以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する第一中間層6と、この第一中間層6の外側に位置する第二中間層8と、この第二中間層8の外側に位置する補強層10と、この補強層10の外側に位置するカバー12とを備えている。カバー12の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー12の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下がより好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下である。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上がより好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
コア4の直径は、33.0mm以上42.0mm以下が好ましい。直径が33.0mm以上であるコア4により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成されうる。この観点から、直径は35.0mm以上がより好ましく、37.0mm以上が特に好ましい。直径が42.0mm以下であるコア4を有するゴルフボール2では、第一中間層6、第二中間層8及びカバー12が十分な厚みを有しうる。第一中間層6、第二中間層8及びカバー12の厚みが大きなゴルフボール2は、耐久性に優れる。この観点から、直径は41.0mm以下がより好ましく、40.0mm以下が特に好ましい。
図2は、図1のゴルフボール2のコア4の硬度分布が示された折れ線グラフである。このグラフの横軸は、コア4の中心点からの距離の、コア4の半径に対する比率(%)である。このグラフの縦軸は、JIS−C硬度である。コア4の中心点から表面までをこのコア4の半径の12.5%の間隔で区分して得られた9の測定点が、このグラフにおいてプロットされている。これらの測定点の、コア4の中心点からの距離のコア4の半径に対する比率は、以下の通りである。
第一点 0.0% (中心点)
第二点 12.5%
第三点 25.0%
第四点 37.5%
第五点 50.0%
第六点 62.5%
第七点 75.0%
第八点 87.5%
第九点 100.0% (表面)
コア4が切断されて得られる半球の切断面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより、第一点から第八点の硬度が測定される。球状のコア4の表面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより、第九点の硬度が測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。本発明では、コア4の中心点からの距離がx(%)である測定点のJIS−C硬度は、H(x)で表される。コア4の中心点の硬度は、H(0)と表される。第九点の硬度、すなわち、コア4の表面の硬度は、H(100)と表される。
図2には、9の測定点の距離と硬度とに基づいて、最小二乗法によって得られた線形近似曲線も示されている。図2から明らかなように、折れ線は、線形近似曲線から大幅には乖離しない。換言すれば、折れ線は、線形近似曲線に近い形状を有する。このコア4では、中心から表面に向かって、硬度が直線的に増加する。このゴルフボール2がドライバーで打撃されたとき、コア4におけるエネルギーロスは少ない。このゴルフボール2は、反発性能に優れる。このゴルフボール2がドライバーで打撃されたときの飛距離は、大きい。このゴルフボール2がゴルフクラブで打撃されたとき、応力集中が生じない。従って、このゴルフボール2は、耐久性に優れる。
このコア4では、最小二乗法によって得られた線形近似曲線のR2は、0.95以上が好ましい。R2は、折れ線の直線性を表す指標である。R2が0.95以上であるコア4は、硬度分布の折れ線の形状が直線に近い。R2が0.95以上であるコア4を備えたゴルフボール2は、反発性能に優れる。R2は、0.96以上がより好ましく、0.97以上が特に好ましい。R2は、相関係数Rを二乗することで算出される。相関係数Rは、中心からの距離(%)と硬度(JIS−C)との共分散を、中心からの距離(%)の標準偏差及び硬度(JIS−C)の標準偏差で除することで算出される。
スピンが抑制されるとの観点から、この線形近似曲線の傾きαは0.30以上が好ましく、0.33以上がより好ましく、0.35以上が特に好ましい。
このゴルフボール2では、表面硬度H(100)と中心硬度H(0)との差(H(100)−H(0))は、15以上が好ましい。差(H(100)−H(0))が15以上であるコア4は、外剛内柔構造を有する。このゴルフボール2がドライバーで打撃されたとき、コア4におけるリコイル(ねじり戻り)が大きいので、スピンが抑制される。このコア4は、ゴルフボール2の飛行性能に寄与する。飛行性能の観点から、差(H(100)−H(0))は23以上がより好ましく、24以上が特に好ましい。コア4が容易に成形されうるとの観点から、差(H(100)−H(0))は50以下が好ましい。このコア4では、中心点から表面に向かって、硬度が徐々に大きくなっている。
中心硬度H(0)は、40以上70以下が好ましい。硬度H(0)が40以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、硬度H(0)は45以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。硬度H(0)が70以下であるコア4では、外剛内柔構造が達成されうる。このコア4を備えたゴルフボール2では、スピンが抑制されうる。この観点から、硬度H(0)は65以下がより好ましく、60以下が特に好ましい。
表面硬度H(100)は、80以上96以下が好ましい。硬度H(100)が80以上であるコア4では、外剛内柔構造が達成されうる。このコア4を備えたゴルフボール2では、スピンが抑制されうる。この観点から、硬度H(100)は82以上がより好ましく、84以上が特に好ましい。硬度H(100)が96以下であるゴルフボール2は、耐久性に優れる。この観点から、硬度H(100)は94以下がより好ましく、92以下が特に好ましい。
このゴルフボール2では、コア4は、球状のセンター18と、包囲層20とを有している。包囲層20は、センター18の外側に位置している。
このゴルフボール2では、センター18は包囲層20よりも軟質である。このセンター18により、スピンが抑制されうる。
センター18の直径は、18.0mm以上30.0mm以下が好ましい。直径が18.0mm以上であるセンター18を備えたゴルフボール2では、スピンが抑制されうる。この観点から、直径は20.0mm以上がより好ましく、22.0mm以上が特に好ましい。直径が30.0mm以下であるセンター18を備えたゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、直径は27.0mm以下がより好ましく、25.0mm以下が特に好ましい。
包囲層20は、センター18よりも硬質である。ゴルフボール2がドライバーで打撃されたとき、この包囲層20におけるエネルギーロスは少ない。この包囲層20は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。このゴルフボール2がドライバーで打撃されたときの飛距離は、大きい。
このゴルフボール2では、好ましくは、コア4の半径に対するセンター18の半径の比率は40%以上85%以下とされる。この比率が40%以上であるゴルフボール2ではスピンが抑制される。この観点から、この比率は50%以上が好ましい。この比率が85%以下であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、この比率は70%以下がより好ましい。このゴルフボール2がドライバーで打撃されたときの飛距離は、大きい。
センター18は、第一ゴム組成物が架橋されることで成形されている。この第一ゴム組成物は、
(1a)基材ゴム、
(1b)共架橋剤、
(1c)架橋開始剤
及び
(1d)酸及び/又は塩
を含んでいる。
基材ゴム(1a)として、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。具体的には、基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。ポリブタジエンにおけるシス−1,4結合の比率は40質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
1,2−ビニル結合の比率が2.0質量%以下であるポリブタジエンが好ましい。このポリブタジエンは、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、1,2−ビニル結合の比率は1.7質量%以下が好ましく、1.5質量%以下が特に好ましい。
1,2−ビニル結合の比率が少なく、かつ重合活性に優れたポリブタジエンが得られるとの観点から、ポリブタジエンの合成に希土類元素系触媒が用いられるのが好ましい。特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジムを含む触媒で合成されたポリブタジエンが好ましい。
ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は30以上が好ましく、32以上がより好ましく、35以上が特に好ましい。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))は140以下が好ましく、120以下がより好ましく、100がさらに好ましく、80以下が特に好ましい。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、「JIS K6300」の規定に準拠して測定される。測定条件は、以下の通りである。
ローター:Lローター
予備加熱時間:1分
ローターの回転時間:4分
温度:100℃
作業性の観点から、ポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)は2.0以上が好ましく、2.2以上がより好ましく、2.4以上がさらに好ましく、2.6以上が特に好ましい。反発性能の観点から、分子量分布(Mw/Mn)は6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましく、3.4以下が特に好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量Mwが数平均分子量Mnで除されることで算出される。
分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC−8120GPC」)によって測定される。測定条件は、以下の通りである。
検知器:示差屈折計
カラム:GMHHXL(東ソー社製)
カラム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
分子量分布は、標準ポリスチレン換算値として算出される。
共架橋剤(1b)は、
(1b−1)その炭素数が3以上8以下であるα,β−不飽和カルボン酸
及び
(1b−2)その炭素数が3以上8以下であるα,β−不飽和カルボン酸の金属塩
である。
第一ゴム組成物が、共架橋剤(1b)として、α,β−不飽和カルボン酸(1b−1)のみを含んでもよく、α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(1b−2)のみを含んでもよい。第一ゴム組成物が、共架橋剤(1b)として、α,β−不飽和カルボン酸(1b−1)とα,β−不飽和カルボン酸の金属塩(1b−2)との両方を含んでもよい。
α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(1b−2)は、基材ゴムの分子鎖にグラフト重合することにより、ゴム分子を架橋する。第一ゴム組成物が、α,β−不飽和カルボン酸(1b−1)を含む場合、この第一ゴム組成物は、金属化合物(1f)をさらに含むことが好ましい。この金属化合物(1f)は、第一ゴム組成物中でα,β−不飽和カルボン酸(1b−1)と反応する。この反応によって得られた塩が、基材ゴムの分子鎖にグラフト重合する。
金属化合物(1f)の例として、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム及び水酸化銅のような金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛及び酸化銅のような金属酸化物;並びに炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム及び炭酸カリウムのような金属炭酸化物が挙げられる。二価金属を含む化合物が、好ましい。二価金属を含む化合物は、共架橋剤(1b)と反応して、金属架橋を形成する。特に好ましい金属化合物(1f)は、亜鉛化合物である。2種以上の金属化合物が併用されてもよい。
α,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びクロトン酸が例示される。α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(1b−2)における金属成分としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、アルミニウムイオン、錫イオン及びジルコニウムイオンが例示される。α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(1b−2)が、2種以上のイオンを含んでもよい。ゴム分子間の金属架橋が生じやすいとの観点から、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン及びカドミウムイオンのような、二価の金属イオンが好ましい。特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸の金属塩(1b−2)は、アクリル酸亜鉛である。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、共架橋剤(1b)の量は、基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上が特に好ましい。打球感の観点から、この量は50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下が特に好ましい。
好ましい架橋開始剤(1c)は、有機過酸化物である。有機過酸化物は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。汎用性の観点から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、架橋開始剤(1c)の量は、基材ゴム100質量部に対して0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感及び耐久性の観点から、この量は、5.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下が特に好ましい。
本発明では、酸及び/又は塩(1d)の概念には、共架橋剤(1b)は含まれない。酸及び/又は塩(1d)は、後述するように、コア4の加熱・成形時に、共架橋剤(1b)による金属架橋を切断すると推測されている。
酸及び/又は塩(1d)として、カルボン酸、スルホン酸及びリン酸のようなオキソ酸並びにその塩;並びに塩酸及びフッ化水素酸のような水素酸並びにその塩が挙げられる。オキソ酸及びその塩が好ましい。カルボン酸及びその塩(1d−1)がより好ましい。カルボン酸塩が特に好ましい。
カルボン酸及び/又はその塩(1d−1)におけるカルボン酸成分は、カルボキシル基を有する。このカルボン酸成分は、共架橋剤(1b)と反応する。この反応により、金属架橋が切断されると推測される。
カルボン酸及び/又はその塩(1d−1)におけるカルボン酸成分の炭素数は、1以上30以下が好ましく、3以上30以下がより好ましく、5以上28以下がさらに好ましい。カルボン酸として、脂肪族カルボン酸(脂肪酸)及び芳香族カルボン酸が例示される。カルボン酸及び/又はその塩(1d−1)としては、脂肪酸及び/又はその塩が好ましい。脂肪酸及び/又はその塩における脂肪酸成分の炭素数は、1以上30以下が好ましい。
第一ゴム組成物が、飽和脂肪酸及び/又はその塩を含んでもよく、不飽和脂肪酸及び/又はその塩を含んでもよい。飽和脂肪酸及びその塩が好ましい。
脂肪酸として、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(オクタン酸)(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(デカン酸)(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ミリストレイン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、パルミトレイン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、12−ヒドロキシステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ガドレイン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、べヘニン酸(C22)、エルカ酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、ネルボン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)及びメリシン酸(C30)が例示される。2種以上の脂肪酸が併用されてもよい。オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びベヘニン酸が好ましい。
芳香族カルボン酸は、芳香環とカルボキシル基とを有する。芳香族カルボン酸として、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸(ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸)、トリメリット酸(ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸)、トリメシン酸(ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸)、メロファン酸(ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸)、プレーニト酸(ベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボン酸)、ピロメリット酸(ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、ジフェン酸(ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸)、トルイル酸(メチル安息香酸)、キシリル酸、プレーニチル酸(2,3,4−トリメチル安息香酸)、γ−イソジュリル酸(2,3,5−トリメチル安息香酸)、ジュリル酸(2,4,5−トリメチル安息香酸)、β−イソジュリル酸(2,4,6−トリメチル安息香酸)、α−イソジュリル酸(3,4,5−トリメチル安息香酸)、クミン酸(4−イソプロピル安息香酸)、ウビト酸(5−メチルイソフタル酸)、α−トルイル酸(フェニル酢酸)、ヒドロアトロパ酸(2−フェニルプロパン酸)及びヒドロケイ皮酸(3−フェニルプロパン酸)が例示される。
第一ゴム組成物が、ヒドロキシル基、アルコキシ基又はオキソ基で置換された芳香族カルボン酸塩を含んでもよい。このカルボン酸としては、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、アニス酸(メトキシ安息香酸)、クレソチン酸(ヒドロキシ(メチル)安息香酸)、o−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸)、m−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸)、p−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸)、o−ピロカテク酸(2,3−ジヒドロキシ安息香酸)、β−レソルシル酸(2,4−ジヒドロキシ安息香酸)、γ−レソルシル酸(2,6−ジヒドロキシ安息香酸)、プロトカテク酸(3,4−ジヒドロキシ安息香酸)、α−レソルシル酸(3,5−ジヒドロキシ安息香酸)、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、イソバニリン酸(3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸)、ベラトルム酸(3,4−ジメトキシ安息香酸)、o−ベラトルム酸(2,3−ジメトキシ安息香酸)、オルセリン酸(2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸)、m−ヘミピン酸(4,5−ジメトキシフタル酸)、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、シリング酸(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ安息香酸)、アサロン酸(2,4,5−トリメトキシ安息香酸)、マンデル酸(ヒドロキシ(フェニル)酢酸)、バニルマンデル酸(ヒドロキシ(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸)、ホモアニス酸((4−メトキシフェニル)酢酸)、ホモゲンチジン酸((2,5−ジヒドロキシフェニル)酢酸)、ホモプロトカテク酸((3,4−ジヒドロキシフェニル)酢酸)、ホモバニリン酸((4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸)、ホモイソバニリン酸((3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)酢酸)、ホモベラトルム酸((3,4−ジメトキシフェニル)酢酸)、o−ホモベラトルム酸((2,3−ジメトキシフェニル)酢酸)、ホモフタル酸(2−(カルボキシメチル)安息香酸)、ホモイソフタル酸(3−(カルボキシメチル)安息香酸)、ホモテレフタル酸(4−(カルボキシメチル)安息香酸)、フタロン酸(2−(カルボキシカルボニル)安息香酸)、イソフタロン酸(3−(カルボキシカルボニル)安息香酸)、テレフタロン酸(4−(カルボキシカルボニル)安息香酸)、ベンジル酸(ヒドロキシジフェニル酢酸)、アトロラクチン酸(2−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸)、トロパ酸(3−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸)、メリロット酸(3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン酸)、フロレト酸(3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸)、ヒドロカフェー酸(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン酸)、ヒドロフェルラ酸(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン酸)、ヒドロイソフェルラ酸(3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロパン酸)、p−クマル酸(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリル酸)、ウンベル酸(3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸)、カフェー酸(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸)、フェルラ酸(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリル酸)、イソフェルラ酸(3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)アクリル酸)及びシナピン酸(3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)アクリル酸)が例示されうる。
カルボン酸塩のカチオン成分は、金属イオン又は有機陽イオンである。金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、銀イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、銅イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、錫イオン、ジルコニウムイオン及びチタンイオンが例示される。2種以上のイオンが併用されてもよい。
有機陽イオンは、炭素鎖を有する陽イオンである。有機陽イオンとして、有機アンモニウムイオンが挙げられる。有機アンモニウムイオンとして、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン及び2−エチルヘキシルアンモニウムイオンのような1級アンモニウムイオン;ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン及びオクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンのような2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンのような3級アンモニウムイオン;並びにジオクチルジメチルアンモニウムイオン及びジステアリルジメチルアンモニウムイオンのような4級アンモニウムイオンが例示される。2種以上の有機陽イオンが併用されてもよい。
好ましいカルボン酸塩として、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸又はベヘニン酸のカリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩又はコバルト塩が例示される。カルボン酸の亜鉛塩が特に好ましい。好ましいカルボン酸の亜鉛塩の具体例として、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛及びステアリン酸亜鉛が挙げられる。特に好ましいカルボン酸の亜鉛塩は、オクタン酸亜鉛である。
コア4の硬度分布の直線性の観点から、酸及び/又は塩(1d)の量は、基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上が特に好ましい。反発性能の観点から、この量は45質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
第一ゴム組成物における共架橋剤(1b)と酸及び/又は塩(1d)との質量比は、3/7以上9/1以下が好ましい。質量比が上記範囲内である第一ゴム組成物により、内側から外側に向かって硬度が直線的に増加するコア4が得られうる。
共架橋剤(1b)として、アクリル酸亜鉛が好んで用いられている。ゴムへの分散性の向上を目的として、その表面がステアリン酸又はステアリン酸亜鉛でコーティングされているアクリル酸亜鉛が存在する。本発明では、このアクリル酸亜鉛を第一ゴム組成物が含む場合、酸及び/又は塩(1d)には、コーティング剤は含まれない。
好ましくは、第一ゴム組成物は、有機硫黄化合物(1e)をさらに含む。有機硫黄化合物(1e)は、コア4の硬度分布の直線性を高める。有機硫黄化合物(1e)はさらに、外剛内柔構造の程度を高める。
有機硫黄化合物(1e)として、チオール基又は硫黄数が2以上4以下であるポリスルフィド結合を有する有機化合物が挙げられる。この有機化合物の金属塩も、有機硫黄化合物(1e)に含まれる。有機硫黄化合物(1e)として、脂肪族チオール、脂肪族チオカルボン酸、脂肪族ジチオカルボン酸及び脂肪族ポリスルフィドのような脂肪族化合物;複素環式化合物;脂環式チオール、脂環式チオカルボン酸、脂環式ジチオカルボン酸及び脂環式ポリスルフィドのような脂環式化合物;並びに芳香族化合物が例示される。有機硫黄化合物(1e)の具体例として、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類及びチアゾール類が挙げられる。好ましい有機硫黄化合物(1e)は、チオフェノール類、ジフェニルジスルフィド類、チオナフトール類及びチウラムジスルフィド類並びにこれらの金属塩である。
有機硫黄化合物(1e)の具体例が、下記化学式(1)から(4)で表わされている。
上記化学式(1)において、R1からR5は、それぞれ、H又は置換基を表す。
上記化学式(2)において、R1からR10は、それぞれ、H又は置換基を表す。
上記化学式(3)において、R1からR5はそれぞれH又は置換基を表し、M1は1価の金属原子を表す。
上記化学式(4)において、R1からR10はそれぞれH又は置換基を表し、M2は2価の金属原子を表す。
上記式(1)から(4)において、置換基は、ハロゲン基(F、Cl、Br、I)、アルキル基、カルボキシル基(−COOH)、カルボキシル基のエステル(−COOR)、ホルミル基(−CHO)、アシル基(−COR)、ハロゲン化カルボニル基(−COX)、スルホ基(−SO3H)、スルホ基のエステル(−SO3R)、ハロゲン化スルホニル基(−SO2X)、スルフィノ基(−SO2H)、アルキルスルフィニル基(−SOR)、カルバモイル基(−CONH2)、ハロゲン化アルキル基、シアノ基(−CN)及びアルコキシ基(−OR)よりなる群から選択される少なくとも一種である。
上記化学式(1)で表される有機硫黄化合物(1e)の例示としては、チオフェノール;4−フルオロチオフェノール、2,5−ジフルオロチオフェノール、2,4,5−トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6−テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、2−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2,4−ジクロロチオフェノール、2,5−ジクロロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、2,4,5−トリクロロチオフェノール、2,4,5,6−テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、4−ブロモチオフェノール、2,5−ジブロモチオフェノール、2,4,5−トリブロモチオフェノール、2,4,5,6−テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、4−ヨードチオフェノール、2,5−ジヨードチオフェノール、2,4,5−トリヨードチオフェノール、2,4,5,6−テトラヨードチオフェノール及びペンタヨードチオフェノールのようなハロゲン基で置換されたチオフェノール類;4−メチルチオフェノール、2,4,5−トリメチルチオフェノール、ペンタメチルチオフェノール、4−t−ブチルチオフェノール、2,4,5−トリ−t−ブチルチオフェノール及びペンタ−t−ブチルチオフェノールのようなアルキル基で置換されたチオフェノール類;4−カルボキシチオフェノール、2,4,6−トリカルボキシチオフェノール及びペンタカルボキシチオフェノールのようなカルボキシル基で置換されたチオフェノール類;4−メトキシカルボニルチオフェノール、2,4,6−トリメトキシカルボニルチオフェノール及びペンタメトキシカルボニルチオフェノールのようなアルコキシカルボニル基で置換されたチオフェノール類;4−ホルミルチオフェノール、2,4,6−トリホルミルチオフェノール及びペンタホルミルチオフェノールのようなホルミル基で置換されたチオフェノール類;4−アセチルチオフェノール、2,4,6−トリアセチルチオフェノール及びペンタアセチルチオフェノールのようなアシル基で置換されたチオフェノール類;4−クロロカルボニルチオフェノール、2,4,6−トリ(クロロカルボニル)チオフェノール及びペンタ(クロロカルボニル)チオフェノールのようなハロゲン化カルボニル基で置換されたチオフェノール類;4−スルホチオフェノール、2,4,6−トリスルホチオフェノール及びペンタスルホチオフェノールのようなスルホ基で置換されたチオフェノール類;4−メトキシスルホニルチオフェノール、2,4,6−トリメトキシスルホニルチオフェノール及びペンタメトキシスルホニルチオフェノールのようなアルコキシスルホニル基で置換されたチオフェノール類;4−クロロスルホニルチオフェノール、2,4,6−トリ(クロロスルホニル)チオフェノール及びペンタ(クロロスルホニル)チオフェノールのようなハロゲン化スルホニル基で置換されたチオフェノール類;4−スルフィノチオフェノール、2,4,6−トリスルフィノチオフェノール及びペンタスルフィノチオフェノールのようなスルフィノ基で置換されたチオフェノール類;4−メチルスルフィニルチオフェノール、2,4,6−トリ(メチルスルフィニル)チオフェノール及びペンタ(メチルスルフィニル)チオフェノールのようなアルキルスルフィニル基で置換されたチオフェノール類;4−カルバモイルチオフェノール、2,4,6−トリカルバモイルチオフェノール及びペンタカルバモイルチオフェノールのようなカルバモイル基で置換されたチオフェノール類;4−トリクロロメチルチオフェノール、2,4,6−トリ(トリクロロメチル)チオフェノール及びペンタ(トリクロロメチル)チオフェノールのようなハロゲン化アルキル基で置換されたチオフェノール類;4−シアノチオフェノール、2,4,6−トリシアノチオフェノール及びペンタシアノチオフェノールのようなシアノ基で置換されたチオフェノール類;並びに4−メトキシチオフェノール、2,4,6−トリメトキシチオフェノール及びペンタメトキシチオフェノールのようなアルコキシ基で置換されたチオフェノール類が例示される。これらのチオフェノール類は、1種類の置換基で置換されている。
上記化学式(1)で表される有機硫黄化合物(1e)の他の例として、少なくとも1種類の上記置換基と、他の置換基とで置換された化合物が挙げられる。他の置換基としては、ニトロ基(−NO2)、アミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)及びフェニルチオ基(−SPh)が例示される。この化合物の具体例としては、4−クロロ−2−ニトロチオフェノール、4−クロロ−2−アミノチオフェノール、4−クロロ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−クロロ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メチル−2−ニトロチオフェノール、4−メチル−2−アミノチオフェノール、4−メチル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−メチル−2−フェニルチオチオフェノール、4−カルボキシ−2−ニトロチオフェノール、4−カルボキシ−2−アミノチオフェノール、4−カルボキシ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−カルボキシ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メトキシカルボニル−2−ニトロチオフェノール、4−メトキシカルボニル−2−アミノチオフェノール、4−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−メトキシカルボニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−ホルミル−2−ニトロチオフェノール、4−ホルミル−2−アミノチオフェノール、4−ホルミル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−ホルミル−2−フェニルチオチオフェノール、4−アセチル−2−ニトロチオフェノール、4−アセチル−2−アミノチオフェノール、4−アセチル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−アセチル−2−フェニルチオチオフェノール、4−クロロカルボニル−2−ニトロチオフェノール、4−クロロカルボニル−2−アミノチオフェノール、4−クロロカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−クロロカルボニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−スルホ−2−ニトロチオフェノール、4−スルホ−2−アミノチオフェノール、4−スルホ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−スルホ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メトキシスルホニル−2−ニトロチオフェノール、4−メトキシスルホニル−2−アミノチオフェノール、4−メトキシスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−メトキシスルホニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−クロロスルホニル−2−ニトロチオフェノール、4−クロロスルホニル−2−アミノチオフェノール、4−クロロスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−クロロスルホニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−スルフィノ−2−ニトロチオフェノール、4−スルフィノ−2−アミノチオフェノール、4−スルフィノ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−スルフィノ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メチルスルフィニル−2−ニトロチオフェノール、4−メチル−2−アミノスルフィニルチオフェノール、4−メチルスルフィニル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−メチルスルフィニル−2−フェニルチオチオフェノール、4−カルバモイル−2−ニトロチオフェノール、4−カルバモイル−2−アミノチオフェノール、4−カルバモイル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−カルバモイル−2−フェニルチオチオフェノール、4−トリクロロメチル−2−ニトロチオフェノール、4−トリクロロメチル−2−アミノチオフェノール、4−トリクロロメチル−2−ヒドロキシチオフェノール、4−トリクロロメチル−2−フェニルチオチオフェノール、4−シアノ−2−ニトロチオフェノール、4−シアノ−2−アミノチオフェノール、4−シアノ−2−ヒドロキシチオフェノール、4−シアノ−2−フェニルチオチオフェノール、4−メトキシ−2−ニトロチオフェノール、4−メトキシ−2−アミノチオフェノール、4−メトキシ−2−ヒドロキシチオフェノール及び4−メトキシ−2−フェニルチオチオフェノールが挙げられる。
上記化学式(1)で表される有機硫黄化合物(1e)のさらに他の例示として、2種類以上の置換基で置換された化合物が挙げられる。この化合物の具体的として、4−アセチル−2−クロロチオフェノール、4−アセチル−2−メチルチオフェノール、4−アセチル−2−カルボキシチオフェノール、4−アセチル−2−メトキシカルボニルチオフェノール、4−アセチル−2−ホルミルチオフェノール、4−アセチル−2−クロロカルボニルチオフェノール、4−アセチル−2−スルホチオフェノール、4−アセチル−2−メトキシスルホニルチオフェノール、4−アセチル−2−クロロスルホニルチオフェノール、4−アセチル−2−スルフィノチオフェノール、4−アセチル−2−メチルスルフィニルチオフェノール、4−アセチル−2−カルバモイルチオフェノール、4−アセチル−2−トリクロロメチルチオフェノール、4−アセチル−2−シアノチオフェノール及び4−アセチル−2−メトキシチオフェノール等が挙げられる。
上記化学式(2)で表される有機硫黄化合物(1e)の例示としては、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6−テトラヨードフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィドのようなハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5−トリ−t−ブチルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ−t−ブチルフェニル)ジスルフィドのようなアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−カルボキシフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタカルボキシフェニル)ジスルフィドのようなカルボキシル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリメトキシカルボニルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタメトキシカルボニルフェニル)ジスルフィドのようなアルコキシカルボニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−ホルミルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリホルミルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタホルミルフェニル)ジスルフィドのようなホルミル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−アセチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリアセチルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタアセチルフェニル)ジスルフィドのようなアシル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−クロロカルボニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリ(クロロカルボニル)フェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ(クロロカルボニル)フェニル)ジスルフィドのようなハロゲン化カルボニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−スルホフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリスルホフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタスルホフェニル)ジスルフィドのようなスルホ基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−メトキシスルホニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリメトキシスルホニルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタメトキシスルホニルフェニル)ジスルフィドのようなアルコキシスルホニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−クロロスルホニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリ(クロロスルホニル)フェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ(クロロスルホニル)フェニル)ジスルフィドのようなハロゲン化スルホニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−スルフィノフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリスルフィノフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタスルフィノフェニル)ジスルフィドのようなスルフィノ基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−メチルスルフィニルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリ(メチルスルフィニル)フェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ(メチルスルフィニル)フェニル)ジスルフィドのようなアルキルスルフィニル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−カルバモイルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリカルバモイルフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタカルバモイルフェニル)ジスルフィドのようなカルバモイル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−トリクロロメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリ(トリクロロメチル)フェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタ(トリクロロメチル)フェニル)ジスルフィドのようなハロゲン化アルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリシアノフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタシアノフェニル)ジスルフィドのようなシアノ基で置換されたジフェニルジスルフィド類;並びにビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ジスルフィド及びビス(ペンタメトキシフェニル)ジスルフィドのようなアルコキシ基で置換されたジフェニルジスルフィド類が例示される。これらのジフェニルジスルフィド類は、1種類の置換基で置換されている。
上記化学式(2)で表される有機硫黄化合物(1e)の他の例として、少なくとも1種類の上記置換基と、他の置換基とで置換された化合物が挙げられる。他の置換基としては、ニトロ基(−NO2)、アミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)及びフェニルチオ基(−SPh)が例示される。この化合物の具体例としては、ビス(4−クロロ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルボキシ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルボキシ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルボキシ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルボキシ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシカルボニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシカルボニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシカルボニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ホルミル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ホルミル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ホルミル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ホルミル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロカルボニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロカルボニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロカルボニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロカルボニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルホ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルホ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルホ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルホ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシスルホニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシスルホニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシスルホニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシスルホニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロスルホニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロスルホニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロスルホニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−クロロスルホニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルフィノ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルフィノ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルフィノ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−スルフィノ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルスルフィニル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルスルフィニル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルスルフィニル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチルスルフィニル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−トリクロロメチル−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−トリクロロメチル−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−トリクロロメチル−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−トリクロロメチル−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−シアノ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−2−ニトロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−2−アミノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−2−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド及びビス(4−メトキシ−2−フェニルチオフェニル)ジスルフィドが挙げられる。
上記化学式(2)で表される有機硫黄化合物(1e)のさらに他の例示として、2種類以上の置換基で置換された化合物が挙げられる。この化合物の具体的として、ビス(4−アセチル−2−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−カルボキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−メトキシカルボニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−ホルミルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−クロロカルボニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−スルホフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−メトキシスルホニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−クロロスルホニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−スルフィノフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−メチルスルフィニルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−カルバモイルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−トリクロロメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−アセチル−2−シアノフェニル)ジスルフィド及びビス(4−アセチル−2−メトキシフェニル)ジスルフィドが挙げられる。
上記化学式(3)で表される有機硫黄化合物(1e)の例示としては、チオフェノールナトリウム塩;4−フルオロチオフェノールナトリウム塩、2,5−ジフルオロチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリフルオロチオフェノールナトリウム塩、2,4,5,6−テトラフルオロチオフェノールナトリウム塩、ペンタフルオロチオフェノールナトリウム塩、4−クロロチオフェノールナトリウム塩、2,5−ジクロロチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリクロロチオフェノールナトリウム塩、2,4,5,6−テトラクロロチオフェノールナトリウム塩、ペンタクロロチオフェノールナトリウム塩、4−ブロモチオフェノールナトリウム塩、2,5−ジブロモチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリブロモチオフェノールナトリウム塩、2,4,5,6−テトラブロモチオフェノールナトリウム塩、ペンタブロモチオフェノールナトリウム塩、4−ヨードチオフェノールナトリウム塩、2,5−ジヨードチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリヨードチオフェノールナトリウム塩、2,4,5,6−テトラヨードチオフェノールナトリウム塩及びペンタヨードチオフェノールナトリウム塩のようなハロゲン基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−メチルチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリメチルチオフェノールナトリウム塩、ペンタメチルチオフェノールナトリウム塩、4−t−ブチルチオフェノールナトリウム塩、2,4,5−トリ−t−ブチルチオフェノールナトリウム塩及びペンタ(t−ブチル)チオフェノールナトリウム塩のようなアルキル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−カルボキシチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリカルボキシチオフェノールナトリウム塩及びペンタカルボキシチオフェノールナトリウム塩のようなカルボキシル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−メトキシカルボニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリメトキシカルボニルチオフェノールナトリウム塩及びペンタメトキシカルボニルチオフェノールナトリウム塩のようなアルコキシカルボニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−ホルミルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリホルミルチオフェノールナトリウム塩及びペンタホルミルチオフェノールナトリウム塩のようなホルミル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−アセチルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリアセチルチオフェノールナトリウム塩及びペンタアセチルチオフェノールナトリウム塩のようなアシル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−クロロカルボニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリ(クロロカルボニル)チオフェノールナトリウム塩及びペンタ(クロロカルボニル)チオフェノールナトリウム塩のようなハロゲン化カルボニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−スルホチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリスルホチオフェノールナトリウム塩及びペンタスルホチオフェノールナトリウム塩のようなスルホ基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−メトキシスルホニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリメトキシスルホニルチオフェノールナトリウム塩及びペンタメトキシスルホニルチオフェノールナトリウム塩のようなアルコキシスルホニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−クロロスルホニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリ(クロロスルホニル)チオフェノールナトリウム塩及びペンタ(クロロスルホニル)チオフェノールナトリウム塩のようなハロゲン化スルホニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−スルフィノチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリスルフィノチオフェノールナトリウム塩及びペンタスルフィノチオフェノールナトリウム塩のようなスルフィノ基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−メチルスルフィニルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリ(メチルスルフィニル)チオフェノールナトリウム塩及びペンタ(メチルスルフィニル)チオフェノールナトリウム塩のようなアルキルスルフィニル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−カルバモイルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリカルバモイルチオフェノールナトリウム塩及びペンタカルバモイルチオフェノールナトリウム塩のようなカルバモイル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−トリクロロメチルチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリ(トリクロロメチル)チオフェノールナトリウム塩及びペンタ(トリクロロメチル)チオフェノールナトリウム塩のようなハロゲン化アルキル基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;4−シアノチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリシアノチオフェノールナトリウム塩及びペンタシアノチオフェノールナトリウム塩のようなシアノ基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類;並びに4−メトキシチオフェノールナトリウム塩、2,4,6−トリメトキシチオフェノールナトリウム塩及びペンタメトキシチオフェノールナトリウム塩のようなアルコキシ基で置換されたチオフェノールナトリウム塩類が例示される。これらチオフェノールナトリウム塩類は、1種類の置換基で置換されている。
上記化学式(3)で表される有機硫黄化合物(1e)の他の例として、少なくとも1種類の上記置換基と、他の置換基とで置換された化合物が挙げられる。他の置換基としては、ニトロ基(−NO2)、アミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)及びフェニルチオ基(−SPh)が例示される。この化合物の具体例としては、4−クロロ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−クロロ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−クロロ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−クロロ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メチル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メチル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メチル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−メチル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−カルボキシ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−カルボキシ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−カルボキシ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−カルボキシ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシカルボニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシカルボニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシカルボニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−ホルミル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−ホルミル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−ホルミル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−ホルミル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−クロロカルボニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−クロロカルボニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−クロロカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−クロロカルボニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−スルホ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−スルホ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−スルホ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−スルホ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシスルホニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシスルホニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシスルホニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−クロロスルホニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−クロロスルホニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−クロロスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−クロロスルホニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−スルフィノ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−スルフィノ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−スルフィノ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−スルフィノ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メチルスルフィニル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メチルスルフィニル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メチルスルフィニル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−メチルスルフィニル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−カルバモイル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−カルバモイル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−カルバモイル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−カルバモイル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−トリクロロメチル−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−トリクロロメチル−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−トリクロロメチル−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−トリクロロメチル−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−シアノ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−シアノ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−シアノ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩、4−シアノ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシ−2−ニトロチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシ−2−アミノチオフェノールナトリウム塩、4−メトキシ−2−ヒドロキシチオフェノールナトリウム塩及び4−メトキシ−2−フェニルチオチオフェノールナトリウム塩が挙げられる。
上記化学式(3)で表される有機硫黄化合物(1e)のさらに他の例示として、2種類以上の置換基で置換された化合物が挙げられる。この化合物の具体的として、4−アセチル−2−クロロチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−メチルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−カルボキシチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−メトキシカルボニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−ホルミルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−クロロカルボニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−スルホチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−メトキシスルホニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−クロロスルホニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−スルフィノチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−メチルスルフィニルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−カルバモイルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−トリクロロメチルチオフェノールナトリウム塩、4−アセチル−2−シアノチオフェノールナトリウム塩及び4−アセチル−2−メトキシチオフェノールナトリウム塩が挙げられる。上記化学式(3)において、M1で表される1価の金属として、ナトリウム、リチウム、カリウム、銅(I)及び銀(I)が例示される。
上記化学式(4)で表される有機硫黄化合物(1e)として、チオフェノール亜鉛塩;4−フルオロチオフェノール亜鉛塩、2,5−ジフルオロチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリフルオロチオフェノール亜鉛塩、2,4,5,6−テトラフルオロチオフェノール亜鉛塩、ペンタフルオロチオフェノール亜鉛塩、4−クロロチオフェノール亜鉛塩、2,5−ジクロロチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリクロロチオフェノール亜鉛塩、2,4,5,6−テトラクロロチオフェノール亜鉛塩、ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩、4−ブロモチオフェノール亜鉛塩、2,5−ジブロモチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリブロモチオフェノール亜鉛塩、2,4,5,6−テトラブロモチオフェノール亜鉛塩、ペンタブロモチオフェノール亜鉛塩、4−ヨードチオフェノール亜鉛塩、2,5−ジヨードチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリヨードチオフェノール亜鉛塩、2,4,5,6−テトラヨードチオフェノール亜鉛塩及びペンタヨードチオフェノール亜鉛塩のようなハロゲン基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−メチルチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリメチルチオフェノール亜鉛塩、ペンタメチルチオフェノール亜鉛塩、4−t−ブチルチオフェノール亜鉛塩、2,4,5−トリ−t−ブチルチオフェノール亜鉛塩及びペンタ−t−ブチルチオフェノール亜鉛塩のようなアルキル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−カルボキシチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリカルボキシチオフェノール亜鉛塩及びペンタカルボキシチオフェノール亜鉛塩のようなカルボキシル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−メトキシカルボニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリメトキシカルボニルチオフェノール亜鉛塩及びペンタメトキシカルボニルチオフェノール亜鉛塩のようなアルコキシカルボニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−ホルミルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリホルミルチオフェノール亜鉛塩及びペンタホルミルチオフェノール亜鉛塩のようなホルミル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−アセチルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリアセチルチオフェノール亜鉛塩及びペンタアセチルチオフェノール亜鉛塩のようなアシル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−クロロカルボニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリ(クロロカルボニル)チオフェノール亜鉛塩及びペンタ(クロロカルボニル)チオフェノール亜鉛塩のようなハロゲン化カルボニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−スルホチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリスルホチオフェノール亜鉛塩及びペンタスルホチオフェノール亜鉛塩のようなスルホ基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−メトキシスルホニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリメトキシスルホニルチオフェノール亜鉛塩及びペンタメトキシスルホニルチオフェノール亜鉛塩のようなアルコキシスルホニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−クロロスルホニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリ(クロロスルホニル)チオフェノール亜鉛塩及びペンタ(クロロスルホニル)チオフェノール亜鉛塩のようなハロゲン化スルホニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−スルフィノチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリスルフィノチオフェノール亜鉛塩及びペンタスルフィノチオフェノール亜鉛塩のようなスルフィノ基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−メチルスルフィニルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリ(メチルスルフィニル)チオフェノール亜鉛塩及びペンタ(メチルスルフィニル)チオフェノール亜鉛塩のようなアルキルスルフィニル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−カルバモイルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリカルバモイルチオフェノール亜鉛塩及びペンタカルバモイルチオフェノール亜鉛塩のようなカルバモイル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−トリクロロメチルチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリ(トリクロロメチル)チオフェノール亜鉛塩及びペンタ(トリクロロメチル)チオフェノール亜鉛塩のようなハロゲン化アルキル基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;4−シアノチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリシアノチオフェノール亜鉛塩及びペンタシアノチオフェノール亜鉛塩のようなシアノ基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類;並びに4−メトキシチオフェノール亜鉛塩、2,4,6−トリメトキシチオフェノール亜鉛塩及びペンタメトキシチオフェノール亜鉛塩のようなアルコキシ基で置換されたチオフェノール亜鉛塩類が例示される。これらのチオフェノール亜鉛塩類は、1種類の置換基で置換されている。
上記化学式(4)で表される有機硫黄化合物(1e)の他の例として、少なくとも1種類の上記置換基と、他の置換基とで置換された化合物が挙げられる。他の置換基としては、ニトロ基(−NO2)、アミノ基(−NH2)、水酸基(−OH)及びフェニルチオ基(−SPh)が例示される。この化合物の具体例としては、4−クロロ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−クロロ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−クロロ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−クロロ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メチル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メチル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メチル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−メチル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−カルボキシ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−カルボキシ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−カルボキシ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−カルボキシ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシカルボニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシカルボニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシカルボニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−ホルミル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−ホルミル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−ホルミル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−ホルミル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−クロロカルボニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−クロロカルボニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−クロロカルボニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−クロロカルボニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−スルホ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−スルホ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−スルホ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−スルホ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシスルホニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシスルホニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシスルホニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−クロロスルホニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−クロロスルホニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−クロロスルホニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−クロロスルホニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−スルフィノ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−スルフィノ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−スルフィノ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−スルフィノ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メチルスルフィニル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メチルスルフィニル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メチルスルフィニル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−メチルスルフィニル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−カルバモイル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−カルバモイル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−カルバモイル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−カルバモイル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−トリクロロメチル−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−トリクロロメチル−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−トリクロロメチル−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−トリクロロメチル−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−シアノ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−シアノ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−シアノ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩、4−シアノ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシ−2−ニトロチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシ−2−アミノチオフェノール亜鉛塩、4−メトキシ−2−ヒドロキシチオフェノール亜鉛塩及び4−メトキシ−2−フェニルチオチオフェノール亜鉛塩が挙げられる。
上記化学式(4)で表される有機硫黄化合物(1e)のさらに他の例示として、2種類以上の置換基で置換された化合物が挙げられる。この化合物の具体的として、4−アセチル−2−クロロチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−メチルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−カルボキシチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−メトキシカルボニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−ホルミルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−クロロカルボニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−スルホチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−メトキシスルホニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−クロロスルホニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−スルフィノチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−メチルスルフィニルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−カルバモイルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−トリクロロメチルチオフェノール亜鉛塩、4−アセチル−2−シアノチオフェノール亜鉛塩及び4−アセチル−2−メトキシチオフェノール亜鉛塩が挙げられる。上記化学式(4)においてM2で表される2価の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(II)、マンガン(II)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、ジルコニウム(II)及びスズ(II)が例示される。
チオナフトール類として、2−チオナフトール、1−チオナフトール、2−クロロ−1−チオナフトール、2−ブロモ−1−チオナフトール、2−フルオロ−1−チオナフトール、2−シアノ−1−チオナフトール、2−アセチル−1−チオナフトール、1−クロロ−2−チオナフトール、1−ブロモ−2−チオナフトール、1−フルオロ−2−チオナフトール、1−シアノ−2−チオナフトール及び1−アセチル−2−チオナフトール並びにこれらの金属塩が例示される。1−チオナフトール及び2−チオナフトール並びにこれらの亜鉛塩が好ましい。
スルフェンアミド系の有機硫黄化合物(1e)として、N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド及びN−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドが例示される。チウラム系有機硫黄化合物として、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドが例示される。ジチオカルバミン酸塩類として、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(III)、ジエチルジチオカルバミン酸セレン及びジエチルジチオカルバミン酸テルルが例示される。チアゾール系有機硫黄化合物として、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT);ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS);2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩又はシクロヘキシルアミン塩;2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール;及び2−(2,6−ジエチル−4−モルリホリノチオ)ベンゾチアゾールが例示される。
外剛内柔構造が得られやすいとの観点から、好ましい有機硫黄化合物(1e)は、2−チオナフトール、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド及び2,6−ジクロロチオフェノールである。より好ましい有機硫黄化合物(1e)は、2−チオナフトールである。
外剛内柔構造が得られやすいの観点から、有機硫黄化合物(1e)の含有量は、基材ゴム100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.2質量部以上が特に好ましい。反発性能の観点から、この量は5.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下が特に好ましい。
センター18に、比重調整等の目的で充填剤が配合されてもよい。好適な充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤の量は、コアの意図した比重が達成されるように適宜決定される。特に好ましい充填剤は、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、比重調整の役割のみならず、架橋助剤としても機能する。
センター18の第一ゴム組成物には、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤、硫黄、加硫促進剤等が、必要に応じて添加される。この第一ゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が分散してもよい。
包囲層20は、第二ゴム組成物が架橋されることで成形されている。この第二ゴム組成物は、
(2a)基材ゴム、
(2b)共架橋剤、
(2c)架橋開始剤
及び
(2d)酸及び/又は塩
を含んでいる。
基材ゴム(2a)として、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。具体的には、基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。ポリブタジエンにおけるシス−1,4結合の比率は40質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
1,2−ビニル結合の比率が2.0質量%以下であるポリブタジエンが好ましい。このポリブタジエンは、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、1,2−ビニル結合の比率は1.7質量%以下が好ましく、1.5質量%以下が特に好ましい。
1,2−ビニル結合の比率が少なく、かつ重合活性に優れたポリブタジエンが得られるとの観点から、ポリブタジエンの合成に希土類元素系触媒が用いられるのが好ましい。特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジムを含む触媒で合成されたポリブタジエンが好ましい。
ポリブタジエンのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は30以上が好ましく、32以上がより好ましく、35以上が特に好ましい。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))は140以下が好ましく、120以下がより好ましく、100がさらに好ましく、80以下が特に好ましい。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、「JIS K6300」の規定に準拠して測定される。測定条件は、以下の通りである。
ローター:Lローター
予備加熱時間:1分
ローターの回転時間:4分
温度:100℃
作業性の観点から、ポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)は2.0以上が好ましく、2.2以上がより好ましく、2.4以上がさらに好ましく、2.6以上が特に好ましい。反発性能の観点から、分子量分布(Mw/Mn)は6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましく、3.4以下が特に好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量Mwが数平均分子量Mnで除されることで算出される。
分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC−8120GPC」)によって測定される。測定条件は、以下の通りである。
検知器:示差屈折計
カラム:GMHHXL(東ソー社製)
カラム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
分子量分布は、標準ポリスチレン換算値として算出される。
共架橋剤(2b)は、
(2b−1)その炭素数が3以上8以下であるα,β−不飽和カルボン酸
及び
(2b−2)その炭素数が3以上8以下であるα,β−不飽和カルボン酸の金属塩
である。
第二ゴム組成物が、共架橋剤(2b)として、α,β−不飽和カルボン酸(2b−1)のみを含んでもよく、α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(2b−2)のみを含んでもよい。第二ゴム組成物が、共架橋剤(2b)として、α,β−不飽和カルボン酸(2b−1)とα,β−不飽和カルボン酸の金属塩(2b−2)との両方を含んでもよい。
α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(2b−2)は、基材ゴムの分子鎖にグラフト重合することにより、ゴム分子を架橋する。第二ゴム組成物が、α,β−不飽和カルボン酸(2b−1)を含む場合、この第二ゴム組成物は、金属化合物(2f)をさらに含むことが好ましい。この金属化合物(2f)は、第二ゴム組成物中でα,β−不飽和カルボン酸(2b−1)と反応する。この反応によって得られた塩が、基材ゴムの分子鎖にグラフト重合する。
金属化合物(2f)の例として、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム及び水酸化銅のような金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛及び酸化銅のような金属酸化物;並びに炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム及び炭酸カリウムのような金属炭酸化物が挙げられる。二価金属を含む化合物が、好ましい。二価金属を含む化合物は、共架橋剤(2b)と反応して、金属架橋を形成する。特に好ましい金属化合物(2f)は、亜鉛化合物である。2種以上の金属化合物が併用されてもよい。
α,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びクロトン酸が例示される。α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(2b−2)における金属成分としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、アルミニウムイオン、錫イオン及びジルコニウムイオンが例示される。α,β−不飽和カルボン酸の金属塩(2b−2)が、2種以上のイオンを含んでもよい。ゴム分子間の金属架橋が生じやすいとの観点から、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン及びカドミウムイオンのような、二価の金属イオンが好ましい。特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸の金属塩(2b−2)は、アクリル酸亜鉛である。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、共架橋剤(2b)の量は、基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上が特に好ましい。打球感の観点から、この量は50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下が特に好ましい。
このゴルフボール2では、好ましくは、包囲層20における共架橋剤(2b)の量はセンター18における共架橋剤(1b)の量よりも多い。これにより、コア4の外剛内柔構造の程度が高められる。この観点から、包囲層20における共架橋剤(2b)の量とセンター18における共架橋剤(1b)の量との差は、5質量部以上が好ましい。中心から表面に向かって、硬度が直線的に増加するコア4が得られるとの観点から、この量の差は20質量部以下が好ましい。このゴルフボール2では、ドライバーで打撃されたときのスピンが効果的に抑制される。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。
好ましい架橋開始剤(2c)は、有機過酸化物である。有機過酸化物は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。汎用性の観点から、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、架橋開始剤(2c)の量は、基材ゴム100質量部に対して0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感及び耐久性の観点から、この量は、5.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下が特に好ましい。
本発明では、酸及び/又は塩(2d)の概念には、共架橋剤(2b)は含まれない。酸及び/又は塩(2d)は、後述するように、コア4の加熱・成形時に、共架橋剤(2b)による金属架橋を切断すると推測されている。
酸及び/又は塩(2d)として、カルボン酸、スルホン酸及びリン酸のようなオキソ酸並びにその塩;並びに塩酸及びフッ化水素酸のような水素酸並びにその塩が挙げられる。オキソ酸及びその塩が好ましい。カルボン酸及びその塩(2d−1)がより好ましい。カルボン酸塩が特に好ましい。
カルボン酸及び/又はその塩(2d−1)におけるカルボン酸成分は、カルボキシル基を有する。このカルボン酸成分は、共架橋剤(2b)と反応する。この反応により、金属架橋が切断されると推測される。
カルボン酸及び/又はその塩(2d−1)におけるカルボン酸成分の炭素数は、1以上30以下が好ましく、3以上30以下がより好ましく、5以上28以下がさらに好ましい。カルボン酸として、脂肪族カルボン酸(脂肪酸)及び芳香族カルボン酸が例示される。カルボン酸及び/又はその塩(2d−1)としては、脂肪酸及び/又はその塩が好ましい。脂肪酸及び/又はその塩における脂肪酸成分の炭素数は、1以上30以下が好ましい。
第二ゴム組成物が、飽和脂肪酸及び/又はその塩を含んでもよく、不飽和脂肪酸及び/又はその塩を含んでもよい。飽和脂肪酸及びその塩が好ましい。
脂肪酸として、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(オクタン酸)(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(デカン酸)(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ミリストレイン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、パルミトレイン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、12−ヒドロキシステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ガドレイン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコセン酸(C20)、べヘニン酸(C22)、エルカ酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、ネルボン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)及びメリシン酸(C30)が例示される。2種以上の脂肪酸が併用されてもよい。オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びベヘニン酸が好ましい。
芳香族カルボン酸は、芳香環とカルボキシル基とを有する。芳香族カルボン酸として、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸(ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸)、トリメリット酸(ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸)、トリメシン酸(ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸)、メロファン酸(ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸)、プレーニト酸(ベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボン酸)、ピロメリット酸(ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸)、メリット酸(ベンゼンヘキサカルボン酸)、ジフェン酸(ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸)、トルイル酸(メチル安息香酸)、キシリル酸、プレーニチル酸(2,3,4−トリメチル安息香酸)、γ−イソジュリル酸(2,3,5−トリメチル安息香酸)、ジュリル酸(2,4,5−トリメチル安息香酸)、β−イソジュリル酸(2,4,6−トリメチル安息香酸)、α−イソジュリル酸(3,4,5−トリメチル安息香酸)、クミン酸(4−イソプロピル安息香酸)、ウビト酸(5−メチルイソフタル酸)、α−トルイル酸(フェニル酢酸)、ヒドロアトロパ酸(2−フェニルプロパン酸)及びヒドロケイ皮酸(3−フェニルプロパン酸)が例示される。
第二ゴム組成物が、ヒドロキシル基、アルコキシ基又はオキソ基で置換された芳香族カルボン酸塩を含んでもよい。このカルボン酸としては、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、アニス酸(メトキシ安息香酸)、クレソチン酸(ヒドロキシ(メチル)安息香酸)、o−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−3−メチル安息香酸)、m−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸)、p−ホモサリチル酸(2−ヒドロキシ−5−メチル安息香酸)、o−ピロカテク酸(2,3−ジヒドロキシ安息香酸)、β−レソルシル酸(2,4−ジヒドロキシ安息香酸)、γ−レソルシル酸(2,6−ジヒドロキシ安息香酸)、プロトカテク酸(3,4−ジヒドロキシ安息香酸)、α−レソルシル酸(3,5−ジヒドロキシ安息香酸)、バニリン酸(4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸)、イソバニリン酸(3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸)、ベラトルム酸(3,4−ジメトキシ安息香酸)、o−ベラトルム酸(2,3−ジメトキシ安息香酸)、オルセリン酸(2,4−ジヒドロキシ−6−メチル安息香酸)、m−ヘミピン酸(4,5−ジメトキシフタル酸)、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、シリング酸(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシ安息香酸)、アサロン酸(2,4,5−トリメトキシ安息香酸)、マンデル酸(ヒドロキシ(フェニル)酢酸)、バニルマンデル酸(ヒドロキシ(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸)、ホモアニス酸((4−メトキシフェニル)酢酸)、ホモゲンチジン酸((2,5−ジヒドロキシフェニル)酢酸)、ホモプロトカテク酸((3,4−ジヒドロキシフェニル)酢酸)、ホモバニリン酸((4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)酢酸)、ホモイソバニリン酸((3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)酢酸)、ホモベラトルム酸((3,4−ジメトキシフェニル)酢酸)、o−ホモベラトルム酸((2,3−ジメトキシフェニル)酢酸)、ホモフタル酸(2−(カルボキシメチル)安息香酸)、ホモイソフタル酸(3−(カルボキシメチル)安息香酸)、ホモテレフタル酸(4−(カルボキシメチル)安息香酸)、フタロン酸(2−(カルボキシカルボニル)安息香酸)、イソフタロン酸(3−(カルボキシカルボニル)安息香酸)、テレフタロン酸(4−(カルボキシカルボニル)安息香酸)、ベンジル酸(ヒドロキシジフェニル酢酸)、アトロラクチン酸(2−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸)、トロパ酸(3−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン酸)、メリロット酸(3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン酸)、フロレト酸(3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸)、ヒドロカフェー酸(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン酸)、ヒドロフェルラ酸(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン酸)、ヒドロイソフェルラ酸(3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)プロパン酸)、p−クマル酸(3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリル酸)、ウンベル酸(3−(2,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸)、カフェー酸(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アクリル酸)、フェルラ酸(3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)アクリル酸)、イソフェルラ酸(3−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)アクリル酸)及びシナピン酸(3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)アクリル酸)が例示されうる。
カルボン酸塩のカチオン成分は、金属イオン又は有機陽イオンである。金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、銀イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カドミウムイオン、銅イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、錫イオン、ジルコニウムイオン及びチタンイオンが例示される。2種以上のイオンが併用されてもよい。
有機陽イオンは、炭素鎖を有する陽イオンである。有機陽イオンとして、有機アンモニウムイオンが挙げられる。有機アンモニウムイオンとして、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン及び2−エチルヘキシルアンモニウムイオンのような1級アンモニウムイオン;ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン及びオクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンのような2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンのような3級アンモニウムイオン;並びにジオクチルジメチルアンモニウムイオン及びジステアリルジメチルアンモニウムイオンのような4級アンモニウムイオンが例示される。2種以上の有機陽イオンが併用されてもよい。
好ましいカルボン酸塩として、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸又はベヘニン酸のカリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩又はコバルト塩が例示される。カルボン酸の亜鉛塩が特に好ましい。好ましいカルボン酸の亜鉛塩の具体例として、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛及びステアリン酸亜鉛が挙げられる。特に好ましいカルボン酸の亜鉛塩は、オクタン酸亜鉛である。
コア4の硬度分布の直線性の観点から、酸及び/又は塩(2d)の量は、基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上が特に好ましい。反発性能の観点から、この量は45質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
第二ゴム組成物における共架橋剤(2b)と酸及び/又は塩(2d)との質量比は、3/7以上9/1以下が好ましい。質量比が上記範囲内である第二ゴム組成物により、内側から外側に向かって硬度が直線的に増加する包囲層20が得られうる。
共架橋剤(2b)として、アクリル酸亜鉛が好んで用いられている。ゴムへの分散性の向上を目的として、その表面がステアリン酸又はステアリン酸亜鉛でコーティングされているアクリル酸亜鉛が存在する。本発明では、このアクリル酸亜鉛を第二ゴム組成物が含む場合、酸及び/又は塩(2d)には、コーティング剤は含まれない。
好ましくは、第二ゴム組成物は、有機硫黄化合物(2e)をさらに含む。有機硫黄化合物(2e)は、コア4の硬度分布の直線性を高める。有機硫黄化合物(2e)はさらに、外剛内柔構造の程度を高める。
このゴルフボール2では、有機硫黄化合物(2e)には、前述の第一ゴム組成物における有機硫黄化合物(1e)と同様の化合物が用いられる。したがって、好ましい有機化合物(2e)は、チオフェノール類、ジフェニルジスルフィド類、チオナフトール類及びチウラムジスルフィド類並びにこれらの金属塩である。外剛内柔構造が得られやすいとの観点から、好ましい有機硫黄化合物(2e)は、2−チオナフトール、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド及び2,6−ジクロロチオフェノールである。より好ましい有機硫黄化合物(2e)は、2−チオナフトールである。
外剛内柔構造が得られやすいの観点から、有機硫黄化合物(2e)の含有量は、基材ゴム100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.2質量部以上が特に好ましい。反発性能の観点から、この量は5.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下が特に好ましい。
包囲層20に、比重調整等の目的で充填剤が配合されてもよい。好適な充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤の量は、コア4の意図した比重が達成されるように適宜決定される。特に好ましい充填剤は、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、比重調整の役割のみならず、架橋助剤としても機能する。
包囲層20の第二ゴム組成物には、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤、硫黄、加硫促進剤等が、必要に応じて添加される。この第二ゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が分散してもよい。
コア4を加熱・成形するとき、基材ゴム(1a)は共架橋剤(1b)によって架橋される。基材ゴム(2a)は、共架橋剤(2b)によって架橋される。これら架橋反応の反応熱は、コア4の中心近傍に溜まる。従って、コア4を加熱・成形するとき、中心部の温度は高い。温度は、中心から表面に向かって漸減する。コア4のセンター18をなす第一ゴム組成物においては、酸は共架橋剤(1b)の金属塩と反応し、カチオンと結合する。この第一ゴム組成物においては、塩は共架橋剤(1b)の金属塩と反応し、カチオンを交換する。この結合及び交換により、金属架橋が切断される。コア4の包囲層20をなす第二ゴム組成物においては、酸は共架橋剤(2b)の金属塩と反応し、カチオンと結合する。塩は共架橋剤(2b)の金属塩と反応し、カチオンを交換する。この結合及び交換により、金属架橋が切断される。コア4における金属架橋の切断は、温度が高いコア4の中心部において起こりやすく、表面近傍において起こりにくい。その結果、コア4の架橋密度が、中心から表面に向かって高くなる。このコア4では、外剛内柔構造が達成されうる。さらに、第一ゴム組成物が酸及び/又は塩(1d)と共に有機硫黄化合物(1e)を含む、並びに/又は、第二ゴム組成物が酸及び/又は塩(2d)と共に有機硫黄化合物(2e)を含むことにより、硬度分布の勾配をコントロールすることができ、コア4の外剛内柔構造の程度を高めることができる。硬度分布の勾配のコントロールが容易との観点から、第一ゴム組成物が酸及び/又は塩(1d)と共に有機硫黄化合物(1e)を含み、第二ゴム組成物が酸及び/又は塩(2d)と共に有機硫黄化合物(2e)を含むのが好ましい。このコア4を含むゴルフボール2がドライバーで打撃されたときのスピン速度は、小さい。このゴルフボール2では、ドライバーでのショットにおいて、優れた飛行性能が達成される。
このゴルフボール2では、センター18の第一ゴム組成物が酸及び/又は塩(1d)を含む場合、包囲層20の第二ゴム組成物は酸及び/又は塩(2d)を含まなくてもよい。包囲層20の第二ゴム組成物が酸及び/又は塩(2d)を含む場合、センター18の第一ゴム組成物は酸及び/又は塩(1d)を含まなくてもよい。硬度分布の勾配を効果的にコントロールすることができ、コア4の外剛内柔構造の程度を一層高めることができるとの観点から、センター18の第一ゴム組成物が酸及び/又は塩(1d)を含み、包囲層20の第二ゴム組成物が酸及び/又は塩(2d)を含むのが好ましい。
第一中間層6には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の基材ポリマーとして、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド及びポリオレフィンが例示される。
特に好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。アイオノマー樹脂を含む第一中間層6を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。第一中間層6に、アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合、基材ポリマーの主成分がアイオノマー樹脂であることが好ましい。具体的には、基材ポリマーの全量に対するアイオノマー樹脂の比率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい二元共重合体は、80質量%以上90質量%以下のα−オレフィンと、10質量%以上20質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸とを含む。この二元共重合体は、反発性能に優れる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。好ましい三元共重合体は、70質量%以上85質量%以下のα−オレフィンと、5質量%以上30質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸と、1質量%以上25質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとを含む。この三元共重合体は、反発性能に優れる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましいアイオノマー樹脂は、エチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体である。
二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボール2の反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンである。
アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7329」、「ハイミランMK7320」及び「ハイミランMK7329」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。
第一中間層6に、2種以上のアイオノマー樹脂が併用されてもよい。1価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂と2価の金属イオンで中和されたアイオノマー樹脂とが併用されてもよい。
アイオノマー樹脂と併用されうる好ましい樹脂は、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーである。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーは、アイオノマー樹脂との相溶性に優れる。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物は、流動性に優れる。
スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンブロックと、ソフトセグメントとを備えている。典型的なソフトセグメントは、ジエンブロックである。ジエンブロックの化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが例示される。ブタジエン及びイソプレンが好ましい。2以上の化合物が併用されてもよい。
スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、SBSの水添物、SISの水添物及びSIBSの水添物が含まれる。SBSの水添物としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)が挙げられる。SISの水添物としては、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が挙げられる。SIBSの水添物としては、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)が挙げられる。
ゴルフボール2の反発性能の観点から、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーにおけるスチレン成分の含有率は10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。ゴルフボール2の打球感の観点から、この含有率は50質量%以下が好ましく、47質量%以下がより好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
本発明において、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、SBS、SIS、SIBS、SEBS、SEPS及びSEEPSからなる群から選択された1種又は2種以上と、オレフィンとのアロイが含まれる。このアロイ中のオレフィン成分は、アイオノマー樹脂との相溶性向上に寄与すると推測される。このアロイが用いられることにより、ゴルフボール2の反発性能が向上する。好ましくは、炭素数が2以上10以下のオレフィンが用いられる。好適なオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン及びペンテンが例示される。エチレン及びプロピレンが特に好ましい。
ポリマーアロイの具体例としては、三菱化学社の商品名「ラバロンT3221C」、「ラバロンT3339C」、「ラバロンSJ4400N」、「ラバロンSJ5400N」、「ラバロンSJ6400N」、「ラバロンSJ7400N」、「ラバロンSJ8400N」、「ラバロンSJ9400N」及び「ラバロンSR04」が挙げられる。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーの他の具体例としては、ダイセル化学工業社の商品名「エポフレンドA1010」及びクラレ社の商品名「セプトンHG−252」が挙げられる。
第一中間層6が、基材ポリマーとして、高弾性樹脂を含んでもよい。この高弾性樹脂は、中間層6の高剛性に寄与する。高弾性樹脂の具体例としては、ポリアミドが挙げられる。
第一中間層6の樹脂組成物には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。
コア4及び中間層6からなる球体において外剛内柔構造が達成されうるとの観点から、第一中間層6の硬度Hm1は30以上が好ましく、40以上がより好ましい。コントロール性能の観点から、硬度Hm1は60以下が好ましく、54以下がより好ましい。硬度Hm1は、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたショアD型硬度計によって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。第一中間層6の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが用いられる。
第一中間層6の厚みTm1は、0.5mm以上1.6mm以下が好ましい。0.5mm以上の厚みTm1を有する第一中間層6は、ゴルフボール2の耐久性に寄与しうる。この観点から、厚みTm1は0.7mm以上が特に好ましい。1.6mm以下の厚みTm1を有する第一中間層6を備えたゴルフボール2は、大きなコア4を備えうる。大きなコア4は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、厚みTm1は1.4mm以下が特に好ましい。
第一中間層6の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。
第二中間層8には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。アイオノマー樹脂を含む第二中間層8を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。第一中間層6に関して前述されたアイオノマー樹脂が、第二中間層8に用いられうる。
アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、反発性能の観点から、アイオノマー樹脂が基材ポリマーの主成分とされる。基材ポリマーの全量に対するアイオノマー樹脂の量の比率は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
アイオノマー樹脂と併用されうる他の好ましい樹脂は、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーである。第一中間層6に関して前述されたスチレンブロック含有熱可塑性エラストマーが、第二中間層8に用いられうる。
第二中間層8には、必要に応じ、二酸化チタン及び蛍光顔料のような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。
コア4、第一中間層6及び第二中間層8からなる球体において外剛内柔構造が達成されうるとの観点から、第二中間層8の硬度Hm2は55以上が好ましく、60以上がより好ましい。コントロール性能の観点から、硬度Hm2は70以下が好ましく、68以下がより好ましい。硬度Hm2は、硬度Hm1の測定方法と同様の方法にて測定される。
第二中間層8の厚みTm2は、0.5mm以上1.6mm以下が好ましい。0.5mm以上の厚みTm2を有する第二中間層8は、ゴルフボール2の耐久性に寄与しうる。この観点から、厚みTm2は0.7mm以上が特に好ましい。1.6mm以下の厚みTm2を有する第二中間層8を備えたゴルフボール2は、大きなコア4を備えうる。大きなコア4は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、厚みTm2は1.4mm以下が特に好ましい。
第二中間層8の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。
カバー12には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の好ましい基材ポリマーは、ポリウレタンである。ポリウレタンは、軟質である。ポリウレタンを含む樹脂組成物からなるカバー12を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。この樹脂組成物からなるカバー12は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。さらに、ポリウレタンは、パター又はショートアイアンで打撃されたときの優れた打球感にも寄与しうる。
カバー12の成形容易の観点から、好ましい基材ポリマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーである。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。ポリウレタン成分のためのイソシアネートとしては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。2種以上のジイソシアネートが併用されてもよい。
脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。汎用性及び加工性の観点から、H12MDIが好ましい。
芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)が例示される。脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が例示される。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの具体例としては、BASFジャパン社の商品名「エラストランNY80A」、「エラストランNY82A」、「エラストランNY84A」、「エラストランNY85A」、「エラストランNY88A」、「エラストランNY90A」、「エラストランNY97A」、「エラストランNY585」及び「エラストランXKP016N」;並びに大日精化工業社の商品名「レザミンP4585LS」及び「レザミンPS62490」が挙げられる。
カバー12の小さな硬度が達成されうるとの観点から、特に好ましい熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、「エラストランNY80A」、「エラストランNY82A」、「エラストランNY84A」、「エラストランNY85A」及び「エラストランNY90A」である。
熱可塑性ポリウレタンエラストマーと他の樹脂とが、併用されてもよい。併用されうる樹脂としては、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー及びアイオノマー樹脂が挙げられる。熱可塑性ポリウレタンエラストマーと他の樹脂とが併用される場合、スピン性能の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが基材ポリマーの主成分とされる。全基材ポリマーに占める熱可塑性ポリウレタンエラストマーの比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
カバー12には、必要に応じ、二酸化チタン及び蛍光顔料のような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が、適量配合される。
カバー12のショアD硬度Hcは、55以下が好ましい。硬度Hcが55以下であるカバー12を有するゴルフボール2は、コントロール性能に優れる。この観点から、硬度Hcは50以下がより好ましく、48以下が特に好ましい。ドライバーでのショットにおける飛距離の観点から、硬度Hcは10以上が好ましい。硬度Hcは、硬度Hm1の測定方法と同様の方法にて測定される。
カバー12の厚みTcは、1.1mm以下が好ましい。厚みTcが1.1mm以下であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、厚みTcは1.0mm以下がより好ましく、0.8mm以下が特に好ましい。コントロール性能の観点から、厚みTcは0.1mm以上が好ましい。
カバー12の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。カバー12の成形時に、成形型のキャビティ面に形成されたピンプルにより、ディンプル14が形成される。
ゴルフボール2が、カバー12として、2以上の層を備えてもよい。
このゴルフボール2では、コア4の外側に第一中間層6が位置しており、この第一中間層6の外側に第二中間層8が位置している。言い換えれば、コア4が第一中間層6及び第二中間層8により被覆されている。この第一中間層6及び第二中間層8は、ゴルフボール2の耐久性に寄与しうる。この観点から、第一中間層6の厚みTm1と第二中間層8の厚みTm2との和(Tm1+Tm2)は1.0mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましい。大きなコア4は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、この和(Tm1+Tm2)は3.2mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。
このゴルフボール2では、第一中間層6の硬度Hm1、第二中間層8の硬度Hm2及びカバー12の硬度Hcは、下記数式の関係を満たす。
Hm2 > Hm1
Hm2 > Hc
このゴルフボール2がドライバーで打撃されたとき、ヘッド速度が大きいので、コア4、第一中間層6及び第二中間層8とからなる球体が大きく歪む。この球体は外剛内柔構造を有するので、スピン速度が抑制される。コア4の硬度は直線的に変化するので、このコア4の変形と復元とにより、ゴルフボール2が速い速度で打ち出される。スピン速度の抑制と、速い打ち出し速度とにより、大きな飛距離が達成される。このゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたとき、ヘッド速度が小さいので、この球体の歪みは小さい。ショートアイアンで打撃されたときのゴルフボール2の挙動は、カバー12に依存する。カバー12が軟質なので、ゴルフボール2とクラブフェースとのスリップが抑制される。スリップの抑制により、大きなスピン速度が得られる。大きなスピン速度により、優れたコントロール性能が達成される。このゴルフボール2では、ドライバーでのショットにおける飛行性能と、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能とが両立される。
このゴルフボール2が打撃されたとき、カバー12が衝撃を吸収する。この吸収により、ソフトな打球感が達成される。特に、ショートアイアン又はパターで打撃されたとき、カバー12によって優れた打球感が達成される。
飛行性能とコントロール性能との両立の観点から、硬度Hm2と硬度Hmとの差(Hm2−Hm1)は8以上が好ましく、14以上がより好ましい。差(Hm2−Hm1)は40以下が好ましい。
飛行性能とコントロール性能との両立の観点から、硬度Hm2と硬度Hcとの差(Hm2−Hc)は15以上が好ましく、17以上がより好ましい。差(Hm2−Hc)は60以下が好ましい。
このゴルフボール2では、第一中間層6の硬度Hm1及びカバー12の硬度Hcは、下記数式の関係を満たすのが好ましい。
Hm1 > Hc
このゴルフボール2は、コントロール性能及び打球感に優れる。
コントロール性能及び打球感の観点から、第一中間層6の硬度Hm1とカバー12の硬度Hcとの差(Hm1−Hc)は1以上が好ましい。耐久性の観点から、この差(Hm1−Hc)は25以下が好ましい。
補強層10は、第二中間層8とカバー12との間に位置している。補強層10は、第二中間層8と堅固に密着し、カバー12とも堅固に密着する。補強層10により、カバー12の第二中間層8からの剥離が抑制される。このゴルフボール2では、第二中間層8が樹脂組成物からなり、カバー12がその基材樹脂が第二中間層8の基材樹脂とは異なる樹脂組成物からなる場合に、この補強層10によりカバー12の第二中間層8からの剥離が効果的に抑制される。
補強層10の基材ポリマーには、二液硬化型熱硬化性樹脂が好適に用いられる。二液硬化型熱硬化性樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂及びセルロース系樹脂が挙げられる。補強層10の強度及び耐久性の観点から、二液硬化型エポキシ樹脂及び二液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
二液硬化型エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂がポリアミド系硬化剤で硬化されることで得られる。二液硬化型エポキシ樹脂に用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂が例示される。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリン等のエポキシ基含有化合物との反応によって得られる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールFとエポキシ基含有化合物との反応によって得られる。ビスフェノールAD型エポキシ樹脂は、ビスフェノールADとエポキシ基含有化合物との反応によって得られる。柔軟性、耐薬品性、耐熱性及び強靭性のバランスの観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
ポリアミド系硬化剤は、複数のアミノ基と、1個以上のアミド基を有する。このアミノ基が、エポキシ基と反応し得る。ポリアミド系硬化剤の具体例としては、ポリアミドアミン硬化剤及びその変性物が挙げられる。ポリアミドアミン硬化剤は、重合脂肪酸とポリアミンとの縮合反応によって得られる。典型的な重合脂肪酸は、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸を多く含む天然脂肪酸類が触媒存在下で加熱されて合成されることで得られる。不飽和脂肪酸の具体例としては、トール油、大豆油、亜麻仁油及び魚油が挙げられる。ダイマー分が90質量%以上であり、トリマー分が10質量%以下であり、且つ水素添加された重合脂肪酸が好ましい。好ましいポリアミンとしては、ポリエチレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン及びそれらの誘導体が例示される。
エポキシ樹脂とポリアミド系硬化剤との混合において、エポキシ樹脂のエポキシ当量とポリアミド系硬化剤のアミン活性水素当量との比は、1.0/1.4以上1.0/1.0以下が好ましい。
二液硬化型ウレタン樹脂は、主剤と硬化剤との反応によって得られる。ポリオール成分を含有する主剤とポリイソシアネート又はその誘導体を含有する硬化剤との反応によって得られる二液硬化型ウレタン樹脂や、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤と活性水素を有する硬化剤との反応によって得られる二液硬化型ウレタン樹脂が用いられうる。特に、ポリオール成分を含有する主剤とポリイソシアネート又はその誘導体を含有する硬化剤との反応によって得られる二液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
主剤のポリオール成分としてウレタンポリオールが用いられることが、好ましい。ウレタンポリオールは、ウレタン結合と、少なくとも2以上のヒドロキシル基を有する。好ましくは、ウレタンポリオールは、その末端にヒドロキシル基を有する。ウレタンポリオールは、ポリオール成分のヒドロキシル基がポリイソシアネートのイソシアネート基に対してモル比で過剰になるような割合で、ポリオールとポリイソシアネートとが反応させられることによって得られうる。
ウレタンポリオールの製造に使用されるポリオールは、複数のヒドロキシル基を有する。重量平均分子量が50以上2000以下であるポリオールが好ましく、100以上1000以下であるポリオールが特に好ましい。低分子量のポリオールとして、ジオール及びトリオールが挙げられる。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。トリオールの具体例としては、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールが挙げられる。高分子量のポリオールとして、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)のようなポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)のような縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートのようなポリカーボネートポリオール;並びにアクリルポリオールが挙げられる。2種以上のポリオールが併用されてもよい。
ウレタンポリオールの製造に使用されるポリイソシアネートは、複数のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネートの具体例としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)のような脂環式ポリイソシアネート;並びにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のような脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。2以上のポリイソシアネートが併用されてもよい。耐候性の観点から、TMXDI、XDI、HDI、H6XDI、IPDI及びH12MDIが好ましい。
ウレタンポリオール生成のためのポリオールとポリイソシアネートとの反応では、既知の触媒が用いられうる。典型的な触媒は、ジブチル錫ジラウレートである。
補強層10の強度の観点から、ウレタンポリオールに含まれるウレタン結合の比率は0.1mmol/g以上が好ましい。補強層10のカバー12への追従性の観点から、ウレタンポリオールに含まれるウレタン結合の比率は5mmol/g以下が好ましい。ウレタン結合の比率は、原料となるポリオールの分子量の調整及びポリオールとポリイソシアネートとの配合比率の調整により調整されうる。
主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点から、ウレタンポリオールの重量平均分子量は4000以上が好ましく、4500以上が特に好ましい。補強層10の密着性の観点から、ウレタンポリオールの重量平均分子量は10000以下が好ましく、9000以下が特に好ましい。
補強層10の密着性の観点から、ウレタンポリオールの水酸基価(mgKOH/g)は15以上が好ましく、73以上が特に好ましい。主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点から、ウレタンポリオールの水酸基価は130以下が好ましく、120以下が特に好ましい。
主剤が、ウレタンポリオールとともに、ウレタン結合を有さないポリオールを含有してもよい。ウレタンポリオールの原料である前述のポリオールが、主剤に用いられうる。ウレタンポリオールと相溶可能なポリオールが好ましい。主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点から、主剤におけるウレタンポリオールの比率は、固形分換算で、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が特に好ましい。理想的には、この比率は100質量%である。
硬化剤は、ポリイソシアネート又はその誘導体を含有する。ウレタンポリオールの原料である前述のポリイソシアネートが、硬化剤に用いられうる。
補強層10が、着色剤(典型的には二酸化チタン)、リン酸系安定剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含んでもよい。添加剤は、二液硬化型熱硬化性樹脂の主剤に添加されてもよく、硬化剤に添加されてもよい。
補強層10は、主剤及び硬化剤が溶剤に溶解又は分散した液が、中間層6の表面に塗布されることで得られる。作業性の観点から、スプレーガンによる塗布が好ましい。塗布後に溶剤が揮発し、主剤と硬化剤とが反応して、補強層10が形成される。好ましい溶剤としては、トルエン、イソプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブチルアルコール及び酢酸エチルが例示される。
打球感の観点から、ゴルフボール2の圧縮変形量(comp’n)は2.3mm以上が好ましく、2.5mm以上がより好ましく、2.7mm以上が特に好ましい。反発性能の観点から、圧縮変形量は3.5mm以下が好ましく、3.3mm以下がより好ましく、3.1mm以下が特に好ましい。
圧縮変形量の測定には、YAMADA式コンプレッションテスターが用いられる。このテスターでは、ゴルフボール2が金属製の剛板の上に置かれる。このゴルフボール2に向かって、金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれたゴルフボール2は、変形する。ゴルフボール2に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、測定される。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、29質量部のアクリル酸亜鉛(三新化学工業社の商品名「サンセラーSR」)、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.2質量部の2−チオナフトール、0.9質量部のジクミルパーオキサイド及び5.0質量部のオクタン酸亜鉛を混練し、第一ゴム組成物を得た。この第一ゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で25分間加熱して、直径が23.0mmであるセンターを得た。
100質量部のハイシスポリブタジエン(前述の「BR−730」)、40質量部のアクリル酸亜鉛(前述の「サンセラーSR」)、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.2質量部の2−チオナフトール、0.9質量部のジクミルパーオキサイド及び5.0質量部のオクタン酸亜鉛を混練し、第二ゴム組成物を得た。この第二ゴム組成物から、ハーフシェルを成形した。上記センターを2枚のハーフシェルで被覆した。このセンター及びハーフシェルを、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で25分間加熱して、直径が37.1mmであるコアを得た。第二ゴム組成物からは、包囲層が成形された。包囲層の比重がセンターの比重と一致し、かつボール質量が45.4gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した。
30質量部のアイオノマー樹脂(前述の「サーリン8945」)、45質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)、25質量部のスチレンブロック含有熱可塑性エラストマー(前述の「ラバロンT3221C」)及び3質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。金型に、コアを投入した。上記樹脂組成物を射出成形法にてコアの周りに射出し、第一中間層を成形した。この第一中間層の厚みTm1は、1.0mmであった。
55質量部のアイオノマー樹脂(前述の「サーリン8945」)、45質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)及び3質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。金型に、コア及び第一中間層からなる球体を投入した。上記樹脂組成物を射出成形法にて球体の周りに射出し、第二中間層を成形した。この第二中間層の厚みTm2は、1.0mmであった。
二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物(神東塗料社の商品名「ポリン750LE)を調製した。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とからなる。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、55質量部の溶剤と、5質量部の二酸化チタンとからなる。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃の雰囲気下で12時間保持して、補強層を得た。補強層の厚みは、10μmであった。
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(前述の「エラストランNY97A」)、0.2質量部のヒンダードアミン系光安定剤(チバジャパン社の商品名「チヌビン770」)、4質量部の二酸化チタン及び0.04質量部のウルトラマリンブルーを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを成形した。このハーフシェル2枚で、コア、第一中間層、第二中間層及び補強層からなる球体を被覆した。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に、上記球体及びハーフシェルを投入した。このハーフシェルから、圧縮成形法にてカバーを得た。このカバーの厚みTcは、0.8mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が42.7mmである実施例1のゴルフボールを得た。
[実施例2−22及び比較例1−6]
センター、包囲層、第一中間層、第二中間層及びカバーの仕様を下記の表12−16に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−22及び比較例1−6のゴルフボールを得た。センター及び包囲層の組成の詳細が、下記の表1−4に示されている。コアの硬度分布が、下記の表7−11に示されている。第一中間層及び第二中間層の組成の詳細が、下記の表5に示されている。カバーの組成の詳細が、下記の表6に示されている。
[ドライバー(W#1)による打撃]
ツルテンパー社のスイングマシンに、チタンヘッドを備えたドライバー(ダンロップスポーツ社の商品名「XXIO」、シャフト硬度:S、ロフト角:10.0°)を装着した。ヘッド速度が45m/secである条件で、ゴルフボールを打撃した。打撃直後のスピン速度を測定した。さらに、発射地点から静止地点までの距離を測定した。10回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表12−16に示されている。
[サンドウエッジ(SW)による打撃]
上記スイングマシンに、サンドウエッジ(SW)を装着した。ヘッド速度が21m/secである条件で、ゴルフボールを打撃した。打撃直後のバックスピンの速度を測定した。10回測定されて得られたデータの平均値が、下記の表12−16に示されている。
[耐久性]
ゴルフボールを、23℃の雰囲気下に12時間保持した。上記スイングマシンに、上記ドライバーを装着した。ヘッド速度が45m/secである条件で、ゴルフボールを、繰り返し打撃した。ゴルフボールが破損するまでの打撃回数を、カウントした。12回測定されて得られた打撃回数の平均値が、指数として下記の表12−16に示されている。
表1から4に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。
BR730:JSR社の、ハイシスポリブタジエン(シス−1,4−結合含有量:96質量%、1,2−ビニル結合含有量:1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)
):55、分子量分布(Mw/Mn):3)
サンセラーSR:三新化学工業社のアクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸コーティング品)
ZN−DA90S:日本蒸留工業社のアクリル酸亜鉛(10質量%ステアリン酸亜鉛コーティング品)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社の商品名「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社の商品名「硫酸バリウムBD」
2−チオナフトール:東京化成工業社
ビスペンタブロモフェニルジスルフィド:川口化学工業社
ジクミルパーオキサイド:日油社の商品名「パークミルD」
オクタン酸亜鉛:三津和化学薬品社
ステアリン酸亜鉛:和光純薬工業社
ミリスチン酸亜鉛:和光純薬工業社
表12−16に示されるように、実施例に係るゴルフボールは、諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。