以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置する補強層8と、この補強層8の外側に位置するカバー10とを備えている。カバー10の表面には、多数のディンプル12が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル12以外の部分は、ランド14である。このゴルフボール2は、カバー10の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下である。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
コア4は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。このゴム組成物は、
(a)基材ゴム、
(b)共架橋剤、
及び
(c)架橋開始剤
を含んでいる。好ましくは、このゴム組成物は、
(d)カルボン酸及び/又はその塩
をさらに含んでいる。
基材ゴム(a)として、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。具体的には、基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。ポリブタジエンにおけるシス−1,4結合の比率は40質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
1,2−ビニル結合の比率が2.0質量%以下であるポリブタジエンが好ましい。このポリブタジエンは、コア4の反発性能に寄与しうる。この観点から、1,2−ビニル結合の比率は1.7質量%以下が好ましく、1.5質量%以下が特に好ましい。
ポリブタジエンの合成に用いられる好ましい触媒として、希土類元素系触媒が挙げられる。この触媒によって合成されたポリブタジエンは、1,2−ビニル結合の比率が少ない。特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジムを含む触媒で合成されたポリブタジエンが好ましい。
ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は30以上が好ましく、32以上がより好ましく、35以上が特に好ましい。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))は140以下が好ましく、120以下がより好ましく、100がさらに好ましく、80以下が特に好ましい。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、「JIS K6300」の規定に準拠して測定される。測定条件は、以下の通りである。
ローター:Lローター
予備加熱時間:1分
ローターの回転時間:4分
温度:100℃
作業性の観点から、ポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)は2.0以上が好ましく、2.2以上がより好ましく、2.4以上がさらに好ましく、2.6以上が特に好ましい。反発性能の観点から、分子量分布(Mw/Mn)は6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましく、3.4以下が特に好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量Mwが数平均分子量Mnで除されることで算出される。
分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC−8120GPC」)によって測定される。測定条件は、以下の通りである。
検知器:示差屈折計
カラム:GMHHXL(東ソー社製)
カラム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
分子量分布は、標準ポリスチレン換算値として算出される。
共架橋剤(b)は、
(b1)その炭素数が3以上8以下であるα,β−不飽和カルボン酸
及び/又は
(b2)その炭素数が3以上8以下であるα,β−不飽和カルボン酸の金属塩
である。
ゴム組成物が、共架橋剤(b)として、α,β−不飽和カルボン酸(b1)のみを含んでもよく、α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(b2)のみを含んでもよい。ゴム組成物が、共架橋剤(b)として、α,β−不飽和カルボン酸(b1)とα,β−不飽和カルボン酸の金属塩(b2)との両方を含んでもよい。
α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(b2)は、基材ゴムの分子鎖にグラフト重合することにより、ゴム分子を架橋する。ゴム組成物が、α,β−不飽和カルボン酸(b1)を含む場合、このゴム組成物は、金属化合物(e)をさらに含むことが好ましい。この金属化合物(e)は、ゴム組成物中でα,β−不飽和カルボン酸(b1)と反応する。この反応によって得られた塩が、基材ゴムの分子鎖にグラフト重合する。
金属化合物(e)の例として、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム及び水酸化銅のような金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛及び酸化銅のような金属酸化物;並びに炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム及び炭酸カリウムのような金属炭酸化物が挙げられる。二価金属を含む化合物が、好ましい。二価金属を含む化合物は、共架橋剤(b)と反応して、金属架橋を形成する。特に好ましい金属化合物(e)は、亜鉛化合物である。2種以上の金属化合物が併用されてもよい。
α,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びクロトン酸が例示される。α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(b2)における金属成分としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、アルミニウムイオン、錫イオン及びジルコニウムイオンが例示される。α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(b2)が、2種以上のイオンを含んでもよい。ゴム分子間の金属架橋が生じやすいとの観点から、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン及びカドミウムイオンのような、二価の金属イオンが好ましい。特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸の金属塩(b2)は、アクリル酸亜鉛である。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、共架橋剤(b)の量は、基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上が特に好ましい。打球感の観点から、この量は50質量部以下が好ましく、40質量部以下が特に好ましい。
好ましい架橋開始剤(c)は、有機過酸化物である。有機過酸化物は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。汎用性の観点から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、架橋開始剤(c)の量は、基材ゴム100質量部に対して0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感及び耐久性の観点から、この量は、5.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下が特に好ましい。
本発明では、カルボン酸又はその塩(d)の概念には、共架橋剤(b)は含まれない。カルボン酸又はその塩(d)のカルボン酸成分は、カルボキシル基を有する。このカルボン酸成分は、共架橋剤(b)との間で、カチオン成分を交換する。コア4を加熱・成形するとき、基材ゴムの架橋反応の反応熱は、コア4の中心近傍に溜まる。従って、コア4を加熱・成形するとき、中心部の温度は高い。温度は、中心から表面に向かって漸減する。カルボン酸又はその塩(d)と共架橋剤(b)とのカチオンの交換反応は、温度が高いコア4の中心部において起こりやすく、表面近傍において起こりにくい。換言すれば、金属架橋の切断は、コア4の中心部において起こりやすく、表面近傍において起こりにくい。その結果、コア4の架橋密度が、中心から表面に向かって高くなる。このコア4では、中心から表面に向かって硬度が直線的に増加する。非力なゴルファーが、ドライバーでこのゴルフボール2を打撃したとき、大きな打ち出し角度が得られる。
カルボン酸又はその塩(d)におけるカルボン酸の炭素数は、4以上30以下が好ましく、8以上30以下が特に好ましい。カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸(脂肪酸)及び芳香族カルボン酸が例示される。脂肪酸及びその塩が、好ましい。
ゴム組成物が、飽和脂肪酸又はその塩を含んでもよく、不飽和脂肪酸又はその塩を含んでもよい。飽和脂肪酸及びその塩が好ましい。
脂肪酸として、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ミリストレイン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、パルミトレイン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、12−ヒドロキシステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ガドレイン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、べヘニン酸(C22)、エルカ酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、ネルボン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)及びメリシン酸(C30)が例示される。2種以上の脂肪酸が併用されてもよい。
芳香族カルボン酸は、芳香環とカルボキシル基とを有する。芳香族カルボン酸として、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘメミリット酸(ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸)、トリメリット酸(ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸)、トリメシン酸(ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸)、メロファン酸(ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸)、プレーニト酸(ベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボン酸)、ピロメリット酸(ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、ジフェン酸(ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸)、トルイル酸(メチル安息香酸)、キシリル酸、プレーニチル酸(2,3,4−トリメチル安息香酸)、γ−イソジュリル酸(2,3,5−トリメチル安息香酸)、ジュリル酸(2,4,5−トリメチル安息香酸)、β−イソジュリル酸(2,4,6−トリメチル安息香酸)、α−イソジュリル酸(3,4,5−トリメチル安息香酸)、クミン酸(4−イソプロピル安息香酸)、ウビト酸(5−メチルイソフタル酸)、α−トルイル酸(フェニル酢酸)、ヒドロアトロパ酸(2−フェニルプロパン酸)及びヒドロケイ皮酸(3−フェニルプロパン酸)が例示される。
ゴム組成物が、ヒドロキシル基、アルコキシ基又はオキソ基で置換された芳香族カルボン酸又はその塩を含んでもよい。このカルボン酸としては、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、アニス酸(メトキシ安息香酸)、クレソチン酸(ヒドロキシ(メチル)安息香酸)、o−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸)、m−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸)、p−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸)、o−ピロカテク酸(2,3−ジヒドロキシ安息香酸)、β−レソルシル酸(2,4−ジヒドロキシ安息香酸)、γ−レソルシル酸(2,6−ジヒドロキシ安息香酸)、プロトカテク酸(3,4−ジヒドロキシ安息香酸)、α−レソルシル酸(3,5−ジヒドロキシ安息香酸)、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、イソバニリン酸(3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸)、ベラトルム酸(3,4−ジメトキシ安息香酸)、o−ベラトルム酸(2,3−ジメトキシ安息香酸)、オルセリン酸(2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸)、m−ヘミピン酸(4,5−ジメトキシフタル酸)、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、シリング酸(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ安息香酸)、アサロン酸(2,4,5−トリメトキシ安息香酸)、マンデル酸(ヒドロキシ(フェニル)酢酸)、バニルマンデル酸(ヒドロキシ(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸)、ホモアニス酸((4−メトキシフェニル)酢酸)、ホモゲンチジン酸((2,5−ジヒドロキシフェニル)酢酸)、ホモプロトカテク酸((3,4−ジヒドロキシフェニル)酢酸)、ホモバニリン酸((4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸)、ホモイソバニリン酸((3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)酢酸)、ホモベラトルム酸((3,4−ジメトキシフェニル)酢酸)、o−ホモベラトルム酸((2,3−ジメトキシフェニル)酢酸)、ホモフタル酸(2−(カルボキシメチル)安息香酸)、ホモイソフタル酸(3−(カルボキシメチル)安息香酸)、ホモテレフタル酸(4−(カルボキシメチル)安息香酸)、フタロン酸(2−(カルボキシカルボニル)安息香酸)、イソフタロン酸(3−(カルボキシカルボニル)安息香酸)、テレフタロン酸(4−(カルボキシカルボニル)安息香酸)、ベンジル酸(ヒドロキシジフェニル酢酸)、アトロラクチン酸(2−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸)、トロパ酸(3−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸)、メリロット酸(3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン酸)、フロレト酸(3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸)、ヒドロカフェー酸(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン酸)、ヒドロフェルラ酸(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン酸)、ヒドロイソフェルラ酸(3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロパン酸)、p−クマル酸(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリル酸)、ウンベル酸(3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸)、カフェー酸(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸)、フェルラ酸(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリル酸)、イソフェルラ酸(3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)アクリル酸)及びシナピン酸(3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)アクリル酸)が例示されうる。
カルボン酸塩のカチオン成分は、金属イオン又は有機陽イオンである。金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、銀イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、銅イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、錫イオン、ジルコニウムイオン及びチタンイオンが例示される。2種以上のイオンが併用されてもよい。
有機陽イオンは、炭素鎖を有する陽イオンである。有機陽イオンとして、有機アンモニウムイオンが挙げられる。有機アンモニウムイオンとして、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン及び2−エチルヘキシルアンモニウムイオンのような1級アンモニウムイオン;ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン及びオクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンのような2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンのような3級アンモニウムイオン;並びにジオクチルジメチルアンモニウムイオン及びジステアリルジメチルアンモニウムイオンのような4級アンモニウムイオンが例示される。2種以上の有機陽イオンが併用されてもよい。
好ましいカルボン酸塩として、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸又はオレイン酸のカリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩又はコバルト塩が例示される。
コア4の硬度分布の直線性の観点から、カルボン酸又はその塩(d)の量は、基材ゴム100質量部に対して3質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が特に好ましい。反発性能の観点から、この量は40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
共架橋剤(b)として、アクリル酸亜鉛が好んで用いられている。その表面がステアリン酸又はステアリン酸亜鉛でコーティングされているアクリル酸亜鉛が、存在する。ステアリン酸及びステアリン酸亜鉛は、アクリル酸亜鉛のゴムへの分散性を高める。このアクリル酸亜鉛をゴム組成物が含む場合、ステアリン酸及びステアリン酸亜鉛がカルボン酸又はその塩(d)として機能する。例えば、ステアリン酸を10質量%含むアクリル酸亜鉛を、ゴム組成物が25質量部含む場合は、ステアリン酸の量は2.5質量部とみなされ、アクリル酸亜鉛の量は22.5質量部とみなされる。
好ましくは、ゴム組成物は、有機硫黄化合物(f)をさらに含む。有機硫黄化合物(f)は、コア4の硬度分布の直線性と外剛内柔構造の程度との、コントロールに寄与しうる。有機硫黄化合物(f)として、チオール基又は硫黄数が2以上4以下であるポリスルフィド結合を有する有機化合物が挙げられる。この有機化合物の金属塩も、有機硫黄化合物(f)の概念に含まれる。有機硫黄化合物(f)として、脂肪族チオール、脂肪族チオカルボン酸、脂肪族ジチオカルボン酸及び脂肪族ポリスルフィドのような脂肪族化合物;複素環式化合物;脂環式チオール、脂環式チオカルボン酸、脂環式ジチオカルボン酸及び脂環式ポリスルフィドのような脂環式化合物;並びに芳香族化合物が例示される。有機硫黄化合物(f)の具体例として、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チオカルボン類、ジチオカルボン類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類及びチアゾール類が挙げられる。好ましい有機硫黄化合物は、チオフェノール類、硫黄数が2以上4以下であるポリスルフィド類、チオナフトール類及びチウラム類並びにこれらの金属塩である。
有機硫黄化合物(f)の具体例が、下記化学式(1)から(4)で表わされている。
上記化学式(1)において、R1からR5は、それぞれ、H又は置換基を表す。
上記化学式(2)において、R1からR10は、それぞれ、H又は置換基を表す。
上記化学式(3)において、R1からR5はそれぞれH又は置換基を表し、M1は1価の金属原子を表す。
上記化学式(4)において、R1からR10はそれぞれH又は置換基を表し、M2は2価の金属原子を表す。
上記式(1)から(4)において、置換基は、ハロゲン基(F、Cl、Br、I)、アルキル基、カルボキシル基(−COOH)、カルボキシル基のエステル(−COOR)、ホルミル基(−CHO)、アシル基(−COR)、ハロゲン化カルボニル基(−COX)、スルホ基(−SO3H)、スルホ基のエステル(−SO3R)、ハロゲン化スルホニル基(−SO2X)、スルフィノ基(−SO2H)、アルキルスルフィニル基(−SOR)、カルバモイル基(−CONH2)、ハロゲン化アルキル基、シアノ基(−CN)及びアルコキシ基(−OR)よりなる群から選択される少なくとも一種である。
上記化学式(1)で表される有機硫黄化合物の例示としては、チオフェノール;4−フルオロチオフェノール、2,5−ジフルオロチオフェノール、2,4,5−トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6−テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、2−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2,4−ジクロロチオフェノール、2,5−ジクロロチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、2,4,5,6−テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、4−ブロモチオフェノール、2,5−ジブロモチオフェノール、2,4,5−トリブロモチオフェノール、2,4,5,6−テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、4−ヨードチオフェノール、2,5−ジヨードチオフェノール、2,4,5−トリヨードチオフェノール、2,4,5,6−テトラヨードチオフェノール及びペンタヨードチオフェノールのようなハロゲン基で置換されたチオフェノール類;4−メチルチオフェノール、2,4,5−トリメチルチオフェノール、ペンタメチルチオフェノール、4−t−ブチルチオフェノール、2,4,5−トリ−t−ブチルチオフェノール及びペンタ−t−ブチルチオフェノールのようなアルキル基で置換されたチオフェノール類;4−カルボキシチオフェノール、2,4,6−トリカルボキシチオフェノール及びペンタカルボキシチオフェノールのようなカルボキシル基で置換されたチオフェノール類;4−メトキシカルボニルチオフェノール、2,4,6−トリメトキシカルボニルチオフェノール及びペンタメトキシカルボニルチオフェノールのようなアルコキシカルボニル基で置換されたチオフェノール類;4−ホルミルチオフェノール、2,4,6−トリホルミルチオフェノール及びペンタホルミルチオフェノールのようなホルミル基で置換されたチオフェノール類;4−アセチルチオフェノール、2,4,6−トリアセチルチオフェノール及びペンタアセチルチオフェノールのようなアシル基で置換されたチオフェノール類;4−クロロカルボニルチオフェノール、2,4,6−トリ(クロロカルボニル)チオフェノール及びペンタ(クロロカルボニル)チオフェノールのようなハロゲン化カルボニル基で置換されたチオフェノール類;4−スルホチオフェノール、2,4,6−トリスルホチオフェノール及びペンタスルホチオフェノールのようなスルホ基で置換されたチオフェノール類;4−メトキシスルホニルチオフェノール、2,4,6−トリメトキシスルホニルチオフェノール及びペンタメトキシスルホニルチオフェノールのようなアルコキシスルホニル基で置換されたチオフェノール類;4−クロロスルホニルチオフェノール、2,4,6−トリ(クロロスルホニル)チオフェノール及びペンタ(クロロスルホニル)チオフェノールのようなハロゲン化スルホニル基で置換されたチオフェノール類;4−スルフィノチオフェノール、2,4,6−トリスルフィノチオフェノール及びペンタスルフィノチオフェノールのようなスルフィノ基で置換されたチオフェノール類;4−メチルスルフィニルチオフェノール、2,4,6−トリ(メチルスルフィニル)チオフェノール及びペンタ(メチルスルフィニル)チオフェノールのようなアルキルスルフィニル基で置換されたチオフェノール類;4−カルバモイルチオフェノール、2,4,6−トリカルバモイルチオフェノール及びペンタカルバモイルチオフェノールのようなカルバモイル基で置換されたチオフェノール類;4−トリクロロメチルチオフェノール、2,4,6−トリ(トリクロロメチル)チオフェノール及びペンタ(トリクロロメチル)チオフェノールのようなハロゲン化アルキル基で置換されたチオフェノール類;4−シアノチオフェノール、2,4,6−トリシアノチオフェノール及びペンタシアノチオフェノールのようなシアノ基で置換されたチオフェノール類;並びに4−メトキシチオフェノール、2,4,6−トリメトキシチオフェノール及びペンタメトキシチオフェノールのようなアルコキシ基で置換されたチオフェノール類が例示される。これらのチオフェノール類は、1種類の置換基で置換されている。
上記化学式(1)で表される有機硫黄化合物の他の例として、少なくとも1種類の上記置換基と、他の置換基とで置換された化合物が挙げられる。他の置換基としては、ニトロ基(−NO2)、アミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)及びフェニルチオ基(−SPh)が例示される。この化合物の具体例としては、4−クロロ−2−ニトロチオフェノール、4−クロロ−2−アミノチオフェノール、4−クロロ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−クロロ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メチル−2−ニトロチオフェノール、4−メチル−2−アミノチオフェノール、4−メチル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−メチル−2−フェニルチオチオフェノール、4−カルボキシ−2−ニトロチオフェノール、4−カルボキシ−2−アミノチオフェノール、4−カルボキシ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−カルボキシ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メトキシカルボニル−2−ニトロチオフェノール、4−メトキシカルボニル−2−アミノチオフェノール、4−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−メトキシカルボニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−ホルミル−2−ニトロチオフェノール、4−ホルミル−2−アミノチオフェノール、4−ホルミル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−ホルミル−2−フェニルチオチオフェノール、4−アセチル−2−ニトロチオフェノール、4−アセチル−2−アミノチオフェノール、4−アセチル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−アセチル−2−フェニルチオチオフェノール、4−クロロカルボニル−2−ニトロチオフェノール、4−クロロカルボニル−2−アミノチオフェノール、4−クロロカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−クロロカルボニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−スルホ−2−ニトロチオフェノール、4−スルホ−2−アミノチオフェノール、4−スルホ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−スルホ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メトキシスルホニル−2−ニトロチオフェノール、4−メトキシスルホニル−2−アミノチオフェノール、4−メトキシスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−メトキシスルホニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−クロロスルホニル−2−ニトロチオフェノール、4−クロロスルホニル−2−アミノチオフェノール、4−クロロスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−クロロスルホニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−スルフィノ−2−ニトロチオフェノール、4−スルフィノ−2−アミノチオフェノール、4−スルフィノ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−スルフィノ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メチルスルフィニル−2−ニトロチオフェノール、4−メチル−2−アミノスルフィニルチオフェノール、4−メチルスルフィニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−メチルスルフィニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−カルバモイル−2−ニトロチオフェノール、4−カルバモイル−2−アミノチオフェノール、4−カルバモイル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−カルバモイル−2−フェニルチオチオフェノール、4−トリクロロメチル−2−ニトロチオフェノール、4−トリクロロメチル−2−アミノチオフェノール、4−トリクロロメチル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−トリクロロメチル−2−フェニルチオチオフェノール、4−シアノ−2−ニトロチオフェノール、4−シアノ−2−アミノチオフェノール、4−シアノ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−シアノ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メトキシ−2−ニトロチオフェノール、4−メトキシ−2−アミノチオフェノール、4−メトキシ−2−ヒドロキシチオフェノール及び4−メトキシ−2−フェニルチオチオフェノールが挙げられる。
上記化学式(1)で表される有機硫黄化合物のさらに他の例示として、2種類以上の置換基で置換された化合物が挙げられる。この化合物の具体的として、4−アセチル−2−クロロチオフェノール、4−アセチル−2−メチルチオフェノール、4−アセチル−2−カルボキシチオフェノール、4−アセチル−2−メトキシカルボニルチオフェノール、4−アセチル−2−ホルミルチオフェノール、4−アセチル−2−クロロカルボニルチオフェノール、4−アセチル−2−スルホチオフェノール、4−アセチル−2−メトキシスルホニルチオフェノール、4−アセチル−2−クロロスルホニルチオフェノール、4−アセチル−2−スルフィノチオフェノール、4−アセチル−2−メチルスルフィニルチオフェノール、4−アセチル−2−カルバモイルチオフェノール、4−アセチル−2−トリクロロメチルチオフェノール、4−アセチル−2−シアノチオフェノール及び4−アセチル−2−メトキシチオフェノール等が挙げられる。
上記化学式(2)で表される有機硫黄化合物の例示としては、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラヨードフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィドのようなハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリ−t−ブチルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ−t−ブチルフェニル)ジスルフィドのようなアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−カルボキシフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタカルボキシフェニル)ジスルフィドのようなカルボキシル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリメトキシカルボニルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタメトキシカルボニルフェニル)ジスルフィドのようなアルコキシカルボニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−ホルミルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリホルミルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタホルミルフェニル)ジスルフィドのようなホルミル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−アセチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリアセチルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタアセチルフェニル)ジスルフィドのようなアシル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−クロロカルボニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリ(クロロカルボニル)フェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ(クロロカルボニル)フェニル)ジスルフィドのようなハロゲン化カルボニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−スルホフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリスルホフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタスルホフェニル)ジスルフィドのようなスルホ基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−メトキシスルホニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリメトキシスルホニルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタメトキシスルホニルフェニル)ジスルフィドのようなアルコキシスルホニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−クロロスルホニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリ(クロロスルホニル)フェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ(クロロスルホニル)フェニル)ジスルフィドのようなハロゲン化スルホニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−スルフィノフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリスルフィノフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタスルフィノフェニル)ジスルフィドのようなスルフィノ基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−メチルスルフィニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリ(メチルスルフィニル)フェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ(メチルスルフィニル)フェニル)ジスルフィドのようなアルキルスルフィニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−カルバモイルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリカルバモイルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタカルバモイルフェニル)ジスルフィドのようなカルバモイル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−トリクロロメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリ(トリクロロメチル)フェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ(トリクロロメチル)フェニル)ジスルフィドのようなハロゲン化アルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリシアノフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタシアノフェニル)ジスルフィドのようなシアノ基で置換されたジフェニルジスルフィド類;並びにビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタメトキシフェニル)ジスルフィドのようなアルコキシ基で置換されたジフェニルジスルフィド類が例示される。これらのジフェニルジスルフィド類は、1種類の置換基で置換されている。
上記化学式(2)で表される有機硫黄化合物の他の例として、少なくとも1種類の上記置換基と、他の置換基とで置換された化合物が挙げられる。他の置換基としては、ニトロ基(−NO2)、アミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)及びフェニルチオ基(−SPh)が例示される。この化合物の具体例としては、ビス(4−クロロ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルボキシ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルボキシ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルボキシ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルボキシ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシカルボニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシカルボニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシカルボニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ホルミル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ホルミル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ホルミル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ホルミル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロカルボニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロカルボニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロカルボニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロカルボニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルホ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルホ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルホ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルホ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシスルホニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシスルホニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシスルホニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシスルホニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロスルホニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロスルホニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロスルホニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロスルホニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルフィノ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルフィノ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルフィノ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルフィノ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルスルフィニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルスルフィニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルスルフィニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルスルフィニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−トリクロロメチル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−トリクロロメチル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−トリクロロメチル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−トリクロロメチル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド及びビス(4−メトキシ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィドが挙げられる。
上記化学式(2)で表される有機硫黄化合物のさらに他の例示として、2種類以上の置換基で置換された化合物が挙げられる。この化合物の具体的として、ビス(4−アセチル−2−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−カルボキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−メトキシカルボニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−ホルミルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−クロロカルボニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−スルホフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−メトキシスルホニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−クロロスルホニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−スルフィノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−メチルスルフィニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−カルバモイルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−トリクロロメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−シアノフェニル)ジスルフィド及びビス(4−アセチル−2−メトキシフェニル)ジスルフィドが挙げられる。
上記化学式(3)で表される有機硫黄化合物の例示としては、チオフェノールナトリウム塩;4−フルオロチオフェノールナトリウム塩、2,5−ジフルオロチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリフルオロチオフェノールナトリウム塩、2,4,5,6−テトラフルオロチオフェノールナトリウム塩、ペンタフルオロチオフェノールナトリウム塩、4−クロロチオフェノールナトリウム塩、2,5−ジクロロチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリクロロチオフェノールナトリウム塩、2,4,5,6−テトラクロロチオフェノールナトリウム塩、ペンタクロロチオフェノールナトリウム塩、4−ブロモチオフェノールナトリウム塩、2,5−ジブロモチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリブロモチオフェノールナトリウム塩、2,4,5,6−テトラブロモチオフェノールナトリウム塩、ペンタブロモチオフェノールナトリウム塩、4−ヨードチオフェノールナトリウム塩、2,5−ジヨードチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリヨードチオフェノールナトリウム塩、2,4,5,6−テトラヨードチオフェノールナトリウム塩及びペンタヨードチオフェノールナトリウム塩のようなハロゲン基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−メチルチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリメチルチオフェノールナトリウム塩、ペンタメチルチオフェノールナトリウム塩、4−t−ブチルチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリ−t−ブチルチオフェノールナトリウム塩及びペンタ(t−ブチル)チオフェノールナトリウム塩のようなアルキル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−カルボキシチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリカルボキシチオフェノールナトリウム塩及びペンタカルボキシチオフェノールナトリウム塩のようなカルボキシル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−メトキシカルボニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリメトキシカルボニルチオフェノールナトリウム塩及びペンタメトキシカルボニルチオフェノールナトリウム塩のようなアルコキシカルボニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−ホルミルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリホルミルチオフェノールナトリウム塩及びペンタホルミルチオフェノールナトリウム塩のようなホルミル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−アセチルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリアセチルチオフェノールナトリウム塩及びペンタアセチルチオフェノールナトリウム塩のようなアシル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−クロロカルボニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリ(クロロカルボニル)チオフェノールナトリウム塩及びペンタ(クロロカルボニル)チオフェノールナトリウム塩のようなハロゲン化カルボニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−スルホチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリスルホチオフェノールナトリウム塩及びペンタスルホチオフェノールナトリウム塩のようなスルホ基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−メトキシスルホニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリメトキシスルホニルチオフェノールナトリウム塩及びペンタメトキシスルホニルチオフェノールナトリウム塩のようなアルコキシスルホニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−クロロスルホニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリ(クロロスルホニル)チオフェノールナトリウム塩及びペンタ(クロロスルホニル)チオフェノールナトリウム塩のようなハロゲン化スルホニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−スルフィノチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリスルフィノチオフェノールナトリウム塩及びペンタスルフィノチオフェノールナトリウム塩のようなスルフィノ基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−メチルスルフィニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリ(メチルスルフィニル)チオフェノールナトリウム塩及びペンタ(メチルスルフィニル)チオフェノールナトリウム塩のようなアルキルスルフィニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−カルバモイルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリカルバモイルチオフェノールナトリウム塩及びペンタカルバモイルチオフェノールナトリウム塩のようなカルバモイル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−トリクロロメチルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリ(トリクロロメチル)チオフェノールナトリウム塩及びペンタ(トリクロロメチル)チオフェノールナトリウム塩のようなハロゲン化アルキル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−シアノチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリシアノチオフェノールナトリウム塩及びペンタシアノチオフェノールナトリウム塩のようなシアノ基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;並びに4−メトキシチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリメトキシチオフェノールナトリウム塩及びペンタメトキシチオフェノールナトリウム塩のようなアルコキシ基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類が例示される。これらチオフェノールナトリウム塩類は、1種類の置換基で置換されている。
上記化学式(3)で表される有機硫黄化合物の他の例として、少なくとも1種類の上記置換基と、他の置換基とで置換された化合物が挙げられる。他の置換基としては、ニトロ基(−NO2)、アミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)及びフェニルチオ基(−SPh)が例示される。この化合物の具体例としては、4−クロロ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−クロロ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−クロロ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−クロロ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メチル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メチル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メチル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−メチル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−カルボキシ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−カルボキシ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−カルボキシ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−カルボキシ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシカルボニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシカルボニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシカルボニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−ホルミル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−ホルミル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−ホルミル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−ホルミル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−クロロカルボニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−クロロカルボニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−クロロカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−クロロカルボニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−スルホ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−スルホ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−スルホ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−スルホ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシスルホニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシスルホニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシスルホニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−クロロスルホニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−クロロスルホニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−クロロスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−クロロスルホニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−スルフィノ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−スルフィノ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−スルフィノ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−スルフィノ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メチルスルフィニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メチルスルフィニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メチルスルフィニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−メチルスルフィニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−カルバモイル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−カルバモイル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−カルバモイル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−カルバモイル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−トリクロロメチル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−トリクロロメチル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−トリクロロメチル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−トリクロロメチル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−シアノ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−シアノ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−シアノ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−シアノ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩及び4−メトキシ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩が挙げられる。
上記化学式(3)で表される有機硫黄化合物のさらに他の例示として、2種類以上の置換基で置換された化合物が挙げられる。この化合物の具体的として、4−アセチル−2−クロロチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−メチルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−カルボキシチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−メトキシカルボニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−ホルミルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−クロロカルボニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−スルホチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−メトキシスルホニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−クロロスルホニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−スルフィノチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−メチルスルフィニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−カルバモイルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−トリクロロメチルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−シアノチオフェノールナトリウム塩及び4−アセチル−2−メトキシチオフェノールナトリウム塩が挙げられる。上記化学式(3)において、M1で表される1価の金属として、ナトリウム、リチウム、カリウム、銅(I)及び銀(I)が例示される。
上記化学式(4)で表される有機硫黄化合物として、チオフェノール亜鉛塩;4−フルオロチオフェノール亜鉛塩、2,5−ジフルオロチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリフルオロチオフェノール亜鉛塩、2,4,5,6−テトラフルオロチオフェノール亜鉛塩、ペンタフルオロチオフェノール亜鉛塩、4−クロロチオフェノール亜鉛塩、2,5−ジクロロチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリクロロチオフェノール亜鉛塩、2,4,5,6−テトラクロロチオフェノール亜鉛塩、ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩、4−ブロモチオフェノール亜鉛塩、2,5−ジブロモチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリブロモチオフェノール亜鉛塩、2,4,5,6−テトラブロモチオフェノール亜鉛塩、ペンタブロモチオフェノール亜鉛塩、4−ヨードチオフェノール亜鉛塩、2,5−ジヨードチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリヨードチオフェノール亜鉛塩、2,4,5,6−テトラヨードチオフェノール亜鉛塩及びペンタヨードチオフェノール亜鉛塩のようなハロゲン基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−メチルチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリメチルチオフェノール亜鉛塩、ペンタメチルチオフェノール亜鉛塩、4−t−ブチルチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリ−t−ブチルチオフェノール亜鉛塩及びペンタ−t−ブチルチオフェノール亜鉛塩のようなアルキル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−カルボキシチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリカルボキシチオフェノール亜鉛塩及びペンタカルボキシチオフェノール亜鉛塩のようなカルボキシル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−メトキシカルボニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリメトキシカルボニルチオフェノール亜鉛塩及びペンタメトキシカルボニルチオフェノール亜鉛塩のようなアルコキシカルボニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−ホルミルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリホルミルチオフェノール亜鉛塩及びペンタホルミルチオフェノール亜鉛塩のようなホルミル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−アセチルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリアセチルチオフェノール亜鉛塩及びペンタアセチルチオフェノール亜鉛塩のようなアシル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−クロロカルボニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリ(クロロカルボニル)チオフェノール亜鉛塩及びペンタ(クロロカルボニル)チオフェノール亜鉛塩のようなハロゲン化カルボニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−スルホチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリスルホチオフェノール亜鉛塩及びペンタスルホチオフェノール亜鉛塩のようなスルホ基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−メトキシスルホニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリメトキシスルホニルチオフェノール亜鉛塩及びペンタメトキシスルホニルチオフェノール亜鉛塩のようなアルコキシスルホニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−クロロスルホニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリ(クロロスルホニル)チオフェノール亜鉛塩及びペンタ(クロロスルホニル)チオフェノール亜鉛塩のようなハロゲン化スルホニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−スルフィノチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリスルフィノチオフェノール亜鉛塩及びペンタスルフィノチオフェノール亜鉛塩のようなスルフィノ基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−メチルスルフィニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリ(メチルスルフィニル)チオフェノール亜鉛塩及びペンタ(メチルスルフィニル)チオフェノール亜鉛塩のようなアルキルスルフィニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−カルバモイルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリカルバモイルチオフェノール亜鉛塩及びペンタカルバモイルチオフェノール亜鉛塩のようなカルバモイル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−トリクロロメチルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリ(トリクロロメチル)チオフェノール亜鉛塩及びペンタ(トリクロロメチル)チオフェノール亜鉛塩のようなハロゲン化アルキル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−シアノチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリシアノチオフェノール亜鉛塩及びペンタシアノチオフェノール亜鉛塩のようなシアノ基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;並びに4−メトキシチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリメトキシチオフェノール亜鉛塩及びペンタメトキシチオフェノール亜鉛塩のようなアルコキシ基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類が例示される。これらのチオフェノール亜鉛塩類は、1種類の置換基で置換されている。
上記化学式(4)で表される有機硫黄化合物の他の例として、少なくとも1種類の上記置換基と、他の置換基とで置換された化合物が挙げられる。他の置換基としては、ニトロ基(−NO2)、アミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)及びフェニルチオ基(−SPh)が例示される。この化合物の具体例としては、4−クロロ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−クロロ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−クロロ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−クロロ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メチル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メチル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メチル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−メチル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−カルボキシ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−カルボキシ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−カルボキシ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−カルボキシ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシカルボニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシカルボニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシカルボニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−ホルミル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−ホルミル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−ホルミル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−ホルミル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−クロロカルボニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−クロロカルボニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−クロロカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−クロロカルボニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−スルホ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−スルホ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−スルホ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−スルホ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシスルホニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシスルホニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシスルホニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−クロロスルホニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−クロロスルホニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−クロロスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−クロロスルホニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−スルフィノ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−スルフィノ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−スルフィノ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−スルフィノ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メチルスルフィニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メチルスルフィニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メチルスルフィニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−メチルスルフィニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−カルバモイル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−カルバモイル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−カルバモイル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−カルバモイル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−トリクロロメチル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−トリクロロメチル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−トリクロロメチル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−トリクロロメチル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−シアノ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−シアノ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−シアノ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−シアノ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩及び4−メトキシ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩が挙げられる。
上記化学式(4)で表される有機硫黄化合物のさらに他の例示として、2種類以上の置換基で置換された化合物が挙げられる。この化合物の具体的として、4−アセチル−2−クロロチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−メチルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−カルボキシチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−メトキシカルボニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−ホルミルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−クロロカルボニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−スルホチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−メトキシスルホニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−クロロスルホニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−スルフィノチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−メチルスルフィニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−カルバモイルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−トリクロロメチルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−シアノチオフェノール亜鉛塩及び4−アセチル−2−メトキシチオフェノール亜鉛塩が挙げられる。上記化学式(4)においてM2で表される2価の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(II)、マンガン(II)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、ジルコニウム(II)及びスズ(II)が例示される。
ナフタレンチオール類として、2−ナフタレンチオール、1−ナフタレンチオール、2−クロロ−1−ナフタレンチオール、2−ブロモ−1−ナフタレンチオール、2−フルオロ−1−ナフタレンチオール、2−シアノ−1−ナフタレンチオール、2−アセチル−1−ナフタレンチオール、1−クロロ−2−ナフタレンチオール、1−ブロモ−2−ナフタレンチオール、1−フルオロ−2−ナフタレンチオール、1−シアノ−2−ナフタレンチオール及び1−アセチル−2−ナフタレンチオール並びにこれらの金属塩が例示される。1−ナフタレンチオール及び2−ナフタレンチオール並びにこれらの亜鉛塩が好ましい。
スルフェンアミド系有機硫黄化合物として、N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド及びN−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが例示される。チウラム系有機硫黄化合物として、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドが例示される。ジチオカルバミン酸塩類として、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(III)、ジエチルジチオカルバミン酸セレン及びジエチルジチオカルバミン酸テルルが例示される。チアゾール系有機硫黄化合物として、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT);ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS);2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩又はシクロヘキシルアミン塩;2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール;及び2−(2,6−ジエチル−4−モリホリノチオ)ベンゾチアゾールが例示される。
汎用性の観点から、特に好ましい有機硫黄化合物(f)は、ジフェニルジスルフィド及びビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
反発性能の観点から、有機硫黄化合物(f)の含有量は、基材ゴム100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上が特に好ましい。反発性能の観点から、この量は5.0質量部以下が好ましく、2.0質量部以下が特に好ましい。
コア4に、比重調整等の目的で充填剤が配合されてもよい。好適な充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤の量は、コア4の意図した比重が達成されるように適宜決定される。特に好ましい充填剤は、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、比重調整の役割のみならず、架橋助剤としても機能する。
コア4のゴム組成物には、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤、硫黄、加硫促進剤等が、必要に応じて添加される。このゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が分散してもよい。
コア4の中心点のJIS−C硬度Hoは、40以上70以下が好ましい。硬度Hoが40以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、硬度Hoは45以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。硬度Hoが75以下であるコア4では、外剛内柔構造が達成されうる。このコア4を備えたゴルフボール2では、大きな打ち出し角度が達成されうる。この観点から、硬度Hoは70以下がより好ましく、65以下が特に好ましい。コア4が2つに切断されて得られる半球の切断面の中心に、JIS−C硬度計が押し付けられることにより、硬度Hoが測定される。測定には、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
コア4の表面のJIS−C硬度Hs1は、70以上85以下が好ましい。硬度Hs1が70以上であるコア4では、外剛内柔構造が達成されうる。このコア4を備えたゴルフボール2では、大きな打ち出し角度が達成されうる。この観点から、硬度Hs1は73以上がより好ましく、76以上が特に好ましい。硬度Hs1が85以下であるゴルフボール2は、耐久性に優れる。この観点から、硬度Hs1は82以下がより好ましく、80以下が特に好ましい。コア4の表面にJIS−C硬度計が押し付けられることにより、硬度Hs1が測定される。測定には、自動ゴム硬度測定装置(前述の商品名「P1」)が用いられる。
コア4の直径は、38.2mmよりも大きい。このコア4により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成されうる。このコア4により、ゴルフボール2の外剛内柔構造が達成されうる。この観点から、直径は38.4mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、直径は、39.5mm以下が好ましい。
打球感の観点から、コア4の圧縮変形量D1は3.6mm以上が好ましい。このコア4により、大きな打ち出し角度が達成されうる。このコア4により、ソフトな打球感が達成されうる。これらの観点から、圧縮変形量D1は3.8mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、圧縮変形量D1は、4.3mm以下が好ましい。
コア4が、2以上の層を有してもよい。この場合、いずれかの層において、前述のゴム組成物が用いられる。
中間層6には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の基材ポリマーとして、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド及びポリオレフィンが例示される。
特に好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。アイオノマー樹脂を含む中間層6を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。中間層6に、アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合、基材ポリマーの主成分がアイオノマー樹脂であることが好ましい。具体的には、基材ポリマーの全量に対するアイオノマー樹脂の比率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい二元共重合体は、80質量%以上90質量%以下のα−オレフィンと、10質量%以上20質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸とを含む。この二元共重合体は、反発性能に優れる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。好ましい三元共重合体は、70質量%以上85質量%以下のα−オレフィンと、5質量%以上30質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸と、1質量%以上25質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとを含む。この三元共重合体は、反発性能に優れる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましいアイオノマー樹脂は、エチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体である。
二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボール2の反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンである。
アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7329」、「ハイミランMK7320」及び「ハイミランMK7329」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。
中間層6に、2種以上のアイオノマー樹脂が併用されてもよい。1価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂と2価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂とが併用されてもよい。
アイオノマー樹脂と併用されうる好ましい樹脂は、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーである。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーは、アイオノマー樹脂との相溶性に優れる。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物は、流動性に優れる。
スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンブロックと、ソフトセグメントとを備えている。典型的なソフトセグメントは、ジエンブロックである。ジエンブロックの化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが例示される。ブタジエン及びイソプレンが好ましい。2以上の化合物が併用されてもよい。
スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、SBSの水添物、SISの水添物及びSIBSの水添物が含まれる。SBSの水添物としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)が挙げられる。SISの水添物としては、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が挙げられる。SIBSの水添物としては、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)が挙げられる。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーにおけるスチレン成分の含有率は10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感の観点から、この含有率は50質量%以下が好ましく、47質量%以下がより好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
本発明において、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、SBS、SIS、SIBS、SEBS、SEPS及びSEEPS並びにこれらの水添物からなる群から選択された1種又は2種以上と、オレフィンとのアロイが含まれる。このアロイ中のオレフィン成分は、アイオノマー樹脂との相溶性向上に寄与すると推測される。このアロイが用いられることにより、ゴルフボール2の反発性能が向上する。好ましくは、炭素数が2以上10以下のオレフィンが用いられる。好適なオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン及びペンテンが例示される。エチレン及びプロピレンが特に好ましい。
ポリマーアロイの具体例としては、三菱化学社の商品名「ラバロンT3221C」、「ラバロンT3339C」、「ラバロンSJ4400N」、「ラバロンSJ5400N」、「ラバロンSJ6400N」、「ラバロンSJ7400N」、「ラバロンSJ8400N」、「ラバロンSJ9400N」及び「ラバロンSR04」が挙げられる。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーの他の具体例としては、ダイセル化学工業社の商品名「エポフレンドA1010」及びクラレ社の商品名「セプトンHG−252」が挙げられる。
中間層6の樹脂組成物には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。
コア4及び中間層6からなる球体において外剛内柔構造が達成されうるとの観点から、中間層6の材料のショアD硬度Hmは50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感の観点から、硬度Hmは70以下が好ましく、68以下が特に好ましい。硬度Hmは、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して、自動ゴム硬度測定装置(前述の商品名「P1」)に取り付けられたショアD型硬度計によって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。中間層6の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが用いられる。
コア4及び中間層6からなる球体において、外剛内柔構造に起因する大きな打ち出し角度が達成されうるとの観点から、中間層6の厚みTmは0.8mm以上が好ましく、1.0mm以上が特に好ましい。打球感及びコントロール性能の観点から、厚みTmは2.0mm以下が好ましく、1.8mm以下が特に好ましい。
中間層68の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。
コア4及び中間層6からなる球体において外剛内柔構造が達成されうるとの観点から、この球体の表面の硬度Hs2は50以上が好ましく、55以上がより好ましく、60以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感の観点から、硬度Hs2は70以下が好ましく、68以下が特に好ましい。この球体の表面にショアD硬度計が押し付けられることにより、硬度Hs2が測定される。測定には、自動ゴム硬度測定装置(前述の商品名「P1」)が用いられる。
カバー10には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の好ましい基材ポリマーは、ポリウレタン及びウレア樹脂である。特に、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンは、軟質である。ポリウレタンを含む樹脂組成物からなるカバー10を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。この樹脂組成物からなるカバー10は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。ポリウレタンは、カバー10の耐擦傷性能にも寄与する。さらに、ポリウレタンは、パター又はショートアイアンで打撃されたときの優れた打球感にも寄与しうる。
カバー10の成形容易の観点から、好ましい基材ポリマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。
ポリウレタンは、ポリオール成分を含む。ポリオールとしては、重合体ポリオールが好ましい。重合体ポリオールの具体例としては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)のようなポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)のような縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートのようなポリカーボネートポリオール;並びにアクリルポリオールが挙げられる。2種以上のポリオールが併用されてもよい。
特に、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。ゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有率との相関が大きい。ポリウレタンが適切な量のポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むゴルフボール2は、ショートアイアンショットでのショットにおけるコントロール性能に優れる。
コントロール性能の観点から、ポリオールの数平均分子量は200以上が好ましく、400以上がより好ましく、650以上が特に好ましい。ドライバーショットでのスピンの抑制の観点から、この分子量は1500以下が好ましく、1400以下が特に好ましい。
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定される。測定条件は、以下の通りである。
装置:HLC−8120GPC(東ソー社)
溶離液:テトラヒドロフラン
濃度:0.2質量%
温度:40℃
カラム:TSKgel SuperHM−M(東ソー社)
サンプル量:5マイクロリットル
流速:0.5ミリリットル/min
標準物質:ポリスチレン(東ソー社の「PStQuick Kit−H」)
重合体ポリオール成分の水酸基価は、94mgKOH/g以上が好ましく、112mgKOH/g以上が特に好ましい。この水酸基価は561mgKOH/g以下が好ましく、173mgKOH/g以下が特に好ましい。
ポリウレタン中のイソシアネート成分としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)のような脂環式ポリイソシアネート;並びにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のような脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。2以上のポリイソシアネートが併用されてもよい。耐候性の観点から、TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI及びH12MDIが好ましく、H12MDIが特に好ましい。
ポリウレタンが、その成分として鎖延長剤を含んでもよい。鎖延長剤としては、低分子量ポリオール及び低分子量ポリアミンが例示される。
低分子量ポリオールとしては、ジオール、トリオール、テトラオール及びヘキサオールが挙げられる。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール及びオクタンジオールが挙げられる。トリオールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールが挙げられる。テトラオールの具体例としては、ペンタエリスリトール及びソルビトールが挙げられる。1,4−ブタンジオールが好ましい。
低分子量ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、単環式芳香族ポリアミン及び多環式芳香族ポリアミンが挙げられる。脂肪族ポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが挙げられる。単環式芳香族ポリアミンの具体例としては、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジメチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン及びキシリレンジアミンが挙げられる。
鎖延長剤の数平均分子量は30以上が好ましく、40以上がより好ましく、45以上が特に好ましい。この分子量は、400以下が好ましく、350以下がより好ましく、200以下が特に好ましい。鎖延長剤として使用する低分子量ポリオール及び低分子量ポリアミンは、分子量分布をほとんど有さない低分子化合物である。従って、この低分子量ポリオール及び低分子量ポリアミンは、上記重合体ポリオールとは区別され得る。
ポリウレタンとイソシアネート化合物とを含む組成物から、カバー10が成形されてもよい。カバー10の成形時又は成形後に、このイソシアネート化合物によってポリウレタンが架橋される。
カバー10には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの具体例としては、BASFジャパン社の商品名「エラストランNY78A」、「エラストランNY80A」、「エラストランNY82A」、「エラストランNY84A」、「エラストランNY85A」、「エラストランNY88A」、「エラストランNY90A」、「エラストランNY97A」、「エラストランNY585」及び「エラストランXKP016N」;並びに大日精化工業社の商品名「レザミンP4585LS」及び「レザミンPS62490」が挙げられる。カバー10の小さな硬度が達成されうるとの観点から、「エラストランNY80A」、「エラストランNY82A」、「エラストランNY84A」、「エラストランNY85A」及び「エラストランNY90A」が特に好ましい。
可塑性ポリウレタンエラストマーと他の樹脂とが併用されてもよい。併用されうる樹脂としては、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー及びアイオノマー樹脂が挙げられる。熱可塑性ポリウレタンエラストマーと他の樹脂とが併用される場合、スピン性能及び耐擦傷性能の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが基材ポリマーの主成分とされる。全基材ポリマーに占める熱可塑性ポリウレタンエラストマーの比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
カバー10には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。
カバー10のショアD硬度Hcは、37以下である。硬度Hcが37以下であるカバー10を有するゴルフボール2は、コントロール性能に優れる。この観点から、硬度Hcは35以下がより好ましく、32以下が特に好ましい。ドライバーでのショットにおける飛距離の観点から、硬度Hcは10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が特に好ましい。硬度Hcは、硬度Hmの測定方法と同様の方法にて測定される。
カバー10の材料の硬度Hcは、中間層6の硬度Hmよりも小さい。両者の差(Hm−Hc)は、28より大きい。差(Hm−Hc)が28より大きいゴルフボール2では、非力なゴルファーによってドライバーで打撃されたときの大きな打ち出し角度と、ショートアイアンで打撃されたときの大きなスピン速度とが両立される。この観点から、差(Hm−Hc)は32以上がより好ましく、34以上が特に好ましい。差(Hm−Hc)は、40以下が好ましい。
ゴルフボール2の表面のショアD硬度計Hs3は、55以上が好ましく、60以上が特に好ましい。硬度Hs3は、70以下が好ましい。ゴルフボール2の表面にショアD硬度計が押し付けられることにより、硬度Hs3が測定される。測定には、自動ゴム硬度測定装置(前述の商品名「P1」)が用いられる。
この硬度Hs3は、コア4及び中間層6からなる球体の表面のショアD硬度Hs2よりも小さい。両者の差(Hs2−Hs3)は5未満である。差(Hm−Hc)が28より大きく、かつ差(Hs2−Hs3)が5未満であるゴルフボール2がドライバーで打撃されたとき、コア4及び中間層6からなる球体が大きく歪む。この球体は外剛内柔構造を有するので、大きな打ち出し角度が達成される。大きな打ち出し角度により、大きな飛距離が得られる。このゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたとき、この球体の歪みは小さい。ショートアイアンで打撃されたときのゴルフボール2の挙動は、主としてカバー10に依存する。このカバー10は、ゴルフボール2とクラブフェースとのスリップを抑制する。スリップの抑制により、大きなスピン速度が得られる。大きなスピン速度により、優れたコントロール性能が達成される。このゴルフボール2では、ドライバーでのショットにおける飛行性能と、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能とが両立される。この観点から、差(Hs2−Hs3)は4以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。差(Hs2−Hs3)は1以上が好ましい。
ドライバーでのショットにおける飛行性能と、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能との両立の観点から、比(Hs2−Hs3)/(Hm−Hc)は0.10以下が好ましく、0.06以下が特に好ましい。
ドライバーで打撃されたときに大きな打ち出し角度が達成されうるとの観点から、カバー10の厚みは0.8mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましく、0.5mm以下が特に好ましい。ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能の観点から、この厚みは0.10mm以上が好ましく、0.15mm以上が特に好ましい。
中間層6の厚みTmは、カバー10の厚みHcよりも大きい。両者の比(Tm/Tc)は、3.0より大きく5.0未満である。比(Tm/Tc)が3.0より大きいゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときに大きな打ち出し角度が達成されうる。比(Tm/Tc)が5.0未満であるゴルフボール2では、ショートアイアンで打撃されたときに大きなスピン速度が達成される。さらに、比(Tm/Tc)が5.0未満であるゴルフボール2では、ソフトな打球感が達成される。これらの観点から、比(Tm/Tc)は4.0以下が特に好ましい。
カバー10の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。カバー10の成形時に、成形型のキャビティ面に形成されたピンプルにより、ディンプル12が形成される。
カバー10が中間層6の上に直接に積層されると、カバー10の基材樹脂が中間層6の基材樹脂と異なっていることに起因して、カバー10が中間層6と堅固には密着しない。本発明に係るゴルフボール2では、中間層6とカバー10との間に補強層8が存在している。この補強層8は、中間層6と堅固に密着し、カバー10とも堅固に密着する。この補強層8は、中間層6とカバー10との密着性を高める。ゴルフボール2は、繰り返し打撃されても破損しにくい。このゴルフボール2がショートアイアンで打撃されても、カバー10に傷及びシワが生じにくい。このゴルフボール2では、ゴルフクラブで打撃されたときのエネルギー伝達のロスが小さい。このゴルフボール2は、反発性能に優れる。
補強層8は、中間層6の表面に接着剤が塗布され、この接着剤が乾燥することで形成されている。この接着剤の基材ポリマーは、二液硬化型熱硬化性樹脂が好適に用いられる。二液硬化型熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂及びセルロース系樹脂が挙げられる。補強層8の強度及び耐久性の観点から、二液硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
好ましい二液硬化型エポキシ樹脂は、ポリアミン化合物を含有する硬化剤によってビスフェノールA型エポキシ樹脂が硬化されて得られる。この二液硬化型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が用いられているので、柔軟性、耐薬品性、耐熱性及び強靭性に優れる。
接着剤は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び溶媒を含む主剤と、ポリアミン化合物及び溶媒を含む硬化剤とが混合されることで得られる。主剤及び硬化剤における溶媒として、キシレン及びトルエンのような有機溶媒並びに水があげられる。
ポリアミン化合物の具体例としては、ポリアミドアミン及びその変性物が挙げられる。ポリアミドアミンは、複数のアミノ基と、1個以上のアミド基とを有する。このアミノ基が、エポキシ基と反応し得る。ポリアミドアミンは、重合脂肪酸とポリアミンとの縮合反応によって得られる。典型的な重合脂肪酸は、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸を多く含む天然脂肪酸類が触媒存在下で加熱されて合成されることで得られる。不飽和脂肪酸の具体例としては、トール油、大豆油、亜麻仁油及び魚油が挙げられる。ダイマー分が90質量%以上であり、トリマー分が10質量%以下であり、且つ水素添加された重合脂肪酸が好ましい。好ましいポリアミンとしては、ポリエチレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン及びそれらの誘導体が例示される。
この接着剤のゲル分率は、40%以上である。ゲル分率が40%以上である接着剤から形成される補強層8は、揮発分が残存しにくいので、ほとんど気泡を含まない。この補強層8は、中間層6と堅固に密着し、カバー10とも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は45%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。
この接着剤のゲル分率は、80%以下である。ゲル分率が80%以下である接着剤は、中間層6の基材ポリマーと十分に反応し、かつカバー10の基材ポリマーとも十分に反応する。この補強層8は、中間層6と堅固に密着し、カバー10とも堅固に密着する。この観点から、ゲル分率は75%以下がより好ましく、70%以上が特に好ましい。
ゲル分率が40%以上80%以下である接着剤から形成された補強層8は、カバー10が薄いゴルフボール2において、特に効果を発揮する。ゲル分率が40%以上80%以下である接着剤から形成された補強層8は、カバー10が軟質であるゴルフボール2において、特に効果を発揮する。
ゲル分率の測定では、主剤と硬化剤とが混合された直後に、接着剤がPB−137Tリン酸亜鉛処理鋼板に塗布される。この鋼板のサイズは、「150mm×70mm」である。この鋼板の厚みは、0.8mmである。この鋼板を、40℃の環境下に24時間保持し、接着剤からなる塗膜を形成する。鋼板と塗膜とから、試験片が得られる。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M1を算出する。この試験片をアセトンに浸漬し、24時間静置する。この試験片を105℃の環境下に1時間保持する。この試験片を23℃まで冷却する。この試験片の質量を測定し、この測定値から鋼板の質量を減じることで、塗膜の質量M2を算出する。ゲル分率Gは、下記の数式によって算出される。
G = (M2 / M1) ・ 100
この接着剤におけるビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤のアミン活性水素当量との比は、2.0/1.0以上13.0/1.0以下が好ましい。この比が2.0/1.0以上である接着剤では、ゲル分率が小さすぎない。従って、補強層8が中間層6及びカバー10と堅固に密着する。この観点から、この比は2.5/1.0以上がより好ましく、4.0/1.0以上が特に好ましい。この比が13.0/1.0以下である接着剤では、ゲル分率が大きすぎない。従って、補強層8が中間層6及びカバー10と堅固に密着する。この観点から、この比は12.0/1.0以下がより好ましく、10.0/1.0以下が特に好ましい。
硬化剤のアミン活性水素当量は、100g/eq以上800g/eq以下が好ましい。この当量が100g/eq以上である接着剤では、ゲル分率が大きすぎない。従って、補強層8が中間層6及びカバー10と堅固に密着する。この観点から、この当量は200g/eq以上がより好ましく、300g/eq以上が特に好ましい。この当量が800g/eq以下である接着剤では、ゲル分率が小さすぎない。従って、補強層8が中間層6及びカバー10と堅固に密着する。この観点から、この当量は600g/eq以下がより好ましく、500g/eq以下が特に好ましい。
接着剤は、揮発分として水を含んでいる。揮発分の概念には、水及び有機溶媒の両方が含まれる。揮発分の全量に対する水の量の比率Pwは、90質量%以上が好ましい。この比率Pwが90質量%以上である接着剤では、ゲル分率の制御が容易である。この観点から、この比率Pwは95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が特に好ましい。この比率Pwが100質量%であってもよい。環境の観点から、揮発分の全量に対する有機溶媒の量の比率Poは10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
補強層8が、着色剤(典型的には二酸化チタン)、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤は、主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
前述の通り、補強層8は、接着剤が中間層6の表面に塗布されることで得られる。スプレーガン方式、静電塗装方式及びディッピング方式により、塗布がなされうる。作業性の観点から、スプレーガン方式による塗布が好ましい。塗布後に溶媒が揮発し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリアミン化合物とが反応して、補強層8が形成される。
ゴルフボール2の耐久性の観点から、補強層8の厚みは0.001mm以上が好ましく、0.002mm以上が特に好ましい。厚みは、0.1mm以下が好ましい。厚みは、ゴルフボール2の断面がマイクロスコープで観察されることで測定される。粗面処理により中間層6の表面が凹凸を備える場合は、凸部の直上で厚みが測定される。測定は、ディンプル12の直下を避けて行われる。
大きな打ち出し角度及びソフトな打球感の観点から、ゴルフボール2の圧縮変形量D3は、2.9mm以上が好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。圧縮変形量D3は、3.5mm以下が好ましい。
圧縮変形量の測定では、球体(ゴルフボール2、コア4等)が金属製の剛板の上に置かれる。この球体に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球体は、変形する。球体に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、測定される。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、23質量部のアクリル酸亜鉛(三新化学工業社の商品名「サンセラーSR」)、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.3質量部のビスペンタブロモフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で25分間加熱して、直径が38.5mmであるコアを得た。ゴルフボールの質量が45.6gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した
55質量部のアイオノマー樹脂(前述の「サーリン8945」)、45質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)及び3質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。金型に、コアを投入した。上記樹脂組成物を射出成形法にてコアの周りに射出し、中間層を成形した。この中間層の厚みは、1.6mmであった。
下記表4に示される接着剤(a)を調製した。この接着剤を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃雰囲気下で12時間保持して、補強層を得た。この補強層の厚みは、0.003mmであった。
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(前述のエラストランNY82A(1))、0.2質量部のヒンダードアミン系光安定剤(チバジャパン社の商品名「チヌビン」)、4質量部の二酸化チタン及び0.04質量部のウルトラマリンブルーを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを成形した。このハーフシェル2枚で、コア、中間層及び補強層からなる球体を被覆した。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなり、キャビティ面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に、上記球体及びハーフシェルを投入した。圧縮成形法にて、カバーを得た。このカバーの厚みは、0.5mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が42.7mmである実施例1のゴルフボールを得た。
[実施例2から13及び比較例1から6]
コア、中間層及びカバーの仕様を下記の表6から9に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2から13及び比較例1から6のゴルフボールを得た。コアの組成の詳細が、下記の表1及び2に示されている。中間層の組成の詳細が、下記の表3に示されている。補強層の組成の詳細が、下記の表4に示されている。カバーの組成の詳細が、下記の表5に示されている。
[ドライバー(W#1)による打撃]
ツルテンパー社のスイングマシンに、チタンヘッドを備えたドライバー(SRIスポーツ社の商品名「XXIO」、シャフト硬度:R、ロフト角:13.0°)を装着した。ヘッド速度が35m/secである条件でゴルフボールを打撃して、打ち出し角度を測定した。さらに、発射地点から静止地点までの距離を測定した。10回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表6から9に示されている。
[サンドウエッジ(SW)による打撃]
上記スイングマシンに、サンドウエッジ(SW)を装着した。ヘッド速度が16m/secである条件で、ゴルフボールを打撃した。打撃直後のスピン速度を測定した。10回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表6から9に示されている。
[耐久性]
上記スイングマシンに、チタンヘッドを備えたドライバー(SRIスポーツ社の商品名「XXIO」、シャフト硬度:S、ロフト角:10.0°)を装着した。一方、ゴルフボールを23℃の雰囲気下に12時間保持した。このゴルフボールを、ヘッド速度が45m/secである条件で繰り返し打撃して、ゴルフボールが破損するまでの打撃回数をカウントした。12回測定されて得られたデータの平均値が、指数として、下記の表6から9に示されている。
[打球感]
ゴルファーに、ドライバーにてゴルフボールを打撃させた。下記の基準に基づき、ゴルファーに打球感を格付けさせた。
A:極めてソフト
B:ややソフト
C:ややハード
D:極めてハード
この結果が、下記の表6から9に示されている。
表1及び2に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。
BR730:JSR社の、ハイシスポリブタジエン(シス−1,4−結合含有量:96質量%、1,2−ビニル結合含有量:1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)
):55、分子量分布(Mw/Mn):3)
サンセラーSR:三新化学工業社のアクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸コーティング品)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社の商品名「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社の商品名「硫酸バリウムBD」
ビスペンタブロモフェニルジスルフィド:川口化学工業社
ジクミルパーオキサイド:日油社
ステアリン酸亜鉛:和光純薬工業社
オクタン酸亜鉛:三津和化学薬品社
表5に示された熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、いずれも、ポリオール成分としてポリテトラメチレンエーテルグリコールを含有する。このポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は、下記の通りである。
エラストランNY78A:1400
エラストランNY82A(1):1400
エラストランNY82A(2):1700
エラストランNY85A:1400
エラストランNY90A:1400
エラストランNY97A:1400
表6から9に示されるように、各実施例に係るゴルフボールは、諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。