JP3646689B2 - リチウムイオン二次電池負極用の黒鉛粉末の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池負極用の黒鉛粉末の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、放電容量が高く、充放電効率の良好なリチウムイオン二次電池の作製を可能にする、リチウムイオン二次電池の負極材料として好適な、黒鉛 (グラファイト) 粉末の製造方法に関する。
【0001】
【従来の技術】
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出する炭素材料を負極に用いた非水電解質二次電池であり、自己放電が少なく、起電力とエネルギー密度が高いという特長を有することから、携帯機器用の電源を中心に急速に利用が拡大しており、将来的には電気自動車や電力貯蔵用といった大規模用途への利用も期待されている。
【0002】
金属リチウムからなる負極の理論容量が約3800 mAh/gと非常に高いのに比べ、炭素材料からなる負極では、黒鉛の層間にリチウムイオンが密に格納された層間化合物であるLiC6組成の理論容量である372 mAh/g が限界容量になると考えられており、負極容量は金属リチウムよりずっと低くなる。しかし、金属リチウム負極では避けられない充電時のデンドライト析出 (これは短絡を生じ、サイクル寿命の悪化や異常発熱を引き起こす) が起こらないことから、炭素材料を負極に用いたリチウムイオン二次電池が実用化されたのである。
【0003】
黒鉛を負極に用いた場合には、上記のように372 mAh/g が限界容量となるが、リチウムイオンの侵入を阻害する表面活性サイトや、リチウムイオン格納に対する死領域等が存在することから、実際の放電容量はこれよりかなり低くなるので、この限界容量に近づくように放電容量を高めることが目標となる。
【0004】
黒鉛からなるリチウムイオン二次電池の負極の別の問題点は、充放電効率である。黒鉛は表面の反応性が高いため、充電時に電解液の分解に伴って不動態皮膜が付着し易い。この時に使用される電気量がロスとなるため、充電容量と放電容量の差が大きくなり、充放電効率 (放電容量/充電容量の比) が低下する。
【0005】
リチウムイオン二次電池の炭素材負極の容量増大については、これまでにも多くの提案がある。例えば、特開平4−115458号に提案されているように、コールタールやピッチの炭化過程で生じるメソフェーズ小球体を焼成して黒鉛の球形粉末を製造し、これを用いて負極を作製すると、球形粉末の充填密度の増大を利用して放電容量が増大する。
【0006】
特開平7−326355号公報には、コールタールの熱処理で得たメソフェーズ小球体を焼成して負極用炭素材料を製造する際に、該コールタール中のフリーカーボン含有量に応じて炭素材料の結晶構造や平均粒径を制御することにより、所望の結晶構造や平均粒径を有する炭素材料を工業的に安定して製造することが記載されている。使用するコールタールのフリーカーボン含有量は0.5 質量%以上である。しかし、この公報には得られた炭素材料の充放電特性が示されていない。
【0007】
特開平10−284063号公報には、 0.5〜3.0 質量%のフリーカーボンを含有するコールタールを熱処理して、メソフェーズ/フリーカーボンの重量比が2以上のメソフェーズ小球体とし、これを焼成して黒鉛化することにより、放電容量の高い黒鉛系炭素材料が得られることが記載されている。
【0008】
さらに、サイクル寿命の改善、高容量化、充放電効率の改善等の多様な目的で、炭素質材料に樹脂、ピッチ等の炭素含有材料を被覆し、被覆材料を熱分解して炭化させることを含む黒鉛粉末の製造方法がいろいろ提案されている (例、特開2000-86343号、特開平11−11919 号、特開平5−121066号、特開平6−5288号、特開平10−59703 号、特開平2000−3708号、特開平11−54123 号各公報) 。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、理論容量にかなり近づいた340 mAh/g を越える高い放電容量を示し、かつ充放電効率が80%以上、好ましくは90%以上と高い、リチウムイオン二次電池の負極材料に適した黒鉛粉末を、安定して比較的低コストで製造することができる方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、先に、バルクメソフェーズカーボンを高速粉砕または剪断粉砕して得た炭化材の粉末を黒鉛化することにより、放電容量と充放電効率が高い黒鉛粉末の製造が可能となることを提案した (国際公開公報WO98/29335号) 。その後の研究により、バルクメソフェーズカーボンの原料であるタールやピッチ中のフリーカーボン (キノリン不溶分) とトルエン不溶分の含有量が、メソフェーズ化から炭化および黒鉛化を経て得られる黒鉛粉末の電極特性に大きく影響することを見出した。
【0011】
より詳しく説明すると、フリーカーボンおよびトルエン不溶分の含有量を一定以下に低減させたタールおよび/またはピッチを特定範囲内の温度で熱処理すると、高度に異方性が発達したバルクメソフェーズカーボンが得られる。この高度に異方性のバルクメソフェーズカーボンの炭化により得られた炭化材の粉末を黒鉛化すると、放電容量の高い黒鉛粉末を得ることができる。
【0012】
さらに、黒鉛化前の炭化材の粉末に樹脂を被覆してから、黒鉛化すると、放電容量と充放電効率が一層改善された黒鉛粉末が得られることが判明した。
これらの知見に基づいて完成した本発明は、バルクメソフェーズカーボンを炭化し、得られた炭化材の粉末を黒鉛化することによる黒鉛粉末の製造方法であって、前記バルクメソフェーズカーボンが、フリーカーボン含有量0.1 質量%以下、トルエン不溶分含有量5質量%以下のタールおよび/またはピッチを、 400〜600 ℃の温度範囲で熱処理することにより得たものであり、前記炭化材の粉末を、黒鉛化の前に樹脂で被覆することを特徴とする黒鉛粉末の製造方法である。
【0013】
本発明の好適態様では、前記タールおよび/またはピッチを熱処理してバルクメソフェーズカーボンを得る前に、このタールおよび/またはピッチをニトロ化剤1〜6質量%の存在下で 250〜400 ℃の温度に加熱して重縮合させる。
【0014】
別の好適態様では、炭化材粉末の樹脂による被覆を、炭化材粉末にその2〜20質量%の量の樹脂を添加し、樹脂の軟化温度以上で混練することにより行う。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係る黒鉛粉末の製造方法では、バルクメソフェーズカーボンを炭素質原料として使用し、これを炭化および黒鉛化して黒鉛粉末を製造する。以下、各工程ごとに、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
バルクメソフェーズカーボンの調製
常温で液状の炭素質物質であるタールを、加熱しながら偏光顕微鏡で観察すると、等方性であった液相中に光学異方性の球形粒子が現れてくる。この粒子がメソフェーズ小球体である。タールの蒸留残渣であるピッチ (常温では固体または半固体) を加熱した場合も、まず液状化した後、生成した液相中に同様にメソフェーズ小球体が観察される。メソフェーズ小球体は、熱による重縮合で生じた、炭素6員環の網目構造からなる大きな平板分子がほぼ平行に配向して積層した構造を持つ液晶が、等方性の母相から相分離したものである。
【0017】
さらに加熱を続けると、メソフェーズ小球体の量が増加し、ついにはそれらが合体して光学異方性のマトリックスが生成し、最終的には全体が光学異方性となる。この光学異方性のマトリックス材料または全体的に光学異方性となった材料が、バルクメソフェーズカーボンである。
【0018】
メソフェーズ小球体とバルクメソフェーズカーボンは、固化した後も、上述した平板分子が積層してなる光学的に異方性の配向状態 (液晶と同じ配向状態) を保持している。球形粒子であるメソフェーズ小球体では、粒子全体が実質的に同一の配向方向を有する。これに対し、バルクメソフェーズカーボンでは、同一の配向方向を持つ層状で光学的に異方性の積層領域 (これを本発明では異方性ドメインと称する) が多数集合した構造を持つ。即ち、メソフェーズ小球体は一つの異方性ドメインからなる粒子であり、バルクメソフェーズは多数の異方性ドメインの集合体である。
【0019】
従来技術の欄で説明したように、メソフェーズ小球体は球形粒子で充填性がよい。しかし、メソフェーズ小球体は、光学的に等方性のマトリックスから分離するのに溶媒抽出といった分離操作が必要であり、余分な工程が加わる上、抽出に多量の有機溶媒が必要である。さらに、分離後に残ったマトリックスは廃棄するので、歩留まりが小さい。そのため、本発明では、メソフェーズ小球体よりずっと安価に取得できるバルクメソフェーズカーボンを原料として使用する。
【0020】
本発明では、このバルクメソフェーズカーボンとして、フリーカーボン含有量0.1 質量%以下、トルエン不溶分含有量5質量%以下のタールおよび/またはピッチ (以下、タール等という) を、 400〜600 ℃の温度範囲で熱処理することにより得たものを使用する。
【0021】
前述したように、バルクメソフェーズカーボンは多数の異方性ドメインの集合体である。上記方法で得られたバルクメソフェーズカーボンは異方性が高度に発達しており、個々の異方性ドメインがより大径になっている。
【0022】
このバルクメソフェーズカーボンの製造に用いる出発原料(メソフェーズ化原料) は、タールとピッチのいずれでもよく、その両者の混合物でもよい。タールおよび/またはピッチとしては、芳香族成分に富む石炭系のタール (コールタール) またはピッチ (コールタールピッチ) が好ましいが、石油系のものも使用可能である。
【0023】
メソフェーズ化原料のタール等を、フリーカーボン含有量が0.1 質量%以下、かつトルエン不溶分含有量も5質量%以下と低減させると、最終的に得られる黒鉛粉末の結晶性が向上し(これはd002結晶面間隔が小さく、結晶子の厚みが大きいことで示される) 、高い放電容量を示す黒鉛粉末を安定して製造することができる。トルエン不溶分含有量は3質量%以下とすることが好ましい。
【0024】
本発明でメソフェーズ化原料として使用する、フリーカーボン含有量0.1 質量%以下、トルエン不溶分含有量5質量%以下のタール等は、タール等を下記 (1)〜(3) の工程を経て精製することにより得ることができる:
(1) タール等をケトン系溶剤と混合して溶解させる工程、
(2) 得られた混合液中の不溶物を除去する工程、および
(3) 得られた溶液からケトン系溶剤を除去する工程。
【0025】
工程(1) でケトン系溶剤と混合すると、タール等に含まれる数ミクロン以下といわれる超微粒子状のフリーカーボンが数十〜数百ミクロンの大きさに造粒されるため、工程(2) での不溶物の除去により、フリーカーボンを不溶物としてほぼ完全に除去することが可能となる。そのため、工程(3) により溶剤を除去すると、フリーカーボンをほとんど含まない精製タールが得られる。上記処理はトルエン不溶分の除去にも有効であり、トルエン不溶分のかなりの部分が除去されるため、トルエン不溶分含有量も5質量%以下に低減することができる。
【0026】
ケトン系溶剤としては、これらに限られないが、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が使用できる。ケトン系溶剤の混合量は、メソフェーズ化原料のタール等100 質量部に対して50〜120 質量部の範囲とすることが好ましい。溶剤はケトンのみからなることが好ましいが、ケトンと相溶性のある溶剤を少量 (例、30 vol%以下) 混合してもよい。混合は常温で行うのが簡便であるが、加温してもよく、好ましくは攪拌下に行う。
【0027】
工程(2) における不溶物の除去手段としては、遠心分離、遠心濾過、濾過、静置重力沈降等が可能である。
工程(3) としてタール等からケトン系溶剤を除去するのは、精製したタール等の次工程での処理効率の向上のためである。また、この除去により、分離されたケトン系溶剤を工程(1) で再利用することが可能になり、工程(1) の溶剤の大部分を回収溶剤でまかなうことができる。タール等からのケトン系溶剤の除去は、通常は蒸留により行う。
【0028】
このように精製したフリーカーボンおよびトルエン不溶分の含有量の少ないタール等を 400〜600 ℃の温度で熱処理する。この熱処理中にタール等を構成する芳香族化合物の重縮合が進んで高分子化し、等方性の液相中に異方性のメソフェーズ小球体が現れ、さらに熱処理を続けると、メソフェーズ小球体が合体し、最終的に全体が異方性のメソフェーズになったバルクメソフェーズカーボンが得られる。
【0029】
バルクメソフェーズを得る際の熱処理温度が400 ℃より低いと、メソフェーズ化が不十分で、異方性が発達したバルクメソフェーズカーボンを得ることが困難となり、黒鉛化により得られた黒鉛粉末の結晶性が十分に高くならないので、放電容量が低下する。熱処理温度が600 ℃を超えると、メソフェーズ化が急激に進行するため、組織が微細で比表面積の大きな黒鉛粉末となり、充放電効率が低下する。好ましい熱処理温度は 450〜550 ℃であり、より好ましくは 450〜500 ℃である。
【0030】
熱処理はタール等が全体にメソフェーズ化するまで行う。この熱処理時間は通常は2〜12時間程度である。熱処理中に油分が揮発するので、その揮発を促進するため、例えば、減圧蒸留釜を使用して、熱処理を10〜100 Torr程度の減圧下で行うことが好ましい。大気圧で熱処理する場合には、油分の除去の促進と熱処理中の材料の酸化防止のために、窒素ガスなどの不活性ガスの流通下で熱処理を行うことが好ましい。
【0031】
上記のメソフェーズ化のための熱処理の前に、原料の精製タール等をニトロ化剤の存在下で 250〜400 ℃に加熱して重縮合させることが好ましい。この重縮合処理工程により、タール等がニトロ化を経て重縮合して分子量が大きくなる。分子量が大きくなると、上記熱処理および炭化工程での揮発分が少なくなリ、バルクメソフェーズカーボンと炭化材の収率が向上し、従って黒鉛粉末の収率が向上する。また、この重縮合処理でタール等の分子量が大きくなると、メソフェーズ化熱処理工程でのメソフェーズの成長や合体が進み易く、短時間の熱処理でバルクメソフェーズを製造することができる。
【0032】
ニトロ化剤としては、硝酸、硝酸アンモニウム、硝酸アセチル、ニトロベンゼン、ニトロトルエン、発煙硝酸、硝酸+硫酸などを使用することができる。安価で取り扱いが容易な点で、硝酸が好ましい。
【0033】
ニトロ化剤の添加量は、タール等に対して1〜6質量%の範囲とする。ニトロ化剤の添加量が1質量%未満では上記効果を顕著に得ることができず、その添加量が6質量%を超えると、重縮合が進みすぎて、バルクメソフェーズの発生が阻害されることがある。ニトロ化剤の好ましい添加量は 1.5〜5質量%である。
【0034】
ニトロ化剤の存在下での加熱温度が250 ℃より低いと、タール等の重縮合が起こりにくく、タール等に残留する硝酸またはニトロ基がメソフェーズ化にかえって悪影響を及ぼし、最終的に得られる黒鉛粉末の結晶性が低下する。この加熱温度が400 ℃を超えると、メソフェーズ化が進行してしまい、メソフェーズ化の前にタール等を重縮合させるという目的を達成することができない。従って、ニトロ化剤を添加した場合には、メソフェーズ化の前に加熱して重縮合を行う必要がある。
【0035】
炭化
上記のようにして得られたバルクメソフェーズカーボンを炭化および黒鉛化し、かつ少なくとも一回の粉砕を行うことにより黒鉛粉末を製造する。
【0036】
炭化工程は、炭素以外の元素をほぼ完全に熱分解させて除去する工程である。この炭化に必要な温度は、一般に約 700〜1100℃、好ましくは約 800〜1050℃である。例えば、炭化は、窒素雰囲気下、3〜10℃/時の昇温速度で所定の炭化温度に昇温し、この温度に3〜10時間保持することにより行うことができる。
【0037】
炭化は一般に非酸化性雰囲気中で行う。不活性ガス(例、窒素、アルゴン等に希ガス)雰囲気と還元性ガス(例、水素と不活性ガスの混合ガス)雰囲気のいずれでもよい。炭素の酸化は黒鉛化後の結晶化度の低下や比表面積の増大の原因となるため、雰囲気中の酸素、水蒸気、二酸化炭素等の酸化性ガスの濃度は極力低くすることが好ましい。
【0038】
粉砕
黒鉛化より前の段階で粉砕工程を実施して、炭化材の粉末を得る。即ち、黒鉛化した後には、粉砕を行わずに、黒鉛粉末を得ることが好ましい。それにより、黒鉛化後に、粉末表面の黒鉛C面層の端部が2層ずつ連結して閉じた閉塞構造の間隙面密度が高い黒鉛粉末を得ることができ、放電容量と充放電効率が改善される。
【0039】
粉砕は、炭化前のバルクメソフェーズカーボンに対して、炭化後の炭化材に対して、あるいはその両者に対して実施することができる。粉砕方法は、衝撃粉砕や剪断粉砕などを採用できる。使用に適した粉砕機の例として、ハンマーミル、アトリッションミル、ファインミルが挙げられる。
【0040】
粉砕は、炭化材の粉末の平均粒径が10〜50μm、より好ましくは15〜40μmの範囲内となるように行うことが好ましい。この平均粒径は、粉砕時の回転数や粉砕時間により調整することができる。必要であれば、粉砕後に分級を行って平均粒径を調整してもよい。
【0041】
樹脂被覆
炭化材の粉末を黒鉛化する前に樹脂で被覆する。この樹脂被覆により、炭化材粉末の微粉分が樹脂により造粒される、あるいは炭化材粉末にある微細な空隙または細孔に樹脂が充填され、この樹脂が炭化を経て最終的に黒鉛化されるため、比表面積が小さい黒鉛粉末が得られる。
【0042】
樹脂被覆は、炭化材の粉末と樹脂を、樹脂の軟化温度以上の温度で混練することにより行うことが好ましい。例えば、混練機に炭化材の粉末を入れ、樹脂の軟化温度より高い適当な混練温度に加熱した後、粉末樹脂を添加して、加熱を続けながら1〜3時間程度の混練を行うことができる。
【0043】
樹脂の添加量は、炭化材の粉末に対して2〜20質量%の範囲とすることが好ましい。樹脂の添加量が7〜20質量%の範囲であると、充放電効率の改善効果が大きいので、より好ましい。
【0044】
樹脂としては、炭化条件下で熱分解させた時の残炭率の大きい樹脂が好ましい。ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂も使用できるが、熱硬化性樹脂の方が一般に好ましい。適当な樹脂の例としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。樹脂の価格と残炭量を考慮すると、フェノール樹脂の使用が有利である。フェノール樹脂としては、固体樹脂であるノボラック型フェノール樹脂を使用するのがよい。ノボラック型フェノール樹脂を使用する場合、混練温度は 170〜200 ℃程度とすることが好ましい。
【0045】
樹脂を被覆した後、黒鉛化する前に、 700〜1500℃で加熱して、樹脂を炭化させてもよい。この炭化で固着が発生する場合には、黒鉛化前に解砕を行う。
黒鉛化
黒鉛化は黒鉛の層状結晶構造を発達させる工程であり、一般に2500℃以上、好ましくは2800℃以上の温度での熱処理により行われる。この黒鉛化は、雰囲気炉で実施することが好ましいが、工業的な黒鉛化炉として知られるアチソン炉により実施してもよい。
【0046】
熱処理雰囲気は、炭化と同様に非酸化性雰囲気とする。アチソン炉では、炉内に充填されている炭化材の粉末それ自体により、還元性雰囲気が炉内に保持される。
【0047】
黒鉛化温度では、水素等の還元性ガスや場合によっては窒素も炭素と反応する可能性があるため、雰囲気炉で黒鉛化を行う場合には、アルゴン等の希ガス雰囲気で黒鉛化熱処理を行うことが好ましい。
【0048】
本発明の方法により、フリーカーボン含有量とトルエン不溶分の含有量が少ないバルクメソフェーズカーボンから粉砕、炭化、樹脂被覆および黒鉛化を経て黒鉛粉末を製造するので、中心部の結晶度が高い黒鉛粉末が得られる。また、この黒鉛粉末の比表面積は、一般に1m2/g以下、好ましくは0.5 m2/g以下と小さくなる。
【0049】
本発明の方法により製造された黒鉛粉末は、黒鉛負極の理論容量にかなり近い340 mAh/g 以上という高い放電容量と、80%以上という高い充放電効率を示す。充放電効率は炭化材粉末の樹脂の添加量が増すと増大し、樹脂の添加量が7%以上となると、90%以上の高い充放電効率を得ることが可能となる。従って、本発明により、放電容量と充放電効率の良好なリチウムイオン二次電池の負極材料に最適の黒鉛粉末を安定して製造することができる。
【0050】
本発明の方法により製造された黒鉛粉末を用いて従来より公知の適当な方法で電極を作製し、リチウムイオン二次電池の負極として用いることができる。電極の作製は、一般に黒鉛粉末を適当な結着剤を用いて電極基板となる集電体上に成型することにより行われる。集電体としては、黒鉛粉末の担持性が良く、負極として使用した時に分解による溶出が起こらない任意の金属の箔 (例、電解銅箔、圧延銅箔などの銅箔) を使用することができる。
【0051】
リチウムイオン二次電池の正極、非水電解液、セパレータ、電池容器とその形状、構造などの他の要素は特に制限されず、従来より利用されてきたものと同様でよい。
【0052】
【実施例】
(1) 原料調製
フリーカーボン含有量が1.5 質量%のコールタールを蒸留して沸点270 ℃以下の軽油分を除去した。このタール100 質量部に対してアセトンを80〜90質量部混合し、室温でよく攪拌した後、発生した不溶物を濾過により除去した。濾液の蒸留によりアセトンを分離回収し、釜残として、表1に示すフリーカーボンおよびトルエン不溶分の含有量を有する精製タールを得た。
【0053】
得られた精製タールの一部については、メソフェーズ化のための熱処理を行う前に、減圧蒸留釜内で表1に示す量の濃硝酸を添加し、350 ℃で1時間加熱する、重縮合処理を行った。
【0054】
(2) バルクメソフェーズ化と粉砕
タールのメソフェーズ化は、減圧蒸留釜内で480 ℃に4時間保持する熱処理により行い、バルクメソフェーズカーボンを得た。これを冷却・固化後に釜から取り出し、高速回転衝撃式粉砕機を用い、回転数3000 rpmの条件で粉砕して、平均粒径約30μmのバルクメソフェーズカーボン粉末を得た。
【0055】
(3) 炭化
このバルクメソフェーズカーボンの粉末を雰囲気焼成炉に入れ、窒素雰囲気下、5℃/時の昇温速度で1000℃に昇温し、この温度に5時間保持することにより炭化した。
【0056】
(4) 樹脂被覆
得られた炭化材の粉末を炉冷して取り出し、混練機に入れて、180 ℃に加熱した。180 ℃まで昇温したら、表1に示す量(炭化材粉末に対する質量%)のノボラック型フェノール樹脂の粉末を添加し、加熱を続けながら2時間混練した。
【0057】
樹脂被覆した炭化材粉末を雰囲気焼成炉内で窒素雰囲気下に700 ℃で5時間加熱し、被覆樹脂を炭化した。炭化後に粉末を解砕機にかけて解砕した。
(5) 黒鉛化
樹脂被覆/炭化した炭化材の粉末をアチソン型黒鉛化炉で、10℃/時の昇温速度で3000℃に昇温し、この温度に1時間保持して黒鉛化し、黒鉛粉末を得た。
【0058】
メソフェーズ化に用いた精製タールのフリーカーボンおよびトルエン不溶分の含有量、タールの重縮合処理における硝酸の添加量、ならびに黒鉛化で得られた黒鉛粉末の比表面積、c軸(002) 方向の結晶面間隔d002 、および結晶子の厚みLcの測定結果を表1にまとめて示す。表1には、製造された各黒鉛粉末の放電容量と充放電効率の測定結果も併記する。以上の測定方法は次の通りである。
【0059】
[フリーカーボン含有量]
精製タール中のキノリン不溶分含有量(QI)をJIS K2425 に従って測定し、このQI値をフリーカーボン含有量とした。具体的には、所定量のタールにその50倍の質量のキノリンを混合し、75℃の温度で30分間攪拌した後、濾過して不溶分を分取した。この不溶分の乾燥質量を秤量し、最初のタール質量に対する割合 (%) としてQIを算出した。
【0060】
[トルエン不溶分含有量]
上記方法においてキノリンのかわりにトルエンを使用した以外は同様にして、トルエン不溶分含有量を求めた。
【0061】
[比表面積]
黒鉛粉末の比表面積をN2置換法によるBET1点測定法により測定した。
[c軸結晶面間隔d002]
黒鉛粉末のX線回折図から、ディフラクトメータの誤差を補正した後、最小二乗法による格子定数精密測定法 (内部標準は使用せず) により算出した。X線回折図の面指数(002), (004), (110), (006)のピーク位置を利用した。3回のX線回折測定を行い、得られた値の加重平均をとりd002 の値とした。
【0062】
[結晶子の厚み]
結晶子の厚みLcは、マックサイエンス社製X線回折装置を用いて、加速電圧40 kV 、電流150 mA、測定範囲20〜90°の条件で測定した粉末法X線回折図の002 回折ピークを、わが国の炭素学会で規定された学振法に基づいて解析することにより求めた値である。
【0063】
[放電容量と充放電効率]
負極特性の評価は、対極、参照極に金属リチウムを用いた3極式定電流充放電試験により行った。電解液には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの体積比1:1の混合溶媒に1M濃度でLiCl4 を溶解した非水溶液を使用した。0.3 mA/cm2の電流密度でLi参照極に対して0.0 V まで充電して負極中にLiを格納した後、同じ電流密度でLi参照極に対して1.50 Vまで放電 (Liイオンの放出) を行う充放電試験を行い、放電容量を求めた。また、その際の充電に要した電気量に対する放電時の電気量の割合(%) として充放電効率を算出した。
【0064】
【表1】
Figure 0003646689
【0065】
表1からわかるように、本発明に従って炭化材の粉末を樹脂被覆してから黒鉛化することにより製造した黒鉛粉末は、樹脂被覆しなかった比較例の黒鉛粉末や、ピッチを被覆した比較例の黒鉛粉末に比べ、放電容量と充放電効率がいずれも非常に高い値を示した。
【0066】
この樹脂被覆による効果は、ピッチを被覆した場合には得ることができない。ピッチを被覆した場合には、表1からわかるように、比表面積は小さくなるものの、放電容量と充放電効率の向上はごくわずかにとどまった。
【0067】
本発明により、放電容量と充放電効率の高い黒鉛粉末を製造することができ、リチウムイオン二次電池の負極材料として好適な黒鉛粉末を比較的安価に製造することが可能となる。
【0068】
表1から、樹脂の添加量が7質量%以上となると、充放電効率が90%以上と、さらに改善されることがわかる。しかし、樹脂の添加量が20質量%を超えると、被覆後の炭化工程で樹脂が固着して解砕不能になり、黒鉛化することができなかった。
【0069】
【発明の効果】
本発明により340 mAh/g 以上という高い放電容量と、80%以上、好ましくは90%以上という高い充放電効率を示すリチウムイオン二次電池の負極材料に最適の黒鉛粉末を安定して製造することが可能となる。従って、本発明はリチウムイオン二次電池の高性能化に貢献する。

Claims (3)

  1. バルクメソフェーズカーボンを炭化し、得られた炭化材の粉末を黒鉛化することによるリチウムイオン二次電池負極用の黒鉛粉末の製造方法であって、
    前記バルクメソフェーズカーボンが、フリーカーボン含有量0.1 質量%以下、トルエン不溶分含有量5質量%以下のタールおよび/またはピッチを 400〜600 ℃の温度範囲で熱処理することにより得たものであり、
    前記炭化材の粉末を、黒鉛化の前に、樹脂で被覆することを特徴とする方法。
  2. 前記タールおよび/またはピッチを熱処理してバルクメソフェーズカーボンを得る前に、このタールおよび/またはピッチをニトロ化剤1〜6質量%の存在下で 250〜4OO ℃の温度に加熱して重縮合させることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 炭化材粉末の樹脂による被覆を、炭化材粉末にその2〜20質量%の量の樹脂を添加し、樹脂の軟化温度以上で混練することにより行うことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
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