JP3729243B2 - ゴルフボール用材料及びゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱安定性、流動性、成形性が良好で、反発性に優れる高性能のゴルフボールを得ることができる高中和アイオノマー樹脂を用いたゴルフボール用材料及び該ゴルフボール用材料にて形成されたゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年より、ゴルフボールのカバー材にはアイオノマー樹脂が広く用いられている。アイオノマー樹脂は、エチレン等のオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸あるいはマレイン酸のような不飽和カルボン酸からなるイオン性共重合体の酸性基を、部分的にナトリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム等の金属イオンで中和したものであり、耐久性、反発性、耐擦過傷性などの面で優れた性質を有し、ゴルフボールカバー材のベース樹脂として好適なものである。
【0003】
現在、アイオノマー樹脂は、カバー材樹脂の主流を占めており、上記特性が付与されたゴルフボールが製造されているが、ユーザーからは、常に高反発で飛行特性の優れたゴルフボールが求められている。
【0004】
このような改良の一例として、アイオノマーカバー材のコスト性、反発性を改善するために、アイオノマー樹脂に多量の金属せっけんを添加したカバー材(USP5312857,USP5306760,WO98/46671)が提案されており、従来のアイオノマーカバーゴルフボールと比較して反発性の増大化を図っている。
【0005】
しかしながら、このカバー材は、アイオノマー樹脂に多量の金属せっけんを添加するため、射出成形時に金属せっけんの分解により生じる脂肪酸が気化して多量のガスが発生するという問題がある。このように射出成形時に多量のガスが発生すると、成形不良を生じるばかりでなく、成形物の表面に付着したガス成分により成形物の塗装性が著しく低くなるという欠点がある。また、アイオノマー樹脂に多量の金属せっけんを添加したこれらのカバー材は、金属せっけんの添加で同硬度のアイオノマーと比較して同程度か若干の反発性の向上はみられるものの、著しい反発性の向上には至らない上、金属せっけんの種類によっては、成形性、反発性を著しく損なう可能性があり、実用レベルからは程遠いという問題を有するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、熱安定性、流動性、成形性が良好で、反発性に優れたゴルフボールを得ることができる高中和アイオノマー樹脂を配合してなるゴルフボール用材料及び該ゴルフボール用材料を用いたゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明は、上記目的を達成するため、下記のゴルフボール用材料の製造方法を提供する。
〔請求項1〕 メルトインデックスが1.0dg/min以上の加熱混合物であるゴルフボール用材料を製造する方法であって、
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体100質量部、
(b)分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体5〜80質量部、
(c)上記(a)、(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物0.1〜10質量部、
を混合するゴルフボール用材料の製造方法であり、前記塩基性無機金属化合物を酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び炭酸リチウムよりなる群から選択し、前記(a)、(b)成分を(c)成分により中和することを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
〔請求項2〕 メルトインデックスが1.0dg/min以上の加熱混合物であるゴルフボール用材料を製造する方法であって、
(d)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属イオン中和物及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体の金属イオン中和物100質量部、
(b)分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体5〜80質量部、
(c)上記(d)、(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物0.1〜10質量部
を混合するゴルフボール用材料の製造方法であり、前記塩基性無機金属化合物を酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び炭酸リチウムよりなる群から選択し、前記(d)、(b)成分を(c)成分により中和することを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
〔請求項3〕 メルトインデックスが1.0dg/min以上の加熱混合物であるゴルフボール用材料を製造する方法であって、
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体と(d)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属イオン中和物及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体の金属イオン中和物との混合物100質量部、
(b)分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体5〜80質量部、
(c)上記(a)、(d)、(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物0.1〜10質量部
を混合するゴルフボール用材料の製造方法であり、前記塩基性無機金属化合物を酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び炭酸リチウムよりなる群から選択し、前記(a)、(d)、(b)成分を(c)成分により中和することを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
〔請求項4〕 (b)成分の脂肪酸又はその誘導体の1分子中に含まれる炭素原子数が18以上80以下である請求項1,2又は3記載のゴルフボール用材料の製造方法。
〔請求項5〕 加熱混合物の赤外線吸収測定における1690〜1710cm-1に検出されるカルボニル伸縮振動に帰属する吸収ピークの吸光度に対する1530〜1630cm-1に検出されるカルボキシラートアニオン伸縮振動に帰属する吸収ピークの相対吸光度が1.5以上である請求項1乃至4のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
〔請求項6〕 加熱混合物の熱重量測定において、25℃における重量を基準とする250℃における減量率が2質量%以下である請求項1乃至5のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
〔請求項7〕 加熱混合物中の酸基の70モル%以上が金属イオンで中和されたものである請求項1乃至6のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
〔請求項8〕 加熱混合物中の酸基を中和した金属イオンが亜鉛イオンと、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとを含む請求項7記載のゴルフボール用材料の製造方法。
〔請求項9〕 亜鉛イオンと、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとのモル比が10:90〜90:10である請求項8記載のゴルフボール用材料の製造方法。
〔請求項10〕 各材料を混合する際の加熱温度が150〜250℃である請求項1乃至9のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【0008】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明のゴルフボール用材料は、(a)成分としてオレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体、(d)成分としてオレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体の金属イオン中和物のいずれかを単独で又は上記(a)成分と(d)成分とを併用配合するものである。
【0009】
ここで、上記(a)成分中のオレフィンは、通常炭素数2以上、上限として8以下、特に6以下のものが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等が挙げられ、特にエチレンであることが好ましい。
【0010】
また、不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。
【0011】
更に、不飽和カルボン酸エステルとしては、上述した不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルが好適で、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n−アクリル酸ブチル、i−アクリル酸ブチル)であることが好ましい。
【0012】
本発明の(a)成分のランダム共重合体は、上記成分を公知の方法に従ってランダム共重合させることにより得ることができる。ここで、ランダム共重合体中に含まれる不飽和カルボン酸の含量(酸含量)は、通常2質量%(重量%と同義、以下同じ)以上、好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、上限としては25質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であることが推奨される。酸含量が少ないと反発性が低下する可能性があり、多いと加工性が低下する可能性がある。
【0013】
本発明の(d)成分のランダム共重合体の中和物は、上記ランダム共重合体中の酸基を部分的に金属イオンで中和することによって得ることができる。ここで、酸基を中和する金属イオンとしては、例えば、Na+、K+、Li+、Zn++、Cu++、Mg++、Ca++、Co++、Ni++、Pb++等が挙げられるが、好ましくはNa+、Li+、Zn++、Mg++等が好適に用いられ、更に好ましくはZn++であることが推奨される。これら金属イオンのランダム共重合体の中和度は特に限定されるものではない。このような中和物は公知の方法で得ることができ、例えば、上記ランダム共重合体に対して、上記金属イオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物及びアルコキシド等の化合物を使用して導入することができる。
【0014】
本発明の(a)成分のランダム共重合体としては、例えば、ニュクレルAN4311、同AN4318、同1560(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)等が、また(d)成分のランダム共重合体の中和物としては、例えば、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同1855、同1856、同AM7316(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン6320、同7930、同8120(いずれもデュポン社製)等が挙げられ、特に、亜鉛中和型アイオノマー樹脂(ハイミランAM7316等)を好適に使用できる。
【0015】
本発明は、ベース樹脂として上記(a)成分のランダム共重合体及び/又は上記(d)成分の中和物を1種を単独で又は両成分を併用配合して使用することができるが、両成分を併用配合する場合の配合比は特に制限されるものではない。
【0016】
本発明の(b)成分は、分子量280以上の脂肪酸又はその脂肪酸誘導体であり、加熱混合物の流動性向上に寄与する成分で、上記(a)成分の熱可塑性樹脂と比較して分子量が極めて小さく、混合物の溶融粘度の著しい増加に寄与するものである。また、本発明の脂肪酸(誘導体)は、分子量が280以上で高含量の酸基(誘導体)を含むため、添加による反発性の損失が少ないものである。
【0017】
本発明で用いる(b)成分の脂肪酸又はその脂肪酸誘導体は、アルキル基中に二重結合又は三重結合を含む不飽和脂肪酸(誘導体)であっても、アルキル基中の結合が単結合のみにより構成される飽和脂肪酸(誘導体)であってもよいが、1分子中の炭素数は、通常18以上、上限として80以下、特に40以下であることが推奨される。炭素数が少ないと、本発明の目的である耐熱性の改善が達成できないばかりでなく、酸基の含量が多すぎてベース樹脂に含まれる酸基との相互作用により流動性の改善の効果を少なくする場合がある。一方、炭素数が多い場合には、分子量が大きくなるため流動性改質の効果を少なくする可能性がある。
【0018】
(b)成分の脂肪酸として、具体的には、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、べヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸などが挙げられ、特に、ステアリン酸、アラキジン酸、べヘニン酸、リグノセリン酸を好適に用いることができる。
【0019】
また、本発明の脂肪酸誘導体は、脂肪酸の酸基に含まれるプロトンを置換したものが挙げられ、このような脂肪酸誘導体としては、金属イオンにより置換した金属せっけんが例示できる。金属せっけんに用いられる金属イオンとしては、例えば、Li+、Ca++、Mg++、Zn++、Mn++、Al+++、Ni++、Fe++、Fe+++、Cu++、Sn++、Pb++、Co++が挙げられ、特にCa++、Mg++、Zn++が好ましい。
【0020】
(b)成分の脂肪酸誘導体として、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、べヘニン酸マグネシウム、べヘニン酸カルシウム、べヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛等が挙げられ、特にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、べヘニン酸マグネシウム、べヘニン酸カルシウム、べヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛を好適に使用することができる。
【0021】
なお、上述した(a)成分及び/又は(d)成分、及び(b)成分の使用に際し、公知の金属せっけん変性アイオノマー(USP5312857,USP5306760,WO98/46671公報等)を使用することもできる。
【0022】
本発明のゴルフボール用材料は、(c)成分として上記(a)成分及び/又は(d)成分、及び(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機充填剤を配合してなるものであるが、従来例でも挙げたように、(a)成分及び/又は(d)成分、及び(b)成分のみ、特に金属変性アイオノマー樹脂のみ(例えば、上記特許公報に記載された金属せっけん変性アイオノマー樹脂のみ)を加熱混合すると、下記に示すように金属せっけんとアイオノマーに含まれる未中和の酸基との交換反応により脂肪酸が発生する。この発生した脂肪酸は熱的安定性が低く、成形時に容易に気化するため、成形不良の原因となるばかりでなく、発生した脂肪酸が成形物の表面に付着した場合、塗膜密着性が著しく低下する原因になる。
【0023】
【化1】
▲1▼ アイオノマー樹脂中に含まれる未中和の酸基
▲2▼ 金属せっけん
▲3▼ 脂肪酸
X 金属原子
【0024】
本発明は、このような問題を解決すべく、(c)成分として、上記(a)成分及び/又は(d)成分と(b)成分中に含まれる酸基を中和する塩基性無機金属化合物を必須成分として配合する。(c)成分の配合で、上記(a)成分及び/又は(d)成分と(b)成分中の酸基が中和され、これら各成分配合による相乗効果により、加熱混合物の熱安定性が高まると同時に、良好な成形性が付与され、ゴルフボール用材料としての反発性が向上するという優れた特性が付与されるものである。
【0025】
本発明の(c)成分は、上記(a)成分及び/又は(d)成分、及び(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物であり、好ましくは一酸化物であることが推奨され、アイオノマー樹脂との反応性が高く、反応副生成物に有機物を含まないため、熱安定性を損なうことなく、加熱混合物の中和度を上げることができる。
【0026】
ここで、塩基性無機金属化合物に使われる金属イオンとしては、例えば、Li+、Na+、K+、Ca++、Mg++、Zn++、Al+++、Ni+、Fe++、Fe+++、Cu++、Mn++、Sn++、Pb++、Co++等が挙げられ、無機金属化合物としては、これら金属イオンを含む塩基性無機充填剤、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられるが、上述したように一酸化物が好適で、特に、アイオノマー樹脂との反応性の高い酸化マグネシウムを好適に使用できる。
【0027】
本発明のゴルフボール用材料は、上述したように(a)成分、(d)成分、(b)成分及び(c)成分を配合してなり、熱安定性、成形性、反発性の向上が図れるものであるが、これら成分の配合量は(a)成分及び/又は(d)成分(以下、ベース樹脂という)100質量部に対し、(b)成分の配合量を5質量部以上、上限として80質量部以下、好ましくは40質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、(c)成分の配合量を0.1質量部以上、上限としては10質量部以下、好ましくは5質量部以下にする必要がある。(b)成分の配合量が少ない場合、溶融粘度が低くなり加工性が低下し、多いと耐久性が低下する。また、(c)成分の配合量が少ない場合、熱安定性、反発性の向上が見られず、多い場合、過剰の塩基性無機金属化合物により組成物の耐熱性がかえって低下する。
【0028】
本発明の加熱混合物は、上述した材料をそのまま使用しても、該混合物に他の材料を適宜配合してもよいが、いずれにしても、加熱混合物としてのメルトインデックス(JIS−K6760(試験温度190℃、試験荷重21N(2.16kgf)にて測定))を1.0dg/min以上、好ましくは1.5dg/min以上、更に好ましくは2.0dg/min以上にする必要があり、上限としては20dg/min以下、好ましくは15dg/min以下であることが推奨される。加熱混合物のメルトインデックスが少ないと加工性が著しく低下してしまう。
【0029】
本発明の加熱混合物は、赤外吸収測定において通常検出される1690〜1710cm-1のカルボニル伸縮振動に帰属する吸収ピークの吸光度に対する、1530〜1630cm-1のカルボキシラートアニオン伸縮振動に帰属する吸収ピークにおける相対吸光度(カルボキシラートアニオン伸縮振動に帰属する吸収ピークの吸光度/カルボニル伸縮振動に帰属する吸収ピークの吸光度)として特定されたものであることが好ましい。
【0030】
ここで、カルボキシラートアニオン伸縮振動はプロトンを解離したカルボキシル基(金属イオンにより中和されたカルボキシル基)を、カルボニル伸縮振動は未解離のカルボキシル基の振動をそれぞれ示すが、それぞれのピークの強度比は中和度に依存する。一般的に用いられる中和度が約50モル%のアイオノマー樹脂の場合、それぞれのピークの吸光度比は約1:1である。
【0031】
本発明の加熱混合物は、材料としての熱安定性、成形性、反発性を改良するために、カルボキシラートアニオン伸縮振動に帰属するピークの吸光度が、カルボニル伸縮振動によるピークの吸光度の少なくとも1.5倍以上であることが推奨され、好ましくは2倍以上であり、更に好ましくはカルボニル伸縮振動に帰属するピークが存在しないものであることが推奨される。
【0032】
また、本発明の材料は、熱安定性を熱重量測定により測定することができるが、加熱混合物は、熱重量測定において、25℃における重量を基準とした250℃における減量率が、通常2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であることが推奨される。
【0033】
なお、加熱混合物自体の比重は、特に制限されるものではないが、通常0.9以上、上限として1.5以下、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下であることが推奨される。
【0034】
本発明のゴルフボール用材料は、上述した(a)成分及び/又は(d)成分、(b)成分及び(c)成分が加熱混合され、メルトインデックスが適正化されるものであるが、加熱混合物中の酸基の70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上が中和されていることが推奨され、高中和化により上述したベース樹脂と脂肪酸(誘導体)のみを使用した場合に問題となる交換反応をより確実に抑制し、脂肪酸の発生を防ぐことができ、熱的な安定性が著しく増大し、成形性が良好で、従来のアイオノマー樹脂と比較して反発性の著しく増大した材料になり得る。
【0035】
ここで、本発明の加熱混合物の中和化は、高中和度と流動性をより確実に両立するために、上記加熱混合物の酸基が遷移金属イオンと、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属イオンとで中和されていることが推奨され、遷移金属イオンがアルカリ(土類)金属イオンと比較してイオン凝集力が弱いため、加熱混合物中の酸基の一部を中和し、流動性の著しい改良を図ることができる。
【0036】
この場合、遷移金属イオンと、アルカリ(土類)金属イオンのモル比は適宜調整されるが、通常10:90〜90:10、特に20:80〜80:20であることが好ましい。遷移金属イオンのモル比が少ないと、流動性を改善する効果が十分に得られない可能性があり、モル比が高いと、反発性が低下する可能性がある。
【0037】
ここで、上記金属イオンとして、具体的には、遷移金属イオンとしては、亜鉛イオン等、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンから選ばれる少なくとも1種のイオン等が挙げられる。
【0038】
なお、酸基が遷移金属イオンとアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとで中和された加熱混合物を得る方法は、特に制限されるものではなく、例えば、遷移金属イオン(亜鉛イオン)により中和する方法の具体的な例として、脂肪酸誘導体に亜鉛せっけんを用いる方法、(d)成分として亜鉛中和物をベース樹脂(例えば、亜鉛中和型アイオノマー樹脂)に含める方法、(c)成分の塩基性無機金属化合物に亜鉛酸化物を用いる方法などが挙げられる。
【0039】
上述したように、本発明のゴルフボール用材料を得るには、上記加熱混合物を必須成分とすればよく、必要に応じて種々の添加剤を調整することにより得ることができるが、例えば、カバー材として使用する場合、上記加熱混合物に、更に、顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを加えることができる。また、本発明の材料中には、打撃時のフィーリングを改善するために上記必須成分に加え、種々の非アイオノマー熱可塑性エラストマーを配合することができ、このような非アイオノマー熱可塑性エラストマーとして、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー等が挙げられ、特にオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーの使用が好ましい。
【0040】
また、本発明の材料の製法に制限はなく、例えば、上記材料を配合してゴルフボールのカバー材を得るには、加熱混合条件として、例えば、加熱温度150〜250℃、混合機として、例えば、混練型二軸押出機、バンバリー、ニーダー等のインターナルミキサーなどを用いて混練する。この場合、本発明のゴルフボール用材料は、必須成分以外の各種添加剤を配合する方法について制限はなく、本発明の上記必須成分と共に配合して同時に加熱混合する方法、上記必須成分を予め加熱混合をした後、任意の添加剤を加えて更に加熱混合する方法等を挙げることができる。
【0041】
本発明のゴルフボールは、上記本発明のゴルフボール用材料を使用して形成されたゴルフボールであり、上記ゴルフボール用材料にて形成される層は、ゴルフボールの一部又は全部のいずれであってもよく、本発明のゴルフボールは、糸巻きゴルフボール(カバーが単層又は2層以上の多層構造のいずれも含む)、ワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール、カバーが3層以上のマルチピースゴルフボール等のいずれのゴルフボールとしてもよい。
【0042】
従って、本発明のゴルフボールを得るには、上記本発明のゴルフボール用材料として加熱混合物をワンピースボール材、糸巻きゴルフボールのソリッドセンター、ソリッドゴルフボールのソリッドコア材、カバー材(2層以上のコア、カバーの場合は、少なくとも1層)として種々調製した後、これを公知の方法に従って使用して製造すればよい。
【0043】
本発明のゴルフボールは、カバーが上記本発明のゴルフボール用材料にて形成されるものである場合、コアは糸巻きコア又はソリッドコアのいずれであってもよく、常法に従って製造し得る。ソリッドコアを得る場合には、例えば、シス−1,4−ポリブタジエン100質量部に対し、アクリル酸、メタクリル酸などのα、β−モノエチレン不飽和カルボン酸又はその金属イオン中和物、トリメチロールプロパンメタクリレートなどの官能性モノマーなどの加硫剤(架橋剤)から選ばれる1種を単独で又は2種以上を混合したものを10質量部以上60質量部以下、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどの充填剤を5質量部以上30質量部以下、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物を0.5質量部以上5質量部以下、その他必要に応じて老化防止剤を0.1質量部以上1質量部以下配合し、このゴム組成物に対してプレス加硫(架橋)した後、140℃以上170℃以下で10分以上40分以下で加熱圧縮して球状に形成することができる。
【0044】
また、糸巻きゴルフボールの糸巻きコアを製造する場合には、まず、リキッド又はソリッドセンターを作成する。リキッドセンターは、上述したゴム組成物等にて中空球状のセンターバックを形成し、このバックの中に公知の方法に従って液体を封入すればよい。また、ソリッドセンターは、上記ソリッドコアの製造方法に従って製造することができ、得られたセンターに対し糸ゴムを延伸状態で巻きつけることにより、コアを得ることができる。
【0045】
なお、上記糸ゴムも常法により得られたものを使用でき、例えば、天然ゴム又はポリイソプレンなどの合成ゴムに老化防止剤、加硫促進剤、硫黄などの各種添加剤を配合したゴム組成物を加硫成形して形成したものを使用し得る。
【0046】
上記各種コアを使用して本発明のゴルフボールを得るには、本発明のゴルフボール用材料でカバーを形成すればよく、例えば、ボールの種類に応じて予め作製した単層又は2層以上の多層コアを金型内に配備し、本発明の材料を加熱混合溶融し、射出成形する方法等を採用できる。この場合、ゴルフボールの製造は、優れた熱安定性、流動性、成形性が確保された状態で作業でき、得られたゴルフボールは、反発性が高い。
【0047】
カバーの形成方法は、上述した方法に限られるものではなく、例えば、本発明のカバー材により予め一対の半球状のハーフカップを成形し、このハーフカップでコアを包んで120〜170℃、1〜5分間、加圧成形する方法などを採用し得る。
【0048】
本発明の材料で形成されるカバーの厚さは、特に制限されるものではないが、通常1mm以上、特に1.3mm以上、上限として4mm以下、特に2.3mm以下に形成することができ、本発明のカバーは、1層に限られず、2層以上の多層構造に形成してもよく、多層構造の場合には、本発明のカバー材を多層構造の内側に用いても、最外層カバーに用いてもよいが、本発明においては、単層カバーの場合はそのカバー材として、また2層以上のカバーを具備してなるゴルフボールの場合には、最外層カバー以外の内側カバーに好適に使用できる。
【0049】
なお、上記最外層カバーの表面には、多数のディンプルが形成され、更にカバー上には下地処理、スタンプ、塗装等種々の処理を行うことができ、特に本発明のカバー材で形成されたカバーにこのような表面処理を施す場合、カバー表面の成形性が良好であるため作業性を良好にして行うことができる。
【0050】
以上のようにして形成されるゴルフボールについて、上記カバー、ソリッド及びリキッドセンター、ソリッドコア及び糸巻きコア、ワンピースゴルフボールの直径、重量、硬度等は本発明の目的を達成し得る範囲で適宜調整することができ、特に制限されるものではない。
【0051】
なお、本発明のゴルフボールは、本発明のゴルフボール用材料を上記したカバー材以外に使用したゴルフボールであってもよく、例えば、ワンピースゴルフボール材、コア材として用いられたゴルフボールであってもよく、射出成形を採用して製造することができる。
【0052】
本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上、重量45.93g以下に形成することができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、熱安定性、流動性、成形性が良好な高中和アイオノマー樹脂を用いたゴルフボール用材料を得ることができ、本発明のゴルフボールは、上記材料が使用されているので、作業性よく製造することができ、反発性に優れたものである。
【0054】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0055】
〔実施例1〜5,比較例1〜14〕
シス−1,4−ポリブタジエンを主成分とするコア材料を用いて、直径38.6mm、重量35.1g、100kg荷重負荷時の変形量3.1mmに調整したソリッドコアを得た。
【0056】
表1,2に示す組成のカバー材を200℃で混練型二軸押出機にてミキシングし、ペレット状のカバー材を得た後、上記ソリッドコアを配備した金型内に射出し、厚さ2.1mmのカバーを有する直径42.8mmのツーピースソリッドゴルフボールを製造した。
【0057】
〔実施例6、比較例15,16〕
シス−1,4−ポリブタジエンを主成分とするコア材料を用いて、直径36.8mm、重量30.4g、100kg荷重負荷時の変形量3.1mmに調整したソリッドコアを得た。
【0058】
実施例6については実施例1に記載のカバー材、比較例15,16についてはそれぞれ比較例3,4に記載のカバー材をコア上に厚さ1.5mmに射出成形してカバーを成形した後、表3に示す外側カバー材を射出成形し、直径42.8mmのスリーピースゴルフボールを製造した。
【0059】
各ゴルフボールについて、諸特性を下記の通り評価した。結果を表1〜3に併記する。
ボール硬度
100kg荷重負荷時のボール変形量(mm)
初速度
ゴルフボール公認機関R&A(USGA)と同タイプの初速度計を使用し、R&A(USGA)ルールに従い測定したときの初速度。
カルボキシラートアニオン吸収ピーク相対吸光度
試料の赤外吸収測定には透過法を用いた。2900cm-1付近に観測される炭化水素鎖に伴うピークの透過率が約90%になるように試料厚を調整したサンプルの赤外吸収測定において、カルボニル伸縮振動吸収ピーク(1690〜1710cm-1)の吸光度を1とし、これに対するカルボキシラートアニオン伸縮振動吸収ピーク(1530〜1630cm-1)の割合を相対吸光度として算出した。
減量率
水分の影響を除くため、測定にはドライホッパーにて50℃で24時間乾燥させたサンプルを用い、各サンプル約5mgについて、窒素雰囲気中(流量100ml/min)で昇温速度10℃/minにて25℃から300℃まで熱重量測定を行い、25℃の重量に対する250℃の重量の減量率を求めた。
中和度
加熱混合物中に含まれる全酸基(脂肪酸(誘導体)中の酸基も含む)のうち、金属イオンにより中和されている酸基のモル分率を原料の酸含量、中和度、分子量から計算した。
遷移金属イオン配合比
加熱混合物中に含まれる酸基を中和する金属イオンのうち、遷移金属イオンのモル分率を原料の酸含量、中和度、分子量から計算した。
メルトフローレート
JIS−K6760(試験温度190℃、試験荷重21N(2.16kgf))に従い測定した材料のメルトフローレート。
押出成形性
材料混合時に一般的に用いられるタイプの同方向回転噛合形二軸押出機(スクリュ径32mm、主電動機出力7.5kW)により200℃で各カバー材を混練したときの成形性について下記基準で評価した。
○:成形可能
×:過負荷により成形不可能
【0060】
なお、表中に記載した商品名、材料は以下の通りである。
ニュクレルAN4318:
三井・デュポンポリケミカル社製エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、酸含量8質量%,エステル含量17質量%
ニュクレル1560:
三井・デュポンポリケミカル社製エチレン−メタクリル酸共重合体、酸含量15質量%
ハイミランAM7316:
三井・デュポンポリケミカル社製三元亜鉛アイオノマー、酸含量10質量%、中和度50モル%、エステル含量24質量%
サーリン6320;
デュポン社製三元マグネシウムアイオノマー、酸含量10質量%、中和度50モル%、エステル含量24質量%
ハイミランAM7311:
三井・デュポンポリケミカル社製マグネシウムアイオノマー、酸含量15質量%、中和度54モル%
ベヘニン酸:
日本油脂社製、商品名:NAA−222S
酸化マグネシウム:
協和化学工業社製高活性タイプ酸化マグネシウム、商品名:ミクロマグ3−150
ハイミラン1706:
三井・デュポンポリケミカル社製亜鉛アイオノマー、酸含量15質量%、中和度59モル%
ハイミラン1605:
三井・デュポンポリケミカル社製ナトリウムアイオノマー、酸含量15質量%、中和度29モル%
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
上記実施例及び比較例の結果は、以下の通りである。
実施例1及び実施例2は、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体をベース樹脂に用いて作成した本発明のカバー材を使用した。(b)成分が無配合で同ベース樹脂に酸化マグネシウムを添加して高中和化した比較例1は、混練り時に樹脂が固化し成形不可能であった。(c)成分が無配合で同ベース樹脂の金属せっけん変性樹脂(比較例2)は、実施例1,2樹脂と比較して、反発性に劣るものであった。また同硬度の金属せっけん変性カバー材(比較例3)と比較して、実施例1及び実施例2は、熱安定性及び反発性に優れ、同硬度のマグネシウムアイオノマーカバー材(比較例4)と比較して、反発性及び流動性に優れていた。
【0065】
実施例3は、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体の亜鉛イオン中和物の混合物をベース樹脂に用いて作成した本発明のカバー材を使用した。(b)成分が無配合で同ベース樹脂に酸化マグネシウムを添加して高中和化した比較例5は、混練り時に樹脂が固化し成形不可能であった。(c)成分が無配合で同ベース樹脂の金属せっけん変性樹脂(比較例6)は、実施例3樹脂と比較して、反発性、熱安定性が極めて低かった。また、(c)成分が無配合で同硬度の金属せっけん変性カバー材(比較例8)と比較して、実施例3は、熱安定性及び反発性に優れ、(b),(c)両成分が無配合で同硬度の亜鉛/マグネシウムアイオノマーカバー材(比較例7)と比較して、反発性及び流動性に優れていた。
【0066】
実施例4は、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体の亜鉛イオン中和物をベース樹脂に用いて作成した本発明のカバー材を使用した。(b)成分が無配合で同ベース樹脂に酸化マグネシウムを添加して高中和化した比較例9は、混練り時に樹脂が固化し成形不可能であった。(c)成分が無配合で同ベース樹脂の金属せっけん変性樹脂(比較例10)は、実施例4の樹脂と比較して、反発性、熱安定性が極めて低かった。また、実施例4は、上記同硬度の金属せっけん変性カバー材(比較例8)と比較して、熱安定性及び反発性に優れ、上記同硬度の亜鉛/マグネシウムアイオノマーカバー材(比較例7)と比較して、反発性及び流動性が優れていた。
【0067】
なお、加熱混合物中の酸基をマグネシウムイオンと亜鉛イオンとで中和した実施例3,4のカバー材は、マグネシウムイオンのみにより中和した実施例1,2のカバー材と比較して、溶融粘度が高いものであった。
【0068】
実施例5は、エチレン−メタクリル酸共重合体及びエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体の亜鉛イオン中和物の混合物をベース樹脂に用いて作成した本発明のカバー材を使用した。同ベース樹脂に酸化マグネシウムを添加して高中和化した比較例11は、混練り時に樹脂が固化し成形不可能であった。同ベース樹脂の金属せっけん変性樹脂(比較例12)は、実施例5と比較して、反発性、熱安定性が極めて低かった。また、同硬度の金属せっけん変性カバー材(比較例14)と比較して、実施例5は、熱安定性及び反発性に優れ、(b),(c)両成分が無配合で同硬度の亜鉛/マグネシウムアイオノマーカバー材(比較例13)と比較して、反発性及び流動性に優れていた。
【0069】
実施例1のカバー材を内側カバー材に用いた実施例6のボールは、同硬度の金属せっけん変性カバー材(比較例3カバー材)、アイオノマーカバー材(比較例4カバー材)を内側カバー材にそれぞれ用いた比較例15,16のボールと比較して、反発性が極めて高かった。
【0070】
以上の例から、本発明のカバー材にて形成されたゴルフボールは、熱安定性、流動性、成形性のすべての要因を満足し、反発性の高いゴルフボールになり得ることが確認された。
Claims (10)
- メルトインデックスが1.0dg/min以上の加熱混合物であるゴルフボール用材料を製造する方法であって、
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体100質量部、
(b)分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体5〜80質量部、
(c)上記(a)、(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物0.1〜10質量部
を混合するゴルフボール用材料の製造方法であり、前記塩基性無機金属化合物を酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び炭酸リチウムよりなる群から選択し、前記(a)、(b)成分を(c)成分により中和することを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。 - メルトインデックスが1.0dg/min以上の加熱混合物であるゴルフボール用材料を製造する方法であって、
(d)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属イオン中和物及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体の金属イオン中和物100質量部、
(b)分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体5〜80質量部、
(c)上記(d)、(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物0.1〜10質量部
を混合するゴルフボール用材料の製造方法であり、前記塩基性無機金属化合物を酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び炭酸リチウムよりなる群から選択し、前記(d)、(b)成分を(c)成分により中和することを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。 - メルトインデックスが1.0dg/min以上の加熱混合物であるゴルフボール用材料を製造する方法であって、
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体と(d)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体の金属イオン中和物及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体の金属イオン中和物との混合物100質量部、
(b)分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体5〜80質量部、
(c)上記(a)、(d)、(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物0.1〜10質量部
を混合するゴルフボール用材料の製造方法であり、前記塩基性無機金属化合物を酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、及び炭酸リチウムよりなる群から選択し、前記(a)、(d)、(b)成分を(c)成分により中和することを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。 - (b)成分の脂肪酸又はその誘導体の1分子中に含まれる炭素原子数が18以上80以下である請求項1,2又は3記載のゴルフボール用材料の製造方法。
- 加熱混合物の赤外線吸収測定における1690〜1710cm-1に検出されるカルボニル伸縮振動に帰属する吸収ピークの吸光度に対する1530〜1630cm-1に検出されるカルボキシラートアニオン伸縮振動に帰属する吸収ピークの相対吸光度が1.5以上である請求項1乃至4のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
- 加熱混合物の熱重量測定において、25℃における重量を基準とする250℃における減量率が2質量%以下である請求項1乃至5のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
- 加熱混合物中の酸基の70モル%以上が金属イオンで中和されたものである請求項1乃至6のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
- 加熱混合物中の酸基を中和した金属イオンが亜鉛イオンと、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとを含む請求項7記載のゴルフボール用材料の製造方法。
- 亜鉛イオンと、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとのモル比が10:90〜90:10である請求項8記載のゴルフボール用材料の製造方法。
- 各材料を混合する際の加熱温度が150〜250℃である請求項1乃至9のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の製造方法。
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