JP2002121570A - バルクメソフェーズカーボン及び黒鉛粉末の製造方法 - Google Patents

バルクメソフェーズカーボン及び黒鉛粉末の製造方法

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JP2002121570A
JP2002121570A JP2000318025A JP2000318025A JP2002121570A JP 2002121570 A JP2002121570 A JP 2002121570A JP 2000318025 A JP2000318025 A JP 2000318025A JP 2000318025 A JP2000318025 A JP 2000318025A JP 2002121570 A JP2002121570 A JP 2002121570A
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tar
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graphite powder
heat treatment
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Ken Okamoto
研 岡本
Hideki Matsunaga
秀樹 松永
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Working-Up Tar And Pitch (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 放電容量は350 mAh/g を越え、かつ充放電効
率が95%以上と高く、大電流放電や低温放電でも高い充
放電効率を維持できるリチウムイオン二次電池の負極材
料用黒鉛粉末を安定して確実に製造する。 【解決手段】 タールおよび/またはピッチを常圧以下
の圧力下 150〜600 ℃で熱処理し、得られた揮発性留分
を、所望によりタールおよび/またはピッチと混合して
から、 100〜350 ℃の温度で酸と反応させ、この反応生
成物を所望によりタールおよび/またはピッチとの混合
してから、 400〜600 ℃で熱処理して、異方性ドメイン
径が1300Å以上のバルクメソフェーズカーボンを得る。
このバルクメソフェーズから、粉砕、炭化、黒鉛化の各
工程を経て黒鉛粉末を製造する。粉砕工程は黒鉛化工程
より前に高速粉砕と剪断粉砕の少なくとも一方とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放電容量が350 mA
h/g 前後またはそれ以上と非常に高く、かつ充放電効率
も95%以上、好ましくは97〜98%と極めて高く、自己放
電による内部ロスの少ないリチウムイオン二次電池を形
成することができる、リチウム二次電池の負極材料とし
て好適な黒鉛粉末の製造方法と、この製造方法の原料と
なるバルクメソフェーズカーボンの製造方法とに関す
る。
【0002】
【従来の技術】リチウム二次電池は、リチウムイオンを
可逆的に吸蔵・放出する炭素材料を負極に用いた非水電
解質二次電池であり、自己放電が少なく、起電力とエネ
ルギー密度が高いという特長を有することから、携帯機
器用の電源を中心に急速に利用が拡大しており、将来的
には電気自動車や電力貯蔵用といった大規模用途への利
用も期待されている。
【0003】金属リチウムからなる負極の理論容量が約
3800 mAh/gと非常に高いのに比べ、炭素材料からなる負
極では、黒鉛の層間にリチウムイオンが密に格納された
層間化合物であるLiC6組成の理論容量である372 mAh/g
が限界容量になると考えられており、負極容量は金属リ
チウムよりずっと低くなる。しかし、金属リチウム負極
では避けられない充電時のデンドライト析出 (これは短
絡を生じ、サイクル寿命の悪化や異常発熱を引き起こ
す) が起こらないことから、炭素材料を負極に用いたリ
チウムイオン二次電池が実用化されたのである。
【0004】リチウムイオン二次電池の負極に用いる炭
素材料には、結晶質の黒鉛、黒鉛の前駆体である易黒鉛
化性炭素 (ソフトカーボン) 、高温熱処理しても黒鉛に
ならない難黒鉛化性炭素 (ハードカーボン) がある。ピ
ッチや樹脂等の有機物を不活性雰囲気中1000℃程度の温
度で揮発分が実質的になくなるまで熱処理をするとソフ
トカーボンやハードカーボンが得られる。ハードカーボ
ンは結晶性が低く、非晶質な構造を持つ炭素材料であ
る。ソフトカーボンを2500℃程度以上の高温で熱処理す
ると、黒鉛が得られる。
【0005】これらの炭素材料うち、結晶質である黒鉛
が、Liイオンの吸蔵・放出に伴う体積変化を受けた場合
の構造安定性が高く、サイクル寿命がよいリチウムイオ
ン二次電池となるので、負極材料として最も広く使用さ
れている。いずれの炭素材料も、粉末化した材料を通常
は少量の結着剤 (一般に有機樹脂) を用いて成形し、集
電体となる電極基板に圧着させて電極 (負極) を製造す
るのが普通である。
【0006】黒鉛を負極に用いた場合、上記の372 mAh/
g が限界容量となるが、リチウムイオンの侵入を阻害す
る表面活性サイトや、リチウムイオン格納に対する死領
域等が存在することから、実際の放電容量はこれよりか
なり低くなるので、この限界容量に近づくように放電容
量を高めることが目標となる。
【0007】黒鉛からなるリチウムイオン二次電池の負
極の別の問題点は、充放電効率である。黒鉛は表面の反
応性が高いため、充電時に電解液の分解に伴って不動態
皮膜が付着し易い。この時に使用される電気量がロスと
なるため、充電容量と放電容量の差が大きくなり、充放
電効率 (放電容量/充電容量の比) が低下する。この充
放電効率の低下は、特に大電流放電や低温放電において
目立つので、このような放電条件での充放電効率の増大
も重要である。
【0008】リチウムイオン二次電池の炭素材負極の容
量増大については、これまでにも多くの提案がある。例
えば、特開平4−115458号公報に提案されているよう
に、コールタールやピッチの炭化過程で生じるメソフェ
ーズ小球体を焼成して黒鉛の球形粉末を製造し、これを
用いて負極を作製すると、球形粉末の充填密度の増大を
利用して放電容量が増大する。
【0009】特開平7−282812号公報には、黒鉛化した
炭素繊維において、黒鉛層の積層配列の規制性を高める
と高容量化することが記載されている。特開平7−3263
55号公報には、コールタールの熱処理で得たメソフェー
ズ小球体を焼成して負極用炭素材料を製造する際に、該
コールタールのフリーカーボン量 (タールのキノリン不
溶分の質量%) に応じて炭素材料の結晶構造や平均粒径
を制御することにより、所望の結晶構造や平均粒径を有
する炭素材料を工業的に安定して製造することが記載さ
れている。使用するコールタールのフリーカーボン量は
0.5 質量%以上である。
【0010】特開平10−284063号公報には、 0.5〜3.0
質量%のフリーカーボンを含有するコールタールを熱処
理して、メソフェーズ/フリーカーボンの重量比が2以
上のメソフェーズ小球体とし、これを焼成して黒鉛化す
ることにより、放電容量の高い黒鉛系炭素材料が得られ
ることが記載されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した従来
の容量改善手段では、黒鉛系炭素材料の放電容量はたか
だか 330〜340 mAh/g であった。即ち、理論容量の372
mAh/g に近づけるために、350 mAh/g を越えるような高
さの放電容量を示す炭素材料を得ることは、これまでは
困難であった。
【0012】本発明は、理論容量にかなり近づいた、35
0 mAh/g を越える高さの放電容量を示し、かつ充放電効
率が95%以上と高く、大電流放電や低温放電においても
高い充放電効率を維持することができる、リチウムイオ
ン二次電池の負極材料に適した黒鉛粉末を安定して確実
に製造することができる方法を提供することを課題とす
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは先に、メソ
フェーズ小球体の生成からさらにタールの熱処理を進め
ると得られる、やはり光学的に異方性のバルクメソフェ
ーズカーボンを、高速粉砕した後、炭化および黒鉛化す
ることにより、放電容量と充放電効率が共に高い黒鉛粉
末を比較的安価に大量に製造することが可能となること
を提案した (国際公開公報WO98/29335号) 。
【0014】バルクメソフェーズカーボンは、熱処理後
に固化した後も、炭素6員環が縮合した六角形網目構造
の平板状高分子が積層した、光学的に異方性の配向状態
(液晶と同じ配向状態) を保持している。バルクメソフ
ェーズカーボンでは、同一の配向方向を持つ層状で光学
的に異方性の積層領域 (これを本発明では異方性ドメイ
ンと称する) が多数集合した構造を持つ。即ち、バルク
メソフェーズカーボンは無数の異方性ドメインの集合体
である。一方、全体が同じ方向に配向しているメソフェ
ーズ小球体は、1つの異方性ドメインからなる。
【0015】上記国際公開公報に提案したバルクメソフ
ェーズカーボンを炭化、黒鉛化する方法により、放電容
量が 320〜358 mAh/g と高く、充放電効率も95%付近と
十分に良好な黒鉛粉末を比較的安価に大量に製造するこ
とができる。しかし、実施例の多くでは放電容量が350
mAh/g を下回り、350 mAh/g を越える放電容量を持つ黒
鉛粉末を安定して確実に製造する手段は示されていな
い。
【0016】その後の研究により、バルクメソフェーズ
カーボンの原料であるタールやピッチのフリーカーボン
(キノリン不溶分) の含有量が、メソフェーズ化から炭
化および黒鉛化を経て得られる黒鉛粉末の充放電特性に
大きく影響することを見出した。
【0017】より詳しく説明すると、フリーカーボン含
有量が0.3 %以下のタールおよび/またはピッチを熱処
理すると、高度に異方性が発達したバルクメソフェーズ
カーボンを得ることができる。この高度の異方性は、小
角X線散乱法により求めたバルクメソフェーズカーボン
の異方性ドメインの粒径が非常に大きいことによって判
定することができる。
【0018】この高度に異方性の、特に異方性ドメイン
径が1300Å以上と大きいバルクメソフェーズカーボン
を、炭化および黒鉛化し、炭化の前か後に高速粉砕およ
び/または剪断粉砕を行うと、結晶度が高く(これはd
002 結晶面間隔が小さく、結晶子径が大きいことで示さ
れる)、かつLiイオン侵入サイトが多い (これは、後述
する閉塞構造の間隙面密度が高いことで示される) 黒鉛
粉末が得られる。このような黒鉛粉末は、理論容量にか
なり近い350 mAh/g 以上の放電容量と95%以上の高い充
放電効率を示す。また、比表面積が小さいので、電解液
の侵入による劣化を受けにくく、サイクル寿命も良好で
ある。
【0019】しかし、原料タールのフリーカーボン量を
0.3 %以下に制御するには、濾過や遠心分離等の手法を
利用したフリーカーボンの除去工程が必要となることが
多い。特に、コールタールが原料である場合には、通常
フリーカーボンが数%含まれているため、除去操作が必
要である。
【0020】濾過や遠心分離によるフリーカーボンの除
去は、予め粘度の低減、濾過速度の向上、フリーカーボ
ンの凝集効果を目的として加熱処理を行い、場合によっ
てはタールに溶剤を添加した後で行うのが普通である。
溶剤添加を行った場合には、フリーカーボンを除去した
後、添加溶剤を除去するため蒸留等が必要となる。
【0021】また、フリーカーボンの除去操作により、
元の原料タールに含まれていた有機化合物の比較的高分
子量の成分の一部が、一緒に除去されてしまう。この除
去された高分子量の成分は、減圧蒸留釜で400 ℃以上60
0 ℃以下に加熱保持してバルクメソフェーズカーボンを
得る段階において、熱重合が容易で、揮発成分として反
応系外に失われにくく、バルクメソフェーズカーボンを
形成しやすい成分である。
【0022】従って、一連のフリーカーボン除去操作に
ついては、タール精製のためにコストがかかる、およ
び除去したフリーカーボン相当分以上にバルクメソフ
ェーズカーボンの反応収率が低下することに起因して黒
鉛化収率が低下する、といった問題点がある。従って、
上述したようなフリーカーボンの除去操作を利用せず
に、フリーカーボンの少ない原料からバルクメソフェー
ズカーボンを製造することができれば、有利である。
【0023】本発明者らは、この観点から、タールの軽
質分に着目した。即ち、バルクメソフェーズカーボンを
得るには、タールを減圧蒸留釜で 400〜600 ℃に加熱す
る。この熱処理中に、原料タールまたはピッチを構成す
る有機分子は熱重合により多環芳香族分子へと成長して
ゆくが、同時に多くの軽質分が反応系外へ揮発性の留分
として失われる。揮発性の留分は、蒸留される形で反応
系外へ出てくるため、減圧蒸留釜に仕込んだ原料タール
またはピッチにフリーカーボンが含まれていても、揮発
性の留分にはフリーカーボンは含まれていない。
【0024】タールの熱処理時に副生する、フリーカー
ボンを含まない揮発性の留分を、バルクメソフェーズカ
ーボンの原料の一部または全部として使用すると、フリ
ーカーボンの除去処理を行わずに、フリーカーボンを含
まないか、含有量が低減した原料からバルクメソフェー
ズカーボンを製造することができるため、これからリチ
ウムイオン二次電池の負極材料に適した特性を持つ黒鉛
粉末を製造することができる。
【0025】即ち、タールの熱処理時に副生する揮発性
の留分を活用することで、以下のように、高性能負極材
の製造で必要となるフリーカーボン除去操作に伴う問題
点の解決を図ることが可能となる。
【0026】フリーカーボンの少ない精製タールを得
るには、予め加熱処理等をした上で濾過や遠心分離等の
フリーカーボンの除去処理を行う必要があり、処理工程
が増える。これに対し、揮発性留分は従来の設備から得
られる上、フリーカーボン除去処理を必要としないた
め、処理工程が増えず、コスト低減に寄与できる。
【0027】揮発性留分を、フリーカーボンを除去し
た精製タールに代わる原料として使用することで、原料
タールの増量効果が得られ、フリーカーボン除去施設の
処理能力不足を補うことが可能である。その結果とし
て、黒鉛化反応収率の減少を補うことが可能である。
【0028】種々の検討を進めた結果、以下の製造プロ
セスで得られた黒鉛粉末は高い放電容量が得られるとい
う知見を得た。 石炭系または石油系のタールまたはピッチを 150〜60
0 ℃の温度で熱処理したときに発生する揮発性の留分
を、単独で、またはタールまたはピッチと混合してか
ら、 100〜350 ℃で硝酸、硫酸等の無機酸もしくはナフ
タレンスルホン酸等の有機酸と反応させて高分子量化す
る。
【0029】酸と反応させた原料を、単独で、または
タールもしくはピッチと混合してから、常法に従って 4
00〜600 ℃で熱処理して、バルクメソフェーズカーボン
を得る。
【0030】得られたバルクメソフェーズカーボン
を、少なくとも黒鉛化工程に先立って、好ましくは長径
/短径比であるアスペクト比が2.0 以下となるように粉
砕する。この粉砕を高速粉砕または剪断粉砕により行う
と、黒鉛化後に、後述する間隙面密度が高く、それによ
り放電容量が向上した黒鉛粉末が得られる。
【0031】粉砕したバルクメソフェーズカーボン粉
末を次いで常法に従って炭化して炭素材とし、さらに黒
鉛化して黒鉛粉末を得る。本発明により、以下の工程を
有する、バルクメソフェーズカーボンの製造方法が提供
される: (a) タールおよび/またはピッチを、常圧以下の圧力下
150〜600 ℃で熱処理して揮発性留分を得る工程; (b) 上記揮発性留分または上記揮発性留分とタールおよ
び/またはピッチとの混合物を 100〜350 ℃の温度で酸
と反応させる工程;および (c) 上記酸との反応生成物またはこの反応生成物とター
ルおよび/またはピッチとの混合物を 400〜600 ℃で熱
処理してバルクメソフェーズカーボンを得る工程。
【0032】本発明はまた、上記方法で製造されたバル
クメソフェーズカーボンを炭化する工程と、得られた炭
化材を黒鉛化する工程と、粉砕工程とを有し、前記粉砕
工程が黒鉛化工程より前に高速粉砕と剪断粉砕の少なく
とも一方を行うことを含んでいる、黒鉛粉末の製造方法
にも関する。
【0033】
【発明の実施の形態】[バルクメソフェーズカーボンの
製造方法]本発明によれば、石炭系または石油系のター
ルおよび/またはピッチ (以下、タール等という) を原
料とし、これを常圧または減圧下で熱処理して、フリー
カーボンを含まない揮発性留分を得る工程(a) 、この留
分を加熱下に酸と反応させて高分子量化する工程(b) 、
およびさらに高温で熱処理してバルクメソフェーズカー
ボンを得る工程(c) を経て、バルクメソフェーズカーボ
ンを製造する。工程(b) および(c) では、未処理のター
ル等を混合することができる。
【0034】工程 (a) 原料のタール等から熱処理により揮発性留分を得る工程
である。原料としては、石炭系または石油系のタールま
たはピッチ、あるいはこれらの混合物のいずれも使用で
きる。好ましいのはコールタールおよびコールタールピ
ッチである。
【0035】この熱処理は常圧以下の圧力、即ち、常圧
ないし減圧下で行う。それにより原料のタール等の揮発
が促進され、十分な量の留分を得ることができる。圧力
の下限は特に限定しないが、工程(a) で主生成物として
のバルクメソフェーズカーボンの製造について考慮する
のであれば、0.1 kPa 以上が好ましい。0.1 kPa 未満の
減圧度では、主生成物であるバルクメソフェーズカーボ
ンの収率低下を招き、また副生成物である留分回収量も
それほど増加せず、経済性に劣る。
【0036】この熱処理の圧力の好ましい範囲は1〜10
kPaである。熱処理時に、10 kPa以下と減圧度を高くす
ると、減圧により高沸点成分の沸点が低下するため、留
出する揮発性留分は、酸触媒との反応性およびカチオン
ラジカルとの反応性に優れる高分子量 (高沸点) の成分
が主体になる。また、この時に、より低分子量 (低沸
点) の成分は、ガス化して系外に除去できる。それによ
り、バルクメソフェーズカーボンの収率が増大する。1
kPa より圧力が高くなると、経済性がやや劣化する。
【0037】揮発性留分を得るための熱処理は 150〜60
0 ℃で行う。熱処理温度が600 ℃を超えると、揮発性留
分を得るのが困難となる。一方、熱処理温度が150 ℃を
下回ると、酸触媒との反応性やカチオンラジカルとの反
応性に優れる高分子量 (高沸点) の化合物が主体となる
揮発性留分が得られなくなり、バルクメソフェーズカー
ボンの収率が低下する。また150 ℃より低温の熱処理で
は、留分にタール中の水分が混入する可能性が高く、こ
の水分は熱処理時の突沸の要因となるので。好ましくな
い。
【0038】好ましい熱処理温度は350 〜550 ℃であ
る。この熱処理で熱処理装置から留出した揮発性留分を
回収し、本発明でバルクメソフェーズカーボンの製造原
料の全部または一部として使用する。この揮発性留分
は、既に述べたように、フリーカーボンを含有しない。
従来は、この揮発性留分は特に利用されることなく、タ
ール蒸留塔等へ戻され、新たなコールタールの一部とさ
れており、バルクメソフェーズカーボンやメソフェーズ
小球体の製造原料に用いることはなかった。
【0039】工程 (b) フリーカーボンを含有しない揮発性留分を酸と反応させ
て、高分子量化を進める。それにより、次工程で得られ
るバルクメソフェーズカーボンの収率が向上し、かつ異
方性が発達して、異方性ドメイン径が1300Å以上と大き
いバルクメソフェーズカーボンを得ることができる。
【0040】この時に、工程(a) で得た揮発性留分だけ
を酸と反応させてもよいが、この揮発性留分を工程(a)
の原料であるタール等と混合してから酸との反応に用い
てもよい。それにより、タール等に比べてフリーカーボ
ン含有量の少ない原料を酸と反応させることができ、特
別にフリーカーボン除去処理を行わずに、フリーカーボ
ン含有量が低減した原料からバルクメソフェーズを製造
することになる。
【0041】このように揮発性留分にタール等を混合す
る場合、タール等の混合量は、混合後のフリーカーボン
含有量が0.3 %以下となる範囲にとどめておくことが好
ましい。従って、タール等のフリーカーボン含有量等の
条件によっても変動するが、一般にタール等を混合物全
体の60質量%以下とすることが好ましい。
【0042】反応に用いる酸は、強酸が好ましく、無機
酸、有機酸、ルイス酸のいずれでもよい。例えば、硝
酸、発煙硝酸、亜硝酸、硫酸、発煙硫酸、亜硫酸、リン
酸、ポリリン酸、ナフタレンスルホン酸、p−トルエン
スルホン酸、キシレンスルホン酸、トリフルオロメタン
スルホン酸、フッ化水素・フッ化ホウ素混合系等を用い
ることができる。
【0043】好ましい酸は硝酸である。硝酸は、強力な
カチオンラジカル発生触媒であり、タール分子の高分子
量化において触媒効果に優れ、かつ安価である。また、
バルクメソフェーズカーボン形成後の触媒除去は一般に
困難であるが、硝酸触媒の場合は、二酸化窒素などのガ
スとして系外に排気されるか、タール分子の芳香環への
ニトロ基付加の形で除かれるので、重合後のタール物性
を著しく損なうことがなく、また特に触媒除去工程を必
要としない。
【0044】反応に用いる酸の量は特に限定しない。最
終的に得られるバルクメソフェーズカーボンの異方性ド
メイン径が1300Å以上となるように調整すればよい。酸
との反応は 100〜350 ℃の温度で行う。温度の上限を35
0 ℃とするのは、添加触媒の分解による触媒効果の低下
や不均一な反応を防ぐためである。反応温度は好ましく
は300 ℃以下である。温度の下限を100 ℃とするのは、
100 ℃以上で留分が溶解し、低粘度の液体となり、酸と
の反応に適するためである。100 ℃未満の温度では、留
分は固体であるか、液体でも高粘度であるため、酸との
反応に不適当である。反応温度の下限は好ましくは150
℃である。
【0045】酸との反応は高分子量化が進まなくなるま
で行うことが好ましく、この時間は通常は1〜5時間で
ある。反応雰囲気は、タール分子の酸化防止のため、窒
素、アルゴンをはじめとする不活性ガス雰囲気とするの
が好ましい。
【0046】工程 (c) 酸との反応により高分子量化させた原料を 400〜600 ℃
で熱処理すると、さらに高分子量化が進むと同時に、全
体が光学的に異方性のメソフェーズ状態となり、バルク
メソフェーズカーボンが得られる。
【0047】このメソフェーズ化熱処理時も、工程(b)
で得られた酸処理した原料に、未処理のタール等を混合
することが可能である。この時のタールの混合量も、上
記と同様にタール等のフリーカーボン含有量等で変わる
が、通常は60質量%以下とすることが好ましい。
【0048】バルクメソフェーズカーボンを得る際の熱
処理温度が400 ℃より低いと、メソフェーズ化が不十分
で、異方性ドメイン径が1300Å以上のバルクメソフェー
ズカーボンを得ることが困難となる。そのため、黒鉛化
で得られた黒鉛粉末の結晶性が十分に高くならないの
で、放電容量が低下する。熱処理温度が600 ℃を超える
と、メソフェーズ化が急激に進行するため、組織が微細
で比表面積の大きな黒鉛粉末となり、充放電効率が低下
する。好ましい熱処理温度は 450〜550 ℃であり、より
好ましくは 450〜500 ℃である。
【0049】バルクメソフェーズ化に必要な熱処理時間
は、熱処理に供するタール等のフリーカーボン含有量が
0.3 質量%以下であれば、通常は2〜12時間程度であ
る。工業的観点からは、12時間を超える長い熱処理時間
は得策ではないので、12時間までの熱処理で所望の異方
性ドメイン径を有するバルクメソフェーズカーボンが得
られるように、熱処理温度および/または原料タール等
のフリーカーボン含有量を設定することが好ましい。
【0050】熱処理雰囲気と圧力に関しては、熱処理中
に油分が揮発するので、その揮発を促進するため、例え
ば、減圧蒸留釜を使用して、熱処理を10〜100 Torr程度
の減圧下で行うことが好ましい。大気圧で熱処理する場
合には、油分の除去の促進と熱処理中の材料の酸化防止
のために、窒素ガスなどの不活性ガスの流通下で熱処理
を行うことが好ましい。
【0051】[黒鉛粉末の製造方法]上記方法で得られた
バルクメソフェーズカーボンを黒鉛製造原料として使用
し、これを炭化する工程と、得られた炭素材を黒鉛化す
る工程と、黒鉛化工程前に行う粉砕工程とを経て、黒鉛
粉末を製造する。炭化は炭素以外の元素をほぼ完全に熱
分解させて除去する工程であり、黒鉛化は黒鉛の層状結
晶構造を発達させる工程であり、いずれも熱処理により
行われる。
【0052】バルクメソフェーズカーボンの異方性ドメ
インは、前述したように、炭素6員環網目構造を持つ板
状の高分子が同一の配向方向で積層した光学的に異方性
の領域であり、準結晶状態であることから、X線小角散
乱法によりそのドメインの径を求めることができる。こ
の異方性ドメイン径が大きいほど、バルクメソフェーズ
の異方性が発達している。
【0053】本発明によると、異方性ドメイン径が1300
Å以上のバルクメソフェーズを得ることができ、この異
方性ドメイン径の値は、通常のバルクメソフェーズカー
ボンでの値に比べて非常に大きく、異方性が高度に発達
していることを意味する。
【0054】この高度に発達した異方性を示すバルクメ
ソフェーズカーボンを炭化および黒鉛化し、かつ少なく
とも一回の粉砕を下記のように実施して黒鉛粉末を製造
することにより、放電容量と充放電効率のいずれにも優
れた黒鉛粉末を安定して製造することが可能となる。
【0055】本発明では、粉砕を、黒鉛化より前の段階
で高速粉砕と剪断粉砕の一方または両方により行う。即
ち、炭化前のバルクメソフェーズカーボンに対して、ま
たは炭化後に得られた炭化材に対して、上記の粉砕を行
う。炭化前と炭化後の両方に上記粉砕を実施してもよ
い。上記粉砕を炭化後に行う場合には、炭化前にバルク
メソフェーズカーボンを軽く粉砕して粉末化しておくこ
とが好ましい。
【0056】黒鉛化前にこの粉砕を実施しておくと、黒
鉛化後に、粉末表面の黒鉛c面層の端部が2層ずつ連結
して閉じた閉塞構造の間隙面密度が150 個/μm以上と
高密度である黒鉛粉末を得ることができ、放電容量と充
放電効率が改善される。
【0057】「黒鉛c面層の端部が2層ずつ連結して閉
じた閉塞構造」とは、黒鉛c面層の近接した2層の末端
同士が連結して環状に閉じた構造を意味し、この連結端
部は積層構造をとっていてもよい。
【0058】「間隙面」とは、隣接する2つの閉塞構造
の間の、外部に開いた層間の面を意味する。隣接する連
結閉塞構造がいずれも積層構造である場合、その積層構
造の最外層の層間面が間隙面となる。隣接する間隙面の
間に挟まれた閉塞構造 (多層か単層かにかかわらず)
を、単位閉塞構造とする。
【0059】「間隙面の密度」とは黒鉛c面に垂直なc
軸方向における1μm当たりの間隙面の個数として定義
する。この間隙面の密度は、単位閉塞構造の密度と実質
的に同じである。
【0060】以上の閉塞構造、間隙面および間隙面密度
に関しては、上記国際公開公報に説明されているので、
参照できる。黒鉛化前に高速粉砕および/または剪断粉
砕を行うと、粉末表面に原子レベルの凹凸 (層欠陥) が
多数導入され、黒鉛化のための熱処理中に上記の連結閉
塞構造が形成される際の間隙面密度が高くなる。黒鉛化
熱処理後にこのような粉砕を行うと、黒鉛化熱処理で生
成した閉塞構造が壊れて粉末表面にc面層に層欠陥が発
生するので、サイクル寿命や充放電効率が低下する。但
し、解砕を目的とする軽度の粉砕は黒鉛化後に実施して
もよい。
【0061】通常の衝撃型粉砕を利用する場合、黒鉛化
した時に上記間隙面密度が150 個/μm以上の黒鉛粉末
が得られるような数の層欠陥を粉砕により導入するに
は、粉砕を高速で行う必要がある。「高速粉砕」とは、
黒鉛化熱処理後に間隙面密度が150 個/μm以上の黒鉛
粉末が生成する粉砕条件を意味する。目安として、ハン
マーミルやアトリションミルといった衝撃粉砕では、50
00 rpm以上の回転数での粉砕が高速粉砕に相当する。
【0062】ヘキ開を主とした粉砕になり、層欠陥を効
率よく導入することができる剪断粉砕 (例、ディスクク
ラッシャーによる粉砕) では、粉砕条件を高速とする必
要はない。ディスクミルでの粉砕は、例えば 150〜300
rpm 程度の回転数で実施することができる。
【0063】上記の粉砕は、アスペクト比 (粉末の長径
/短径の比の平均値) が2.0 以下の粉末が得られるよう
に行うことが好ましい。それにより、充填密度が高い負
極を作製することができ、負極の導電性が改善され、充
放電効率が向上する。粉末のアスペクト比は、衝撃粉砕
と剪断粉砕を組合わせて粉砕を行うことにより容易に調
整することができる。このように衝撃粉砕と剪断粉砕を
併用する場合、衝撃粉砕は高速粉砕とする必要はない
が、高速粉砕としてもよいのは当然である。
【0064】粉砕後の粉末の平均粒径は10〜50μmの範
囲内とすることが好ましく、より好ましくは20〜40μm
の範囲内である。この平均粒径は、粉砕時の回転数や粉
砕時間により調整することができる。必要であれば、粉
砕後に分級を行って平均粒径を調整してもよい。
【0065】バルクメソフェーズカーボンの炭化に必要
な温度は一般に 700〜1100℃、好ましくは 800〜1050℃
であり、黒鉛化に必要な温度は2500℃以上、好ましくは
2800℃以上である。黒鉛化時に、ホウ素等の黒鉛化触媒
を微量添加してもよい。炭化と黒鉛化は、同じ炉を使っ
て1工程の焼成で実施することも不可能ではないが、黒
鉛化温度が非常に高く、特殊な炉が必要になるため、通
常は別工程で行う。
【0066】炭化と黒鉛化の熱処理はいずれも非酸化性
雰囲気中で行う。熱処理雰囲気は、不活性ガス (例、窒
素、アルゴン等の希ガス) と還元性ガス (例、水素と不
活性ガスの混合ガス) のいずれでもよい。炭素の酸化は
黒鉛化後の結晶化度の低下や比表面積の増大の原因とな
るため、雰囲気中の酸素、水蒸気、二酸化炭素等の酸化
性ガスの濃度は極力低くすることが好ましい。黒鉛化温
度では、水素等の還元性ガスや場合によっては窒素も炭
素と反応する可能性があるため、黒鉛化時の熱処理雰囲
気は、アルゴン等の希ガスが好ましい。
【0067】本発明に従って得られたバルクメソフェー
ズカーボンから粉砕、炭化、および黒鉛化を経て黒鉛粉
末を製造すると、結晶度が非常に高い黒鉛粉末が得られ
る。この非常に高い結晶度は、結晶子径が 200〜1000Å
と大きく、c軸方向の結晶面間隔d002 が3.3630Å以下
と小さいことで示される。この黒鉛粉末はまた、連結閉
塞構造の間隙面密度が150 個/μm以上であり、好まし
くはアスペクト比が2.0 以下、比表面積が2m2/g以下、
より好ましくは1m2/g以下である。比表面積が大きすぎ
ると、サイクル寿命や充放電効率が低下する。
【0068】このような特性を備えた黒鉛粉末は、黒鉛
負極の理論容量に近い350 mAh/g 以上という高い放電容
量と、93%以上という高い充放電効率を示す。連結閉塞
構造をとることで粉末の表面が化学的に安定化されてい
るため、この高い充放電効率は、大電流放電や低温放電
でもそれほど低下しない。
【0069】従って、本発明によれば、350 mAh/g 以上
の放電容量と高い充放電効率を示し、大電量放電や低温
放電でも充放電効率が低下しにくい、リチウムイオン二
次電池の負極材料に最適の黒鉛粉末を安定して製造する
ことができる。
【0070】本発明により製造された黒鉛粉末を用いて
従来より公知の適当な方法で電極を作製し、リチウムイ
オン二次電池の負極として用いることができる。電極の
作製は、一般に黒鉛粉末を適当な結着剤を用いて電極基
板となる集電体上に成型することにより行われる。集電
体としては、黒鉛粉末の担持性が良く、負極として使用
した時に分解による溶出が起こらない任意の金属の箔
(例、電解銅箔、圧延銅箔などの銅箔) を使用すること
ができる。
【0071】リチウムイオン二次電池の正極、非水電解
液、セパレータ、電池容器とその形状、構造などの他の
要素は特に制限されず、従来より利用されてきたものと
同様でよい。
【0072】
【実施例】[原料留分の調製、工程(a)]各種のフリーカ
ーボン含有量を有するコールタールを、表1記載の温
度、圧力の条件で減圧下に熱処理を行い、熱処理中に発
生する揮発性留分を回収した。この揮発性留分を単独
で、もしくはこの熱処理に使用したのと同じコールター
ルと混合して、原料留分を調製した。
【0073】[留分と酸の反応、工程(b)]原料留分と発
煙硝酸とを混合し、常圧窒素雰囲気下 150〜350 ℃の温
度で熱処理を行った。具体的な熱処理条件は表1に記載
する。表1で「150-250 ℃」とあるのは「酸との混合を
150 ℃でおこない、その後昇温して250 ℃にした」との
意味である。
【0074】[バルクメソフェーズカーボンの作製、工
程(c)]酸と反応させた留分を、単独もしくはコールター
ルと混合して、減圧蒸留釜で350〜550 ℃に加熱保持し
て、バルクメソフェーズカーボンを得た。具体的な条件
は表1に記載する。
【0075】[バルクメソフェーズカーボンの粉砕]バル
クメソフェーズカーボンを長径/短径比であるアスペク
ト比が表1記載の値となるように、衝撃摩擦型粉砕機
(回転数200 rpm)で粉砕して、平均粒径を約30ミクロン
とした。この粉砕機による主な粉砕機構は剪断粉砕であ
る。
【0076】[黒鉛粉末の作成]粉砕したバルクメソフェ
ーズカーボン粉末を、窒素雰囲気下で10℃/時の昇温速
度で1000℃まで加熱し炭化した。その後、炉冷して取り
出した炭素材粉末を、窒素雰囲気の黒鉛化炉に移し、10
℃/時の昇温速度で3000℃まで加熱し、3000℃に1時間
保持して黒鉛化し、黒鉛粉末を得た。
【0077】[タール中、留分中のフリーカーボン量の
測定]タールおよび/またはピッチ中と、これらを熱処
理することで発生した揮発性留分中のキノリン不溶分
(QI)を測定する。具体的には、所定量のタール/ピッ
チ/留分に、その50倍の重量のキノリンを混合、攪拌し
た後、濾過により不溶分を分取する。この不溶分の重量
を初期のタール/ピッチ/留分の重量に対する割合
(%) としてQI を算出した。
【0078】[バルクメソフェーズカーボンの収率]バル
クメソフェーズカーボンの収量を仕込のタール量もしく
は留分量で除してバルクメソフェーズカーボンの収率を
求めた。
【0079】[バルクメソフェーズカーボンの粒径]小角
X線散乱法でバルクメソフェーズカーボンの平均粒径を
求めた。 [粉砕後のアスペクト比の測定]粉砕後に得られたバルク
メソフェーズカーボン粉末のSEM 写真を撮影し、不作為
に選んだ100 個の粉末粒子の長径と短径を測定して各粒
子の長径/短径の比を求め、その平均値をアスペクト比
とした。
【0080】[比表面積の測定]N2 置換法によるBET 1
点測定法にて求める。 [閉塞構造の間隙面密度の測定]黒鉛粉末を黒鉛C軸に平
行な方向に切断した断面の表面付近の高分解能透過型電
子顕微鏡写真を撮影する。この写真からC面層末端にル
ープ状閉塞構造と間隙面が明瞭に見られるので、Liイオ
ン侵入サイトである単位閉塞構造間の間隙密度を決定で
きる。
【0081】[結晶性の評価]黒鉛粉末の結晶性を示すd0
02値 (結晶面間隔) 、Lc値 (結晶子径) をX線回折法で
評価した。
【0082】[放電容量と充電/ 放電効率]負極特性の評
価は、対極、参照極に金属リチウムを用いた3極式定電
流充放電試験により行った。電解液はエチレンカーボネ
ートとジメチルカーボネートの体積比1:1の混合溶媒
に1M濃度でLiClO4を溶解した非水溶液を使用した。
【0083】放電容量は、0.3 mA/cm2の電流密度でLi参
照極に対して0.0 V まで充電して負極中にLiを格納させ
た後、同じ電流密度でLi参照極に対して1.50 Vまで放電
(Liイオンの放出) を行うという充放電サイクルを10サ
イクル行い、2〜10サイクルの9回の放電容量の平均値
である。また、初回の充放電において、充電に要した電
気量に対する放電時の電気量の割合 (%) として充放電
効率を算出した。
【0084】これらの結果を、処理条件とともに表1、
表2にまとめて示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】 表1および2のNo.1〜11は、タールおよび/またはピッ
チから得られた揮発性留分を単独で使用した例であり、
例No.4〜6は、工程(b) での硝酸添加量および温度を変
更した例である。
【0087】No.1〜3 (発明例) は、工程(a) の出発原
料であるタールのフリーカーボン量が異なる例を示す。
この工程で留分を得た段階でフリーカーボンは除去され
ており、どの場合もリチウムイオン二次電池の負極材と
して優れていた。
【0088】No.4 (比較例) は、工程(b) で揮発性留分
を硝酸と反応させなかった例であり、バルクメソフェー
ズカーボンの反応収率が著しく低くなった。 No.5 (発明例) は、反応させる硝酸量を増やした例であ
り、バルクメソフェーズカーボンの反応収率が増加し
た。
【0089】No.6 (比較例) は、工程(b) での熱処理温
度が高すぎた例を示す。揮発性留分と酸を混合する温度
が高すぎた場合、酸触媒の分解や不均一な反応が生じる
ため、黒鉛粉末の結晶性が低く、放電容量、充放電効率
が共に劣化した。またバルクメソフェーズカーボンの収
率が若干低下した。
【0090】No.7 (発明例) は、粉砕時のアスペクト比
を高くした例を示す。放電容量や充放電効率が若干低下
した。 No.8 (発明例) は、工程(a) の熱処理時圧力を下げた例
を示す。工程(a) において、より高分子量で反応性に富
む成分が含まれる揮発性留分を回収することができたた
め、バルクメソフェーズカーボンの反応収率が向上し、
リチウムイオン二次電池の負極材として優れる黒鉛粉末
が得られた。
【0091】No.9 (比較例) は、工程(a) の熱処理温度
が低すぎた例を示す。工程(a) で揮発しやすい低分子量
成分のみが留分として回収されたため、バルクメソフェ
ーズカーボンの反応収率が著しく低下した。
【0092】No.10(比較例) は、工程(c) の熱処理温度
が低すぎた例を示す。バルクメソフェーズカーボンの反
応収率は向上したが、異方性ドメイン径の発達は小さか
った。その結果、黒鉛粉末の結晶性が低く、放電容量、
充放電効率が共に劣る結果となった。
【0093】No.11(比較例) は、工程(c) の熱処理温度
が高すぎた例を示す。バルクメソフェーズカーボンの反
応収率が低下した。 No.12(従来例) は、従来の一般的なバルクメソフェーズ
の製造方法である、フリーカーボン量>0.3 %のタール
から工程(a) の熱処理だけで、残留物として得られるバ
ルクメソフェーズカーボン(即ち、工程(a) と(b) を省
略し、工程(c)だけで得られるものに相当)を使用し
て、黒鉛粉末を製造した例を示す。放電容量、充放電効
率が共に悪かった。
【0094】No.13 〜16 (発明例) は、工程(a) または
(b) でのタールの混合の影響を示す実施例である。ター
ルを混合しても、得られたバルクメソフェーズの異方性
ドメイン径が1300Å以上となるような混合量であれば、
放電容量と充放電効率が共に満足できる黒鉛粉末が得ら
れた。
【0095】
【発明の効果】本発明によれば、フリーカーボンの除去
処理を特に行わずに、フリーカーボン0.3 %以下の原料
を使用したのと同様の高度に異方性が発達したバルクメ
ソフェーズを製造することができ、このバルクメソフェ
ーズから、放電容量350 mAh/g以上、充放電効率95%以
上という高性能のリチウムイオン二次電池用負極を形成
できる黒鉛粉末を安定して製造できる。従って、本発明
はリチウムイオン二次電池の高性能化に寄与する技術を
提供するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G046 CA07 CB02 CB09 CC03 EA06 EB04 EC02 EC06 4H058 AA10 CA03 DA06 DA13 DA48 EA02 EA12 EA14 EA33 EA45 EA47 FA03 FA40 GA02 GA24 HA06 HA12 HA13 5H050 AA02 AA06 AA08 AA09 BA17 CB08 FA17 GA01 GA02 GA05 GA27 HA05 HA14 HA15

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の工程を有する、バルクメソフェー
    ズカーボンの製造方法: (a) タールおよび/またはピッチを、常圧以下の圧力下
    150〜600 ℃で熱処理して揮発性留分を得る工程; (b) 上記揮発性留分または上記揮発性留分とタールおよ
    び/またはピッチとの混合物を 100〜350 ℃の温度で酸
    と反応させる工程;および (c) 上記酸との反応生成物またはこの反応生成物とター
    ルおよび/またはピッチとの混合物を 400〜600 ℃で熱
    処理してバルクメソフェーズカーボンを得る工程。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の方法で製造されたバルク
    メソフェーズカーボンを炭化する工程と、得られた炭化
    材を黒鉛化する工程と、粉砕工程とを有し、前記粉砕工
    程が黒鉛化工程より前に高速粉砕と剪断粉砕の少なくと
    も一方を行うことを含んでいる、黒鉛粉末の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記粉砕工程で得られた粉末が2.0 以下
    のアスペクト比を有する、請求項2記載の黒鉛粉末の製
    造方法。
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