JP3698181B2 - リチウムイオン二次電池の負極材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、黒鉛質炭素粉末からなるリチウムイオン二次電池の負極材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯用の小型電気・電子機器の普及に伴い、Ni−水素電池やリチウム電池といった新型の二次電池の開発が盛んになってきている。
【0003】
リチウム電池は、リチウムを負極活物質とし、非水溶液を電解液とする電池である。リチウムが非常に卑な金属であるため、大電圧を取り出すことができ、エネルギー密度の高い電池となることから、一次電池としては既に大量に使用されている。しかし、リチウム電池を二次電池化すると、充放電の繰り返しによって負極のリチウムがデンドライト状に成長し、正極と短絡するようになるため、充放電繰り返しのサイクル寿命が短いという欠点があった。
【0004】
そこで、負極活物質に炭化または黒鉛化した炭素を使用し、リチウムイオンを含有する非水溶液を電解液とする、リチウムイオン二次電池が提案された。リチウムイオン二次電池では、炭素内に電解液からのリチウムイオンが、ドーピング、吸蔵、挿入 (インターカレーション) 等によって取り込まれることにより、負極として機能すると考えられている。即ち、炭素へのリチウムイオンの取り込みと放出により充電と放電が起こるが、電極反応機構は現時点では十分には解明されていない。この種の負極は一般に、炭素粉末を少量の結着剤と混合して成形することにより製造される(例、特開昭62−90863 号、特開平5−290848号公報参照) 。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
リチウムイオン二次電池負極用の黒鉛質炭素粉末には、比表面積が小さく、結晶性が高いことが求められる。この粉末の表面には、電解液やリチウム等からなる、放電に寄与しない不動態皮膜が形成されるが、比表面積が大きいほど、この不動態皮膜が生成量が大きくなり、電解液やリチウムの利用効率が悪くなる。一方、黒鉛の結晶性が高いと、黒鉛の層間への規則的な挿入により、例えばLiC6の形で取り込まれるリチウムイオンの量が多くなり、放電容量が大きくなる。また、電解液やリチウムの利用効率も高くなると言われている。
【0006】
黒鉛質炭素粉末の一般的な製造法は、天然黒鉛やコークスの黒鉛化処理で得られる人造黒鉛を粉砕し、所定の粒度に調整する方法である。しかし、この方法では、黒鉛が層状物質であって、へき開性が大きいため、粉末が偏平な形状となり易く、粉砕時に鋭角的な破面が生成するため、比表面積は通常5m2/g以上の大きな値となる。
【0007】
比表面積の小さな炭素粉末の前駆体として、ピッチの加熱過程で生ずる光学異方性の球形粒子であるメソフェーズ小球体がある。このメソフェーズ小球体をピッチから分離し、焼成して炭化または黒鉛化することにより得た炭素粉末を、リチウムイオン二次電池の負極に使用することも知られている (特開平4−115458号、特開平5−234584号、特開平5−307958号各公報参照) 。
【0008】
メソフェーズ小球体は、リチウムイオン二次電池の負極製造に適した数〜数十μm程度の粒径を持ち、しかも粒径が比較的そろっているため、粉砕せずに、そのまま焼成して炭化または黒鉛化すればよい。しかし、ピッチから分離したメソフェーズ小球体は溶融性があり、これをそのまま焼成すると、炭化時に溶融して粒子が融着し、小球体の形状が失われるため、通常は溶融性を低下させる目的で、焼成の前に空気中での熱処理等による表面の酸化処理を行う必要がある (特開平5−234584号公報参照) 。
【0009】
なお、メソフェーズ小球体は、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)なる名称で市販されているが、これは、ピッチから溶剤抽出や沈降分離などの手法で分離したメソフェーズ小球体を酸化処理して、溶融性を低下させ、流動性と取扱い性を改善したものである。従って、この市販のメソフェーズ小球体は、一般に既に酸化処理を受けている。
【0010】
ところが、この焼成前の酸化処理により、炭素中の三次元的な架橋結合の量が増加するため、焼成によりメソフェーズ小球体を黒鉛化する場合には、得られた黒鉛化炭素粉末の結晶性が低下する。架橋結合は、層状の黒鉛結晶の生成を妨げるからである。そのため、メソフェーズ小球体を焼成する方法では、結晶性の良好な黒鉛化炭素粉末は得られない。
【0011】
また、メソフェーズ小球体内の黒鉛層面は互いに完全に平行ではなく、層面の縁部が球の表面に対して垂直な (即ち、層間距離が中心では狭く、外周に向かって広がった) ゆがんだ結晶構造をとる。これらの点から、メソフェーズ小球体の黒鉛化後の結晶性はあまり良好でなく、メソフェーズ小球体を焼成して得た黒鉛化炭素粉末を使用しても、放電容量が十分に高いリチウムイオン二次電池を得ることができない。
【0012】
特開平5−74452 号公報には、比表面積が比較的大きな炭素質材料と、比表面積が比較的小さな小球状の炭素質材料 (例、メソフェーズ小球体または球状フェノール樹脂を焼成したもの) との混合物を負極材料とするリチウムイオン二次電池が記載されている。この場合にも、比表面積の小さい炭素粉末は、メソフェーズ小球体を焼成して得られるような小球体状の粉末を利用しており、上記と同様の問題点がある。
【0013】
本発明の目的は、電解液やリチウムの利用効率が高く、放電用量の大きいリチウムイオン二次電池を作製することができる、結晶性が高く、比表面積が小さい黒鉛質炭素粉末からなるリチウムイオン二次電池用負極材料を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明により、バルクメソフェーズを粉砕した粉末の焼成により得られた黒鉛質炭素粉末であって、比表面積が1m2/g以下、層間距離d002 が3.362 Å以下であり、その製造工程で不融化のための酸化熱処理を受けていない、非球形の黒鉛質炭素粉末からなる、リチウムイオン二次電池用負極材料が提供される。ここで、層間距離d002 は、学振法によるX線回折で測定した002 面の層間距離である。比表面積は、BET法により求めた値である。
【0015】
上記の黒鉛質炭素粉末は、タールおよび/またはピッチを 430〜520 ℃で熱処理して、光学異方性ミクロ組織を持ち、溶融性試験での粉末残量が5重量%以下のバルクメソフェーズを調製し、これを粉砕した後、そのまま非酸化性雰囲気中で焼成して黒鉛化することにより製造することができる。
【0016】
この製造方法においては、黒鉛の結晶性を高くするため、焼成原料として、メソフェーズ小球体ではなく、バルクメソフェーズを使用する。
タールやピッチを加熱しながら偏光顕微鏡で観察すると、溶融により液状化した後、液相中にまず光学異方性の球形粒子 (メソフェーズ小球体) が現れる。この状態では、光学異方性物質の量は重量で数%〜数十%程度である。さらに加熱を続けると、メソフェーズ小球体の量が増加し、それらが接触して合体する。この合体が進むと全体が光学的異方性になる。この全体が光学的異方性になった状態がバルクメソフェーズ (メソフェーズピッチともいう) である。従って、バルクメソフェーズは、メソフェーズ小球体より大量に得られ、かつメソフェーズ小球体で必要であった、溶剤抽出等による液相からの分離工程が不要であるため、メソフェーズ小球体より安価である。
【0017】
まず、原料のタールやピッチを特定の温度範囲で熱処理して、実質的に全体が光学異方性ミクロ組織からなり、実質的な溶融性を持たないバルクメソフェーズを生成させる。このバルクメソフェーズを粉砕し、そのまま非酸化性雰囲気で焼成し、焼成中には粉砕を一切せずに炭化および黒鉛化させると、結晶性が高く、かつ比表面積の小さい、即ち、層間距離d002 が3.362 Å以下で、比表面積が1m2/g以下の非球形の黒鉛質の炭素粉末が得られる。
【0018】
バルクメソフェーズの溶融性を評価するための溶融性試験は、粉砕後に100 メッシュのフルイを通過させたバルクメソフェーズの粉末試料 (粒径約 150μm以下) を蓋付きのルツボに入れ、不活性ガス雰囲気 (例、窒素またはアルゴン) 中で100 ℃/hrの昇温速度にて1000℃まで加熱して炭化させることにより行う。冷却後、得られた炭化物を32メッシュ (粒径約500 μm) のフルイに薬さじを用いて軽くこすりつけ、フルイ目を通らない (フルイ上に残った) 粉末の重量 (粉末残量) を測定する。
【0019】
溶融性試験で、炭化後に用いるフルイを32メッシュと、炭化前より目の大きいものにするのは、1000℃の加熱により炭化する間に粒子の変形や弱い凝着のために、元の100 メッシュのフルイを通過しないものがかなり生ずる可能性があるためである。バルクメソフェーズに実質的な溶融性が残っていると、1000℃まで加熱する間に、粉末粒子が凝着して、数mm以上といった大きな塊状物になるため、32メッシュのフルイでも通過しなくなるので、上記試験によりバルクメソフェーズの溶融性を評価できる。
【0020】
上記製造方法では、この溶融性試験法により測定した粉末残量が5重量%以下となる、実質的な溶融性を持たないバルクメソフェーズが生成するように、熱処理を行う。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料に用いる黒鉛質炭素粉末とその製造方法について詳しく説明する。
原料は、タール、またはタールの蒸留残渣であるピッチ、或いはその両者である。原料としては、芳香族分に富むコールタールまたはコールタールピッチが好ましいが、石油系のものも使用できる。この原料を 430〜520 ℃で、油分 (揮発分) を除去しながら熱処理して、炭素前駆体であるバルクメソフェーズを生成させる。熱処理は、少量の酸 (例、硝酸) の存在下に実施してもよい。
【0022】
熱処理は、油分の除去とバルクメソフェーズ化を促進するため、10〜100 torr程度の減圧下で行うことが好ましい。従って、熱処理は、例えば、減圧蒸留装置などを利用して行うことができる。熱処理を大気圧で行う場合には、油分の除去を促進し、かつ熱処理中の酸化を防止するため、窒素ガスなどの不活性ガスの流通下で熱処理を行うことが好ましい。
【0023】
この熱処理により、タールまたはピッチ中の芳香族化合物が重合し、前述したように、メソフェーズ小球体を経て、光学異方性ミクロ組織を持ったバルクメソフェーズが生成する。光学異方性ミクロ組織は偏光顕微鏡により確認することができる。タールまたはピッチをそのまま上記のように熱処理すれば、発生または流通するガス流れに沿って1方向に配向した流れ構造を持つミクロ組織のバルクメソフェーズが得られる。一方、熱処理を少量の硝酸の存在下で行った場合には、モザイク模様の光学異方性ミクロ組織を持ったバルクメソフェーズが生成する。ミクロ組織が光学異方性であればこのいずれの模様のものでもよいが、1方向の流れ模様のものの方が好ましい。
【0024】
熱処理は、実質的に溶融性を持たない (即ち、前述した溶融性試験での粉末残量が5重量%以下の) のバルクメソフェーズが得られるまで続ける。そのためには、熱処理時の温度や減圧度によっても異なるが、一般には数十分から数十時間までの熱処理時間が必要であり、十分な減圧下または不活性ガス流通下では数時間以内に熱処理が完了する。
【0025】
バルクメソフェーズの溶融性が実質的に残っていると、熱処理後に粉砕してから焼成する際の昇温過程で、粉末が再び溶融して融着し、粉末形状が崩れるため、焼成の途中で再度粉砕してから焼成を続ける(例えば、炭化終了後に粉砕してから黒鉛化処理を行う)ことが必要になり、比表面積の大きな炭素粉末しか得られない。
【0026】
熱処理温度が430 ℃より低いと、減圧度を高めても、実質的に溶融性を持たないバルクメソフェーズを得ることが困難となる。熱処理温度が520 ℃より高くなると、後で詳しく説明するように、黒鉛化後に得られた炭素粉末の比表面積が大きくなる。好ましい熱処理温度は 450〜520 ℃、より好ましくは 460〜500 ℃である。
【0027】
得られた溶融性を実質的に持たないバルクメソフェーズを、リチウムイオン二次電池の負極製造に適した所定の粒径に粉砕する。適当な粒径は、電池の構成に応じて変動するが、通常は平均粒径で数μm〜50μm程度である。粉砕は、ハンマーミル、ファインミル、アトリションミル、ボールミルなどの慣用の微粉砕機を用いて実施すればよい。粉砕後、必要により分級して粒径を揃えてもよい。
【0028】
粉砕により得られたバルクメソフェーズの粉末を、そのまま非酸化性雰囲気中で焼成して、黒鉛化する。この焼成は従来の黒鉛化と同様に行うことができ、周知のように、一般には炭化 (炭素化) と黒鉛化の2段階で行われる。
【0029】
この焼成の前に、従来のメソフェーズ小球体で行われているような、焼成中の粉末の融着を防止するための酸化処理は行わない。焼成原料として用いるメソフェーズ粉末が、溶融性を実質的に持っておらず、焼成の昇温過程で粉末の溶融による融着がほとんど起こらないため、粉砕で得た粉末を直接、非酸化性雰囲気中で焼成することが可能となる。その結果、酸化処理に伴う、黒鉛化後の結晶性の低下が避けられる。
【0030】
また、バルクメソフェーズを得るための熱処理温度が520 ℃以下であり、これを粉砕した後、焼成することにより、比表面積の小さな炭素粉末が得られる。これは、焼成される粉末が、520 ℃より高温での熱処理を受けていないため、炭化・黒鉛化時の収縮が比較的大きく、この収縮により粉末表面の開気孔が閉気孔になり、或いは粉砕で生成した表面が軟化変形して平滑化して、比表面積が縮小するためである。
【0031】
520 ℃より高温で熱処理してから、粉砕し、焼成した場合には、粉砕で生成した比表面積の大きな破面がそのまま残り易く、上記の収縮や平滑化による比表面積の縮小効果が小さくなる。また、特開平5−290848号に記載されているように、バルクメソフェーズを炭化処理してから粉砕した粉末を使用した場合も、この比表面積の縮小効果は小さくなる。従って、520 ℃以下での熱処理によりバルクメソフェーズを生成させ、所定粒径に粉砕した後は、いっさい粉砕を行うことなく、炭化および黒鉛化のための焼成を行うことが、比表面積の小さな炭素粉末を得るのに重要である。
【0032】
炭化時の焼成雰囲気は、不活性ガス (例、アルゴンなどの希ガス、窒素等) と還元性ガス (例、水素または水素+不活性ガス) のいずれの雰囲気でもよい。炭化時の焼成雰囲気が酸化性であると、炭素が部分的に酸化され、黒鉛化後の結晶性の低下や比表面積の増大の原因となる。従って、焼成雰囲気中の酸素、水蒸気、二酸化炭素等の酸化性ガスの濃度は極力低くすべきである。
【0033】
炭化時の昇温速度は、数℃/min 程度以下とすることが好ましい。この時の昇温速度が極端に大きいと (例えば、流動床等で加熱する場合のように数百℃/min であると) 、炭素が発泡し、低密度化、高比表面積化する。この炭化段階では、通常は 700〜1100℃の範囲内の温度に加熱し、この温度に1〜10時間程度保持する。
【0034】
得られた炭化粉を黒鉛化炉で、黒鉛化に必要な温度、通常は2500℃以上、好ましくは2800℃以上に加熱して、黒鉛化処理する。黒鉛化の昇温速度や雰囲気は、炭化とほぼ同様でよいが、黒鉛化温度では、水素等の還元性ガスや、場合によっては窒素も炭素と反応する可能性があるので、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気が好ましい。
【0035】
この製造方法において、焼成原料が520 ℃より高温に加熱された後は、炭化後と黒鉛化後のいずれにおいても、粉末の粒径が変化するような粉砕処理は行わない。この理由は、前述したように、520 ℃より高温に加熱した後で粉砕処理を行うと、比表面積の縮小効果が得られないか、或いは比表面積が増大するからである。
【0036】
なお、炭化後または黒鉛化後に粉末が軽く凝着した状態となることがあるが、このような凝着粉を、フルイを強制的に通したり、混合機で混合したりする等の方法で解砕する処理は、比表面積に対する影響が非常に小さいので行ってもかまわない。
【0037】
上記方法で製造できる本発明の黒鉛質炭素粉末は、バルクメソフェーズを酸化処理を行うことなく黒鉛化処理したため、d002 が3.362 Å以下という高い結晶性を有し、また520 ℃に加熱される前に粉砕した後そのまま焼成したため、炭化、黒鉛化過程で閉気孔化や破面の平滑化が起こり、比表面積が1m2/g以下と小さくなる。従って、この炭素粉末を負極活物質としてリチウムイオン二次電池を構築すると、電解液やリチウムの利用効率が高く、放電容量が大きい電池が得られる。
【0038】
また、バルクメソフェーズを粉砕したものが焼成原料であったため、粉末の粒子形態が、メソフェーズ小球体を焼成したものとは異なり、非球形である。非球形粒子の方が、球形粒子より密に充填し易く、負極の炭素粉末の充填密度が高くなり、従って体積当たりの電池容量が高くなる。また、原料のバルクメソフェーズは、メソフェーズ小球体より安価かつ大量に製造できるため、メソフェーズ小球体を原料とする場合より負極の製造コストが著しく低下する。さらに、メソフェーズ小球体はまだ溶融性が残っているため、一般に酸化処理してから使用するので、結晶性の良好な黒鉛化炭素粉末が得られないが、上記の方法ではバルクメソフェーズを酸化処理せずに使用するため、結晶性も良好である。
【0039】
【実施例】
実施例1
コールタールを減圧蒸留装置にて50torrの減圧下480 ℃に4時間加熱して、バルクメソフェーズを得た。得られたバルクメソフェーズを偏光顕微鏡により観察したところ、流れ構造の100 %光学異方性のミクロ組織を持っていた。このバルクメソフェーズの試料を、微粉砕用ハンマーミル (不二パウダル製Uマイザー) で粉砕羽根の回転数12,000 rpmで粉砕し、100 メッシュのフルイを通過した粉末を用いて、前述した溶融性試験 (加熱雰囲気:窒素) により調べたところ、32メッシュのフルイ上の粉末残量は0重量%であった。
【0040】
このバルクメソフェーズの一部を、窒素雰囲気下の加熱炉にて、10℃/hrの昇温速度で、500 ℃、520 ℃、550 ℃、700 ℃または1000℃に加熱した。さらに、1000℃に加熱した材料の一部をアルゴン雰囲気下の黒鉛化炉に移し、10℃/min の昇温速度で2800℃に加熱した。
【0041】
これらの材料 (バルクメソフェーズおよびその1000℃までの加熱試料) を、上記ハンマーミルを用いて回転数12,000 rpmで粉砕した。得られた粉末を150 メッシュ (約100 μm) のフルイで分級し、このフルイを通過した粉末の平均粒径をレーザー散乱法で測定した。分級した粉末を、アルゴン雰囲気下の黒鉛化炉で10℃/min の昇温速度で2800℃に加熱し、2800℃に30分間保持して黒鉛化した。
【0042】
得られた黒鉛化炭素粉末を、まず32メッシュ (約500 μm) のフルイで、薬サジを軽くこすりつけて分級し、このフルイを通過した粉末を次いで150 メッシュ (約100 μm) のフルイで分級した。150 メッシュのフルイを通過した粉末の平均粒径 (レーザー散乱法) 、比表面積 (窒素吸着法) 、および層間距離d002(X線回折、学振法) を測定した。結果を分級結果と共に表1に示す。なお、これらの炭素粉末は、いずれも不規則形状の非球形粉末であった。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から、バルクメソフェーズを粉砕する前の加熱温度が520 ℃以下であれば、比表面積の小さい炭素粉末が得られることがわかる。また、粉砕前の加熱温度が520 ℃以下でも、バルクメソフェーズが溶融性を実質的に持っていなければ、粉砕後の黒鉛化処理中に粉末の融着による平均粒径の増大が実質的に起こらないことがわかる。
これに対し、粉砕前に520 ℃より高温に加熱されていると、粉砕後の焼成中に再度粉砕を行わなくても、比表面積の大きな炭素粉末しか得られず、特に2800℃に加熱して黒鉛化してから粉砕した場合には、比表面積が非常に大きな炭素粉末となった。
【0045】
実施例2
実施例1と同じ装置にコールタールを仕込み、装置内の上部空間に窒素ガスを吹き込んで酸化を防止しながら液温を500 ℃に保持することによって、大気圧下で6時間処理した。得られたバルクメソフェーズは、100 %光学的異方性で流れ構造のミクロ組織を有しており、溶融性試験での粉末残量は0%であった。
【0046】
このバルクメソフェーズを、実施例1で用いたハンマーミルで6,000 rpm にて粉砕し、150 メッシュのフルイで分級して平均粒径35.0μmの粉末を得た。このバルクメソフェーズの粉末をアルゴン雰囲気中の加熱炉で200 ℃/hrで700 ℃まで昇温させて炭化し、この温度に2間保持した後、黒鉛化炉に移してアルゴン雰囲気中で10℃/min の昇温速度で3000℃まで昇温させ、この温度に30分間保持して、黒鉛化炭素粉末を得た。
この炭素粉末は500 μm超が0%、100 μm以下が100 %であり、平均粒径は34.7μm、比表面積は0.5 m2/g、d002 は3.3570Åであった。この粉末は、非球形の不規則形状を有していた。
【0047】
比較例1
熱処理温度を410 ℃に低下させた以外は実施例1と同様にコールタールを熱処理した。得られたバルクメソフェーズは、偏光顕微鏡観察では、100 %光学異方性で、そのミクロ組織は流れ構造であったが、溶融性試験での粉末残量は98重量%であり、実質的な溶融性が残っていた。
【0048】
実施例2と同様にして、このバルクメソフェーズを粉砕および分級し、得られた平均粒径36.2μmの粉末を炭化および黒鉛化した。炭化中に粉末が融着したため、黒鉛化後に得られた炭素粉末を上と同様に粉砕および分級した。
こうして黒鉛化後に再粉砕した炭素粉末は、500 μm超が0%、100 μm以下が100 %であり、平均粒径が32.8μm、比表面積が5.4 m2/g、d002 が3.358 Åの不規則形状の粉末であった。また、炭化終了時に粉砕してから黒鉛化した場合には、500 μm超が %、100 μm以下が100 %であり、炭素粉末の平均粒径は34.0μm、比表面積は1.8 m2/g、d002 は3.3581Åとなった。
【0049】
粉砕前の熱処理温度が520 ℃以下でも、粉砕に供したバルクメソフェーズが溶融性を持っていると、粉末が炭化中に融着し、再度粉砕してから黒鉛化する必要があるため、得られた炭素粉末の比表面積は非常に大きくなり、この場合も黒鉛化してから粉砕した方が比表面積はさらに大きくなった。
【0050】
比較例2
市販のメソフェーズ小球体 (メソカーボンマイクロビーズ、平均粒径25μm) を焼成原料として使用した。このメソフェーズ小球体は既に酸化処理を受けており、溶融性試験での粉末残量は0重量%であった。これを実施例2と同様にして炭化および黒鉛化した。
【0051】
得られた黒鉛化炭素粉末を、実施例1と同様に、まず32メッシュのフルイ、次に150 メッシュのフルイで分級した。500 μm超の粉末は0%で、100 μm以下の粉末は100 %であった。この粉末の平均粒径は25μm、比表面積は0.6 m2/g、d002 は3.365 Åであった。また、顕微鏡観察の結果、その黒鉛結晶組織は上述したメソフェーズ小球体に典型的な組織であり、粉末形状は球形であった。
【0052】
メソフェーズ小球体は、酸化処理を受けているため、炭化および黒鉛化時の粉末の融着は非常に起こりにくく、焼成後もその球形の粒子形状をよく維持しているため、得られた炭素粉末の比表面積は小さいが、その黒鉛結晶性 (d002)に劣ることがわかる。
【0053】
【発明の効果】
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料は、結晶性が高く、比表面積が小さい黒鉛質炭素粉末から構成されるため、高い放電容量と小さな不可逆容量を持ち、リチウムと電解液の利用効率の高いリチウムイオン二次電池を作製することができるものと期待される。また、この黒鉛質炭素粉末は、メソフェーズ小球体に比べて安価な材料であるバルクメソフェーズを原料として製造できるので、本発明の負極材料は経済性にも優れている。
Claims (2)
- バルクメソフェーズを粉砕した粉末の焼成により得られた黒鉛質炭素粉末であって、比表面積が1m2/g以下、層間距離d002 が3.362 Å以下であり、その製造工程で不融化のための酸化熱処理を受けていない、非球形の黒鉛質炭素粉末からなる、リチウムイオン二次電池用負極材料。
- 前記バルクメソフェーズが、下記溶融性試験での粉末残量が5重量%以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
溶融性試験での粉末残量: 100 メッシュのフルイを通過させたバルクメソフェーズの粉末を不活性ガス雰囲気中で 100 ℃/ hr の昇温速度にて 1000 ℃まで加熱し、加熱した粉末のうち 32 メッシュのフルイ目を通らない粉末の重量%。
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JP32421096A JP3698181B2 (ja) | 1996-12-04 | 1996-12-04 | リチウムイオン二次電池の負極材料 |
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