JP3695390B2 - 空気通路開閉装置および車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可撓性を有する膜状部材からなるスライドドアにより空気通路を開閉する空気通路開閉装置およびそれを用いた車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平8−2238号公報等において、膜状部材の移動によって空気通路の切替を行う空気通路開閉装置が提案されている。この従来技術においては、膜状部材の両端を駆動軸および従動軸にそれぞれ連結し、巻き取る構成であるので、駆動軸と従動軸とを連動させる必要がある。このため、プーリー、ワイヤーといった連動機構が必要となり、装置全体として部品点数が増加するとともに、組付も煩雑となり、コスト高になるという問題があった。
【0003】
そこで、本出願人においては、先に、特願2000−275306号の特許出願において、膜状部材の巻き取り機構を不要にして、構成を簡素化した空気通路開閉装置を提案している。この先願のものでは、空気通路を形成するケース内にガイド部を設け、このガイド部にて膜状部材(本発明のスライドドアに相当)の幅方向の両端部をガイドするとともに、膜状部材に駆動軸の駆動ギヤを噛み合わせている。
【0004】
これにより、駆動軸の回転により膜状部材をガイド部に沿って往復動させ、膜状部材の移動によりケースの空気通路を開閉するようにしている。具体的には、膜状部材に空気流通用の開口部を設け、膜状部材の移動により開口部とケース側の空気通路との連通面積が変化して空気通路を開閉するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記先願のものを実際に試作検討してみると、膜状部材に空気流通用の開口部を設けているため、この開口部周辺部で膜状部材の剛性が低下する。その結果、駆動軸の駆動ギヤからの操作力が膜状部材に加わると、開口部周辺部で膜状部材の変形が発生して、膜状部材をスムースに押し出すことができないという事態が生じることが分かった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、可撓性を有する膜状部材からなるスライドドアを用いた空気通路開閉装置において、膜状部材の開口部周辺部における剛性低下に起因する作動不良を解消することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空気通路(15a、16、19〜21)を形成するケース(11)内にスライドドア(14、22)を移動可能に配置し、スライドドア(14、22)は、可撓性を有する膜状部材(141、221)に空気流通用の開口部(142、222)を設けた構成になっており、
スライドドア(14、22)の移動により開口部(142、222)と空気通路(15a、16、19〜21)との連通面積が変化して空気通路(15a、16、19〜21)を開閉するようになっており、
膜状部材(141、221)のうち開口部(142、222)の周辺部(141a、221a)の剛性を高めるための剛性増加手段(143、223、223a)と、
剛性増加手段(143、223、223a)の部位を介して膜状部材(141、221)に操作力を伝達する駆動手段(25、26、30、31)とを備え、
膜状部材(141、221)には、開口部周辺部(141a、221a)に対してスライドドア(14、22)の移動方向(a)の前後両側に空気流通用開口部のない可撓性を有する膜部分(141b、221b)が形成されており、
更に、ケース(11)には、開口部周辺部(141a、221a)および前後両側の膜部分(141b、221b)を含むスライドドア(14、22)全体を摺動可能にガイドするガイド溝(23、24、27、28、32、33)が形成されており、
駆動手段(25、26、30、31)からの操作力によりスライドドア(14、22)をガイド溝でガイドしながら移動させることを特徴とする。
【0008】
これによると、スライドドア(14、22)の膜状部材(141、221)が開口部(142、222)を有する構成であっても、膜状部材(141、221)の開口部周辺部(141a、221a)の剛性を増加できるので、膜状部材(141、221)に押出方向の駆動力が加える際に、その押出方向の駆動力にて膜状部材を確実に押し出すことができる。
【0009】
従って、膜状部材の巻き取り機構が不要となる簡素なドア操作機構によって、スライドドアを確実に作動させることができる。
また、膜状部材(141、221)の移動方向中央部に位置する開口部(142、222)と、移動方向前後両側の膜部分(141b、221b)との組み合わせにより空気通路を開閉できるので、開閉可能となる空気通路の対象が拡大する。
更に、駆動手段からの操作力を剛性の高い変形しにくい部分(剛性増加手段の部位)を通して膜状部材に確実に伝達できる。
【0010】
請求項2に記載の発明のように、請求項1において、剛性増加手段(143、223)は、膜状部材(141、221)とは別体のもので構成できる。
【0011】
請求項3に記載の発明の発明のように、請求項2において、別体の剛性増加手段を前記膜状部材(141、221)より剛性の高い支持部材(143)とし、この支持部材(143)を膜状部材(141、221)の開口部(142、222)を流通する空気が流通可能な枠体状の形状とし、この支持部材(143)を、膜状部材(141、221)の開口部周辺部(141a、221a)に膜状部材(141、221)と一体に移動するように組み付ける構成にしてもよい。
【0012】
これによると、枠体状の支持部材(143)を用いて膜状部材(141、221)の開口部周辺部(141a、221a)の剛性増加を図ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明のように、請求項2において、別体の剛性増加手段を、膜状部材(141、221)の開口部(142、222)と連通する開口部(224)を有する補強膜状部材(223)とし、この補強膜状部材(223)を膜状部材(141、221)の開口部周辺部(141a、221a)に貼り付けるようにしてもよい。
【0014】
これによると、請求項3に比較して、剛性増加手段を膜状部材(141、221)に対して薄肉の一体化構造にできる。
【0015】
請求項5に記載の発明のように、請求項1において、剛性増加手段を、膜状部材(141、221)のうち開口部周辺部(141a、221a)に一体成形されて開口部周辺部(141a、221a)の板厚を空気流通用開口部のない他の部位(141b、221b)よりも大きくする補強部(223a)で構成してもよい。
【0016】
これによると、剛性増加手段を膜状部材に一体成形により簡単に形成できる。
【0021】
請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし5のいずれか1つにおいて、剛性増加手段(143、223、223a)を膜状部材(141、221)のうち風上側の面に備えるようにすれば、膜状部材(141、221)の風下側の面にてケース側のシール面との間でシール作用を発揮する際に、剛性増加手段がシール作用の妨げとならず、有利である。
【0022】
請求項7に記載の発明では、空気通路(15a、16、19〜21)を形成するケース(11)内にスライドドア(14、22)を移動可能に配置し、
スライドドア(14、22)は、空気が流通可能な開口部(144)を有する枠体状の形状からなる剛体の支持部材(143)と、支持部材(143)の移動方向の前後両側の端部に結合された可撓性を有する膜状部材(141b)とを有し、
ケース(11)には、支持部材(143)および前後両側の膜状部材(141b)を含むスライドドア(14、22)全体を摺動可能にガイドするガイド溝(23、24、27、28、32、33)が形成されており、
支持部材(143)にドア操作力を加えて、支持部材(143)および膜状部材(141b)をガイド溝でガイドしながら一体に移動させることを特徴とする。
【0023】
これによると、空気が流通可能な開口部(144)を有する枠体状の形状からなる剛体の支持部材(143)にドア操作力を加えて膜状部材(141b)を移動させることができる。従って、膜状部材(141b)に空気流通用の開口部を設ける必要がなくなり、膜状部材(141b)の開口部周辺部での変形という不具合を解消できる。このため、膜状部材(141b)をスムースに押し出すことができ、スライドドア(14、22)を確実に作動させることができる。
【0024】
更に、請求項7によると、上記のように、膜状部材(141b)に空気流通用の開口部を設ける必要がないから、この開口部形成のための打ち抜き加工による材料の廃棄分がなくなり、膜状部材(141b)の材料コストを低減できる。
【0025】
また、膜状部材(141b)に空気流通用開口部を形成する場合にはこの開口部周辺の細長い帯状部分の幅寸法を強度確保のためにある程度広くせざるを得ない。その結果、空気流通用開口部の開口面積を狭めて通風抵抗増大の原因となるが、請求項7では空気流通用開口部(144)を枠体状の形状からなる剛体の支持部材(143)に形成しており、枠体状の支持部材(143)の強度が膜状部材(141b)よりはるかに大きいから、支持部材(143)の空気流通用開口部(144)の開口面積を膜状部材(141b)の場合より大幅に増大でき、通風抵抗を減少できる等の効果も得られる。
【0027】
請求項8に記載の発明のように、請求項7において、両膜状部材(141b)を同一形状にすれば、前後両側の膜状部材(141b)の入れ違いという誤組付を防止できる。
【0028】
請求項9に記載の発明では、請求項7または8において、支持部材(143)は係止ピン部(143g)を有し、膜状部材(141b)は係止ピン部(143g)に係止される係止穴部(141c)を有し、係止ピン部(143g)に係止穴部(141c)を係止することにより膜状部材(141b)を支持部材(143)に結合することを特徴とする。
【0029】
これによると、係止ピン部(143g)と係止穴部(141c)との機械的な係止構造により膜状部材(141b)を支持部材(143)に確実に結合でき、膜状部材(141b)の外れを防止できる。
【0030】
請求項10に記載の発明のように、請求項7ないし9のいずれか1つにおいて、ガイド溝は、具体的には、支持部材(143)をガイドするガイド溝(23、24)と、前後両側の膜状部材(141b)をガイドするガイド溝(27、28)とを有する構成にすればよい。
請求項11に記載の発明では、車室内へ吹き出される空気を加熱する暖房用ヒータコア(15)と、暖房用ヒータコア(15)をバイパスして空気が流れるバイパス通路(16)と、暖房用ヒータコア(15)を通過する空気風量とバイパス通路(16)を通過する空気風量との割合を調整するエアミックスドア(14)とを備え、
エアミックスドア(14)を請求項1ないし10のいずれか1つに記載のスライドドアにより構成した車両用空調装置を特徴とする。
【0031】
これによると、エアミックス式の車両用空調装置において、後述の図5(b)のように冷風と温風を隣接してエアミックスドア(14)の開口部(142)内を通すことができ、図5(a)の比較例に比べて、冷温風の混合性を向上して、車室内吹出空気温度のバラツキを低減できる。
【0032】
請求項12に記載の発明では、温度調整された空調空気を車室内の複数部位に吹き出す複数の吹出開口部(19〜21)と、複数の吹出開口部(19〜21)を開閉する吹出モードドア(22)とを備え、
吹出モードドア(22)を請求項1ないし10のいずれか1つに記載のスライドドア(22)により構成した車両用空調装置を特徴とする。
【0033】
このように、本発明のスライドドア(22)は、車両用空調装置の吹出モードドアとしても好適に実施できるものである。
【0034】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0035】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態を適用した車両用空調装置における室内ユニット部のうち、熱交換器部を収容している空調ユニット10を示す。この空調ユニット10は車室内前部の計器盤(図示せず)内側において、車両左右(幅)方向の略中央部に配置される。図1の上下前後の矢印は車両搭載状態における方向を示す。車両用空調装置の室内ユニット部は、上記略中央部の空調ユニット10と、計器盤内側において助手席側にオフセット配置される図示しない送風機ユニットとに大別される。
【0036】
送風機ユニットは、外気(車室外空気)または内気(車室内空気)を切替導入する内外気切替箱と、この内外気切替箱に導入された空気を送風する送風機とを備えている。この送風機ユニットの送風空気は、空調ユニット10のケース11内のうち、最下部の空気流入空間12に流入するようになっている。
【0037】
ケース11は、ポリプロピレンのような弾性を有し、機械的強度も高い樹脂にて成形されている。ケース11は、成形上の型抜きの都合、ケース内への空調機器の組付上の理由等から具体的には複数の分割ケース体に分割して成形した後に、この複数の分割ケース体を一体に締結する構成になっている。
【0038】
空調ユニット10のケース11内において空気流入空間12の上方には冷房用熱交換器をなす蒸発器13が小さな傾斜角度でもって略水平方向に配置されている。従って、送風機ユニットの送風空気は空気流入空間12に流入した後、この空間12から蒸発器13を下方から上方へと通過する。蒸発器13は周知のように車両空調用冷凍サイクルの膨張弁等の減圧装置により減圧された低圧冷媒が流入し、この低圧冷媒が送風空気から吸熱して蒸発するようになっている。
【0039】
そして、蒸発器13の上方(空気流れ下流側)には膜状部材からなるエアミックス用スライドドア14が配置され、さらに、このエアミックス用スライドドア14の上方(空気流れ下流側)に温水式ヒータコア15が配置されている。このヒータコア15は周知のように車両エンジンの温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する暖房用熱交換器である。
【0040】
このヒータコア15も略水平方向に配置されているが、ヒータコア15はケース11内の通路断面積より小さくして、ケース11内のうち車両前方側に偏って配置してある。これにより、ヒータコア15の車両後方側(乗員座席寄りの部位)に、ヒータコア15をバイパスして空気が流れるバイパス通路16を形成している。
【0041】
エアミックス用スライドドア14は、蒸発器13とヒータコア15との間にて車両前後方向aに移動(往復動)して、ヒータコア15の通風路(温風通路)15aを通過する温風とバイパス通路16を通過する冷風との風量割合を調整するものであって、この冷温風の風量割合を調整して車室内への吹出空気温度を調整することができる。従って、エアミックス用スライドドア14により車室内への吹出空気の温度調整手段が構成される。
【0042】
ヒータコア15を通過した温風は温風ガイド壁17により車両後方側へガイドされて空気混合部18に向かう。この空気混合部18にてバイパス通路16からの冷風とヒータコア通過後の温風が混合して所望温度となる。
【0043】
ケース11の上面部(空気下流端部)には、車両後方側から車両前方側へ向かって、複数の吹出開口部、すなわち、フェイス開口部19、デフロスタ開口部20、およびフット開口部21が順次開口している。フェイス開口部19は空気混合部18からの空調空気を乗員の上半身に向けて吹き出すためのもので、デフロスタ開口部20は空気混合部18からの空調空気を車両フロントガラス内面に向けて吹き出すためのもので、フット開口部21は空気混合部18からの空調空気を乗員の足元部に向けて空調空気を吹き出すためのものである。これらの複数の吹出開口部19、20、21は、1枚の膜状部材からなる吹出モード用スライドドア22が車両前後方向bに移動(往復動)して開閉される。
【0044】
ところで、上記したエアミックス用スライドドア14および吹出モード用スライドドア22はいずれも図1に示すようにケース11内の曲折した経路を往復動するので、この曲折した経路に沿って変形し得るように可撓性を有する膜状部材(樹脂製フィルム材)141、221を用いて構成されている。この膜状部材141、221の具体的材質としては可撓性を有し、かつ、摩擦抵抗が小さい樹脂材料であるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが好適である。
【0045】
なお、膜状部材141、221の板厚は例えば、100〜250μm程度の微小寸法である。このような範囲にフィルムの板厚を設定することにより、スライドドア14、22の送り出しに必要な剛性を確保しつつ、往復動経路の曲げ部ではその曲げ形状に沿ってフィルムが容易に変形して、曲げ力による著しい操作力の増大を抑制する。
【0046】
次に、エアミックス用スライドドア14について詳述する。図2はエアミックス用スライドドア14単体の具体的構成を例示するものであり、ドア14は長方形の膜状部材141を有し、この膜状部材141のうち、長手方向(ドア移動方向a)の中央部の領域には空気流通用の複数の開口部142が開口している。そして、膜状部材141の開口部周辺部141aに対してドア移動方向aの前後両側に空気流通用開口部のない部分(膜部分)141bを形成している。
【0047】
膜状部材141の開口部周辺部141aにおける剛性を高くするための剛性増加手段を備えており、この剛性増加手段は、図2の例では、膜状部材141とは別体の剛体からなる支持部材143にて構成されている。この支持部材143は、複数の開口部142の開口領域の全体に及ぶ開口面積を持つ1つの開口部144(図3参照)を中央部に配置した枠体状の剛体である。この支持部材143はポリプロピレン等の樹脂により成形できる。
【0048】
膜状部材141のうち、ドア移動方向a中央部の開口部周辺部141aには折れ線145にて折り曲げた曲げ部146が幅方向の両側に設けてあり、この幅方向両側の曲げ部146にはそれぞれU状の溝形状からなるピン挿入部147が2個づつ設けてある。なお、ピン挿入部147は図示例では溝形状にしてあるが、長穴状にしてもよい。
【0049】
膜状部材141の開口部周辺部141aは図3に示すように曲げ部146の折り曲げによりU状の形状となり、支持部材143上に被せるようになっている。そして、支持部材143の幅方向両側の側面にはドア移動方向aと直交方向に突出するガイドピン148が、それぞれ2箇所づつ一体成形で設けてある。このガイドピン148を膜状部材141の曲げ部146のピン挿入部147に挿入する。これにより、膜状部材141の移動方向aに対して、膜状部材141と支持部材143とを一体に係止できる。
【0050】
一方、空調ユニット10のケース11において、ヒータコア15の通風路(温風通路)15aおよびバイパス通路16よりも下方の内壁面の左右両側に、ドア移動方向aと平行に延びる水平方向のガイド溝23、24(図3参照)が設けられ、このガイド溝23、24内にそれぞれガイドピン148を摺動可能に嵌入する。これにより、膜状部材141と支持部材143とを含むスライドドア14全体はガイドピン148とガイド溝23、24との嵌合部により車両前後方向aに摺動可能にケース11の左右両側の内壁面に保持される。
【0051】
支持部材143は剛性増加手段としての役割の他に、膜状部材141に対して操作力(駆動力)を伝達する役割も兼ねるものである。そのため、支持部材143の下面部(膜状部材141と反対側の面)には、ドア移動方向aと平行に延びる直線状ギヤ(ラック)149a、149bが支持部材143と一体成形で設けられている。この直線状ギヤ149a、149bは、支持部材143の下面部において幅方向の左右両側にそれぞれ形成されている。
【0052】
図1に示すように、ケース11内において、スライドドア14の直ぐ下方の部位で、ヒータコア15の通風路15aとバイパス通路16との中間部位(ケース11内部の車両前後方向の中間部位)にドア駆動軸25がドア移動方向aと直交する方向(車両左右方向)に配置されている。この駆動軸25の軸方向の両端部はケース11の壁面の軸受け穴(図示せず)により回転自在に支持されている。この駆動軸25のうち、上記直線状ギヤ149a、149bと対応する部位(軸方向の両側部位)にそれぞれ円形駆動ギヤ(ピニオン)26を樹脂により一体成形で設けて、この駆動ギヤ26を直線状ギヤ149a、149bとかみ合わせるようになっている。
【0053】
また、駆動軸25の軸方向の一端部はケース11の外部へ突出し、この駆動軸25の突出端部をドア駆動装置を構成するサーボモータ(図示せず)の出力軸に適宜の連結機構を介して連結している。これにより、サーボモータの回転が駆動軸25に伝達され、さらに、駆動軸25の回転は、駆動ギヤ26と直線状ギヤ149a、149bとのかみ合いによりスライドドア14の往復動運動に変換される。
【0054】
図1の配置レイアウトから理解されるように、スライドドア14の膜状部材141のうち、ドア移動方向aの中央部に位置する開口部周辺部141aと、支持部材143はスライドドア14の往復動運動に伴って車両前後方向に直線的に移動する。これに反し、膜状部材141のうち、ドア移動方向aの前後両側に位置する、開口部のない膜部分141bは、ケース11と一体の壁部からなるガイド部27、28によりガイドされて曲折した経路を往復動する。
【0055】
すなわち、開口部のない膜部分141bの幅方向(図1の紙面垂直方向)の左右両側部をガイド部27、28間の溝空間内に摺動自在に挿入して、膜部分141bの移動をガイドするようになっている。
【0056】
一方、スライドドア14がケース11内に組付られた状態(図3)においては、支持部材143が風上側に位置し、そして、膜状部材141が風下側に位置する。膜状部材141は支持部材143に対してドア移動方向aで係止されているのみで、空気流れ方向x(図3)には拘束されていないので、膜状部材141が風圧を受けると、風下側に移動して、膜状部材141の面がケース11に形成されたシール面29に圧着するようになっている。つまり、膜状部材141は支持部材143とケース側のシール面29との間で微小寸法だけ変位可能に保持されている。
【0057】
次に、吹出モード用スライドドア22の具体例を図4について説明すると、吹出モード用スライドドア22の膜状部材221にも移動方向bの中央部に空気流通用の開口部222が複数に分割して開口している。膜状部材221において中央部の開口部周辺部221aの前後両側に空気流通用開口部のない膜部分221bを形成している。そして、開口部周辺部221aの剛性増加手段として、膜状部材221と別体の補強膜状部材223を膜状部材221に一体に貼り付けて固定(接着)している。
【0058】
この補強膜状部材223には膜状部材221の開口部222と同一形状の開口部224が開けてあるので、この両開口部222、224を通過して空気が流通する。
【0059】
補強膜状部材223は膜状部材221の板厚(例えば、100〜250μm)よりも大きい板厚(例えば、0.2〜10mm程度)にして、膜状部材221の開口部周辺部221aの剛性を、開口部のない膜部分221bの剛性よりも増加させるようになっている。補強膜状部材223の具体的材質としては、機械的強度、膜状部材221との接着性等を考慮して選択するが、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂が好適である。
【0060】
膜状部材221の開口部周辺部221aおよび補強膜状部材223の幅方向の両端部近傍には、この両部材を貫通するギヤかみ合い用の穴部225、226が開けてある。一方、ケース11の上面部に位置するフェイス開口部19とデフロスタ開口部20との中間部位で、かつ、吹出モード用スライドドア22の上方部に駆動軸30がドア移動方向bと直交する方向(車両左右方向)に配置されている。
【0061】
この駆動軸30の軸方向の両端部は、ケース11の壁面の軸受け穴(図示せず)により回転自在に支持されている。この駆動軸30のうち、上記穴部225、226と対応する部位(軸方向の両側部位)にそれぞれ駆動ギヤ31を樹脂により一体成形で設けている。この駆動ギヤ30の歯が膜状部材221、223の穴部225、226にかみ合うようになっている。
【0062】
また、駆動軸30の軸方向の一端部はケース11の外部へ突出し、この駆動軸30の突出端部をドア駆動装置を構成するサーボモータ(図示せず)の出力軸に適宜の連結機構を介して連結している。これにより、サーボモータの回転が駆動軸30に伝達され、さらに、駆動軸30の回転は、駆動ギヤ31と穴部225、226とのかみ合いによりスライドドア22の往復動運動に変換される。
【0063】
膜状部材221、223をケース11内の曲折した経路に沿って往復動させるために、ケース11の内壁面にガイド部32、33を一体成形等により設けている。このガイド部32、33間の溝空間内に膜状部材221、223の幅方向の両端部を挿入してガイドするようにしてある。ガイド部32、33は、駆動軸30の配置部位を除いて、スライドドア22(膜状部材221)の往復動経路の全長にわたって形成してある。
【0064】
スライドドア22を図1のようにケース11内に組み付けた状態においては、図4(b)に示すように補強膜状部材223が風上側に位置し、膜状部材221が風下側に位置する。膜状部材221、223の幅方向両端部のギヤかみ合い用の穴部225、226の周辺部はガイド部32、33の溝空間内に位置して風下側のガイド部32の表面に密着するので、穴部225、226からの風洩れは生じない。
【0065】
次に、第1実施形態による車両用空調装置の作動を説明すると、エアミックス用スライドドア14が車両前後方向aに往復動することにより、スライドドア14の膜状部材141の開口部142とヒータコア15の通風路15aおよびバイパス通路16との開口面積が変化して、冷風バイパス通路16からの冷風とヒータコア15を通過した温風とを所定の風量割合で混合して所望の吹出温度を得ることができる。
【0066】
また、最大冷房状態では、エアミックス用スライドドア14の膜状部材141のうち、開口部のない膜部分141bがヒータコア15の通風路15aを全閉し、スライドドア14の膜状部材141の開口部142がバイパス通路16を全開する。また、最大暖房状態では、エアミックス用スライドドア14の膜状部材141の開口部142がヒータコア15の通風路15aを全開し、スライドドア14の膜状部材141のうち、開口部のない膜部分141bがバイパス通路16を全閉する。
【0067】
一方、吹出モード用スライドドア22においても、膜状部材221が車両前後方向bに往復動することにより、フェイス開口部19、デフロスタ開口部20、およびフット開口部21を切替開閉し、これにより、周知の複数の吹出モード、すなわち、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、デフロスタモード等を切り替えることができる。
【0068】
ところで、図1に示すように、ケース11内において、エアミックス用、吹出モード用の両スライドドア14、22の移動方向(車両前後方向)a、bの1箇所のみに駆動軸25、30を配置し、この駆動軸25、30の駆動ギヤ26、31から伝達される駆動力により両スライドドア14、22が往復動する。その結果、スライドドア14の膜状部材141およびスライドドア22の膜状部材221の移動方向a、bの両端部は巻き取り機構に連結されず、自由端となっている。
【0069】
このような駆動方式であるため、両スライドドア14、22の膜状部材141、221のうち、駆動軸25、30よりも移動方向a、bの後方側部位では駆動軸25、30からの引っ張り力が作用し、移動方向a、bの前方側部位では駆動軸25、30からの押し出し力が作用して膜状部材141、221が移動することになる。
【0070】
それ故、ガイド部27、28、またはガイド部32、33に沿って膜状部材141、221が押し出し力で移動(前進)するために、膜状部材141、221は所定の剛性を持つ必要がある。
【0071】
しかるに、両スライドドア14、22の膜状部材141、221の移動方向a、bの中央部には空気流通用の大きな開口部142、222が開けてあるので、この開口部周辺部141a、221aの剛性は何も対策をしなければ開口部のない膜部分141b、221bに比較して大幅に低下する。
【0072】
そこで、第1実施形態においては両スライドドア14、22の膜状部材141、221に対してそれぞれ前述の剛性増加手段を備えている。すなわち、エアミックス用スライドドア14では、膜状部材141の開口部周辺部141aに剛体からなる枠体状の支持部材143を組み付けて、この両者を一体に往復動させるから、膜状部材141の開口部周辺部141aの剛性を実質上、支持部材143の剛性レベルまで増加できる。
【0073】
そして、駆動軸25、駆動ギヤ26からの駆動力を支持部材143に伝達して支持部材143と膜状部材141を一体に往復動させるから、駆動力により膜状部材141が押し出される時に、その押出力によって膜状部材141の開口部周辺部141aが変形することを支持部材143により確実に防止できる。そのため、押出力が加わる時でも、膜状部材141を確実に前進させる(送り出す)ことができる。
【0074】
同様に、吹出モード用のスライドドア22においても、膜状部材221の移動方向bの中央部の開口部周辺部221aに別体の補強膜状部材223を貼り付けることにより、膜状部材221の開口部周辺部221aの剛性を、開口部のない膜部分221bよりも高いレベルに増加できる。従って、駆動力により膜状部材221が押し出される時に、その押出力によって膜状部材221の開口部周辺部221aが変形することを補強膜状部材223により確実に防止できる。そのため、押出力が加わる時でも、膜状部材221を確実に前進させる(送り出す)ことができる。
【0075】
また、エアミックス用スライドドア14では駆動ギヤ26を剛体からなる枠体状の支持部材143に形成したギヤ149a、149bにかみ合わせているから、ギヤかみ合い部を剛性の低い開口部周辺部221aに直接設定する場合に比して、ギヤかみ合い状態を常に良好な状態に維持できる。
【0076】
同様に、吹出モード用のスライドドア22においても、別体の補強膜状部材223による剛性の向上によってギヤかみ合い状態を常に良好な状態に維持できる。
【0077】
また、エアミックス用スライドドア14においては、ドア移動方向aの中央部に空気流通用の開口部142を開口することにより、冷温風の混合性が向上し、車室内吹出空気温度のバラツキ、具体的には、図1に配置レイアウトの場合には、車室内左右方向での吹出空気温度のバラツキを低減できる。
【0078】
このことを図5により具体的に説明すると、図5(a)は本発明の比較例であり、エアミックス用スライドドア14に空気流通用の開口部142を備えていないので、ヒータコア通風路15aの温風とバイパス通路16の冷風がスライドドア14の移動方向aの前後に分かれて流れる。そのため、空気混合部18での冷温風の混合性が悪化して室内吹出空気温度のバラツキが大きくなってしまう。
【0079】
これに対し、図5(b)に示す第1実施形態によるエアミックス用スライドドア14では空気流通用の開口部142を備えて、この開口部142とヒータコア通風路15aおよびバイパス通路16との連通面積を可変して冷温風の風量割合を調整するから、温風と冷風の両者を開口部142内にて隣接して流すことができる。そのため、空気混合部18での冷温風の混合性が良好となり、室内吹出空気温度のバラツキを10℃以下の僅少値に低減できる。
【0080】
(第2実施形態)
第1実施形態による図4の吹出モード用スライドドア構成では、膜状部材221の開口部周辺部221aに別体の補強膜状部材223を貼り付けるようにしているが、第2実施形態では図6のように補強膜状部材223に相当する補強部223aを膜状部材221に予め一体成形し、これにより、開口部周辺部221aの板厚を開口部のない膜部分221bの板厚よりも十分大きくしている。このようにしても、図4のスライドドア構成と同様の剛性増加効果が得られる。
【0081】
(第3実施形態)
第1実施形態では、エアミックス用スライドドア14の膜状部材141の開口部周辺部141aの剛性を増加する手段として剛体からなる別体の支持部材143を用い、この支持部材143を膜状部材141の開口部周辺部141aに組み付けるようにしているが、エアミックス用スライドドア14の膜状部材141の開口部周辺部141aの剛性を増加する手段として、図4の吹出モード用スライドドア22の膜状部材221のように、別体の補強膜状部材223を用い、この補強膜状部材223をエアミックス用膜状部材141の開口部周辺部141aに貼り付けるようにしてもよい。
【0082】
また、エアミックス用スライドドア14の膜状部材141の開口部周辺部141aの剛性を増加する手段として、図6の第2実施形態の吹出モード用スライドドア22の膜状部材221の補強部223aに相当する補強部をエアミックス用膜状部材141に予め一体成形してもよい。
【0083】
(第4実施形態)
吹出モード用スライドドア22の膜状部材221の開口部周辺部221aの剛性を増加する手段として、エアミックス用スライドドア14のように、剛体からなる別体の支持部材143を用い、この支持部材143を吹出モード用膜状部材221の開口部周辺部221aに組み付けるようにしてもよい。
【0084】
(第5実施形態)
上述の第1〜第4実施形態では1枚の膜状部材141、221に、開口部周辺部141a、221aおよび開口部のない膜部分141b、221bを一体に成形している。ここで、開口部142、222の穴形状は打ち抜き加工により形成するので、開口部周辺部141a、221aでは打ち抜きによる材料の廃棄分が多くなり、膜状部材141、221の材料コストに無駄が多い。
【0085】
また、複数の開口部142相互間に膜状部材142の細長い帯状部分が存在するが、この開口部周辺の細長い帯状部分の幅寸法は強度確保のためにある程度広くせざるを得ない。その結果、空気流通用開口部の開口面積を狭めて通風抵抗を増大させる原因となる。また、この細長い帯状部分がケース11側の壁面に干渉して打音を発生する場合もある。
【0086】
第5実施形態は上記の不具合を解消するものであり、図7〜図10は第5実施形態を示し、図1〜図6と同等部分には同一符号を付して説明を省略する。図7は空調ユニット部全体のレイアウトを示す断面図であり、図1(第1実施形態)と異なり、エアミックス用スライドドア14の支持部材143をドア移動方向aに沿う円弧状に成形している。
【0087】
図8はエアミックス用スライドドア14単体の具体的構成を例示しており、ドア14の移動方向aの中央部領域に空気が流通可能な枠体状の形状からなる支持部材143を配置し、この支持部材143のドア移動方向aへの前後両側の端部にそれぞれ膜状部材141b、141bを結合している。ここで、膜状部材141b、141bは第1実施形態の開口部のない膜部分141bに相当する。
【0088】
支持部材143はポリプロピレン等の樹脂成形品からなる剛体であり、ドア移動方向aと直交方向に延びる枠部143a、143bが所定間隔で平行に配置され、この枠部143a、143bの長手方向の両端部付近をドア移動方向aに延びる枠部143c、143dにより結合している。従って、これらの枠部143a〜143dにより長方形の枠体形状を構成している。
【0089】
また、2本の枠部143a、143bの長手方向の中間部位にはドア移動方向aに延びる2本の補強リブ143e、143fを配置している。これらの枠部143a〜143dおよび補強リブ143e、143fは樹脂により一体成形されている。
【0090】
上記枠部143a〜143dの内側は空気が流通可能な開口部144(図3の開口部144に相当)であり、この開口部144は補強リブ143e、143fにより3つの部分に分割形成されている。ドア移動方向aに延びる枠部143c、143dの下面部にはそれぞれギヤ149a、149bが形成してある。このギヤ149a、149bは枠部143c、143dの円弧形状に沿って円弧形状に延びるよう形成されている。
【0091】
ドア移動方向aと直交方向に延びる枠部143a、143bにおいて長手方向の両端部に円柱状のガイドピン148(図1〜図3のガイドピン148に相当)を形成している。このガイドピン148は図7に示すケース側のガイド溝23、24内に摺動可能に嵌合する。
【0092】
また、枠部143a、143bにはその長手方向に沿って複数(図8の例では6個)の係止ピン143gが所定間隔にて一体成形されている。この係止ピン143gは枠部143a、143bにおいて開口部144に面する部位に配置されている。そして、この係止ピン143gは図9に示すように、円柱状の軸部143hを有し、この軸部143hの先端部に茸状に拡大された拡大頭部143iを一体成形した形状である。
【0093】
一方、膜状部材141b、141bは、第1〜第4実施形態の膜状部材141と同様に可撓性を有する樹脂フィルムから成形され、膜状部材141b、141bの端部付近には図10に示すように長穴形状の係止穴部141cを形成している。この係止穴部141cの長穴形状の長軸方向は、膜状部材141b、141bの展開状態においてドア移動方向aに向いている。また、この係止穴部141cから長穴形状の左右両側(短軸方向)へ延びるスリット141dが形成してある。
【0094】
係止穴部141cの長穴形状の長軸方向の径寸法は係止ピン143gの拡大頭部143iの径寸法より大きくしてあるが、係止穴部141cの長穴形状の短軸方向の径寸法は係止ピン143gの拡大頭部143iの径寸法より小さく、かつ、係止ピン143gの軸部143hの径寸法と同等以上に設計してある。
【0095】
これにより、膜状部材141b、141bの係止穴部141cを係止ピン143gに嵌め込むときは、スリット141dを広げることにより係止ピン143gの拡大頭部143iを係止穴部141cに挿入できる。そして、拡大頭部143iが係止穴部141cを通過すると、スリット141dが膜状部材の弾性復元力により閉じるので、拡大頭部143iを係止穴部141cに確実に係止でき、枠体形状の支持部材143に膜状部材141b、141bを結合できる。
【0096】
ここで、係止穴部141cの長穴形状の長軸方向の径寸法は係止ピン143gの軸部143hの径寸法より大きいので、膜状部材141b、141bは係止穴部141cの長穴形状の長軸方向、すなわち、ドア移動方向aに対してある程度移動可能な状態で支持部材143に結合されている。
【0097】
なお、図9に示すように支持部材143の枠部143aに弾性部材143jの支持面143kを一体に成形し、この支持面143k上に弾性部材143jを接着等により固定している。この弾性部材143jは自身の弾性反力により膜状部材141bをケース11側のシール面に押圧して、膜状部材141bのシール効果を向上させるものである。なお、図9では枠部143a側の構成のみを示しているが、他の枠部143b側においても同様に、支持面143kおよび弾性部材143jを設けている。
【0098】
第5実施形態によると、剛体の枠体状の形状からなる支持部材143により空気通過用の開口部144を形成し、この支持部材143の端部に膜状部材141bを結合しているから、開口部144の領域には膜状部材141bが不要となる。そのため、膜状部材141bに打ち抜きによる材料の廃棄分が発生せず、膜状部材141bの材料コストを低減できる。
【0099】
また、開口部144の領域に膜状部材141bを配置しないとともに、支持部材143の枠部143a、143bの近傍位置では弾性部材143jにより膜状部材141bがケース11側のシール面に押圧されるため、膜状部材141bが剛体の支持部材143あるいはケース11側のシール面に干渉(衝突)して打音を発生するという不具合が発生しない。
【0100】
また、膜状部材141bの端部に長穴状の閉じた形状からなる係止穴部141cおよびスリット141dを設けて、この係止穴部141cを支持部材143の係止ピン143gの拡大頭部143iに嵌合係止しているから、係止穴部141cの部分を係止ピン143gの拡大頭部143iにより確実に係止できる。そのため、膜状部材141bの端部が支持部材143から外れることがない。
【0101】
また、第1実施形態のように1枚の膜状部材141の中央部に開口部142(図2)を形成する場合には、複数の開口部142相互間に、膜状部材141の強度確保のために、かなり幅寸法(例えば20mm程度)の大きい帯状部を形成する必要がある。この帯状部の存在によって複数の開口部142の開口面積を狭め、通風抵抗を増大させる。
【0102】
これに対して、第5実施形態では、剛体の支持部材143に空気通過用の開口部144を形成しているため、補強リブ143e、143fは合計でも幅寸法を例えば4〜5mm程度に小さくできる。そのため、第1実施形態よりも開口部144の開口面積を広げて、通風抵抗を減少できる。
【0103】
(他の実施形態)
なお、第1〜第4実施形態において支持部材143や補強膜状部材223を第5実施形態のようにドア移動方向a,bに沿う円弧状に成形してもよい。また、空気流通用の開口部142、222に格子形状を一体に成形して、膜状部材141、221の剛性(強度)アップを図るようにしてもよい。
【0104】
また、第5実施形態では、エアミックス用スライドドア14を、空気が流通可能な枠体状の形状からなる剛体の支持部材143と、この支持部材143の端部に結合される膜状部材141bとにより構成しているが、吹出モード用スライドドアを、エアミックス用スライドドア14と同様の支持部材143と膜状部材141bとにより構成してもよい。
【0105】
また、第5実施形態において、支持部材143の係止ピン143gの成形形状を円柱状の軸部143hのみとして先端部の拡大頭部143iを廃止し、一方、膜状部材141bの端部の係止穴部141cを円柱状の軸部143hに嵌合する円形穴としてスリット141dを廃止する。そして、円柱状の軸部143hに円形の係止穴部141cを嵌合した後に、円柱状の軸部143hの先端部を熱かしめにより茸状の拡大頭部を形成して、膜状部材141bの係止穴部141cが係止ピン143gから外れないようにしてもよい。これによると、膜状部材141bのスリット141dを廃止できるので、膜状部材141bの強度を向上できる。
【0106】
また、第5実施形態では、係止ピン143gを支持部材143の枠体形状の内側部位から開口部144側へ突き出すように形成しているが、係止ピン143gを支持部材143の枠体形状の外側部位から枠体形状の外側へ突き出すように形成して、この枠体形状の外側の係止ピン143gに膜状部材141bの端部を結合するようにしてもよい。
【0107】
また、第5実施形態では、枠体状の形状からなる剛体の支持部材143の端部に、係止ピン143gと係止穴部141cとの機械的な係止構造により膜状部材141bを結合しているが、これらの係止ピン143g、係止穴部141c等を廃止して支持部材143の端部に膜状部材141bを接着、熱溶着等の手段で直接固着してもよい。
【0108】
また、第5実施形態では、枠体状の形状からなる剛体の支持部材143の支持面143k上に、支持部材143と別体の弾性部材143jを設け、この弾性部材143jの弾性反力により膜状部材141bをケース11側のシール面に押圧して、膜状部材141bのシール効果を向上させるようにしているが、エラストマゴムのようなゴム系弾性体を樹脂製支持部材143の型成形時に一体成形し、このゴム系弾性体により上記別体の弾性部材143jと同様に膜状部材141bをケース11側のシール面に押圧させる作用を発揮させるようにしてもよい。
【0109】
また、スライドドア14の製造上の寸法バラツキを小さくすして、膜状部材141bをケース11側のシール面に確実に押圧できるようにすれば、弾性部材143jを廃止することも可能である。
【0110】
また、第5実施形態では、支持部材143のドア移動方向aへの前後両側の端部にそれぞれ結合される2個の膜状部材141b、141b相互の大きさの関係について説明しなかったが、この前後両側の2個の膜状部材141b、141bの大きさを同一にすれば、前後両側の膜状部材141b、141b相互間での誤組付が無くなり、実用上有利である。
【0111】
また、適用対象の空気通路開閉装置の形態の変化により、前後両側の2個の膜状部材141b、141bの大きさを変えたり、あるいは支持部材143のドア移動方向aへの前後両側のうち、いずれか片側のみに膜状部材141bを結合するようにしてもよい。
【0112】
また、本発明は、車両用空調装置における空気通路の開閉に限らず、種々な用途の空気通路の開閉に対して広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す空調ユニット部の断面図である。
【図2】(a)は第1実施形態で用いるエアミックス用スライドドアの正面図、(b)は同ドアの側面図、(c)は同ドアの膜状部材単体の展開図である。
【図3】第1実施形態のエアミックス用スライドドアとケースとの嵌合支持部の断面図である。
【図4】(a)は第1実施形態で用いる吹出モード用スライドドアの正面図、(b)は同ドアの断面図である。
【図5】(a)は本発明の比較例によるエアミックス用スライドドアの作用説明図、(b)は第1実施形態のエアミックス用スライドドアの作用説明図である。
【図6】第2実施形態を示す要部断面図である。
【図7】第5実施形態の空調ユニット部全体を示す断面図である。
【図8】第5実施形態のエアミックス用スライドドア単体の斜視図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】図9のB矢視図である。
【符号の説明】
11…ケース、14…エアミックス用スライドドア、
22…吹出モード用スライドドア、15a…ヒータコア通風路(空気通路)、
16…バイパス通路(空気通路)、19〜21…吹出開口部(空気通路)、
141、221…膜状部材、141a、221a…開口部周辺部、
142、222…開口部、143…支持部材(剛性増加手段)、
223…補強膜状部材(剛性増加手段)、
223a…補強部(剛性増加手段)。
Claims (12)
- 空気通路(15a、16、19〜21)を形成するケース(11)内にスライドドア(14、22)を移動可能に配置し、
前記スライドドア(14、22)は、可撓性を有する膜状部材(141、221)に空気流通用の開口部(142、222)を設けた構成になっており、
前記スライドドア(14、22)の移動により前記開口部(142、222)と前記空気通路(15a、16、19〜21)との連通面積が変化して前記空気通路(15a、16、19〜21)を開閉するようになっており、
前記膜状部材(141、221)のうち前記開口部(142、222)の周辺部(141a、221a)の剛性を高めるための剛性増加手段(143、223、223a)と、 前記剛性増加手段(143、223、223a)の部位を介して前記膜状部材(141、221)に操作力を伝達する駆動手段(25、26、30、31)とを備え、
前記膜状部材(141、221)には、前記開口部周辺部(141a、221a)に対して前記スライドドア(14、22)の移動方向(a)の前後両側に空気流通用開口部のない可撓性を有する膜部分(141b、221b)が形成されており、
更に、前記ケース(11)には、前記開口部周辺部(141a、221a)および前記前後両側の膜部分(141b、221b)を含む前記スライドドア(14、22)全体を摺動可能にガイドするガイド溝(23、24、27、28、32、33)が形成されており、
前記駆動手段(25、26、30、31)からの操作力により前記スライドドア(14、22)を前記ガイド溝でガイドしながら移動させることを特徴とする空気通路開閉装置。 - 前記剛性増加手段(143、223)は、前記膜状部材(141、221)とは別体であることを特徴とする請求項1に記載の空気通路開閉装置。
- 前記別体の剛性増加手段は、前記開口部(142、222)を流通する空気が流通可能な枠体状の形状を有し、かつ、前記膜状部材(141、221)より剛性の高い支持部材(143)であり、
前記支持部材(143)は、前記膜状部材(141、221)の前記開口部周辺部(141a、221a)に前記膜状部材(141、221)と一体に移動するように組み付けられることを特徴とする請求項2に記載の空気通路開閉装置。 - 前記別体の剛性増加手段は、前記開口部(142、222)と連通する開口部(224)を有する補強膜状部材(223)であり、
前記補強膜状部材(223)を前記膜状部材(141、221)の前記開口部周辺部(141a、221a)に貼り付けたことを特徴とする請求項2に記載の空気通路開閉装置。 - 前記剛性増加手段は、前記膜状部材(141、221)のうち前記開口部周辺部(141a、221a)に一体成形されて前記開口部周辺部(141a、221a)の板厚を空気流通用開口部のない他の部位(141b、221b)よりも大きくする補強部(223a)であることを特徴とする請求項1に記載の空気通路開閉装置。
- 前記剛性増加手段(143、223、223a)は前記膜状部材(141、221)のうち風上側の面に備えられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の空気通路開閉装置。
- 空気通路(15a、16、19〜21)を形成するケース(11)内にスライドドア(14、22)を移動可能に配置し、
前記スライドドア(14、22)は、空気が流通可能な開口部(144)を有する枠体状の形状からなる剛体の支持部材(143)と、前記支持部材(143)の移動方向の前後両側の端部に結合された可撓性を有する膜状部材(141b)とを有し、
前記ケース(11)には、前記支持部材(143)および前記前後両側の膜状部材(141b)を含む前記スライドドア(14、22)全体を摺動可能にガイドするガイド溝(23、24、27、28、32、33)が形成されており、
前記支持部材(143)にドア操作力を加えて、前記支持部材(143)および前記膜状部材(141b)を前記ガイド溝でガイドしながら一体に移動させることを特徴とする空気通路開閉装置。 - 前記両膜状部材(141b)が同一形状であることを特徴とする請求項7に記載の空気通路開閉装置。
- 前記支持部材(143)は係止ピン部(143g)を有し、前記膜状部材(141b)は前記係止ピン部(143g)に係止される係止穴部(141c)を有し、
前記係止ピン部(143g)に前記係止穴部(141c)を係止することにより前記膜状部材(141b)を前記支持部材(143)に結合することを特徴とする請求項7または8に記載の空気通路開閉装置。 - 前記ガイド溝は、前記支持部材(143)をガイドするガイド溝(23、24)と、前記前後両側の膜状部材(141b)をガイドするガイド溝(27、28)とを有することを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1つに記載の空気通路開閉装置。
- 車室内へ吹き出される空気を加熱する暖房用ヒータコア(15)と、
前記暖房用ヒータコア(15)をバイパスして空気が流れるバイパス通路(16)と、
前記暖房用ヒータコア(15)を通過する空気風量と前記バイパス通路(16)を通過する空気風量との割合を調整するエアミックスドア(14)とを備え、
前記エアミックスドア(14)を請求項1ないし10のいずれか1つに記載のスライドドアにより構成したことを特徴とする車両用空調装置。 - 温度調整された空調空気を車室内の複数部位に吹き出す複数の吹出開口部(19〜21)と、
前記複数の吹出開口部(19〜21)を開閉する吹出モードドア(22)とを備え、
前記吹出モードドア(22)を請求項1ないし10のいずれか1つに記載のスライドドア(22)により構成したことを特徴とする車両用空調装置。
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