JP4816847B2 - マルチピースソリッドゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性ソリッドコアを樹脂カバーで被覆し、これら弾性ソリッドコアとカバーとの間に配置された物性が異る樹脂中間層を含む、スピン性能、飛び特性に優れたマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、プロや上級者の要求に応えるためのゴルフボールとして、弾性ソリッドコアに2層以上のカバーを具備したマルチピースソリッドゴルフボール等が提案されており、例えば、内側のカバー硬度を外側のカバー硬度に比べて硬くした内硬外軟構造のゴルフボール(特開平7−24085号公報)等や、このようなマルチピースソリッドゴルフボールのスピン性能、耐久性、飛距離性能を更に向上させた提案(特開平10−151226号公報)等が挙げられる。
【0003】
しかしながら、これらの改良は未だ不十分であり、特にプロや上級者が要求するアイアンやアプローチショット時のスピン性能及び飛び性能をより向上させたゴルフボールが依然として求められている。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、打球の変形を想定したボール各部分の負荷時変形量を適正化することにより、飛び性能に優れ、アイアンやアプローチショット時のスピン性能をより向上させたマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため、鋭意検討を行った結果、弾性ソリッドコアに対し、多数のディンプルを備えた樹脂カバーで被覆し、これら弾性ソリッドコアとカバーとの間に、樹脂製中間層を配置したマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、98N(10kgf)の荷重を加えた状態から1274N(130kgf)に荷重を増加させたときに生じる変形量を、上記弾性ソリッドコア、弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体、及び弾性ソリッドコアに中間層及びカバーを被覆した完成品としてのボールについて夫々測定し、上記弾性ソリッドコアの変形量をA、上記弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体の変形量をB、上記弾性ソリッドコアに中間層及びカバーを被覆した完成品としてのゴルフボールの変形量をCとした場合、下記関係を満足するように変形量を調整すると共に、上記中間層及びカバーの硬度の関係が適正化されたマルチピースソリッドゴルフボールは、実際の打撃によるボールの変形を想定したボール部分の負荷時変形量が相互に適正化される上、ゴルフボール全体としての変形量のバランスが調整されることによる相乗効果で、飛び性能に優れ、アイアンやアプローチショット時のスピン性能をより向上させることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
1.14≦A/B≦1.30
1.05≦B/C≦1.16
【0006】
従って、本発明は、下記マルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
〔請求項1〕弾性ソリッドコアに対し、多数のディンプルを備えた樹脂カバーで被覆し、これら弾性ソリッドコアとカバーとの間に、樹脂製中間層を配置したゴルフボールにおいて、98N(10kgf)の荷重を加えた状態から1274N(130kgf)に荷重を増加させたときに生じる変形量(mm)であって、弾性ソリッドコアの変形量をA、弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体の変形量をB、ゴルフボールの変形量をCとすると、
1.14≦A/B≦1.30
1.05≦B/C≦1.16
の関係を満足すると共に、上記中間層のショアD硬度が58〜68であり、かつ上記カバーが上記中間層よりも軟らかく形成され、該カバーの中間層に対するショアD硬度差が7〜16であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
〔請求項2〕上記カバーが熱可塑性又は熱硬化性ポリウレタン系エラストマー、を主材として形成されたものである請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔請求項3〕上記中間層が、アイオノマー樹脂を70質量部以上含む樹脂組成物で形成されたものである請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
〔請求項4〕上記樹脂組成物が下記成分(a)〜(c)、
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体若しくはこれら共重合体の金属イオン中和物、又は、これら共重合体,中和物の混合物 100質量部、
(b)分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体 5〜80質量部、
(c)上記(a)、(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物
0.1〜10質量部
を必須成分として配合する樹脂組成物にて形成されたものである請求項3記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【0007】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、例えば、図1に示される3層構造のゴルフボールGのように、弾性ソリッドコア1、カバー2、中間層3を具備する少なくとも3層の構造からなるものであり、上記カバー2の表面に多数のディンプルDを具備したものである。
【0008】
ここで、上記弾性ソリッドコアは、公知の材料で製造することができ、ゴム組成物にて形成したものが好ましい。ゴム組成物としては、基材としてポリブタジエンを使用したものが好ましい。このポリブタジエンとしては、シス構造を少なくとも40%以上有する1,4−シスポリブタジエンが好適に挙げられる。また、この基材ゴム中には、所望により該ポリブタジエンに天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴムなどを適宜配合することができる。ゴム成分を多くすることにより、ゴルフボールの反発性を向上させることができる。
【0009】
また、上記ゴム組成物には、硬化剤としてメタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩、マグネシウム塩やトリメチロールプロパンメタクリレート等のエステル化合物を配合し得るが、特にアクリル酸亜鉛を好適に使用し得る。これら硬化剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、10質量部以上、特に20質量部以上、上限として50質量部以下、特に39質量部以下とすることが好ましい。
【0010】
上記ゴム組成物中には、通常、架橋剤が配合されているが、配合量は架橋剤全体の20質量%以上、特に30質量%以上であり、その上限は特に制限されないが、70質量%以下であることが好ましい。このような架橋剤としては、市販品を挙げることができ、例えば、パークミルD(日本油脂社製)、パーヘキサ3M(日本油脂社製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等が挙げられる。その配合量は、基材ゴム100質量部に対し、0.2質量部以上、特に0.6質量部以上、上限として2.0質量部以下、特に1.5質量部以下とすることができる。
【0011】
更に、必要に応じて、老化防止剤や比重調整の充填剤として酸化亜鉛や硫酸バリウム等を配合することができる。
【0012】
本発明のゴム組成物においては、特に有機硫黄化合物を配合することが好ましく、例えば、チオフェノール、チオナフトール、ハロゲン化チオフェノール又はそれらの金属塩を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。このような、有機硫黄化合物の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対して、通常0.3質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、上限として2質量部以下、更に好ましくは1.2質量部以下であることが推奨され、配合量が少なすぎると、反発性が十分でなくなったり、弾性ソリッドコアの硬度が低下する場合があり、多すぎると、弾性ソリッドコアの硬度が軟らかくなりすぎたり、打感が鈍くなり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【0013】
上記ゴム組成物を、公知の方法で加硫・硬化させて弾性ソリッドコアを製造することができる。弾性ソリッドコアの直径は、通常35.6mm以上、好ましくは36mm以上、更に好ましくは36.2mm以上であり、上限として39mm以下、好ましくは38mm以下、更に好ましくは37mm以下とすることが飛び性能を確保する点から推奨される。
【0014】
本発明において、弾性ソリッドコアは、98N(10kgf)の負荷状態から1274N(130kgf)に荷重を増加させたときまでの変形量は、後述するように、各ボール構成部分の変形量と相互に適正化されることを要するが、弾性ソリッドコア自体の変形量は、通常3.2mm以上が好ましく、より好ましくは3.4mm以上、更に好ましくは3.6mm以上であり、上限としては5.0mm以下が好ましく、より好ましくは4.1mm以下であることが推奨される。
【0015】
上記弾性ソリッドコアは、特に、中心部のJIS−C硬度が、通常67以下が好ましく、より好ましくは66以下、更に好ましくは65以下であることが推奨される。硬度の下限は56以上、より好ましくは59以上、更に好ましくは61以上とすることが推奨される。弾性ソリッドコア表面のJIS−C硬度は、通常80以下が好ましく、より好ましくは78以下、更に好ましくは76以下であることが推奨される。硬度の下限は65以上、より好ましくは67以上、更に好ましくは69以上とすることが推奨される。このような硬度の上限値又は下限値を逸脱すると必要なとび性能が得られなかったり、打感が硬すぎたりする。またコア中心部から放射状外側へ向ってコア表面に至るまでの硬度分布は、漸次硬度が増加する硬度分布が好ましい。しかし、目的を損なわない限り、ほぼ平坦な(放射方向外側に向って)硬度分布であっても差支えない。
【0016】
次に、本発明の中間層は、公知材料を使用して形成できるが、特に、基材樹脂を100質量部とした場合、アイオノマー樹脂を70質量部以上、特に80質量部以上配合する樹脂組成物にて形成されたものであることが推奨される。
【0017】
本発明の中間層材としては、上記樹脂組成物として、特に下記成分(a)〜(c)を必須成分として配合する樹脂組成物の使用が推奨される。
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体若しくはこれら共重合体の金属イオン中和物、又は、これら共重合体,中和物の混合物、
(b)分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体、
(c)上記(a)、(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物。
【0018】
ここで、上記(a)〜(c)を必須成分とする樹脂組成物は、熱安定性、流動性、成形性が良好で、優れた反発性を中間層に付与することができるものである。
【0019】
上記(a)成分のオレフィンとしては、通常炭素数2以上、上限として8以下、特に6以下のものであることが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等が挙げられ、特にエチレンであることが好ましい。
【0020】
また、不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。
【0021】
更に、不飽和カルボン酸エステルとしては、上述した不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルが好適で、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n−アクリル酸ブチル、i−アクリル酸ブチル)であることが好ましい。
【0022】
上記(a)成分のランダム共重合体は、上記各成分を公知の方法に従ってランダム共重合させることにより得ることができる。ここで、ランダム共重合体中に含まれる不飽和カルボン酸の含量(酸含量)は、通常2質量%以上、好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、上限としては25質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であることが推奨される。酸含量が少ないと反発性が低下する可能性があり、多いと耐久性が低下する可能性がある。
【0023】
上記(a)成分のランダム共重合体の中和物は、上記ランダム共重合体中の酸基を部分的に金属イオンで中和することによって得ることができる。ここで、酸基を中和する金属イオンとしては、例えば、Na+、K+、Li+、Zn++、Cu++、Mg++、Ca++、Co++、Ni++、Pb++等が挙げられるが、好ましくはNa+、Li+、Zn++、Mg++であり、更に好ましくはZn++であることが推奨される。これら金属イオンのランダム共重合体の中和度は、特に限定されるものではない。このような中和物は公知の方法で得ることができ、例えば、上記ランダム共重合体に対して、上記金属イオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物及びアルコキシド等の化合物を使用して導入することができる。
【0024】
本発明の中間層材料は、上述した(a)成分のベース樹脂に対し、(b)成分、(c)成分を所定量配合してなるものであるが、混合物中の酸基の50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上が中和されていることが推奨され、高中和化によりベース樹脂と脂肪酸(誘導体)のみを使用した場合に問題となる交換反応をより確実に抑制し、脂肪酸の発生を防ぐことができ、熱的な安定性が著しく増大し、成形性が良好で、従来のアイオノマー樹脂と比較して反発性の著しく増大した材料になり得る。
【0025】
上記(a)成分としては、例えば、ニュクレルAN4311、同AN4318、同1560(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同1855、同1856、同AM7316(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン6320、同7930、同8120、同8940、同9910、同9945、同8945(いずれも米国デュポン社製)等が挙げられ、特に、亜鉛イオン中和型アイオノマー樹脂(ハイミランAM7316等)を好適に使用できる。
【0026】
上記(b)成分は、分子量280以上の脂肪酸又はその脂肪酸誘導体であり、上記(a)成分と比較して分子量が極めて小さく、樹脂組成物の流動性向上に寄与する成分で、中間層材の溶融粘度の著しい増加に寄与するものである。また、(b)成分の脂肪酸(誘導体)は、分子量が280以上で高含量の酸基(誘導体)を含むため、反発性の損失を抑制することができるものである。
【0027】
上記(b)成分の脂肪酸又はその脂肪酸誘導体は、アルキル基中に二重結合又は三重結合を含む不飽和脂肪酸(誘導体)であっても、アルキル基中の結合が単結合のみにより構成される飽和脂肪酸(誘導体)であってもよいが、1分子中の炭素数は、通常18以上、特に20以上、好ましくは22以上である。上限として80以下、特に60以下、好ましくは40以下、更に好ましくは30以下であることが推奨される。炭素数が少ないと、耐熱性の改善が達成できない可能性がある上、酸基の含量が多すぎて(a)成分中に含まれる酸基との相互作用により流動性の改善の効果を少なくする場合がある。一方、炭素数が多い場合には、分子量が大きくなるため、流動性改質効果が少なくなる可能性がある。
【0028】
(b)成分の脂肪酸として、具体的には、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、べヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸などが挙げられ、特に、ステアリン酸、アラキジン酸、べヘニン酸、リグノセリン酸を好適に用いることができ、特に好ましくはベヘニン酸を挙げることができる。
【0029】
また、本発明の脂肪酸誘導体は、脂肪酸の酸基に含まれるプロトンを置換したものが挙げられ、このような脂肪酸誘導体としては、金属イオンにより置換した金属せっけんが例示できる。金属せっけんに用いられる金属イオンとしては、例えば、Li+、Ca++、Mg++、Zn++、Mn++、Al+++、Ni++、Fe++、Fe+++、Cu++、Sn++、Pb++、Co++等が挙げられ、特にCa++、Mg++、Zn++が好ましい。
【0030】
(b)成分の脂肪酸誘導体として、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、べヘニン酸マグネシウム、べヘニン酸カルシウム、べヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛等が挙げられ、特にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、べヘニン酸マグネシウム、べヘニン酸カルシウム、べヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛を好適に使用することができる。
【0031】
(c)成分は、上記(a)成分及び(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物である。
【0032】
ここで、(c)成分は、上記(a)成分及び(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物であれば、特に制限されるものではないが、反応性が高く、反応副生成物に有機物を含まないため、熱安定性を損なうことなく、中間層材の中和度を上げることができる点から、特に、水酸化物であることが推奨される。
【0033】
ここで、塩基性無機金属化合物に使われる金属イオンとしては、例えば、Li+、Na+、K+、Ca++、Mg++、Zn++、Al+++、Ni++、Fe++、Fe+++、Cu++、Mn++、Sn++、Pb++、Co++等が挙げられ、無機金属化合物としては、これら金属イオンを含む塩基性無機金属化合物、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられるが、上述したように水酸化物が好適で、(a)成分、特にアイオノマー樹脂との反応性の高い水酸化カルシウムを好適に使用できる。
【0034】
本発明の中間層材は、公知の混合方法を採用して得ることができるが、特に上記成分(a)〜(c)を配合する場合には、各成分の配合量は、(a)成分100質量部に対して、(b)成分を通常5質量部以上、上限として80質量部以下、好ましくは40質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、(c)成分を0.1質量部以上、上限として10質量部以下、好ましくは5質量部以下にすることが推奨され、(b)成分の配合量が少ないと、溶融粘度が低くなり、加工性が低下する場合があり、(c)成分の配合量が少ない場合、熱安定性、反発性の向上が見られず、多い場合、過剰の塩基性無機金属化合物により組成物の耐熱性が却って低下する場合がある。
【0035】
本発明の中間層は、公知の方法で形成することができ、例えば、射出成形、加圧加熱成形等による方法を挙げることができる。中間層の厚さは、通常0.6mm以上、好ましくは0.8mm以上であり、上限としては2.0mm以下、好ましくは1.8mm以下であることが推奨される。
【0036】
また、本発明の中間層のショアD硬度は、通常58以上、好ましくは60以上、また上限としては68以下、好ましくは66以下とすることが推奨される。中間層が軟らかすぎると、各ショット時にスピン量が増えることにより、飛距離が落ちてしまったり、打感が軟らかくなりすぎることがある。硬すぎるとスピン量が減り、コントロール性に劣ったり、打感が硬くなったり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が劣化することがある。
【0037】
本発明において、上記弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体は、98N(10kgf)の負荷状態から1274N(130kgf)に荷重を増加させたときまでの変形量Bが、上記弾性ソリッドコアの変形量A及び後述するボールの変形量Cと併せて適正化されることを要するが、詳しくは後述する。弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体の変形量Bは、通常2.5mm以上が好ましく、より好ましくは2.7mm以上、上限としては3.5mm以下が好ましく、より好ましくは3.3mm以下であることが推奨される。
【0038】
上記中間層を被覆した弾性ソリッドコアは、更に、本発明の目的をより確実に達成するに当たっては、反発係数(C.O.R値)が0.80以上、更には0.81以上とすることが好ましい。
【0039】
ここで、反発係数(C.O.R値)とは、鋼板に向って対象物(中間層を被覆した弾性ソリッドコア)を衝突させ、衝突後の速度を測定したときの衝突前の速度〔入射速度38.1m/s(125feet/s)を適用〕に対する衝突後の速度の速度比のことで、この値は1に近いほど反発性が高いことを意味する。
【0040】
次に、本発明のカバーは、公知材料で形成することができ、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を主材としてなる材料を挙げることができる。カバーの主材として、具体的には、熱可塑性又は熱硬化性のポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、必要に応じて硫酸バリウム等の充填材を入れて使用することが可能である。
【0041】
上記熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては、粘弾性測定によるtanδピーク温度が−15℃以下、特に−16℃以下、下限として−50℃以上であるものが軟らかさ、反発性の点から好ましい。
【0042】
本発明のカバー材としては、上述した熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとイソシアネート化合物との反応生成物を用いることもでき、これによりアイアン打撃時の表面耐久性を更に向上させることができる。
【0043】
熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7298、同T7295、同T7890、同TR3080(DIC・バイエルポリマー社製)などのジイソシアネートが脂肪族又は芳香族であるもの等が挙げられる。
【0044】
上記カバーは、公知の方法で形成することができ、例えば、射出成形、加圧加熱成形等による方法を挙げることができる。カバーの厚さは0.6mm以上、好ましくは0.8mm以上、上限として2.0mm以下、好ましくは1.6mm以下であることが推奨される。カバーの厚さは、図1を参照すると中間層3の表面からカバー表面のディンプルDの非形成部分(陸部)との厚さ4のことをいう。
【0045】
本発明のゴルフボールは、上記中間層及びカバーの合計厚さ(カバーの厚さ+中間層の厚さ)は、1.2mm以上、好ましくは1.5mm以上、上限としては3.5mm以下、好ましくは3.2mm以下とすることが推奨される。厚さが薄すぎると、繰り返し打撃をした時の割れ耐久性が劣化し、また、厚すぎるとボールの反発性が低下して飛距離が落ちる場合がある。
【0046】
また、カバーのショアD硬度は、44以上、好ましくは46以上、より好ましくは48以上であり、また上限としては56以下、好ましくは55以下であり、且つ中間層の上記ショアD硬度より小さいことが推奨される。カバーが軟らかすぎると、各ショット時にスピン量が増えることにより、飛距離が落ちてしまったり、打感が軟らかくなりすぎることがある。硬すぎるとスピン量が減り、コントロール性に劣ったり、打感が硬くなったり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が劣化することがある。
【0047】
本発明において、上記カバーの硬度は、中間層の硬度より軟らかく(より小さく)形成されることが望ましい。この場合、中間層に対するカバーのショアD硬度の差は、7以上、特に9以上、上限として16以下、特に14以下の硬度差を有することが推奨される。
【0048】
上記中間層とカバーとの間には、中間層とカバーとの密着性を向上させるため、打撃時の耐久性を向上させるために、必要に応じて接着剤層を設けることができる。この場合、接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤、ビニル樹脂系接着剤、ゴム系接着剤などを挙げることもできるが、特にはウレタン樹脂系接着剤、塩素化ポリオレフィン系接着剤を用いることが好ましく、市販品として、レザミンD6208(大日精化工業社製:ウレタン樹脂系接着剤)、RB182プライマー(日本ビーケミカル社製:塩素化ポリオレフィン系接着剤)等を好適に使用することができる。
【0049】
この場合、接着剤層の形成をディスパージョン塗装にて行うことができるが、ディスパージョン塗装に用いるエマルジョンの種類に限定はない。エマルジョン調製用の樹脂粉末としては、熱可塑性樹脂粉末でも熱硬化性樹脂粉末でも用いることができ、例えば酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、アクリル酸エステル(共)重合樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等を使用することができる。これらの中で、特に好ましいのはエポキシ樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリル酸エステル(共)重合樹脂であり、中でも熱可塑性ウレタン樹脂が好適である。
【0050】
なお、接着剤層の厚さは0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上、上限として30μm以下、好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下とすることが推奨される。
【0051】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、公知の方法で製造することができ、特に制限されるものではないが、弾性ソリッドコアを加硫加圧成形した後、射出成形用金型内に配備して、中間層材、カバー材の順に所定の方法に従って射出し、中間層、カバーを形成する方法を作業性等の観点から好適に採用できる。
【0052】
本発明において、弾性ソリッドコアに中間層及びカバーを被覆したボール(コア+中間層+カバー、即ち完成品としてのゴルフボール)は、98N(10kgf)の負荷状態から1274N(130kgf)に荷重を増加させたときまでの変形量Cが、上記弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体の変形量Bと併せて適正化されることを要し、ボール自体の変形量は、通常2.3mm以上が好ましく、より好ましくは2.4mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、上限としては3.3mm以下が好ましく、より好ましくは3.1mm以下であることが推奨される。
【0053】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、上述したように、98N(10kgf)の荷重を加えた状態から1274N(130kgf)に荷重を増加させたときに生じる変形量を、上記弾性ソリッドコアの変形量をA、弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体の変形量をB、弾性ソリッドコアに中間層及びカバーを被覆した完成品としてのボールの変形量をCとした場合、上記弾性ソリッドコアと、弾性ソリッドコアと中間層とを合わせた球体との変形量の関係A/B及び弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体と完成品ゴルフボールとの変形量の関係B/Cとが適正化されるものである。
【0054】
ここで、上記弾性ソリッドコアと弾性ソリッドコアと、該弾性ソリッドコアと中間層とを合わせた球体との変形量の関係A/Bは、1.14以上、好ましくは1.16以上、上限として1.30以下、好ましくは1.28以下とすることが必要であり、小さすぎると必要な飛び性能が得られない。また、大きすぎると、硬くなりすぎて、打感が悪化して割れなどの耐久性を損なう傾向がある。
【0055】
また、弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体と弾性ソリッドコアに中間層及びカバーを被覆したボールとの変形量の関係B/Cは、1.05以上、好ましくは1.07以上、上限として1.16以下、好ましくは1.14以下とすることが必要であり、小さすぎるとスピンが多くなり過ぎ必要な飛び性能が得られない。また、擦過傷が生じ易くなる場合がある。また、大きすぎると、スピン性能が低下する傾向がある。
【0056】
本発明のゴルフボールは、更に、本発明の目的をより確実に達成するに当たっては、反発係数(C.O.R値)が0.79以上、更には0.8以上とすることが好ましい。なお、ここでいう反発係数は、中間層で被覆形成した弾性ソリッドコアの反発係数の測定と同じ条件で測定するものとする。
【0057】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、上記カバーの表面に多数のディンプルを具備してなるものであるが、このディンプルについて、個々のディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値V0が、0.47以下、下限としては0.42以上とすることが推奨される。
【0058】
ここで、上記V0値の算出方法について説明すると、ディンプル平面形状が円形状の場合、図2にディンプル断面図として示すディンプルDの最高点又は陸部に接する位置がディンプルDの縁11である。そして縁11によって囲まれる平面(円:直径Dm)12下のディンプル空間13の体積(Vp)を求める。一方、前記平面12を底面とし、この平面12からのディンプル最大深さDpを高さとする円柱14の体積(Vq)に対するディンプル空間体積(Vp)の比V0(Vp/Vq)を算出する。
【0059】
本発明のゴルフボールに形成されるディンプルは、その総個数、形状,大きさ及び種類数等に制限はないが、総個数は360〜460個の範囲とすることができる。ディンプルの配列態様は通常のゴルフボールと同様でよく、また、ディンプルは直径や深さの異なる2種以上、特に2〜4種とすることができるが、直径は2.0〜5.0mm、そして深さは0.05〜0.25mmであることが推奨される。
【0060】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上、重量45.93g以下に形成することができる。
【0061】
【発明の効果】
本発明のゴルフボールは、飛距離の増大化が図れ、アイアンやアプローチショットでのスピン性能に優れると共に、繰り返し打撃した場合の割れ耐久性、トップに対する耐久性、耐ささくれ性についても良好で、打感が良く特にプロや上級者が要求する優れた性能を備えたものである。
【0062】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0063】
〔実施例1〜5,比較例1〜5〕
実施例及び比較例としての供試ボールに使用したコア材料について表1に示し、中間層とカバーの材料については表2に示す。そして、これら各供試ボールの上記使用材料、諸特性及びテスト結果を表3に示す。
【0064】
なお、表中の主な項目は以下の通りである。
ポリブタジエン(1):JSR社製 BR11
ポリブタジエン(2):JSR社製 BR19
過酸化物(1):ジクミルパーオキサイド:商品名パークミルD(日本油脂製)
過酸化物(2):1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン:商品名パーヘキサ3M−40(日本油脂製)
老化防止剤:商品名ノクラックNS−6(大内新興化学工業社製)
接着剤:RB−182プライマー(日本ビーケミカル製)
接着剤層の形成厚さ:3μm
サーリン:米国デュポン社製アイオノマー樹脂
ハイミラン:三井・デュポンポリケミカル社製アイオノマー樹脂
AM7317:三井・デュポンポリケミカル社製酸含量18%のZn系アイオノマー樹脂
AM7318:三井・デュポンポリケミカル社製酸含量18%のNa系アイオノマー樹脂
ニュクレル:三井・デュポンポリケミカル社エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル三元共重合体
パンデックス:大日本インキ化学工業製、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーベヘニン酸:日本油脂社製NAA222−Sビーズ指定
水酸化カルシウム:白石工業社製CLS−B指定
ダイナロン:日本合成ゴム製ブロックコポリマー、ブタジエン−スチレン共重合水素添加物
【0065】
負荷変形量
98〜1274N荷重負荷時の変形量(mm)
【0066】
飛び性能
打撃マシンにて、ドライバー(W#1)にてヘッドスピード45m/sで打撃したときの飛距離について下記基準で評価した。
○:223m以上
×:223m未満
【0067】
SWアプローチスピン
打撃マシンにて、サンドウェッジ(SW)にてヘッドスピード20m/sで打撃したときのスピン量について下記基準で評価した。
○:6000rpm以上
△:5600rpm以上6000rpm未満
×:5600rpm未満
【0068】
フィーリング
各クラブ打撃(ドライバー、パター)によるプロゴルファー3名の打感を下記基準で評価した。
○:良好な打感
×:硬すぎる
【0069】
耐ささくれ性
打撃マシンにて、ピッチングウェッジでヘッドスピード45m/sで1回打撃したときの傷の程度を目視にて判断した。
目視判断の採点者3人により、2人以上がまだ使えると判断したものを○、1人以下がまだ使えると判断した場合を×とした。
○:まだ使用できる
×:もう使用できない。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
表3の結果より、本発明のゴルフボールはいずれも、飛び性能、アプローチショット、フィーリング、耐久性、スピン性能に優れたものであった。これに対して、比較例のゴルフボールは、飛び性能(飛距離)が劣る(比較例1及び3)か、また飛距離が優れるものは耐久性(耐ささくれ)が劣る(比較例2)か、打感が硬すぎる(比較例4,5)など少くとも何れかの欠点を有し、性能のバランスが悪いことがはっきり現れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すゴルフボールの断面図である。
【図2】ディンプルの最大直径Dm、最大深さDpを説明する説明図(断面図)である。
【符号の説明】
1 弾性ソリッドコア
2 カバー
3 中間層
4 カバー厚さ
G マルチピースソリッドゴルフボール
Claims (4)
- 弾性ソリッドコアに対し、多数のディンプルを備えた樹脂カバーで被覆し、これら弾性ソリッドコアとカバーとの間に、樹脂製中間層を配置したゴルフボールにおいて、98N(10kgf)の荷重を加えた状態から1274N(130kgf)に荷重を増加させたときに生じる変形量(mm)であって、弾性ソリッドコアの変形量をA、弾性ソリッドコアと該弾性ソリッドコアに被覆形成された中間層とを合わせた球体の変形量をB、ゴルフボールの変形量をCとすると、
1.14≦A/B≦1.30
1.05≦B/C≦1.16
の関係を満足すると共に、上記中間層のショアD硬度が58〜68であり、かつ上記カバーが上記中間層よりも軟らかく形成され、該カバーの中間層に対するショアD硬度差が7〜16であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。 - 上記カバーが熱可塑性又は熱硬化性ポリウレタン系エラストマーを主材として形成されたものである請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 上記中間層が、アイオノマー樹脂を70質量部以上含む樹脂組成物で形成されたものである請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 上記樹脂組成物が下記成分(a)〜(c)、
(a)オレフィン−不飽和カルボン酸ランダム共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルランダム共重合体若しくはこれら共重合体の金属イオン中和物、又は、これら共重合体,中和物の混合物 100質量部、
(b)分子量が280以上の脂肪酸又はその誘導体 5〜80質量部、
(c)上記(a)、(b)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物
0.1〜10質量部
を必須成分として配合する樹脂組成物にて形成されたものである請求項3記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
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