mlを注ぎ、冷却器を取り付け、110℃のオイルバスに入れる。(トルエンは130℃にする。)液を攪拌しながら30分間加熱し、溶解させる。
(3)あらかじめ精秤しておいた濾紙(W2)を濾過器に取り付ける。(2)の溶液を濾過器に注ぎ、吸引濾過をする。濾過残渣に60℃で加温しておいた測定溶媒100mlを注ぎ溶解・洗浄する。この操作を4回繰り返す
(4)濾過残渣の乗った濾紙を110℃の乾燥器に60分間入れ乾燥させる。
(5)濾過残渣の乗った濾紙を乾燥器から取り出し、デシケータ-内で30分放冷した後
、その重量を精秤する(W3)。
(6)溶媒不溶分を以下の式により計算する。
溶剤不溶分(質量%)=(溶解後残渣重量/試料重量)× 100
=((W3−W2)/W1 )× 100
測定溶媒を上記のアセトン、キノリン、ニトロベンゼン、モルホリン、トルエンと変更し、上記(1)〜(6)の方法で測定した各溶媒の不溶分(質量%)を、それぞれ、アセトン不溶分、キノリン不溶分、ニトロベンゼン不溶分、モルホリン不溶分、トルエン不溶分とする。
各溶媒に対して測定された不溶分をもとに、β、α、及びβは以下のように、求めることができる。
β(キノリン可溶トルエン不溶分)=(トルエン不溶分)−(キノリン不溶分)
α(トルエン可溶アセトン不溶分)=(アセトン不溶分)−(トルエン不溶分)
β(ニトロベンゼン可溶モルホリン不溶分)=(モルホリン不溶分)−(ニトロベンゼン不溶分)
なお、本発明において、各溶媒に対する可溶分とは、100(質量%)より上記の方法で測定した不溶分(質量%)を差し引いた値とする。
本発明において、石炭系原料油中のαは、通常8.0質量%以上であり、好ましくは、9.0質量%以上であり、更に好ましくは、9.5質量%以上である。また、一方、上限としては、20質量%以下である。上記範囲内であれば、芳香族平面性が発達するため黒鉛表面への均一とすることができて好ましい。
αを調整する方法としては、石炭系原料油にα成分を添加してもよいが、石炭系原料油に分散処理を行なうことで、α成分を調整することができる。ここでいう、分散処理とは、具体的には、加圧熱ろ過、又は超音波処理などが挙げられる。
加圧熱ろ過とは、多孔質のフィルターなどに、コールタールピッチなどの石炭系原料油を透過させることであり、具体的には、フィルターを付けた耐圧容器に、所定の温度に加温したコールタールピッチなどの石炭系原料油を入れ、窒素等により所定の圧力をかけること、あるいは、ポンプにより加圧された石炭系原料油を、フィルターを付けた容器に通すことである。
加圧熱ろ過の条件としては、フィルターの目開きは通常3ミクロン以下であり、好ましくは1ミクロン以下、さらに好ましくは0.5ミクロン以下である。濾過温度は50〜300℃であり、好ましくは100〜250℃である。濾過圧力は1.0MPa以下であるが、濾過面での圧力損失が0.3MPa以下になるよう調整する。
超音波処理とは、超音波振動を機械的振動に変換して、振動子に伝達させ、この振動子を石炭系原料油中に浸すことで分散を行うことであり、具体的には超音波分散器(ホモジナイザー)を使用することで実現できる。超音波処理の条件としては、処理時間5〜60分であり、好ましくは10〜40分である。処理温度は150℃以下が望ましい。
また、本発明において、石炭系原料油中のβの含有量が、通常1.0質量%以下であることが好ましい。更に、好ましくは、0.5質量%以下であり、特に好ましくは、0.1質量%以下である。このβが大きくなるほど、炭素化の過程での結晶成長が不十分となり、上記範囲内であれば、芳香族平面性が発達するため黒鉛表面への均一とすることができて好ましい。
βを調整する方法としては、上述のコールタールピッチを蒸留する際の温度や圧力や時間などの諸条件の変更、熱処理、水素添加処理、又はQi除去操作時の温度、圧力、溶媒量などの諸条件の変更、前述の分散処理及びこれらの組み合わせによって達成できる。
例えば、Qi除去後のコールタールピッチを、目開き1ミクロン以下のフィルターを用い、50〜300℃の温度、1MPa以下の圧力で、熱濾過すればβは低くなる。β
の大半はコールタールピッチに含まれる有機分子の凝集体であり、例えばα成分などが凝集したものである。これを熱濾過すると凝集がほぐれ、βが減少し、α成分が増加する傾向がある。
その他の例としては、質量沈降法によるQi除去時の操作温度を下げればβは減少する傾向にあり、Qi除去時の操作温度を上げればβは増加する傾向にある。
・比重
有機化合物の比重の下限は通常1.1以上、好ましくは1.14以上、より好ましくは1.17以上、更に好ましくは1.2以上である。上限は通常1.5以下、好ましくは1.45以下、より好ましくは1.4以下、更に好ましくは1.35以下である。比重が小さすぎると、有機化合物中の直鎖状のパラフィン系炭化水素の量が多い傾向を示し、焼成炭化において結晶性が低くなる傾向となる。比重が大きすぎると、有機化合物の分子量が大きく、高融点物になる傾向ある。高融点すぎると、前記「非水系二次電池用炭素材の製造方法の(1)黒鉛粒子と有機化合物を混合して、黒鉛粒子に有機化合物を付着させる工程」において、黒鉛粒子と有機化合物との混合が不均質となる傾向がある。なお、比重は15℃の値を用いた。
・コンラドソン残炭率
有機化合物のコンラドソン残炭率の下限は通常15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上である。上限は通常90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。残炭率が小さすぎるということは、焼成炭化の段階で蒸発や分解で揮散する量が多いということで、一定量の有機化合物由来の炭素質を黒鉛表面に残す場合、より多量の有機化合物が必要となる。また、揮散する有機化合物量が多いと、黒鉛表面に被覆されている有機物由来の残留炭素からガスとして抜ける時に、残留炭素表面や内部を荒らしてしまい、結果、比表面積の大きい水系二次電池用炭素材となってしまう傾向がある。残炭率が大きすぎると、有機化合物の分子量が大きく、高融点物であることが多い。高融点過ぎると、黒鉛粒子と有機化合物との混合が不均質となる傾向がある。
コンラドソン残炭率は、JIS K2270における石油製品残留炭素分試験方法「コンラドソン法」により実施した。有機化合物5gるつぼ採取し、30分加熱し有機化合物中の揮発成分を留去した後、るつぼ中に残った残炭物の質量を、加熱前の有機化合物の質量で除して%で表した。
・軟化点
有機化合物の軟化点の上限は通常400℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。有機機化合物の軟化点の下限は通常25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上である。上限以上だと、黒鉛粒子と混合する際、均一に混合することが困難になり、且つより高温での混合が必要となり生産性に欠ける場合がある。下限以下であると、有機化合物中に含まれる平板状の芳香族性炭化水素類の量が少なく、直鎖状のパラフィン系炭化水素の量が比較的多く含んでいる傾向となり、焼成炭化で得られる被覆炭素質物の結晶性が低くなり、水系二次電池用炭素材の比表面積が高くなる傾向にある。
・結晶子サイズ(Lc)
有機化合物を1300℃焼成炭化して得られた炭素粉末の学振法によるX線回折で求め
た有機化合物の結晶子サイズ(Lc)の下限が通常36nm以上、好ましくは37nm以上、より好ましくは39nm以上であり、上限は通常90nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下である。
結晶子サイズ(Lc)が低すぎるといことは、結晶性の低い炭素で被覆された非水系二次電池用炭素材あるということで、比表面積が高くなってしまう傾向にある。結晶子サイズ(Lc)が高すぎる場合は、黒鉛粒子表面を被覆している炭素質の結晶性が高くなり、黒鉛の結晶性に近いことを表し、被覆炭素質の持つリチウムの入出力速度が低下してしまう傾向にある。
<黒鉛粒子>
黒鉛粒子は非水系二次電池用炭素材を製造するに際し、核となる原料である。
<黒鉛粒子の物性>
本発明における黒鉛粒子は以下の物性を示すものが好ましい。なお、本発明における測定方法は特に制限はないが、特段の事情がない限り実施例に記載の測定方法に準じる。
・黒鉛粒子の平均粒径(d50)
非水系二次電池用炭素材の平均粒径(d50)は通常40μm以下、好ましくは、35μm以下、より好ましくは30μm以下であり、通常、5μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは15μm以上である。平均粒径が大きすぎるとこの粒径範囲を超えて極板化した際に、筋引きなどの工程上の不都合が出ることが多く、また、この粒径範囲を下回ると、表面積が大きくなりすぎ電解液との反応性を抑制することが難しくなる傾向がある。
・黒鉛粒子のBET比表面積(SA)
黒鉛粒子のBET法で測定した比表面積については、通常1m/g以上、好ましくは3m/g以上である。また通常15m/g以下、好ましくは12m/g以下、より好ましくは10m/g以下である。黒鉛比表面積がこの範囲を下回ると、リチウムが出入りする部位が減少する傾向になり、入出力特性や高速充放電特性出力特性が劣る。一方、黒鉛の比表面積がこの範囲を上回ると、黒鉛を有機非晶質由来の炭素質で被覆しても、炭素材の比表面積が充分には低くならない傾向にある。
・黒鉛粒子のタップ密度
黒鉛粒子のタップ密度は、通常0.7g/cm以上、0.8g/cm以上が好ましい。また、通常1.4g/cm以下、1.3g/cm以下が好ましい。タップ密度が低いということは、黒鉛粒子の球形化性が低いということで、炭素材として電極に用いた場合、炭素材粒子間でのリチウムイオンの移動性が阻害される傾向となり、高速充放電特性が低下する。タップ密度が高すぎると、粒子内炭素密度が上昇し、圧延性に欠け、高密度の負極シートを形成することが難しくなる傾向がある。
本発明において、タップ密度は、粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cmの円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して、測定対象を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から求めた密度をタップ密度として定義する。
・黒鉛粒子のラマンR値
黒鉛粒子のラマンR値は、1580cm−1付近のピークPの強度Iと、1360cm−1付近のピークPの強度Iとを測定し、その強度比R(R=I/I)を算出して定義する。その値は、0.10以上、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.17以上、更に好ましくは0.20以上である。また1以下、好ましくは0.9以下、
より好ましくは0.8以下である。また、通常1以下、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。ラマンR値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、負荷特性の低下を招く虞がある。また、ラマンR値が低いということは、粒子が力学的エネルギー処理を十分には受けてないことを示し、粒子の球形化度が低く、粒子表面のクラック、欠陥が少ない傾向となり、結果として炭素材粒子間のリチウムの移動性が低くなることで、高速充放電性に劣り、リチウムの入出力性も劣る傾向がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶が乱れ、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下やガス発生の増加を招く傾向がある。
ラマンスペクトルはラマン分光器で測定できる。具体的には、測定対象粒子を測定セル内へ自然落下させることで試料充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら測定を行なう。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
・黒鉛粒子の平均円形度
非水系二次電池用炭素材の粒径1.5μm〜40μmの範囲の粒子について測定した下記式で与えられる円形度(=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長)が通常0.85以上、好ましくは、0.87以上、より好ましくは0.9以上である。平均円形度がこの範囲を下回ると、炭素材粒子間のリチウムの移動性が低くなることで、高速充放電性に劣る傾向になる。平均円形度は、液中に分散させた数千個の粒子を、CCDカメラを用いて1個ずつ撮影し、その平均的な形状パラメータを算出することが可能なフロー式粒子解析計において、1.5〜40μmの範囲の粒子を対象として、後述する実施例の方法により測定する。平均円形度は、粒子面積相当円の周囲長を分子とし、撮影された粒子投影像の周囲長を分母とした比率で、粒子像が真円に近いほど1に近づき、粒子像が細長い或いはでこぼこしているほど小さい値になる。
<黒鉛粒子の製造方法>
黒鉛粒子は、その原料として、少なくとも一部が黒鉛から構成されている炭素粒子であれば特に限定はないが、天然黒鉛、人造黒鉛、並びにコークス粉、ニードルコークス粉、樹脂の黒鉛化物の粉体等が挙げられる。この中でも商業的にも容易に入手可能であるという点、他の負極活物質を用いた場合よりも、高電流密度での充放電特性の改善効果が著しく大きい点で黒鉛が好ましい。これらのうち、天然黒鉛が好ましく、中でも球形化処理を施した球状黒鉛が特に好ましい。
球形化処理に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素材に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、表面処理を行なう装置が好ましい。また、炭素材を循環させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有するものであるのが好ましい。好ましい装置として、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロン(アーステクニカ社製)、CFミル(宇部興産社製)、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)等が挙げられる。これらの中で、奈良機械製作所社製のハイブリダイゼーションシステムが好ましい。
黒鉛粒子は、上記の表面処理による球形化工程を施すことにより、鱗片状の天然黒鉛が折りたたまれる、もしくは周囲エッジ部分が球形粉砕されることにより球状とされ、同時に黒鉛粒子表面にクラックや欠陥が生じる。例えば前述の装置を用いて処理する場合は、回転するローターの周速度を通常30〜100m/秒、40〜100m/秒にするのが好ましく、50〜100m/秒にするのがより好ましい。また、処理は、単に炭素質物を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
<非水系二次電池用炭素材の製造方法>
以下、製造工程を、具体的に述べる。
本発明の非水系二次電池用炭素材は、主に(1)黒鉛粒子と有機化合物を不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下である有機化合物を混合して、黒鉛粒子に有機化合物を付着させる工程、(2)黒鉛粒子と有機化合物の混合物を不活性雰囲気で焼成することで、黒鉛粒子表面に着いている有機化合物を炭素化処理(焼成)して、有機化合物由来の炭素質で黒鉛粒子を被覆した炭素材を得る工程を行うことにより製造できる。炭素化処理とは、非晶質化処理又は黒鉛化処理を意味する。このように非晶質炭素又は黒鉛質で黒鉛粒子が被覆された炭素材を本明細書では炭素材という場合がある。
例えば、次記の方法で製造することができる。
(1)黒鉛粒子と有機化合物を混合して、黒鉛粒子に有機化合物を付着させる工程
黒鉛粒子と有機化合物を、種々の市販の混合機や混練機等を用いて混合し、混合物を得る。有機化合物の混合量は、炭素化により得られる加熱処理を経た非水系二次電池用炭素材に占めている有機化合物由来残炭素成分の比率として、通常0.3質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上となるように仕込み量を調整して混合する。その上限としては、この比率が通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下となる量である。有機化合物の混合量が多すぎると、充放電容量が低下し、集電体に塗布された活物質層を高密度に圧延する際に必要なプレス荷重が高くなり、結果として非水系二次電池の高容量化が困難となる場合がある。一方、有機化合物の混合量が少なすぎると、集電体に塗布された活物質層を高密度に圧延した際に粒子が破壊・変形し、良好な大電流充放電特性が得られない傾向がある。
黒鉛粒子と有機化合物は、必要に応じて加熱下で混合される。加熱温度は、有機化合物が常温で液体の場合は、常温以上の温度での混合が好ましく、有機化合物が常温で個体状の場合は、有機化合物の通常軟化点以上であり、軟化点より10℃以上高い温度が好ましく、より好ましくは軟化点より20℃以上高い温度、通常軟化点より450℃以下、好ましくは250℃以下で行われる。加熱温度が低すぎると、有機化合物の粘度が高いことで混合が困難となる虞があり、加熱温度が高すぎると有機化合物の揮発と重縮合によって混合系の粘度が高くなりすぎる虞がある。
混合機は、リボンミキサー、MCプロセッサー、プロシェアミキサー、KRCニーダーなど市販されているものを使用することができる。捏合時間の下限は1分以上、好ましくは2分以上、より好ましくは5分以上であり、上限は、120分以下、好ましくは100分以下、より好ましくは80分以下である。混合時間が短すぎると、黒鉛粒子の周りへの有機化合物の付着が均質に行われない傾向が見られ、長すぎるとコストの増加をきたす。(2)黒鉛粒子と有機化合物の混合物を不活性雰囲気で焼成することで、黒鉛粒子表面に着いている有機化合物を炭素化処理して、有機化合物由来の炭素質で黒鉛粒子を被覆した炭素材を得る工程
(1)工程にて得られた混合物を、不活性雰囲気、具体的には非酸化性雰囲気下で加熱焼成し、有機化合物を炭素化する。焼成に供する混合物中の有機化合物は、まず、通常400℃〜500℃までの加熱により、該有機化合物中に含まれる低沸点留分が留去され、該低沸点留分の留去と同時にまたは該低沸点留分の留去後に、該有機化合物の重縮合反応や分解反応が生じ、該分解した成分は逸散し、重縮合反応により高分子量化されたものや、高沸点留分で分解されないものは、黒鉛粒子表面やその近傍に残る。更に温度を上昇させると、黒鉛粒子表面やその近傍に残った高分子量物や高沸点物の重縮合が更に進行し、該高分子量物や高沸点物が炭素化される。
焼成する温度の下限は通常500℃以上、好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上である。温度の上限は通常3300℃以下、好ましくは2000℃以下、より好ましくは1500℃以下、更に好ましくは1400℃以下である。焼成温度が低すぎると有機物の重縮合高分子量化の程度が小さいため、炭素化の程度が小さい傾向にあり、リチウム電池用負極材として用いた時に、不可逆容量(充電時に負極内に取り込まれたリチウムイオンの一部が放電で戻なくなる量)が大きくなる傾向にある。焼成温度が高すぎると、有機化合物の炭素化が進みすぎる傾向にあり、リチウム電池用負極材として用いた時に、リチウムイオンの入出力速度が小さくなってしまう傾向にある。
(2)工程は、必要により2段階に分けて実施することができる。
焼成を2段回に分けて実施することにより、1段回目で混合物中の有機化合物に含まれる低沸点物質や、有機化合物の焼成反応で分解発生する物質の除外を行ない、2段階目で、粒子表面やその近傍に残った高分子量物や高沸点物の重縮合、炭素化を行うことができる。
焼成を2段回に分けて実施する場合の1段階目の焼成温度の下限は通常400℃以上、
好ましくは450℃以上、より好ましくは500℃以上である。上限は通常3000℃以下、好ましくは1000℃以下、より好ましくは800℃以下である。焼成温度が低すぎると、有機化合物に含まれる低沸点物質や、有機化合物の焼成反応で分解発生する物質の除外の程度が低くなり、2段階目焼成への負荷がかかり望ましくない。2段回に分けて実施する場合の2段階目の焼成温度の下限は通常500℃以上、好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上である。上限は通常3000℃以下、好ましくは2000℃以下、より好ましくは1500℃以下、更に好ましくは1400℃以下である。焼成温度が低すぎると有機物の重縮合高分子量化の程度が小さいため、炭素化の程度が小さい傾向にあり、リチウム電池用負極材として用いた時に、不可逆容量(充電時に負極内に取り込まれたリチウムイオンの一部が放電で戻なくなる量)が大きくなる傾向にある。焼成温度が高すぎると、有機化合物の炭素化が進みすぎる傾向にあり、リチウム電池用負極材として用いた時に、リチウムイオンの入出力速度が小さくなってしまう傾向にある。
焼成時の昇温速度は特に限定されないが、通常2℃/hr以上、好ましくは3℃/hr以上、より好ましくは4℃/hr以上、上限は通常3000℃/hr以下、好ましくは2000℃/hr以下、より好ましくは1000℃/hr以下である。焼成時の昇温速度が小さすぎると、焼成に時間がかかり、加熱コストが大きくなる傾向にある。昇温速度が大きすぎると、重縮合反応が充分に行われず、炭素化される量が小さくなり、比表面積の増加や不可逆容量の増加をきたす傾向にある。焼成時には、必要に応じて攪拌を行なってもよい。
焼成に用いる設備は、例えば、シャトル炉、トンネル炉、リードハンマー炉、ロータリーキルン、ローラーハース炉、プッシャー炉、オートクレーブ等の反応槽、コーカー(コークス製造の熱処理槽)、電気炉やガス炉等、非酸化性雰囲気での焼成が可能であれば特に限定されない。
加熱焼成時の雰囲気は、酸化を防止するため、窒素、アルゴン等の不活性ガスの流通下又はブリーズ、パッキングコークス等の粒状炭素材を間隙に充填した非酸化性雰囲気下で行う。
(3)炭素質で被覆された黒鉛粒子同士の凝集結合を粉砕や解砕により粒子状とする工程
粉砕や解砕に用いる装置に特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはせん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
(4)篩や風力分級により炭素被覆粒子の粒度を調整する工程
篩、分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合は、回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い等を用いることができ、乾式気流式分級の場合は、重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)を用いることができ、また、湿式篩い分け、機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
<非水系二次電池用炭素材>
・BET法による比表面積(SA)
本発明の非水系二次電池用炭素材は、黒鉛粒子を、有機化合物を焼成炭化することよりなる炭素質で被覆した炭素材であり、BET法による比表面積が通常1.4m/g以下である。BET法による比表面積は、好ましくは1.35m/g以下、更に好ましくは1.3m/g以下である。BET比表面積の測定方法は、比表面積測定装置を用いて、窒素ガス吸着流通法によりBET1点法にて測定する。
・ラマンR値
非水系二次電池用炭素材のラマンR値は、1580cm−1付近のピークPの強度Iと、1360cm−1付近のピークPの強度Iとを測定し、その強度比R(R=I/I)を算出して定義する。つまり、ラマン値は下記式1で表される。
式1:
ラマンR値=ラマンスペクトル分析における1360cm−1付近のピークPの強度I/1580cm−1付近のピークPの強度I
ラマンR値は0.2以上、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.35以上である。また0.8以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下である。
ラマンR値が小さすぎる場合は、高速充放特性が悪くなる傾向がある。また、炭素材のラマンR値が大きすぎる場合は、黒鉛質粒子を被覆している非晶質炭素の量が多いことを表し、非晶質炭素量の持つ不可逆容量の大きさの影響が大きくなり、その結果電池容量が小さくなってしまう傾向がある。
ラマンスペクトルはラマン分光器で測定できる。具体的には、測定対象粒子を測定セル内へ自然落下させることで試料充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら測定を行なう。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・002面の面間隔(d002)
非水系二次電池用炭素材のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)は、通
常0.337nm以下であり。X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が前記範囲内であることは、非水系二次電池用炭素材の粒子の表面被覆炭素質層を除く大部分の結晶性が高いということであり、非晶質炭素材に見られるような不可逆容量が大きいことによる低容量化を生じない高容量電極となる炭素材であることを示す。
・タップ密度
非水系二次電池用炭素材のタップ密度は、通常0.7g/cm以上であり、1.4g/cm以下が好ましい。
タップ密度が小さすぎると、特に高密度に圧延された電極内で充分な連続空隙が確保されず、空隙に保持された電解液内のLiイオンの移動性が落ちることで、大電流充放電特性が低下する傾向がある。タップ密度が高すぎると、粒子内炭素密度が上昇し、圧延性に欠け、高密度の負極シートを形成することが難しくなる傾向がある。
本発明において、タップ密度は、粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cmの円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して、測定対象を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から求めた密度をタップ密度として定義する。
・平均粒径(d50)
非水系二次電池用炭素材の平均粒径(d50)は通常40μm以下、好ましくは、35μm以下、より好ましくは30μm以下であり、通常、5μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは15μm以上である。平均粒径が大きすぎるとこの粒径範囲を超えて極板化した際に、筋引きなどの工程上の不都合が出ることが多く、また、この粒径範囲を下回ると、表面積が大きくなりすぎ電解液との反応性を抑制することが難しくなる傾向にある。
なお、粒径の測定方法は、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液10mLに、炭素材0.01gを懸濁させ、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置に導入し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、測定装置における体積基準のメジアン径として測定したものを、本発明におけるd50と定義する。
・平均粒径(d90)
非水系二次電池用炭素材の平均粒径(d90)は通常100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、最も好ましくは25μm以下、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上である。d90が小さすぎると電極強度の低下や初期充放電効率の低下を招く傾向にあり、大きすぎると筋引きなどの工程不都合の発生、電池の高電流密度充放電特性の低下および低温入出力特性の低下を招く傾向にある。
・平均粒径(d10)
非水系二次電池用炭素材の平均粒径(d10)は、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは6μm以上、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下である。d10が小さすぎるとスラリー粘度上昇などの工程不都合の発生、電極強度の低下や初期充放電効率の低下を招く傾向にあり、大きすぎると電池の高電流密度充放電特性の低下及び低温入出力特性の低下を招く傾向にある。
ここで、d90は前記炭素材についてレーザー回折・散乱式粒度分布測定により体積基準で測定された小粒子側からの90%積算部の粒径をμm単位で表したものであり、d10は前記炭素材について同様に測定された小粒子側からの10%積算部の粒径をμm単位
で表したものである。
・平均円形度
非水系二次電池用炭素材の粒径1.5μm〜40μmの範囲の粒子について測定した下記式で与えられる円形度(=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長)が通常0.85以上、好ましくは、0.87以上、より好ましくは0.9以上である。平均円形度がこの範囲を下回ると、大電流充放電特性の低下が生じる傾向がある。平均円形度は、液中に分散させた数千個の粒子を、CCDカメラを用いて1個ずつ撮影し、その平均的な形状パラメータを算出することが可能なフロー式粒子解析計において、1.5〜40μmの範囲の粒子を対象として、後述する実施例の方法により測定する。平均円形度は、粒子面積相当円の周囲長を分子とし、撮影された粒子投影像の周囲長を分母と
した比率で、粒子像が真円に近いほど1に近づき、粒子像が細長い或いはでこぼこしているほど小さい値になる。
・3μm以下の微粉量(個数基準>
非水系二次電池用炭素材中の3μm以下の微粉量が個数基準で、測定した下記式で与えられる円形度(=粒子投影面積と同じ面積の円の周長/粒子投影像の周長)が通常20%以下、好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下である。3μm以下の微粉量がこの範囲を上回ると、大電流充放電特性の低下が生じる傾向にある。微粉量は、液中に分散させた数千個の粒子を、CCDカメラを用いて1個ずつ撮影し、その平均的な形状パラメータを算出することが可能なフロー式粒子解析計において、検出された全粒子数に対する3μm以下の粒子数を百分率(個数%)で表した。
・結晶子サイズ(Lc)
非水系二次電池用炭素材の学振法によるX線回折で求めた有機化合物の結晶子サイズ(Lc)の下限が通常36nm以上、好ましくは37nm以上、より好ましくは38nm以上であり、上限は通常200nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。
・非水系二次電池用炭素材の真密度
非水系二次電池用炭素材のタップ密度は、通常0.7g/cm以上、1.5g/cm以上が好ましい。また、通常2.7g/cm以下、2.5g/cm以下が好ましい。
・被覆率
非水系二次電池用炭素材は、非晶質物又は黒鉛質物で少なくとも一部が被覆されているものであるが、この中でも非晶質炭素質物で被覆されていることがリチウムイオンの受入性の点から好ましく、この被覆率は、通常0.5%以上30%以下、好ましくは1%以上25%以下、より好ましくは2%以上20%以下である。この含有率が大きすぎると負極材の非晶質炭素部分が多くなり、電池を組んだ際の可逆容量が小さくなる傾向がある。含有率が小さすぎると、核となる黒鉛粒子に対して非晶質炭素部位が均一にコートされないとともに強固な造粒がなされず、焼成後に粉砕した際、粒径が小さくなりすぎる傾向がある。
なお、最終的に得られる電極用炭素材料の有機化合物由来の炭化物の被覆率は、下記式で算出することができる。
被覆率(質量%)=100−(K×D)/((K+T)×N)×100
この式において、Kは有機化合物との混合に供した黒鉛粒子の質量(Kg)、Tは黒鉛粒子との混合に供した有機化合物の質量(kg)、DはKとTの混合物のうち実際に焼成に供した混合物量、Nは焼成後の炭素材の質量をしめす。
<非水系二次電池用負極>
本発明に係る非水系二次電池用炭素材を用いて負極を作製するには、負極材料にバインダーを混合したものを水性若しくは、有機系溶剤でスラリーとし、必要によりこれに増粘材を加えて集電体に塗布し、乾燥すればよい。バインダーとしては、非水電解液に対して安定で、かつ非水溶性のものを用いるのが好ましい。例えばスチレン、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド等の合成樹脂;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体やその水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン、スチレン共重合体、スチレン・イソプレン、スチレンブロック共重合体やその水素化物等の熱可塑性エラストマー;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニデンフルオライド、ポリペンタフルオロプロピレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素化高分子などを用いることができる。
水性スラリーには必要により増粘材を添加することもできる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース類やポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。
有機系媒体としては、例えばN−メチルピロリドンや、ジメチルホルムアミドを挙げることができる。また、
本発明の、非水系二次電池用炭素材を用いて負極を作製するには、特に、バインダーとして前記フッ素化高分子を用い、媒体として前記有機媒体を用いて負極を作成する場合に大きな効果を発揮する。ゴム状高分子/増粘剤/水媒体の場合、前記増粘剤が炭素材の表面を被覆することで、負極の比表面積が低くなる傾向を示すが、フッ素系高分子/有機媒体の組み合わせの場合は、負極の比表面積が低くなりにくい傾向にある。しかしながら、本発明の低比表面積の炭素材を用いた場合には、フッ素系高分子/有機媒体の組み合わせの場合においても炭素材自身の比表面積が低いため、作成される負極の比表面積も低くすることができる。このことで、負極とカーボネート系電解液との反応が低く抑えられ、リチウムの損失量や発生ガス量を抑制でき、高容量、低膨れの電池とすることができる。
バインダーは負極材料100重量部に対して通常は0.1重量部以上、好ましくは0.2重量部以上用いる。結着樹脂の割合が小さすぎると、負極材料相互間や負極材料と集電体との結着力が弱く、負極から負極材料が剥離して電池容量が減少したリサイクル特性が悪化したりする。逆にバインダーの割合が大きすぎると負極の容量が減少し、かつリチウムイオンの負極材料への出入が妨げられるなどの問題が生ずる。従ってバインダーは負極材料100重量部に対して多くても10重量部、通常は7重量部以下となるように用いるのが好ましい。
本発明の負極は、上述の本発明の負極材料とバインダーとを分散媒に分散させてスラリーとし、これを集電体に塗布することにより形成される。分散媒としては、N−メチルピロリドン、アルコールなどの有機溶媒や、水を用いることができる。このスラリーには更に、所望により導電剤を加えてもよい。導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック、平均粒径1μm以下のCu、Ni又はこれらの合金からなる微粉末などが挙げられる。導電剤の添加量は、本発明の負極材料に対して通常10質量%以下程度である。
スラリーを塗布する集電体としては、従来公知のものを用いることができる。具体的には、圧延銅箔、電解銅箔、ステンレス箔等の金属薄膜が挙げられる。集電体の厚さは、通
常4μm以上、好ましくは6μm以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。
スラリーを集電体上に塗布した後、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは195℃以下の温度で、乾燥空気又は不活性雰囲気下で乾燥し、活物性層を形成する。
スラリーを塗布、乾燥して得られる活物質層の厚さは、通常5μm以上、好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、また、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、更に好ましくは75μm以下である。活物質層が薄すぎると、活物質の粒径との兼ね合いから負極としての実用性に欠け、厚すぎると、高密度の電流値に対する十分なLiの吸蔵・放出の機能が得られにくい。
活物質層における非水系二次電池用炭素材の密度は、用途により異なるが、容量を重視する用途では、好ましくは1.0g/cm以上、とりわけ1.2g/cm以上、更に1.25g/cm以上、特に1.3g/cm以上が好ましい。密度が低すぎると、単位体積あたりの電池の容量が必ずしも充分ではない。また、密度が高すぎるとレート特性が低下するので、1.9g/cm以下が好ましい。
以上説明した本発明の非水系二次電池用炭素材を用いて非水系二次電池用負極を作製する場合、その手法や他の材料の選択については、特に制限されない。また、この負極を用いてリチウムイオン二次電池を作製する場合も、リチウムイオン二次電池を構成する正極、電解液等の電池構成上必要な部材の選択については特に制限されない。以下、本発明の負極材料を用いたリチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池の詳細を例示するが、使用し得る材料や作製の方法等は以下の具体例に限定されるものではない。
<非水系二次電池>
本発明の非水系二次電池、特にリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える。負極としては、上述した本発明の負極を用いる。
正極は、正極活物質及びバインダを含有する正極活物質層を、集電体上に形成したものである。
正極活物質としては、リチウムイオンなどのアルカリ金属カチオンを充放電時に吸蔵、放出できる金属カルコゲン化合物などが挙げられる。金属カルコゲン化合物としては、バナジウムの酸化物、モリブデンの酸化物、マンガンの酸化物、クロムの酸化物、チタンの酸化物、タングステンの酸化物などの遷移金属酸化物、バナジウムの硫化物、モリブデンの硫化物、チタンの硫化物、CuSなどの遷移金属硫化物、NiPS、FePS等の遷移金属のリン−硫黄化合物、VSe、NbSeなどの遷移金属のセレン化合物、Fe0.25V0.75S、Na0.1CrSなどの遷移金属の複合酸化物、LiCoS、LiNiSなどの遷移金属の複合硫化物等が挙げられる。
これらの中でも、V、V13、VO、Cr、MnO、TiO、MoV、LiCoO、LiNiO、LiMn、TiS、V、Cr0.25V0.75S、Cr0.5V0.5Sなどが好ましく、特に好ましいのはLiCoO、LiNiO、LiMnや、これらの遷移金属の一部を他の金属で置換したリチウム遷移金属複合酸化物である。これらの正極活物質は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
正極活物質を結着するバインダーとしては、公知のものを任意に選択して用いることができる。例としては、シリケート、水ガラス等の無機化合物や、テフロン(登録商標)、
ポリフッ化ビニリデン等の不飽和結合を有さない樹脂などが挙げられる。これらの中でも好ましいのは、不飽和結合を有さない樹脂である。正極活物質を結着する樹脂として不飽和結合を有する樹脂を用いると酸化反応時に分解される恐れがある。これらの樹脂の重量平均分子量は通常1万以上、好ましくは10万以上、また、通常300万以下、好ましくは100万以下の範囲である。
正極活物質層中には、電極の導電性を向上させるために、導電材を含有させてもよい。導電剤としては、活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限はないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種の金属の繊維、粉末、箔などが挙げられる。
正極板は、前記したような負極の製造と同様の手法で、正極活物質やバインダを溶剤でスラリー化し、集電体上に塗布、乾燥することにより形成する。正極の集電体としては、アルミニウム、ニッケル、SUSなどが用いられるが、何ら限定されない。
電解質としては、非水系溶媒にリチウム塩を溶解させた非水系電解液や、この非水系電解液を有機高分子化合物等によりゲル状、ゴム状、固体シート状にしたものなどが用いられる。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は特に制限されず、従来から非水系電解液の溶媒として提案されている公知の非水系溶媒の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
これらの非水系溶媒は、何れか一種を単独で用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。混合溶媒の場合は、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含む混合溶媒の組合せが好ましく、環状カーボネートが、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの混合溶媒であることが、低温でも高いイオン電導度を発現でき、低温充電不可特性が向上するという点で特に好ましい。中でもプロピレンカーボネートが非水系溶媒全体に対し、2質量%以上80質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上70質量%以下の範囲がより好ましく、10質量%以上60質量%以下の範囲がさらに好ましい。プロピレンカーボネートの割合が上記より低いと低温でのイオン電導度が低下し、プロピレンカーボネートの割合が上記より高いと、黒鉛系電極を用いた場合にはLiイオンに溶媒和したPCが黒鉛相間へ共挿入することにより黒鉛系負極活物質の層間剥離劣化がおこり、十分な容量が得られなくなる問題がある。
非水系電解液に使用されるリチウム塩も特に制限されず、この用途に用い得ることが知られている公知のリチウム塩の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、LiCl、LiBrなどのハロゲン化物、LiClO、LiBrO、LiClOなどの過ハロゲン酸塩、LiPF、LiBF、LiAsFなどの無機フッ化物塩などの無機リチウム塩、LiCFSO、LiCSOなどのパーフルオロアルカンスルホン酸塩、Liトリフルオロスルフォンイミド((CFSONLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸イミド塩などの含フッ素有機リチウム塩などが挙げられ、この中でもLiClO、LiPF、LiBF、が好ましい。
リチウム塩は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。非水系電解液中におけるリチウム塩の濃度は、通常0.5M以上、2.0M以下の範囲である。
また、上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状、ゴム状、或いは固体
シート状にして使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
上述の非水系電解液は、更に被膜形成剤を含んでいても良い。被膜形成剤の具体例としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチルカーボネート、メチルフェニルカーボネートなどのカーボネート化合物、エチレンサルファイド、プロピレンサルファイドなどのアルケンサルファイド;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなどのスルトン化合物;マレイン酸無水物、コハク酸無水物などの酸無水物などが挙げられる。更に、ジフェニルエーテル、シクロヘキシルベンゼン等の過充電防止剤が添加されていても良い。上記添加剤を用いる場合、その含有量は通常10質量%以下、中でも8質量%以下、更には5質量%以下、特に2質量%以下の範囲が好ましい。上記添加剤の含有量が多過ぎると、初期不可逆容量の増加や低温特性、レート特性の低下等、他の電池特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、電解質として、リチウムイオン等のアルカリ金属カチオンの導電体である高分子固体電解質を用いることもできる。高分子固体電解質としては、前述のポリエーテル系高分子化合物にLiの塩を溶解させたものや、ポリエーテルの末端水酸基がアルコキシドに置換されているポリマーなどが挙げられる。
正極と負極との間には通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
本発明のリチウムイオン二次電池の形態は特に制限されない。例としては、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。また、これらの形態の電池を任意の外装ケースに収めることにより、コイン型、円筒型、角型等の任意の形状にして用いることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池を組み立てる手順も特に制限されず、電池の構造に応じて適切な手順で組み立てればよいが、例を挙げると、外装ケース上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、更に負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池にすることができる。
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(測定方法)
(1)BET法比表面積
大倉理研社製 AMS−8000を用いて測定した。250℃で予備乾燥し、更に30分間窒素ガスを流したのち、窒素ガス吸着によるBET1点法により測定した。
(2)粒径
界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液10mLに、炭素材約0.01gを懸濁させ、市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置に導入し、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、測定装置における体積基準のメジアン径として測定したものを、本発明におけるd50と定義する。また、累積10%部の粒径をd10、累積90%部の粒径をd90と定義する。
(7)比重(密度)、軟化点
JIS K2425の規定に準拠して測定した。
(8)コンラドソン残炭率
JIS K2270)石油製品残留炭素分試験方法「コンラドソン法」により実施した
(9)X線パラメータ(XRD)
炭素粉末に約15%のX線標準高純度シリコン粉末を加えて混合したものを
材料とし、グラファイトモノクロメーターで単色化したCuKα線を線源とし、反射式ディフラクトメーター法で広角X線回折曲線を測定し、学振法を用いて面間隔(d002)及び結晶子の大きさ(Lc)を求めた。
(10)タップ密度
タップ密度は、粉体密度測定器である(株)セイシン企業社製「タップデンサーKYT−4000」を用い、直径1.6cm、体積容量20cmの円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して、炭素材を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から求めた密度をタップ密度として定義する。
(12)ラマンスペクトル(Raman)スペクトル
ラマンスペクトルは、ラマン分光器:「日本分光社製ラマン分光器」で測定できる。具体的には、測定対象粒子を測定セル内へ自然落下させることで試料充填し、測定セル内にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、測定セルをこのレーザー光と垂直な面内で回転させながら測定を行なう。
アルゴンイオンレーザー光の波長 :514.5nm
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm−1
測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
(13)平均円形度
フロー式粒子像分析装置(東亜医療電子社製FPIA−2000)を使用し、円相当径による粒径分布の測定および円形度の算出を行った。分散媒としてイオン交換水を使用し、界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)モノラウレートを使用した。円相当径とは、撮影した粒子像と同じ投影面積を持つ円(相当円)の直径であり、円形度とは、相当円の周囲長を分子とし、撮影された粒子投影像の周囲長を分母とした比率である。測定した1.5〜40μmの範囲の粒子の円形度を平均し、平均円形度とした。
(14)真密度
ピクノメーターを用い、媒体として界面活性剤の0.1%水溶液を用いて測定した。
(15)炭素材料の被覆率。
被覆率(質量%)=100−(K×D)/((K+T)×N)×100
この式において、Kは有機化合物との混合に供した黒鉛粒子の質量(Kg)、Tは黒鉛粒子との混合に供した有機化合物の質量(kg)、DはKとTの混合物のうち実際に焼成に供した混合物量、Nは焼成後の炭素材の質量をしめす。
実施例1
天然に産出する黒鉛で、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36Åで
Lcが1000Å以上、タップ密度が0.46g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.13、平均粒径(d50)が28.7μm、真密度2.27g/cmにある鱗片状黒鉛粒子を、株)奈良機械製作所製社製ハイブリダイゼーションシステムを用いて、ローターの周速度60m/秒、5分の条件で20kg/hrの処理速度で鱗片状黒鉛粒子を連続的に処理することで、黒鉛粒子表面にダメージを与えながら球形化処理を行い、その後更に分級処理により微粉の除去を行った。得られた球状の黒鉛粒子は、X線広角回折法による002面の面間隔(d002)が3.36ÅでLcが1
000Å以上、タップ密度が1.06g/cm、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトルにおける1580cm−1付近のピーク強度に対する1360cm−1付近のピーク強度比であるラマンR値が0.20、平均粒径(d50)が21.4μm、BET法比表面積5.4m2/g、真密度2.27g/cm、平均円形度が、0.91であった。
次にこの黒鉛粒子100重部と有機化合物としての石炭由来ピッチ1を28質量部、混合機に投入し、150℃で加熱混合行ない、黒鉛粒子と有機化合物の混合物を得た。使用した石炭由来ピッチ1を、不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)は0.3443nmであった。それ以外の石炭由来ピッチ1の性状を表1に示す。得られた混合物を、非酸化性雰囲気で2時間かけて1300℃まで昇温、その温度で1時間保持した後、室温まで冷却した。次に粉砕機にて1400rpmで粉砕し、目開き63μm篩を通した。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は1.04m/gと低く、本発明で求めるものとなっており、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は99.3%と高い値を示した。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
実施例2
粉砕回転数を2000rpnとした以外は実施例1と同様に行った。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は1.18m/gと低く、本発明で求めるものとなっており、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は99.9%と高い値を示した。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
実施例3
黒鉛粒子と有機化合物の混合温度を100℃とした以外は実施例1と同様に行った。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は1.12m/gと低く、本発明で求めるものとなっており、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は99.7%と高い値を示した。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
実施例4
有機化合物を石炭由来ピッチ2とし、実施例1で用いた黒鉛粒子100重部との混合量を12質量部とした以外は実施例1と同様に行った。なお、使用した石炭由来ピッチ2を、不活性雰囲気で1300℃焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)は0.3442nmであった。それ以外の石炭由来ピッチ2の性状をは表1に示す。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は1.25m/gと低く、本発明で求めるものとなっており、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は99.7%と高い値を示した。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
実施例5
黒鉛粒子100重部に対する有機化合物の混合量を15質量部とし、粉砕回転数を2000rpmした以外は実施例4と同様に行った。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は0.71m/gと低く、本発明で求めるものとなっており、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は96.4%であった。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
実施例6
焼成温度を1000℃、1000℃までの昇温時間を240時間とし、粉砕回転数を3000rpmした以外は実施例5と同様に行った。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は0.98m/gと低く、本発明で求めるものとなっており、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は98.2%であった。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
実施例7
黒鉛粒子100重部に対する有機化合物の混合量を12質量部とし、粉砕回転数を1400rpmした以外は実施例6と同様に行った。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は1.02m/gと低く、本発明で求めるものとなっており、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は99.7%であった。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
比較例1
有機化合物として石炭由来ピッチ3を用い、黒鉛粒子100質量部にたいする有機化合物の混合量を24質量部混合する以外は実施例1と同様に行った。なお、使用した石炭由来ピッチ3を、不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)は0.3446nmであった。それ以外の石炭由来ピッチ3の性状を表1に示す。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は1.45m/gと大きく、本発明で求めるものとなっておらず、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は97.2%であった。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
比較例2
有機化合物として石炭由来タールを用い、黒鉛粒子100質量部にたいする有機化合物の混合量を31質量部混合する以外は実施例1と同様に行った。なお、使用した石炭由来タールを、不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)は0.3448nmであった。それ以外の石炭由来タールの性状を表1に示す。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は1.58m/gと大きく、本発明で求めるものとなっておらず、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は96.5%であった。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
比較例3
有機化合物として石油由来タールを用い、黒鉛粒子100質量部に対する有機化合物の混合量を50質量部混合する以外は実施例1と同様に行った。なお、使用した石油由来タールを、不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法で求めた結晶子の002面の面間隔(d002)は0.3454nmであった。それ以外の石油由来タールの性状を表1に示す。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は1.80m/gと大きく、本発明で求めるものとなっておらず、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は99.8%であった。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
比較例4
粉砕回転数を1000rpmと低回転で炭素材に与える衝撃を弱くした以外は、比較例3と同様に行った。得られた非水系二次電池用炭素材の比表面積は1.41m/gまで小さくなったが、本発明で求める範囲のものまでは下がっておらず、篩収率(全粒子に対する篩を通過した粒子の質量比%)は93.0%と悪化した。そのほかの非水系二次電池用炭素材の性状を表1に示す。
Figure 2014191924
本発明の方法により製造された非水系二次電池用炭素材は、低比表面積な炭素材となり、これを非水系二次電池用負極材として用いることで、電解液と負極材表面との反応を少なくすることが可能となり、反応により損出するリチウム量を減少させることができ、高容量の電池とすることができる。また、反応により発生する一酸化炭素や二酸化炭素等のガス量を減少することができ、ガスによる電池の膨れを、小さくすることができる。その結果、高入出力特性、高容量、高サイクル特性で、電池膨れの小さい非水系二次電池を提供することが可能となる。

Claims (10)

  1. 黒鉛粒子に有機化合物を被覆し、焼成することで得られる非水系二次電池用炭素材の製造方法であって、該有機化合物が次に示す特性を有することを特徴とする非水系二次電池用炭素材の製造方法。
    (有機化合物)
    有機化合物を不活性雰囲気で1300℃で焼成粉砕して得られる炭素質粉末の、学振法によるX線広角回折法の結晶子002面の面間隔(d002)が0.3445nm以下である
  2. 有機化合物を1300℃焼成炭化して得られた炭素粉末の学振法によるX線回折で求めた有機化合物の結晶子サイズ(Lc)が39nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用炭素材の製造方法。
  3. 有機化合物中のキノリン不要分(QI)が、0.0〜10.0質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系二次電池用炭素材の製造方法。
  4. 有機化合物中のトルエン可溶アセトン不溶分が8.0質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用炭素材の製造方法。
  5. 黒鉛粒子のタップ密度が0.7g/cm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用炭素材の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法により得られる非水系二次電池用炭素材。
  7. 非水系二次電池用炭素材の比表面積が1.4m/g以下であることを特徴とする請求項6に記載の非水系二次電池用炭素材。
  8. 非水系二次電池用炭素材のX線広角回折法による002面の面間隔(d002)はが0.337nm以下、結晶子サイズ(Lc)が90nm以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の非水系二次電池用炭素材。
  9. 集電体と、該集電体上に形成された活物質層とを備えると共に、該活物質層が、請求項6〜8のいずれか1項に記載の非水系二次電池用炭素材を含有することを特徴とする非水系二次電池用負極。
  10. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が、請求項9に記載の非水系二次電池用負極であることを特徴とする非水系二次電池。
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