JP4000983B2 - 空気通路開閉装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜状部材を有するスライドドアにより空気通路を開閉する空気通路開閉装置に関するもので、車両用空調装置に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置では、膜状部材の移動によって空気通路の切替を行う空気通路開閉装置が種々提案されている。本出願人においては、膜状部材の巻き取り機構を不要にして、構成を簡素化した空気通路開閉装置を提案している(特許文献1参照)。この従来技術では、空気通路を形成するケース内にガイド部を設け、このガイド部にて膜状部材の幅方向の両端部をガイドするとともに、膜状部材に駆動軸の駆動ギヤを噛み合わせている。
【0003】
これにより、駆動軸の回転により膜状部材をガイド部に沿って往復動させ、膜状部材の移動によりケースの空気通路を開閉するようにしている。具体的には、膜状部材に空気流通用の開口部を設け、膜状部材の移動により膜状部材の開口部とケース側の空気通路開口部との連通面積が変化して空気通路開口部を開閉するようになっている。
【0004】
また、送風空気の風圧により膜状部材のシール部(膜部)をケース側シール面に圧接することにより、ケース側の空気通路開口部を閉塞してシール性を確保するようにしている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−79819号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記特許文献1のものを実際に試作検討してみると、次のごとき不具合が生じることが分かった。
【0007】
すなわち、膜状部材が単純な平面形状に成形され、一方、ケース側シール面が所定の曲率半径による曲げ形状に成形されている場合には、膜状部材がドア操作力により送り出される際に、膜状部材の先端部がケース側シール面の曲げ部に引っ掛かって異音を発生したり、あるいはケース側シール面の曲げ部により膜状部材が強制的に曲げられるため、ドア操作力が増大するという不具合が生じる。
【0008】
そこで、膜状部材をケース側シール面の曲率半径よりも小さい曲率半径にて曲げ成形して、膜状部材の先端部とケース側シール面との引っ掛かりを解消することが考えられるが、この場合には、膜状部材の小さな曲率半径による曲げ成形によって、膜状部材の表面がケース側シール面より離れやすくなる。その結果、風圧により膜状部材がケース側シール面に押し付けられにくくなり、シール性を悪化させる。特に、空調装置の小風量時には風圧が低下するので、シール性の悪化がより一層助長される。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、膜状部材を有するスライドドアにより空気通路を開閉する空気通路開閉装置において、風圧による膜状部材のシール性を確保することを第1の目的とする。
【0010】
また、本発明は、膜状部材のシール性確保と同時に、膜状部材を円滑に移動させることを第2の目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空気通路の開口部(15b、16a、36〜38)を形成するケース(11)と、ケース(11)内に移動可能に配置され、開口部(15b、16a、36〜38)を開閉するスライドドア(14、35)とを備え、
スライドドア(14、35)は、可撓性を有する膜状部材(141、351)を少なくとも有しており、
膜状部材(141、351)の移動方向の先端が自由端になっており、
膜状部材(141、351)を送風空気の風圧により開口部(15b、16a、36〜38)周縁のシール面(30、31)に接触させて、開口部(15b、16a、36〜38)を閉塞する空気通路開閉装置において、
膜状部材(141、351)のうち、シール面(30、31)に接触するシール部(141a、351a)の曲率半径をR1とし、シール面(30、31)の曲率半径をR0としたときに、この曲率半径R0、R1を、R0≦R1≦∞の関係に設定し、
膜状部材(141、351)のシール部(141a、351a)を、シール面(30、31)の曲率半径R0よりも大きい所定の曲率半径R1を有するように曲げ成形したことを特徴とする。
【0012】
ここで、R0≦R1≦∞の関係に設定するとは、膜状部材(141、351)のシール部(141a、351a)の曲率半径R1を無限大まで拡大してよいことを意味している。すなわち、膜状部材(141、351)のシール部(141a、351a)は平面形状にしてもよいことを意味している。
【0013】
ところで、請求項1によると、膜状部材シール部(141a、351a)の曲率半径R1をケース側シール面(30、31)の曲率半径R0以上にしているから、膜状部材(141、351)をケース(11)内に組み付けた時に、膜状部材シール部(141a、351a)の先端の自由端がケース側シール面(30、31)に接触しやすくなる。このため、小風量時にも、膜状部材シール部(141a、351a)を送風空気の風圧によりケース側シール面(30、31)に圧接させて、膜状部材(141、351)によるシール性を良好に発揮できる。
【0014】
また請求項1に記載の発明では、膜状部材(141、351)のシール部(141a、351a)を、シール面(30、31)の曲率半径R0よりも大きい所定の曲率半径R1を有するように曲げ成形したことを特徴とする。
【0015】
これによると、膜状部材シール部(141a、351a)の曲率半径R1をケース側シール面(30、31)の曲率半径R0より大きくすることにより、膜状部材(141、351)によるシール性を良好に発揮できる。しかも、膜状部材シール部(141a、351a)を所定の曲率半径R1にて曲げ成形することにより、膜状部材シール部(141a、351a)の先端の自由端がケース側シール面(30、31)の曲げ部に引っ掛かることを抑制して膜状部材(141、351)を円滑に移動させることができる。そのため、膜状部材先端部の引っ掛かりによる異音の発生、あるいはドア操作力の増大といった不具合を回避できる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態を適用した車両用空調装置における室内ユニット部のうち、熱交換器部を収容している空調ユニット10の要部を示す。この空調ユニット10は車室内前部の計器盤(図示せず)内側において、車両左右(幅)方向の略中央部に配置される。図1の上下前後の矢印は車両搭載状態における方向を示す。車両用空調装置の室内ユニット部は、上記略中央部の空調ユニット10と、計器盤内側において助手席側にオフセット配置される図示しない送風機ユニットとに大別される。
【0018】
送風機ユニットは、外気(車室外空気)または内気(車室内空気)を切替導入する内外気切替箱と、この内外気切替箱に導入された空気を送風する遠心式送風機とを備えている。この送風機ユニットの送風空気は、空調ユニット10のケース11内のうち、最下部の空気流入空間12に流入するようになっている。
【0019】
ケース11は、ポリプロピレンのような弾性を有し、機械的強度も高い樹脂にて成形されている。ケース11は、成形上の型抜きの都合、ケース内への空調機器の組付上の理由等から具体的には複数の分割ケースに分割して成形した後に、この複数の分割ケースを一体に締結する構成になっている。
【0020】
空調ユニット10のケース11内において空気流入空間12の上方には冷房用熱交換器をなす蒸発器13が小さな傾斜角度でもって略水平方向に配置されている。従って、送風機ユニットの送風空気は空気流入空間12に流入した後、この空間12から蒸発器13を下方から上方へと通過する。蒸発器13は周知のように車両空調用冷凍サイクルの膨張弁等の減圧装置により減圧された低圧冷媒が流入し、この低圧冷媒が送風空気から吸熱して蒸発するようになっている。ケース11の底面の最下部には蒸発器13から落下する凝縮水を排出する排水口11aが形成されている。
【0021】
そして、蒸発器13の上方(空気流れ下流側)には膜状部材を有するエアミックス用スライドドア14が配置され、さらに、このエアミックス用スライドドア14の上方(空気流れ下流側)に温水式ヒータコア15が配置されている。このヒータコア15は周知のように車両エンジンの温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する暖房用熱交換器である。
【0022】
このヒータコア15も略水平方向に配置されているが、ヒータコア15はケース11内の通路断面積より小さくして、ケース11内のうち車両前方側に偏って配置してある。これにより、ヒータコア15の車両後方側(乗員座席寄りの部位)に、ヒータコア15をバイパスして空気が流れるバイパス通路16を形成している。
【0023】
エアミックス用スライドドア14は、蒸発器13とヒータコア15との間にて車両前後方向aに移動(往復動)して、ヒータコア15の通風路(温風通路)15aの開口部15bとバイパス通路(冷風通路)16の開口部16aを開閉する。これにより、ヒータコア通風路15aを通過する温風とバイパス通路16を通過する冷風との風量割合を調整して、車室内への吹出空気温度を調整することができる。従って、エアミックス用スライドドア14により車室内への吹出空気の温度調整手段が構成される。
【0024】
ヒータコア15を通過した温風は温風ガイド壁17により車両後方側へガイドされて空気混合部18に向かう。この空気混合部18にてバイパス通路16からの冷風とヒータコア通過後の温風が混合して所望温度となる。
【0025】
ケース11の上面部(空気下流端部)には、吹出開口部として図示しないフェイス開口部、デフロスタ開口部およびフット開口部が配置され、更に、これらの複数の吹出開口部を図示しない吹出モードドアにより切替開閉するようになっている。従って、空気混合部18にて所望温度となった空気が吹出モードドアにより選択された所定の吹出開口部を通過して車室内へ吹き出すようになっている。
【0026】
ところで、上記したエアミックス用スライドドア14は、図1に示す曲折した経路に沿って変形し得るように可撓性を有する膜状部材(樹脂製フィルム材)141を用いて構成されている。この膜状部材141の具体的材質としては可撓性を有し、かつ、摩擦抵抗が小さい樹脂材料であるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが好適である。
【0027】
なお、膜状部材141の板厚は例えば、100〜250μm程度の微小寸法である。このような範囲にフィルムの板厚を設定することにより、スライドドア14の送り出しに必要な剛性を確保しつつ、往復動経路の曲げ部ではその曲げ形状に沿ってフィルムが容易に変形して、曲げ力による著しい操作力の増大を抑制する。
【0028】
次に、エアミックス用スライドドア14を図2〜図5に基づいて具体的に説明する。図2はエアミックス用スライドドア14単体の具体的構成を例示するものである。図3は図2のエアミックス用スライドドア14を図1のようにケース11内に組み付けた状態における、図2のA−A断面図である。図4は図2のB−B断面図であり、図5は図4のC矢視図である。
【0029】
図2に示すように、ドア14の移動方向aの中央部領域に空気が流通可能な枠体状の形状からなる支持部材143を配置し、この支持部材143のドア移動方向aへの前後両側の端部にそれぞれ膜状部材141、141を結合している。
【0030】
支持部材143はポリプロピレン等の樹脂成形品からなる剛体であり、ドア移動方向aと直交方向に延びる枠部143a、143bが所定間隔で平行に配置され、この枠部143a、143bの長手方向の両端部付近をドア移動方向aに円弧状に延びる枠部143c、143dにより結合している。従って、これらの枠部143a〜143dにより長方形の枠体形状を構成している。
【0031】
また、ドア移動方向a前後の枠部143a、143bの長手方向の中間部位にはドア移動方向aに延びる2本の補強リブ143e、143fを配置している。これらの枠部143a〜143dおよび補強リブ143e、143fは樹脂により一体成形されている。
【0032】
上記枠部143a〜143dの内側は空気が流通可能な開口部144であり、この開口部144は補強リブ143e、143fにより3つの部分に分割形成されている。ドア移動方向aに延びる左右の枠部143c、143dの下面部にはそれぞれギヤ149a、149bが形成してある。このギヤ149a、149bは左右の枠部143c、143dの円弧形状に沿って円弧形状に延びるよう形成されている。
【0033】
ドア移動方向aと直交方向に延びる前後の枠部143a、143bにおいて長手方向の両端部に円柱状のガイドピン148を形成している。このガイドピン148は支持部材143から左右両側(ドア移動方向aと直交方向)へ突き出すように合計4箇所に形成され、図1、図3に示すケース側のガイド部23内に摺動可能に嵌合する。このガイド部23の詳細は後述する。
【0034】
また、枠部143a、143bにはその長手方向に沿って複数(図2の例では6個)の係止ピン143gが所定間隔にて一体成形されている。この係止ピン143gは枠部143a、143bにおいて開口部144に面する部位に配置されている。そして、この係止ピン143gは図4に示すように、円柱状の軸部143hを有し、この軸部143hの先端部に茸状に拡大された拡大頭部143iを一体成形した形状である。
【0035】
一方、膜状部材141、141の端部付近には図4に示すように、直角状の曲げ部141bを曲げ成形し、この曲げ部141bに図5に示すように長穴形状の係止穴部141cを形成している。この係止穴部141cの長穴形状の長軸方向は、膜状部材141、141の組付状態において上下方向、すなわち、空気流れ方向に向いている。また、この係止穴部141cから長穴形状の左右両側(短軸方向)へ延びるスリット141dが形成してある。
【0036】
係止穴部141cの長穴形状の長軸方向の径寸法は係止ピン143gの拡大頭部143iの径寸法より大きくしてあるが、係止穴部141cの長穴形状の短軸方向の径寸法は係止ピン143gの拡大頭部143iの径寸法より小さく、かつ、係止ピン143gの軸部143hの径寸法と同等以上に設計してある。
【0037】
これにより、膜状部材141、141の係止穴部141cを係止ピン143gに嵌め込むときは、スリット141dを広げることにより係止ピン143gの拡大頭部143iを係止穴部141cに挿入できる。そして、拡大頭部143iが係止穴部141cを通過すると、スリット141dが膜状部材141、141の弾性復元力により閉じるので、拡大頭部143iを係止穴部141cに確実に係止でき、枠体形状の支持部材143に膜状部材141、141を結合できる。
【0038】
図4に示すように支持部材143の枠部143aに弾性部材143jの支持面143kを一体に成形し、この支持面143k上に弾性部材143jを接着等により固定している。この弾性部材143jは自身の弾性力により膜状部材141をケース11側のシール面30(図1、図3)に押圧して、膜状部材141のシール効果を向上させるものである。なお、図4では枠部143a側の構成のみを示しているが、他の枠部143b側においても同様に、支持面143kおよび弾性部材143jを設けている。
【0039】
次に、上記したガイド部23をより具体的に説明すると、ガイド部23は、図1に示すようにケース11内部においてヒータコア通風路15aの開口部15bおよびバイパス通路16の開口部16aの直ぐ下方(空気流れ上流側)に位置している。そして、ガイド部23は支持部材143の左右の枠部143c、143dの円弧状に沿って車両前後方向(ドア移動方向a)に円弧状に延びるように形成されている。
【0040】
ガイド部23は図3に示すように、ケース11の内側へ向かって開口する所定溝幅Wを有する断面凹状の溝形状に形成される。より具体的には、ガイド部23は所定幅Wで対向するガイド壁23a、23bを有し、この両ガイド壁23a、23bはケース11の内壁面において車両左右方向の両側の壁面部にドア移動方向aと平行に延びるように一体成形される。なお、図3ではケース11の車両左側の壁面部に形成されるガイド部23のみ図示している。
【0041】
ガイド部23は、ガイドピン148と膜状部材141の両方をガイドするように構成されている。このため、ガイド部23の両ガイド壁23a、23bのうち、上側(風下側)のガイド壁23bは、ガイド部23の底部側(図3の左端側)の部位から開口部16aの開口端面(縁部)に至るまで直線状に延びるように形成されている。
【0042】
そして、スライドドア14において、空気流れ方向の風上側から風下側へ向かって、ガイドピン148(支持部材143)→弾性部材143j→膜状部材141の順に積層配置されるので、膜状部材141の幅方向(ドア移動方向aと直交方向)の両端部とガイドピン148をガイド部23内に挿入すると、膜状部材141の挿入部分は上側(風下側)のガイド壁23bによりガイドされ、ガイドピン148は下側(風上側)のガイド壁23aによりガイドされる。
【0043】
図3において、開口部16a内に位置する格子20は、膜状部材141の移動方向(車両前後方向)aと平行な平行格子であり、この平行格子20は開口部16a内に複数本配置されている。この平行格子20は膜状部材141を開口部16a内の領域でも支持して、膜状部材141が風圧により開口部16aの風下側へ大きく湾曲(膨出)することを防止する。この平行格子20はヒータコア通風路15aの開口部15bにも同様に配置される。平行格子20はケース11に一体成形できる。
【0044】
ところで、支持部材143の移動範囲、すなわち、ガイドピン148の移動範囲は、両開口部15b、16aの下方範囲であるので、上記した左右両側のガイド部23は両開口部15b、16aの下方範囲のみに形成され、ガイド部23の車両前方側および車両後方側には膜状部材141を収納する収納部24a、24bが形成される。この両収納部24a、24bもガイド部23と同様に断面凹状の溝形状に形成される。但し、この両収納部24a、24bには膜状部材141の幅方向の両端部のみが挿入されるので、両収納部24a、24bの溝幅は図1に示すようにガイド部23の所定溝幅Wより十分小さくしてある。
【0045】
そして、ケース11の外形状の小型化を図るために、収納部24a、24bはケース11の外形状に沿うようにガイド部23の前後の端部から下方へ向かって滑らかに円弧状に垂下する形状になっている。
【0046】
膜状部材141と支持部材143とを含むスライドドア14全体はガイド部23により車両前後方向aに摺動可能な状態で保持される。そして、可撓性を有する膜状部材141は、ガイド部23および収納部24a、24bによりガイドされてケース11内の曲折した経路を往復動できる。
【0047】
支持部材143はスライドドア14の剛性増加手段としての役割を果たす他に、膜状部材141に対して操作力(駆動力)を伝達する役割も兼ねるものである。そのため、図1に示すように、ケース11内において、スライドドア14の直ぐ下方の部位で、ヒータコア15の通風路15aとバイパス通路16との中間部位(ケース11内部の車両前後方向の中間部位)にドア駆動軸25がドア移動方向aと直交する方向(車両左右方向)に配置されている。
【0048】
この駆動軸25の軸方向の両端部はケース11の左右両側の壁面の軸受け穴(図示せず)により回転自在に支持されている。この駆動軸25のうち、上記支持部材143の枠部143c、143dの下面部に形成されたギヤ149a、149bと対応する部位(軸方向の両側部位)にそれぞれ円形駆動ギヤ(ピニオン)26を樹脂により一体成形で設けて、この駆動ギヤ26を支持部材143のギヤ149a、149bとかみ合わせるようになっている。
【0049】
また、駆動軸25の軸方向の一端部はケース11の外部へ突出し、この駆動軸25の突出端部をドア駆動装置を構成するサーボモータ(図示せず)の出力軸に適宜の連結機構を介して連結している。これにより、サーボモータの回転が駆動軸25に伝達され、さらに、駆動軸25の回転は、駆動ギヤ26とギヤ149a、149bとのかみ合いによりスライドドア14の往復動運動に変換される。
【0050】
ここで、ドア駆動装置のサーボモータの代わりに手動操作機構を駆動軸25の突出端部に連結して、手動操作力によりスライドドア14を往復動させるようにしてもよい。
【0051】
一方、スライドドア14がケース11内に組付られた状態においては、図3に示すように支持部材143が風上側に位置し、そして、膜状部材141が風下側に位置する。膜状部材141の端部付近に設けた係止穴部141cの長穴形状の長軸方向を前述のように空気流れ方向に向けているから、係止穴部141cの長軸方向の寸法範囲内にて、膜状部材141が支持部材143の係止ピン143gに対して変位可能となっている。つまり、膜状部材141は支持部材143に対して空気流れ方向に微小寸法だけ変位可能に保持されている。
【0052】
そのため、膜状部材141が送風空気の風圧を受けると風下側に移動して、膜状部材141の表面がケース11側に形成された開口部15b、16a周縁のシール面30およびガイド部23の風下側ガイド壁23bに対して一層強く圧接するようになっている。
【0053】
なお、図3はガイド部23の代表例として、バイパス通路(冷風通路)16の開口部16aの車両左側部分のみを図示しているが、ガイド部23は開口部16aの車両右側部分、ヒータコア通風路15aの開口部15bの車両左側部分および車両右側部分においても同一構成になっている。
【0054】
次に、ケース11側の開口部15b、16a周縁のシール面30および膜状部材141のシール部141aの曲率半径について説明する。ここで、膜状部材141のシール部141aとは、図6に示すように、膜状部材141のうちケース11側のシール面30に対向してシール面30に接触する部分を言う。換言すると、膜状部材141のうち、端部付近の直角状の曲げ部141b(図4)を除く部分が膜状部材141のシール部141aである。
【0055】
図6は、エアミックス用スライドドア14単体の側面図であり、従って、膜状部材141はケース11側のガイド部23等により拘束されていない自由状態を示す。なお、図6では説明の便宜のためにケース11側のシール面30を破線図示している。
【0056】
膜状部材141のシール部141aの曲率半径をR1とし、ケース11側のシール面30の曲率半径をR0としたとき、膜状部材141の曲率半径R1をケース側シール面30の曲率半径R0より大きくしている。
【0057】
つまり、R0<R1となるように膜状部材141のシール部141aを曲げ成形している。好ましい具体的設計例として、膜状部材141の板厚=150μmの場合に、R0=180mm、R1=200mmである。
【0058】
ケース側シール面30に隣接して形成されるガイド部23はシール面30と平行に形成され、シール面30の曲率半径R0と同一の曲率半径に形成される。また、ケース側シール面30およびガイド部23は、剛体の枠状の支持部材143の移動範囲に形成されるので、ケース側シール面30およびガイド部23の曲率半径R0は支持部材143の円弧形状の曲率半径と略同一に形成される。
【0059】
次に、第1実施形態の作動を説明すると、エアミックス用スライドドア14が車両前後方向aに往復動することにより、スライドドア14の支持部材143の開口部144と、ヒータコア15の通風路15aの開口部15bおよびバイパス通路16の開口部16aとの連通面積が変化して、バイパス通路16を通過する冷風とヒータコア15を通過した温風とを所定の風量割合で混合して所望の吹出温度を得ることができる。
【0060】
図1は最大冷房状態を示しており、エアミックス用スライドドア14の前方側の膜状部材141がヒータコア15の通風路15aの開口部15bを全閉し、スライドドア14の支持部材143の開口部144がバイパス通路16の開口部16aに重合して開口部16aを全開している。スライドドア14の後方側の膜状部材141は後方側の収納部24b内に移動して収納されている。
【0061】
これに対し、最大暖房状態では、エアミックス用スライドドア14の支持部材143の開口部144がヒータコア15の通風路15aの開口部15bと重合する位置に移動して開口部15bを全開し、スライドドア14の後方側の膜状部材141がバイパス通路16の開口部16aを全閉する。スライドドア14の前方側の膜状部材141は前方側の収納部24a内に移動し収納される。
【0062】
一方、図1に示すように、ケース11内において、エアミックス用スライドドア14の移動方向(車両前後方向)aの1箇所のみに駆動軸25を配置し、この駆動軸25の駆動ギヤ26から支持部材143に伝達される駆動力によりスライドドア14が往復動する。その結果、スライドドア14の膜状部材141の移動方向aの両端部は自由端となっている。
【0063】
このような駆動方式であるため、移動方向の先端が自由端となっている前後の膜状部材141および支持部材143は、ガイド部23および収納部24a、24bによりガイドされて移動する。
【0064】
次に、ケース11側の開口部15b、16a周縁のシール面30および膜状部材141のシール部141aの曲率半径R0、R1に関する作用効果について説明する。図7は本実施形態による場合、すなわち、膜状部材141のシール部141aの曲率半径R1をケース側シール面30の曲率半径R0より大きくしている場合である。
【0065】
膜状部材141は可撓性を有する樹脂フィルム材により構成されているので、膜状部材141が送風空気の風圧を受けると、膜状部材141の中央部が風下側(開口部15b,16a側)へ膨出するように変形(破線形状から実線形状に変形)して、膜状部材141の周縁部がシール面30上に圧接する。送風空気の風量が増大して風圧が増大すると、膜状部材141がより強くシール面30上に圧接するので、膜状部材141によるシール性をより一層良好に発揮できる。
【0066】
送風空気の風量が減少して風圧が減少すると、膜状部材141の風圧による圧接作用が低下するが、本実施形態によると、上記曲率半径R0、R1をR0<R1の関係に設定しているので、膜状部材141のシール部141aはシール面30の曲率半径R0に沿うように変形してシール面30に常に接触しようとする。これにより、低風量時にも膜状部材141によるシール性を確保できる。
【0067】
これに対し、図8は比較例1であり、膜状部材141の曲率半径R1をケース側シール面30の曲率半径R0より小さくしている場合(R0>R1)である。このR0>R1という関係から、膜状部材141の移動方向aの両端部がケース側シール面30の表面から離れて、隙間41が発生する。
【0068】
この隙間41は膜状部材141が送風空気の風圧を受けると減少しようとするが、実際には、膜状部材141の樹脂材質自身の持つ曲げ剛性が風圧の押し付け力より高いため、隙間41が残存して、この隙間41を通過する空気洩れが発生する。すなわち、膜状部材141によるシール不良を起こす。
【0069】
図9は比較例2であり、ケース側シール面30の曲率半径R0が小さく、且つ、膜状部材141のシール部141aを平面形状に成形した場合、すなわち、シール部141aの曲率半径R1=∞とした場合である。このように膜状部材141のシール部141aを平面形状にすると、上記隙間41が発生せず、膜状部材141によるシール性を発揮できる。
【0070】
しかし、その反面、膜状部材141の移動方向の先端部とケース側シール面30との当たり角度θが大きくなるので、膜状部材141の移動方向の先端部がケース側シール面30に引っ掛かって、異音を生じたり、ドア操作力の増大等の不具合を生じる。
【0071】
なお、図9において、膜状部材141の2点鎖線位置はケースガイド部23内へ組み付ける前の自由状態であり、膜状部材141の実線位置はケースガイド部23内へ組み付けた後の状態を示している。従って、組み付け後の実際の当たり角度θは図示の角度よりも小さくなるが、角度θの図示をわかりやすくするため、膜状部材141の自由状態で角度θを図示している。
【0072】
図7の本実施形態の場合には、膜状部材141のシール部141aに予めケース側シール面30の曲率半径R0より大きい曲率半径R1を有する曲げ形状が形成してあるので、膜状部材141の移動方向の先端部とケース側シール面30との当たり角度を図9の比較例2よりも小さくできる。これにより、膜状部材141の先端部とケース側シール面30との引っ掛かりを抑制して、膜状部材141をスムースに移動できる。その結果、膜状部材141の先端部の引っ掛かりに起因する異音の発生やドア操作力の増大等の不具合を回避できる。
【0073】
(第2実施形態)
第1実施形態では、スライドドア14として、膜状部材141とこの膜状部材141を支持する枠状の支持部材143とを組み合わせた構成のものを使用しているが、第2実施形態では、スライドドア14を空気通過用の開口部を有する1枚の膜状部材141により構成して、枠状の支持部材143を廃止している。
【0074】
図10〜図14は第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と同等部分には同一符号を付して説明を省略する。エアミックス用スライドドア14を図11に示すように1枚の膜状部材141により構成し、この1枚の膜状部材141においてドア移動方向(ドア長手方向)aの中間部に空気通過用の開口部141eを開口し、また、膜状部材141の幅方向(ドア移動方向aと直交方向)の両端部付近にギヤかみ合い用の穴部141fを開口している。
【0075】
これにより、駆動ギヤ26の歯を図14に示すように膜状部材141の穴部141fにかみ合わせて、駆動ギヤ26の回転により膜状部材141に直接操作力を伝達して、膜状部材141をドア移動方向aへ往復動できるようにしている。なお、膜状部材141の幅方向の両端部は、図13に示すようにケースガイド部23にガイドされるので、このケースガイド部23に沿って膜状部材141はドア移動方向a(図13の紙面垂直方向)に往復動する。
【0076】
エアミックス用スライドドア14は、膜状部材141の開口部141eとヒータコア通風路15aの開口部15bおよびバイパス通路16の開口部16aとの連通面積を調整することにより冷風と温風の風量割合を調整する。
【0077】
なお、第2実施形態では、吹出モード切替用スライドドア35もエアミックス用スライドドア14と同様の構成にしている。すなわち、吹出モード切替用スライドドア35は、図11に示す膜状部材141と基本的に同一構成の膜状部材351により構成される。
【0078】
そして、駆動軸25、駆動ギヤ26と同様の駆動軸39、駆動ギヤ40をスライドドア35の駆動機構として設けて、駆動ギヤ40の回転により吹出モード切替用スライドドア35(膜状部材351)を図10のドア移動方向bに往復動することにより、周知のフェイス開口部36、デフロスタ開口部37およびフット開口部38を切替開閉するようになっている。吹出モード切替用スライドドア35の膜状部材351の幅方向の両端部も図13のガイド部23と同様のガイド部(図示せず)によりガイドされる。
【0079】
第2実施形態においても、膜状部材141、351のシール部141a、351aの曲率半径R1(図12)をケース側シール面30、31の曲率半径R0より大きくすることにより、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0080】
なお、第2実施形態では、スライドドア14、35を可撓性を有する膜状部材141、351のみで構成し、剛体からなる枠状の支持部材143を廃止しているので、ドア移動方向a、bに対してケース側シール面30、31の曲率半径R0を変化させてもよい。この場合には、ケース側シール面30、31の曲率半径R0のうち、最大の曲率半径R0よりも膜状部材141、351の曲率半径R1を更に大きくなるように設定することがシール性確保の観点から好ましい。
【0081】
(他の実施形態)
なお、図9の比較例では、ケース側シール面30の曲率半径R0が小さい場合に膜状部材141のシール部141aを平面形状に成形すると、膜状部材141の移動方向の先端部とケース側シール面30との当たり角度θが大きくなって、膜状部材141の先端部がケース側シール面30に引っ掛かり、異音の発生、ドア操作力の増大等の不具合を生じると述べたが、ケース側シール面30の曲率半径R0が大きい場合には膜状部材141のシール部141aを平面形状、すなわち、曲率半径R1が無限大の形状に成形しても、当たり角度θが小さくなって、異音の発生、ドア操作力の増大等の不具合を実用上問題のないレベルに抑制できる。
【0082】
従って、本発明において、膜状部材141のシール部141aの曲率半径R1は曲率半径が無限大となる平面形状を含む。
【0083】
また、上記した第1、第2実施形態では、ケース側シール面30、31の曲率半径R0よりも膜状部材141、351の曲率半径R1を大きくしているが、膜状部材141、351の曲率半径R1をケース側シール面30、31の曲率半径R0と同一にしても、換言すると、曲率半径R1を曲率半径R0より小さくしなければ、第1、第2実施形態とほぼ同様の作用効果を発揮できることを確認している。
【0084】
以上の他の実施形態を考慮すると、ケース側シール面30、31の曲率半径R0と膜状部材141、351の曲率半径R1は、R0≦R1≦∞(平面形状)となるように設定すればよい。
【0085】
なお、本発明は、車両用空調装置における空気通路の開閉に限らず、種々な用途の空気通路の開閉に対して広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す空調ユニット部の要部断面図である。
【図2】第1実施形態で用いるエアミックス用スライドドアの斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図4のC矢視図である。
【図6】第1実施形態で用いるエアミックス用スライドドアの側面図である。
【図7】第1実施形態の作用説明図である。
【図8】比較例1の作用説明図である。
【図9】比較例2の作用説明図である。
【図10】第2実施形態を示す空調ユニット部の断面図である。
【図11】第2実施形態のスライドドアを構成する膜状部材の正面図である。
【図12】図11の膜状部材の側面図である。
【図13】図10のD−D断面図である。
【図14】図10のE−E断面図である。
【符号の説明】
11…ケース、14…エアミックス用スライドドア、
15b…ヒータコア通風路の開口部、16a…バイパス通路の開口部、
23…ガイド部、30、31…シール面、
35…吹出モード切替用スライドドア、36〜38…吹出開口部、
141、351…膜状部材、141a、351a…シール部。
Claims (1)
- 空気通路の開口部(15b、16a、36〜38)を形成するケース(11)と、
前記ケース(11)内に移動可能に配置され、前記開口部(15b、16a、36〜38)を開閉するスライドドア(14、35)とを備え、
前記スライドドア(14、35)は、可撓性を有する膜状部材(141、351)を少なくとも有しており、
前記膜状部材(141、351)の移動方向の先端が自由端になっており、
前記膜状部材(141、351)を送風空気の風圧により前記開口部(15b、16a、36〜38)周縁のシール面(30、31)に接触させて、前記開口部(15b、16a、36〜38)を閉塞する空気通路開閉装置において、
前記膜状部材(141、351)のうち、前記シール面(30、31)に接触するシール部(141a、351a)の曲率半径をR1とし、前記シール面(30、31)の曲率半径をR0としたときに、この曲率半径R0、R1を、
R0≦R1≦∞の関係に設定し、
前記膜状部材(141、351)の前記シール部(141a、351a)を、前記シール面(30、31)の曲率半径R0よりも大きい所定の曲率半径R1を有するように曲げ成形したことを特徴とする空気通路開閉装置。
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